JPH07242698A - 好中球遊走に必須な細胞膜抗原蛋白質 - Google Patents

好中球遊走に必須な細胞膜抗原蛋白質

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JPH07242698A
JPH07242698A JP5666294A JP5666294A JPH07242698A JP H07242698 A JPH07242698 A JP H07242698A JP 5666294 A JP5666294 A JP 5666294A JP 5666294 A JP5666294 A JP 5666294A JP H07242698 A JPH07242698 A JP H07242698A
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JP
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neutrophil
neutrophilic
protein
antibody
neutrophils
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Application number
JP5666294A
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Inventor
Zenichiro Honda
善一郎 本田
Kazuhiko Yamamoto
一彦 山本
Akiteru Takeuchi
明輝 竹内
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Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 好中球遊走に必須な細胞膜抗原蛋白質を提供
する。 【構成】 ヒト好中球の遊走を阻害する機能を有するモ
ノクローナル抗体の対応抗原であってSDS−PAGE
で分子量約150KDa、等電点約4.0の理化学的性
質を有する好中球膜蛋白質。 【効果】 同対応抗原分子の構造を解明し、抗体の認識
部位を同定することによって、新たな抗炎症剤の標的と
なるペプチドのシークエンスを明らかにすることができ
る。また、同対応抗原分子は、好中球の関与する病態
(自己免疫疾患、腎炎、心筋梗塞、ARDS等)を治療
する薬物の分子標的となり得るものであり、また好中球
の遊走を阻止する抗体をヒト型に変換し、治療薬として
用いることを可能にする。この対応抗原の分子レベルの
解析を通してリガンド依存性の好中球遊走というダイナ
ミックな現象に深い洞察を与えることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ヒト好中球(neutroph
il)の遊走(chemotaxis) を強く抑制する機能を有する
モノクローナル抗体の対応抗原である新規好中球膜蛋白
質に関するものであり、更には、ヒト好中球の遊走を阻
害する機能を有するTM316抗体が特異的に反応する
抗原であって当該好中球が関与する自己免疫疾患、腎
炎、心筋梗塞、成人呼吸困難症候群(ARDS)等の病
態を治療する薬剤の分子標的となり得るヒト好中球細胞
膜に局在する好中球遊走に必須な細胞膜表面機能分子の
高度精製膜蛋白質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、ヒト顆粒球(glanulocyte )の
一種の好中球は、種々の炎症性疾患の際に疾患局所から
放出される可溶性遊走因子に反応して活性化し、炎症部
位へ遊走して、ファゴサイト−シス(食作用)ならびに
活性酸素、蛋白分解酵素及びサイトカイン等の遊離によ
り組織破壊をきたす働きを有することが知られている。
従って、当該好中球遊走の分子機構を解明し、炎症性疾
患における当該好中球遊走を分子レベルで理解すること
は、好中球が関与する炎症性疾患に対する特異的な抗炎
症剤を理論的に設計する上において不可欠な要件であ
り、また、好中球の遊走抑制を作用機序とする治療薬剤
の新たな標的分子を同定することにおいても重要である
と云える。
【0003】従来においても、好中球の細胞膜上に発現
する機能的な膜蛋白質として、例えば、Fcガンマレセ
プター(Feit, H.B. et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA79, 3275, 1982)、補体成分3b(C3b)レセプ
ター(Gerdes, G. et al., Immunology 45, 645, 1982
)、白血球機能関連抗原−1(LFA−1)(Sanchez
-Madrid, F. et at., J. Exp. Med. 158, 1785, 1983
)、C3biレセプター(Beller, D.I. et al ., J.
Exp. Med. 156, 1000, 1982)、p150/95(Sanch
ez-Madrid, F. et al., J. Exp. Med. 158, 1785, 1983
)、CD11b(Corbi, A.L. et al., J. Biol. Che
m. 263, 12403, 1988 、 Sanchez-Madrid, F. et al.,
J. Exp. Med. 158, 1785, 1983)等が知られている。
【0004】また、これらの好中球上の膜蛋白質と結合
するモノクローナル抗体についても研究されている(Br
eard, J. et al., J. Immunol. 124, 1943, 1980、 Kle
banoff, S. J. et al., J. Immunol. 134, 153, 1985、
Lebin T. W. et al., J. Immunol. 130, 1833, 1983、
Sanchez-Madrid, F. et al., J. Exp. Med. 158, 178
5, 1983、 Todd, R. F. et al., Hybridoma 1, 329, 19
82 )。更には、好中球に結合して、その遊走活性を阻
害するモノクローナル抗体NCD1(Thomas, G.et a
l., J. Immunol. 127, 1355, 1981)やNCD3(Thoma
s, G. et al., J.Immunol. 127, 2241, 1981)等も報告
されているが、これらのうちの多くのモノクローナル抗
体に関しては研究は十分に進んでいないのが現状であ
る。従って、この細胞表面分子の構造を明らかにするこ
とは、多くの炎症、及び好中球の関与する病態における
全く新しい抗炎症療法又は免疫増強療法等の基礎を確立
する上できわめて重要な課題であると云える。
【0005】本発明者らは、これまでの好中球遊走に関
する一連の研究の過程の中で、補体成分5a(C5
a),N−フォルミル−メチオニル−ロイシル−フェニ
ルアラニン(FMLP),培養リンパ球上清、細菌菌成
体等の種々の遊走因子(chemotactic factor)によるヒト
好中球の遊走を濃度依存的に強く抑制(inhibition)する
モノクローナル抗体であるTM316を作成している
(Shimizu A. et al., Scand. J. Immunol. 28, 675-68
5, 1988 )。同抗体は、これらの遊走因子刺激による好
中球細胞内におけるカルシウム濃度上昇、活性酸素産
生、リソゾーム顆粒放出は抑制せず、好中球の遊走のみ
を特異的に抑制する機能を有する。すなわち、同抗体
は、遊走因子による受容体刺激−好中球遊走と云う一連
の情報伝達機構の後期(Effector側)に働く細胞表面分
子の、遊走活性に必須な機能ドメイン(domain)に結合
し、その機能を抑制することによって種々の遊走因子に
よる好中球遊走反応(Neutrophil chemotactic reactio
n) を抑制する機能を有するものと考えられる。また、
同抗体の対応抗原は、好中球の活性化に伴い細胞内から
細胞膜に展開する動的分子であり、例えば、慢性関節リ
ウマチの炎症関節内では細胞膜上の発現が著しく亢進し
ていると云った現象が見られる。
【0006】このように、好中球遊走に必須な細胞膜表
面機能分子であって、好中球の細胞表面に存在する同抗
原分子の実体を解明し、上記遊走を阻害する機能を有す
る抗体の認識部位を同定すると共に、更には、新たな抗
炎症剤の標的となる対応抗原分子のペプチドのシークエ
ンスを明らかにすることはきわめて重要なことであり、
これまで、その解明が強く要請されている状況にあっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような状況を踏ま
え、本発明者らは、同抗原分子の生化学的及び理化学的
な性質を明らかにし、この分子を精製し、その実体を解
明することを目標として鋭意検討を積み重ねた結果、ヒ
ト好中球の遊走を阻害する機能を有するモノクローナル
抗体と特異的に反応する同抗体対応抗原の好中球膜蛋白
質を高度に精製することに成功すると共に、当該蛋白質
が従来知られている好中球膜蛋白質とは異なる新しい蛋
白質であることを見い出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0008】本発明は、ヒト好中球の遊走を阻害する機
能を有するモノクローナル抗体の対応抗原の新規好中球
膜蛋白質を提供することを目的とするものである。
【0009】また、本発明は、好中球の遊走に必須な細
胞膜表面機能分子である、TM316抗体が特異的に反
応する抗原の蛋白質を同定することを目的とするもので
ある。
【0010】また、本発明は、好中球の遊走機能の解明
と新たな抗炎症剤の標的となる細胞表面機能分子の構造
を解明することを目的とするものである。
【0011】また、本発明は、同抗原分子の生化学的及
び理化学的な性状を明らかにし、この分子を高度に精製
することを目的とするものである。
【0012】更に、本発明は、TM316抗体が特異的
に認識する好中球の細胞膜表面機能分子を精製し、当該
分子の蛋白質構造を明らかにすることを副次的な目的と
するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明における、ヒト好
中球の遊走を強く抑制する機能を有するモノクローナル
抗体としては、TM316抗体が好適なものとして使用
される。当該TM316抗体は、後述する参考例に具体
的に示されるように、ヒト単核球系培養細胞THP−1
(Tsuchiya S. et al., Int. J. Cancer 26, 171, 198
0)をBALB/Cマウスに免疫し、脾細胞をマウスミ
エローマ細胞株X63AG8.653と細胞融合させて
作成したモノクローナル抗体であり、当該TM316抗
体の性状はIgM、κ型で、ヒト顆粒球とは反応する
が、リンパ球、単球とは反応しないことが知られている
(Shimizu A. et al. ,Scand. J. Immunol. 28, 675-6
85, 1984)。本発明の当該TM316対応抗原の好中球
膜蛋白質の精製の過程においては、同抗体を使用したウ
エスタンブロッティングを指標としたものが好適に使用
される。
【0014】一方、本発明の精製蛋白質の出発材料とし
ては、好中球ミクロソーム画分が好適なものとして使用
されるが、当該好中球ミクロソーム画分は、例えば、次
のようにして調製したものが使用される。すなわち、ヘ
パリン採血により得た全血中の赤血球をデキストランに
より凝集、除去し、上清を遠心し、好中球分画ペレット
を調製し、次いで、後述する実施例に具体的に示される
ように、当該好中球分画ペレットを破砕し、遠心して核
酸成分を除去して、膜蛋白画分のミクロソーム画分を調
製し、これを界面活性剤で抽出し、可溶化して得られる
可溶化物を遠心し、その上清(可溶化ミクロソーム)を
精製の出発材料とする方法が好適なものとして例示され
る。
【0015】次に、好中球膜蛋白質の精製手段について
は、レクチンカラムクロマトグラフィー、陰イオン交換
カラムクロマトグラフィー、陽イオン交換カラムクロマ
トグラフィーを組み合わせてなる精製方法が好適なもの
として使用されるが、本発明者らが検討したところによ
れば、いくつかの予備実験から、具体的には、例えば、
以下のものが高度精製蛋白質を得るための精製方法とし
て基本的に有効であることが分かった。 (1)WGA(コムギ胚芽レクチン)カラム (2)陰イオン交換FPLC用カラムDEAE−5PW
(Toso社製) (3)CG50陽イオン交換カラム
【0016】従って、本発明においては、出発材料とし
て上記の如く調製される好中球ミクロソーム画分を使用
し、基本的には、これらのカラムクロマトグラフィーを
用いて精製処理を行った後、SDS−ポリアクリルアミ
ド電気泳動(PAGE)で展開し、ウエスタンブロッテ
ィングを行うことにより高度精製蛋白質を得る方法が代
表的なものとして例示される。また、これらのカラムに
よる精製段階では、ウエスタンブロッティングの結果、
糖蛋白質であるTM316対応抗原は広くスメア状に広
がっており、くっきりとしたバンドを形成しないことが
あることから、更に、二次元電気泳動により二次元に展
開する方法を使用することにより高レベルの精製を行う
ことができる。
【0017】本発明の精製蛋白質は、前記の如く、ヘパ
リン採血した全血中のヒト顆粒球から分離した好中球ミ
クロソーム画分を出発材料として使用し、上記好中球の
遊走を阻害する機能を有するモノクローナル抗体を用い
たウエスタンブロッティングを指標として、上記各種の
カラムクロマトグラフィー、及び二次元電気泳動等の精
製手段を組み合わせた精製方法により高度に精製するこ
とができるが、かかる精製方法は、当該精製手段に限定
されるものではなく、それと同効のものであれば他の精
製手段を適宜組み合わせて使用することも可能であるこ
とは云うまでもない。
【0018】本発明においては、後述する実施例に具体
的に示されるように、上記精製方法に従って、好中球膜
蛋白質の分子量150KDa付近をSDS−PAGEに
て精製すると、分子量約150KDaの部分に一本のバ
ンドが認められ、これをフィルターに転写し、TM31
6抗体による免疫染色を行うと同部が染色され、本発明
の精製蛋白質標品の分子量は約150KDaであること
が確認された。また、同蛋白質をイモービリン(immobi
line)とSDS−PAGEを用いて二次元に展開したと
ころ、PI約4.0スポットのみが染色され、本発明の
蛋白質標品の等電点(isoelectric point) は約4.0で
あることが確認された。
【0019】本発明に係る好中球膜蛋白質の理化学的性
質を以下に示す。 (1)分子量:約150KDa(SDS−PAGE) (2)等電点:約4.0 (3)特性:好中球の遊走を強く抑制(inhibition)する
モノクローナル抗体(TM316抗体)に対する特異的
反応性を有する。
【0020】本発明者らが検討したところによれば、前
記の如く、本発明に係るTM316対応抗原の好中球膜
蛋白質は、ヒト顆粒球ミクロソーム画分に存在する分子
量約150KDa、等電点約4.0の蛋白質であること
が分かった(図1)。このように、TM316対応抗原
分子はきわだって酸性の蛋白質であり、遊走に関与する
ヒト顆粒球膜蛋白質等として既に報告されているCD1
1b、CD18、LFA−1、C3bi、pl50/9
5等(J. Clin. Invests. 72, 171, 1983 、 Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 80, 5699, 1983、The Journal of B
iological chemistry Vol. 263, No.25, 12403-12411,
1988、及び J. Exp. Med. Vol. 158, 1785-1803, 1983
)のいずれのものとも等電点等の理化学的性質が異な
るものであり、従って、同対応抗原の好中球膜蛋白質
は、これまで知られているものとはその性質を異にする
新規の蛋白質であると考えられる。
【0021】また、TM316対応抗原は、図2に示す
ように、WGAカラムに吸着し、NAG(N−アセチル
グルコサミン)で溶出された。従って、同対応抗原は、
NAG含有糖鎖を持つ糖蛋白質であると考えられる。ま
た、図1Bのウエスタンブロッティングにみられるよう
に、同対応抗原は、分子量150KDa付近に広い分子
量にわたって認められるが、この知見も同蛋白質が多様
な糖鎖を結合していることで説明できる可能性が高い。
このウエスタンブロッティング陽性画分を更に陰イオン
交換カラムDEAE−5PW(Toso社製)を用いて
精製したところ(図3)、後述する実施例に具体的に記
載したように、同対応抗原は、カラムに吸着し、約0.
2MのNaClで溶出された。
【0022】これらの精製段階での各フラクションの銀
染色、及び対応するフラクションのウエスタンブロッテ
ィング(図4)に示されるように、フラクション8、9
にほぼ均一に精製された分子量150KDaの蛋白質
(図4A;銀染色)、及び同じ分子量のTM316抗体
による染色像(図4B;ウエスタンブロッティング)が
認められた。この精製段階でTM316対応抗原はほぼ
均一に精製されたと考えられる。更に、例えば、精製画
分をTCA沈澱にて濃縮後、Urea,2−ME(meca
ptoethanol)にて同対応抗原の二次構造を破壊し、陽イ
オン交換樹脂CG50を用いて最終段階の精製を行うこ
とにより、高度精製蛋白質標品を得ることができる。当
該サンプルは同対応抗原の高度精製蛋白質であり、その
N−末端、内部アミノ酸配列の構造レベルの解析をする
標品として好適なものである。
【0023】
【実施例】以下、実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるも
のではない。 参考例 TM316抗体産生ハイブリドーマの樹立とTM316
抗体の取得 ヒト好中球表面上の抗原蛋白質を認識するTM316抗
体は下記のようにして得た。ヒト単核球系白血病細胞T
HP−1(Tsuchiya S. et al., Int. J. Cancer 26, 17
1, 1980)をBALB/Cマウスの腹腔内へ免疫し、4日
後にマウスを屠殺して脾細胞を得た。得られた脾細胞と
マウスミエローマ細胞株X63Ag8.653をポリエ
チレングリコールを用いた常法により融合させた。融合
させて得られたハイブリドーマの培養上清を、多核白血
球を固定した96ウェルタイタープレート(テルモ社
製)に加え室温にて30分間反応させ、三回洗浄後、ウ
サギ抗マウスIgMIgG型抗体をコートしたヒツジ赤
血球懸濁液を添加した。赤血球懸濁液の沈降のパターン
により多核白血球を認識するハイブリドーマクローンを
選択し、更に好中球の遊走阻害能を指標にしてハイブリ
ドーマTM316を樹立した。
【0024】ハイブリドーマTM316をBALB/C
マウスの腹腔内へ移植し、得られた腹水から精製マウス
モノクローナル抗体TM316を得た(Shimizu A. et
al.,Scand. J. Immunol. 28, 675, 1988)。マウスモノ
クローナル抗体TM316はIgM、κ型であり、ヒト
好中球とは反応するが、リンパ球及び単球とは反応しな
い。本発明者らが、既に報告したように、TM316抗
体はC5a、FMLP、LDCF(リンパ球培養上清)
などの各種好中球遊走因子による好中球遊走を濃度依存
的に強く阻害するが、FMLP、コンカナバリンA、ホ
ルボールエステル、カルシウムイムノフォア等の種々の
刺激による好中球の活性酸素産生、化学発光あるいはリ
ソゾーム顆粒放出を抑制しない。
【0025】実施例1 好中球からのTM316抗体対応抗原の精製 (1)好中球ミクロソーム画分の調製 健常人より血液を採取し、ただちにヘパリン処理後、全
血中の赤血球をデキストラン/フィコール法(Shimizu
A. et al., Scand. J. Immunol. 28, 675, 1988)によっ
て凝集させ、除去した。その上清を遠心分離し、ヒト好
中球分画ペレットを得た。分離した好中球を0.15M
NaClを含む20mM Tris−HClバッファ
ー(pH7.2)(以下、バッファーAという)に懸濁
し、超音波破砕機(トミイセイコウ社製)を用いて超音
波破砕した。これを800xgにて10分間遠心分離
し、核酸成分を含む沈降画分を取り除いて上清を得た。
次いで、この上清を105 xgにて30分間遠心分離
し、沈澱(ミクロソーム画分)を得た。
【0026】この好中球ミクロソーム画分を、二次元電
気泳動に付した。すなわち、イモービリン(Immob
iline,pH4−7)(ファルマシア社製)を担体
とする等電点電気泳動で一次元目の展開を行った後、
7.5%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SD
S−PAGE)で二次元目の展開をした。これを銀染色
法により常法に従って染色した。この結果を図1Aに示
す。
【0027】更に、好中球ミクロソーム画分を泳動試料
として、前記の参考例に記載したTM316抗体を用い
たウエスタンブロット法(Shimizu A. et al., Scand.
J. Immunol. 28, 675, 1988)を行った。常法により、好
中球ミクロソーム画分を7.5%SDSポリアクリルア
ミドゲル電気泳動で展開して、ニトロセルロース膜(S
chleicher & Schuell社製)に転写
し、これをTM316抗体産生ハイブリドーマの培養上
清を用いて、室温にて1時間インキュベートした後、
0.15M NaCl及び0.05%Tween−20
を含む50mMTris−HClバッファー(pH7.
4)にて二回洗浄した。市販のペルオキシダーゼ標識ウ
サギ抗マウスIgMIgG型抗体(カッペル社製)を1
000倍希釈し二次抗体として用い、室温にて1時間反
応させ、上記バッファーにて洗浄後、ヂアミノベンチジ
ン(同仁社製)を基質として発色させた。この結果を図
1Bに示す。
【0028】図1A及び図1Bから、二次元電気泳動で
得られる多くのスポットのうち分子量150KDa、等
電点4.0付近に出現する幅広い酸性蛋白質がTM31
6抗体により認識されることが明らかとなった。以上の
結果から、TM316抗体に認識される対応抗原の蛋白
質は、CD11bあるいはCD11cといった既知の分
子と異なった分子であることが確認された。
【0029】(2)小麦胚芽レクチンカラムによるクロ
マトグラフィー 上記(1)にて調製した好中球ミクロソーム画分を5m
g/mlの濃度になるよう上記バッファーAに懸濁し
た。これに、最終濃度が0.5%の界面活性剤Noni
dent P−40(NP−40)(シグマ社製)を加
えて可溶化した。可溶化した好中球ミクロソーム画分を
105 xgにて、30分間遠心分離し、上清を得た。小
麦胚芽レクチン(wheat germ lecti
n:WGA)カラム(ホウネン株式会社製)を上記バッ
ファーAで平衡化し、可溶化好中球ミクロソーム画分試
料をWGAカラムにかけた。吸着した蛋白質の溶出は、
0.3M N−アセチルグルコサミン(NAG)(シグ
マ社製)を含むバッファーAで行った。溶出曲線を図2
Aに示す。溶出された画分をTM316抗体を用いる上
記ウエスタンブロット法で染色した(図2B)。その結
果、TM316抗体が認識する蛋白質は0.3M NA
Gを含むバッファーAで溶出されたことが確認され、T
M316抗体が認識する蛋白質は、NAG含有糖鎖を有
することが明らかとなった。また、図2Bに示されるよ
うに、同蛋白質は分子量150KDa付近に広く認めら
れることからも、同蛋白質が糖鎖構造を持つことが確認
された。
【0030】(3)陰イオン交換樹脂カラムによるクロ
マトグラフィー 上記(2)で得られたTM316抗体が認識する画分を
0.5% NP−40を含む20mM Tris−HC
lバッファー(pH7.2)により4倍に希釈し、陰イ
オン交換カラムDEAE−5PW(Toso社製)にか
けた。カラムに吸着した蛋白質は、NaClの直線的濃
度勾配で溶出させた。この結果を図3に示す。図3から
明らかなように、TM316抗体が認識する蛋白質は
0.2MNaCl付近に溶出された。0.2M NaC
lで溶出された画分を、更に、上記銀染色法及びTM3
16抗体を用いる上記ウエスタンブロット法により分析
した。この結果を図4に示す。図4A(銀染色)では、
フラクション8、9に均一なバンドとして観察される分
子量約150KDaの蛋白質が、また、図4B(ウエス
タンブロット法)では、同じ分子量にTM316抗体の
染色像が認められた。従って、この段階でTM316抗
体に認識される蛋白質は均一なまでに精製されたと云え
る。
【0031】(4)陽イオン交換樹脂カラムによるバッ
チ処理 上記(3)で得られたTM316抗体が認識する蛋白質
を6% テトラクロロ酢酸(TCA)で沈澱させ、エー
テルで洗浄した後、8M尿素、5%Triton X−
100(和光純薬社製)及び0.5%2−メルカプトエ
タノールを含む250mM ピリジンアセテート(pH
5.0)(シグマ社製)に溶解した。その後、同液で平
衡化した陽イオン交換レジン樹脂CG−50アンバーラ
イト(オルガノ社製)を用いてバッチ処理した。本条件
下において、TM316抗体が認識する蛋白質は、非吸
着画分である上清に存在した。なお、本実施例における
TM316抗体の対応抗原分子の精製工程を図5に示
す。以上の結果、本対応抗原の蛋白質は、分子量がSD
S−PAGEで約150KDa、等電点が約4.0であ
り、クロマトグラフィー上での挙動を含めて既知の分子
とは異なった生化学的、理化学的性質を有している従来
知られていない新しい分子であることが確認された。
【0032】
【発明の効果】前記の如く、ヒト顆粒球の一種の好中球
は種々の炎症性疾患において病変局所から放出される可
溶性遊走因子に反応して活性化し、炎症部位へ遊走し
て、組織破壊をもたらす。従って、当該好中球遊走の分
子機構を解明することは、好中球が関与する炎症性疾患
に対する特異的な抗炎症剤を理論的に設計する上できわ
めて有用なものである。ヒト好中球の遊走を阻害する機
能を有するモノクローナル抗体(TM316抗体)は、
対応抗原の遊走活性に必須な機能ドメインに結合しその
機能を抑制することによって種々の遊走因子による好中
球遊走反応を抑制すると考えられる。従って、本発明の
好中球細胞膜の高度精製蛋白質は、同対応抗原分子の構
造を解明し、抗体の認識部位を同定することを可能にす
るものであり、それによって、新たな抗炎症剤の標的と
なるペプチドのシークエンスを明らかにすることを可能
にするものである。
【0033】更に、上述したように、同対応抗原分子
は、好中球の関与する病態(自己免疫疾患、腎炎、心筋
梗塞、ARDS等)を治療する薬物の分子標的となり得
るものであり、また、好中球の遊走を阻止する抗体をヒ
ト型に変換し、治療薬として用いることを可能とするも
のである。また、この対応抗原の分子レベルの解析を通
してリガンド依存性の好中球遊走というダイナミックな
現象に深い洞察を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】好中球ミクロソーム画分の二次元電気泳動の銀
染色(A)及びウエスタンブロッティング(B)を示
す。
【図2】TM316対応抗原の蛋白質のWGAカラムク
ロマトグラフィーによる溶出(A)及びウエスタンブロ
ッティング(B)を示す。
【図3】DEAE−5PWカラムクロマトグラフィーに
よる溶出を示す。
【図4】精製TM316対応抗原の銀染色(A)及びウ
エスタンブロッティング(B)を示す。
【図5】本実施例におけるTM316対応抗原の精製工
程を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // A61K 39/395 ADS N

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト好中球の遊走を阻害する機能を有す
    るモノクローナル抗体の対応抗原であってSDS−ポリ
    アクリルアミド電気泳動で分子量約150KDa、等電
    点約4.0の理化学的性質を有する好中球膜蛋白質。
  2. 【請求項2】 ヒト好中球の遊走を阻害する機能を有す
    るTM316抗体が特異的に反応する抗原である請求項
    1記載の好中球膜蛋白質。
  3. 【請求項3】 好中球ミクロソーム画分をレクチンカラ
    ムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグ
    ラフィー、陽イオン交換カラムクロマトグラフィーにて
    精製処理することによって製造される請求項1又は請求
    項2記載の好中球膜蛋白質。
JP5666294A 1994-03-02 1994-03-02 好中球遊走に必須な細胞膜抗原蛋白質 Pending JPH07242698A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10697982B2 (en) 2015-09-08 2020-06-30 Merck Patent Gmbh Methods of evaluating quality of a chromatography media which binds anti-A or anti-B antibodies
US10697983B2 (en) 2015-09-08 2020-06-30 Merck Patent Gmbh Methods of evaluating quality of media suitable for removing anti-A or anti-B antibodies

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