JPH08193165A - 耐熱性乳酸系ポリマー成形物 - Google Patents
耐熱性乳酸系ポリマー成形物Info
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Abstract
をL−乳酸比率が75重量%以上となるように混合し、
その組成物にSiO250%以上を含有する結晶性無機
粉末を混合、溶融し、85〜125℃に設定された成形
機の金型に充填し、結晶化させながら成形することを特
徴とする耐熱性乳酸系ポリマー成形物の製造方法。 【効果】成形物は耐熱性と耐衝撃性が優れており、食品
トレー、飲料カップ等に好適であり、廃棄された場合、
天然物と同じように自然環境下で比較的短い期間の内に
無害な水と炭酸ガスに分解する。
Description
成形物に関する。さらに詳しくは耐熱性及び耐衝撃強度
に優れ、使用後、自然環境下で分解する耐熱性乳酸系ポ
リマー成形物に関する。
る容器の原料としてポリプロピレン、結晶性ポリエチレ
ンテレフタレート(以下、PETと略称する。)等の樹
脂が使用されている。また、PETは結晶化が遅く、成
形サイクルに長時間を要する欠点を有しているので、金
型温度を高くしたり結晶化核剤を使用したりして、この
欠点を克服している。
れた成形物は耐熱性に優れているが、廃棄する際、ゴミ
の量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないため
に、埋設処理しても、半永久的に地中に残留する。また
投棄されたプラスチック類により、景観が損なわれ海洋
生物の生活環境が破壊されるなどの問題が起こってい
る。
するポリマーとして、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒ
ドロキシカルボン酸のコポリマー(以下、乳酸系ポリマ
ーと略称する。)が開発されている。これらのポリマー
は、動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解
し、また、土壌や海水中に置かれた場合、湿った環境下
では数週間で分解を始め、約1年から数年で消滅し、さ
らに分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水
になるという特性を有している。又、乳酸系ポリマーの
原料である乳酸は発酵法や化学合成で製造されている
が、特に発酵法によるL−乳酸が大量に作られ安価にな
ってきたこと、また、得られたポリマーの性能として剛
性が強い特徴があるので、現在、各種のL−乳酸含有量
が多いポリマーの利用が期待されている。
剛性に優れているが、耐熱性が低く、あるいは耐熱性と
耐衝撃性が共に低く、例えば包装容器で熱湯又は電子レ
ンジを使用することができず、用途が限定されている。
耐熱性を有するには成形加工時に金型冷却を長時間にす
るか、又、成形後に成形品をアニール処理して高度に結
晶化する必要があった。しかし成形時に長時間の冷却工
程は実用的でなく、かつ、結晶化が不十分となり易く、
又、アニールによる後結晶化は成形品が結晶化する過程
で変形し易い欠点がある。
結晶化を促進するため特開昭60−86156号公報に
は、結晶化核剤としてテレフタル酸とレゾルシンを主な
構成単位とする全芳香族ポリエステル微粉末を添加する
ことが記載されているように、結晶化を促進させるため
の核剤を添加する方法が知られている。
このような添加剤を加える例として、特開平5−706
96号公報、特表平4−504731号公報、USP
5,180,765号公報、特表平6−504799号
公報、特開平4−220456号があげられる。特開平
5−70696号公報には、プラスチック製容器の材料
としてポリ−3−ヒドロキシブチレート/ポリ−3−ヒ
ドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトンある
いはポリ乳酸のような生分解性プラスチックに平均粒径
20μ以下の炭酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム
(タルク)を重量比で10〜40%混合することが開示
されている。しかし、この技術は多量の無機充填剤の添
加により廃棄後の生分解性プラスチックの分解を促進し
するためのものであり、ポリマーを結晶化させて耐熱性
を向上させるものではない。また、特表平4−5047
31号公報(WO 90/01521号公報)にはラク
チド熱可塑性プラスチックにシリカ、カオリナイトのよ
うな無機化合物の充填剤の添加により硬度、強度、温度
抵抗性の性質を変えることが記載されており、その実施
例には、L,DL−ラクチド共重合体に核剤として乳酸
カルシウム5重量%を温度170℃の加熱ロールで5分
間ブレンドしたところ、そのシートは剛性、強度があり
かつ曇っていて、結晶化度が増加したことが記載されて
いる。
O 92/04413号公報)には、核材として乳酸
塩、安息香酸塩が記載されており、その実施例には、ポ
リラクチドコポリマーに1%の乳酸カルシウムを配合
し、2分間の滞留時間で約85℃に保持した型で射出成
形したが、結晶化が不十分のため、更に型中で約110
〜135℃でアニーリングをした例が記載されている。
のタルク、シリカ、乳酸カルシウム又は安息香酸ナトリ
ウム等を使用して射出成形を試みたが、結晶化速度が遅
く、また成形物が脆いため、実用に耐え得る成形物を得
ることができなかった。従って、このような乳酸系ポリ
マーは、通常のタルク、シリカ等を用いて一般の射出成
形、ブロー成形、圧縮成形に使用としても、結晶化速度
が遅く、得られる成形物の実用耐熱性が100℃以下と
低く耐衝撃性も強くないために用途面に制約をうけてい
た。
は、核剤としてポリグリコール酸及びその誘導体をポリ
L−ラクチド等に加え、結晶化温度を上昇させることに
より、射出成形サイクル時間を短縮させ、且つ、優れた
力学的性質を有することが記載されている。射出成形の
例として、核剤なしの場合の結晶化温度は冷却時間60
秒で22.6%、核剤添加で45.5%が例示されてい
る。しかし、実際に乳酸系ポリマーに核剤を入れないで
射出成形を試みたところ、特開平4−220456号公
報に記載されているような、金型温度がTg点以上の条
件では、成形をすることができなかった。
に対し、乳酸系ポリマーよりなる耐熱性や耐衝撃性に優
れた成形物を得ることを目的とする。
達成するため、鋭意検討した結果、本発明に到ったもの
である。すなわち、本発明は、乳酸系ポリマー75〜9
5重量%、ポリ−ε−カプロラクトン5〜25重量%を
L−乳酸比率が75重量%以上となるように混合し、そ
の組成物100重量部に、SiO250%以上を含有す
る結晶性無機粉末0.1〜15重量部を混合、溶融し、
85〜125℃に設定された成形機の金型に充填し、結
晶化させながら成形することを特徴とする耐熱性乳酸系
ポリマー成形物に関し、また、L−乳酸比率が75重量
%以上の乳酸系ポリマー100重量部、SiO250%
以上を含有する結晶性無機粉末0.1〜15重量部、及
び脂肪族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸類のポリエ
ステル又は脂肪族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸類
とヒドロキシカルボン酸類のポリエステルを1〜20重
量部を混合、溶融し、85〜125℃に設定された成形
機の金型に充填し、結晶化させながら成形することを特
徴とする耐熱性乳酸系ポリマー成形物に関し、また、乳
酸系ポリマー75〜95重量%、ポリ−ε−カプロラク
トン5〜25重量%をL−乳酸比率が75重量%以上と
なるように混合し、その組成物100重量部に、SiO
250%以上を含有する結晶性無機粉末0.1〜15重
量部、及び脂肪族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸類
のポリエステル又は脂肪族多価アルコール類と脂肪族多
塩基酸類とヒドロキシカルボン酸類のポリエステルを1
〜20重量部を混合、溶融し、85〜125℃に設定さ
れた成形機の金型に充填し、結晶化させながら成形する
ことを特徴とする耐熱性乳酸系ポリマー成形物に関する
ものである。
乳酸、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマー、並びに
ポリ乳酸及び乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーの
混合物で、ポリマー中のL−乳酸比率が75重量%以上
のものである。ポリマーの原料としては乳酸およびヒド
ロキシカルボン酸が用いられる。乳酸としては、L−乳
酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物または
乳酸の環状2量体であるラクタイドのいずれも使用でき
る。これらの乳酸は、得られるL−乳酸系ポリマー中の
L−乳酸含有比率が75重量%以上になるように種々の
組み合わせで使用することができる。また乳酸類と併用
できるヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、
3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロ
キシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカ
プロン酸があり、さらにヒドロキシカルボン酸の環状2
量体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライ
ド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル
中間体も使用できる。
−乳酸含有率が75重量%以上の乳酸を原料として、ま
たは乳酸とヒドロキシカルボン酸の混合物でその混合物
中のL−乳酸含有率が75重量%以上になるようにした
混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法、また
は、上記乳酸の環状2量体であるラクタイドまたはヒド
ロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、グリコール酸
の2量体であるグリコライドあるいはε−カプロラクト
ンのような環状エステル中間体を用いて開環重合させる
方法により得られる。
ある乳酸または乳酸とヒドロキシカルボン酸を好ましく
は有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共
沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒
から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に
戻す方法によって重合することにより、本発明に適した
強度を持つ高分子量の乳酸系ポリマーが得られる。乳酸
系ポリマーの重量平均分子量は、成形性が可能な範囲で
高分子のものが好ましく、3万以上あればよりよい。重
量平均分子量が3万未満のもでは成形品の強度が小さく
なり実用に適さない場合がある。また、重量平均分子量
は100万以上でも成形性に工夫すれば本発明の成形物
の製造に使用出来る。また、重量平均分子量が500万
を超えると成形加工性に劣る場合がある。
させるために特定の結晶化核剤(以下、核剤と略称す
る。)を用いると、当該核剤が不均一核として作用し、
核形成に伴う表面自由エネルギーを低下することにより
核形成を加速する。その結果、ポリマーは成形加工時に
おいてより速く、一定の結晶化速度に到達して得られた
成形物は耐熱性の向上が期待される。
なら何でも良いと言うわけではない。一般に用いられて
いる核剤では乳酸系ポリマーの結晶化速度をあまりあげ
ることができず目的を達成し得ないのである。乳酸系ポ
リマーを結晶化させるのに適した核剤としては、結晶性
無機粉末がよく、中でもSi02分を50重量%以上含有
し、ヒドロキシル基を持ち且つ結晶性であるものがよ
い。上記核剤はSi02分が50重量%未満の時、または
Si02分が50重量%以上の時でも非晶質の場合には、
結晶化速度が遅く実用に適さない。結晶化速度が遅いこ
とは、成形物の示差走査熱量分析(以下、DSCと略称
する。)による降温時結晶化熱がすくないことからも判
る。また、そのpHは特に限定されるものではないが、
乳酸系ポリマーの分子量低下による強度低下を防ぐため
に、8.5以下が好ましく、4〜8がより好ましい。具
体的には、結晶性Si02分が50%以上、pH8.5以
下のタルク、結晶性Si02分が50%以上、pH8.5
以下のカオリン等が特に好ましい。その使用量は、乳酸
系ポリマーおよび分散剤100重量部に対して0.1〜
15重量部、好ましくは0.5〜7重量部である。0.
1重量部未満の場合は、核剤の効果が発現されない場合
があり、また、添加量が15重量部を超えると分子量の
低下が生じ易くなり、その結果、物性面で好ましくない
結果を与える場合がある。
組成物を結晶化させるとき、分散剤を用いると、乳酸系
ポリマー中への核剤の分散性が向上し、結晶化速度が速
くなり、均一に耐熱性、耐衝撃性の優れた成形体を得る
ことができる。好ましい分散剤は、ポリ−ε−カプロラ
クトンまたはスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラスト
マーである。上記ポリ−ε−カプロラクトンは、重量平
均分子量5万〜25万のものが好ましく、10万〜15
万のものがより好ましい。乳酸系ポリマーに混合した場
合に均一に分散が可能な範囲で高分子量のものが使用出
来る。また、ポリ−ε−カプロラクトンを使用すると、
分散効果の他に耐衝撃性も向上する。
マーはハードセグメントとしてポリスチレンを用い、ソ
フトセグメントとしてポリブタジエンを用いたブロック
共重合体であり、その組成は、スチレン/ブタジエン重
量比が20/80〜45/55の範囲、好ましくは30
/70〜40/60の範囲のものが好ましい。
乳酸系ポリマーと分散剤の混合物全体に対してL−乳酸
比率が75重量%以上のものが結晶性が好ましい。L−
乳酸比率が75重量%以上未満の場合は、結晶性が劣る
場合があり、目的の耐熱性を有する成形品が得られない
場合がでてくる。分散剤の添加量は、これを用いるとき
は、乳酸系ポリマーに対して5〜25重量%が好まし
く、10〜20重量%がより好ましい。25重量%を超
えると成形物の強度が弱くなる場合があり、又成形加工
性が劣って実用に適さない場合がでてくる。5重量%未
満だと、添加の効果が不十分となる場合がでてくる。
加工性改良剤を用いることができる。これにより、乳酸
系ポリマーの結晶化速度が非常に促進され、これによっ
て成形サイクルが汎用樹脂、例えばポリプロピレン樹脂
と同等に、成形物を得ることができるようになる。本発
明の加工性改良剤は、特に限定されないが、重量平均分
子量が1万〜100万、好ましくは5万〜50万、更に
好ましくは8万〜30万の脂肪族多価アルコール類と脂
肪族多塩基酸類のポリエステル、または脂肪族多価アル
コール類と脂肪族多塩基酸類とヒドロキシカルボン酸類
のポリエステルが好ましい。これらのポリエステルに
は、ジイソシアネートによってポリマー連鎖が延長され
たものも含まれる。
きは、乳酸系ポリマー100重量部に対して、分散剤を
用いるときは乳酸系ポリマー及び分散剤の合計100重
量部に対して、1〜20重量部添加することが好まし
く、5〜15重量部添加することがより好ましい。添加
量が20重量部を超えると成形物の剛性が劣る場合があ
り、実用に適さない成形物ができる場合があり、5重量
部未満だと、添加の効果が不十分となる場合がでてく
る。脂肪族多価アルコール類は特に限定されないが、例
えば、1,4−ブタンジオールやエチレングリコール等
を用いることができる。脂肪族多塩基酸類は特に限定さ
れないが、例えば、コハク酸やアジピン酸等を用いるこ
とができる。また、ヒドロキシカルボン酸類は特に限定
されないが、例えば、乳酸等をあげることができる。ジ
イソシアネートは特に限定されないが、ヘキサメチレン
ジイソシアネート等を用いることができる。
促進のために結晶化促進剤を用いることができる。結晶
化促進剤を核剤と併用することにより乳酸系ポリマーの
結晶化速度が促進され、その結果、成形サイクルを短縮
して、耐熱性や耐衝撃性の優れた耐熱性乳酸系ポリマー
成形体を得ることができる。
ソデシル(以下、DIDAと略称する。)、アジピン酸
n−オクチル−n−デシル等の脂肪族二塩基酸エステ
ル、グセリントリアセテート等の多価アルコールエステ
ル、アセチルクエン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カ
ルボン酸トリブチルが好ましい。また、結晶化促進剤使
用量は、これを用いる場合は、乳酸系ポリマー100重
量部、分散剤を用いるときは乳酸系ポリマー及び分散剤
の合計100重量部に対して0.1〜8重量部が好まし
く、1〜5重量部がより好ましい。0.1重量部未満の
場合は、添加の効果が不十分となる場合があり、また、
8重量部を超えると物性面で好ましくない結果を与える
場合がでてくる。
に応じて、分散剤、加工性改良剤、結晶化促進剤からな
る組成物(以下、乳酸系ポリマー組成物と略称する。)
には、目的に応じてその他の各種の改質剤を加えても構
わない。改質剤としては安定剤、紫外線吸収剤等が挙げ
られる。また、乳酸系ポリマー組成物の混合は、通常の
混練方法を用いて混練することができる。乳酸系ポリマ
ー組成物を結晶化するには、成形物を結晶化温度でアニ
ーリングする方法、組成物を成形するときに成形金型を
結晶化温度に設定し、一定時間保持する方法がある。
時間保持する方法は、射出成形、ブロー成形及び圧縮成
形機の金型温度をDSCの降温時結晶化開始温度から終
了温度の範囲に設定して、本発明の組成物を金型内で結
晶化をさせる方法である。この方法により、耐熱性、耐
衝撃強度に優れた耐熱性乳酸系ポリマー成形物を得るこ
とができる。金型温度は、85〜125℃で、90〜1
15℃が好ましく、100〜110℃がより好ましい。
この温度範囲だと、容易に結晶化し、また成形後、型内
から成形物を取出すとき固化して寸法精度の良い成形物
を得ることができる。この温度範囲を外れると、結晶化
の速度が遅い場合があり、成形物の固化時間を要するた
め、実用性に劣る場合がある。
製造は、公知の混練技術、例えば、ヘンシェルミキサ
ー、リボンブレンダー等の混合、また、更に押出機等を
用いて熱溶融による方法を用いることもできる。成形に
供する乳酸系ポリマー組成物の形状はペレット、棒状、
粉末等が好ましい。
物を用いて成形物を製造する方法を詳細に説明する。乳
酸系ポリマー成形物の製造方法は、乳酸系ポリマー組成
物を混合機で均一にして、射出成形、ブロー成形、圧縮
成形により製造される。
は、射出成形の金型温度をDSCの降下時結晶化開始温
度から終了温度の温度範囲である85〜125℃、好ま
しくは95〜110℃に設定し、乳酸系ポリマーを成形
機のシリンダー内で180〜250℃に溶融して該金型
に充填後、結晶化をさせた成形物を取り出すのが一般的
である。例えば、乳酸系ポリマー100重量部に所定の
タルク1重量部の時、降下時結晶化開始温度は120
℃、終了温度は95℃であり、また、所定のタルク3重
量部とDIDA5重量部の時は降下時結晶化開始温度は
114℃、終了温度は90℃である。金型温度を該結晶
化温度範囲に設定する事により耐熱性の効果が得られ
る。また、ブロー成形の場合は押出機の先端に取りつけ
たダイから押出したパリソンを、上記の温度に設定した
金型に挿入し空気で吹き込み後結晶化させる。圧縮成形
の場合は180〜250℃に設定した成形物の形状を有
する金型に、該組成物を投入後圧縮成形し、引続き該金
型を上記温度に冷却して結晶化を行う。冷却時間は成形
法、また、成形物の形状、厚みにより異なるがおよそ1
0〜100秒である。
点のことをいう。ビカット軟化点(ASTM−D152
5)とは、サンプルの上に直径1mmφの円柱状の針を
荷重1Kg掛けた状態で温度を上げていったときに針が
サンプルへ1mm進入したときの温度をいう。本発明の
耐熱性乳酸系ポリマー成形物のビカット軟化点は、核
剤、分散剤、加工性改良剤、結晶化促進剤等の添加量等
によって異なるが、電子レンジ等における耐熱性及び実
用性から100〜160℃であり、120℃〜160℃
が好ましく、130〜150℃がより好ましく、140
℃〜150℃が更に好ましい。乳酸系ポリマー成形物の
ビカット軟化点は、成形物の耐熱性を現す電子レンジ用
プラスチック製容器試験法(JIS−S 2033)の
耐熱性試験とほぼ対応があり、ビカット軟化点149℃
の乳酸系ポリマー成形物を、空気攪拌装置付恒温槽にお
いて150℃で1時間保持したところ、放冷後の容器に
容器の変形等の異常は認められなかった。本発明の成形
物は耐熱性の優れた容器を、汎用樹脂であるポリスチレ
ン樹脂等を成形する成形機で効率よく成形が可能であ
り、成形物は日用品から雑貨品にいたる各種の用途に、
特に電子レンジ用に使用される。
る。はじめに、本発明で使用する乳酸系ポリマーの製造
を示す。なお、文中、部とあるのはいずれも重量基準で
ある。また、ポリマーの平均分子量(重量平均分子量)
はポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロ
マトグラフィーにより以下の条件で測定した。 装置 :島津LC−10AD 検出器:島津RID−6A カラム:日立化成GL−S350DT−5、GL−S3
70DT−5 溶媒 :クロロホルム 濃度 :1% 注入量:20μl 流速 :1.0ml/min
01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を
備えた肉厚の円筒型ステンレス製重合容器へ封入し、真
空で2時間脱気した後窒素ガスで置換した。この混合物
を窒素雰囲気下で攪拌しつつ200℃で3時間加熱し
た。温度をそのまま保ちながら、排気管およびガラス製
受器を介して真空ポンプにより徐々に脱気し反応容器内
を3mmHgまで減圧にした。脱気開始から1時間後、モ
ノマーや低分子量揮発分の留出がなくなったので、容器
内を窒素置換し、容器下部からモノマーを紐状に抜き出
してペレット化し、L−乳酸比率100重量%の乳酸系
ポリマーAを得た。このポリマーの重量平均分子量Mw
は約10万であった。Tgは59℃であった。
器に、純度90%L−乳酸(L−乳酸比率100%)1
0kgを150℃/50mmHgで3時間攪拌しながら
水を留出させた後、錫末6.2gを加え、150℃/3
0mmHgでさらに2時間攪拌してオリゴマー化した。
このオリゴマーに錫末28.8gとジフェニルエーテル
21.1kgを加え、150℃/35mmHg共沸脱水
反応を行い留出した水と溶媒を水分離器で分離して溶媒
のみを反応機に戻した。2時間後、反応機に戻す有機溶
媒を4.6kgモレキュラシーブ3Aを充填したカラム
に通してから反応機に戻るようにして、150℃/35
mmHgで40時間反応を行い平均分子量11万のポリ
乳酸溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテ
ル44kgを加え希釈した後40℃まで冷却して、析出
した結晶を濾過し、10kgのn−へキサンで3回洗浄
して60℃/50mmHgで乾燥した。この粉末を0.
5N−HCl12kgとエタノール12kgを加え、3
5℃で1時間攪拌した後濾過し、60℃/50mmHg
で乾燥して、ポリ乳酸粉末6.1kg(収率85%)を
得た。この粉末を押出機で溶融しペレット化し、L−乳
酸比率100重量%の乳酸ポリマーBを得た。このポリ
マーの重量平均分子量は11万、Tgは59℃であっ
た。
造例2と同様にしてペレット化し、L−乳酸比率50重
量%のDL−乳酸ポリマーCを得た。このポリマーの重
量平均分子量は約11万、Tgは50℃であった。
ン酸成分としてグリコール酸20部に変えた他は製造例
2と同様にして、L−乳酸比率80重量%の乳酸とヒド
ロキシカルボン酸共重合体のペレットDを得た。このポ
リマーの重量平均分子量は約10万であった。Tgは4
9℃であった。
1,4−ブタンジオール50.5gとコハク酸66.5
gにジフェニルエーテル293.0g、金属錫2.02
gを加え、130℃/140mmHgで7時間、系外に
水を留出しながら加熱攪拌しオリゴマー化した。これ
に、Dean Stark trapを取り付け、14
0℃/30mmHgで8時間共沸脱水を行い、その後、
モレキュラーシーブ3Aを40g充填した管を付け、留
出した溶媒がモレキュラーシーブ層中を通って反応器に
戻るようにし、130℃/17mmHgで49時間攪拌
した。その反応マスを600mlのクロロホルムに溶か
し、4リットルのアセトンに加え再沈した後、HClの
IPA溶液(HCl 0.7wt%)で0.5時間スラ
ッジングし(3回)、IPAで洗浄してから減圧下60
℃で6時間乾燥し、ポリマーのPSBを得た。このポリ
マーの重量平均分子量118,000であった。
に金属錫0.210gを加え、窒素を0.5リットル/
min流すことにより系外に水を留出しながら加熱攪拌
し、室温から1時間かけて150℃/1atmにし、そ
の後6時間そのまま反応を行った。これにDean S
tark tripを取り付け、ジフェニルエーテル1
55gを加え、150℃/38mmHgで8時間共沸脱
水反応を行い水分を除去し、その後、Dean Sta
rk tripをはずし、モレキュラーシーブ5A、2
0gが充填された管を取り付け、留出する溶媒がモレキ
ュラーシーブを通って再び系内に戻るようにした。13
0℃で34時間反応を行った。この反応を止める前に、
留出した溶媒がモレキュラーシーブに接触した後反応マ
スに戻る手前で少量サンプリングし分析した結果、その
溶媒中の水分量は5ppm以下で、エチレングリコール
の量は検出限界の10ppm以下であった。次に、その
反応マスを500mlのクロロホルムに溶かし、5.8
リットルのアセトンに加え再沈した後、減圧下60℃で
6時間乾燥しポリマーPSEを得た。このポリマーの重
量平均分子量は139,000であった。
を用いて、本発明に係わるL−乳酸系ポリーマの成形物
製造方法の実施例について説明する。なお、主な物性値
の測定条件は次のとおりである。 1)DSC降下時結晶化温度 示差走査熱量分析(島津製作所製、DSC−50)に
て、ペレットのサンプル量5mgを10℃/分で200
℃まで昇温後、5分間保持したサンプルを5℃/分の降
温速度で測定。 2)結晶化度 X線回折装置(理学電機(株)製、Rint1500型)
にて成形後の試験片を測定。 3)耐熱性 ビカット軟化温度(ASTM−D1525)を荷重1k
gfの条件で成形後の試験片を測定。 4)衝撃強度 アイゾット衝撃強さ(ASTM−D256)のノッチ付
き試験片を用いて測定。 5)分解性試験 2×5cmの試験片を採取し、該試験片を温度35℃、
水分30%の土壌中に埋設して分解試験を行い、外観変
化と重量の減少率を求めた。
分散剤を添加した例を示す。 〔分散剤使用〕 実施例 1〜5 製造例1〜4で得られた乳酸系ポリマ−A〜Dと分散剤
としてポリ−ε−カプラクトン(商品名;TONE、P
−787以下PCLと略記する)又はスチレン・ブタジ
エン系熱可塑性エラストマー(商品名;旭化成、タフプ
レンA 以下SBと略記する)、及び核剤としてタルク
(富士タルク製SiO2 分60%、結晶性)、結晶化促
進剤としてアジピン酸ジイソデシル(以下DIDAと略
記する)とアセチルクエン酸トリブチル(以下ATBC
と略記する)を表1に示す割合でヘンシェルミキサーで
混合後、押出機シリンダー設定温度170〜210℃の
条件にてペレット化した。該ペレットを(株)日本製鋼所
製JSW−75射出成形機シリンダー設定温度180〜
200℃の条件にて溶融し、設定温度100℃の金型に
充填、冷却時間を実施例1〜3及び5を30秒、実施例
4を80秒でASTM物性用試験片の成形物を得た。試
験片の評価結果を表1に示す。
進剤、及び加工性改良剤として製造例5で得られたPS
B又は製造例6で得られたPSEを表1及び2に示す割
合でヘンシェルミキサーで混合後、実施例1と同様にペ
レット化して、ASTM物性用試験片の成形物を得た。
金型の冷却時間は20秒に短縮することができた。試験
片の評価結果を表1及び2に示す。
結晶化促進剤、及び加工性改良剤を表2に示す割合でヘ
ンシェルミキサーで混合後、実施例2と同様にペレット
化して、ASTM物性用試験片の成形物を得た。金型の
冷却時間は20秒に短縮することができた。試験片の評
価結果を表2に示す。
促進剤及び核剤としてカオリンJP−100(SiO2
分 80%、結晶性)、シリカ(SiO2分 97%、
結晶性)、カオリンクレー(SiO2分 80%、結晶
性)をそれぞれ3重量%添加して、実施例1と同様にペ
レット化してASTM物性用試験片の成形物を得た。試
験結果を表2に示す。核剤が結晶性でSiO2分が50
%以上であるので、成形性、成形物の耐熱性と良好であ
った。
を混合しないで、核剤と結晶化促進剤を表3に示すヘン
シェルミキサーで混合後、実施例1と同様にペレット化
してASTM物性用試験片の成形物を得た。試験結果を
表3に示す。成形物は分散剤のPCLが含まれていない
ため、核剤の分散が悪く、局部的に凝集していた。ま
た、衝撃強度も低下した。
散剤を混合して、Lー乳酸比率を60%とし、核剤と結
晶化促進剤を表3に示す割合でヘンシェルミキサーで混
合後、実施例2と同様にペレット化して、ASTM物性
用試験片の成形物を得た。試験片の評価結果を表3に示
す。得られた成形物は核剤を添加しても、該ポリマーの
Lー乳酸比率が75重量%未満であるため、金型から取
り出すときに変形した。
用〕 比較例 3 製造例2で得られた乳酸系ポリマ−Bのペレットを使用
して、射出成形機シリンダー設定温度180〜200℃
の条件にて溶融し、設定温度100℃の金型に充填、冷
却時間80秒の条件にてASTM物性用試験片の成形物
を得た。試験片の評価結果を表3に示す。得られた成形
物は該ポリマーに核剤が含まれていない為、金型から取
り出すとき柔らかすぎて大きく変形した。
0.1〜15重量部を越えた20重量部に変えた他は実
施例2と同様にして成形物を得た。結果を表3に示す。
得られた成形物は、分子量の低下による強度の低下がみ
られた。
結晶化促進剤0.1〜8重量%部越えた11重量部に変
えた他は実施例2と同様にして成形物を得た。結果を表
3に示す。得られた成形物は、分子量の低下による強度
の低下がみられた。
性改良剤1〜20重量部を越えた30重量部に変えた他
は実施例6と同様にして成形物を得た。結果を表3に示
す。得られた成形物の寸法精度が悪く、安定した成形物
を得られなかった。
促進剤及び核剤としてSiO2が50%未満で、結晶性
のカオリンUW(SiO2分 45%、結晶性)、カオ
リンナイト(SiO2分 45%、結晶性)、タルクR
F(SiO2分 40%、結晶性)と、SiO2が50%
以上で非晶性の合成シリカ(SiO2分 90%)、シ
リカ(SiO2分 90%)をそれぞれ3重量%を添加
し、実施例1と同様にペレット化して、ASTM物性用
試験片の成形を試みた。その組成比を表4に示す。しか
し、成形物は金型から取り出すとき柔らかすぎて、大き
く変形し、物性等を測定することができなかった。
及び結晶化促進剤を表5に示す割合で、実施例2と同様
にペレット化して、射出成形機シリンダー設定温度18
0〜200℃の条件にて溶融し、金型の設定温度をDS
Cにて測定した降温時結晶化温度のピーク範囲内で95
℃、と110℃に変えた他は実施例2と同様にして成形
物を得た。試験片の評価結果を表5に示す。
及び結晶化促進剤を表5に示す割合で、実施例2と同様
にペレット化して、射出出成形機シリンダー設定温度1
80〜200℃の条件にて溶融し、金型の設定温度をD
SCにて測定した降温時結晶化温度のピーク範囲を外れ
た温度に変えた他は実施例2と同様にして成形物を得
た。金型の設定温度を30℃に設定したのを比較例12
に、130℃に設定したのを比較例13に、80℃に設
定したのを比較例14に示す。試験片の評価結果を表5
に示す。比較例7で得られた成形物は非晶性のため耐熱
性が劣った。比較例8及び9で得られた成形物は金型温
度がTg点以上で非晶性のため、金型から取り出すとき
柔らかすぎて大きく変形した。
樹脂を用いて、金型温度を通常の設定温度である30℃
にした他は実施例1と同様にしてASTM物性用試験片
の成形物を得た。試験片の測定結果を表5に示す。得ら
れた成形物は土壌分解性が悪い。
と耐衝撃性が優れており、電子レンジ等の耐熱用、食品
用トレー、飲料カップ等に好適に利用される。更に、廃
棄物として地中に埋設されたり海や川に投棄された場
合、紙や木等の天然物と同じように自然環境下で比較的
短い期間の内に無害な水と炭酸ガスに分解する。
Claims (10)
- 【請求項1】 乳酸系ポリマー75〜95重量%、ポリ
−ε−カプロラクトン5〜25重量%をL−乳酸比率が
75重量%以上となるように混合し、その組成物100
重量部に、SiO250%以上を含有する結晶性無機粉
末0.1〜15重量部を混合、溶融し、85〜125℃
に設定された成形機の金型に充填し、結晶化させながら
成形することを特徴とする耐熱性乳酸系ポリマー成形物
の製造方法。 - 【請求項2】 L−乳酸比率が75重量%以上の乳酸系
ポリマー100重量部、SiO250%以上を含有する
結晶性無機粉末0.1〜15重量部、及び脂肪族多価ア
ルコール類と脂肪族多塩基酸類のポリエステル又は脂肪
族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸類とヒドロキシカ
ルボン酸類のポリエステルを1〜20重量部を混合、溶
融し、85〜125℃に設定された成形機の金型に充填
し、結晶化させながら成形することを特徴とする耐熱性
乳酸系ポリマー成形物の製造方法。 - 【請求項3】 脂肪族多価アルコール類と脂肪族多塩基
酸類のポリエステル又は脂肪族多価アルコール類と脂肪
族多塩基酸類とヒドロキシカルボン酸類のポリエステル
を1〜20重量部を混合する請求項1記載の耐熱性乳酸
系ポリマー成形物の製造方法。 - 【請求項4】 成形機が射出成形機、ブロー成形機、ま
たは圧縮成形機のいずれかである請求項1〜3記載の耐
熱性乳酸系ポリマー成形物の製造方法。 - 【請求項5】 脂肪族二塩基酸エステル、多価アルコー
ルエステル、またはヒドロキシ多価カルボン酸トリブチ
ルを0.1〜8重量部を混合する請求項1〜3記載の耐
熱性乳酸系ポリマー成形物の製造方法。 - 【請求項6】 乳酸系ポリマー75〜95重量%、ポリ
−ε−カプロラクトン5〜25重量%からなりL−乳酸
比率が75重量%以上である組成物100重量部及びS
iO250%以上を含有する結晶性無機粉末0.1〜1
5重量部からなる耐熱温度が100〜160℃である耐
熱性乳酸系ポリマー成形物。 - 【請求項7】 L−乳酸比率が75重量%以上の乳酸系
ポリマー100重量部、SiO250%以上を含有する
結晶性無機粉末0.1〜15重量部、及び脂肪族多価ア
ルコール類と脂肪族多塩基酸類のポリエステル又は脂肪
族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸類とヒドロキシカ
ルボン酸類のポリエステル1〜20重量部からなる乳酸
系ポリマー組成物。 - 【請求項8】 請求項7記載の乳酸系ポリマー組成物を
成形することにより得られる耐熱温度が100〜160
℃である耐熱性乳酸系ポリマー成形物。 - 【請求項9】 乳酸系ポリマー75〜95重量%、ポリ
−ε−カプロラクトン5〜25重量%からなりL−乳酸
比率が75重量%以上である組成物100重量部、Si
O250%以上を含有する結晶性無機粉末0.1〜15
重量部、及び脂肪族多価アルコール類と脂肪族多塩基酸
類のポリエステル又は脂肪族多価アルコール類と脂肪族
多塩基酸類とヒドロキシカルボン酸類のポリエステル1
〜20重量部からなる乳酸系ポリマー組成物。 - 【請求項10】 請求項9記載の乳酸系ポリマー組成物
を成形することにより得られる耐熱温度が100〜16
0℃である耐熱性乳酸系ポリマー成形物。
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JP3359764B2 (ja) | 2002-12-24 |
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