JPH0741846Y2 - Ｖ型エンジンのシリンダブロック構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はＶ型エンジンのシリンダブロック構造に関し、
特に冷却水ポンプの配設位置とオイルギャラリーの構造
を改善したものに関する。

〔従来技術〕

従来の一般的なＶ型エンジンのシリンダブロックにおい
ては、左右のバンク間にＶ型空間が設けられ、クランク
軸ジャーナル軸部を支持する主軸受部を潤滑する為のオ
イルを供給するメインオイルギャラリーがＶ型空間の底
壁部内にクランク軸と平行に透設されるが、通常このメ
インオイルギャラリーの前方に略対応する位置でシリン
ダブロックの前面に冷却水ポンプが装着され、この冷却
水ポンプ及びそのサクション通路とメインオイルギャラ
リーが干渉することから、シリンダブロックの前部約1/
5長さ部分にはメインオイルギャラリーを透設すること
が出来ず、最前端の主軸受部へオイルを供給する供給オ
イル通路はシリンダブロックの側部から中央部へ左右方
向に透設されていた。

一方、実開昭60−153818号公報には、デッドスペースで
あるＶ型空間を有効活用する為にＶ型空間の前端部に冷
却水ポンプを配設した構造が記載されている。

他方、特開昭59−160021号公報には、Ｖ型空間の低壁部
内にメインオイルギャラリーをクランク軸と平行にスト
レートに形成した構造が記載されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

前記従来の一般的なＶ型エンジンのシリンダブロックで
は、メインオイルギャラリーをシリンダブロックの全長
に亙って縦通状に形成できないので、メインオイルギャ
ラリーの構造が複雑化する。特に、最近のようにアルミ
ニウム合金製シリンダブロックを採用する場合、シリン
ダブロックの鋳造時太い鋳抜きピンにてメインオイルギ
ャラリーを形成する関係上、メインオイルギャラリーの
ボリュームが大きくなってオイル圧が立上りにくく複雑
な構造のメインオイルギャラリーでは潤滑能力が低下し
てしまう。

一方、上記両公報の技術を参考にして、冷却水ポンプが
メインオイルギャラリーと干渉しないように、Ｖ型空間
の前端上部に冷却水ポンプを配設し、メインオイルギャ
ラリーをＶ型空間の底壁部内にクランク軸と平行にスト
レートに形成することも考えられるが、この場合エンジ
ン全高が大きくなること、冷却水ポンプ駆動用ベルトが
長くなりこのベルトの占めるスペースが増加すること、
冷却水ポンプから左右のバンクのウォータジャケットへ
冷却水を導く冷却水通路が長くなり冷却装置が大型化す
ること、などの問題がある。

本考案の目的は、冷却水ポンプを最適な位置に配設しつ
つメインオイルギャラリーの構造を簡単化し且つオイル
の冷却を図り得るようなＶ型エンジンのシリンダブロッ
ク構造を提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係るＶ型エンジンのシリンダブロック構造は、
Ｖ型エンジンのシリンダブロックにおいて、左右のバン
ク間のＶ型空間の前端部にＶ型空間の底部壁から一体的
に立上る突設壁部を設け、冷却水ポンプの軸心が突設壁
部の下端付近の左右方向中央部に略対応するようにシリ
ンダブロックの前面に冷却水ポンプを設けるとともに、
冷却水ポンプへ冷却水を導入する為の冷却水通路を突設
壁部の上端から突設壁部とその直下の壁部内に形成し、
突設壁部の後端付近からシリンダブロックの後端に亙る
範囲においてＶ型空間の底部壁内にクランク軸と平行な
オイルギャラリーを透設し、突設壁部の下側の壁部内に
オイルギャラリーの前端からシリンダブロックの前端部
まで延びる前方下り傾斜状の上流側オイルギャラリーを
透設したものである。

〔作用〕

本考案に係るＶ型エンジンのシリンダブロック構造にお
いては、左右のバンク間のＶ型空間の前端部にＶ型空間
の底部壁から一体的に立上る突設壁部を設け、冷却水ポ
ンプの軸心が突設壁部の下端付近の左右方向中央部に略
対応するようにシリンダブロックの前面に冷却水ポンプ
を設け、冷却水ポンプへ冷却水を導入する為の冷却水通
路を突設壁部の上端から突設壁部とその直下の壁部内に
形成するので、Ｖ型空間の前端部を有効活用して冷却水
ポンプの上半部分とサクション用の冷却水通路を形成す
ることが出来るうえ、冷却水ポンプはオイルギャラリー
の前方に略対応する高さ位置に設けることになるのでエ
ンジンの全高が高くなることもない。

突設壁部の後端付近からシリンダブロックの後端に亙る
範囲においてＶ型空間の底部壁内にクランク軸と平行な
オイルギャラリーを透設し、突設壁部の下側の壁部内に
オイルギャラリーの前端からシリンダブロックの前端部
まで延びる前方下り傾斜状の上流側オイルギャラリーの
透設するので、シリンダブロックの前端部から後端まで
上流側オイルギャラリーとオイルギャラリーとからなる
メインオイルギャラリーを連続的に形成することが出来
る。しかも、冷却された冷却水が流れる冷却水通路の直
下の壁部内に上流側オイルギャラリーが形成されるの
で、上流側オイルギャラリー内を通過するときにオイル
が冷却されることになる。

〔考案の効果〕

本考案に係るＶ型エンジンのシリンダブロック構造によ
れば、上記〔作用〕の項で詳述したように、デッドスペ
ースであるＶ型空間を有効活用して冷却水通路と冷却水
ポンプの上半部分を配設できること、エンジン全高が高
くならないこと、上流側オイルギャラリーとオイルギャ
ラリーとでシリンダブロックの全長に亙って通路抵抗が
比較的小さなメインオイルギャラリーを連続的に形成で
きること、上流側オイルギャラリー内を流れるオイルを
冷却水通路の冷却水で冷却できること、などの効果が得
られる。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例について図面を参照し乍ら説明す
る。

本実施例は、自動車用のＶ型エンジンのシリンダブロッ
クに本考案を適用した場合の一例である。

第１図〜第３図に示すように、シリンダブロックＢは、
クランク軸の軸心を含む水平面で分割されたアルミニウ
ム合金製のシリンダブロックアッパ１とこれに固定され
るアルミニウム合金製のシリンダブロックロワー２とか
らなり、シリンダブロックアッパ１とシリンダブロック
２には前後に略等間隔あけて４つの縦壁部1a・2aが設け
られ、これら縦壁部1a・2aにクランク軸５のジャーナル
軸部を支持する主軸受部６が設けられるが、長さ方向中
央部側の２つの縦壁部1a・2aの主軸受部６の下半部は縦
壁部2aに嵌め込んだ鋳鉄製インサート部材３（これが謂
ゆるキャップに相当する）に形成され、これらインサー
ト部材３は左右１対の締結ボルト４で縦壁部2aに夫々締
結される。尚、第２図において符号７は立向きに配向さ
れた強化繊維を鋳造時にシリンダブロックアッパ１のア
ルミニウ合金に複合化させた圧縮強度強化用複合部であ
り、符号８は水平方向に配向された強化繊維を鋳造時に
シリンダブロックアッパ１のアルミニウム合金に複合化
させた引張強度強化用複合部であり、符号９はシリンダ
ブロックアッパ１に固定された位置決め用スリーブであ
る。

上記シリンダブロックアッパ１の上部約2/3部分には、
Ｖ型空間10を空けて左バンク11と右バンク12とが設けら
れ、左バンク11には３個のシリンダボア13が形成され、
右バンク12には上記シリンダボア13よりも所定寸法後方
へシフトされた３個のシリンダボア13が形成され、各シ
リンダボア13はシリンダブロックアッパ１に鋳ぐるんだ
鋳鉄製シリンダライナ13aで形成されている。

上記左右のバンク11・12間のＶ型空間10の前端部にはＶ
型空間10の底部壁14から一体的に立上り左右のバンク11
・12の側壁部にも一体的に連なった突設壁部15が設けら
れ、冷却水ポンプ16の軸心が突設壁部15の下端の左右方
向中央部に対応するようにシリンダブロックアッパ１の
前面に冷却水ポンプ16が設けられ、この冷却水ポンプ16
へ冷却水を導入する為の冷却水通路17が突設壁部15の上
端から突設壁部15とその直下の壁部18内に略Ｊ字状に形
成されている。ラジエータで冷却された冷却水がこの冷
却水通路17へ供給され、インペラ16aで加圧して図示外
の通路を介してシリンダブロックＢ内のウォータジャケ
ット1b及びシリンダヘッド19・20内のウォータジャケッ
トへ送給されることになるので、上記冷却水通路17には
冷却された比較的低温の冷却水が流れることになる。

一方、前記４個所の主軸受部６及びシリンダヘッド19・
20に装着される動弁機構などに加圧オイルを供給する
為、クランク軸５で駆動されるオイルポンプ21がシリン
ダブロックＢの前面にクランク軸と同軸状に設けられ、
オイルポンプ21で加圧されたオイルは上流側オイルギャ
ラリー22とオイルギャラリー23とからなるメインオイル
ギャラリーへ圧送される。第１図に示すように、突設壁
部15の後端付近からシリンダブロックアッパ１の後端に
亙る範囲に亙る範囲においてシリンダブロックアッパ１
のうちＶ型空間10の底部壁14内にはクランク軸５の軸心
と平行にオイルギャラリー23が透設され、突設壁部15の
下側の壁部18内には上記オイルギャラリー23の前端から
シリンダブロックアッパ１の前端部のオイルポンプ21の
吐出口まで前方下り傾斜状の上流側オイルギャラリー22
が透設されている。

冷却水ポンプ16を極力低い位置に設ける為及びオイルの
冷却を図る為に、上記上流側オイルギャラリー22は、冷
却水通路17の下部とインペラ収容室とに接近した状態に
設けられている。尚、オイルギャラリー23の中央部には
ノッキングセンサを取付ける為のボス部24が設けられて
おり、オイルギャラリー23の後端部はプラグで閉塞され
る。

更に、シリンダブロックアッパ１の最前端の縦壁部1aに
は上流側オイルギャラリー22から主軸受部６の頂部へ通
ずるオイル通路25が立向きに透設され、またその他の各
縦壁部1aにはオイルギャラリー23から主軸受部６の頂部
へ通ずるオイル通路26が立向きに透設されている。

更に、第３図・第４図に示すように、シリンダヘッド19
・20の動弁機構の冷却に供されたオイルをクランクケー
ス内へ戻す為のリターンオイル通路27・28が左右のバン
ク11・12の壁部に透設されるが、冷却水通路17の下端の
近くにおいてシリンダブロックアッパ１の最前端の縦壁
部1aの後面にはフィン29が突設され、右バンク12のリタ
ーンオイル通路28はフィン29に向けてオイルを流すよう
に左下り傾斜状に形成され、また左バンク11のリターン
オイル通路27はクランクケース内へオイルを流し且つ冷
却水通路17の近くの壁部内を流すように右下りで後方下
りの傾斜状に形成されている。

次に、上記Ｖ型エンジンのシリンダブロックＢの作用に
ついて説明する。

上記突設壁部15を設けて、上述のように冷却水ポンプ16
と冷却水通路17を設けるので、冷却水ポンプ16をオイル
ポンプ21と干渉することのない最も低い位置に配設する
ことが出来るためエンジン全高の増加を防ぐことが出
来、またデッドスペースであるＶ型空間10の前端部を有
効活用して冷却水通路17と冷却水ポンプ16の上半部を配
設することが出来る。

上流側オイルギャラリー22を突設壁部15の下側の壁部18
内に前方下り傾斜状に形成したので、オイルポンプ21の
吐出口から連続的に延びるメインオイルギャラリーを形
成することが出来、それ故通路抵抗の小さなメインオイ
ルギャラリーを実現し、潤滑性能を高めることが出来
る。しかも、上流側オイルギャラリー22は冷却水通路17
の下端部及びインペラ収容室の直下に位置し、上流側オ
イルギャラリー22の囲りの壁部18は常時冷却された状態
になるので、オイルは上流側オイルギャラリー22内を流
れるときに効果的に冷却される。

加えて、右バンク12のシリンダヘッド20からのリターン
オイルはリターンオイル通路28からクランクケース内へ
戻るときに常時十分に冷却された状態のフィン29に接触
して冷却される。左バンク11のリターンオイル通路27も
比較的低温に保たれる縦壁部1a内に形成されているの
で、その中を流れるときにオイルが冷却される。

尚、上記実施例は上下２分割型のアルミニウム合金製シ
リンダブロックＢについて説明したが、上下一体型の通
常の鋳鉄製シリンダブロックに対しても本考案を適用し
得ることは勿論であり、また上記実施例の各部の構造に
当業者が通常の設計業務で加える程度の種々の変更を加
えて実施することも有り得ることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図はＶ型エン
ジンのシリンダブロックなどの縦断側面図、第２図は同
縦断正面図、第３図は同平面図、第４図は第３図IV−IV
線断面図である。 Ｂ……シリンダブロック、１……シリンダブロックアッ
パ、２……シリンダブロックロワー、10……Ｖ型空間、
11……左バンク、12……右バンク、14……底部壁、15…
…突設壁部、16……冷却水ポンプ、17……冷却水通路、
22……上流側オイルギャラリー、23……オイルギャラリ
ー。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】Ｖ型エンジンのシリンダブロックにおい
   て、 左右のバンク間のＶ型空間の前端部にＶ型空間の底部壁
   から一体的に立上る突設壁部を設け、冷却水ポンプの軸
   心が突設壁部の下端付近の左右方向中央部に略対応する
   ようにシリンダブロックの前面に冷却水ポンプを設ける
   とともに、冷却水ポンプへ冷却水を導入する為の冷却水
   通路を突設壁部の上端から突設壁部とその直下の壁部内
   に形成し、突設壁部の後端付近からシリンダブロックの
   後端に亙る範囲においてＶ型空間の底部壁内にクランク
   軸と平行なオイルギャラリーを透設し、突設壁部の下側
   の壁部内にオイルギャラリーの前端からシリンダブロッ
   クの前端部まで延びる前方下り傾斜状の上流側オイルギ
   ャラリーを透設したことを特徴とするＶ型エンジンのシ
   リンダブロック構造。