【発明の詳細な説明】
B型肝炎表面抗原に対する抗体の組成物発明の分野
本発明は慢性B型肝炎およびその関連疾患を持つ患者に使用する治療用組成物
、特にB型肝炎表面抗原(HBsAg)に対する抗体を含んで成る医薬組成物の分野
にあり、これらの組成物は、例えば肝臓移植後の慢性B型肝炎患者の肝臓細胞の
再−感染を防ぐために有用である。発明の背景
B型肝炎は感染性疾患であり、特有の段階で進行する。感染後の第1期ではB
型肝炎ウイルスが活発に複製する。この段階は肝臓障害が特徴であり、おそらく
これはウイルス−感染肝臓細胞に対する免疫反応性により引き起こされるものと
思われる。いったん免疫反応が十分に進行すると、活発なウイルス複製は静まる
。第2期(ウイルスの潜伏)中では、ウイルスの断片を血液中でなお検出するこ
とができるが、肝臓の炎症は次第に減少する。最終(回復)−期では、B型肝炎
ウイルスは血液中にもはや検出されず、同時にウイルスの表面抗原に対する血清
抗体が現れる。
慢性B型肝炎の患者では、第1期から第2期へ、または第2期から第3期への
移行が遅れ、そして肝炎ウイルス自体またはウイルス断片を血液中に検出できる
。特に第1期では、肝機能不全または肝癌になる可能性のある肝硬変の恐れがあ
る持続性の肝臓の炎症が存在する。さらに、そのような患者の血液は高度に感染
性である。
この十年間、肝臓移植はB型肝炎ウイルスにより生じる進行した肝臓疾患にお
ける可能な治療的モダリティーとして利用できるようになり、
50%より高い長期生存の可能性を提供した。慢性のB型肝炎の場合は移植した肝
臓はもとの疾患の再発を伴い、ほとんどいつも再感染されるので、肝臓移植後の
B型肝炎患者の生存率は、同様に治療した他の患者群の全平均よりもはるかに悪
い。
B型肝炎表面抗原に対する抗体は、それまでにウイルスに暴露されていない個
体がB型肝炎ウイルスに感染するのを防御するのに大変有効であることが証明さ
れた。そのような抗体は活性なワクチン注射から生成することができ、あるいは
受動的に投与されることができる。しかし、B型肝炎ワクチンでの免疫化または
抗HBs抗体の投与は、慢性のB型肝炎患者に明らかな効果が無い。
感染により引き起こされる重篤な肝臓障害という観点から、肝臓移植を受けた
HbsAg-陽性患者では、過剰量の抗HbsAg抗体を静脈投与することでウイルスを中
和でき、すなわち再−感染を防ぐことができると報告された(参考文献1および
2)。
事実、肝臓細胞の再−感染の防御は、過剰の抗HbsAg抗体が大量に投与できる
ときにのみ達成できる。抗体は始めにB型肝炎ウイルスの表面抗原を中和しなけ
ればならず、その後、1リットル当たり少なくとも100国際単位(International
Units:IU)レベルが血清中で維持されなければならない。したがって、初期の
中和には約50,000から100,000IUが必要で、そして1年中十分なレベルを維持す
るためには少なくともさらに100,000IUが必要である。これらのデータは慢性B
型肝炎であり、肝臓移植後に典型的なポリクローナルヒト抗−HBs抗血清で防御
的に治療した患者を対象とした臨床試験に基づく(参考文献1および2)。
ポリクローナルヒト抗−HBs抗体調製物は、免疫化された提供者のプ
ール血清から調製される。これらの調製は比較的少量かつ高価で入手でき、その
結果、治療の全経費は患者あたりNLG 50,000.-からNLG 100,000.-となる。その
うえ移植肝の再−感染を防ぐために、患者の十分な抗体レベルを維持するために
十分量の抗体を得ることは実質的に不可能である。
さらに最近、抗−HBs抗体を有する可能性のある提供者はC型肝炎にも感染し
ていることがあるので、血漿プールの調製に使用することができないことが示さ
れ、その結果、抗−HBsポリクローナル調製物の利用性がさらに減少した。現在
まで、そのような再−感染はほとんどいつもそのような患者に発生する。
この十年の間に、モノクローナル抗体の投与が治療的モダリティーとして発達
した。しかし、ネズミモノクローナル抗体をヒトに投与することがしばしば問題
になるのは一般的に経験することである:免疫応答性受容者では、マウス免疫グ
ロブリン分子に対して反応する抗体が生じる。これは幾つかの面倒な影響をもた
らすかもしれない。いずれの場合でもネズミ抗体を繰り返して投与することは不
可能であろう。
したがってヒトモノクローナル抗体の構築についてさらなる研究がなされてい
る。それらは同種タンパク質なので、一般的にヒトには抗体反応を表さないだろ
う。しかし、HuMAb-産生細胞系を構築するための現存する技術は不成功になるこ
とがよくあった。
さらにモノクローナル抗体の欠点は、抗体の混合物を含み多種のエピトープを
認識する“典型的”なポリクローナル抗血清とは対照的に、ほとんどいつも単一
の抗原性エピトープに対するということである。その結果、ポリクローナル抗血
清は単一のモノクローナル抗体を使用するこ
とに比べると、ウイルスの修飾の可能性に対処するために、よりよい備えをもっ
ていることになる。ただし様々なエピトープを認識する適当な抗体が利用できれ
ば、モノクローナル抗体の混合物を使用してこの欠点を回避することは可能とな
りうる。
欧州特許出願公開第0038642号明細書は、ハイブリドーマ細胞系RF-HBs-1、RF-
HBs-2およびRF-HBs-4により分泌される、B型肝炎表面抗原に対するモノクロー
ナル抗体を開示している。細胞系RF-HBs-1により分泌されるモノクローナル抗体
は、HBsAgのadおよびayサブタイプに共通なエピトープであり、かつRF-HBs-2お
よびRF-HBs-4により認識されるエピトープとは異なるエピトープを認識すると言
われている。この抗体はB型肝炎ウイルス感染に関する治療、予防、そして診断
的使用について特許請求されており、そしてB型表面抗原を精製するために有用
であると述べられている。それらは各々互いに組み合わせて使用できるかも知れ
ない。これらのモノクローナル抗体の混合物が、ポリクローナル抗血清とほとん
ど同じ効力でB型肝炎ウイルスを中和できることは特許請求も示唆もされていな
い。
上記の既知の抗体は、適当に免疫感作したBalb/cマウス由来の脾臓細胞とマウ
ス骨髄腫細胞系の融合により得られるハイブリドーマにより産生されるマウスモ
ノクローナル抗体である。そのようなマウスモノクローナル抗体の治療上の使用
は非経口投与後に抑制免疫反応をもたらすものと思われる。さらに、上記の既知
の抗体はB型肝炎の唯一のサブタイプしか認識しない。これは2つの抗体が同じ
サブタイプと反応する場合にまれに起こるエスケープ・ミュータント(免疫回避
変異体)の中和という観点からは極めて望ましくない。図面の簡単な説明
第I図はポリクローナル抗HBs抗血清(HBIg)について行うAUSRIA阻害実験の
結果を示す;
第II図はヒトモノクローナル抗体MAb 4-7Bについて行うAUSRIA阻害実験の結果
を示す;
第III図はヒトモノクローナル抗体MAb 9H9について行うAUSRIA阻害実験の結果
を示す;
第IV図はヒトモノクローナル抗体MAb 9H9およびMAb 4-7Bの1:1混合物(重量に
基づく)について行うAUSRIA阻害実験の結果を示す;
第V図はヒトモノクローナル抗体MAb 9H9およびMAb 4-7Bの10:1混合物(重量
に基づく)について行うAUSRIA阻害実験の結果を示す;
第VI図はヒトモノクローナル抗体MAb 9H9およびMAb 4-7Bの1:10混合物(重量
に基づく)について行うAUSRIA阻害実験の結果を示す。発明の要約
HBsに対するヒトモノクローナル抗体(HuMAb-抗HBs)は、HBs−免疫性の個体
由来の抗体産生細胞の不滅化により開発されてきた。様々なエピトープに特異性
を有するヒトモノクローナル抗体が得られた。得られた抗体は大量で、比較的廉
価である。異なるエピトープを認識する少なくとも2つの上記ヒトモノクローナ
ル抗体をうまく選択して組み合わせると、ポリクローナルヒト抗−HBsAg抗体の
結合を効果的に阻害することが示された。この観点から、そのような組み合わせ
は慢性のB型肝炎患者の治療において、ポリクローナル抗血清の使用の適当な選
択肢となることが確実であろう。発明の詳細な記述
本発明はB型肝炎表面抗原に対する抗体および医薬的に許容できるキャリアー
または希釈剤を含んで成る医薬組成物を提供し、該抗体は少なくとも2つの異な
るヒトモノクローナル抗体を含んで成る。
本発明の好適な態様では、上記ヒトモノクローナル抗体は第一ヒトモノクロー
ナル抗体および第二ヒトモノクローナル抗体を含む。その中でB型肝炎表面抗原
に対する第一ヒトモノクローナル抗体の結合は、該第二ヒトモノクローナル抗体
が該B型肝炎表面抗原へ結合するのを50%未満阻害し、そして該第二ヒトモノク
ローナル抗体のB型肝炎表面抗原への結合は該第一ヒトモノクローナル抗体が該
B型肝炎表面抗原へ結合するのを50%未満阻害する。
本発明によれば、上記ヒトモノクローナル抗体の1つがB型肝炎表面抗原の線
状エピトープに結合し、そしてもう1つのヒトモノクローナル抗体がB型肝炎表
面抗原の高次構造的エピトープ(conformational epitope)に結合することが特
に好ましい。最も好ましくはB型肝炎表面抗原の線状エピトープに結合するヒト
モノクローナル抗体はMAb 4-7B(ブタペスト条約に基づき、1992年10月10日にヨ
ーロッパ コレクション オブ アニマル セル カルチャーに、寄託番号ECACC 921
21016で寄託された)であり、そしてB型肝炎表面抗原の高次構造的エピトープ
に結合するヒトモノクローナル抗体はMAb 9H9(ブタペスト条約に基づき、1992
年10月10日にヨーロッパ コレクション オブ アニマル セル カルチャーに、寄
託番号ECACC 92121015で寄託された)である。
本発明は、慢性のB型肝炎患者を治療するために使用する上記医薬組成物を提
供する。また本発明は慢性のB型肝炎患者を治療するために使用する、B型肝炎
表面抗原に対するヒトモノクローナル抗体、特にMAb
4-7B(ECACC 92121016)またはMAb 9H9(ECACC 92121015)を提供する。
さらに本発明は、慢性のB型肝炎患者を治療するための医薬組成物を調製する
ために、B型肝炎表面抗原に対するヒトモノクローナル抗体の使用を提供し、よ
り詳細にはヒトモノクローナル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)およびMAb 9H9
(ECACC 92121015)をその目的のために使用することを提供する。
また本発明はB型肝炎表面抗原に対するヒトモノクローナル抗体の産生方法を
提供し、該方法はモノクローナル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)の産生細胞、
またはモノクローナル抗体MAb 9H9(ECACC 92121015)の産生細胞を培養し、そ
して場合によっては産生されたモノクローナル抗体を回収することを含んで成る
。好ましくは、該細胞はそのために栄養培地中でインビトロ培養され、そして産
生された抗体が培養上清から回収される。
上記モノクローナル抗体を産生する細胞の選択に関しては、様々な選択肢が存
在する。好ましくは該細胞は寄託した細胞系MAb 4-7B(ECACC 92121016)、また
は寄託した細胞系MAb 9H9(ECACC 92121015)から派生するものであるか、ある
いはネズミ骨髄腫細胞系との融合により該寄託細胞系の任意の1つから派生する
ハイブリッド細胞、またはモノクローナル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)およ
びMAb 9H9(ECACC 92121015)の任意の1つをコードする核酸でそれらを発現で
きるように形質転換させた組換え細胞である。
ヒトモノクローナル抗体の調製、および慢性B型肝炎患者の治療のための治療
用抗体組成物の製剤に関しては、通常の知識および当業者のルーチンに属し、そ
して文献に詳細に証明されているので、本明細書には
記載しない。
本発明は以下の実施例で説明されるが、これらの実施例は制限することを意図
するものではなく、説明を目的とするのみである。実施例1:HBsに対するヒトモノクローナル抗体の調製
数種のHuMAb-抗−HBsを次のように調製した:末梢血リンパ球を、HBsに対する
血清抗体力価が高い血漿瀉血提供ボランティアから単離した。Bリンパ球を単離
し、そしてエプスタイン・バールウイルスで感染させ、抗体−産生細胞の形質転
換および不滅化を起こさせた。不滅化細胞の継代培養を繰り返し、モノクローナ
ル抗体細胞系(すなわち遺伝的に同一)を単離した。そのような細胞は継続的系
にHuMAb-抗-HBsを分泌する。大量のこの抗体は、細胞をインビトロ培養した時に
これらの細胞上清から簡単に得られた。実施例2:2つのHuMAb-抗-HBsの検査
実施例1のように調製した2つのHuMAb-抗-HBsの性質を、ここではさらに詳細
に記載する。2つのHuMAb-抗-HBsを本明細書において、CLB-Hu-HBsAg-1(MAb 4-
7B)およびCLB-Hu-HBsAg-4(MAb 9H9)と命名した。2.1 MAb 4-7BおよびMAb 9H9の特異性
抗体の特異性を放射性-免疫沈降アッセイで試験した:抗体を固体相に結合さ
せ、これを次に放射性の125I−標識HBsタンパク質(アボット ラボラトリーズ
(Abbott Laboratories)から得た、シカゴ、イリノイ州、米国)と一緒にイン
キューベーションした。結合した標識タンパク質を次にSDSポリアクリルアミド
ゲル電気泳動(PAGE)で分析し、そしてその後、分離したタンパク質をオートラ
ジオグラフィーにより検出した。
両方の抗体がすべての既知の主要HBsタンパク質と反応することが判
明した(即ち、主要(p24/gp27)、中程度(p33/gp36)および大きい(gp39/gp4
2)。変性HBsでのイムノ−ブロット法では、MAb 4-7Bのみが反応性を表したが、
MAb 9H9は結合しなかった。この知見はMAb 4-7Bが変性耐性決定基(すなわち線
状エピトープ)と反応し、一方MAb 9H9は変性−感受性決定基(すなわち高次構
造エピトープ)を検出することを示している。
2つの異なるエピトープが2つの抗体により認識されるという知見を確認する
ために、交差−拮抗放射免疫アッセイを行った。このために、両方のモノクロー
ナル抗体を125Iにより放射性標識した。次にHBs−被覆粒子を過剰の未標識MAb
4-7Bとプレインキューベーションし、続いて標識MAb 9H9とプレインキューベー
ションし、そして逆も行った。これらの結果は次の通り:
結合のパーセントとは、プレインキューベーション後の標識モノクローナル抗
体と過剰の未標識抗体との結合を言い、そして未標識抗体の不在に対するパーセ
ントで表す(後者の値を100%とする)。
結論:
a)未標識MAb 4-7BおよびMAb 9H9はそれらの標識された対合物の結合を遮断で
きる;
b)未標識MAb 4-7Bは標識MAb 9H9の結合を強力に遮断し、そしてその逆でもあ
る。
これらの知見はMAb 4-7BおよびMAb 9H9がまさに異なるエピトープに向かって
いることを表し、これは前に述べたデータと一致する(すなわちMAb 4-7Bが線状
エピトープを認識し、そしてMAb 9H9が高次構造−依存的エピトープを認識する
)。2.2 MAb 9H9およびMAb 4-7B混合物の治療に関する使用適性
AUSRIA阻害実験は、MAb 4-7BおよびMAb 9H9混合物が2つの別個の抗体に比べ
て優れた特性を有することを実施するために行った。
この実験でHBsAgを抗体MAb 4-7B、抗体MAb 9H9または既知濃度の両抗体を含む
混合物とインキューベーションした。比較のために、ポリクローナル抗−HBs抗
血清を平行して試験した。
残りのHBs−免疫反応性をAUSRIAアッセイで試験した(試験キットはアボット
ラボラトリーズから得た)。AUSRIAの原理は次の通りである:ポリクローナル(
モルモット)抗−HBsAg抗体で被覆したビーズを、B型肝炎患者から得たHBsを含
む血漿と環境温度で一晩インキューベーションする。洗浄後、既知量のMAb 4-7B
およびMAb 9H9または両抗体の混合物を加え、そして45℃で1時間インキューベ
ーションした。次に、洗浄せずに、ビーズを125I−標識ポリクローナル(ヒト
)抗−HBsAg抗体と45℃で3時間インキューベーションした。最後に標識抗体の
結合を測定し、そしてHuMAbsが125I−標識結合体の結合を阻害する能力を計算
した。これらの結果を表I−VIおよび第I−VI図に表す。
これらの結果は、両方のMAb 9H9およびMAb 4-7Bが別個に(表ならびに第IIお
よびIII図)、部分的に標識ポリクローナル抗体の結合を遮断す
ることができるだけであることを明らかに示している。しかし、試験したすべて
のMAb 4-7BおよびMAb 9H9混合物(表および図IV−VI)は、未標識ポリクローナ
ル抗HBs(表および図I)抗血清と比較して完全な阻害を示した。
抗体が単離したHBsAgと反応するのと同じように、B型肝炎ウイルス粒子と反
応できるかどうかを研究するために、さらに実験を行った。このために、全ウイ
ルス粒子(いわゆるデーン粒子)を使用した。
これらのデーン粒子をヒトのHBsAg-陽性血清から、勾配遠心により精製した。
抗体のこれらのデーン粒子に対する反応を溶液中のインキューベーションにより
試験した。インキューベーション後、AUSRIAビーズを溶液に加えた。さらに、HB
V-DNAを残りの溶液から抽出し、そしてドット−スポットハイブリダイゼーショ
ンにより半−定量的に分析した。HBVに特異的な放射性プローブとハイブリダイ
ゼーションした後に、感光を視覚で検査した。
デーン粒子でのこの実験では、両方のモノクローナル抗体4-7Bおよび9H9がデ
ーン粒子調製物をHBsAgと同程度に中和できることを示した。例えば、1/30000倍
希釈の9H9抗体はそれぞれ、HBsAgおよびデーン粒子の73%および75%を中和でき
た;1/3200倍希釈したMAb 4-7B調製物はそれぞれ64%および74%を中和した。完
全な中和はモノクローナル抗体9H9および4-7Bの混合物を使用したときに得られ
た。この100%の中和はデーン粒子調製物から完全なHBV-DNAの除去に相当した。
したがって、4-7Bおよび9H9の両抗体混合物はデーン粒子ならびにHBsAgを完全
に中和できると結論することができる。その結果、MAb 4-7BおよびMAb 9H9の混
合物は、“典型的”なポリクローナル調製物での治療の
欠点を回避する、慢性のB型肝炎患者の治療の選択肢として適当な調製物を提供
する。
本発明は2つのモノクローナル抗体、4-7Bおよび9H9を産生する特別な細胞系
に関して特に記載した。しかし、同じ、また類似の結合特性を持つ抗体を産生す
る他の細胞系も、例えば抗体産生法を改良するために作成できる。これらの択一
的な細胞系は数種の様式で作成できる。
第一に、産生細胞系4-7Bまたは9H9を別の細胞系(例えばマウスミエローマ)
と融合できる。生成した新しい細胞系を、改良された成長および/または抗体産
生特性について選択することができる。融合および選択の後、この新しく作成さ
れた細胞系は親の細胞系4-7Bまたは9H9と大変似ている抗体を産生するだろう。
第二に抗体をコードする遺伝子を単離するために、2つの細胞系4-7Bおよび9H
9のいずれかから遺伝物質を抽出することができる。これらの単離遺伝子(また
は単離遺伝子の一部)は、別の細胞系を4-7Bまたは9H9抗体に類似するHBsAg結合
特性を有するタンパク質を産生する細胞系に形質転換するために使用できる。
最後に、当業者には前述の記載から、本明細書に示され、かつ記載されたもの
に加えて様々な変更が明らかであり、それらは添付の請求の範囲の中にあるもの
と考える。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年4月11日
【補正内容】
請求の範囲
1.B型肝炎表面抗原に対する抗体および医薬的に許容できるキャリアーまたは
希釈剤を含んで成る医薬組成物であって、該抗体が少なくとも2種の異なるヒト
モノクローナル抗体を含んで成り、該ヒトモノクローナル抗体の1つがB型肝炎
表面抗原の線状エピトープに結合し、そしてもう1つのヒトモノクローナル抗体
がB型肝炎表面抗原の高次構造的エピトープに結合することを特徴とする上記組
成物。
2.上記該第一ヒトモノクローナル抗体のB型肝炎表面抗原に対する結合は、該
第二ヒトモノクローナル抗体が該B型肝炎表面抗原へ結合するのを50%未満阻害
し、そして該第二ヒトモノクローナル抗体のB型肝炎表面抗原に対する結合は、
該第一ヒトモノクローナル抗体が該B型肝炎表面抗原へ結合するのを50%未満阻
害することを特徴とする請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
3.B型肝炎表面抗原の線状エピトープに結合する上記ヒトモノクローナル抗体
がMAb 4-7B(ECACC 92121016)であり、そしてB型肝炎表面抗原の高次構造的エ
ピトープに結合する上記ヒトモノクローナル抗体がMAb 9H9(ECACC 92121015)
であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
4.慢性B型肝炎患者の治療に使用するための請求の範囲第1ないし第4項のい
ずれか1項記載の医薬組成物。
5.慢性B型肝炎患者の治療に使用するための、B型肝炎表面抗原に対するヒト
モノクローナル抗体。
6.MAb 4-7B(ECACC 92121016)またはMAb 9H9(ECACC 92121015)である請求
の範囲第5項記載のヒトモノクローナル抗体。
7.慢性B型肝炎患者の治療用の請求の範囲第1項記載の医薬組成物を調製する
ための、B型肝炎表面抗原に対するヒトモノクローナル抗体の使用。
8.慢性B型肝炎患者の治療用の医薬組成物を調製するためのヒトモノクローナ
ル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)およびMAb 9H9(ECACC 92121015)の使用。
9.モノクローナル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)の産生細胞、またはモノク
ローナル抗体MAb 9H9(ECACC 92121015)の産生細胞を培養し、そして場合によ
っては産生されたモノクローナル抗体を回収することを含んで成る、B型肝炎表
面抗原に対するヒトモノクローナル抗体の産生方法。
10.上記細胞が栄養培地中でインビトロ培養され、そして産生された抗体を培
養上清から回収する請求の範囲第9項記載の方法。
11.上記細胞が寄託した細胞系MAb 4-7B(ECACC 92121016)、または寄託した
細胞系MAb 9H9(ECACC 92121015)から派生するものであるか、あるいはネズミ
骨髄腫細胞系との融合による該寄託細胞系の任意の1つから派生するハイブリッ
ド細胞、またはモノクローナル抗体MAb 4-7B(ECACC 92121016)およびMAb 9H9
(ECACC 92121015)の任意の1つをコードする核酸でそれらを発現できるように
形質転換させた組換え細胞である、請求の範囲第9または第10項記載の方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
//(C12P 21/08
C12R 1:91)
(72)発明者 ストリカー, エリザベス・アントニア・
マリア
オランダ国エヌエル―1065ジーエヌ アム
ステルダム・イーデイーベルバンリークス
トラート36アイ
(72)発明者 アル, エンゲルベルトウス・ジヨゼフ・
マリア
オランダ国エヌエル―1531エヌエイチ ウ
オルマー・コレルガング12