JPH083698Y2 - コンクリートスラブ軌道部材 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はインサートを使用したコ
ンクリートスラブ軌道部材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の鋼製のインサート３としては、図
６に示すように、ねじ筒部３１と、同ねじ筒部のねじ孔
３２に適合する内径の透孔３３が穿設された座板部３４
を、前記ねじ孔３２と透孔３３とが連通するように、溶
接３５して構成されたものがある。更に、側面開口用の
インサートとしては図７や図８に示すものがあり、図７
に示すものは水平の雌ねじ筒３６にフック状のアンカー
３７が突設されており、図８に示すものは水平の雌ねじ
筒３８に直桿状のアンカー３９が突設されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】従来のインサートはね
じ筒部３１と座板部３４より構成されているので、材質
が均一になりにくい。しかもその製造に際しては、ねじ
筒部３１のねじ孔３２と座板部３４の透孔３３を同一中
心線上に位置するように溶接するが、この芯合わせ作業
が煩雑で、各透孔の中心がずれるとボルトの挿通が困
難、又は不可能となって、作業性を低下せしめる。

【０００４】また、溶接歪みも発生し、これがねじ部の
品質不良の原因となり、この場合もボルトの挿通が困難
となる。更に、ねじ孔３２の開口端部の保護筒嵌合部の
加工が面倒である。また前記インサートは重量が大きい
ので取扱が容易でなく、しかも座板部３４の外径がねじ
筒部３１の外径より大きいので、この座板部３４を配筋
体４９の隙間に挿通するのが困難で、鉄筋間隔が狭いと
挿通できなくなる。

【０００５】更にまた、前記インサートを板状鉄筋コン
クリート部材よりなるコンクリートスラブ軌道部材に適
用する場合、同軌道部材に埋設する種々の金具を型枠に
取付ける関係で、成形時には上下位置が逆になっている
場合が多い。この状態では、前記インサートの座板部３
４が上に位置し、ねじ筒部３１が下に位置することとな
る。この板状鉄筋コンクリート部材は、インサートにフ
ックボルトをねじ込み、クレーンで吊上げて型枠から引
き抜いて脱型される。

【０００６】型枠から板状鉄筋コンクリート部材を引き
抜く場合、座板部３４外面が鉄筋コンクリート部材の上
面に露出して、コンクリートとインサートの付着力が板
状部材型枠からの引抜力より小さいと、インサートだけ
抜け出す危険がある。また、座板部が前記板状部材に埋
設していても、板状部材にはねじ筒部３４によってイン
サートが外部に連通する透孔があるので、座板部に力が
加わると、この透孔周辺のコンクリート部分が破損して
インサートだけが抜け出てしまうことがある。

【０００７】また図７及び図８に示すインサートは２つ
の部材より構成され、製造製作面において難点がある。
本考案は前記従来技術の有する問題点に鑑みて提案され
たもので、その目的とする処は、コンクリート本体部材
に対する埋設作業性が向上され、コンクリートに対する
碇着効果が優れた構造の簡単なインサートを使用したコ
ンクリートスラブ軌道部材を提供する点にある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め本考案に係る鉄筋コンクリートスラブ軌道部材は、外
周面に円周方向及び母線方向に延びるリブが突設され、
内周面に雌ねじ部が設けられた筒体における同雌ねじ部
の一端部に、下底面が円錐状面に形成されたパイプ嵌合
部を設けてなるインサートを水平のコンクリートスラブ
に同スラブの厚さ方向に亘って埋設して構成されてい
る。

【０００９】

【作用】本考案に係るコンクリートスラブ軌道部材に埋
設されたインサートの主体を構成する筒体内周面の雌ね
じ部が筒体の全長に亘って設けられると、衝撃等によっ
て雌ねじ端部が損傷してボルトの締結が不可能になる惧
れがあるが、本考案によれば前記インサートにおいて
は、前記雌ねじ部の一端部内周面にパイプ嵌合部を設け
て、端部の雌ねじ部を除去したことによって、前記した
ような雌ねじ部端部の損傷によってボルト締結が不可能
になる惧れがなくなる。

【００１０】而して前記パイプ嵌合部の底面を円錐状面
としたことによって、前記インサートにパイプを挿入す
る場合、同パイプが前記円錐状面を案内として滑動し
て、前記パイプが円滑にインサートの嵌合部に嵌合さ
れ、同パイプと筒体の芯合わせが自動的にできる。この
パイプは前記したようにインサートの端部雌ねじ部の破
損を防止するとともに、コンクリート打設時におけるイ
ンサート内へのコンクリートの流入を防止するものであ
る。

【００１１】更に前記インサートにおける筒体外周面
に、円周方向及び母線方向に延びるリブが突設されてい
るので、インサートに螺着されたボルトを介して同イン
サートに加わる外力のうち、軸方向の力に対しては筒体
外周面の円周方向に延びるリブとコンクリートの接触面
で対抗し、回転力に対しては筒体外周面の母線方向に延
びるリブとコンクリートの接触面で対抗し、インサート
をコンクリートスラブ軌道部材に対する埋設位置に確固
と碇着する。

【００１２】本考案に係るコンクリートスラブ軌道部材
は、前記インサートがコンクリートスラブに、同スラブ
の厚さ方向に亘って埋設して構成されているので、前記
インサートを利用して設置用及び脱型用吊りボルト、ス
ラブのレベル調整ボルト等を貫挿し、前記スラブ軌道部
材の懸吊時において、前記したようにインサートがコン
クリート部と一体的に結合され、外力によってコンクリ
ート部が破壊したり、インサートの変位、変形が防止さ
れる他、同インサートを利用して軌条締結用部材その他
の付属部材の取付が容易に行なわれる。

【００１３】

【実施例】以下本考案を図示の実施例について説明す
る。１はインサートの主体を構成する鋼製筒体で、同筒
体１の外周面に、円周方向及び母線方向に延びるリブ２
及び３が突設され、内周面には雌ねじ部４が設けられて
いる。前記雌ねじ部４は筒体１の全長に亘って設けられ
ることなく、同筒体１における雌ねじ部４の端部内周面
に、下底面５が円錐面状に形成されたパイプ嵌合孔６が
設けられ、樹脂製のパイプ４１ａが嵌合されるようにな
っている。

【００１４】前記インサートにおける筒体１の下端には
樹脂製のパイプ４１ｂが嵌合され、同パイプ４１ｂの下
端にセットボルト４２の挿通孔４３が穿設されたボス４
４を嵌入し、前記筒体１における上端部のパイプ嵌合孔
６に樹脂製のパイプ４１ａを嵌合し、同パイプ４１ａの
上端に座板４５を当て、セットボルト４２を型枠４６
（図３参照）の底板４７のボルト孔４８に、前記座板４
５、パイプ４１ａ、筒体１、パイプ４１ｂ、及びボス４
４を挿通したのち先端ねじ部を螺着することによって、
複数のインサートを型枠の底板４７に仮止めする。

【００１５】予め鉄筋Ｔを所定形状に組立てた配筋体４
９を型枠４６内に、同型枠４６の底板４７に植立された
インサートを回避して吊り降ろし、しかるのちコンクリ
ート５０を打設する。（図４参照）この際、前記インサ
ートの筒体１の上端に嵌着された樹脂製のパイプ４１ａ
は打設コンクリート５０が筒体１内に流入するのを防止
し、一方、パイプ４１ｂはインサートを所定の高さに保
持する。前記打設コンクリートが固化し、所定の強度を
発現すると、セットボルト４２と座板４５を外し、筒体
１の雌ねじ部４にフックボルト（図示せず）を螺着し、
クレーンによって同フックボルトを介してコンクリート
固化体を型枠４６の外部に吊上げて脱型し、ボス４４を
除去し、かくして鉄筋コンクリート製の水平板状部材よ
りなるコンクリートスラブ軌道部材５１を成型する。

【００１６】而して図５に示す如く、同スラブ軌道部材
５１に同部材の厚さ方向に埋設定着されたインサートの
筒体１に調整ボルト５３′を挿貫し、同ボルト５３′を
螺回調整することによって、スラブ軌道部材５１のレベ
ル調整を行なう。（図５参照）なお前記パイプ４１ａ，
４１ｂは筒体１の外周面に嵌合するようにしてもよい。

【００１７】１１は水平のインサートの筒体で、同筒体
１１の外周面に円周方向に延びるリブ１２及び母線方向
に延びるリブが突設され、筒体１１の内周面には底部を
残して雌ねじ部１４が設けられ、前記水平のインサート
は筒体１１の端部がスラブ軌道部材５１に水平方向に埋
設、定着され、筒体１１の端部が部材５１の側面に開口
し、ボルト５３″によって例えば前記部材５１の側面と
基盤５４との間に吊り部材５５を介して型枠５６をセッ
トし、同型枠５６、スラブ軌道部材５１、基盤５４との
間に適宜手段でコンクリートを充填し、両者が一体化さ
れたスラブ軌道を施工する。

【００１８】また前記水平インサートは、同インサート
にフックボルトを螺装して、コンクリートスラブ軌道部
材をクレーンによって、起立したり、反転する場合にも
利用できる。

【００１９】

【考案の効果】本考案に係るコンクリートスラブ軌道部
材に埋設定着されたインサートは前記したように、イン
サート主体を構成する内周面に雌ねじ部を有する筒体の
外周面に円周方向及び母線方向に延びるリブが突設され
ていることによって、インサートに大きな引抜力、回転
が働いても、前記各リブとコンクリートとの間に働く付
着力による抵抗によってインサートが変位、変形した
り、インサートが埋設されたコンクリートスラブ軌道部
材より引抜かれることがない。

【００２０】また前記筒体の内周雌ねじ部は、筒体の全
長に亘って設けることなく、筒体の一端部内周面にパイ
プ嵌合部を設けたので、前記雌ねじ端部が衝撃等によっ
て破損する惧れがなく、また前記嵌合部の下底面が円錐
状面に形成されているので、同嵌合部にインサートに対
するコンクリート進入防止用パイプを嵌合する場合、前
記円錐状の下底面が同パイプの案内部材となり、同パイ
プが同下底面に沿って滑動し、前記嵌合部に円滑に嵌合
するものである。

【００２１】また前記インサートは全体が単一の部材で
構成され、且つ溶接部分がないので、予め組立てた配筋
体内への挿入も容易であり、コンクリートを打設した
際、前記従来の図６に示す如く座板付型のアンカーのよ
うに、同座板下側へのコンクリートの回りの不足を生起
することがなく、構造的に安定し、軸方向に大きな荷重
を受けても破断したりすることがなく、更に従来の図
７、図８に示す複数の部材よりなるインサートに比して
単一の部材でインサートが構成されるので、構造が簡単
である。

【００２２】また本考案に係るコンクリートスラブ軌道
部材に適用されるインサートは全体として単一の筒状体
より構成されているので、複雑な配筋体の鉄筋の間に挿
入するだけで、簡単にインサートのセットが行なわれる
ものである。本考案に係るコンクリートスラブ軌道部材
は前記のように構成されたインサートが、水平のコンク
リートスラブに同スラブの厚さ方向に亘って埋設して構
成されているので、前記したようにインサート外側の円
周方向並に母線方向のリブとコンクリートとの付着力が
大で、軸方向に大きな力がかかっても、各リブとコンク
リートとの間の付着力が分担してこれに抵抗し、インサ
ートがコンクリートスラブ軌道部材から引抜かれること
がなく、更にまた前記インサートによって各種取付ボル
ト、レベル調整ボルトが挿着されるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るコンクリートスラブ軌道部材に使
用されるインサートの一実施例の一部を欠截して示した
斜視図である。

【図２】インサートを型枠にセットする状態を説明する
分解斜視図である。

【図３】鉄筋組立体とインサートとの関係を示す概略斜
視図である。

【図４】コンクリート充填状態を示す一部切断側面図で
ある。

【図５】コンクリートスラブ軌道部材の使用状態を説明
する断面図である。

【図６】板状コンクリートの厚さ方向に配設される従来
のインサートの一部を欠截して示す斜視図である。

【図７】板状コンクリート部材の厚さ方向と直角方向に
配設される従来のインサートの一例の断面図である。

【図８】板状部材の厚さ方向と直角方向に配置される従
来のインサートの別の例の断面図である。

【符号の説明】

１ 筒体 ２ リブ ３ リブ ４ 雌ねじ部 ５ 下底面 ６ パイプ嵌合孔 Ｔ 鉄筋 １１ 筒体 １２ リブ １３ リブ １４ 雌ねじ部 ４１ 樹脂製パイプ ４２ セットボルト ４３ ボルト挿通孔 ４４ ボス ４５ 座板 ４６ 型枠 ４７ 底板 ４８ ボルト孔 ４９ 配筋体 ５０ コンクリート ５１ コンクリートスラブ軌道部材 ５２ 側板 ５３ 取付孔 ５３′ 調整ボルト ５４ 基盤 ５５ 吊り部材 ５６ 型枠

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平３−209007（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−25402（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭52−23566（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周面に円周方向及び母線方向に延びる
   リブが突設され、内周面に雌ねじ部が設けられた筒体に
   おける同雌ねじ部の一端部に、下底面が円錐状面に形成
   されたパイプ嵌合部を設けてなるインサートを水平のコ
   ンクリートスラブに同スラブの厚さ方向に亘って埋設し
   てなることを特徴とするコンクリートスラブ軌道部材。