JPH08232183A

JPH08232183A - 複写トナー用脱墨液

Info

Publication number: JPH08232183A
Application number: JP4041795A
Authority: JP
Inventors: Naoki Yoshie; 直樹吉江; Masaaki Takama; 正彰高間
Original assignee: Minolta Co Ltd
Current assignee: Minolta Co Ltd
Priority date: 1995-02-28
Filing date: 1995-02-28
Publication date: 1996-09-10

Abstract

(57)【要約】【目的】オフィスにおける種々のＯＨＰシートなどの
記録媒体の再使用に有用な複写トナー用脱墨剤を提供す
る。【構成】（ａ）ジエチレングリコールモノエチルエー
テルアセテートを３０〜８０重量％、（ｂ）末端にプロ
ピル基またはブチル基を有するグリコール系モノエーテ
ルを１０〜５５重量％、および（ｃ）水を１０〜３０重
量％含有してなることを特徴とする複写トナー用脱墨
液。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、媒体上に形成された樹
脂成分を含む複写トナーをクリーニングして、再使用可
能な媒体を提供するための複写トナー用脱墨剤に関する
ものであり、特にオーバーヘッドプロジェクター用透光
性シート（ＯＨＰシート）上に現像、定着された複写ト
ナー像のクリーニングに有効な複写トナー用脱墨剤に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】電子写真プロセスによって得られた画像
を消去もしくは修正する液として、いくつかのものが公
知となっている。例えば、特公平５−７０７６３号に
は、ジエチレングリコールジアルキルエーテルとフタル
酸ジアルキルエステルからなる修正液が示されている
が、臭いや引火性の面などで問題のあるものであった。

【０００３】一方、例えば特公平２−３８１４６号およ
び特開昭５９−１７６３９８号には、グリコール系の酢
酸エステルを使用した剥離液が開示されている。

【０００４】しかしながら、特公平２−３８１４６号に
記載の剥離液は、トルエン、キシレンに代表される芳香
族系溶剤を主成分として含んでいる。このような芳香族
系溶剤は、不快な臭いを有し、一般に引火点が低く、問
題であった。また、水に対してほどんど不溶なため、水
をある程度含有させると水層と油層に分離しやすい。

【０００５】また、特開昭５９−１７６３９８号に記載
のものは、グリコールエーテルまたはグリコールアセテ
ート系溶剤を主成分としている。本発明者らが、この洗
浄液で種々の記録媒体、特に各種のＯＨＰシートにおけ
るトナー脱墨性について実験を行なったところ、ある種
のＯＨＰシートに対しては十分なクリーニング性が得ら
れず、汎用性という点で満足のできる結果は得られなか
った。また、上記公報に示された液の多くは、比較的多
量の界面活性剤を添加することによって均一性を確保し
ているものであり、洗浄液塗布後の記録媒体の乾燥性な
どといった面で問題の生じるものであった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記の問題点に鑑みて
本発明は、媒体上に形成された樹脂成分を含む複写トナ
ーをクリーニングして、再使用可能な媒体を提供するた
めの新規な組成の複写トナー用脱墨剤を提供することを
目的とする。本発明はまた、オフィスにおける記録媒
体、特にＯＨＰシートの再使用に有用な複写トナー用脱
墨剤を提供することを目的とする。

【０００７】さらに本発明は、安全性が高いこと、
臭気が少ないこと、引火しにくいこと、塗布後にお
いて乾燥しやすいこと、長期的に安定してクリーニン
グできること、相分離を引起こさないこと、および
種々のＯＨＰシートに対して適用可能なことといった従
来の洗浄液では、達成し得なかった種々の性能を満足し
てなる複写トナー用脱墨剤を提供することを目的とす
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の複写トナー用脱墨液は、（ａ）下記一般式（１）で
示される化合物ＣＨ₃ＣＯＯ（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＲ₁…（１）［但し、式中、ｎは２〜４の自然数、Ｒ₁はメチル基も
しくはエチル基を示す。］および下記一般式（２）で示
される化合物Ｒ₂Ｏ（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＲ₃…（２）［但し、式中、ｎは２〜５の自然数、Ｒ₂およびＲ₃は
炭素数３以下のアルキル基を示す。］からなる群より選
ばれる少なくとも１種の化合物を３０〜８０重量％、
（ｂ）下記一般式（３）で示される化合物Ｒ₄（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＨ…（３）［但し、式中、ｎは２〜４の自然数、Ｒ₄は炭素数３ま
たは４のアルキル基を示す。］を１０〜５５重量％、お
よび（ｃ）水を１０〜３０重量％含有してなることを
特徴とするものである。

【０００９】

【作用】上記した〜の性能を満足するために、複写
トナー用脱墨液を構成する個々の溶剤には次のような制
約がある。

【００１０】すなわち、上記およびがあるために、
脱墨液を構成する個々の溶剤には、安全性が高く、臭気
の少ないものを使用する必要がある。不快な臭気のする
溶剤は使用しにくく、また使用したとしてもごく少量と
する必要がある。また、個々の溶剤の蒸気圧は低い方が
好ましい。

【００１１】また上記を克服するために、脱墨液を構
成する個々の溶剤には引火性が高い溶剤は使用できな
い。引火性の高い溶剤を明確には定義できないが、使用
される溶剤の引火点は少なくとも常温以上でなければな
らない。引火性を下げるために本発明に係る脱墨液には
水を添加した。本脱墨液が水を必須成分とする理由の第
一がここにある。

【００１２】またの乾燥性であるが、乾燥性が悪い
と、クリーニング済みの記録媒体、特にＯＨＰシートを
コピー機等で使用する際、重走などのトラブルを引き起
す。従って、脱墨液に乾燥性を悪化させるほどの多量の
界面活性剤を添加することはできない。

【００１３】さらに前記を満たすため、すなわち長期
的に安定して使用するために、クリーニングによる液の
汚れはなるべく少ない方が良い。媒体上から樹脂を含む
複写トナーをクリーニングするとき、材料を溶解によっ
て除去するのではなく、剥離によって除去することが望
ましい。溶解によってトナーを除去すると、液が汚れ、
媒体に再付着する可能性がある。そのために、本発明に
係る脱墨液にはある程度の量の水を添加することにより
媒体への再付着を防止したものである。これが、本発明
に係る脱墨液が水を必須成分とする理由の一つである。

【００１４】また前記の相分離についてであるが、相
分離を引起すとクリーニングにむらが生じ好ましくな
い。前記したように本発明に係る脱墨液は水を必須成分
とするので、脱墨液を構成する個々の溶剤はある程度水
と相溶性をもつ必要がある。なお、、の要件につい
ては後に詳述する。

【００１５】本発明においては、これらの要件を満足す
るために、脱墨液の主成分に特定のグリコール系アセテ
ートまたはアルキレングリコールジアルキルエーテルを
用い、残成分として末端にプロピル基もしくはブチル基
を有したグリコールモノエーテル及び水を用いたもので
ある。

【００１６】なお、上記一般式（１）で表されるグリコ
ール系アセテートは公知のように、種々の樹脂を溶解す
る力が強く、臭いが少なく、引火点も高い。また水溶性
であるために、水と混合しても相分離を引起さない。一
般式（１）で表わされるグリコール系アセテートとして
は、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテー
ト、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテー
ト、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセ
テート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル
アセテート、テトラエチレングリコールモノエチルエー
テルアセテートが含まれる。

【００１７】また、上記一般式（２）で表わされるアル
キレングリコールジアルキルエーテルは樹脂に対する溶
解力が強い。なお、引火点、臭気、水との相溶性に留意
すると、Ｒ₂、Ｒ₃はＣＨ₃〜Ｃ₃Ｈ₇、ｎは２〜５で
ある必要性がある。ｎが１であると引火点が高く、ｎが
５を越えるものであると溶解性が低下する。また、
Ｒ₂、Ｒ₃の炭素数が４以上であると水との相溶性が十
分でなくなる。アルキレングリコールジアルキルエーテ
ルとしては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、
ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレン
グリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール
ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエ
ーテルなどが挙げられるが、もちろんこれに限定される
わけではない。

【００１８】ここで、通常市販されているＯＨＰシート
には表面にコート処理が施されオーバーコート層が設け
られている。このコート剤は各社各様であり、このコー
ト剤の種類により、トナーの脱墨性は著しく異なってく
ることが確認されている。樹脂コート剤として一般的に
用いられているものとして、ウレタン系樹脂、メラミン
系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース
系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などがあ
る。

【００１９】このようなオーバーコート層上のトナーを
除去する方法としては、オーバーコート層を完全に取り
去り、オーバーコート層ごとトナーを除去する方法やあ
るいはオーバーコート層を傷つけずにトナーのみを液で
膨潤させ取り去る方法がある。オーバーコート層を中途
半端に膨潤させ、オーバーコート層を除去できない状態
では、クリーニング液によって膨潤したコート層とトナ
ーが接着し、クリーニングを困難なものとしてしまう。

【００２０】本発明者らは、上記（１）式で示されるグ
リコール系アセテートまたは上記（２）式で示されるア
ルキレングリコールジアルキルエーテルに水を添加して
なる組成の液で、かなり広範な種類のＯＨＰシート上の
トナーをクリーニングできることを先に確認していた。
しかし、一部の難溶性のオーバーコート層を持つＯＨＰ
シートでは、オーバーコート層を中途半端に膨潤させ、
オーバーコート層を除去できず、クリーニング液によっ
て膨潤したコート層と印字材料が接着し、クリーニング
が困難であった。特に欧州製のＯＨＰシートでは、例え
ばメラミン樹脂に代表されるようなアセトン、テトラヒ
ドロフラン（ＴＨＦ）等にほとんど溶解しない難溶性の
オーバーコート層を有するフィルムが多くこれらに対す
るクリーニング性は不十分なものとなった。

【００２１】ところが、このような上記（１）式で示さ
れるグリコール系アセテートまたは上記（２）式で示さ
れるアルキレングリコールジアルキルエーテルに水を添
加してなる組成液に、末端にプロピル基もしくはブチル
基を持ったグリコール系のモノエーテルを添加すると、
上記の難溶性のオーバーコート層を有するフィルムでも
クリーニングが可能となることを本発明者らはさらに鋭
意研究を行なった結果得たものである。これを観察する
と、液がオーバーコート層ごとトナーを剥離しているの
ではなく、液がオーバーコート層を膨潤させることもな
くトナーを剥離していることが明らかとなった。すなわ
ち、上記のような特定の末端基を有するグリコール系の
モノエーテルを添加すると、オーバーコート層を傷つけ
ることなしに印字材料を膨潤させて除去できたものであ
る。

【００２２】一般にグリコール系のモノエーテルの樹脂
に対する溶解力は上記（１）式で示されるグリコール系
アセテートや上記（２）式で示されるアルキレングリコ
ールジアルキルエーテルのそれよりも弱いため、グリコ
ール系のモノエーテルを添加すると液全体としての溶解
力は、元の液よりも若干低下するものと推定される。そ
のためグリコールモノエーテルを添加した液の溶解力が
適度に弱められオーバーコート層を傷つけることなくク
リーニングを行うことが可能になるものと考えられる。
その反面で、コート層への浸透力を弱めすぎると、トナ
ーヘの浸透力を弱め、そのためクリーニングが困難にな
ることも明らかとなった。

【００２３】当初グリコールモノエーテルの一つである
エチルカルビトール（ジエチレングリコールモノエチル
エーテル）やメチルカルビトール（ジエチレングリコー
ルモノメチルエーテル）を添加してみて、難溶性のオー
バーコート層をもつＯＨＰシートのクリーニングを試み
たが、コート層を傷つけなかったものの液の浸透力が弱
まったためにトナーのクリーニングが困難であった。と
ころが、プロピルカルビトール（ジエチレングリコール
モノプロピルエーテル）やブチルカルビトール（ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル）を添加すると、オ
ーバーコート層を傷つけることなしにトナーを良好に除
去できるものであった。これはグリコール系モノエーテ
ルの中では、プロピルカルビトールやブチルカルビトー
ルの樹脂に対する溶解力が比較的高いためと推定され
る。

【００２４】このように本発明においては、上記（１）
式で示されるグリコール系アセテート／水混液または上
記（２）式で示されるアルキレングリコールジアルキル
エーテル／水混液に、末端にプロピル基もしくはブチル
基を有するグリコール系のモノエーテルを添加すること
で、脱墨液の汎用性を大きく広げたものである。

【００２５】以下、本発明を実施態様に基づきより詳細
に説明する。本発明の複写トナー用脱墨液は、必須成分
として（ａ）ジエチレングリコールモノエチルエーテル
アセテートまたはアルキレングリコールジアルキルエー
テル、（ｂ）上記一般式（３）で示されるグリコール系
のモノエーテル化合物、および（ｃ）水を含有してなる
ものである。

【００２６】本発明の脱墨液において、（ａ）ジエチレ
ングリコールモノエチルエーテルアセテートまたはアル
キレングリコールジアルキルエーテルは、脱墨液総量の
３０〜８０重量％、より好ましくは５０〜７０重量％配
合される。３０重量％未満であると十分にクリーニング
を行なうことができない虞れがあり、一方、８０重量％
を越えるとＯＨＰシートのコート層を傷つけずにトナー
を除去できない場合が生じる虞れがあるためである。

【００２７】また本発明において用いられるグリコール
モノエーテルとしては脱墨液全体の引火性を下げるため
に引火性の低いものであることが望ましく、そのため上
記一般式（３）において、アルキレン基の数ｎを２〜４
とした。すなわち、ｎが１であると引火性が下って引火
しやすくなり、ｎが５以上であると溶解力が弱まるため
である。また、一般式（３）において末端のアルキル基
の炭素数を３または４としたのは、前記したようにメチ
ル基あるいはエチル基であるとクリーニング性が低下す
る虞れがあるためである。このような一般式（３）で表
されるれるグリコール系のモノエーテルとしては、具体
的には、例えば、ジエチレングリコールモノプロピルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ト
リエチエレングリコールモノプロピルエーテル、トリエ
チレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられ
る。

【００２８】本発明に係る脱墨液において、このような
一般式（３）で表わされるグリコール系のモノエーテル
は、脱墨液総量の１０〜５５重量％、より好ましくは１
０〜３０重量％含有されていることが望ましい。１０重
量％未満であると、その添加効果が十分でなく、一方４
０重量％を越えると脱墨液全体の溶解性が落ち、クリー
ニング力が弱まるためである。

【００２９】さらに本発明の脱墨液においては水が含有
されるが、その添加量は、脱墨液総量の１０〜３０重量
％、より好ましくは１０〜２０重量％とする。水の添加
量が少ないと、脱墨液の引火性が上り、火気に対しての
安全性が低減すること、また媒体上の複写トナーを溶解
し易くなり、液の汚れを引起すことを考慮して水の含有
量の下限は１０重量％とする。一方、水の含有量が多い
とクリーニング力が低下することを考慮して、水の含有
量の上限は３０重量％とする。

【００３０】なお、上記（ｂ）のグリコール系モノエー
テル化合物は、（ｃ）の水の添加量によって樹脂に対す
る溶解力が変化するため、（ｂ）＋３（ｃ）≦９０の関
係を満たすように配合することが好ましい。

【００３１】本発明の脱墨液には、上記（ａ）〜（ｃ）
の他に補助成分として、（ｄ）樹脂に対する溶解性の高
い溶剤、（ｅ）アミノアルコール、（ｆ）界面活性剤を
必要に応じて添加してもよい。以下、上記（ｄ）〜
（ｆ）について説明する。

【００３２】本発明の脱墨液においては必要に応じて、
（ｄ）複写トナーに含まれる樹脂に対する溶解性の高い
溶剤を添加してもよい。もちろん添加する溶剤は臭気が
少なく、引火点の高いものが好ましい。引火点の下限は
明確には定義できないが、少なくとも７０℃以上は必要
である。このような樹脂に対する溶解力の強い溶剤とし
ては、ケトン系溶剤、多価エステル溶剤、環状エステル
溶剤およびアミド系溶剤が挙げられる。

【００３３】ケトン系溶剤としては、例えば、アセトニ
ルアセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノ
ン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどが挙げら
れるが、もちろんこれに限定されるわけではない。

【００３４】また多価エステル溶剤としては、例えば、
マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マレイン酸ジメ
チル、マレイン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク
酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、酒石酸ジブチル、エ
チレングリコールジアセテート、トリアセチンなどが挙
げられるが、もちろんこれに限定されるわけではない。

【００３５】環状エステル溶剤としては、例えば、γ−
ブチロラクトン、炭酸プロピレンなどが挙げられるが、
もちろんこれに限定されるわけではない。

【００３６】さらにアミド系溶剤としては、ホルミアミ
ド、Ｎ−メチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ−ジメチルホルム
アミド、Ｎ，Ｎ−ジエチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ−ジメ
チルアセトアミド、Ｎ−メチルプロピオンアミド、Ｎ，
Ｎ，Ｎ´，Ｎ´−テトラメチル尿素、Ｎ−メチル−２−
ピロリドンなどが挙げられるが、もちろんこれに限定さ
れるわけではない。

【００３７】本発明の脱墨液において、このような樹脂
に対する溶解力の強い有機溶剤は、一種もしくは二種以
上添加することが可能であるが、その添加量は脱墨液総
量の３０重量％以下、より好ましくは２０重量％以下と
することが望ましい。３０重量％を越えるとクリーニン
グ性が充分でなくなる虞れがあるためである。

【００３８】また、本発明の脱墨液においては、媒体に
対する浸透力を増加させるために、必要に応じて、
（ｅ）アミノアルコールを添加することもできる。アミ
ノアルコールとしては例えば、２−アミノエタノール、
Ｎ，Ｎ−ジメチルエタノールアミン、Ｎ，Ｎ−ジエチル
エタノールアミン、ジエタノールアミン、Ｎ−ブチルエ
タノールアミン、トリエタノールアミン、Ｎ，Ｎ−ジブ
チルエタノールアミン、Ｎ−（β−アミノエチル）エタ
ノールアミンなどが挙げられる。なお、これらのアミノ
アルコールの添加量は、脱墨液総量の１０重量％以下と
することが適当である。

【００３９】ここで本発明の脱墨液は液全体が均一であ
り、長期間放置後も相分離を引起さないものである。前
記したように脱墨液に相分離が生じるとクリーニングむ
らが生じる虞れが高い。そのため、脱墨液を構成する各
成分はある程度水に対する相溶性を持つ必要がある。仮
に水に対する相溶性の全くない溶剤を有効量当該脱墨液
に添加したとすると、相分離を引起し、特に低温条件下
では相分離しやすくなる。また水に対する相溶性のない
溶剤を含有している液は、液の水成分の蒸発速度と液に
含まれている有機溶剤の蒸発速度が異なるため、水の含
有比率が変化しやすい。この点、水に対する相溶性の高
い溶剤で構成されている液は、溶剤と水の結合力のため
に、水成分の含有比率が変化しにくく、長期保存に対す
る安定性も高いものとなる。本発明者らが研究を重ねた
結果、常温（２０℃±１℃）において水１００ｇに対す
る溶解度が０．５ｇ未満の溶剤を有効量脱墨液に添加す
ると、低温条件、例えば５℃条件下では相分離を引起し
やすいことがわかった。またこのような液を開放下で長
期間保存すると、水の含有比率の変化が大きなものとな
ることが判明した。

【００４０】従って、本発明の脱墨液の必須成分である
（ａ）グリコール系アセテートまたはアルキレングリコ
ールジアルキルエーテル、および（ｂ）一般式（３）で
示されるグリコールモノエーテルはもちろんこのような
水に対する相溶性の条件を満すものであるが、前記した
ような必要に応じて配合される（ｄ）樹脂に対する溶解
力の強い有機溶剤についても、水への溶解度が０．５ｇ
／１００ｇ以上ものであることが望ましい。なお前記に
例示した各化合物はいずれもこの条件を満たすものであ
る。

【００４１】さらに、本発明の脱墨液には、剥離したト
ナーの再付着防止及び静電防止処理のために、トナー除
去後の記録媒体の乾燥性に問題を生じない範囲で（ｆ）
界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオ
ン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれもが
使用可能である。

【００４２】陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩
類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスル
ホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アル
キルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテル
ジスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエ
チレンアルキル硫酸エステル塩類、ナフタリンスルホン
酸ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸高分子界面活性剤
等が挙げられる。

【００４３】また陽イオン性界面活性剤及び両性界面活
性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム
塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられ
る。

【００４４】非イオン性界面活性剤としては、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアル
キルアリルエーテル、オキシエチレン−オキシプロピレ
ンコポリマー、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪
酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙
げられる。

【００４５】これらの界面活性剤は、単独であるいは二
種以上の混合物として本発明の脱墨液に添加し得るが、
その添加量は脱墨液総量の０．１〜４重量％程度とする
ことが望ましい。添加量が０．１重量％未満であると添
加による効果が十分でなく、一方、４重量％よりも多い
と脱墨液の乾燥性を低下させる虞れがあるためである。
本発明の複写トナー脱墨液は、媒体上に形成される樹
脂成分を含む複写トナー像をクリーニングして、再使用
可能な媒体を提供するために好適に使用される。特に、
ＯＨＰシートなどのプラスチックフィルム上に現像、定
着された複写トナー像のクリーニングに好ましく使用さ
れ得、難溶性のオーバーコート層を有するＯＨＰシート
に対しても良好なクリーニング力を発揮する。

【００４６】

【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、以下に例示する実施例はあくまで本発明の
説明のために挙げたものであって、本発明はこれらの実
施例に何ら限定されるものではない。

【００４７】実施例１〜１２および比較例１〜７それぞれ表１ないし表２に示すような成分を所定量づつ
配合し、これらを１０分間撹拌して、脱墨液Ａ〜Ｓを調
製した。このようにして調製された脱墨液Ａ〜Ｓに対
し、次に示すような条件にて、放置安定性、引火性、お
よびクリーニング性について試験した。得られた結果を
表３に示す。

【００４８】・放置安定性各脱墨液を５℃の温度下に１週間放置し、相分離の有無
を目視にて確認した。

【００４９】・引火性引火性の確認は、開放式引火点測定器を用いて行なっ
た。測定方法は次の通りである。試料を試料カップに入
れ、バーナーで試料カップを毎分５．５℃の割合で加熱
し、試料炎ノズルからでている火を適時近接させ、試料
が引火するかどうか確認した。このとき、液温１２０℃
以下において引火しないものを○、引火したものを×と
した。

【００５０】・クリーニング性それぞれの脱墨液のクリーニング性を確認するために記
録媒体にトナーを定着させた。このとき使用した複写機
はミノルタＥＰ５４２５で、記録媒体として、インペリ
アル社製ＰＰＣ−３０００とフォレックス社製Ｘ−５０
０との２種類のＯＨＰシートを使用した。なお、各ＯＨ
Ｐシートのオーバーコート層の材質を次の手順で分析し
た。まずＯＨＰシート上にクロロホルムを滴下した後、
スパチュラでオーバーコート層を削り取り測定試料とし
た。そしてＫＢｒ錠剤法にてＦＴ−ＩＲ（ＦＴＳ−４０
（ＢＩＯ−ＲＡＤ））を用いて上記試料を同定した。そ
の結果、前者のオーバーコート層の材質はメラミン樹脂
であり、後者のオーバーコート層の材質は架橋度の高い
スチレン−アクリル共重合体であることがわかった。

【００５１】液のクリーニング性は、簡易クリーニング
機で確認した。簡易クリーニング機の構成は図１に示
す。槽６には各脱墨液が満たされており、またこの槽６
の搬送方向前方側には、記録媒体７を槽６内に送り込む
ための給紙ローラー１が、また搬送方向後方側には、槽
６内より導出される記録媒体７を乾燥するための乾燥ロ
ーラー５が配置されており、また槽６内には、前後に搬
送ローラー２，４を有してクリーニングブラシ３が備え
付けられている。このクリーニングブラシの毛は長さ１
０ｍｍ、太さ３０μｍのナイロン製のものである。芯金
の径は１２ｍｍで、それぞれのブラシの間隔は２４ｍｍ
とされている。そして記録媒体７の通過する速度は１ｃ
ｍ／秒とされ、ブラシの回転速度は記録媒体の通過する
速度の３０倍とされた。このような簡易クリーニング機
において、給紙ローラー１を通り槽６内に送り込まれた
記録媒体７は、搬送ローラー２を通る前に約１分間液中
で浸漬される。浸漬後、前記所定の回転速度で回転する
クリーニングブラシ３を前記所定速度で通過後、搬送ロ
ーラー４の作用により、乾燥ローラー５へと運ばれ、こ
こにおいて乾燥されるものである。

【００５２】そして簡易クリーニング機を通過後の記録
媒体のクリーニング度を目視評価した。全く残トナーの
ないものを◎、少し痕跡が残るものの再使用には問題の
ないものを○、残存トナーがあり再使用上問題があるも
のを△、明らかに残存トナーがあるものを×とした。

【００５３】

【表１】

【００５４】

【表２】

【００５５】

【表３】

【００５６】

【発明の効果】以上述べたように本発明に係る複写トナ
ー用脱墨液は、（ａ）一般式（１）で表されるグリコー
ル系アセテートまたは上記一般式（２）で表わされるア
ルキレングリコールジアルキルエーテルジエチレングリ
コールモノエチルエーテルアセテートを３０〜８０重量
％、（ｂ）上記一般式（３）で示されるグリコール系モ
ノエーテルを１０〜５５重量％、および（ｃ）水を１０
〜３０重量％含有してなることを特徴とするものである
ので、安全性が高く、臭気が少なく、引火しにく
く、塗布後において乾燥しやすく、長期的に安定し
て優れたクリーニング性を発揮し、また相分離を引起
こさず、種々のＯＨＰシート、特に難溶性のオーバー
コート層を有するＯＨＰシートに対して適用可能である
といった従来の脱墨液では、達成し得なかった種々の性
能を満足してなり、汎用性の高い脱墨液として好適に使
用できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例において用いた簡易クリーニ
ング機の構成を模式的に示す図面である。

【符号の説明】

１…給紙ローラー、２，４…搬送ローラー、３…クリーニングブラシ、５…乾燥ローラー、６…槽、７…記録媒体。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】（ａ）下記一般式（１）で示される化合
物ＣＨ₃ＣＯＯ（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＲ₁…（１）［但し、式中、ｎは２〜４の自然数、Ｒ₁はメチル基も
しくはエチル基を示す。］および下記一般式（２）で示
される化合物Ｒ₂Ｏ（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＲ₃…（２）［但し、式中、ｎは２〜５の自然数、Ｒ₂およびＲ₃は
炭素数３以下のアルキル基を示す。］からなる群より選
ばれる少なくとも１種の化合物を３０〜８０重量％、（ｂ）下記一般式（３）で示される化合物Ｒ₄（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_nＨ…（３）［但し、式中、ｎは２〜４の自然数、Ｒ₄は炭素数３ま
たは４のアルキル基を示す。］を１０〜５５重量％、お
よび（ｃ）水を１０〜３０重量％含有してなることを特徴とする複写トナー用脱墨液。