JPH07127378A - 泥水式シールド掘進機及びその前面の礫障害物除去方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 掘進の過程で泥水式シールド掘進機１０が遭
遇する礫障害物Ｒを、短期間で容易に掘進前面から排除
し、掘進工程に大幅な遅延を生じることのないようにす
る。 【構成】 掘進の過程で泥水式シールド掘進機１０が礫
障害物Ｒに遭遇した場合に、カッタフェイス１２に取り
付けられたウォータジェットノズル２０から、礫障害物
Ｒの周囲の地盤中に高圧水を噴射してこの地盤を侵食
し、侵食に伴い礫障害物Ｒをカッタフェイス１２の前面
位置より外周側へ移動させて、掘進を再開する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、泥水式シールド工法に
よりシールドトンネルを施工するシールド掘進機に関
し、また、掘進機の前面の地盤中に存在する取り込み不
可能な大きさの礫等を掘進経路から除去する方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】泥水式シールド工法によるシールドトン
ネルの施工は、典型的には図４に示すような泥水式シー
ルド掘進機によって行われている。すなわちこのシール
ド掘進機は、略円筒形のシールドフレーム１の掘進方向
前端で、カッタビット２ａが設けられたカッタフェイス
２をシールドフレーム１の軸心部を中心にして回転させ
ることによって掘削された掘削土（以下、ズリという）
を、カッタフェイス２に形成されたスリット２ｂから、
その背面に形成された圧力チャンバ３内に取り込むと共
に、この圧力チャンバ３には送泥管４を介して泥水を加
圧的かつ連続的に供給しており、これによってカッタフ
ェイス２の背圧を保持して前面の土砂の噴発を防止しな
がら、取り込んだズリをカッタフェイス２の回転に伴っ
て圧力チャンバ３内で前記泥水と撹拌混合し、排泥管５
を介して泥水と共に連続的に排出するようになってい
る。また、シールドフレーム１の掘進方向後端では、掘
削された坑内壁に、図示しないエレクタによって複数の
セグメントＳを環状に組み立てて、土圧に耐えるための
一次覆工を施すと共に、既設されたセグメントＳの前端
に推進用油圧ジャッキ６を当てて押圧することによっ
て、その反力でシールド掘進機を推進させる。

【０００３】この種の泥水式シールド掘進機は、大きな
礫が存在しない比較的軟弱な地盤を掘進することを前提
として設計されており、すなわち、掘進経路となる地盤
を予めボーリングすることによって、その土層中に存在
する礫径を推定して掘進機の設計が行われ、一般に、ス
リット２ｂは、その開口面積がカッタ面積の10％程度と
なるように形成されている。このため、実際の掘進の過
程において、カッタビット２ａでは破砕できずかつカッ
タフェイス２のスリット２ｂから圧力チャンバ３内へ取
り込むことができないような、大きく硬い礫又は玉石Ｒ
（以下、礫障害物という）との遭遇がしばしば発生す
る。そしてこのような礫障害物Ｒがカッタビット２ａ間
やスリット２ｂの前面部に抱え込まれて滞留すると、カ
ッタフェイス２のトルクが増大し、ズリの取り込みも円
滑に行われなくなるので、掘進速度が大幅に低下してし
まう問題がある。

【０００４】従来、このような場合にはシールド掘進機
をいったん停止し、その周囲の地盤に薬液を注入するこ
とによって、カッタフェイス２に接する前面の地盤の安
定及び止水を図ったうえで、例えば図５に示すように、
カッタフェイス２の前面に縦穴Ｈを掘削し、そこに作業
員が入って人力で礫障害物Ｒを除去するか、掘進機前面
に礫破砕装置を取り付けて礫障害物Ｒを破砕している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このような除
去方法では、薬液注入作業及び縦穴Ｈの掘削作業を経て
礫障害物Ｒを除去もしくは破砕するまでの期間中は、掘
進を行うことができないため、工期に大幅な遅延を生じ
てしまうことが避けられない。しかも、掘削した縦穴Ｈ
に作業員が入って人力での作業を行わなければならない
ので、労力が大きく、かつ危険であった。

【０００６】したがって本発明の主な目的は、掘進の過
程で泥水式シールド掘進機が遭遇する礫障害物を、短期
間で容易に掘進前面から排除し、掘進工程に大幅な遅延
を生じることのないようにすることにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述の目的は、本発明に
よって有効に達成することができる。すなわち本発明に
係る泥水式シールド掘進機は、カッタフェイスに、その
前面外周部に臨んで開口されたウォータジェットノズル
が取り付けられたものであり、好ましくはこのウォータ
ジェットノズルは、前記カッタフェイス内に取り付けら
れると共にカッタフェイスの中心軸に開設された送水孔
を介して高圧水ポンプに接続される。また、本発明に係
る泥水式シールド掘進機の前面の礫障害物除去方法は、
掘進の過程で泥水式シールド掘進機が礫障害物に遭遇し
た場合に、カッタフェイスに取り付けられたウォータジ
ェットノズルから、前記礫障害物の周囲の地盤中に高圧
水を噴射してこの地盤を侵食し、侵食に伴い前記礫障害
物を前記カッタフェイスの前面位置より外周側へ移動さ
せるものである。

【０００８】

【作用】泥水式シールド掘進機が礫障害物に遭遇した場
合は、カッタフェイスの回転による掘進をいったん停止
させ、このカッタフェイスに取り付けられたウォータジ
ェットノズルから高圧水を噴射することによって、カッ
タフェイス前面に存在する礫障害物の周囲の地盤を侵食
させ、この侵食によって生じた土砂を噴射された水と共
にカッタフェイスのスリットから圧力チャンバ内を経由
して排泥する。礫障害物は、その周囲の地盤が除去され
るのに伴ってカッタフェイスの下方又は外周側へ沈下又
は移動して掘進経路から排除されるので、泥水式シール
ド掘進機による掘進が可能となる。

【０００９】

【実施例】図１は、本発明に係る泥水式シールド掘進機
１０の好適な一実施例を概略的に示すもので、参照符号
１１はシールドフレーム、１２はシールドフレーム１１
の掘進方向前端に配置されその軸心を中心に回転される
円盤状のカッタフェイス、１３はシールドフレーム１１
の前端部内周であってカッタフェイス１２とその背面側
の隔壁１４との間に画成された圧力チャンバ、１５は隔
壁１４に液密的かつ回転自在に挿通され先端部１５ａが
カッタフェイス１２の中央部に連結された中心軸、１６
は圧力チャンバ１３内に泥水を加圧的に供給する送泥
管、１７は圧力チャンバ１３内のズリを泥水と共に排出
する排泥管、１８はシールドフレーム１１のテール部と
その内周で組み立てられる一次覆工用のセグメントＳの
外周面との間からの土砂及び地下水の流入を防止するリ
ップ状のテールシール、１９は既設セグメントＳの前端
を後方へ押圧することによって当該泥水式シールド掘進
機１０の推進力を得る油圧ジャッキである。

【００１０】カッタフェイス１２には、その前面のカッ
タビット１２ａの間に位置して半径方向に延びるズリ取
り込み用スリット１２ｂが円周方向所定間隔で形成され
ている。カッタフェイス１２を回転させる中心軸１５の
内部には、その後端部１５ａからカッタフェイス１２と
の連結部にかけて軸方向に延びる送水孔２１が形成され
ており、その先端２１ａがカッタフェイス１２の内径端
部に開口して、ウォータジェットノズル２０の基端部と
接続されている。このウォータジェットノズル２０は、
スリット１２ｂ間に設けられた支持体１２ｃに支持され
ており、噴射口２０ａを有する先端が、この支持体１２
ｃの外径側の端部からカッタフェイス１２の前面外周部
へ向けて開口している。また、中心軸１５の後端部１５
ａにおける送水孔２１の後部開口２１ｂには、高圧ホー
ス２２を介して送水ポンプ２３が接続可能となってい
る。

【００１１】排泥管１７の開口部１７ａ近傍には、圧力
チャンバ１３側へ向けて延びる閉塞解除ノズル２４が接
続されている。また、カッタフェイス１２の中心軸１５
の外周面には圧力チャンバ１３内へ向けて突出したチャ
ンバ内ノズル２５が設けられ、ウォータジェットノズル
２０への送水孔２１とは別の第二の送水孔２６に接続さ
れている。

【００１２】この実施例による泥水式シールド掘進機１
０は、通常は、先に説明した従来例と同様、油圧ジャッ
キ１９による推進力を与えると共に、送泥管１６からの
泥水の加圧供給によって圧力チャンバ１３内の泥水圧力
を所要の圧力に保持しながら、中心軸１５を介してカッ
タフェイス２を回転させることによって掘進前方の地盤
を掘削し、これによって生じたズリを、スリット１２ｂ
を通じて圧力チャンバ１３内に取り込み、泥水と撹拌混
合して排泥管１７から排出するといった工程で掘進を行
い、その後方で順次セグメントＳを組み立ててトンネル
内面の一次覆工を施して行く。

【００１３】図２は、このような掘進の過程において、
圧力チャンバ１３内へ取り込むことができないような大
きさの礫障害物Ｒに遭遇した場合にこの礫障害物Ｒを掘
進前面位置から除去する工程を示すものである。まず、
地盤中の礫障害物Ｒがスリット１２ｂに抱え込まれるよ
うにしてカッタフェイス１２に干渉すると、このカッタ
フェイス１２を駆動させるためのトルクが上昇し、かつ
掘進速度が低下することから、これらの計測データによ
って、礫障害物Ｒとの遭遇を判定し、カッタフェイス１
２をいったん停止させる。この場合、抱え込まれた礫障
害物Ｒが、図２（Ａ）に示すように、カッタフェイス１
２の下半位置に来るようにカッタフェイス１２を停止さ
せる。

【００１４】カッタフェイス１２の回転を停止させた
ら、その中心軸１５の送水孔２１の後部開口２１ｂに高
圧ホース２２を介して送水ポンプ２３を接続し、この送
水ポンプ２３の駆動によって、図２（Ｂ）に示すよう
に、カッタフェイス１２の前面の外周下部を向いた状態
にあるウォータジェットノズル２０から高圧水を礫障害
物Ｒの下側の地盤中へ噴射する。この場合、送水ポンプ
２３としては、シールドフレーム１１における後方台車
スペースにセット可能な大きさであるか、あるいはセグ
メント台車に搭載してトンネル内に搬入して使用する場
合は既設セグメントＳの有効径範囲に納まる大きさであ
ることが必要であり、また、シールド掘進機１０の電源
容量以内の電力で使用できることが必要であり、これら
の条件から、例えば駆動馬力が３７〜７５ｋＷ、吐出圧
力が６５〜４９０ｋｇ／ｃｍ² 、吐出量が２２〜３５０
リットル／ｍｉｎのものが好適である。

【００１５】ウォータジェットノズル２０から噴射され
た高圧水は、礫障害物Ｒの下側地盤を緩めて侵食させ、
この侵食によって生じた土砂は、噴射された高圧水と共
にカッタフェイス１２のスリット１２ｂを通じて圧力チ
ャンバ１３内に取り込まれるので、図２（Ｃ）に示すよ
うに、礫障害物Ｒはその下側地盤の侵食の進行に伴って
移動（沈下）して行く。また、ウォータジェットノズル
２０からの高圧水は、礫障害物Ｒの周囲を回り込むよう
な噴流となって地盤を侵食すると共に、水圧によって礫
障害物Ｒに移動力を与える。そして、図２（Ｄ）に示す
ように、礫障害物Ｒがカッタフェイス１２の前面より下
方位置まで移動されたら、送水ポンプ２３によるウォー
タジェットノズル２０からの高圧水の噴射を停止し、泥
水式シールド掘進機１０の掘進を再開する。

【００１６】上記礫障害物Ｒの除去工程において、地盤
の侵食深さはウォータジェットノズル２０からの高圧水
の圧力によって、また侵食面積は前記高圧水の流量によ
って決定される。実際に、空中噴射によって、噴射圧力
２５０ｋｇ／ｃｍ² 、推定噴射流量１６０リットル／ｍ
ｉｎで地山の侵食試験を行ったところ、２〜３分間の噴
射によって地山の切り込み深さ４０〜６０ｃｍの侵食部
が形成され、また小砂利質の土層においては切り込み深
さ１００ｃｍ程度の侵食部が形成されることが判明し
た。したがって、本方法によれば、礫障害物Ｒを短時間
（３分程度）で掘進経路の外へ移動させ、通常速度での
掘進工程を早期に再開することができるものである。

【００１７】排泥管１７の開口部１７ａに、ズリに含ま
れる礫が滞留することにより多量に集積されて閉塞状態
になったような場合は、送水ポンプ２３から延びる高圧
ホース２２を閉塞解除ノズル２４に繋ぎ換え、詰まった
礫を高圧水の噴射で開口部１７ａから圧力チャンバ１３
内へ押し出すことによって、閉塞による排泥不良を容易
に解消することができる。また、前記高圧ホース２２を
第二の送水孔２６に繋ぎ換えることによって、圧力チャ
ンバ１３の外周壁面に粘性土が付着した場合の洗浄等を
容易に行うことができる。

【００１８】また、上記実施例においては、ウォータジ
ェットノズル２０の先端部を、例えば油圧機構によって
支持体１２ｃと共にカッタフェイス１２の半径方向に移
動可能とすることも好適である。この場合は、高圧水の
噴射時に、図３に示すように、ウォータジェットノズル
２０の噴射口２０ａがカッタフェイス１２の外周から突
出するように支持体１２ｃを外径方向へ変位させ、その
前面の地盤中に高圧水を噴射することによって、礫障害
物Ｒを速やかに除去することができる。

【００１９】

【発明の効果】本発明によると、次のような効果が実現
される。 (1) 予測しない取り込み不可能な礫障害物の存在する礫
層においても、泥水式シールド工法による掘進の困難性
が解消される。 (2) 掘進前面の礫障害物をウォータジェットによって短
時間で除去するので、薬液注入によってカッタフェイス
前面の地盤を安定化させてから、この地盤に縦穴を掘削
して礫障害物を搬出するといった作業が不要であり、掘
進工程の遅れを殆ど生じさせない。 (3) 従来の泥水式シールド掘進機にも容易に適用するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る泥水式シールド掘進機の好適な一
実施例を示すもので、（Ａ）はカッタフェイスの前面側
から見た図、（Ｂ）は軸心を通る平面で切断した概略的
な断面図である。

【図２】上記泥水式シールド掘進機による掘進の過程で
遭遇した礫障害物を掘進前面位置から除去する工程を示
し、（Ａ）は礫障害物との遭遇状態、（Ｂ）は高圧水噴
射開始状態、（Ｃ）は高圧水噴射による礫障害物の移動
過程の状態、（Ｄ）は礫障害物の除去終了状態を示す説
明図である。

【図３】上記礫障害物除去工程において、高圧水噴射時
にウォータジェットノズルを噴射口がカッタフェイスの
外周から突出した位置となるように変位させた状態を示
す説明図である。

【図４】従来の泥水式シールド掘進機の一例を示す概略
構成説明図である。

【図５】従来の礫障害物除去方法を示す説明図である。

【符号の説明】

１０ 泥水式シールド掘進機 １１ シールドフレーム １２ カッタフェイス １２ｂ スリット １３ 圧力チャンバ １６ 送泥管（送泥手段） １７ 排泥管（排泥手段） ２０ ウォータジェットノズル

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールドフレームの前端に回転自在に設
   けられると共にズリ取り込み用の所要数のスリットが形
   成されたカッタフェイスと、 このカッタフェイスの背面側に画成された圧力チャンバ
   への送泥手段及びこの圧力チャンバからの排泥手段と、
   を備える泥水式シールド掘進機において、 前記カッタフェイスに、その前面外周部に臨んで開口さ
   れたウォータジェットノズルが取り付けられたことを特
   徴とする泥水式シールド掘進機。
2. 【請求項２】 請求項１の記載において、 ウォータジェットノズルがカッタフェイス内に取り付け
   られると共にカッタフェイスの中心軸に開設された送水
   孔を介して高圧水ポンプに接続されたことを特徴とする
   泥水式シールド掘進機。
3. 【請求項３】 カッタフェイスに取り付けられたウォー
   タジェットノズルから、このカッタフェイスの前面に存
   在する礫障害物の周囲の地盤中に高圧水を噴射してこの
   地盤を侵食し、この侵食と共に前記礫障害物を前記カッ
   タフェイスの前面位置より外周側へ移動させることを特
   徴とする泥水式シールド掘進機の前面の礫障害物除去方
   法。