JPH085094Y2 - 伸縮式ステアリングコラム装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この考案に係る伸縮式ステアリングコラム装置は、ス
テアリングシャフトを挿通したステアリングコラムの全
長を伸縮し、前記ステアリングシャフトの端部に設けた
ステアリングホイールの位置を、運転者の体格や運転姿
勢に合わせて調節する場合に利用する。

（従来の技術） 運転者の体格や運転姿勢に合わせてステアリングホイ
ールの位置を調節する為の装置として、伸縮式ステアリ
ングコラム装置（所謂テレスコピックステアリング装
置）が知られている。この様な伸縮式ステアリングコラ
ム装置の構造と作用とに就いて、本考案の実施例を示す
第１図に第２〜３図を加えて説明する。

調節作業を行なう際には、伸縮式ステアリングコラム
装置の調節レバー１を操作する事により、ロック装置を
解除する。そして、ロック解除状態で、アウターコラム
２とインナーコラム３とをテレスコープ状に組み合わせ
たステアリングコラム４の全長を伸縮させる。この結
果、やはり伸縮自在に構成された前記ステアリングシャ
フト５の一端部を、第１〜２図の矢印ａ方向に変位させ
れば、このステアリングシャフト５の一端部に固定され
たステアリングホイール（図示せず）の前後位置を調節
出来る。

即ち、伸縮式ステアリングコラム装置を構成するステ
アリングコラム４は、それぞれが円筒状に形成され、互
いにテレスコープ状に組み合わされたアウターコラム２
とインナーコラム３とから構成されている。この内のイ
ンナーコラム３の内側で、このインナーコラム３の前端
部と後端部（前後は自動車の進行方向に関して言う。本
明細書全体で同じ。）とには、１対の転がり軸受７、８
を設けている。そして、これら両転がり軸受７、８によ
り、前記インナーコラム３の内側に前記ステアリングシ
ャフト５の中間部を、回転のみ自在に支承している。こ
のステアリングシャフト５の中間部にはスプライン係合
部９を設け、前記ステアリングコラム４の伸縮に伴なっ
て、前記ステアリングシャフト５に伸縮する様にしてい
る。

又、前記アウターコラム２の中間部には、金属板をコ
字形に折り曲げ形成して成る、ロックブラケット10が固
定されている。即ち、このロックブラケット10は、中央
部に設けられた突っ張り板部11の両側を、同方向に直角
に折り曲げる事により、取付板部12、12としている。こ
のロックブラケット10をアウターコラム２に固定する場
合、各取付板部12、12に形成した円孔13、13にアウター
コラム２を挿通すると共に、各円孔13、13の周縁部とア
ウターコラム２の外周面とを溶接する。

この様に前記アウターコラム２の中間部にロックブラ
ケット10を固定した状態で、前記アウターコラム２の側
方（第１図の上方、第３図の右方）に突出する突っ張り
板部11の中央部には、ナット片14を固定している。

又、前記アウターコラム２の側面で、前記ナット片14
と対向する部分には、矩形の開口15を形成し、この開口
15の内側にロック部材16を、内外方向（第１図の上下方
向、第３図の左右方向）に亙る変位自在に嵌装してい
る。この様に開口15の内側に嵌装したロック部材16の内
側面16aは、円弧状の凹面とし、この内側面16aを、前記
インナーコラム３の外周面に当接させている。

更に、前記突っ張り板部11の中央部に固定のナット片
14に設けられた螺子孔17には、ロック螺子18を螺合させ
ている。このロック螺子18の内端面（第１図の下端面、
第３図の左端面）は前記ロック部材16の外側面に当接さ
せ、このロック螺子18の外端部には調節レバー１の基端
部を固定して、この調節レバー１を操作する事に伴なう
ロック螺子18の回転により、前記ロック部材16の内側面
16aを、インナーコラム３の外周面に押圧自在としてい
る。

又、前記ロック螺子18の内端面中央部に突設した凸部
20を、前記ロック部材16に形成した通孔19を通じて、こ
のロック部材16の内側面16aから突出させている。一
方、前記インナーコラム３の側面で、前記凸部20と対向
する部分には、軸方向（第１図の左右方向、第３図の表
裏方向）に亙って長孔21を形成している。そして、前記
凸部20の先端部で前記内側面16aから突出した部分を、
この長孔21に遊合させる事により、アウターコラム２に
対するインナーコラム３の軸方向の変位を許容しつつ、
このインナーコラム３の捩り方向の回転を阻止してい
る。

上述の様に構成される伸縮式ステアリングコラム装置
により、ステアリングコラム４の全長を調節する作業
は、次の様に行なう。

調整作業を行なうに就いては、先ず調節レバー１を操
作する事によりロック螺子18を（第３図の右方に）後退
させ、このロック螺子18によりロック部材16をインナー
コラム３の外周面に押圧していた力を解除し、インナー
コラム３がアウターコラム２の内側で変位自在な状態と
する。

この状態で、ステアリングシャフト５の端部に固定し
た、図示しなステアリングホイールを押し引きし、この
ステアリングホイールの前後位置を調節する。ステアリ
ングホイールを押し引きする事に伴なって、ステアリン
グシャフト５の途中に設けたスプライン係合部９が変位
すると共に、このステアリングシャフト５の外側に前後
１対の転がり軸受７、８を介して設けられたインナーコ
ラム３が、前後方向に変位する。

この結果、ステアリングホイールの前後位置が調節さ
れたならば、前記調節レバー１を操作する事により、前
記ロック螺子18を（第３図の左方に）前進させる。そし
て、このロック螺子18により、前記ロック部材16をイン
ナーコラム３の外周面に押圧する。この結果、前記ロッ
ク部材16の内側面16aとインナーコラム３の外周面との
間に強い摩擦力が働く様になり、前記インナーコラム３
がアウターコラム２の内側に、変位不能に支持される。
従って、前記ステアリングホイールが、調節後の位置に
支持されたままの状態となる。

（考案が解決しようとする課題） ところが、上述の様に構成され作用する。従来の伸縮
式ステアリングコラム装置の場合、次に述べる様な、解
決すべき課題が存在する。

即ち、曲げ方向の力に対するステアリングコラム４の
剛性を向上させる為には、このステアリングコラム４を
構成するアウターコラム２とインナーコラム３との嵌合
長さＬ（第１図）を長くする事が効果がある。

一方、インナーコラム３の内側にステアリングシャフ
ト５を回転自在に支承する為にこのインナーコラム３の
前端部と後端部とに設けた１対の転がり軸受７、８の間
隔は、あまり大きくする事は出来ない。例えば、ステア
リングホイール側である後側（第１図の右側）の転がり
軸受７を右方に移動する事は、この部分に方向指示器
等、各種スイッチが設けられる為、限度がある。

又、ステアリングホイールと反対側である前側（同図
の左側）の転がり軸受８を左方に移動させる事は、ステ
アリングコラム４の伸縮量を確保する必要上、やはり限
度がある。この理由に就して述べる。伸縮式ステアリン
グコラム装置は、第１〜２図に示す様に、ステアリング
コラム装置の比較的上部に設けられた横軸22を中心とし
て揺動する、所謂首振り式チルトステアリングと組み合
わせて使用される場合が多い。そして、この様な首振り
式チルトステアリングの場合、前記横軸22の延長線上に
自在継手23を設け、この自在継手23により、伸縮自在に
形成されたステアリングシャフト５の下端部を、下部ス
テアリングシャフト24の上端部と連結しなければならな
い。前記自在継手23設置部分の外径は、或る程度大きく
ならざるを得ない為、前記転がり軸受８を左方に移動さ
せる為、この転がり軸受８の内周側を支持したステアリ
ングシャフト５の筒部６を同図の左方に延長すると、こ
の筒部６の端面と自在継手23設置部分との距離ｌが小さ
くなって、それだけ前記ステアリングコラム４の伸縮量
が小さくなってしまう。

転がり軸受７、８の位置を変える事なく、アウターコ
ラム２とインナーコラム３との嵌合長さＬを長くするに
は、インナーコラム３の前端で、前記アウターコラム２
の奥に迄挿入されている部分を、前記転がり軸受８より
も張り出させる事が考えられる。ところが、単にインナ
ーコラム３の前端を転がり軸受８よりも張り出させただ
けの場合、インナーコラム３外周面とアウターコラム２
内周面との間に作用する摩擦力が過大になってしまう。

即ち、第４図に示す様に、単にインナーコラム３の一
端を転がり軸受８よりも張り出させた場合、この転がり
軸受８をインナーコラム３の内側に圧入するのに伴なっ
て、このインナーコラム３の端縁部が、同図に矢印ｂで
示す様に外側に押し広げられる。そして、この端縁部外
周面がアウターコラム２の内周面に強く押し付けられ
て、当該部分に作用する摩擦力が過大となり、ステアリ
ングコラム４を伸縮させる際に要する力が徒に大きくな
ってしまう。

転がり軸受８の押し込みに伴なって前記インナーコラ
ム３の端縁部が押し広げられるのを防止する為には、第
５図に示す様に、インナーコラム３の端縁部外周面を凹
ませる事で、この部分を薄肉にする事が考えられる。と
ころが、このようにした場合、アウターコラム２とイン
ナーコラム３との嵌合長さが短くなり、ステアリングコ
ラム４の曲げ剛性が不足する。

本考案の伸縮式ステアリングコラム装置は、上述の様
な不都合を解消するものである。

（課題を解決するための手段） 本考案の伸縮式ステアリングコラム装置は、前述した
従来の伸縮式ステアリングコラム装置と同様に、それぞ
れが円筒状に形成され、互いにテレスコープ状に組み合
わされたアウターコラム及びインナーコラムと、このイ
ンナーコラムの前端部と後端部との内側にそれぞれ設け
られた１対の転がり軸受と、この１対の転がり軸受によ
り前記インナーコラムの内側に回転自在に支承され、一
部に設けたスプライン係合部によって伸縮自在なステア
リングシャフトとを有する。

特に、本考案の伸縮式ステアリングコラム装置に於い
ては、前記インナーコラムの前端部で、前記アウターコ
ラムの奥に迄挿入されている部分を、前記１対の転がり
軸受の内の前方の転がり軸受よりも前方に張り出させて
いる。これと共に、前記インナーコラムの外周面の一部
で、前記前方の転がり軸受の周囲に位置する部分を、張
り出し部分を除き全周に亙って凹ませる事により、薄肉
としている。

（作用） 上述の様に構成される本考案の伸縮式ステアリングコ
ラム装置により、ステアリングコラムの長さ調節を行な
う際の作用自体は、前述した従来の伸縮式ステアリング
コラム装置の場合と同様である。

特に、本考案の伸縮式ステアリングコラム装置の場合
には、インナーコラム前端部で、転がり軸受よりも張り
出した部分の外周面が、アウターコラムの内周面と摺接
する。この為、１対の転がり軸受の位置を変える事な
く、インナーコラムとアウターコラムとから成るステア
リングコラムの曲げ剛性を向上させる事が出来る。

又、インナーコラムの張り出し側端部を支持する転が
り軸受の周囲部分は薄肉としいる為、この転がり軸受を
前記インナーコラムの内側に圧入した場合でも、圧入完
了後に於いては、張り出し部分の外径が広がる方向の力
が加わる事はなくなり、ステアリングコラムを伸縮させ
る為に要する力が徒に大きくなる事もない。

（実施例） 図１は本考案の実施例を示している。本考案の伸縮式
ステアリングコラム装置を構成するステアリングコラム
４は、従来の伸縮式ステアリングコラム装置と同様に、
それぞれが円筒状に形成されて互いにテレスコープ状に
組み合わされた、アウターコラム２とインナーコラム３
とから構成されている。そして、この内のインナーコラ
ム３の前端部と後端部との内側に、１対の転がり軸受
７、８をそれぞれ設けている。そして、これら両転がり
軸受７、８により、前記インナーコラム３の内側にステ
アリングシャフト５の中間部を、回転のみ自在に支承し
ている。このステアリングシャフト５の中間部には、ス
プライン係合部９を設けて、前記ステアリングコラム４
の伸縮に伴なって、前記ステアリングシャフト５も伸縮
する様にしている。

図示しないステアリングホイールと反対側である前側
に位置する、前記インナーコラム３の前端部（第１図の
左端部）で、前記アウターコラム２の奥に迄挿入されて
いる部分は、この部分を前記ステアリングシャフト５の
筒部６の外周面に支持している転がり軸受８よりも、前
側に張り出させている。そして、この張り出し部分3aの
外周面と前記アウターコラム２の内周面とが摺接する様
にしている。

更に、前記インナーコラム３の外周面の一部で、前記
転がり軸受８の周囲に位置する部分3bを、前記張り出し
部分3aを除き全周に亙って凹ませる事により、当該部分
3bを薄肉としている。

上述の様に構成される本考案の伸縮式ステアリングコ
ラム装置により、ステアリングコラム４の長さ調節を行
なう際の作用自体は、前述した従来の伸縮式ステアリン
グコラム装置の場合と同様である。

即ち、調節作業を行なう場合、調節レバー１を所定方
向に操作してロック螺子18を（第１図の上方に）後退さ
せ、ロック部材16をインナーコラム３の外周面に押圧し
ていた力を解除する。そして、インナーコラム３がアウ
ターコラム２の内側で変位自在な状態とする。この状態
で、ステアリングシャフト５の端部に固定した、図示し
ないステアリングホイールを押し引きして、このステア
リングホイールの前後位置を調節する。

ステアリングホイールを押し引きする事に伴なって、
ステアリングシャフト５の途中に設けたスプライン係合
部９が変位する。このスプライン係合部９の変位に伴な
って、このステアリングシャフト５の外側に前後１対の
転がり軸受け７、８を介して設けられたインナーコラム
３が、前後方向に変位する。この結果、ステアリングホ
イールの前後位置が調節される。ステアリングホイール
の前後位置を所望位置に調節したならば、前記調節レバ
ー１を逆方向に操作する事により、前記ロック螺子18を
（第１図の下方に）前進させる。そして、このロック螺
子18により、前記ロック部材16をインナーコラム３の外
周面に押圧する。

この結果、前記ロック部材16の内側面16aとインナー
コラム３の外周面との間に強い摩擦力が働く様になり、
前記インナーコラム３がアウターコラム２の内側に、変
位不能に支持される。この結果、前記ステアリングホイ
ールが、調節後の位置に支持されたままの状態となる。

更に、本考案の伸縮式ステアリングコラム装置の場
合、前記インナーコラム３の前端部で、前記転がり軸受
８よりも前方に張り出した張り出し部分3aの外周面が、
アウターコラム２の内周面と摺接する。この為、ステア
リングシャフト５の周囲にインナーコラム３を支持した
１対の転がり軸受７、８の位置を変える事なく、前記イ
ンナーコラム３と前記アウターコラム２とから成るステ
アリングコラム４の曲げ剛性を向上させる事が出来る。

又、前記インナーコラム３の前端部を支持する転がり
軸受８の周囲に位置する部分3bは薄肉としている為、こ
の転がり軸受８を前記インナーコラム２の内側に圧入し
た場合でも、圧入完了後に於いては、前記張り出し部分
3aに外径が広がる方向の力が加わる事はなくなる。従っ
て、ステアリングコラム４を伸縮させる為に要する力が
徒に大きくなる事もない。

即ち、転がり軸受８が圧入された部分3bの内径は弾性
的に広げられるが、この部分3bは薄肉で剛性が低い為、
前記転がり軸受８の圧入に伴なう変形の影響が、前記張
り出し部分3a迄影響する事は少ない。従って、この張り
出し部分3aの外周面と前記アウターコラム２の内周面と
の間に作用する摩擦力が過大となる事はない。尚、前記
張り出し部分3aの外径は、前記転がり軸受８の圧入時
に、一時的に大きくはなるが、転がり軸受８の通過後に
於いては、弾性的に元の径に戻る。

（考案の効果） 本考案の伸縮式ステアリングコラム装置は、以上に述
べた通り構成され作用する為、伸縮量を短くする等、本
来の機能を何ら損なう事なく、ステアリングコラムの曲
げ剛性を向上させる事が出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す半部横断平面図、第２図
は本考案の対象となる伸縮式ステアリングコラム装置の
１例を示す側面図、第３図は第２図の拡大Ａ−Ａ断面
図、第４〜５図は本考案に先立って考えられた構造の２
例を示す、第１図のＢ部に相当する断面図である。 1:調節レバー、2:アウターコラム、3:インナーコラム、
3a:張り出し部分、3b:部分、4:ステアリングコラム、5:
ステアリングシャフト、6:筒部、７、8:転がり軸受、9:
スプライン係合部、10:ロックブラケット、11:突っ張り
板部、12:取付板部、13:円孔、14:ナット片、15:開口、
16:ロック部材、16a:内側面、17:螺子孔、18:ロック螺
子、19:通孔、20:凸部、21:長孔、22:横軸、23:自在継
手、24:下部ステアリングシャフト。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】それぞれが円筒状に形成され、互いにテレ
   スコープ状に組み合わされたアウターコラム及びインナ
   ーコラムと、このインナーコラムの前端部と後端部との
   内側にそれぞれ設けられた１対の転がり軸受と、この１
   対の転がり軸受により前記インナーコラムの内側に回転
   自在に支承され、一部に設けたスプライン係合部によっ
   て伸縮自在なステアリングシャフトとを有する伸縮式ス
   テアリングコラム装置に於いて、前記インナーコラムの
   前端部で、前記アウターコラムの奥に迄挿入されている
   部分を、前記１対の転がり軸受の内の前方の転がり軸受
   よりも前方に張り出させると共に、前記インナーコラム
   の外周面の一部で、前記前方の転がり軸受の周囲に位置
   する部分を、張り出し部分を除き全周に亙って凹ませる
   事により、薄肉とした事を特徴とする伸縮式ステアリン
   グコラム装置。