JPH08302032A - 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ - Google Patents

炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ

Info

Publication number
JPH08302032A
JPH08302032A JP12922195A JP12922195A JPH08302032A JP H08302032 A JPH08302032 A JP H08302032A JP 12922195 A JP12922195 A JP 12922195A JP 12922195 A JP12922195 A JP 12922195A JP H08302032 A JPH08302032 A JP H08302032A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fibers
carbon
composite web
fiber
phenolic resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP12922195A
Other languages
English (en)
Inventor
Naoto Yoshinaga
直人 吉永
Yoshiaki Hirai
良明 平井
Yoshiaki Kubota
義昭 久保田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanebo Ltd
Original Assignee
Kanebo Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanebo Ltd filed Critical Kanebo Ltd
Priority to JP12922195A priority Critical patent/JPH08302032A/ja
Publication of JPH08302032A publication Critical patent/JPH08302032A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】クラックやデラミネーション、あるいは炭素質
の未充填部分といった欠陥を有しない炭素繊維強化炭素
複合材料を製造するのに好適な、炭素繊維と粉末状熱硬
化性フェノール系樹脂からなる複合ウェブを提供する。 【構成】繊維長20〜100mmの炭素繊維と粉末状熱
硬化性フェノール系樹脂とからなる。構成繊維本数が2
〜1000本の炭素繊維束を、炭素繊維全体に対して1
0〜40重量%の割合で含む。170℃の熱板上で繊維
の配向面に対して垂直に圧縮して炭素繊維密度0.6g
/cm3 とするのに必要な成形圧力が20〜100kg
f/cm2 である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維と熱硬化性樹脂と
からなる複合ウェブに係り、更に詳しくは炭素繊維強化
炭素複合材料用のプリフォームに好適な、炭素繊維と粉
末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなる複合ウェブに
関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維強化炭素複合材料(以下、「C
/C複合材料」という)は、軽量かつ高強度であり、優
れた耐熱性を有するため、ロケットのノーズコーンや、
車輌のブレーキ材料あるいは航空機等に極めて好適なも
のである。C/C複合材料は、通常、炭素繊維と熱硬化
性樹脂バインダーとからなる複合ウェブを成形し、この
複合ウェブの空孔を炭素質で充填、緻密化することによ
り製造されている。複合ウェブの空孔を炭素質で充填緻
密化する方法としては、樹脂の含浸と炭化とを繰り返す
方法、あるいはCVD法等が一般的に知られている。
【0003】ここで用いられる炭素繊維は、一般的には
2000〜15000本程度の繊維束として製造されて
おり、このままでは分散性が悪く均一な複合ウェブを得
ることができないため、複合ウェブを製造するに際して
は、炭素繊維は繊維束を予め解繊しておく必要がある。
【0004】従来、C/C複合材料を得るための複合ウ
ェブを製造する方法としては、 特開平5−345671
号公報に開示された方法が知られている。 この方法は炭
素繊維の繊維束の解繊度合いを制御することにより、所
望の摩擦係数を有するC/C複合材料を得ることができ
るというものである。そして、具体的な解繊方法とし
て、例えば一般的な不織布の製造に用いられるランダム
ウェッバーやパルプ叩解機による方法、あるいは水中で
の湿式による方法等が挙げられている。
【0005】しかしながら、ランダムウェッバーやパル
プ叩解機によって解繊した場合は、一般に繊維束が一様
に解繊されていくのではなく、十分に解繊された単繊維
状の繊維ないし構成繊維本数の少ない繊維束と、あまり
解繊されず構成繊維本数の極めて多い繊維束とに分布の
ピークを持つように解繊されることになる。 この様に解
繊度合いに斑のある複合ウェブから得られるC/C複合
材料は、解繊度が高く圧縮に対する戻り圧力(スプリン
グバック力)の大きい部分と、解繊度が低くスプリング
バック力の小さな部分とが不均一に存在するため、層間
剥離(デラミネーション)やクラックを生じ易いという
問題点がある。
【0006】また、水中で十分に攪拌し繊維束を解繊さ
せる方法は、解繊が十分に進行した状態でも、依然とし
て構成本数の多い繊維束が残るため、これを更に解繊さ
せようと撹拌を続けたり、撹拌力を上げたりすると、単
繊維状にまで完全に解繊された繊維が未解繊束を包み込
む形でフロックを形成し、これが未解繊束の解繊を阻止
するため、この繊維フロックが地合の低下を招くといっ
た問題点がある。
【0007】また、強化繊維と粉末状樹脂とからなる複
合ウェブを製造する方法としては、特開平6−9943
1号公報に開示された方法が知られている。この方法
は、繊維と樹脂粉末とを特定の粘度の粘稠性液体中で十
分攪拌することにより強化繊維を解繊すると共に、粉末
状樹脂を均一に分散せしめて抄造し、複合ウェブを製造
するものである。
【0008】しかしながら、この方法を炭素繊維と粉末
状フェノール系樹脂とからなる複合ウェブの製造に適用
した場合、十分に解繊を施した解繊度の高い複合ウェブ
は、繊維間の反発力が大きく、スプリングバック力も大
きいものとなるため、C/C複合材料を製造するに際
し、大きな成形圧力を必要とする。また、得られる複合
ウェブの成形体を炭化した場合、バインダー樹脂の炭化
や結着力の低下に伴い、成形体が膨張し且つこの膨張が
構造体中で不均一に起こるため、クラックや層間剥離
(デラミネーション)を起こし易いという問題点があっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記問
題点に鑑み鋭意研究した結果、炭素繊維と粉末状熱硬化
性フェノール系樹脂とからなる複合ウェブにおいて、炭
素繊維を特定の解繊状態とすることにより、上記問題点
が解消されることを見出し本発明を完成したものであ
る。すなわち、本発明の目的は、クラックやデラミネー
ション、あるいは炭素質の未充填部分といった欠陥を有
しないC/C複合材料を製造するのに好適な炭素繊維と
粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなる複合ウェブ
を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の複合ウェブは、
繊維長20〜100mmの炭素繊維と粉末状熱硬化性フ
ェノール系樹脂とからなる複合ウェブにおいて、前記炭
素繊維は単繊維状のものと繊維束状のものとからなり、
且つ構成繊維本数が2〜1000本の炭素繊維束の割合
が炭素繊維全重量に対して10〜40重量%であり、前
記複合ウェブを170℃の熱板上で繊維の配向面に対し
て垂直に圧縮して炭素繊維密度0.6g/cm3 とする
のに必要とされる所定成形圧が20〜100kgf/c
2 であることを特徴とするものである。
【0011】本発明に用いる炭素繊維は、例えばピッチ
系、PAN系、レーヨン系等の炭素繊維を挙げることが
できるが、特にこれらに限定されるものではない。ま
た、炭素繊維の繊維長は、20〜100mm、好ましく
は30〜70mmである。繊維長が100mmを超える
場合は均一に分散させるのが容易でなく、また繊維長が
20mm未満の場合はスプリングバック力が大き過ぎて
成形性が悪くなる。
【0012】本発明に用いられる粉末状熱硬化性フェノ
ール系樹脂とは、アルデヒド類とフェノール類とから合
成される、熱硬化性の粉末状乃至粒状の樹脂である。C
/C複合材料を製造するプリフォームとして用いる際に
は、残炭率の高い樹脂を用いるのが炭素質の充填回数を
減らすことができ、生産効率のよい点で好ましい。
【0013】上記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とし
ては、レゾール樹脂のほか例えば特公昭62−3021
1号公報あるいは特公昭62−30213号公報で提案
され、商品名「ベルパール」(鐘紡製)として市販され
ている特殊フェノール樹脂を残炭率も高く好ましいもの
として挙げることができるが、特にこれに限定されるも
のではない。
【0014】上記特殊フェノール樹脂は、粒径が0.1
〜100μmで且つその50重量%が100タイラーメ
ッシュの篩を通過し得る大きさであり、実質的に非水溶
性のものである。ここで、実質的に非水溶性とは、大部
分が水に不溶であって、また水中で軟化あるいは表面の
べたつき等を起こさず、分散が可能であることを言う。
【0015】上記の100タイラーメッシュの篩通過量
T(重量%)とは、乾燥試料を必要に応じ手で十分に揉
みほぐした後、その約10gを取り、これを精秤し、5
分間かけて少しずつ100タイラーメッシュの篩い振と
う機(篩の寸法:200mmφ、振とう条件:200r
pm)に投入し、試料投入完了後さらに10分間振とう
させ、次式にて求めた値である。 T(重量%)=Wb /Wa ×100 ここで、Wa は投入量(g)、Wb は100タイラーメ
ッシュ篩を通過した量(g)である。
【0016】本発明の複合ウェブは、上記炭素繊維と上
記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなるものであ
り、本発明で定義する所定成形圧が20〜100kgf
/cm2 のものである。本発明で定義する所定成形圧と
は、複合ウェブにおける炭素繊維束の平均的な解繊度合
いを示す指標となるものであり、解繊度合いの高いもの
ほど大きく、低いものほど小さくなるものである。かか
る本発明の所定成形圧は、バインダーである粉末状熱硬
化性フェノール系樹脂による影響を排除するため、該粉
末状熱硬化性フェノール系樹脂が融解する温度である1
70℃の熱板を、繊維の配向面に対して垂直方向から圧
縮した場合、炭素繊維密度を0.6g/cm3 とするの
に必要とされる成形圧力で表されるものである。
【0017】本発明においては、上記本発明で定義する
所定成形圧が20kgf/cm2 未満では全体としての
解繊が不十分であり、比較的太い繊維束の重量比率が大
きくなり、繊維の分散が悪いため、強度上の欠陥を生
じ、得られるC/C複合材料は強度の弱いものとなる。
【0018】一方、上記所定成形圧が100kgf/c
2 を超える場合は、解繊度が高いためスプリングバッ
ク力が高くなり、このような複合ウェブを用いてC/C
複合材料を定法に従って製造したときは、不均一な膨張
が起こり易く、応力集中やデラミネーション、クラック
などを生じ易い。
【0019】本発明の複合ウェブは、全体としての炭素
繊維の解繊度合いが、上記所定成形圧が上述の数値範囲
で示される如きものである。しかし、本発明者らは単に
全体的な解繊度合いを限定しただけでは不十分であり、
個々の繊維束の構成繊維本数のがどのように分布してい
るか、特に構成繊維本数が2〜1000本の炭素繊維束
の割合が重要であることを見出したものである。即ち、
本発明の複合ウェブは、構成繊維本数が2〜1000本
の炭素繊維束の割合が、炭素繊維全体の重量に対し10
〜40重量%の割合で分散含有するものである。また、
好ましくは単繊維状にまで解繊された炭素繊維の割合
が、炭素繊維全体の重量に対し20〜50重量%のもの
である。
【0020】構成繊維本数が1000本を超える繊維束
の場合は、繊維束内部へのバインダー樹脂の含浸性も悪
く、さらに繊維束の界面が応力集中を引き起こし易いも
のとなる。一方、構成繊維本数が1000本以下の比較
的細い繊維束では、繊維束内部へのバインダー樹脂の含
浸性も良好であり、更に繊維束自体が賦型時にも変形し
て応力集中を生じにくいために、クラックやデラミネー
ションといった欠点を発生することがない。また、構成
繊維本数が2〜1000本の繊維束を多く有する複合ウ
ェブでは、単繊維状の繊維を主体とするものに比してよ
り低圧で成形できるという利点を有するものである。
【0021】なお本発明において、構成繊維本数が2〜
1000本の繊維束の割合が10重量%未満あるいは4
0重量%を超える場合には、得られるC/C複合材料は
クラックやデラミネーションが発生し易いものとなる。
【0022】本発明において単繊維状の炭素繊維の割
合、及び構成繊維本数が2〜1000本の炭素繊維束の
割合は、次のようにして測定される。即ち、炭素繊維と
粉末状熱硬化性フェノール系樹脂の重量比がA:Bとな
るようにして得られた複合ウェブから、8cm×8c
m、目付け約300g/m2 になるように試料片を切り
出し、この試料片の重量C(g)を精秤する。次にこの
試料片より、単繊維状の炭素繊維と繊維束を形成してい
る炭素繊維束とをより分け、炭素繊維束を注意深く全て
取り出す。なお本発明においては、構成繊維数が数本の
繊維束の場合、先端部分が単繊維状に解繊して部分的に
繊維束を形成しているものは単繊維状のものとして取り
扱うこととする。
【0023】次に、取り出された繊維束を、試料片の切
り出し操作により切断された繊維束と、切り出し部位に
はかかっていない繊維束とに分別する。前者については
その合計重量D(g)を精秤する。後者については得ら
れた繊維束の個々の長さE(cm)と重量F(g)とを
測定する。また後者の合計重量G(g)を算出する。炭
素繊維中に占める単繊維状の炭素繊維の割合P(重量
%)は次の式により算出される。
【数1】
【0024】また、構成繊維本数が2〜1000本の繊
維束の割合は、各繊維束の構成繊維本数を次のようにし
て求め算出される。即ち、先ず上述の切り出し操作によ
り切断されていない繊維束の個々の構成本数Q(本)を
次の式により求める。
【数2】 ここで、Rは炭素繊維の単繊維の横断面半径(μ)、ρ
は炭素繊維の密度(g/cm3 )、πは円周率である。
【0025】得られた個々の繊維束の構成本数から、ヒ
ストグラムを作成し、1000本以下の単繊維から構成
されている繊維束の合計重量H(g)を求める。該繊維
束の割合S(重量%)は次の式により算出される。
【数3】
【0026】本発明の複合ウェブは上記炭素繊維と上記
粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とを用い、例えば次の
ような工程で製造することができる。即ち、(イ)粉末
状熱硬化性フェノール系樹脂を分散媒に分散し、樹脂分
散液を得る工程、(ロ)炭素繊維を解繊すると共に、一
般の抄紙法と同様の方法で分散媒に分散し、繊維分散液
を得る工程、(ハ)上記樹脂分散液と上記繊維分散液と
を混合して、すき網に注ぎ脱液する工程、の3工程であ
る。
【0027】上記(イ)の工程において、粉末状熱硬化
性フェノール系樹脂は、そのまま分散して用いてもよい
が、粒径の小さな樹脂の場合は粉末状樹脂を凝集させる
のが好ましい。粉末状熱硬化性フェノール系樹脂を凝集
せしめる方法は特に限定されるものでなく、その目的に
応じ適宜選定すればよいが、例えば凝集剤として界面活
性剤を用いる方法、あるいは界面活性剤にアニオン性及
びカチオン性の水溶性高分子を併用するデュアルシステ
ムなどの方法を挙げることができる。
【0028】ここで粉末状熱硬化性フェノール系樹脂を
凝集せしめる界面活性剤としては、例えばポリエチレン
グリコール型ノニオン系界面活性剤が挙げられる。ポリ
エチレングリコール型ノニオン系界面活性剤とは、界面
活性作用を有する非イオン性分子である。このような界
面活性剤としては、例えばポリエチレングリコールラウ
リルアルコール付加物等のポリエチレングリコールの高
級アルコール付加物、ポリエチレングリコールノニルフ
ェニルエーテル,ポリエチレングリコールオクチルフェ
ノール等のポリエチレングリコールの長鎖アルキル置換
フェノール付加物、ポリエチレングリコールステアリン
酸付加物等のポリエチレングリコールエステル型ノニオ
ン系界面活性剤、あるいはポリエチレングリコール/ポ
リプロピレングリコールの共重合体等を挙げることがで
きる。特にポリエチレングリコール/ポリプロピレング
リコールの共重合体は、発泡性が小さく、凝集力が強い
ため好ましいものである。
【0029】上記ポリエチレングリコール型ノニオン系
界面活性剤は、前記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂同
士を凝集せしめる効果を奏するものである。また、上記
ポリエチレングリコール型ノニオン系界面活性剤を、前
記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂を分散する液体中に
添加する量は、界面活性剤の種類、水温及びその目的に
応じ適宜選定すればよいが、通常0.01〜1重量%で
ある。過剰に添加しても、その効果は飽和することにな
る。
【0030】また、上述のような界面活性剤を用いた場
合は、分散液が発泡すること無く、繊維が浮上分離する
といった不都合も起こらないため、地合の良好な複合ウ
ェブを容易に得ることができる。更に、繊維へ樹脂を固
着せしめるに際し結合剤を用いる必要がないため、粉末
状熱硬化性フェノール系樹脂の特性を損なうこともな
い。また、濾液も非発泡性であるために排水処理時の泡
による阻害を未然に防ぐことができる。なお、粉末状熱
硬化性フェノール系樹脂を凝集させる場合は、例えば水
1リットルに対して粉末状熱硬化性フェノール系樹脂を
10〜100g程度の割合で投入するのが良好である。
【0031】ここで添加する粉末状熱硬化性フェノール
系樹脂の量は、その目的に応じ適宜選定すればよいが、
炭素繊維/粉末状熱硬化性フェノール系樹脂の重量比
は、好ましくは10/90〜98/2であり、更に好ま
しくは20/80〜80/20である。
【0032】上記(ロ)の炭素繊維を分散せしめる工程
においては、通常の抄紙法と同様にして炭素繊維を水中
に分散せしめるのがよい。液体中に投入する炭素繊維
は、繊維長が長くなるほど絡まり易くなり、且つ分散液
の粘度も高くなる傾向にある。そのため、例えば長さ5
0mm程度の炭素繊維を用いる場合の投入量は、分散媒
の重量に対し好ましくは1重量%程度までである。また
繊維濃度が高くなると、単繊維状の繊維がフロックを生
じて未解繊繊維束を包み込むため、繊維束の繊維本数の
分布が不均一になり易いので、この点に注意する必要が
ある。
【0033】また、炭素繊維は分散液中で解繊されるの
が好適であり、分散液中で脱糊剤処理してもよいが、予
め焼却、精練、溶媒洗浄等の適宜な方法で脱糊剤処理を
施したものを用いてもよい。
【0034】上記製造工程において炭素繊維の解繊度合
い、即ち各繊維束の構成繊維本数の分布状態の調節は、
例えば解繊方法、撹拌機の撹拌速度及び撹拌時間、用い
る炭素繊維束に付着しているバインダーの種類、分散液
中の炭素繊維の濃度、分散液中の分散助剤の種類及び添
加量等を制御することで行うことができる。
【0035】本発明に係る解繊状態を得るには、解繊度
合いを制御できる程度に穏やかに撹拌しうる原理のもの
で、かつ撹拌力が均一に繊維分散液に伝えられるもので
あり、本発明の解繊状態を実現できる方法であれば特に
限定されないが、例えば傾胴型ミキサー、回転ドラムミ
キサー、オムニミキサー、強制練りミキサー等が好適で
ある。繊維長に比して細い撹拌羽根や回転部を有する撹
拌機の場合は、該繊維が分散中に絡み付き、良好な解繊
が行われなかったり、連続運転ができないといった場合
があるので、この点に注意する必要がある。
【0036】撹拌羽根を持たない特殊撹拌機としては、
具体的にはオムニミキサー(千代田工業(株)製)を挙
げることができる。この撹拌機によれば、撹拌力が撹拌
機底面全体で伝えられ、可動な突起物も無いため、長繊
維の分散も互いに絡むことなく良好に行われる。
【0037】例えば用いる炭素繊維として、水溶性高分
子バインダーで結着した炭素繊維チョップドストランド
を用いた場合、炭素繊維の解繊度が高くなると同時に、
単繊維状の繊維の割合も高くなる傾向にある。これは分
散媒中で速やかに単繊維状にまで解繊した繊維表面にバ
インダーの水溶性高分子が局在し再凝集の障壁となるた
めである。
【0038】例えば分散液中の炭素繊維の濃度を高くす
ることにより、炭素繊維の解繊度は低くなり、炭素繊維
束の分布において単繊維及び1000本を超える単繊維
から構成されるの繊維束の割合が高くなる傾向にある。
これは、撹拌により解繊した単繊維が、分散媒中の繊維
濃度が高いためにフロックを生じ、これが1000本以
上の単繊維からなる比較的大きな繊維束を包み込んでし
まい、該繊維束はそれ以上解繊が進まなくなるからであ
る。
【0039】また、例えば撹拌機の撹拌スピードを遅く
すれば、炭素繊維の解繊度は低下するが、同時に炭素繊
維束の分布状態は構成繊維本数が2〜1000本の繊維
束の重量比率が高くなる。これは大きな撹拌スピードで
あれば、繊維束の構成本数に関わらず水媒体の剪断力に
より解繊が進行するのに対し、小さな撹拌スピードでは
相対的に柔らかい1000本以下の単繊維から構成され
る繊維束はそれ以上に解繊され難いためである。
【0040】また例えば撹拌時間を長くすることによ
り、炭素繊維の解繊度が高くなるだけでなく、構成繊維
本数が2〜1000本の繊維束の割合が高くなる傾向に
ある。これは長時間の撹拌により、構成繊維本数が10
00本を超える繊維束が解繊されるが、同時に生成した
単繊維状の繊維も長時間の撹拌により物理的に絡まり合
いはじめ、再凝集を起こすためである。
【0041】上記炭素繊維分散液中には、炭素繊維の分
散助剤としてポリエチレンオキサイドやポリアクリルア
ミドなどの水溶性高分子や界面活性剤などを添加するこ
ともできる。更に上記炭素繊維分散液中には必要に応じ
て、アルミナ、シリカ、タルク、カーボンブラック、黒
鉛、二硫化モリブデン等の添加物を加えることもでき
る。
【0042】なお、本発明者らは研究の結果、例えば分
散助剤である水溶性高分子粘剤として、ポリエチレング
リコールを用いれば、単繊維状の繊維と構成繊維本数が
1000本を超える繊維束の割合が増加するが、ポリア
クリルアミドを用いれば、逆に単繊維状の繊維と構成繊
維本数が1000本を超える繊維束の割合が低下する傾
向にあることを見出した。
【0043】即ち、これらの炭素繊維分散条件を適宜組
み合わせて調整することにより、本発明の複合ウェブの
有する全体的な解繊度合いと、個々の炭素繊維束の量的
な分布状態とを合わせ持ったものを製造することが出来
るのである。
【0044】上述の(ハ)の工程では(イ)の工程で得
られた粉末状熱硬化性フェノール系樹脂の分散液と、
(ロ)の工程で得られた炭素繊維の分散液とを混合・撹
拌し、得られる混合分散液を、例えば特開昭60−15
8227号公報に記載されているような一般的に行われ
ている抄造法、即ちすき網上に注ぎ堆積せしめたのち脱
液することにより、炭素繊維と粉末状熱硬化性フェノー
ル系樹脂とからなる複合ウェブを得ることができる。
【0045】
【発明の効果】本発明の複合ウェブは、特定の解繊度合
いの炭素繊維と粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とから
構成されているため、適度なスプリングバック力を有
し、容易に成形加工性することができる。
【0046】本発明の複合ウェブを用いれば、C/C複
合材料のマトリクス成分の含浸が良好であるため、C/
C複合材料を製造する工程を大きく簡素化することが可
能となる。また、本発明の複合ウェブを用いれば、クラ
ックやデラミネーションといった欠陥のないC/C複合
材料を製造することができる。
【0047】
【実施例】以下、本発明をその実施例により更に詳しく
説明する。尚、その前に本明細書における各種測定法に
ついて説明する。
【0048】〈炭素繊維密度〉炭素繊維と粉末状熱硬化
性フェノール系樹脂の重量比がA:Bとなるようにして
得られた目付C(g/m2 )の複合ウェブを、厚みD
(cm)になるように成形した場合に得られる成形体の
炭素繊維密度(g/cm2 )は、次の式により求められ
る。
【数4】
【0049】〈所定成形圧〉上記した炭素繊維密度が
0.6g/cm3 になるような厚みまで、170℃熱板
上にて圧縮するのに必要な成形圧力(kgf/cm2
を測定し求める。
【0050】〈欠陥の有無〉得られた複合ウェブを定法
に従い成形・炭化後、ダイヤモンドソーで切断し、その
断面を目視により観察した。繊維配向面に沿ったひび割
れをデラミネーション、繊維配向面を越えて生じている
ひび割れをクラックとした。また成形炭化したプリフォ
ームを定法に従い炭素質を充填した後、ダイヤモンドソ
ーにて切断し切断面を研磨し、顕微鏡により切断面観察
を行い、炭素質の未充填部の有無を観察した。
【0051】実施例1 粉末状熱硬化性フェノール系樹脂(商品名:ベルパー
ル、鐘紡(株)製)3.2kgを50リットルの水に分
散せしめた後、これにポリエチレングリコール系界面活
性剤(商品名:アデカプルロニックL101、旭電気化
学(株)製)40gを加えて撹拌をし、熱硬化性フェノ
ール系樹脂粉末の凝集体分散液を得た。これとは別に、
長さ50mmの炭素繊維12000本からなる炭素繊維
束4kgを、オムニミキサー(千代田工業(株)製)中
で800リットルの変性ポリアクリルアミド水溶液(濃
度0.02重量/容量%)と共に85秒間撹拌した後、
先の熱硬化性樹脂粉末凝集体分散液を加え、更に5秒間
撹拌した。得られたスラリーを底部にすき網を有する5
00φの円筒状貯留層に注ぎ、該スラリーをすき網で脱
液したのち乾燥し、複合ウェブを得た。得られた複合ウ
ェブは、所定成形圧が40kgf/cm2 であり、単繊
維状繊維の重量割合が36重量%、構成繊維本数が2〜
1000本の繊維束の重量割合が22重量%であった。
【0052】得られた複合ウェブを炭素繊維密度が0.
6g/cm3 となるように熱板上で圧縮成形し、得られ
た成形体を不活性ガス雰囲気下1000℃で炭化した。
得られた炭化体は、デラミネーションやクラックの発生
が見られなかった。結果は表1及び表2に示す通りであ
った。
【0053】実施例2 実施例1において行ったオムニミキサーによる攪拌時間
を85秒間に代えて105秒間行った以外は、実施例1
と同様にして複合ウェブを得た。得られた複合ウェブ
は、所定成形圧が50kgf/cm2 、単繊維状繊維の
重量割合が40重量%、構成繊維本数が2〜1000本
の繊維束の重量割合が32重量%であった。この複合ウ
ェブを実施例1と同様に成形したのち炭化した。得られ
た炭化体は、デラミネーション及びクラックの発生が見
られなかった。結果は表1及び表2に示す通りであっ
た。
【0054】比較例1 炭素繊維として、繊維長が50mmでポリエチレングリ
コール系水溶性バインダーが塗布された12000本の
単繊維からなる繊維束を用い、オムニミキサーによる攪
拌時間を85秒間に代えて20秒間とした以外は、実施
例1と同様にして複合ウェブを得た。得られた複合ウェ
ブは、所定成形圧が120kgf/cm2 であった。
【0055】この複合ウェブを実施例1と同様に成形し
たのち炭化した。得られた炭化体は、デラミネーション
及びクラックの発生が見られた。結果は表1及び表2に
示す通りであった。
【0056】比較例2 比較例1において行ったオムニミキサーによる攪拌時間
を20秒間に代えて10秒間とする以外は、比較例1と
同様にして複合ウェブを得た。得られた複合ウェブは、
所定成形圧が15kgf/cm2 であった。この複合ウ
ェブを実施例1と同様に成形したのち炭化した。得られ
た炭化体は、クラックの発生が見られた。
【0057】得られた炭化体を定法に従ってC/C複合
材料としたところ、繊維束中に炭素質の未充填部分が見
られた。結果は表1及び表2に示す通りであった。
【0058】比較例3 実施例1において炭素繊維の分散に用いた変性ポリアク
リルアミド水溶液の量を800リットルに代えて400
リットルとし、且つ攪拌時間を85秒間に代えて130
秒間とした以外は、実施例1と同様にして複合ウェブを
得た。得られた複合ウェブは、所定成形圧が60kgf
/cm2 であり、構成繊維本数が2〜1000本の繊維
束の重量割合が5重量%であった。この複合ウェブを実
施例1と同様に成形したのち炭化した。得られた炭化体
は、クラックの発生が見られた。
【0059】得られた炭化体を定法に従ってC/C複合
材料としたところ、繊維束中に炭素質の未充填部分が見
られた。結果は表1及び表2に示す通りであった。
【0060】
【表1】 * 特定の繊維束:2〜1000本の単繊維から構成される繊維束
【0061】
【表2】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維長20〜100mmの炭素繊維と粉
    末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなる複合ウェブに
    おいて、前記炭素繊維は単繊維状のものと繊維束状のも
    のとからなり、且つ構成繊維本数が2〜1000本の炭
    素繊維束の割合が炭素繊維全重量に対して10〜40重
    量%であり、前記複合ウェブを170℃の熱板上で繊維
    の配向面に対して垂直に圧縮して炭素繊維密度0.6g
    /cm3 とするのに必要とされる所定成形圧が20〜1
    00kgf/cm2 であることを特徴とする炭素繊維と
    フェノール系樹脂とからなる複合ウェブ。
  2. 【請求項2】 複合ウェブを構成する炭素繊維におい
    て、単繊維状の炭素繊維の割合が炭素繊維全重量に対し
    て20〜50重量%であることを特徴とする、請求項1
    に記載の炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウ
    ェブ。
JP12922195A 1995-04-27 1995-04-27 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ Pending JPH08302032A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12922195A JPH08302032A (ja) 1995-04-27 1995-04-27 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12922195A JPH08302032A (ja) 1995-04-27 1995-04-27 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08302032A true JPH08302032A (ja) 1996-11-19

Family

ID=15004145

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12922195A Pending JPH08302032A (ja) 1995-04-27 1995-04-27 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08302032A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011178890A (ja) * 2010-03-01 2011-09-15 Teijin Ltd 炭素繊維複合材料
WO2015016252A1 (ja) * 2013-08-01 2015-02-05 帝人株式会社 繊維補強複合材料及びその製造方法
JP2016117030A (ja) * 2014-12-22 2016-06-30 王子ホールディングス株式会社 分散装置及び分散方法、並びに、分散処理液及び湿式不織布
JP2016523310A (ja) * 2013-06-25 2016-08-08 ヘクセル コーポレイション 不連続繊維成形コンパウンドの製造方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011178890A (ja) * 2010-03-01 2011-09-15 Teijin Ltd 炭素繊維複合材料
JP2016523310A (ja) * 2013-06-25 2016-08-08 ヘクセル コーポレイション 不連続繊維成形コンパウンドの製造方法
WO2015016252A1 (ja) * 2013-08-01 2015-02-05 帝人株式会社 繊維補強複合材料及びその製造方法
JP2016117030A (ja) * 2014-12-22 2016-06-30 王子ホールディングス株式会社 分散装置及び分散方法、並びに、分散処理液及び湿式不織布

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2870542B2 (ja) 非アスベスト摩擦材料
CN101054775B (zh) 碳纤维束的浸渍方法
JP2009520126A (ja) 圧密化前にカーボンコンポジット成形体全体にわたって均質に炭素繊維フィラメントをデバンドル及び分散させる方法
JPH08302032A (ja) 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ
JPH0135931B2 (ja)
CA2130203A1 (en) Low cost, asbestos free friction material
US5422055A (en) Reinforced glass and/or ceramic matrix composites
JPH08302038A (ja) 炭素繊維とフェノール系樹脂とからなる複合ウェブ及びその製造方法
JPH07102080A (ja) 摩擦材の製造方法
JPS5924107B2 (ja) 繊維強化セメント複合材料の製造方法
JPH0959596A (ja) 三次元網目構造の金属を骨格とする摩擦材およびその製造方法
JP3482610B2 (ja) 多孔性炭素質成形板用プリプレグシート
EP0603765A1 (en) Process for the manufacture of preformed material for making carbon composite
WO2003093354A1 (en) Method of manufacturing a composite material_
US6558595B1 (en) Method for producing virtually finished moulded bodies from moulding materials
JPH037307A (ja) 繊維補強熱可塑性樹脂ペレット構造体
JPH0647496B2 (ja) 炭素繊維強化炭素複合材の製造方法
JP3292379B2 (ja) 炭素繊維チョップ及びその製造方法
JPH08300351A (ja) 繊維材料と粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなる複合ウェブの製造方法
JP2566896B2 (ja) 繊維とフェノール系樹脂とからなる複合構造体の製造方法
JP2781735B2 (ja) 繊維/樹脂複合体の製造方法
JPS60127264A (ja) フェノ−ル樹脂被覆炭素質繊維
JPH06116396A (ja) 繊維とフェノール系樹脂とからなる複合構造体の製造方法
JP2007153986A (ja) 摩擦材
JPS62208932A (ja) 繊維状フイラ−を分散させたプラスチツクシ−ト