JPH08286671A - 楽音合成装置および楽音合成方法 - Google Patents

楽音合成装置および楽音合成方法

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JPH08286671A
JPH08286671A JP7092793A JP9279395A JPH08286671A JP H08286671 A JPH08286671 A JP H08286671A JP 7092793 A JP7092793 A JP 7092793A JP 9279395 A JP9279395 A JP 9279395A JP H08286671 A JPH08286671 A JP H08286671A
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musical tone
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自然楽器の各部を電気的モデルによりシミュ
レートして楽音を合成する装置において、ffにかかる
音色の音量を大きくする。 【構成】 管楽器における管体の物理的性質を電気的に
模擬したシミュレートした管体シミュレート部20と、
演奏者による演奏操作に基づいて励起信号を生成し、管
体シミュレート部20に供給する励振回路10とを備
え、音圧信号fzを管体シミュレート部20に供給させ
て取り出すことにより楽音信号を合成する楽音合成装置
において、励振回路10は、圧力差Δpにしたがって音
圧信号fzにおけるレベル特性を、所定の関数にしたが
って変化させる。そして、この関数特性を、空気差Δp
が大きくなるにつれて、音圧信号fzのレベルが単調増
加するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電子楽器や、ゲーム
機器、パソコンシステム、そのアプリケーションプログ
ラム、楽音プロセッサなどのように楽音を合成する技術
に係り、特に、自然楽器の物理的性質をシミュレートし
た電子楽器に用いて好適な楽音合成装置および楽音合成
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自然楽器における発音メカニ
ズムを電気的モデルによりシミュレートして、楽音を合
成する楽音合成装置が知られている。ここで、従来の楽
音合成装置における信号形成回路の一例を図11に示
す。この信号形成回路は、自然楽器のうちの管楽器の楽
音を合成するものであり、同図に示すように、管楽器に
おける管体の物理的性質を電気的に模擬したシミュレー
トした管体シミュレート部20と、演奏者による演奏操
作等に基づいて励起信号を生成し、管体シミュレート部
20に供給する励振回路10とから構成される。そし
て、励振回路10および管体シミュレート部20におけ
る種々のパラメータも演奏操作に基づいて制御されるよ
うになっている。
【0003】まず、この励振回路10における減算器1
1の減算入力端(−)には、マウスピースに吹き込まれ
る圧力p(口内圧力)に相当する信号が、演奏操作を検
出するセンサ(図示省略)に従って生成されて供給され
る。一方、減算器11の加算入力端(+)には、後述す
るように、マウスピース内の圧力qを示す信号であっ
て、管体からの反射がシミュレートされた信号が供給さ
れる。このため、減算器11の出力信号は、マウスピー
スとリードとの間隙における空気圧力差Δpに相当する
信号となる。ローパスフィルタ12は、リードの動きを
シミュレートするものであり、入力信号を帯域制限して
出力する。このように、帯域制限を行なうのは、圧力変
化に対するリードの追従性をシミュレートするためであ
る。より詳細には、リードの圧力が変化した場合、リー
ド自身には慣性等が働くため、リードの変位に遅れが生
じ、さらに、圧力変化の周波数が高くなるとリードは徐
々に反応しなくなるという特性をシミュレートするため
である。また、ローパスフィルタ12には、その特性を
演奏操作等にしたがって制御するためのパラメータF
c、Qが供給され、これらパラメータによりそれぞれカ
ットオフ周波数、Q値が設定されるようになっている。
【0004】ローパスフィルタ12の出力には、リード
に加える圧力を示すアンブシュアデータたる信号Eが加
算器13によって加算され、実際にリードに加えられる
圧力に相当する信号が求められる。そして、この信号
は、非線形テーブル14によって、マウスピースとリー
ドとの間隙部分の断面積Sに相当する信号に変換され
て、乗算器15の一方の入力端に供給される。
【0005】一方、マウスピースとリードとの間隙にお
ける空気圧力差Δpを示す信号は、非線形テーブル16
にも供給される。この非線形テーブル16は、空気の圧
力差が大きくなっても狭い管路では流速が飽和して差圧
と流速とが比例しないことをシミュレートするものであ
り、これにより、リード部での空気圧が流速に与える影
響を考慮して補正した、空気圧に相当する信号が得られ
るようになっている。
【0006】そして、かかる非線形テーブル16の出力
信号は乗算器15の他方の入力端に供給されて、リード
の間隙(部分の断面積)Sを示す信号と乗算され、この
乗算結果が、マウスピースとリードとの間隙における体
積流速に相当する信号fとなって、乗算器17に供給さ
れる。この信号fは、乗算器17によって、マウスピー
スの(抵抗に相当する)特性インピーダンスzを示す信
号と乗算され、マウスピースから管体に送り込まれる空
気に相当する音圧信号fzとなり、励振信号として管体
シミュレート部20に供給される。このようにして、励
振回路10では、管楽器のリードを含む励振部が電気的
にシミュレートされるようになっている。
【0007】次に、管体シミュレート部20は、音圧信
号fzを信号qとして帰還するものであり、該帰還路に
は、ローパスフィルタや遅延回路が介挿されている(図
示せず)。このうちのローパスフィルタは、管体、特に
共鳴管の形状をシミュレートするものであり、また、遅
延回路は、共鳴管の長さ、およびトーンホールの長さに
対応してマウスピースからの入射波が反射波としてマウ
スピースに戻ってくる状態をシミュレートするものであ
る。この場合、遅延回路の遅延時間は、発生楽音の音高
により制御されるようになっている。厳密に言えば、帰
還路のローパスフィルタにおいても遅延が発生するの
で、発生楽音の音高をの制御は、管体シミュレート部2
0の一巡当たりの遅延時間が音高に対応したものとなる
ように、ローパスフィルタによる遅延時間を考慮しつ
つ、遅延回路の遅延時間を制御することにより行なわれ
る。
【0008】このように構成される信号形成回路によっ
て、管楽器において発生する空気の流れが電気的なモデ
ルによりシミュレートされるので、実際の管楽器による
楽音に近似した楽音信号を合成することできるようにな
っている。なお、この際の出力信号は、この信号形成回
路における励振回路10あるいは管体シミュレート部2
0における任意地点から取り出すことができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、かかる構成
による合成音は、口内圧力pに相当する信号を大きくし
ても、なぜかff(フォルテシモ)にかかる音色が弱い
と指摘されていた。そこで、本願発明者は、原因を探っ
ているうちに、励振回路10における非線形特性のモデ
リングに問題があると考え、その特性について再度吟味
することにした。
【0010】まず、従来の励振回路10は、大別する
と、リードの動特性を近似する部分(ローパスフィルタ
12)、その非線形特性を近似する部分(非線形テーブ
ル14)、およびリードの間隙における空気の流れを近
似する部分(非線形テーブル16)に分けることができ
る。ここで、これらの合成がどのように行なわれるかに
ついて、リードの間隙を固定して考えてみる。
【0011】すなわち、リードは、空気の流れと圧力の
現象と比較してゆっくりと運動するので、空気の流れと
圧力の現象を瞬間的に考えた場合には、リードは固定さ
れて運動しないものとみなして扱うことができる。そこ
で、励振回路10におけるリードの間隙(非線形テーブ
ル14の出力)Sを「1.0」、「0.5」、「0.2
5」(無単位)に固定し、圧力差Δpが変化した場合に
おける体積流速fの特性を考えてみる。この場合の特性
を図9(a)に示す。
【0012】次に、実際の自然楽器における圧力差Δp
と体積流速fとの関係を同図(b)に示す。ここで、図
9(a)および(b)の両特性を比較すると、良く似た
飽和関数となっている点を考慮すれば、従来の励振回路
10は、自然楽器の空気の流れを良く近似しているとい
えるが、本願発明者は、次の2つの相違点に着目し
た。 圧力差Δpと体積流速fとの関係は、本来的には同
図(b)に示すように、リードの間隙Sに依存すること
なく、原点付近では−1/zの傾きに漸近するが、従来
のモデリングでは、同図(a)に示すように、関数全体
が上下に圧縮された形状となり、リードの間隙が小さく
なるにつれて傾きも小さくなってしまう。 圧力差Δpと体積流速fとの関係は、本来的には同
図(b)に示すように、圧力差Δpの絶対値が大きくな
ると体積流速fも大きくなって飽和はしないが、物理モ
デルでは、同図(a)に示すように、完全に飽和して一
定値となってしまう。
【0013】そして、本願発明者は、フォルテシモにか
かる音色が弱いという原因が主に上記の相違点に基づ
くと考え、これを解消すべく本願発明をするに至った。
この発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、そ
の目的とするところは、自然楽器における空気の流れを
より正確にシミュレートして、ffにかかる音色が弱く
ならない楽音を合成することが可能な楽音合成装置およ
び楽音合成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した問題を解決する
ために、請求項1に記載の発明にあっては、少なくとも
遅延手段とローパスフィルタとを有するループ手段と、
励起信号を生成して前記ループ手段に供給する励起信号
生成手段とを備え、前記励起信号を取り出すことにより
楽音信号を合成する楽音合成装置において、前記励起信
号生成手段は、合成すべき楽音の音量を大きくする演奏
操作量にしたがって前記励起信号のレベル特性を、所定
の関数にしたがって変化させ、前記所定の関数は、前記
演奏操作量の楽音を大きくする方向の変化に対して、前
記励振信号のレベルが単調増加することを特徴としてい
る。請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載
の発明において、前記励振信号生成手段は、前記ループ
手段からの信号と、演奏操作に応じた信号との差分に応
じて前記励振信号を生成することを特徴としている。請
求項3に記載の発明にあっては、請求項1または2に記
載の発明において、前記所定の関数は少なくともルート
関数を含み、前記励振信号は、当該ルート関数を記憶す
る変換テーブルを介して生成されることを特徴としてい
る。請求項4に記載の発明にあっては、請求項1に記載
の発明において、前記所定の関数は、楽音を大きくする
演奏操作量がゼロの場合における励振信号の変化分が、
他の演奏操作量の変動に対し一定となる特性であること
を特徴としている。請求項5に記載の発明にあっては、
請求項1または2記載の発明において、前記所定の関数
は、入力対出力の特性曲線が非線形である非線形特性を
有し、前記励起信号生成手段は、当該特性曲線が前記演
奏操作量に応じて座標上を移動するように制御すること
を特徴としている。請求項6に記載の発明にあっては、
励起信号を生成する生成過程と、この励起信号を、少な
くとも遅延手段とローパスフィルタとを有するループ手
段に循環させて取り出すことにより楽音信号を合成する
合成過程とを備える楽音合成方法において、前記生成過
程は、前記励振信号のレベル特性を、合成すべき楽音の
音量を大きくする演奏操作量に対し、所定の関数にした
がって変化させ、前記所定の関数は、前記演奏操作量の
楽音を大きくする方向の変化に対して、前記励振信号の
レベルが単調増加することを特徴としている。
【0015】
【作用】この種の楽器において、ループ手段の各種特性
や、励起信号は、自然楽器における形状等の物理的性質
をシミュレートすることによって制御されるので、従来
では、励振信号のレベルが、楽音を大きくする演奏操作
量に対して飽和するようになっていた。請求項1に記載
の発明によれば、遅延手段とローパスフィルタとを有す
るループ手段には、励起信号生成手段によって励起信号
が供給され、その特性が、合成すべき楽音の音量を大き
くする演奏操作量に対して単調増加とされる。請求項2
に記載の発明によれば、励起信号の生成に、ループ手段
から戻ってきた信号(帰還信号)が反映される。請求項
3に記載の発明によれば、励起信号の特性を定める関数
は、少なくともルート関数を有することになるが、励起
信号の生成の際には、変換テーブルを介するので、励起
信号の生成に要する時間が短縮化される。請求項4に記
載の発明によれば、演奏操作量がゼロに近い場合でも、
その変化分がある程度があるならば、励振信号の変化分
を確保することができる。請求項5に記載の発明によれ
ば、所定の関数が有する特性曲線が、演奏操作量にした
がって座標上を移動するように制御されることによっ
て、特性曲線を、実際の楽器の非線形特性に近似させる
ことができる。請求項6に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明と同様に、励起信号の特性が、合成すべ
き楽音の音量を大きくする演奏操作量に対して単調増加
とされる。
【0016】
【実施例】
1:実施例 以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明
する。図1は、この発明の楽音合成装置にかかる信号形
成回路の構成を示すブロック図である。この図に示した
信号形成回路は、図11における乗算器15、17およ
び非線形テーブル16による関数の合成を、非線形部モ
デル200に置換して行なって、上述した問題を解決し
ようとするものである。また、この実施例は、マウスピ
ースと管体との接合部分における空気流の乱れをシミュ
レートするジャンクション部30を有する。
【0017】1−1:ジャンクション部 まず、説明の便宜上、ジャンクション部30について説
明すると、ジャンクション部は、一般的には、図12
(イ)のように構成される。同図に示す構成では、乗算
器17の音圧信号fzおよび管体シミュレート部20の
帰還信号qiが加算器31によって加算され、信号qO
して管体シミュレート部20に供給される一方、管体シ
ミュレート部20の帰還信号qiおよび加算器31の出
力信号qOが加算器32によって加算され、信号qhとし
て減算器11に供給されるようになっている。かかる構
成によりジャンクション部では、管体との接合部におけ
る空気圧力の散乱がシミュレートされるようになってい
る。しかし、この構成では、音圧信号fzが信号qh
成分として直接的に励振回路10にフィードバックされ
るので、発振現象が生じやすい。そこで、図12(イ)
の構成を若干変更し、図1におけるジャンクション部3
0の構成とした。すなわち、図12(イ)におけるジャ
ンクション部において、加算器31の加算結果(信号q
o)は、音圧信号fzと信号qiとの和であるから、加算
器31の加算結果と信号qiとを加算する加算器32
は、同図(ロ)に示すように、信号qiに係数「2」を
乗じる乗算器34と、その乗算結果および音圧信号fz
を加算する加算器33とにより等価的に置換することが
できる。この構成において音圧信号fzが励振回路10
にフィードバックする経路を省略した構成、つまり加算
器33を省略した構成が、図1におけるジャンクション
部30の構成そのものとなる。
【0018】1−2:非線形部モデル 次に、非線形部モデル200について説明する。この非
線形部モデル200は、非線形テーブル14によって変
換されたリードの間隙Sを示す信号と、空気圧力差Δp
を示す信号と、マウスピースの特性インピーダンスzを
示す信号とに基づいて、音圧信号fzを適切に合成する
ものである。
【0019】1−2−1:非線形部モデルにより合成さ
れる非線形関数 ここで、この非線形部モデル200において合成される
非線形関数について説明する。まず、本願発明者は、実
際の管楽器のモデリングについて、本来の物理機構まで
戻って検討することとした。マウスピースのリード部分
での流速は、流体力学におけるGrahamの定理から
次式(1)のように与えられる。
【数1】 この式において、pは口内圧、qはマウスピース内の圧
力、ρは空気の密度である。なお、空気の流れ方向を考
慮する場合において(p−q)が負の場合には、正の特
性を原点対称としたものとなる。
【0020】ここで、マウスピース内の圧力qは、次式
のように表わすことができる。 q=qi+qO …… 次に、図1における信号qoは、音圧信号fzと信号qi
との和であるから、この式は、さらに、次式のように
表わすことができる。 q=2qi+fzO …… この式において、2qiをqhとおいて考えると、マウス
ピース内の圧力pは、さらに次式に示すように、接合
部分からマウスピースへの流入圧力を示す信号qhと、
逆にマウスピースから接合部分への流出圧力を示す音圧
信号fzとの和で表わすことができる。 q=qh+fzO …… また、音速をc、リード直下部分でのマウスピースの断
面積をs0とすると、リード部分での特性インピーダン
スz0は、次の式に示すようになる。 z0=ρc/s0 …… そして、式におけるqを式(1)に代入し、さらに式
をも用いてfについて解くと、次式(2)が得られ
る。
【0021】
【数2】
【0022】ここで、式(1)と式(2)とを比較すべ
く、スリットの開口を「0.05cm」、幅を「1.3
6cm」として、この積をリードの間隙Sとし、さらに
特性インピーダンスを揃えると、両者の特性は図10に
示すようになる。この図を見ても判るように、式(1)
の特性を、f=−1/z0の直線に接するように、かつ
原点を通過するように移動させると、式(2)となる。
したがって、式(2)をディジタルで実現しようとする
場合には、式(1)の特性を求めるテーブルや関数発生
器(ルート関数)とともに、四則演算回路を備えれば良
いことになる。なお、この図の特性は、Δpに相当する
(qh−p)が負である場合を示し、(qh−p)が正で
ある場合の特性は、空気の流れ方向を考慮して、(qh
−p)が負である場合の特性を原点を中心について対称
に移動した特性となる。そして、非線形部モデル200
が出力すべき信号は、流速fとインピーダンスz0との
積である音圧信号fzであるから、式(2)の両辺にイ
ンピーダンスz0を掛けて整理すると、次式(3)が得
られる。
【0023】
【数3】 このようにして、本願発明者は、非線形部モデル200
において合成すべき非線形関数を、ルート関数を含んだ
式(3)に設定することとした。なお、この式(3)
は、(qh−p)が負の場合のときにおける音圧信号を
示す。
【0024】1−2−2:非線形部モデルの構成 次に、かかる式(3)の非線形関数を合成する非線形部
モデル200の構成について説明する。図2は、非線形
部モデル200の構成を示すブロック図である。この図
に示すように、圧力差Δpは、正負検出器201および
絶対値算出回路202に供給される。正負検出器201
は、圧力差Δpの正負に応じて関数結果を原点において
対称とさせるために設けられる。具体的には、正負検出
器201は、Δpが正である(ゼロである場合も含む)
場合には「+1」を出力する一方、負であると検出した
場合には「−1」を出力する。なお、正負の検出には、
例えば、Δpの最上位ビットにより判別される。
【0025】絶対値算出回路202は、流れの方向を含
む圧力差Δpの全波整流して絶対値を算出し、減算器2
03の減算入力端(−)に供給する。減算器203の加
算入力端(+)には、前段(図示せず)において予め計
算された「S20 2/2ρ」が供給されて、これから圧
力差Δpの絶対値が減算されて、ルート関数テーブル2
04に入力される。ルート関数テーブル204は、入力
xと出力yとにおいて、y=(2x/ρ)1/2なるルー
ト関数結果を予め記憶しているテーブルであり、入力x
に対応する出力yを乗算器205の一方の入力端に供給
する。乗算器205の他方の入力端には、前段(図示せ
ず)において予め計算された「Sz0」が供給され、ル
ート関数テーブル204の出力yと乗算されて、減算器
206の加算入力端(+)に供給される。減算器206
の減算入力端(−)には、前段(図示せず)において予
め計算された「S20 2/ρ」が供給され、乗算器20
5の乗算結果を減算して、乗算器207に供給される。
【0026】そして、乗算器207には、他に正負検出
器201の出力と係数「−1」とが供給されて、乗算器
205の乗算結果を、圧力差Δpの正負に応じて、原点
を中心に対称となるようになっている。すなわち、これ
は、空気の流れ方向まで考慮して式(3)の計算結果を
拡張するためである。
【0027】かかる構成の非線形部モデル200により
合成される非線形関数を次式(4)に示す。
【数4】
【0028】この構成において、圧力差Δp以外は定数
として扱うことができ、また、処理に最も時間を要する
ルート関数の算出はルート関数テーブル204の変換に
より行なっているので、式(4)の演算をリアルタイム
で行なうことができる。そして、実際の自然楽器で起こ
る圧力差と流速との関係をより正確に模擬しているの
で、流速は、圧力差が大きくなっても飽和することがな
い。
【0029】さらに、圧力差Δpは、図示しないセンサ
によって検出された圧力pに相当する信号に基づき生成
され、また、それ以外の定数は、ユーザが任意に設定で
きるようになっているが、この場合でも、圧力差Δpと
音圧信号fzとの関係は、図10に示したようにf=−
1/z0の直線に接するように、かつ原点を通過するよ
うに移動して、設定された条件が満足されるようになっ
ている。
【0030】また、式(4)についてqh−pを例えば
xとして微分し、x=0のとき(すなわち圧力差がゼロ
のとき)の傾き(変化分)を、正側からx=0に近づけ
た場合と、負側からx=0に近づけた場合とで分けて求
めると、当該変化分は、両者とも−1/z0となるの
で、リードの間隙Sに依存することなく一定となり、こ
の点でも実際の自然楽器で起こる流速の関係をより正確
に模擬しているということができる。
【0031】1−3:管体シミュレート部 次に、管体シミュレート部20について説明する。この
実施例においては、シミュレートする管体の形状、種類
等に応じていくつかのアルゴリズムが用意され、いずれ
か1つが選択可能なように構成されているが、以下にお
いては、説明の関係上、代表的な2つのアルゴリズムに
ついて説明する。
【0032】1−3−1:管体シミュレート部の第1ア
ルゴリズム まず、第1アルゴリズムについて説明する。図3は、第
1アルゴリズムによる管体シミュレート部20の構成を
示すブロック図である。このアルゴリズムは、図6に示
すような管体形状(径が異なる円筒の集合)をシミュレ
ートして、管楽器のすべてのトーンホールおよびレジス
タチューブの開閉(中途半端に開いた状態も含める)の
組合せを近似し、なおかつ任意形状の管体を実現しうる
アコースティック楽器に最も近いものである。図3にお
いて、記号SRと添字で示されるものは、シフトレジス
タであり、管体における空気圧力波の伝搬遅延をシミュ
レートするものである。記号Jと添字で示されるもの
は、ジャンクション部であり、管体の径が変化している
地点において発生する空気圧力波の散乱をシミュレート
するものである。また、LPFはローパスフィルタであ
り、管体の終端部において空気圧力波が反射する際にエ
ネルギー損失等をシミュレートするものである。
【0033】図3に示す例において、ジャンクション部
J1、J2、J5は、トーンホールを有さず段差のみを
有するもの(2ポート・ジャンクション)であり、その
構成については、例えば、図4(イ)〜(ロ)のいずれ
かに示すものとなっている。また、ジャンクション部J
3、J4、J6は、高さのあるトーンホールがついたも
の(3ポート・ジャンクション)であり、その構成につ
いては、図5に示すものとなっている。ここで、第1ア
ルゴリズムにおけるパラメータα、β、γは、図6にお
ける管の直径φおよびトーンホールの径ψに依存し、ま
た、シフトレジスタSRt3等の段数m3、m4、m6
は、トーンホールの高さt(t3、t4、t6)により
決定される。さらに、各シフトレジスタSRの各遅延時
間は、図6における各管部の長さL1〜L7に対応す
る。すなわち、合成すべき楽音の音高に対応するように
制御される。また、パラメータγt1、γt2、γt3は、図
6におけるトーンホールが開のときには負、閉のときに
は正となるように反映される。このように、管体シミュ
レート部20によるシミュレート態様を決定する各パラ
メータは、図示しない制御処理部によって、シミュレー
トすべき管体の形状に基づいて出力されるようになって
いる。なお、このアルゴリズムにおいては、ジャンクシ
ョン部におけるトーンホールの有無なども任意に設定で
きるようになっている。
【0034】1−3−2:管体シミュレート部の第2ア
ルゴリズム 次に、第2アルゴリズムについて説明する。図7は、第
2アルゴリズムによる管体シミュレート部20の構成を
示すブロック図である。このアルゴリズムは、トーンホ
ールを持たない管体モデルであり、管の終端までの長さ
が発音周波数を決めるようになっている。なお、このよ
うな管体モデルには、管体部分を2ポートのWGN(ウ
ェーブガイドネットワーク)による縦続接続にて実現す
るタイプと、管体の一部である円錐部分を簡単なWGN
により実現するタイプとの2種類が存在するが、このア
ルゴリズムは後者のタイプに対応している。
【0035】また、このタイプは、円錐の入力音響イン
ピーダンスの近似式から導出され、図7に示すアルゴリ
ズムでは、2つの円筒WGNが並列接続されている。こ
のアルゴリズムにおいても、各種パラメータは、管体形
状にしたがって算出される。すなわち、これらのパラメ
ータは、第1アルゴリズムと同様に、図示しない制御処
理部から出力される。なお、第1および第2アルゴリズ
ムについては、例えば、特開平5−80761号公報が
詳しい。
【0036】1−4:実施例効果 従来では、空気圧が大きくなっても狭い管路では流速が
飽和して空気圧と流速とが比例しないことをシミュレー
トした結果、励振信号は、圧力差がある程度の大きさに
なると、飽和して一定値となって、ffにかかる音色を
うまく合成できなかった。かかる構成によれば、圧力差
が大きくなると、ルート関数により傾きは小さくなりつ
つも飽和することなく単調に増加し続けるので、圧力差
に応じた励振信号を生成することができ、このため、f
fにかかる音色をうまく合成できることとなる。また、
圧力差Δpがゼロに近い付近で変化しても、流速fの変
化分は、リードの間隙Sによらず一定となるので、音圧
信号fzの励振信号としての変化分を確保することがで
きる。これにより、リードの間隙Sが小さい場合に、管
体シミュレート部20による音色変化が少ないという問
題を回避することができる。
【0037】なお、上述した実施例では特に説明しなか
ったが、非線形テーブル14により求めたリードの間隙
Sを、それぞれ乗算器FBNLおよびFBを介して加算
器13および加算器18に帰還して、フィードバックを
する構成としても良い。これによって、シミュレートす
べきリードにヒステリシス特性を持たせることができ、
また、それぞれの乗算係数をゼロとすればその特性もな
いものに設定することができる。
【0038】2:変形例 次に、上述した実施例の変形例について図8を参照して
説明する。この図に示すように、この変形例では、音圧
信号Fzは、乗算器Mにより係数が乗じられて加算器1
8に供給され、圧力差Δpと加算されるようになってい
る。かかる構成により、リードの間隙Sの算出において
フィードバック制御を行なうことができるようになって
いる。
【0039】なお、上述した実施例では、ハードウェア
で構成する場合を示したが、かかる信号処理の手順をプ
ログラムで記述し、DSPやMPU等で実行しても、同
等な楽音合成が可能であり、また、両者の混合システム
でも楽音合成が可能である。すなわち、本願は、ハード
ウェア構成のみならず、信号の処理手順を示したアルゴ
リズムでも楽音合成が可能である。
【0040】
【発明の効果】以上説明したこの発明によれば、次のよ
うな効果がある。合成すべき楽音の音量を大きくする演
奏操作量に対し、励振信号のレベルが単調増加するの
で、演奏操作がffにかかるものであっても、合成され
る音色が弱くなることをなくすることができる(請求項
1、6)。励起信号の生成に、ループ手段から戻ってき
た信号(帰還信号)が反映されるので、自然楽器の特徴
を活かしたものとすることができる(請求項2)。励起
信号の特性を定める関数は、少なくともルート関数を有
することになるが、励起信号の生成の際には、変換テー
ブルを介するので、励起信号の生成に要する時間を短縮
化することができる(請求項3)。演奏操作量がゼロに
近い場合でも、その変化分がある程度があるならば、励
振信号の変化分を確保することができるので、ループ手
段による働きをより確かなものへとすることができる
(請求項4)。所定の関数が有する特性曲線を、実際の
楽器の非線形特性に近似させることができる(請求項
5)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による第1実施例の構成を示すブロ
ック図である。
【図2】 同実施例における非線形部モデルの構成を示
すブロック図である。
【図3】 同実施例における管体ユニットで用いられる
第1アルゴリズムの構成を示すブロック図である。
【図4】 第1アルゴリズムにおけるジャンクション部
J1、J2、J5の構成を示すブロック図である。
【図5】 第1アルゴリズムにおけるジャンクション部
J3、J4、J6の構成を示すブロック図である。
【図6】 第1アルゴリズムによりシミュレートされる
管体形状を示す概略構成図である。
【図7】 同実施例における管体ユニットで用いられる
第2アルゴリズムの構成を示すブロック図である。
【図8】 この発明による第2実施例の構成を示すブロ
ック図である。
【図9】 (a)は従来構成による圧力差と流速との関
係を示す図であり、(b)は実際の自然楽器による同関
係を示す図である。
【図10】 実施例による特性と図9(b)に示した特
性との関係を示す図である。
【図11】 従来の楽音合成装置における励振回路の構
成を示すブロック図である。
【図12】 同励振回路におけるジャンクション部の構
成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10……励振回路(励振信号生成手段)、20……管体
シミュレート部(ループ手段)、204……ルート関数
テーブル(変換テーブル)、fz……音圧信号(励振信
号)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも遅延手段とローパスフィルタ
    とを有するループ手段と、 励起信号を生成して前記ループ手段に供給する励起信号
    生成手段とを備え、前記励起信号を取り出すことにより
    楽音信号を合成する楽音合成装置において、 前記励起信号生成手段は、前記励起信号のレベル特性
    を、合成すべき楽音の音量を大きくする演奏操作量に対
    し、所定の関数にしたがって変化させ、 前記所定の関数は、前記演奏操作量の楽音を大きくする
    方向の変化に対して、前記励振信号のレベルが単調増加
    することを特徴とする楽音合成装置。
  2. 【請求項2】 前記励振信号生成手段は、前記ループ手
    段からの信号と、演奏操作に応じた信号との差分に応じ
    て前記励振信号を生成することを特徴とする請求項1記
    載の楽音合成装置。
  3. 【請求項3】 前記所定の関数は少なくともルート関数
    を含み、 前記励振信号は、当該ルート関数を記憶する変換テーブ
    ルを介して生成されることを特徴とする請求項1または
    2記載の楽音合成装置。
  4. 【請求項4】 前記所定の関数は、楽音を大きくする演
    奏操作量がゼロの場合における励振信号の変化分が、他
    の演奏操作量の変動に対し一定となる特性であることを
    特徴とする請求項1記載の楽音合成装置。
  5. 【請求項5】 前記所定の関数は、入力対出力の特性曲
    線が非線形である非線形特性を有し、前記励起信号生成
    手段は、当該特性曲線が前記演奏操作量に応じて座標上
    を移動するように制御することを特徴とする請求項1ま
    たは2記載の楽音合成装置。
  6. 【請求項6】 励起信号を生成する生成過程と、 この励起信号を、少なくとも遅延手段とローパスフィル
    タとを有するループ手段に循環させて取り出すことによ
    り楽音信号を合成する合成過程とを備える楽音合成方法
    において、 前記生成過程は、前記励振信号のレベル特性を、合成す
    べき楽音の音量を大きくする演奏操作量に対し、所定の
    関数にしたがって変化させ、 前記所定の関数は、前記演奏操作量の楽音を大きくする
    方向の変化に対して、前記励振信号のレベルが単調増加
    することを特徴とする楽音合成方法。
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