JPH08253419A

JPH08253419A - Ｈｉｖ感染予防用コンタクトレンズ用剤

Info

Publication number: JPH08253419A
Application number: JP5838295A
Authority: JP
Inventors: Yutaka Shichimiya; 豊七宮
Original assignee: Hoya Corp
Current assignee: Hoya Corp
Priority date: 1995-03-17
Filing date: 1995-03-17
Publication date: 1996-10-01

Abstract

(57)【要約】【構成】硫酸化糖を含有し、コンタクトレンズの装用
によるＨＩＶ感染を予防するために用いられることを特
徴としたコンタクトレンズ用剤。【効果】本発明のコンタクトレンズ用剤は、ウイルス
の標的細胞との接着阻止作用および殺ウイルス作用を有
する硫酸化糖を用いているので、ＨＩＶ感染予防用コン
タクトレンズ用剤として好ましく用いられる。また必須
成分である硫酸化糖は、ウイルスの核酸に作用する通常
の抗ウイルス剤よりも温和な薬剤であり、本発明のコン
タクトレンズ用剤で処理後のコンタクトレンズを装用し
たときに眼に悪影響を与えにくい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はコンタクトレンズ装用、
特にトライアル用のコンタクトレンズ装用によるＨＩＶ
感染を予防するために用いられるコンタクトレンズ用剤
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ヒト後天性免疫不全症候群（acquired i
mmunodeficiency syndrome: AIDS: エイズ）の発端は、
１９８１年にアメリカで５人の同性愛男性が、カリニ肺
炎を発症し、そのうち２名が死亡したという報告にはじ
まる。その後、１９８３年に、パール・シナウスらはエ
イズ患者からＴ−リンパ球指向性レトロウイルスの単離
に成功した。

【０００３】エイズの原因ウイルスは、それぞれの発見
者が、ＨＴＬＶ−III（human T-lymphotropic virus ty
pe III），ＬＡＶ（lymphadenopathy-associated viru
s），ＡＲＶ（ＡＩＤＳ−associated retrovirus）等の
名称を与えたため、混乱を生じたが、１９８６年国際委
員会でＨＩＶ（human immunodeficiency virus）という
名称で統一することに決定された。

【０００４】上述のＨＩＶの感染によって引き起こされ
るエイズは生体の免疫系に著しい障害をきたし、その結
果、種々の日和見感染や悪性腫瘍が発症する極めて予後
不良の疾患であり、かつ死亡率が非常に高い疾患であ
る。

【０００５】ＨＩＶ初期感染者がエイズを発症するまで
には１年以上の臨床的潜伏期があり、その間の病態の推
移として、ＨＩＶ急性感染期、無症状ＨＩＶ保有（キャ
リア）期、エイズ発症と区分されている。従って、エイ
ズはＨＩＶ感染患者の末期の病態に位置づけられてい
る。

【０００６】ＨＩＶ初期感染後、早くて１．５カ月、通
常２〜３カ月経過して血清中に抗ＨＩＶ抗体が検出され
る。しかし抗ＨＩＶ抗体保有者は無症状であるため、Ｈ
ＩＶ感染の有無を判別するのはかなり難しい。このＨＩ
Ｖは、生体の体液を媒体として感染する。特に血清や精
液、ときに唾液を介して伝播することはよく知られてい
ることであるが、１９８５年フジカワらにより、結膜で
もＨＴＬＶ−IIIが存在することが証明された。さらに
１９８６年テルボ（Tervo）らは、ＡＩＤＳ患者にソフ
トコンタクトレンズを装用させ、そのレンズや洗浄液に
ＨＩＶを認めている。

【０００７】上記の結果よりコンタクトレンズのトライ
アルレンズ（試用レンズ）を介しての伝播が憂慮されて
いるので、アメリカ防疫センターは「トライアルハード
コンタクトレンズでは、ソフトコンタクトレンズの消毒
用である過酸化水素製剤での消毒、トライアルソフトコ
ンタクトレンズでは、過酸化水素製剤での消毒と加熱に
よる消毒を使用の都度行うこと」との勧告を出してい
る。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし過酸化水素製剤
による消毒の場合、中和する必要があり、中和を忘れる
と眼に悪影響を与える。また忙しいクリニックにおいて
は、煮沸による消毒を忘れてしまい、そのまま他の人に
コンタクトレンズを装用させると、医療上かなり危険な
状態にあり、完全な対策とは言えない。

【０００９】そのため、抗ウイルス剤がコンタクトレン
ズ保存液に含有されていることが望ましいが、抗ウイル
ス剤は、かなり強力な薬剤であるために数多くの副作用
を有している。通常コンタクトレンズを装用している人
は視力以外は正常な人が大半を占めているため、このよ
うな強力な薬剤は不向きである。またエタノールなどの
溶媒系消毒剤やヨウ素などの酸化剤系消毒剤ではコンタ
クトレンズの強度が劣化することがある。

【００１０】本発明の目的は、ウイルスの核酸に直接作
用する抗ウイルス剤の代りの薬剤を用いてＨＩＶ感染を
予防できるコンタクトレンズ用剤を提供することにあ
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的達
成のため研究を重ねた結果、通常の抗ウイルス剤のよう
にウイルスの核酸に作用する薬剤ではなく、ウイルスの
標的細胞（ＣＤ４＋）との接着を阻止する作用および殺
ウイルス作用を有した薬剤である硫酸化糖をコンタクト
レンズ用剤（特にトライアルレンズ用保存液）に含有さ
せると、ＨＩＶ感染を予防できることを見い出した。

【００１２】本発明はこのような知見に基づいて完成し
たものであり、硫酸化糖を含有し、コンタクトレンズの
装用によるＨＩＶ感染を予防するために用いられること
を特徴としたコンタクトレンズ用剤を要旨とする。

【００１３】以下、本発明を詳しく説明する。

【００１４】本発明のコンタクトレンズ用剤は、コンタ
クトレンズの洗浄剤、殺菌剤、保存剤などに用いられる
が、保存剤、特にトライアルレンズ用保存液に用いるの
が好ましい。

【００１５】本発明のコンタクトレンズ用剤において、
硫酸化糖は、ウイルスの標的細胞（ＣＤ４＋）との接着
を阻止する作用および殺ウイルス作用を有し、必須の成
分である。

【００１６】硫酸化糖には、種々のものが存在するが、
デキストラン硫酸塩、ヘパリン、カラギーナン、コンド
ロイチン硫酸塩、硫酸化レンチナン、ノイロナロビン、
フコイダン、キシロフラナン硫酸塩、リボフラナン硫酸
塩、セルロース硫酸塩、カードラン硫酸塩等が挙げられ
る。これらの硫酸化糖は１種または２種以上用いられ
る。

【００１７】硫酸化糖のコンタクトレンズ用剤中の含有
量は０．００００１重量％以上であるのが好ましい。そ
の理由は、硫酸化糖の含有量が０．００００１重量％未
満であると、ＨＩＶ感染予防効果が弱くなるからであ
る。硫酸化糖の含有量は０．００００１〜１０重量％が
より好ましく、０．００５〜０．５重量％が特に好まし
い。

【００１８】本発明のコンタクトレンズ用剤には、無機
塩類、有機酸塩類、防腐剤又は安定化剤も加えることが
出来る。

【００１９】無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化
カリウム、リン酸水素２ナトリウム、リン酸２水素ナト
リウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
これらの無機塩類は主として浸透圧やｐＨの調整のため
に用いられるが、１種類用いてもよく、あるいは２種以
上用いてもかまわない。またその他の二次的な効果を期
待して添加してもかまわない。添加量は、その目的によ
り適宜決めてよい。

【００２０】有機酸塩類としては、クエン酸ナトリウ
ム、酒石酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、乳酸ナト
リウム、グルタミン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム
等が挙げられる。これらの有機塩類は主としてｐＨの調
整のために用いられるが、１種類用いてもよく、あるい
は２種以上用いてもかまわない。またその他の二次的な
効果を期待して添加してもかまわない。添加量は、その
目的により適宜決めてよい。

【００２１】防腐剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸
ナトリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウ
ム、パラオキシ安息香酸のメチルエステル、エチルエス
テル、プロピルエステルあるいはブチルエステル、サリ
チル酸ナトリウム、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸
塩、クロロブタノール、ベンジルアルコール、クロロヘ
キシジン塩、塩化ベンザルコニウム、ポリアミノプロピ
ルビグアニド、塩化ポリドニウム等が挙げられる。添加
量は目的とする細菌、黴等を殺滅及び抑制するのに充分
な量以上であれば適宜決めてよい。

【００２２】その他、ｐＨ調整のために水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等のアルカリ、塩酸、クエン酸等の
酸を加えてもかまわない。

【００２３】また、安定化剤としては、金属封止剤、例
えばエデト酸塩や、濡れ性向上のための水溶性高分子、
例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース等を加えてもかまわない。

【００２４】また、本発明のコンタクトレンズ用剤に
は、酵素や界面活性剤のようなコンタクトレンズの洗浄
を目的とした成分を加えてもかまわない。

【００２５】本発明のコンタクトレンズ用剤の形態は、
液剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、又はこれに類する一般的に
知られている剤形であればいずれでもよく、これらの剤
形に調整するために必要な添加物はコンタクトレンズに
影響をおよぼさない限り適宜使用してかまわない。これ
らは、そのまま、あるいは水性媒体で希釈、あるいは水
性媒体に溶解して使用するものである。

【００２６】

【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。

【００２７】表１に各種硫酸化糖を含有させたＨＩＶ感
染予防用コンタクトレンズ用剤の配合比を示す。

【００２８】

【表１】

【００２９】表１に示す実施例１〜３および比較例のコ
ンタクトレンズ用液について抗ＨＩＶ試験を、下記のよ
うにして行なった。

【００３０】抗ＨＩＶ試験各ＨＩＶ感染予防用コンタクトレンズ用液の抗ＨＩＶ効
果を調べるため、AminRM ら（AIDS Research and Human
Retroviruses; 7(4)403-408 (1991)）に記載されてい
る試験管内試験系を用い、２−ヒドロキシエチルメタク
リレートとアルキルメタクリレートを主体とする共重合
体からなるソフトコンタクトレンズで試験して得られた
情報より、ＨＩＶ陰性（−），ＨＩＶ陽性（＋），と記
載した。

【００３１】試験結果は表２に示す。表２より実施例１
〜３のコンタクトレンズ用液の場合、ＨＩＶ陰性（−）
であることが明らかである。

【００３２】

【表２】

【００３３】

【発明の効果】以上説明したように本発明のコンタクト
レンズ用剤は、ウイルスの標的細胞との接着阻止作用お
よび殺ウイルス作用を有する硫酸化糖を用いているの
で、ＨＩＶ感染予防用コンタクトレンズ用剤として好ま
しく用いられる。また必須成分である硫酸化糖は、ウイ
ルスの核酸に作用する通常の抗ウイルス剤よりも温和な
薬剤であり、本発明のコンタクトレンズ用剤で処理後の
コンタクトレンズを装用したときに眼に悪影響を与えに
くいという利点がある。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】硫酸化糖を含有し、コンタクトレンズの
装用によるＨＩＶ感染を予防するために用いられること
を特徴としたコンタクトレンズ用剤。
【請求項２】硫酸化糖が、デキストラン硫酸塩、ヘパ
リン、カラギーナン、コンドロイチン硫酸塩、硫酸化レ
ンチナン、ノイロナロビン、フコイダン、キシロフラナ
ン硫酸塩、リボフラナン硫酸塩、セルロース硫酸塩およ
びカードラン硫酸塩から選ばれる少なくとも１種であ
る、請求項１に記載のコンタクトレンズ用剤。
【請求項３】硫酸化糖が０．００００１重量％以上含
有されている、請求項１または２に記載のコンタクトレ
ンズ用剤。
【請求項４】トライアルレンズ用保存液である、請求
項１〜３のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ用
剤。