JPH08337977A - 予め染色した皮革様原反シートを用いた皮革様シート製品の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 予め染色した皮革様原反シートを用いて、天
然皮革に近い柔らかさ、色調、裁断面、折れ皺等を有す
る皮革様シート製品の製造方法を提供する。 【構成】 予め染色した皮革様原反シートを裁断して所
定形状及び大きさの裁断シートとする。この裁断シート
を消泡剤を配合した染色液中で無緊張状態で染色処理を
行って染色シートを得る。次に、柔軟剤を添加して柔軟
処理を更に行い、水洗い、脱水、乾燥を経た後、皮革様
シート製品の形状に裁断して皮革様シート製品を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、予め染色した皮革様原
反シートから、靴、バッグ、鞄などの最終商品に使用す
る皮革様シート製品を得るための皮革様シート製品の製
造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、靴、バッグ、鞄などに使用さ
れる天然皮革製品は高価であるため、これに代わる人工
皮革の開発が盛んに行われている。人工皮革には、通
常、ポリウレタン、ナイロンなどの不織布にポリウレタ
ンエラストマーなどを含有させた多孔質の基体の一面
に、ポリウレタンなどのフィルム層を形成した皮革様シ
ートが使用されている。

【０００３】このような皮革様シートはそのままでは白
色であるため、皮革様シート製品の製造工程の何れかの
段階で染色を行わなければならない。この染色をどの段
階で行うかについては、皮革様原反シートを製造する際
に染色を行ってしまう方法、及び白色の皮革様シートを
最終の皮革様シート製品に近い形状まで先に裁断してし
まい、その後に染色する方法（例えば特公平３−４０１
５５号公報）の２通りが考えられる。

【０００４】これらの方法のうち、前者は連続的に製造
され、ロールなどの状態で供給される皮革様原反シート
の製造工程の一環として染色を行うことができるので、
大量の染色を低コストで行うことができるという利点を
有している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな予め染色した皮革様原反シートを裁断して得られる
皮革様シート製品は、緊張状態、即ち長い帯状のシート
の状態で揉まれることなく染色されるため、天然皮革の
ような柔らかさを有しておらず、色調も単調で天然皮革
のような自然の色むらが殆ど見られず、更に、表面の折
れ皺も天然皮革のようにはならない。。また、裁断面が
淡色で白っぽく見えるために重量感に欠けたものとな
る。

【０００６】裁断面が白っぽく見えるという欠点を補う
ために、その断面に染料を塗布することが考えられる。
しかし、断面の塗布を行うと、その断面近傍の皮革表面
の色調が不自然となり、皮革として見た場合に違和感が
生じる。また、汚れたような外観となり、風合いの良い
皮革様シート製品を得ることができないという問題点が
ある。

【０００７】本発明は、このような従来技術の問題点を
解決するものであり、本発明の目的は、予め染色した皮
革様原反シートを用いて、天然皮革に近い柔らかさ、折
れ皺、色調、裁断面等を有する皮革様シート製品の製造
方法を提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の皮革様シート製
品の製造方法は、予め染色した皮革様原反シートを裁断
して所定形状及び大きさの裁断シートを得、該裁断シー
トを染色液中で無緊張状態で染色処理を行って染色シー
トを得た後、該染色シートを皮革様シート製品の形状に
裁断することを特徴とする。

【０００９】また、前記染色液が消泡剤を含有している
構成としてもよく、更に、前記染色処理の後、前記染色
液に柔軟剤を添加して柔軟処理を更に行う構成としても
よい。

【００１０】

【作用】本発明の皮革様シート製品の製造方法では、予
め染色した皮革様原反シートが使用される。この皮革様
原反シートは、例えば正方形、長方形、三角、丸など、
最終の皮革様シート製品の形状に合わせた形状及び大き
さの裁断シートに裁断される。即ち、裁断シートは、最
終の皮革様シート製品が１枚又は数枚とれる形状及び大
きさを有している。

【００１１】次に、この裁断シートは染色液中で無緊張
状態で染色処理される。ここで、無緊張状態とは、皮革
様原反シートの染色の場合のように裁断シートの端部を
固定することなく自由な状態で、という意味である。ま
た、染色処理は染色槽、タンブラーなどを用いて振と
う、攪拌、或いは混合しながら行われる。このような染
色処理により、裁断シートは機械的な作用を受けてある
程度揉まれるため、十分に染料が裁断シートに染みわた
ると共に、天然皮革様の皺と色むらが発生する。

【００１２】このような染色処理を行ったものが染色シ
ートである。

【００１３】次に、染色シートは更に所定の形状に裁断
され、皮革様シート製品が得られる。この皮革様シート
製品は、更に縫製などの工程を経て靴などの最終商品と
なる。

【００１４】本発明の皮革様シート製品の製造方法によ
れば、予め染色した皮革様原反シートが使用されるの
で、従来より染色温度、染色時間などの条件を比較的緩
慢にすることができる。また、無緊張状態で染色が行わ
れるので、天然皮革に柔らかさと皺とを得ることができ
ると共に、色むらも天然のものに近くなる。

【００１５】上記に於いては、染色組成物として従来よ
り公知のものを使用することができるが、従来の染色液
を使用すると発生する泡によって得られる染色シートの
風合いが損なわれる場合がある。即ち、泡が発生すると
天然皮革のような色むらとはならない場合がある。本発
明ではこの問題を解決するために、染色液に消泡剤が添
加される。消泡剤の添加により、天然皮革に近い色む
ら、風合いが得られる。

【００１６】また、本発明によれば、上述のように染色
処理を比較的緩慢な条件で行うことができるので、染色
シートに機械的な作用が十分に加えられず、天然皮革の
ように柔らかな風合いが得られない場合がある。本発明
では、このような場合、染色処理の後に柔軟処理が行わ
れる。この柔軟処理は、上述の染色処理が終了した後、
柔軟剤を用いて更に振とう、攪拌、或いは混合すること
により行われる。この柔軟処理により、染色処理の条件
が緩慢であっても、天然皮革に近い柔らかな風合いを得
ることができる。

【００１７】

【実施例】本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。

【００１８】（実施例１）本実施例の皮革様シート製品
の製造方法では、予め染色した皮革様原反シートを用い
た。この皮革様原反シートを最終の皮革様シート製品の
形状に合わせて、例えば四角又は三角に裁断することに
より裁断シートを得た。次に、この裁断シートをドラム
式染色機の浴槽に入れ、更に１０リットルの水を加え
た。浴槽内の温度を６０℃まで上げ、次に表１に示す組
成で配合したチョコレートブラウンの染料組成物を投入
した。

【００１９】

【表１】

【００２０】本実施例では、この組成物の投入と同時
に、表１に示すノニオン性シリコン系消泡剤（商品名
ＴＫ−１ＡＦ、高松油脂製）を投入した。次に、染色機
の浴槽の攪拌を約１０分間行うことにより、染色処理を
施した。この染色処理は前述のように無緊張状態、即
ち、皮革様原反シートの染色の場合のように裁断シート
の端部を固定することなく自由な状態で行われる。

【００２１】上記染色処理の後、染色処理の終了後、表
１のノニオン性反応型シリコン柔軟剤（商品名 ハイソ
フターＫＲ−５０、明成化学工業製）を添加して更に攪
拌しこれを裁断シートに浸透させることにより、柔軟処
理を行った。この柔軟処理の時間は、約３分である。次
に、柔軟処理後の裁断シートを水で洗浄し、脱水を行
い、更に乾燥させることにより染色シートを得、更にこ
の染色シートを所定の形状に裁断し、最終の皮革様シー
ト製品を得た。

【００２２】本実施例於ける染色条件は、例えば前述の
特公平３−４０１５５号に記載の染色条件（染色温度及
び染色時間）に比較して緩慢であるにも関わらず、得ら
れる皮革様シート製品は、天然皮革に近い柔らかさ及び
色むらを有し、裁断面も天然皮革に非常に近い色調とな
り、更に折れ皺も天然皮革に近いものであった。

【００２３】（実施例２〜４）次に、表２〜表４の染料
組成物、消泡剤及び柔軟剤を用い、上記と同様にして、
ブラウン、スギブラウン、キャメル（マスタード）の実
施例２〜４の皮革様シート製品を製造した。

【００２４】

【表２】

【００２５】

【表３】

【００２６】

【表４】

【００２７】実施例２〜４に於いても、比較的緩慢な染
色条件であるにも関わらず、得られる皮革様シート製品
は、天然皮革に近い柔らかさ及び色むらを有し、裁断面
も天然皮革に非常に近い色調となり、更に折れ皺も天然
皮革に近いものであった。

【００２８】なお、上記各実施例では、消泡剤としてノ
ニオン性シリコン系のものを使用したが、これに限定さ
れるものではなく、他のシリコン系その他の消泡剤を使
用することができる。また、上記各実施例では、柔軟剤
としてノニオン性反応型シリコン系のものを使用した
が、これに限定されるものではなく、カチオン系のもの
や、他のシリコン系その他の柔軟剤を使用することがで
きる。

【００２９】

【発明の効果】本発明の皮革様シート製品の製造方法に
よれば、予め染色した皮革様原反シートを裁断したシー
トを無緊張状態で染色処理を行って染色シートを得、こ
れを皮革様シート製品の形状に裁断するので、得られる
皮革様シート製品は天然皮革に非常に近い柔らかさ及び
色むらを有し、また、裁断面も天然皮革に非常に近い色
調となる。また、消泡剤を使用した構成では泡による風
合いの低下もなく、天然皮革に非常に近い色むらを有す
る皮革様シート製品を得ることができる。更に、柔軟剤
を使用した構成では、染色温度、染色時間等の染色条件
が緩慢であっても、天然皮革に近い折れ皺と柔らかさを
有する皮革様シート製品を得ることができる。

【００３０】また、本発明の皮革様シート製品の製造方
法によれば、最終の皮革様シート製品の形状に裁断する
前の染色シートの状態で在庫しておくことができるの
で、靴、バッグ、鞄などの最終商品の急なデザイン変更
などにも対処できる。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 予め染色した皮革様原反シートを裁断し
   て所定形状及び大きさの裁断シートを得、該裁断シート
   を染色液中で無緊張状態で染色処理を行って染色シート
   を得た後、該染色シートを皮革様シート製品の形状に裁
   断することを特徴とする皮革様シート製品の製造方法。
2. 【請求項２】 前記染色液が消泡剤を含有していること
   を特徴とする請求項１記載の皮革様シート製品の製造方
   法。
3. 【請求項３】 前記染色処理の後、前記染色液に柔軟剤
   を添加して柔軟処理を更に行うことを特徴とする請求項
   １又は２記載の皮革様シート製品の製造方法。