JPH0810328A - 注射針用キャップ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 キャップ本体にフランジを形成し、注射針に
被着するさいの針刺し事故を防止する。 【構成】 注射器１の先端に装着された注射針２を挿入
し、注射針２に被着させる有底筒状のキャップ本体１２
の開口部に、注射針２の前記開口部外方への誤挿入確率
を抑制するフランジ１３を設ける。これにより、キャッ
プ本体１２の開口部の面積は変わらなくとも、フランジ
１３が開口部外方への注射針２の誤挿入を物理的に阻止
する。遠近感が掴みにくい１ｍｍに満たない径の細い注
射針２も、フランジ１３の開口外への誤挿入が抑制さ
れ、針刺し事故による感染防止に寄与することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、キャップ本体にフラン
ジを形成し、注射針に被着するさいの針刺し事故を防止
するようにした注射針用キャップに関する。

【０００２】

【従来の技術】人体から血液を採取する場合、動脈への
穿刺には的確さが要求されるが、採血後の止血作業や注
射針の密封作業には、的確さに加え手際の良さが要求さ
れる。図４に示す注射器１は、動脈からの採血に用いる
ものであり、注射針２はホルダ部２ａを外筒３の先端に
嵌合装着してある。外筒３内には、空気だけを透過させ
る特殊空気フィルタ４を内蔵したピストン５が摺動自在
に嵌装されており、このピストン５に先端が係合するプ
ランジャ６を上動させることにより、外筒３の内壁とピ
ストン５との間に採血容積空間７が画成される。動脈に
穿刺して採血する動脈刺採血は、動脈血圧を利用して外
筒内の採血容積空間７を血液で満たすため、医師は所定
量の採血容積空間を画成した状態の注射器１を片手で把
持し、注射針２を動脈に穿刺するだけでよく、プランジ
ャ６を引くことで生ずる注射針の動きが患者に痛みを与
えたり、注射針が血管を損傷したりするといったことは
殆ど起こり得ない。

【０００３】動脈血圧により注射針２に流入した血液
は、注射針２のホルダ部２ａに組み込まれた凍結乾燥ヘ
パリン等の凝固防止剤を溶解しながら採血容積空間７内
に導かれ、同時にまた採血容積空間７を占有していた空
気は、ピストン５内の特殊空気フィルタ４を透過してプ
ランジャ６側に排出される。こうして、採血容積空間７
が血液で満たされたならば、医師は動脈から注射針２を
引き抜き、空いている方の手で素早く穿刺部分を止血
し、さらに採血した血液を空気に触れさせないため可及
的速やかに注射針２の先端に注射針用キャップ８を被着
する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来の注射針用キャッ
プ８は、ホルダ部２ａに一体の係止鍔部２ｂが係合する
大きさの開口を有する有底筒状体からなるものである
が、その開口部は注射針２の針先よりは十分大きなもの
であるとは言え、寸法的にはせいぜい内径で６ｍｍ外径
で８ｍｍ程度しかなかった。しかし、径が１ｍｍに満た
ない細い注射針２は遠近感が掴みにくく、８ｍｍ以下の
円形領域内に注射針２を挿入するのは熟練者とは言えど
も容易ではないために、開口内に挿入した筈の注射針２
を誤って注射針用キャップ８を把持する指等に突き刺し
てしまうことがあった。こうした針刺し事故は、消毒済
みの空の注射針によるものであれば惨事に至ることはな
いが、採血に用いた注射針２には患者の血液が付着して
いるため、肝炎や梅毒或いはエイズ等にかかった患者か
ら採血した場合は、針刺し箇所から医師に血液感染する
危険が極めて大であり、院内感染の一因として抜本的な
対策を早急に講ずべき問題となっていた。

【０００５】従って、本発明の目的は、キャップ本体の
開口部にフランジを設け、採血後に注射針にキャップ本
体を被せるさいに誤って針刺し事故を招かぬようにする
ことにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、注射針を挿入
し、該注射針に被着させる有底筒状のキャップ本体と、
該キャップ本体の開口部に形成され、前記注射針の前記
開口部外方への誤挿入確率を低下させるフランジとを具
備することを特徴とする注射針用キャップを提供するこ
とにより、前記目的を達成するものである。

【０００７】また、本発明は、前記フランジが、前記キ
ャップ本体の開口部に形成した漏斗状部と、該漏斗状部
の開口部周縁に形成した鍔部とからなることを特徴とす
る注射針用キャップを提供することにより、前記目的を
達成するものである。

【０００８】

【作用】上記構成に基づき、注射針を挿入し、該注射針
に被着させる有底筒状のキャップ本体の開口部に、注射
針の前記開口部外方への誤挿入確率を低下させるフラン
ジを形成することにより、注射針に注射針用キャップを
被着させるさいの針刺し事故を防止する。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の実施例について、図１ないし
図３を参照して説明する。図１は、本発明の注射針用キ
ャップの一実施例を適用した注射器の使用状態を示す縦
断面図、図２，３は、それぞれ図１に示した注射針用キ
ャップの平面図及び縦断面図である。

【００１０】図１，２，３に示す注射針用キャップ１１
は、注射針２に被着させるさいの針刺し事故を防止する
ため、キャップ本体１２の開口部にフランジ１３を一体
形成したものである。キャップ本体１２は、有底筒状体
からなり、長手方向に沿って４本の突条１２ａが外壁に
一体形成してあり、またその内部には挿入された注射針
２の周囲の空気からシールするシリコンゲル１４が本体
容積の約半分程度充填してある。実施例に示したキャッ
プ本体１２は、先端から中程にかけては僅かずつ拡径さ
れるが、中程から開口端近傍にかけてはほぼ同径のまま
延びており、開口端付近で漏斗状に拡径するフランジ１
３に連なっている。

【００１１】フランジ１３は、キャップ本体１２の開口
部に形成した漏斗状部１３１と、漏斗状部１３１の開口
部周縁に形成した鍔部１３２とからなる。漏斗状部１３
１は、中空の截頭円錐体を逆さにした形状をなしてお
り、従ってその内壁は奥から手前側に次第に拡径され、
開口部に至ってはキャップ本体１２の開口部の約２倍近
い径を有する。このため、キャップ本体１２の開口部の
開口面積に比べ、漏斗状部１３１の開口部の開口面積
は、拡径比（≒２）の二乗すなわち４倍近いものとな
り、注射針２の挿入作業も従来に比べ数段容易に行うこ
とができる。なお、漏斗状部１３１の底に近い内壁に
は、注射針２の係止鍔部２ｂを係止するための係止突起
１３１ａが４箇所に形成してあり、注射針２の挿入限界
位置を規定している。鍔部１３２は、漏斗状部１３１の
開口部に半径方向に肉厚を持たせて一体形成したもので
あり、漏斗状部１３１の円形の開口の周囲に真上から見
て六角形をなすような形状に形成してある。

【００１２】ところで、採血を終えた注射針２に注射針
用キャップ１１を被着する場合、注射器１の外筒３を把
持していない空いた方の手でキャップ本体１２を把持す
る。このとき、キャップ本体１２を把持する指、例えば
親指と人差し指を使ってフランジ１３の付け根近くを支
えることになるが、注射針２の挿入方向から見たときに
指のかなりの部分がフランジ１３が背後に隠れるように
なる。すなわち、キャップ本体１２自体の開口部の面積
は変わらなくとも、その開口部に漏斗状のフランジ１３
を設けたことで、開口部外方への注射針２の誤挿入はか
なり高い確率で防止される。このため、１ｍｍにも満た
ない径の細い注射針２は遠近感が掴みにくいといった事
情があるにも拘わらず、注射針２を開口内にしかるべく
挿入することができ、これにより注射針用キャップ１１
を把持する指等に誤って注射針２を突き刺してしまい、
注射針２に付着した血液から医師が肝炎や梅毒或いはエ
イズ等に感染するといった事故を未然に防止することが
できる。

【００１３】特に、キャップ本体１２の開口部に次第に
拡径しつつ漏斗状に連なる漏斗状部１３１が、注射針２
の挿入可能面積を拡径比の二乗に相当する面積比をもっ
て拡大するため、注射針２の開口部外方への誤挿入確率
が抑制され、しかも挿入された注射針２は、キャップ本
体１２の開口部に正対していなくとも漏斗状部１３１の
内壁に沿ってキャップ本体１２の開口部側に案内される
ため、注射針２の挿入は極めて円滑になされる。さらに
また、漏斗状部１３１の開口部周縁に形成した鍔部１３
２が、キャップ本体１２を把持する手或いは指にとって
注射針２に対する物理的な障壁として機能するため、漏
斗状部１３１の開口部周縁への手指の露出は少なく、注
射針２の針刺し事故は良好に抑止される。

【００１４】また、フランジ１３の鍔部１３２が、注射
針２の挿入方向から見て多角形状の外周を有するため、
注射針用キャップ１１を机の上やパレットのような平坦
面上に配列しても不用意に転動することはなく、多角形
の一辺でもって平面に当接して安定した静止姿勢を保つ
ため、片手での拾い上げや把持が容易である。

【００１５】さらにまた、キャップ本体１２に、長手方
向に沿う突条１２ａを外壁に一体形成したので、キャッ
プ本体１２を把持する方の手にとって突条１２ａが滑り
止めとして機能する。このため、キャップ本体１２は安
定把持でき、それだけ注射針２の挿入が容易になり、同
時にまた針刺し事故の防止にも寄与する。また、キャッ
プ本体１２に、挿入された注射針２をシールするシリコ
ンゲルが充填されているため、シリコンのコロイド液体
が流動性を失うことで寒天状となったシリコンゲルが、
挿入された注射針２の先端を空気から遮断し、これによ
り採血直後の注射器１の注射針２に素早く注射針用キャ
ップ１１を被着することで、採血された血液を空気に触
れさせずに良好な嫌気状態に保つことができる。

【００１６】なお、上記実施例では、フランジ１３の鍔
部１３２を多角形状に成形した注射針用キャップ１１を
例にとったが、鍔部１３２は円盤形状であってもよく、
或いは円盤の一部を半月状に切り欠いたものなど、多角
形以外の形状のものであってもよい。

【００１７】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
注射針を挿入し、該注射針に被着させる有底筒状のキャ
ップ本体の開口部に、注射針の前記開口部外方への誤挿
入確率を抑制するフランジを設けたので、キャップ本体
の開口部の面積は変わらなくとも、開口部にフランジを
設けたことで開口部外方への注射針の誤挿入は物理的に
抑制され、１ｍｍに満たない径の細い注射針は遠近感が
掴みにくいといった事情があるにも拘わらず、開口外へ
の注射針の誤挿入機会が減るので、キャップを把持する
指等に誤って注射針を突き刺してしまうといった事故を
防止することができ、院内感染として問題視されている
注射針を介する肝炎や梅毒或いはエイズ等の感染事故を
未然に防止することができる等の優れた効果を奏する。

【００１８】また、フランジを、キャップ本体の開口部
に形成した漏斗状部と、この漏斗状部の開口部周縁に形
成した鍔部とから構成したので、キャップ本体の開口部
に次第に拡径しつつ漏斗状に連なる漏斗状部が、注射針
の挿入可能面積を拡径比の二乗に相当する面積比をもっ
て拡大し、これにより注射針の開口部外方への誤挿入確
率を抑制することができ、また挿入された注射針は、キ
ャップ本体の開口部に正対していなくとも漏斗状部内壁
に沿ってキャップ本体の開口部側に案内されるため、注
射針の挿入は円滑に可能であり、さらにまた漏斗状部の
開口部周縁に形成した鍔部が、キャップ本体を把持する
手や指にとって注射針に対する物理的な障壁として機能
し、漏斗状部の開口部周縁への手指の露出を減らすた
め、注射針の針刺し事故を良好に抑止することができる
等の効果を奏する。

【００１９】また、フランジの鍔部が、前記注射針の挿
入方向から見て多角形状の外周を有するため、注射針用
キャップを机の上やパレット等の平坦面上に配列したと
きでも、キャップが不用意に転動したりせず、多角形の
一辺でもって平面に当接して安定した静止姿勢を保ち、
これにより片手での拾い上げや把持が容易である等の効
果を奏する。

【００２０】さらにまた、キャップ本体に、長手方向に
沿う突条を外壁に一体形成したので、キャップ本体を把
持する方の手にとって突条が滑り止めとして働き、キャ
ップ本体が安定把持できることで注射針の挿入が容易に
なり、同時にまた針刺し事故の防止に寄与する等の効果
を奏する。

【００２１】また、キャップ本体に、挿入された注射針
先端をシールするゲルが充填されているため、コロイド
液体が流動性を失うことで寒天状となったゲルが、挿入
された注射針の先端を空気と遮断し、これにより採血直
後の注射針に注射針用キャップを被着することで、採血
された血液が空気に触れないよう良好な嫌気状態に保つ
ことができる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の注射針用キャップの一実施例を適用し
た注射器の使用状態を示す縦断面図である。

【図２】図１に示した注射針用キャップの平面図であ
る。

【図３】図１に示した注射針用キャップの縦断面図であ
る。

【図４】従来のの注射針用キャップの一例を適用した注
射器の使用状態を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ 注射器 ２ 注射針 １１ 注射針用キャップ １２ キャップ本体 １３ フランジ １３１ 漏斗状部 １３１ａ 係止突起 １３２ 鍔部 １４ シリコンゲル

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 注射針を挿入し、該注射針に被着させる
   有底筒状のキャップ本体と、該キャップ本体の開口部に
   形成され、前記注射針の前記開口部外方への誤挿入確率
   を低下させるフランジとを具備することを特徴とする注
   射針用キャップ。
2. 【請求項２】 前記フランジは、前記キャップ本体の開
   口部に形成した漏斗状部と、該漏斗状部の開口部周縁に
   形成した鍔部とからなることを特徴とする請求項１記載
   の注射針用キャップ。
3. 【請求項３】 前記鍔部は、前記注射針の挿入方向から
   見て多角形状の外周を有することを特徴とする請求項２
   記載の注射針用キャップ。
4. 【請求項４】 前記キャップ本体は、長手方向に沿う突
   条が外壁に一体形成してあることを特徴とする請求項１
   記載の注射針用キャップ。
5. 【請求項５】 前記キャップ本体は、前記挿入された注
   射針先端をシールするゲルが充填されたことを特徴とす
   る請求項１記載の注射針用キャップ。