JPH0829282B2 - ベルト式連続塗装装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ストリップ等の連続した帯状体の表面に、
所定の塗装液を連続して塗布する連続塗装装置に関する
もので、さらに詳言すれば、帯状体表面への塗装液の塗
布を無端循環ベルトにより達成するベルト式連続塗装装
置に関する。

〔従来の技術〕 ストリップ等の帯状体表面に塗装液を連続して塗布す
る連続塗装装置の一つとして、第４図に示すようなスク
イズロール方式がある。

第４図に示した例の場合、連続塗装装置は、帯状体Ｓ
の上下にそれぞれ配置されていて、帯状体Ｓの上下両面
の塗装を同時に達成するようにしている。この第４図に
おいて、１′はコーティングロールとして機能するコー
タロールで、上側のコータロール１′は支持スタンド
４′により一定位置に回転自在に支持されており、下側
のコータロール１′は圧下用ジャッキ６′で支持され、
この圧下用ジャッキ６′による下側のコータロール１′
の押上によって、両コータロール１′は、両コータロー
ル１′間に侵入位置する帯状体Ｓの上面および下面に設
定された圧力で押付けられる。

この帯状体Ｓの上側および下側に配置された連続塗装
装置には、それぞれ所望の方式で構成された塗装液供給
機構Ｂが組合せられている。

第４図の場合、上側の連続塗装装置には、液槽14から
ポンプ13によって流量調節弁12を経て送られてきた塗装
液Ｐを、上側コータロール１′の直上流側の帯状体Ｓ上
面にノルズ11から噴出塗布するスプレー方式の塗装液供
給機構Ｂが組合せられており、下側の連続塗装装置に
は、液溜り15に収納した塗装液Ｐに、下側コータロール
１′の下半分を侵漬させて、この下側コータロール１′
をピックアップロールとして機能させたピックアップロ
ール方式の塗装液供給機構Ｂが組合せられている。な
お、第４図において、16は液受け皿である。

上側コータロール１′と帯状体Ｓ上面との間、および
下側コータロール１′と帯状体Ｓ下面との間に供給され
た塗装液Ｐは、圧下用ジャッキ６′により設定される上
下両コータロール１′間の圧下力に応じて、所定の塗膜
P1厚になるように絞り取られ、両コータロール１′間か
らの出口において均一な厚さの塗膜P1に成形される。

〔発明が解決しようとする課題〕

このスクイズロール方式の連続塗装装置は、均一な厚
さの塗膜P1を連続して塗布成形できると云う利点がある
が、帯状体Ｓの走行速度、すなわちコータロール１′の
周速度が速くなると、成形される塗膜P1面に筋模様ｍが
発生すると云う問題がある。

この筋模様ｍの発生原理を、第６図により説明する。

塗装液Ｐは、コータロール１′からの出口、すなわち
コータロール１′周面から離れる箇所で、大部分は帯状
体Ｓの表面に塗られるが、塗装液Ｐの粘着力により一部
がコータロール１′周面に付着したままとなるので、塗
膜P1よりも厚みの大きい付着部分P2を形成すると共に、
塗膜P1に形成される部分とコータロール１′周面に付着
する部分とが分離する窪んだ分離部分P3を形成する。

ところで、スクイズロール方式のコーティングでは、
帯状体Ｓの走行方向と、この帯状体Ｓ表面に対向するコ
ータロール１′周面の回転方向とが同じであるため、分
離部分P3近傍の空気が吸い出される現象が起こり、この
分離部分P3が形成する窪みが負圧となる。このため、第
５図の実線矢印で示したように、この分離部分P3が形成
する窪みに帯状体Ｓのエッヂ部側から空気が吸い込ま
れ、この吸い込まれた空気が分離部分P3の塗装液Ｐに巻
き込まれて気泡ｋとなって分離部分P3に留まり、この分
離部分P3に留まった気泡ｋにより、第５図に示すよう
に、成形された塗膜P1面に筋模様ｍ、つまり薄塗り部分
或いは未塗り部分が発生する。

この現象、すなわち気泡ｋの発生は、帯状体Ｓの走行
速度が速くなればなるほど顕著であり、一般にこの方式
における帯状体Ｓの走行速度、すなわち搬送速度は100m
/分程度が限界とされ、連続ラインにおける高速化の大
きな障害要因となっている。

この気泡ｋ発生、すなわち分離部分P3への空気の巻き
込みを防ぐ手段として、コータロール１′の小径化があ
る。すなわち、コータロール１′の径が大きいと、第６
図に示すように、角度Θが小さくなって付着部分P2の長
さＬが変動し易いので、空気を巻き込んで気泡ｋを発生
し易く、かつこの発生した気泡ｋが逃げ難い。また、空
気を巻き込んで気泡ｋを発生させないまでも、長さＬが
帯状体Ｓの幅方向で変動するので、成形される塗膜P1の
膜厚が変動して均一とならない。それゆえ、第７図に示
すように、コータロール１′の径を小さくして角度Θを
大きく、そして長さＬを短くすることにより、分離部分
P3の窪みへの空気の巻き込みを防止して気泡ｋの発生を
なくし、また長さＬが変動し難くするのである。

ところが、コーティングロールとしてのコータロール
１′の径を小さくすると、塗膜P1厚を調節するためにコ
ータロール１′に圧下を加えると、径を小さくした分だ
けコータロール１′の剛性が低下するので、圧下力の作
用によりコータロール１′の撓みが大きくなり、帯状体
Ｓの中央部と幅方向端部とで塗膜P1厚さに大きな差が出
ると云う問題が生じる。このため、圧下力を大きくして
成形しようとする塗膜P1の膜厚を薄くすることができ
ず、製品品質上、不利な条件となる。

また、連続塗装装置として、コータロールをコーティ
ングロールとして使用するのではなく、コータロールに
巻がけされた無端循環ベルトをコーティング体として利
用する技術が、例えば特開昭56−87462号公報に提案さ
れている。

この無端循環ベルトをコーティング体として利用する
従来技術は、無端循環ベルトを単一のコータロールに巻
がけしてそのまま帯状体Ｓ表面に圧下しているので、無
端循環ベルトの塗装液Ｐ塗布面と帯状体Ｓ表面との関係
は、第４図ないし第７図に示した従来技術と全く同じで
あり、気泡ｋ発生による筋模様ｍ発生防止、および塗膜
P1厚さの均一化、さらにはより薄い均一な膜厚の塗膜P1
成形を達成することは不可能であった。

そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点
を解消すべく創案されたもので、圧下力を充分な剛性を
有するコータロールで作用させると共に、帯状体表面か
らコーティング体を小さな曲率半径で湾曲して離れるよ
うにすることにより、気泡の発生を皆無とすると共に塗
膜の膜厚の変動をなくし、さらに帯状体の幅方向全域に
より強力な圧下力を均一に作用させることができるよう
にすることを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するための本発明の手段は、径の大き
い大径コータロールを有すること、 この大径コータロールに対して、被塗装体である帯状体
の走行方向の下流側に配された径の小さい小径コータロ
ールを有すること、 大径コータロールと小径コータロールとの間に巻がけ張
設されて、大径コータロールおよび小径コータロールに
よる帯状体への押付けにより、帯状体表面への塗装液の
塗布を行う無端循環ベルトを有すること、 帯状体と無端循環ベルトとの走行速度を等しく設定する
こと、 にある。

大径コータロールと小径コータロールとの間に巻がけ
張設された無端循環ベルトの張力を任意に調整すべく、
無端循環ベルトを張力調節用のテンションロールにも掛
け渡すのが良い。

また、帯状体の上下両面に同時に塗膜を塗装する場合
には、大径コータロール同志、および小径コータロール
同志を、帯状体を挟んで上下に対向させ、下側の大径コ
ータロールを大径ロール圧下用ジャッキで支持すると共
に、下側小径コータロールを小径ロール圧下用ジャッキ
で支持して構成するのが望ましい。

〔作用〕

帯状体に対する塗装液の塗布を達成する無端循環ベル
トは、帯状体の搬送方向に沿った上流側に配された大径
コータロールと、下流側に配された小径コータロールと
によって、帯状体表面に押付けられるので、塗膜厚を調
整するための圧下は、大径となって構造的に剛性が高い
大径コータロールで達成でき、反対に帯状体から離れる
部分は、小径コータロールの小さい曲率半径で曲がるこ
とができる。

このように、塗膜厚を調整するための圧下を、構造的
に剛性の高い大径コータロールで達成できるので、帯状
体の全幅範囲に亘って均一に圧下力を作用させた状態
で、圧下力を広い範囲で自由に変更設定することかでき
る。また、無端循環ベルトの帯状体表面から離れる部分
の曲がりを、小径コータロール直径で設定される小さい
曲率半径とすることができるので、付着部分長さＬを小
さくすることができると共に、角度Θを大きくすること
ができ、これにより分離部分P3の窪みへの空気の巻き込
みによる気泡ｋの発生を阻止し、この気泡ｋによる筋模
様ｍの発生を皆無とすることができ、また付着部分長さ
Ｌの変動がほとんど無くなるので、成形される塗膜P1の
膜厚変動を防止することができる。

ベルト式連続塗装装置を帯状体を挟んで上下に配置
し、それぞれの大径コータロール同志と小径コータロー
ル同志を対向位置させることにより、従来と同様に帯状
体上下両面への塗膜P1の成形を同時に達成できる。

〔実施例〕

以下、本発明によるベルト式連続塗装装置の実施例
を、第１図ないし第３図を参照しながら説明する。

第１図に示した実施例は、帯状体Ｓを挟んで上下にベ
ルト式連続塗装装置Ａを配置した構成を示すもので、上
側のベルト式連続塗装装置１は、大径コータロール１を
大径ロールスタンド４で支持すると共に、小径コータロ
ール２を小径ロールスタンド５で支持し、この大径コー
タロール１と小径コータロール２との間に巻がけされる
無端循環ベルト３を、張力調節用バネ10に組付けられた
テンションロール９にも掛け渡した構成となっている。
他方の、下側のベルト式連続塗装装置Ａは、大径コータ
ロール１を大径ロール圧下用ジャッキ６で支持すると共
に、小径コータロール２を小径ロール圧下用ジャッキ７
で支持し、この大径コータロール１と小径コータロール
２との間に巻がけされる無端循環ベルト３を、張力調節
用バネ10に組付けられたテンションロール９にも掛け渡
した構成となっている。そして、上下両ベルト式連続塗
装装置Ａにおいて、無端循環ベルト３の張設強度は、そ
れぞれテンションロール９により調整設定され、また両
大径コータロール１間の圧下力と両小径コータロール２
間の圧下力は、別々に大径ロール圧下用ジャッキ６と小
径ロール圧下用ジャッキ７により設定される。

上側のベルト式連続塗装装置Ａには、液槽14に収納さ
れた塗装液Ｐを、ポンプ１で吸い出して流量調節弁12で
流量を調節しながらノルズ11から、上側のベルト式連続
塗装装置Ａよりも上流側の帯状体Ｓ上面に霧状に噴出す
るスプレー式の塗装液供給機構Ｂが組合せられている。
これに対して、下側のベルト式連続塗装装置Ａには、塗
装液Ｐを収納した液溜り15と、滴下してくる余剰の塗装
液Ｐを受け止めて液溜り15に戻す液受け皿16とから構成
されるピックアップロール方式の塗装液供給機構Ｂが組
合せられており、液溜り15中の塗装液Ｐ中に大径コータ
ロール１の下部分を侵漬させることにより、循環走行す
る無端循環ベルト３の表面に塗装液Ｐを付着させるよう
にしている。

帯状体Ｓ表面または無端循環ベルト３表面に供給され
た塗装液Ｐは、両大径コータロール１間の圧下力により
所定の量に絞られて、すなわち所望の塗膜P1厚に成形さ
れて、この状態を一定の張力で張設された無端循環ベル
ト３により保持された状態で両小径コータロール２間の
出側まで送られる。なお、無端循環ベルト３の塗布作用
面、すなわち外側面には、通常のスクイズロールタイプ
のコーティングロールのライニングゴムに施されるのと
同様に、塗装液Ｐを通過させるためにベルト走行方向の
溝切り加工を施す必要がある。

両小径コータロール２間の出側では、無端循環ベルト
３が小径コータロール２の小さい径に従って小さい曲率
半径で湾曲して帯状体Ｓ表面から離れるので、付着部分
長さＬが小さく、かつ角度Θが大きくなるので、分離部
分P3への空気の巻き込みが発生し難く、これにより気泡
ｋによる筋模様ｍの発生がなく、付着部分長さＬ寸法の
変動も抑えられて、塗膜P1の均一な膜厚を得ることがで
きる。

第２図図示実施例は、小径コータロール２を支持して
いる小径ロールスタンド５を、帯状体Ｓの走行方向に沿
って変位可能とすると共に、この小径ロールスタド５に
帯状体Ｓの走行方向に沿った一定の引張力を作用させ、
もってテンションロール９を設けることなしに、無端循
環ベルト３を所望の張力で張設できるようにベルト式連
続塗装装置Ａを構成した例を示している。また、第３図
図示実施例は、構造的に小さい小径コータロール２の剛
性を、この小径コータロール２のバックアップロールと
して機能する圧下ロール８で補うべく構成したベルト式
連続塗装装置Ａの構成を示すもので、このように小径コ
ータロール２の剛性を補うことにより、成形される塗膜
P1厚の設定および調整をより正確に達成できる。

各実施例を示す図面から明らかなように、本発明によ
るベルト式連続塗装装置Ａに組合せられる塗装液供給機
構Ｂの構成は、特に限定されることはなく、ピックアッ
プロール方式、ファウンテンノルズ方式等種々の方式の
塗装液供給機構Ｂの組合せが可能である。

第１図図示の構成で、大径コータロール１の直径を50
0ミリそしてロール圧下力（ロール胴長1cm当たりの荷
重）を15kg/cm、小径コータロール２の直径を150ミリそ
してロール押付け力を3kg/cmに設定し、幅1100ミリ、厚
み0.5ミリのストリップである帯状体Ｓに、比重1.3g/cm
³の塗装液Ｐを塗装量20g/m²（片面）で、ベルト幅が130
0ミリ、ベルト溝形状が0.5ミリピッチの正三角形状の無
端循環ベルト３により塗装を行った結果、従来は筋模様
ｍ発生の問題から帯状体Ｓの走行速度、すなわち搬送速
度は90mpmが限界であったのが、本発明のベルト式連続
塗装装置Ａによると、成形される塗膜P1に筋模様ｍを発
生することなしに、帯状体Ｓの搬送速度を140mpmまで上
げることができた。

〔発明の効果〕

本発明は、上記した構成となっているので、以下に示
す効果を奏する。

入側で剛性の大きい大径コータロールで圧下力を作用
させることができると共に、出側で径の小さい小径コー
タロールにより曲率半径の小さい湾曲で帯状体表面から
離脱できるので、充分な圧下力を作用させながら気泡の
発生および塗膜厚の変動の発生を抑えて塗膜の成形を達
成でき、これにより品質の高い塗膜を成形できる。

出側における気泡の発生を充分に抑えることができる
ので、高品質を保った状態でのラインの高速化を充分に
達成できる。

圧下力を強めても、気泡の発生を充分に抑えることが
できる能力を維持できるので、塗膜厚を充分に薄くした
状態で筋模様の発生のない高品質の塗膜を成形できる。

組合せられる塗装液供給機構の構成が限定されないの
で、既存の連続塗装設備に対する本発明装置の取付け実
施が容易であり、このため実施に伴う経費を低く抑える
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明によるベルト式連続塗装装置の一実施
例を示す全体正面図である。 第２図は、本発明の他の実施例を示す簡略構成図であ
る。 第３図は、本発明のさらに他の実施例を示す簡略構成図
てある。 第４図は、従来の連続塗装装置の代表的な構成例を示す
全体正面図である。 第５図は、従来装置における問題点である筋模様の発生
形態を示す全体斜視図である。 第６図は、筋模様発生の原因である気泡巻き込みの動作
原理の説明のための部分拡大説明図である。 第７図は、気泡巻き込み防止のための一つの手法を示す
説明図である。 符号の説明 1;大径コータロール、2;小径コータロール、3;無端循環
ベルト、4;大径ロールスタンド、5;小径ロールスタン
ド、6;大径ロール圧下用ジャッキ、7;小径ロール圧下用
ジャッキ、8;圧下ロール、9;テンションロール、10;張
力調節用バネ、11;ノルズ、12;流量調節弁、13;ポン
プ、14;液槽、15;液溜り、16;液受け皿、 A;ベルト式連続塗装装置、S;帯状体、P;塗装液、P1;塗
膜、P2;付着部分、P3;分離部分、L;付着部分長さ、k;気
泡、m;筋模様、B;塗装液供給機構、１′；コーターロー
ル。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ロール径の大きい大径コータロール（１）
   と、該大径コータロール（１）に対して、被塗装体であ
   る帯状体（Ｓ）の走行方向の下流側に配されたロール径
   の小さい小径コータロール（２）と、前記大径コータロ
   ール（１）と小径コータロール（２）との間に巻がけ張
   設されて、前記大径コータロール（１）および小径コー
   タロール（２）による前記帯状体（Ｓ）への押付けによ
   り、該帯状体（Ｓ）表面への塗装液（Ｐ）の塗布を行う
   無端循環ベルト（３）と、を有し、前記帯状体（Ｓ）と
   無端循環ベルト（３）との走行速度を等しく設定したベ
   ルト式連続塗装装置。
2. 【請求項２】無端循環ベルト（３）を、張力調節用のテ
   ンションロール（９）にも掛け渡した請求項１記載のベ
   ルト式連続塗装装置。
3. 【請求項３】大径コータロール（１）同志、および小径
   コータロール（２）同志を、帯状体（Ｓ）を挟んで上下
   に対向させ、下側の前記大径コータロール（１）を大径
   ロール圧下用ジャッキ（６）で支持すると共に、下側の
   前記小径コータロール（２）を小径ロール圧下用ジャッ
   キ（７）で支持した請求項１または２記載のベルト式連
   続塗装装置。