JPH08176660A - 耐火性を有し溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の少ない建築向け高強度極厚圧延h形鋼の製造方法 - Google Patents

耐火性を有し溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の少ない建築向け高強度極厚圧延h形鋼の製造方法

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JPH08176660A
JPH08176660A JP6323313A JP32331394A JPH08176660A JP H08176660 A JPH08176660 A JP H08176660A JP 6323313 A JP6323313 A JP 6323313A JP 32331394 A JP32331394 A JP 32331394A JP H08176660 A JPH08176660 A JP H08176660A
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】重量%で、C:0.05〜0.20%、Si:
0.05〜0.50%、Mn:0.80〜1.20%、
Mo:0.2〜0.5%、V:0.03〜0.13%、
Ti:0.003〜0.010%を含有する鋼を、13
50℃以下に加熱し、800℃以上1100℃以下で圧
延終了後、ただちに板厚中央部において0.5℃/s以
上3.5℃/s以下の冷却速度で制御冷却を行ない、4
50℃以上600℃以下で制御冷却を停止し、その後放
冷し、低降伏比と耐火性を有し、溶接性に優れ、板厚方
向の強度変化の少ない建築向け高強度極厚圧延H形鋼を
得る。 【効果】フランジ厚さが80mm以上と厚く、低降伏
比、耐火性、優れた溶接性を兼ね備え、板厚方向に強度
変化の少ない、引張強度が570MPa以上の高強度極
厚H形鋼を製造することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築用鋼材として要求
される低降伏比、狭YPレンジ、及び耐火性を有し、引
張強度が570MPa以上の高強度鋼のうち、フランジ
厚さが80mm以上の柱材に用いられる極厚圧延H形鋼
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄骨構造の高層建物の柱材には、耐震設
計の観点から低降伏比の鋼材が用いられている。また耐
火設計の見直しにより、高温強度に優れた耐火鋼材を用
いて耐火被覆を減らすことにより、工期の短縮、工事費
の削減、建築物内の有効面積を拡張する設計も盛んにな
ってきている。
【0003】上記のような設計手法を用いた高層建築物
に用いられる柱材には、各方向毎の断面係数の変化が少
ないボックス柱、鋼管を用いた円柱、あるいは温間また
は冷間で加工されたコラム柱が用いられている。
【0004】しかし、円柱の場合は梁材と接続するため
の仕口部の加工が複雑になること、ボックス柱の場合は
角溶接の施工に技術が要求されること、高層建築物に用
いられる厚肉コラム柱の場合はコーナー部の低降伏比を
満足するような成形を行なうための成形コストが高いこ
と等の欠点を有している。従って材料費、施工費等を含
めたトータルとしてのコストを削減できる柱材が求めら
れている。
【0005】ところで、H形鋼は、断面係数はH方向と
I方向で異なるが、複雑な曲げ加工、溶接施工を行なわ
ずに柱を製作できること、梁材を取り付ける仕口部が炭
酸ガス溶接のみで簡便に施工できること等の利点が多
い。また断面係数の違いは設計段階で考慮できることは
良く知られている。
【0006】以上の点から低降伏比と耐火性を満たし、
溶接性に優れ、板厚方向の均質性を有する極厚圧延高強
度H形鋼の製造を可能とすることにより、今後の高層建
築物における柱材として多くの需要が見込まれる。
【0007】高層建築物に用いられる低降伏比と耐火性
を兼ね備えた鋼材については、溶接施工することにより
柱材、梁材に適用できる厚鋼板、およびフランジ厚さの
薄い梁材に用いられるH形鋼の分野で、特開平2−16
3341号公報、特開平4−263012号公報、特開
平4−83821号公報等に種々の提案がなされてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載された
技術は、いずれもTMCP(Thermomechanical Control
Process )技術を駆使することが可能な厚鋼板、および
製造条件のコントロールが比較的容易なフランジ厚さが
薄い梁材用のH形鋼に適用されている。
【0009】しかしフランジ厚さが80mmを超える柱
材に適した極厚圧延H形鋼の分野では、圧延条件は主と
してH形状を整えるため、および寸法精度を満足するた
めに決定されていることから、材質の観点に基づいて圧
延条件を変更することは困難である。
【0010】このような柱材向け極厚圧延H形鋼におけ
るTMCP技術の適用に関しては、特開昭60−236
6号公報に、合金成分と加速冷却を用いた製造条件を規
定することにより高強度化を図る技術が、特開昭60−
77924号公報には加速冷却条件を規定した技術が開
示されているが、建築向けの柱材として要求される低降
伏比、耐火性、溶接性及び板厚方向の均質性を兼ね備え
た鋼材の製造方法に関しては全く提案されていない。
【0011】また耐火性を有する鋼材に関しては、特開
平4−83821号公報に成分と製造条件を規定した技
術が開示されているが、この技術は80mm以上の板厚
の鋼材に対する制御冷却については考慮しておらず、ま
た溶接性および板厚方向の均質性を兼ね備えた鋼材の製
造方法に関しては全く考慮していない。
【0012】本発明者らは、このような低降伏比、耐火
性、溶接性及び板厚方向の均質性を兼ね備えた高強度
(TS≧570MPa)のフランジ厚さ80mm以上の
極厚H形鋼を、圧延により製造するための方法を検討し
てきた。
【0013】各種合金元素を多量に添加することによ
り、圧延のままで高強度化できることは自明であるが、
建築構造用鋼材は溶接性を考慮する必要がある。すなわ
ちJISの溶接用構造用圧延鋼材の規格(SM、SN)
に規定されているように、炭素当量を0.44%以下と
する必要があり多量の合金元素の添加は困難である。ま
た上述したように極厚圧延H形鋼の圧延においては、圧
延荷重と寸法精度の点から圧延温度を低くすることは困
難なため、制御圧延による細粒化強化、転位強度は難し
い。
【0014】以上の点からフランジ厚さ80mm以上の
極厚圧延H形鋼の場合、高強度化のためには圧延後の制
御冷却が必要となる。制御冷却に関しては、80mm程
度の板厚の場合、理想的な水冷においても冷却速度は板
厚中央部において4℃/s程度であるため、この程度の
冷却速度で高強度を得る必要がある。また、板厚中央部
で4℃/s程度の冷却速度であっても、板厚方向には大
きな冷却速度分布が生じているため、表層付近の冷却速
度は非常に速くなっている。建築構造用鋼材としては板
厚方向に均質な特性であることが望ましいため、冷却速
度によらず強度が一定となるような成分系とする必要が
ある。
【0015】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、低降伏比、耐火性、優れた溶接性を兼ね備
え、板厚方向に強度変化の少ない、引張強度が570M
Pa以上の高強度極厚H形鋼の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段および作用】フランジ厚さ
80mm以上の極厚圧延H形鋼は、形状の安定性、寸法
精度、及び圧縮機への負荷荷重の低減の観点から、加熱
温度・圧延仕上温度を高くしているため、細粒化強化が
適用できない。また単量が大きいこと、断面形状が複雑
であることから圧延後に形鋼熱処理炉等を用いたオフラ
インの熱処理を行うことは困難である。そこで本発明者
らは、溶接性の観点から炭素当量を0.44%以下に抑
えた条件下において化学組成を最適化すること、および
圧延直後のオンライン型の制御冷却の実施により、常温
での降伏比が低くかつ耐火性を有し、溶接性にも優れ、
板厚方向に均質な特性を有する引張強度が570MPa
以上の、建築向け高強度極厚H形鋼(フランジ厚さ80
mm以上)が得られることを見出した。
【0017】本発明はこのような知見に基づいてなされ
たものであって、第1に、重量%で、C:0.05〜
0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.
80〜1.20%、Mo:0.2〜0.5%、V:0.
03〜0.13%、Ti:0.003〜0.010%を
含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼を、13
50℃以下に加熱し、800℃以上1100℃以下で圧
延終了後、ただちに板厚中央部において0.5℃/s以
上3.5℃/s以下の冷却速度で制御冷却を行ない、4
50℃以上600℃以下で制御冷却を停止し、その後放
冷することを特徴とする低降伏比と耐火性を有し、溶接
性に優れ、板厚方向の強度変化の少ない建築向け高強度
極厚圧延H形鋼の製造方法を提供するものである。
【0018】第2に、上記鋼に、さらにNb:0.01
〜0.07%を含有させ、同様な条件で熱処理すること
を特徴とする、低降伏比と耐火性を有し、溶接性に優
れ、板厚方向の強度変化の少ない建築向け高強度極厚圧
延H形鋼の製造方法を提供するものである。
【0019】第3に、上記いずれかの鋼に、Cu:0.
05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:
0.05〜0.5%の一種又は二種以上を含有させ、同
様な条件で熱処理することを特徴とする、低降伏比と耐
火性を有し、溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の少な
い建築向け高強度極厚圧延H形鋼の製造方法を提供する
ものである。
【0020】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の根拠となる実験例について説明する。図1
に、表1に成分範囲を示す炭素当量0.44%以下でV
添加量を変化させた鋼を用い、1280℃に加熱し、9
50℃仕上げで板厚85mmに圧延終了後、ただちに板
厚中央部の冷却速度を2.8℃/sとした制御冷却を行
い、板厚中央部が550℃となった時点で放冷した場合
のV添加量に伴う板厚中央部の室温強度並びに600℃
における高温強度の変化を示す。
【0021】
【表1】
【0022】図1から明らかなように、V添加量が0.
03%未満の場合、室温のTSは570MPa以上を満
足しているが、室温の降伏応力(以下、YSと記す)
(≧430MPa)及び600℃におけるYS(≧28
7MPa)を満足しない。一方、V添加量が0.13%
を超えた場合は室温における降伏比が80%を超えるた
め、建築用鋼材として必要な規格を満足しなくなる。従
って、低降伏比を得る観点からはV添加量は0.03〜
0.13%の範囲とする必要がある。
【0023】図2に、表2に示す鋼を1230℃加熱9
50℃仕上で板厚85mmに圧延終了後、ただちに板厚
中央部の冷却速度が2.3℃/sとなるように制御冷却
を行い、板厚中央部の温度が520℃となった時点で空
冷とした場合のMo添加量に伴う板厚1/4t、1/2
tの位置での室温強度、および厚さ1/2tの位置での
高温強度変化を示す。
【0024】
【表2】
【0025】図2から明らかなように、Mo添加量が
0.2%以下の鋼2−1,2−2は高温強度が目標値に
達しておらず、またMo添加量が0.5%を超える鋼2
−6,2−7は1/4t,1/2tの室温強度の差が大
きく、板厚方向の均質性が損なわれている。一方、Mo
量が0.2〜0.5%の範囲を満たす鋼2−3,2−
4,2−5は1/4t,1/2tにおける室温強度の差
が小さく板厚方向の均質性を満足しており、かつ高温強
度も目標値を満たしている。
【0026】図3は、表3に示す鋼を1260℃加熱9
00℃仕上で板厚90mmに圧延終了後、ただちに板厚
中央部の冷却速度が3.5℃/sとなるように制御冷却
し、板厚中央部が500℃となった時点で放冷した場合
の板厚方向の硬さ変化を示す。
【0027】
【表3】
【0028】図3から明らかなように、Cを0.21%
含有している鋼3−1、Mnを1.65%含有している
鋼3−2、Moを0.7%含有している鋼3−3、Cr
を0.7%含有している鋼3−4は、位置により硬さが
大きく変化しており、板厚方向に均質な特性は得られて
いない。一方、これら添加元素を減じて本発明の範囲内
を満足するレベルにした鋼3−5,3−6は、いずれの
位置においても板厚中央部との硬さ変化が少なく、冷却
速度感受性が低い。
【0029】図4は、表4に示す鋼を1230℃加熱8
80℃仕上で板厚90mmに圧延終了後、ただちに板厚
中央部における冷却速度を3.0℃/sとして制御冷却
し、冷却停止温度を室温から700℃まで変化させた場
合の冷却停止温度と機械的性質の関係を示す。
【0030】
【表4】
【0031】図4から明らかなように、冷却停止温度が
600℃を超える場合、十分な強度が得られない。一方
冷却停止温度が450℃未満の場合には強度が高くなり
過ぎ、また板厚方向の均質性が損なわれている。従っ
て、冷却停止温度は450℃〜600℃の範囲とする必
要がある。
【0032】次に、本発明の構成要件である化学成分、
加熱温度、圧延仕上温度、冷却速度、冷却停止温度につ
いて詳細に説明する。まず、化学成分の限定理由につい
て説明する。
【0033】C:0.05〜0.20% Cは鋼の強度を安定して確保するために有効な元素であ
る。しかし、0.05%未満では必要とする強度を得る
のが困難であり、また0.20%を超えると溶接性が劣
化する。従って、C含有量を0.05〜0.20%の範
囲とした。
【0034】Si:0.05〜0.50% Siは脱酸、強度上昇に有効な元素であり、そのために
は0.05%以上の添加が必要であるが、0.50%を
超えて添加すると溶接性を損なう。従ってSi含有量を
0.05%〜0.50%の範囲とした。
【0035】Mn:0.80〜1.20% Mnは強度確保の上で有効な元素であり、特に高強度化
のためには0.80%以上の添加が必要である。一方、
1.20%を超えて添加すると溶接性を損なうだけでな
く制御冷却により偏析部が著しく硬化するため板厚方向
の強度の均質性を損なう。従ってMn含有量を0.80
%〜1.20%の範囲とした。
【0036】Mo:0.2〜0.5% Moは焼入性の向上、析出強化等により鋼の高強度化に
効果があり、特に中・高温強度に対して有効である。こ
のような効果を発揮するためには0.2%以上の添加が
必要であるが、0.5%を超える添加は特に板厚方向の
強度の均質性を損なうだけでなく、コスト上昇を招くと
共に溶接性の劣化を生じる。従ってMo含有量を0.2
〜0.5%の範囲とした。
【0037】V:0.03〜0.13% Vは微量添加により常温・高温強度の上昇に有効であ
り、特に本発明のような極厚圧延H形鋼のYSを高める
ためには0.03%以上の添加が必要である。一方0.
13%を超える添加は溶接性を劣化させ、また建築用鋼
として要求されている常温で低降伏比であることも満足
しなくなる。従ってV含有量を0.03〜0.13%の
範囲とした。
【0038】Ti:0.003〜0.010% TiはTiNを形成し、加熱時のオーステナイト粒を微
細化する効果を有し、靭性向上に効果がある。この効果
を発揮するには0.003%以上の添加が必要である
が、0.010%を超えて添加するとTiCを形成し、
常温における降伏比を上昇させてしまう。従ってTi含
有量を0.003〜0.010%の範囲とした。
【0039】本発明では以上の基本成分に加えて、必要
に応じて以下に示すNb、さらにはCu、Ni、Crの
内一種又は二種以上を添加することができる。 Nb:0.01〜0.07% Nbは微量添加により常温・高温強度を著しく上昇させ
るため、本発明のような極厚圧延H形鋼の高強度比には
有効であり、そのためには0.01%以上の添加が有効
である。しかし、引張強度(以下、TSと記す)に比べ
てYSの上昇率が高いことから、建築向けの低降伏比鋼
として要求される特性を満たすには添加量を0.07%
以下とすることが必要である。従ってNbを添加する場
合には、その含有量を0.01〜0.07%の範囲とす
る。
【0040】Cu:0.05〜0.5% Cuは強度上昇に有効な元素であり、そのためには0.
05%以上の添加が必要である。一方、0.5%を超え
る添加はコスト上昇に加え、板厚方向の強度の不均質
性、表面疵の問題がある。従ってCuを添加する場合に
は、その含有量を0.05〜0.5%の範囲とする。
【0041】Ni:0.05〜0.5% Niは強度上昇に有効であると共に靭性の向上にも効果
があるが、そのためには0.05%以上の添加が必要で
ある。一方、0.5%以上の添加は溶接性を損ない、コ
ストの上昇にもつながる。従ってNiを添加する場合に
は、その含有量を0.05〜0.5%の範囲とする。
【0042】Cr:0.05〜0.5% Crは常温及び高温強度の上昇に有効であり、そのため
には0.05%以上の添加が必要である。一方、0.5
%を超える添加は溶接性の劣化、板厚方向の強度の不均
質性の原因となる。従ってCrを添加する場合には、
0.05〜0.5%の範囲とする。
【0043】次に製造条件の限定理由を示す。 (1)加熱温度:1350℃以下 極厚圧延H形鋼を製造する場合には、寸法精度の観点か
ら比較的高温域で圧延を終了するようなパススケジュー
ルが用いられている。そのため加熱温度も高温にするこ
とが必要となるが、1350℃を超える高温に加熱する
ことは加熱時のオーステナイト粒径が著しく粗大化し、
建築向け鋼材として必要となる母材靭性の劣化を生じさ
せるばかりでなく、加熱炉の炉体の損傷にもつながる。
このため加熱温度を1350℃以下とした。
【0044】 (2)圧延終了温度:800℃以上1100℃以下 圧延終了温度はミクロ組織に影響を与える因子であり、
800℃未満ではオーステナイト粒に歪が残存し、ミク
ロ組織が細粒化される。細粒化は鋼の強化機構として有
効な手段であるが、極厚圧延H形鋼の場合800℃未満
の低温圧延では圧延荷重が著しく高くなり、圧延機に負
荷がかかるだけでなく圧延材の寸法精度の向上が難しい
こと、TSに比べてYSの上昇率が高いことから建築向
けの低降伏比鋼には不利であるため、圧延終了温度は8
00℃以上とする必要がある。一方圧延仕上温度が11
00℃以上の高温の場合、圧延により再結晶したミクロ
組織がただちに粒成長により粗大化し、結果として得ら
れる組織が非常に粗くなり靭性が著しく劣化する。従っ
て圧延終了温度を800℃以上1100℃以下の範囲に
規定した。
【0045】(3)冷却速度:板厚中央部で0.5℃/
s以上3.5℃/s以下 フランジ板厚80mmの場合、理想的な水冷における板
厚中央部の冷却速度は約4℃/sである。本発明ではフ
ランジ板厚80mm以上のH形鋼を対象としているこ
と、および実際の冷却の場合は必ずしも理想的な冷却と
はならないことから、最大冷却速度は実質的には3.5
℃/s程度である。一方、本発明の成分組成では0.5
℃/s未満の冷却速度では十分な強度が得られない。従
って冷却速度を板厚中央部で0.5℃/s以上3.5℃
/s以下に規定した。
【0046】 (4)冷却停止温度:450℃以上600℃以下 冷却停止温度は、制御冷却時の変態により生じ、かつ母
材靭性に悪影響を与える残留オーステナイト(MA)の
分解、および制御冷却により得られる変態組織の回復に
重要な因子となっている。停止温度450℃未満ではM
Aの分解が十分に行われず、建築構造用鋼として必要な
靭性が確保できない。一方停止温度が600℃を超える
と、ミクロ組織として粗大なフェライトが生成し強度の
低下を招く。従って冷却停止温度を450℃以上600
℃以下と規定した。
【0047】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)表5に示す化学組成を有する鋼1〜12を
用い、1270℃加熱800℃仕上でフランジ幅400
mm、ウェブ高さ400mm、フランジ板厚80mmの
極厚圧延H形鋼を熱間圧延し、板厚中央部で3.0℃/
sの冷却速度になるように制御冷却を行ない、板厚中央
部の温度が550℃となった時点で放冷した。その際の
フランジ板厚中央部及び板厚1/4tにおける室温強
度、板厚中央部の600℃における高温強度、y割れ試
験による予熱温度を表6に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】これらの表に示すように、化学組成が本発
明の範囲から外れる、鋼1,2,5,7,9,11,1
2は本発明で要求する特性のいずれかを満足していな
い。すなわち、Cが高い鋼1は予熱温度が100℃と高
い。一方Cが0.04%と低い鋼2は、他の化学成分を
本発明の範囲内に制限しているため、板厚中央部の室温
強度及び高温強度が不足している。Mnの高い鋼3、M
oの高い鋼5、Crの高い鋼7、Niの高い鋼9はフラ
ンジ板厚中央部と板厚1/4tとの間の強度差が大き
く、板厚方向の均質性に劣る。Vの低い鋼11はYSが
低く建築向けHT570の規格を満足しない。またVの
高い鋼12は著しい析出強化によりYSの上昇量が多
く、室温における低降伏比を満足しない。
【0051】一方、化学組成が本発明の範囲内である鋼
4、6、8、10はHT570の室温強度、600℃の
高温強度を満足するだけでなく、板厚方向の強度差が小
さく、y割れ試験における予熱温度も25℃と低い。
【0052】(実施例2)表7に示す化学組成を有する
鋼13を用い、表8に示すように加熱温度、仕上温度、
板厚中央部の冷却速度、冷却停止温度を変化させた。そ
の場合の板厚中央部および板厚1/4tにおける室温強
度、板厚中央部の600℃における高温強度、−5℃に
おけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを表9に示
す。
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】これらの表に示すように、製造条件が本発
明から外れるA、C、E、G、I、Kは、本発明で要求
する特性のいずれかを満足していない。すなわち、加熱
温度が1400℃と高いAは降伏比は低いが靭性の劣化
も著しく、建築用鋼材としては不適当な特性であった。
圧延仕上温度が1200℃と高いCについてもAと同様
に低に靭性を示している。圧延仕上温度が700℃と低
いEは、室温における低降伏比を満足しない。板厚中央
部の冷却速度が0.2℃/secと低いGは低降伏比は
満足しているものの室温のTS及び600℃におけるY
Sが目標値を満足しない。冷却停止温度が650℃と高
いIは、十分な室温強度および高温強度を示さない。一
方冷却停止温度が200℃と著しく低いKは、室温のT
Sが目標とするレンジを超えた値を示し、靭性も劣化し
ている。
【0057】これに対して、加熱温度、仕上温度、板厚
中央部の冷却速度、冷却停止温度がすべて本発明の範囲
内であるB、D、F、H、Jはいずれの特性も満たす優
れた特性を有している。
【0058】(実施例3)表10に示す化学組成を有す
る鋼14〜23を用い、表11に示すように加熱温度、
仕上温度、板厚中央部の冷却速度、冷却停止温度を変化
させた。その場合の板厚中央部および板厚1/4tにお
ける室温強度、板厚中央部の600℃における高温強
度、−5℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギ
ーを表12に示す。
【0059】
【表10】
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
【0062】これらの表に示すように、化学組成が本発
明の範囲から外れる、鋼14〜19は製造条件によら
ず、本発明で要求する特性のいずれかを満足していな
い。すなわち、Mo含有量が本発明の範囲を超えた0.
6%の鋼14は、板厚中央部と板厚1/4tとの強度差
が大きく、板厚方向の均質性を損なっている。V含有量
が0.5%と多い鋼15は、加熱温度・仕上温度が本発
明の範囲より高い場合、焼き入れ性が高いため圧延後の
制御冷却により強度が著しく増加し、目標強度を満足し
なくなる。また、圧延温度が本発明の範囲内もしくはそ
れよりも低い場合、Vの析出により特に降伏点が上昇
し、降伏比が著しく上昇するため建築用鋼材として要求
される規格を満たさない。Nbを0.1%まで含有して
いる鋼16は、仕上温度が710℃と低い場合ばかりで
なく、すべての製造条件が本発明の範囲を満たしている
場合にも常温における降伏比が高く、建築用鋼材として
は不適当な特性である。Cu添加量2.0%の鋼17、
Ni添加量1.5%の鋼18、Cr添加量1.2%の鋼
19はいずれも請求範囲を超える合金元素を添加してい
ることから常温強度が目標の上限値を超えており、かつ
板厚中央部と板厚1/4t部の強度の均質性が悪い。
【0063】これに対して化学組成が本発明の範囲内で
ある鋼20、21、22の場合、製造条件が本発明の範
囲を満足しない条件3A、3Dでは室温強度、降伏比が
目標値を満足しないが、製造条件についても請求範囲を
満足している条件3B、3C、3Eでは全ての特性につ
いて目標値を満足している。
【0064】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、炭素当
量を0.44%以下に抑えて化学組成を最適化し、加熱
温度を寸法精度及び加熱粒径の観点から規定し、圧延仕
上温度を低降伏比及び母材靭性の観点から規定し、冷却
速度を母材強度および理想的水冷条件の観点から規定
し、冷却停止温度を強度および靭性の観点から規定する
ことにより、フランジ厚さが80mm以上と厚く、低降
伏比、耐火性、優れた溶接性を兼ね備え、板厚方向に強
度変化の少ない、引張強度が570MPa以上の高強度
極厚H形鋼を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】V添加量と、室温および600℃における機械
的性質との関係を示すグラフ。
【図2】Mo添加量と、板厚1/4t、1/2tの室温
強度および1/2tの高温強度との関係を示すグラフ。
【図3】極厚H形鋼の各組成における、フランジ板厚方
向の硬さの変化を示すグラフ。
【図4】冷却停止温度とTSとの関係を示すグラフ。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.20%、
    Si:0.05〜0.50%、Mn:0.80〜1.2
    0%、Mo:0.2〜0.5%、V:0.03〜0.1
    3%、Ti:0.003〜0.010%を含有する鋼
    を、1350℃以下に加熱し、800℃以上1100℃
    以下で圧延終了後、ただちに板厚中央部において0.5
    ℃/s以上3.5℃/s以下の冷却速度で制御冷却を行
    ない、450℃以上600℃以下で制御冷却を停止し、
    その後放冷することを特徴とする、低降伏比と耐火性を
    有し、溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の少ない建築
    向け高強度極厚圧延H形鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 さらにNb:0.01〜0.07%を含
    有することを特徴とする、請求項1に記載の、低降伏比
    と耐火性を有し、溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の
    少ない建築向け高強度極厚圧延H形鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 さらにCu:0.05〜0.5%、N
    i:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.5%の
    一種又は二種以上を含有することを特徴とする、請求項
    1または請求項2に記載の、低降伏比と耐火性を有し、
    溶接性に優れ、板厚方向の強度変化の少ない建築向け高
    強度極厚圧延H形鋼の製造方法。
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