JPH08117933A - 異鋼種継目品質劣化防止法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】連続鋳造において、鋼種の多様化により異鋼種
継目頻度が増大している。本法は異鋼種継目部の介在物
の増大を防止して前後チャージの成分混合をできるだけ
小さくすることを特徴とする方法である。 【構成】鍋から溶湯をタンディシュに受けタンディシュ
からモールドへ溶湯を供給する連続鋳造法において、タ
ンディシュの溶湯出口部に筒状の容器の中で、容器の壁
面より不活性ガスを吹き込みながら溶湯を回転させる介
在物清浄化装置を取り付け、継目部前チャージのタンデ
ィシュ内残湯をできるだけ少なく、好ましくはゼロにし
た後、後チャージを注入して異鋼種継目部の介在物量の
増大を防止してタンディシュ内の成分混合長さを極小に
することを特徴とする連続鋳造法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は連続鋳造において、成分
が異なる異鋼種継目部の成分変動と介在物の増大を防止
する方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動車用、家電用の薄板材や、ま
た、海洋構造物、貯槽、石油およびガス運搬用鋼管、高
張力線材などの材質特性に対する要求は厳しさを増して
いる。一方近年の連続鋳造の発展はめざましく、前述の
ほとんどの製品が連続鋳造で製造するに至っている。こ
の連続鋳造を効率的に実現するため、数チャージの鍋を
１つのタンディシュで連続的に鋳造する連々鋳作業が一
般化している。この連々鋳におけるタンディシュの役割
は各連鋳ストリームへの溶湯の分配と溶湯の清浄化で、
溶湯中の介在物を確実に除去するためタンディシュサイ
ズは大型化の傾向を示している。

【０００３】このようなタンディシュにおいて、成分の
異なった異鋼種を連続的に鋳造しようとした場合、前チ
ャージの残溶湯量が多いと、後チャージ成分と前チャー
ジ成分がタンディシュ内で混合して、目標の成分でない
鋳片の長さが長くなり、この成分変動部位鋳片は、製造
目的の鋳片にならず、注文歩留まりの低減に至る。一方
前チャージのタンディシュ内残湯量を少なくした場合、
成分混合鋳片長さは短くなるが、溶湯が空気酸化等で汚
染され、介在物に起因した表面疵や内質欠陥の発生に至
り、この場合も欠陥鋳片となり注文歩留まりの低減に至
る。

【０００４】この問題の解決策の第１は前チャージと後
チャージの組み合わせを工夫し、タンディシュ溶湯混合
部位の成分を許容範囲にすることである。しかしながら
品種が多岐に亘る場合、成分混合で問題が発生する異鋼
種の組み合わせをゼロにすることは困難で、また同鋼種
継目でも鍋からタンディシュへの注入流の汚染が存在す
る。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従って、異鋼種継目部
の成分変動と溶湯汚染に起因した介在物欠陥による注文
歩留まり低減の防止対策の確立が重要課題である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記のとうりである。 （１）鍋から溶湯をタンディシュに受けタンディシュか
らモールドへ溶湯を分配する連続鋳造法において、モー
ルドへ溶湯を注入するノズルとタンディシュの間に介在
物分離機構を取付けタンディシュ内残湯をできるだけ少
なく好ましくはゼロにした後、継目部後チャージを注入
して異鋼種継目部のタンディシュ内の成分混合長さを極
小にして、介在物を分離し溶湯を清浄化することを特徴
とする異鋼種継目品質劣化防止法。

【０００７】（２）鍋から溶湯をタンディシュに受けタ
ンディシュからモールドへ溶湯を分配する連続鋳造法に
おいて、タンディシュの溶湯出口部に容器の中で回転運
動を与えた溶湯の中へ、容器の壁面より不活性ガスを吹
き込む、不活性ガス吹込み遠心分離の介在物分離装置を
取り付け、タンディシュ内残湯を好ましくはゼロにした
後、継目部後チャージを注入して異鋼種継目部のタンデ
ィシュ内の成分混合長さを極小にして、介在物を分離す
ることを特徴とする前項（１）記載の異鋼種継目品質劣
化防止法。

【０００８】（３）鍋から溶湯をタンディシュに受けタ
ンディシュからモールドへ溶湯を供給し、タンディシュ
の溶湯出口部に容器の中で回転運動を与えた溶湯の中
へ、容器の壁面よりガスを吹き込む不活性ガス吹込み遠
心分離の介在物分離装置を取り付けた連続鋳造法におい
て、ガス吹込み遠心分離の介在物分離装置の容量を０．
３ｍ³以下の量にして、継目部前チャージのタンディシ
ュ内残湯をできるだけ少なく好ましくはゼロにした後、
継目部後チャージを注入して異鋼種継目部のタンディシ
ュ内の成分混合長さを極小にすることを特徴とする前項
（１），（２）記載の異鋼種継目品質劣化防止法。

【０００９】

【作用、実施例】図１に本発明のタンディシュと不活性
ガス吹込み遠心分離の介在物分離装置（以下介在物分離
装置と略称）の概略を示す。介在物分離装置では溶湯に
電磁力により回転運動を与え炉壁より不活性ガスを吹込
む。吹込み不活性ガスの量は配管中に取付けたバルブで
制御して、溶湯の排出速度は本装置の下方に設置したス
ライディングノズルの開度で制御した。

【００１０】また溶湯の回転速度は撹拌電流値により制
御した。炉壁から吹込まれた不活性ガスは炉壁において
溶湯の回転により微細に分断する。この分断微細気泡は
遠心分離により中心部近傍に集積し、中心部近傍で合体
により大きくなった気泡は浮上する。気泡が炉壁から中
心部に移動する間に気泡表面には介在物が集積して介在
物は気泡とともに系外に除去される。

【００１１】溶湯はタンディシュに注入され、介在物分
離装置が満たされ、溶湯の上面がタンディシュの底より
高くなった適当な段階に介在物分離装置の下方に取付け
たスライディングノズルを開き、モールドへ溶湯を注入
する。定常部に至った段階にはタンディシュ内の湯面の
高さレベルは一定値を保持した方が良い。異鋼種継目に
おいて前チャージの鋳造が終了した段階で、タンディシ
ュ内の湯面レベルはできるだけ低くして、後チャージの
タンディシュへの注入を開始する。

【００１２】図２は前チャージとして、０．８％Ｃ鋼を
採用して、後チャージとして０．５％Ｃ鋼を採用した場
合の、後チャージ注入開始時の前チャージ残湯量別溶湯
排出量と溶湯成分分析値の関係である。後チャージ注入
開始時の前チャージの残湯量が少ない方が、成分変動領
域を小さくすることができる。なお溶湯試料は注入流よ
り採取した。

【００１３】一方以上のように採取した溶湯試料の介在
物をスライム抽出法で抽出して、前チャージ残湯量との
関係を見たのが図３である。スライム抽出介在物個数は
後チャージ注入開始時の前チャージ残湯量が非常に小さ
くとも、図１の不活性ガス吹込み遠心分離の介在物分離
装置付きタンディシュにより異鋼種継目部の成分変動お
よび介在物の増大を防止することができ、注文歩留まり
の大幅な改善が実現できた。

【００１４】図４は介在物分離装置の容積と成分変動長
さの関係で図５はその際のスライム抽出介在物個数と介
在物分離装置容量の関係である。成分が混合した溶湯量
は介在物分離装置容量が小さいほど少ない。一方スライ
ム抽出介在物個数は介在物清浄化装置の容量が大いほど
少ない傾向があるがその影響は小さく、介在物分離装置
容量が小さ過ぎると悪化の傾向がある。図４と図５か
ら、介在物分離装置の必要容量を考えると成分変動の観
点からは小さい方が好ましく、成分変動の溶湯量ゼロが
実現できる０．３ｍ³以下が好ましい。

【００１５】

【発明の効果】以上のごとく本発明により、異鋼種継目
部でタンディシュ残湯ゼロにすることで、異鋼種継目部
のタンディシュ内混合を防止して、溶湯の清浄性を安定
に維持することが可能になり、継目部の介在物や成分変
動に起因した注文歩留を大幅に改善して、多品種の製品
を経済的に製造することを可能にした。

【図面の簡単な説明】

【図１】は本設備の概略図。

【図２】はタンディシュの前チャージ残湯量別の全排出
溶湯量と排出溶湯成分の関係の図。

【図３】はタンディシュの前チャージ残湯量別の全排出
溶湯量と排出溶湯のスライム抽出介在物個数の関係の
図。

【図４】はタンディシュ残湯ゼロにおける不活性ガス吹
込み遠心分離の溶湯清浄化装置の容量と成分変動してい
る排出溶湯量の関係の図。

【図５】はタンディシュ残湯ゼロにおける不活性ガス吹
込み遠心分離の溶湯清浄化装置の容量と介在物が悪化し
ている排出溶湯量の関係の図。

【符号の説明】

１：鍋、 ２：タンディシュ、 ３：不活性ガス吹込み
遠心分離の溶湯清浄化装置（溶湯清浄化装置と省略）、
４：浸漬ノズル、 ５：溶湯清浄化装置の溶鋼、
６：タンディシュ内溶湯の上面、 ７：スライディング
ノズル、 ８：不活性ガス気泡。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮沢 憲一 千葉県君津市君津１番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】鍋から溶湯をタンディシュに受けタンディ
   シュからモールドへ溶湯を分配する連続鋳造法におい
   て、モールドへ溶湯を注入するノズルとタンディシュの
   間に介在物分離機構を取付けタンディシュ内残湯をでき
   るだけ少なく好ましくはゼロにした後、継目部後チャー
   ジを注入して異鋼種継目部のタンディシュ内の成分混合
   長さを極小にして、介在物を分離し溶湯を清浄化するこ
   とを特徴とする異鋼種継目品質劣化防止法。
2. 【請求項２】鍋から溶湯をタンディシュに受けタンディ
   シュからモールドへ溶湯を分配する連続鋳造法におい
   て、タンディシュの溶湯出口部に容器の中で回転運動を
   与えた溶湯の中へ、容器の壁面より不活性ガスを吹き込
   む、不活性ガス吹込み遠心分離の介在物分離装置を取り
   付け、タンディシュ内残湯を好ましくはゼロにした後、
   継目部後チャージを注入して異鋼種継目部のタンディシ
   ュ内の成分混合長さを極小にして、介在物を分離するこ
   とを特徴とする請求項１記載の異鋼種継目品質劣化防止
   法。
3. 【請求項３】鍋から溶湯をタンディシュに受けタンディ
   シュからモールドへ溶湯を供給し、タンディシュの溶湯
   出口部に容器の中で回転運動を与えた溶湯の中へ、容器
   の壁面よりガスを吹き込む不活性ガス吹込み遠心分離の
   介在物分離装置を取り付けた連続鋳造法において、ガス
   吹込み遠心分離の介在物分離装置の容量を０．３ｍ³以
   下の量にして、継目部前チャージのタンディシュ内残湯
   をできるだけ少なく好ましくはゼロにした後、継目部後
   チャージを注入して異鋼種継目部のタンディシュ内の成
   分混合長さを極小にすることを特徴とする請求項１また
   は２記載の異鋼種継目品質劣化防止法。