JPH08109876A - 斜板式コンプレッサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピストンと回転する斜板とが直結式の「斜板
式コンプレッサ」において、斜板とシューとの摺動性を
向上させる。 【構成】 ピストン２３にシュー７１，７２を介して連
結され駆動軸１９とともに回転する斜板２５の表裏両摺
動面２５ａ，２５ｂに、潤滑油を保持する潤滑油保持部
材４０としての油溝４１を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、斜板式コンプレッサの
改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用空気調和装置に使用されるコン
プレッサとしては、駆動軸に対する傾斜角度が固定され
た斜板を有する容量固定斜板式コンプレッサや、吐出冷
媒量を調整すべく駆動軸に対する傾斜角度が可変とされ
た斜板を有する容量可変斜板式コンプレッサなどが知ら
れている。

【０００３】この容量可変斜板式コンプレッサは、ケー
シング内に回転可能に軸架されベルト、プーリなどを介
してエンジンの回転動が伝達されて回転駆動する駆動軸
と、この駆動軸に傾斜角度が可変に取り付けられる円板
状の斜板とを有し、駆動軸を回転させると、傾斜した斜
板は、いわゆるみそすり運動をなしつつ、駆動軸と共に
回転する。また、この容量可変斜板式コンプレッサは、
複数のシリンダ室とこのシリンダ室に沿って摺動移動す
る各ピストンとを有しているが、回転する斜板とピスト
ンとを、ピストンロッドを介することなく直接摺動自在
に連結した型式のものがある。

【０００４】回転する斜板とピストンとが直結式のコン
プレッサにおいては、図７に示すように、各ピストン２
３の後端側に断面が略Ｕ字状を呈する嵌合部２３b が形
成されており、この嵌合部２３b の両側内面の対向する
位置に形成された球面凹部２３c ，２３d に略半球状の
シュー７１，７２が嵌装され、これら両シュー７１，７
２により斜板１２５の表裏両平坦面が挟持されている。
ここで、斜板１２５の外縁部１０７の表裏両面に形成さ
れる摺動面１２５ａ，１２５ｂは、それぞれ対応するシ
ュー７１，７２の平面部に摺動接触しており、またピス
トン２３は、その後端部に形成された球面凹部２３c ，
２３d において、対応するシュー７１，７２の球面部に
摺動接触する。このようにして、ピストン２３は、シュ
ー７１，７２を介して、その後端部において斜板１２５
に摺動自在に連結されている。

【０００５】そして、駆動軸に対して傾斜した斜板１２
５を駆動軸とともに回転すると、斜板１２５の回転運動
は、シリンダ室により摺動方向が規制されているピスト
ン２３を図中矢印方向の往復運動に変換される。このよ
うにしてピストン２３を往復運動させ、コンプレッサ内
の吸入ポートから吸入した冷媒を圧縮した後に吐出ポー
トから吐出することにより、冷房サイクル内を冷媒が循
環する。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】直結式コンプレッサで
は、ケーシング内下部のオイル溜りに貯えられた潤滑油
の中を斜板１２５の外縁部１０７が通ることにより、斜
板１２５の摺動面１２５ａ，１２５ｂに潤滑油が塗布な
いし供給され、シュー７１，７２の平面部との間の摺動
性を確保するようにしてある。

【０００７】しかしながら、斜板１２５の摺動面１２５
ａ，１２５ｂは平坦度が極めて高く潤滑油を保持し難い
形状となっていることから、特にコンプレッサの始動時
における摺動性が低下する虞があった。

【０００８】本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決
するためになされたものであり、ピストンと回転する斜
板とが直結式の斜板式コンプレッサにおいて、斜板とシ
ューとの摺動性を向上させることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、ケーシング内に回転可能に軸架された駆動
軸と、前記ケーシング内のクランク室に設けられ前記駆
動軸に連結された斜板と、この斜板の回転により軸線方
向の往復動される複数のピストンと、これらピストンが
内部を摺動するシリンダ室と、前記各ピストンの後端側
に形成した嵌合部に嵌装されると共に前記斜板の表裏両
摺動面を挟持しつつ当該摺動面と摺動接触するシューと
を有する斜板式コンプレッサにおいて、前記斜板の前記
表裏両摺動面に、潤滑油を保持する潤滑油保持部材を形
成したことを特徴とする斜板式コンプレッサである。

【００１０】前記潤滑油保持部材は、前記ケーシング内
下部に設けたオイル溜りに貯えられた潤滑油の中を前記
斜板の外縁部が通る際に潤滑油が供給される溝形状を有
している。

【００１１】

【作用】このように構成した本発明にあっては、斜板の
表裏両摺動面に形成した潤滑油保持部材に潤滑油が保持
され、この潤滑油がシューとの間に供給され、斜板とシ
ューとの摺動性が高められる。特に、コンプレッサを始
動するときにも、潤滑油保持部材油に保持された潤滑油
が斜板とシューとの間の摺動箇所に供給されることにな
るため、コンプレッサの始動時における摺動性が高めら
れる。

【００１２】潤滑油保持部材を、オイル溜りに貯えられ
た潤滑油の中を斜板の外縁部が通る際に潤滑油が供給さ
れる溝形状に形成すれば、潤滑油の保持が確実に行わ
れ、さらに、斜板の軽量化を通して、コンプレッサ全体
が軽量となる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図１は、本発明の一実施例に係る容量可変斜板式
コンプレッサの概略断面図、図２は、図１に示される斜
板とピストンとの連結部分の要部拡大断面図、図３は、
図１に示される斜板とピストンとの連結部分の分解斜視
図である。

【００１４】図１に示す本実施例の容量可変斜板式コン
プレッサは、各端部にリアヘッド１０とフロントヘッド
１１が両端に取り付けられた円筒状のケーシング１２を
有し、このケーシング１２内には、シリンダ室１３や、
クランク室１４が設けられている。前記リアヘッド１０
は、ケーシング１２の右端部にバルブシート１６を介し
て取り付けられ、左端部に設けられたフロントヘッド１
１とともに図示しないボルトにより３者一体的に連結さ
れている。バルブシート１６の両面には、弁形成プレー
トがそれぞれ設けられ、吐出弁側には、リテーナ１８が
取り付けられている。

【００１５】ケーシング１２内を挿通して設けられた駆
動軸１９の前端側は、フロントヘッド１１を貫通して突
出され、端部にプーリ２０が連結されている。駆動軸１
９とプーリ２０との間には電磁クラッチ２７が設けら
れ、要冷房時には電磁クラッチ２７をオンして、ベルト
を介してエンジンの回転が伝達されるようになってい
る。冷房不要時には電磁クラッチ２７をオフすれば、エ
ンジンとコンプレッサとの接続が遮断され、駆動軸１９
は回転せずにプーリ２０のみが空転する。一方、先端側
は、前記ケーシング１２の中心ボス部１５に開設された
通孔１５a 内に嵌装され、軸受２１により回転可能に支
持されている。

【００１６】ケーシング１２内には、シリンダ室１３が
円周方向等間隔に複数個開設され、これら各シリンダ室
１３にはそれぞれピストン２３が設置されている。これ
ら各ピストン２３は、前端側にピストンヘッド２３a 、
後端側に断面が略Ｕ字状を呈する嵌合部２３b が形成さ
れている。この嵌合部２３b の両側内面に対向して形成
された球面凹部２３c ，２３d にシュー７１，７２の球
面部が嵌装されている。これら両シュー７１，７２の平
面部により斜板２５の表裏両側の摺動面２５ａ，２５ｂ
が挟持され、斜板２５の摺動面２５ａ，２５ｂとシュー
７１，７２の平面部とが摺動自在に接触する。

【００１７】駆動軸１９の前端部位は、フロントヘッド
１１に軸受２６を介して支持され、この軸受２６の外方
側にはリップシール部材２６ａが設けられ、軸受２６の
内方には駆動軸１９により回転される回転部材２８が設
けられている。この回転部材２８の内端側には軸線方向
摺動可能に嵌挿されたスリーブ２９が設けられ、このス
リーブ２９の外周面は、円弧状とされ、この円弧状外面
には揺動可能に斜板２５の凹状内面が当接している。斜
板２５と回転部材２８には、それぞれリンク３０b ，３
０a が突設され、これら両リンク３０b ，３０a は、長
孔３１とピン部材３２により連結され、回転部材２８の
回転によって斜板２５が回転されるようになっている。

【００１８】したがって、この斜板２５は、スリーブ２
９の軸方向移動に伴ってピン部材３２を支点として傾斜
し、機械的に傾斜角（駆動軸１９の軸線に直交する面に
対する傾斜角をいう）を調節することができるようにな
っている。

【００１９】この容量可変斜板式コンプレッサは、リア
ヘッド１０内にコントロールバルブＣv が設けられ、帰
還する冷媒の吸込圧に応じてクランク室１４内の圧力を
調整して斜板２５の角度を変化させて、ピストン２３の
ストロークを変え、コンプレッサから吐出される冷媒量
を調節し、コンプレッサの吸入圧が一定になるようにコ
ントロールしている。したがって、クランク室１４内の
圧力が高くなると、吸入ポート３３に帰還してきた冷媒
の圧力、つまり吸入圧と前記クランク室１４内の圧力差
から、斜板２５は傾斜角が小さくなる。この状態になる
と、ピストン２３の往復動ストロークが小さくなり、吐
出冷媒量が減少する。なお、コントロールバルブＣv に
関しては公知に属するので詳述は避ける。

【００２０】特に、本実施例の容量可変斜板式コンプレ
ッサにあっては、図２にも拡大して示すように、斜板２
５の前記表裏両摺動面２５ａ，２５ｂに、潤滑油を保持
する潤滑油保持部材４０をそれぞれ形成してある。図３
に示すように、図示例の潤滑油保持部材４０は、リング
形状を有する油溝４１から構成してある。この油溝４１
には、ケーシング１２内の下部に設けたオイル溜り５８
に貯えられた潤滑油の中を斜板２５の外縁部２５ｃが通
る際に潤滑油が供給されるようになっている。なお、駆
動軸１９に連結された補助軸１９ａより駆動される潤滑
油ポンプ５７からの圧油が油溝４１に向けて供給するよ
うにしても良い。

【００２１】斜板２５は、制御特性の良さから球状黒鉛
鋳鉄などから形成されている。また、シュー７１，７２
は、通常、軸受鋼等から構成されるが、イオンコーティ
ング等の表面硬化処理を施してもよい。

【００２２】ピストン２３と斜板２５とを連結する場合
には、図３に示したように、後端側に形成された球面凹
部２３c ，２３d にシュー７１，７２の球面部を嵌装さ
せ、油溝４１を形成した斜板２５を、矢印Ｐ方向からシ
ュー７１，７２の両平面部の間に嵌挿すれば完了する。

【００２３】次に、本実施例の作用を説明する。

【００２４】電磁クラッチ２７がオンされて、駆動軸１
９がベルト及びプーリ２０を介してエンジンによって回
転されると、それに伴って回転部材２８が回転し、両リ
ンク３０a ，３０b 及びピン部材３２を介して斜板２５
も回転する。斜板２５が駆動軸１９に対して傾斜状態に
あれば、みそすり運動的に回動し、これに伴なってピス
トン２３が往復動し、冷媒の吸入、圧縮、吐出が行なわ
れる。

【００２５】ここで、冷房サイクルにおける熱負荷が大
きい場合には、帰還冷媒の圧力は比較的高圧で帰還す
る。この場合には、コントロールバルブＣv の作用によ
り、クランク室１４に比較的高圧の吸入圧が導入される
ため、その内部圧が吸入圧にほぼ等しくなる。

【００２６】このため、吸入工程にあるピストン２３で
も前後の圧力差がほとんどなくなり、ピストン２３はシ
リンダ室１３内でスムーズに後退し得る状態となり、ピ
ストン２３のストロークは増大する。

【００２７】一方、冷房サイクルにおける熱負荷が小さ
い場合には、帰還冷媒の圧力は十分スーパーヒート量が
得られず、低圧で帰還する。この場合には、コントロー
ルバルブＣv の作用により、ピストン２３によって圧縮
され吐出ポート３４に導かれた高圧冷媒が、クランク室
１４に導入され、クランク室１４の内部圧力が高められ
る。この結果、ピン３２を中心とする複数の各ピストン
２３に加わる力のモーメントに差が生じ、各ピストン２
３の前後の圧力バランスが変化し、この斜板２５の傾斜
角度が減少することになる。

【００２８】斜板２５が回転して、その外縁部２５ｃが
オイル溜り５８に貯えられた潤滑油の中を通ることによ
り、油溝４１の中に潤滑油が供給される。そして、油溝
４１の中の潤滑油は、斜板２５の回転に伴ってシュー７
１，７２の平面部との間に供給され、斜板２５とシュー
７１，７２との摺動性が良好なものとなる。特に、コン
プレッサを始動するときにも、油溝４１の中に保持され
た潤滑油が斜板２５とシュー７１，７２との間に供給さ
れることになるため、コンプレッサの始動時における摺
動性を向上させることができる。

【００２９】また、油溝４１を形成することにより斜板
２５が軽量化されるので、コンプレッサ全体の軽量化を
図ることもできる。

【００３０】図４〜図６は、潤滑油保持部材４０の他の
実施例を示す斜視図である。これら図示する潤滑油保持
部材４０は、前述した実施例と同様に全体がリング形状
をなす油溝４２，４３，４４であるが、潤滑油の保持能
力を高めるべく種々改変してある。

【００３１】つまり、図４に示す油溝４２では、油溝４
２の軸方向に沿う端面（以下、油溝の底面という）に軸
方向に沿う孔部４５を形成し、この孔部４５内に潤滑油
が溜まるようにしてある。この孔部４５は、斜板２５の
表裏の摺動面２５ａ，２５ｂを連通するものであっても
良い。

【００３２】図５に示す油溝４３は、油溝４３の底面に
円弧溝４６をさらに形成して断面２段溝形状としたもの
であり、円弧溝４６内に潤滑油が溜まるようにしてあ
る。この円弧溝４６も、斜板２５の表裏の摺動面２５
ａ，２５ｂを連通するものであっても良い。

【００３３】図６に示す油溝４４では、油溝４４の径方
向外方の端面に半円弧の凹部４７を形成し、凹部４７内
に潤滑油がその表面張力で溜まるようにしてある。な
お、図示省略するが、油溝４４の径方向内方の端面に半
円弧凹部を形成しても良く、油溝４４の径方向内外方の
両端面に半円弧凹部を形成しても良い。

【００３４】本発明は図示した実施例の容量可変斜板式
コンプレッサに適用する場合に限定されるものではな
く、ピストン２３と回転する斜板２５とが直結式のコン
プレッサであれば、容量固定の斜板式コンプレッサに適
用することもでき、さらには、電磁クラッチ２７を廃止
したいわゆるクラッチレスコンプレッサに適用すること
もできる。

【００３５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の斜板式コ
ンプレッサによれば、斜板の表裏両摺動面に潤滑油を保
持する潤滑油保持部材を形成したので、ピストンと回転
する斜板とが直結式の斜板式コンプレッサにおける斜板
とシューとの摺動性、特にコンプレッサ始動時における
摺動性を向上させることができる。

【００３６】さらに、潤滑油保持部材を溝形状とすれ
ば、斜板の軽量化を通して、コンプレッサ全体の軽量化
を図ることも可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例に係る容量可変斜板式コン
プレッサの概略断面図である。

【図２】 図１に示される斜板とピストンとの連結部分
の要部拡大断面図である。

【図３】 図１に示される斜板とピストンとの連結部分
の分解斜視図である。

【図４】 潤滑油保持部材の他の実施例を示す斜視図で
ある。

【図５】 潤滑油保持部材のさらに他の実施例を示す斜
視図である。

【図６】 潤滑油保持部材のさらに他の実施例を示す斜
視図である。

【図７】 従来の斜板式コンプレッサの斜板とピストン
との連結部分の要部拡大断面図である。

【符号の説明】

１２…ケーシング １３…シリンダ室 １４…クランク室 １９…駆動軸 ２５…斜板 ２５ａ，２５ｂ…斜板の摺動面 ２５ｃ…斜板の外縁部 ２３…ピストン ２３ｂ…嵌合部 ５８…オイル溜り ７１，７２…シュー ４０…潤滑油保持部材 ４１，４２，４３，４４…油溝

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケーシング(12)内に回転可能に軸架され
   た駆動軸(19)と、前記ケーシング(12)内のクランク室(1
   4)に設けられ前記駆動軸(19)に連結された斜板(25)と、
   この斜板(25)の回転により軸線方向の往復動される複数
   のピストン(23)と、これらピストン(23)が内部を摺動す
   るシリンダ室(13)と、前記各ピストン(23)の後端側に形
   成した嵌合部(23b) に嵌装されると共に前記斜板(25)の
   表裏両摺動面(25a,25b) を挟持しつつ当該摺動面(25a,2
   5b) と摺動接触するシュー(71,72) とを有する斜板式コ
   ンプレッサにおいて、 前記斜板(25)の前記表裏両摺動面(25a,25b) に、潤滑油
   を保持する潤滑油保持部材(40)を形成したことを特徴と
   する斜板式コンプレッサ。
2. 【請求項２】 前記潤滑油保持部材(40)は、前記ケーシ
   ング(12)内下部に設けたオイル溜り(58)に貯えられた潤
   滑油の中を前記斜板(25)の外縁部(25c) が通る際に潤滑
   油が供給される溝形状(41,42,43,44) を有してなる請求
   項１記載の斜板式コンプレッサ。