JPH09108712A - 傾斜圧延機による継目無鋼管の圧延方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 傾斜圧延機による継目無鋼管の圧延方法を提
供する。 【解決手段】 傾斜圧延機に用いるプレート状ガイドシ
ュー２，２′の内部に通水孔10を設け、この通水孔10に
冷却水を供給して冷却しながら圧延することにより、ガ
イドシューの寿命延長と製品の品質向上を図る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、傾斜圧延機による
継目無鋼管の圧延方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】通常、継目無鋼管の製造には、穿孔圧延
機（以下、ピアサという）、減肉延伸圧延機（以下、エ
ロンゲータという）および磨管機（以下、リーラとい
う）の３工程で傾斜圧延機が用いられる。ここで、ピア
サを例にして、傾斜圧延機の構造について説明すると、
傾斜圧延機は図８に示すように、一対のロール１，１′
を有しており、この一対のロール１，１′は数度の表面
角を付与され、パスラインPLに対して傾斜して配置され
ている。中実の丸ビレットなどの被圧延材３はロール
１，１′によって矢示Ｒ方向に回転を与えられつつ前進
し、プラグバー５の先端に装着されたプラグ（図示せ
ず）とロール１，１′との間隙で穿孔して、ホロー４を
形成しながら減肉延伸が行われる。さらに、傾斜圧延機
は一対のガイドシュー２，２′を有しており、被圧延材
３の外径膨出の抑制制御と振動防止を行っている。

【０００３】ここで用いられるガイドシューとしては、
図８に示したプレート状ガイドシュー２，２′の他に、
図９に示すディスク状ガイドシュー６，６′および図10
に示すローラ状ガイドシュー７，７′がある。プレート
状ガイドシュー２，２′よりもディスク状ガイドシュー
６，６′の方が、さらにはローラ状ガイドシュー７，
７′の方が被圧延材３との相対速度が減少する。しか
し、いずれの場合にも接触面圧と相対速度に応じて被圧
延材３がガイドシュー表面に焼き付き、これが圧延後の
被圧延材表面に螺旋状の引っ掻き疵（以下、シューマー
ク疵という）を生じせしめてしまう。

【０００４】特に、近年製造量が急増している高合金鋼
継目無管の圧延時には、炭素鋼継目無管の圧延時に比べ
て高負荷となるために、ガイドシューへの被圧延材の焼
き付きが頻発し、シュー手入れやシュー交換を余儀なく
され、圧延能率の低下、コストの増加といった問題を引
き起こしている。このような問題点の防止策として、例
えば、特開昭61−253105号公報、特開昭63−18044 号公
報等に示されるように、ガイドシュー材質を改善する方
法が提案されている。しかし、いずれも、シューの耐摩
耗性は改善される傾向にあるものの、耐焼き付き性につ
いては十分な改善効果を得るには至っていないのが現状
である。

【０００５】あるいは、特開平３−12498 号公報等に示
されるように、圧延中にオンラインでガイドシューに潤
滑剤を供給しながら圧延する方法が提案されている。し
かし、実操業に潤滑圧延を適用すると、潤滑剤がロール
などの冷却水によって流され易いから焼き付き防止効果
が得られず、また、被圧延材に転着してロールと被圧延
材とのスリップが発生し易い、などの問題点がある。

【０００６】その他にも、特開平６−142749号公報等に
示されるように、被圧延材表面にあらかじめ潤滑剤を塗
付しておく方法が提案されている。しかし、被圧延材全
面に均一に潤滑剤を塗付することの困難さ、被圧延材を
搬送する搬送装置による潤滑剤の剥離などの点から、実
用化し難い。また、特開昭52−152857号公報に示される
ように、圧延中にロール冷却水でガイドシューの外面冷
却をも行いながら圧延する方法が提案されている。しか
し、上下のガイドシューを均一に冷却することは困難
で、ましてや、圧延中のガイドシューを焼き付き防止効
果を得るまでに十分に冷却することは不可能である。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来技術の有する課題を解決すべくなされたものであ
って、特に高合金鋼継目無管の外面にシューマーク疵を
発生させる起因となる傾斜圧延機のガイドシューの焼き
付きを防止することの可能な傾斜圧延機による継目無鋼
管の圧延方法を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は、傾斜圧延機を用いて継目無鋼管を圧延
する際に、前記傾斜圧延機に用いるガイドシューの内部
に通水路を設け、この通水路に冷却水を供給して冷却し
ながら圧延することを特徴とする。なお、前記ガイドシ
ューへの冷却水は圧延開始とともに供給し、圧延終了後
所定の時間をおいて停止するようにするのがよい。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明者らは、穿孔機の実験機を
用いた高合金鋼ビレットの穿孔実験、ガイドシューの非
定常３次元熱伝導解析計算などを行い、研究した結果、
ガイドシューの温度がガイドシューの焼き付きに非常に
影響していることを見出した。すなわち、被圧延材の連
続圧延によってガイドシューの表層温度が上昇し、被圧
延材と接触時の負荷よりもシュー素材強度が低下する
と、シュー表層では塑性流動し、凹凸をともなった新生
面が生じ、この状態で、被圧延材とシューとの焼き付き
が発生する。したがって、前記のようなガイドシューの
材質改善や潤滑剤の適用よりも、冷却によってガイドシ
ューの昇温を抑制する方が焼き付き防止に有効であると
の知見を得た。

【００１０】そこで、本発明の実施例について、以下に
図面を用いて詳細に説明する。図１は本発明に用いるプ
レート状ガイドシューの一実施例を示す斜視図である。
プレート状ガイドシュー２の内部の幅方向に平行なクラ
ンク状の通水孔10を設け、その一方の側端面２ａに給水
口11が、また他方の側端面２ｂに排水口12が設けられ、
それぞれに連結される給水側ジョイント13を介して圧延
中あるいは圧延後にもプレート状ガイドシュー２，２′
を冷却する冷却水を供給し、排水側ジョイント14から排
水する。このように冷却することにより、プレート状ガ
イドシュー２はほぼ均一に冷却される。また、給水側お
よび排水側ジョイント13, 14に接続される図示しない給
水管および排水管はいずれもミル外から配管することが
できる。

【００１１】図２はプレート状ガイドシューに係る他の
実施例を示すもので、プレート状ガイドシュー２の内部
の高さ方向に平行なクランク状の通水孔10が設けられ、
その上端面２ｃに給水口11が、また下端面２ｄに排水口
12が設けられる。このように冷却することにより、プレ
ート状ガイドシュー２はほぼ均一に冷却される。また、
排水はミル内に放出することができるが、特に問題はな
い。

【００１２】なお、これらの配管経路の変更について
は、シューの大きさなどによる規定はない。図３はさら
に別の実施例を示したものであるが、図に示したよう
に、プレート状ガイドシュー２の背面２ｅにオープンな
通水溝15を設け、プレート状ガイドシュー２を固定する
固定装置（図示せず）の前面を通水溝15の蓋とし、これ
らで構成される通水路に冷却水を供給する。これによっ
て、前出図１，２の通水孔10を設けたプレート状ガイド
シュー２と同等の効果が得られる。

【００１３】なお、これらプレート状ガイドシュー２の
通水孔10、通水溝15を設けるにあたっては、シュー鋳込
み時に同時に成形するのが望ましいが、鋳込み後に加工
するようにしてもよい。図４(a) ，(b) はディスク状ガ
イドシュー６に本発明を適用した場合を示すもので、デ
ィスク状ガイドシュー６の円周方向に設けられた通水孔
16と接続管17とで形成される通水路に給水側ジョイント
13から、その駆動軸18に結合された一方のロータリコネ
クタ19を介して冷却水を供給し、もう一方のロータリコ
ネクタ19を介して排水側ジョイント14側から排水する。

【００１４】また、図５(a) ，(b) はローラ状ガイドシ
ュー７に本発明を適用した場合を示すものであり、ロー
ラ状ガイドシュー７の両端面７ａ，７ｂの円周方向に貫
通する複数の通水孔20が穿設され、駆動軸21の両側に結
合されたロータリコネクタ22を介して冷却水が給排水さ
れる。

【００１５】

【実施例】

〔実施例１〕 直径207mm の13％Cr鋼の丸ビレットを外
径218mm ×肉厚8.2mm×長さ11.7ｍの継目無鋼管に圧延
する際に、本発明を適用した。このときの丸ビレットの
供給間隔は50秒ピッチとし、連続して1000本を圧延し
た。ここで、各傾斜圧延機のガイドシューとしては、ピ
アサでは3.7 ％Ｃ−0.8 ％Mn系のプレート状ガイドシュ
ー２，２′に図１に示した通水孔を設けたものを用い、
エロンゲータではSCM435系のローラ状ガイドシュー７，
７′に図５に示した通水孔を設けたものを、またリーラ
では3.5 ％Ｃ−0.4 ％Ni−0.6 ％Cr系プレート状ガイド
シュー２，２′に図１に示した通水孔を設けたものをそ
れぞれ用いた。

【００１６】そして、ピアサでビレットを外径200mm ×
肉厚21mmの中空素管に穿孔圧延した後、エロンゲータで
外径223mm ×肉厚11.5mmに延伸・減肉圧延した。さら
に、プラグミルで外径215.8mm ×肉厚8.5mm に圧延後、
リーラで外径230mm ×肉厚8.1mm に圧延した。各傾斜圧
延機のガイドシューには、圧延開始とともにその内部に
設けた通水孔に20l/min の冷却水を供給し、圧延終了か
ら10秒後に通水を停止した。なお、通水孔は、各ガイド
シュー表面から10mmの深さに水路端面間隔を50mm以下に
なるように加工した。なお、比較のために、ガイドシュ
ーの内部水冷を行わない従来方法でも同本数のビレット
の圧延を行った。

【００１７】各傾斜圧延機での使用結果を図６(a) ，
(b) に示した。これらの図から明らかなように、内部冷
却の効果によって各傾斜圧延機ともに、ガイドシュー表
面の焼き付き除去のための手入れ頻度が１／４以下に減
少し、さらに寿命も３倍以上に向上したことがわかる。 〔実施例２〕 直径175mm で13％Cr鋼の丸ビレットを外
径60.5mm×肉厚５mm×長さ59.8ｍの継目無鋼管に圧延す
る際に、ピアサのみに本発明を適用した。丸ビレットの
供給間隔は30秒ピッチとして1500本連続して圧延した。
ピアサのガイドシューには図４に示したディスク状で、
その材質は3.5 ％Ｃ−3.0 ％Ni系とし、丸ビレットを外
径186mm ×肉厚17mmの中空素管に穿孔・圧延した。

【００１８】ロット圧延開始とともにガイドシューの内
部通水路に20l/min の冷却水を通水し、ロット圧延終了
まで通水した。通水路はガイドシュー表面から10mmの位
置に水路端面間隔を40mm以下になるように加工した。比
較のために、ガイドシューの内部水冷を行わない従来方
法でも同本数の丸ビレットの圧延を行った。図７(a) ，
(b) はガイドシュー内部冷却の効果を示したものである
が、これらの図からわかるように、ガイドシュー表面の
焼き付き除去のための手入れ頻度は１／３以下に減少
し、ガイドシュー摩耗量も１／２以下に減少した。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
傾斜圧延機を用いて継目無鋼管を圧延する際に、前記傾
斜圧延機に用いるガイドシューの内部に通水路を設け、
この通水路に冷却水を供給して冷却しながら圧延するよ
うにしたので、ガイドシューの寿命延長を図ることがで
き、これによって、工具原単位の低減を図るとともに継
目無鋼管の生産性の向上に寄与する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に用いるプレート状ガイドシューの一実
施例を示す斜視図である。

【図２】本発明に用いるプレート状ガイドシューの他の
実施例を示す斜視図である。

【図３】本発明に用いるプレート状ガイドシューの別の
実施例を示す斜視図である。

【図４】本発明に用いるディスク状ガイドシューの実施
例を示す(a) 平面図、(b) 側面図である。

【図５】本発明に用いるローラ状ガイドシューの実施例
を示す(a) 斜視図、(b) 側面図である。

【図６】本発明を各傾斜圧延機に適用した際の(a) ガイ
ドシュー手入れまでの平均圧延本数、(b) ガイドシュー
交換までの平均圧延本数を示す特性図である。

【図７】本発明をディスク状ガイドシューを備えた傾斜
圧延機に適用した際の(a) ガイドシュー手入れまでの平
均圧延本数、(b) ガイドシュー原単位を示す特性図であ
る。

【図８】従来のプレート状ガイドシューを備えたピアサ
の斜視図である。

【図９】ディスク状ガイドシューを備えたピアサの斜視
図である。

【図10】ローラ状ガイドシューを備えたピアサの斜視図
である。

【符号の説明】

１，１′ ロール ２，２′ プレート状ガイドシュー ３ ビレット（被圧延材） ４ ホロー ５ プラグバー ６，６′ ディスク状ガイドシュー ７，７′ ローラ状ガイドシュー 10，16，20 通水孔（通水路） 11 給水口 12 排水口 13 給水側ジョイント 14 排水側ジョイント 15 通水溝（通水路） 17 接続管 18，21 駆動軸 19，22 ロータリコネクタ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金山 太郎 愛知県半田市川崎町１丁目１番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内 (72)発明者 大西 正行 愛知県半田市川崎町１丁目１番地 川崎製 鉄株式会社知多製造所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 傾斜圧延機を用いて継目無鋼管を圧延す
   る際に、前記傾斜圧延機に用いるガイドシューの内部に
   通水路を設け、この通水路に冷却水を供給して冷却しな
   がら圧延することを特徴とする傾斜圧延機による継目無
   鋼管の圧延方法。
2. 【請求項２】 前記ガイドシューへの冷却水は圧延開始
   とともに供給し、圧延終了後所定の時間をおいて停止す
   ることを特徴とする請求項１記載の傾斜圧延機による継
   目無鋼管の圧延方法。