JPH0647085B2 - スクリュー型遠心分離機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、スクリュー型遠心分離
機に関する。

【０００２】

【従来の技術】スクリュー型遠心分離機としては掻揚部
が截頭円錐形であるデカンター型遠心分離機が広く使用
されている。デカンター型遠心分離機では、比重差に基
づいて回転胴内で、内層部に移動分離した軽液成分は回
転胴の大径端から外部に取出され、また外層部に移動分
離した重液成分は回転胴の截頭円錐部の小径端から外部
に取出される。しかしながら、この種の分離機をバイオ
リアクターからの反応液の固液分離、下水汚泥の濃縮、
果実ジュースの懸濁物の分離、ファインケミカル分野の
コロイド状微粒子の分離等ペースト質の柔軟な固形物処
理に使用する場合には、下記のような問題がある。

【０００３】すなわち、デカンダー型遠心分離機の円錐
部のビーチゾーンでは、重液成分は遠心力ベクトルのビ
ーチ部の傾斜面に沿う成分すなわち滑落力ベクトルに抗
して小径端方向に移動するので、回転胴を短縮化するた
めに傾斜部の勾配を大きくすると、それに比例して滑落
力も大きくなってしまう。滑落力を小さくするために傾
斜部の勾配を小さくすると、回転胴の胴長は長くなり高
速回転が困難になるとともに、コストアップを招くこと
になる。また、重液成分中の固形分がせん断変形しにく
い性状のものであれば、スクリューコンベアーの掻揚力
は有効に作用し円錐部のビーチゾーンで効率よく固形分
の掻揚げができるが、固形物が前記のようにバイオケミ
カルの生成物などのように、ペースト質の柔軟なもので
は、回転胴とスクリューコンベアーとの間のすきまから
漏洩したり、らせんブレードに沿って滑落し、掻揚力が
効果的に作用せず、効率よく掻揚げができない。

【０００４】そこで、本出願人は、さきに、特願平２−
１６３６４９号として、回転胴の傾斜部をなくして、回
転胴全体を円筒状とするとともに、スクリューコンベア
ーも円錐らせんブレード部をなくして全体を円筒状らせ
んブレード部とし、回転胴の重液排出側の部分を掻揚部
として、ここにスクリューコンベアーの軸端部に放射状
に突設されたスクレーパーで回転胴内周面を円周方向に
掻揚げるようにしたスクリュー型遠心分離機を提案し
た。

【０００５】すなわち図３において、１は水平円筒状の
回転胴で、その前後端はそれぞれ中心に中空ジャーナル
が突出する前部端板２、後部端板３で閉塞され、回転胴
１はその前部端板２から後部端板３の近くまで延びる分
離部１ａと、残りの部分である若干大径の掻揚部１ｂと
よりなる。掻揚部１ｂを形成する部分の回転胴の内面に
は央部がくびれたいわゆるまゆ型断面のガイド面４を形
成するガイド部材５が嵌着され、そのくびれ部には回転
胴を貫通する直径方向の濃縮液排出孔６が貫設されてい
る。７はスクリューコンベアー軸で、その前後端ジャー
ナル及び前部端板２、後部端板３の軸受を介して回転胴
１に同軸的に軸支され、その分離部１ａにわたる中空軸
部８の外周にはらせんブレード９が巻回的に突設され、
その先端縁は分離部１ａの回転胴内面に対し小さいすき
まをもって対向し、その掻揚部１ｂにわたる部分には外
向半径方向に摺動自在にピストンロッドに支持された１
対の長方形スクレーパー１０がほぼ直径方向に対称的に
配設され、その外端縁がガイド部材５のまゆ型ガイド面
４に摺接するようになっている。

【０００６】１２はスクリューコンベアー軸７に分離部
１ａと掻揚部１ｂとの境界位置で固定され外周が狭いす
きまを存して回転胴内面に対向する円環板状仕切板、１
５は回転胴１を包囲するケーシング、１６は回転胴１の
前部端板２、後部端板３の中空ジャーナルをそれぞれケ
ーシング１５の前後端に軸支する前後１対の主軸受、１
７はスクリューコンベアー軸７の中空軸部８に内挿され
た原液供給管、１８，１９はそれぞれケーシング１５の
前端、後端に下方へ突設された分離液排出口、濃縮液排
出口、２０，２１はそれぞれモータ，減速機である。

【０００７】このような構造において、原液供給管１７
を経て回転胴１に供給された原液は、まず分離部１ａに
おいて、公知の要領で遠心分離され、軽比重成分Ｌは分
離液として分離液排出口１８から排出される。軽液成分
の分離に伴い濃縮された重比重成分Ｈはスクリューコン
ベアー軸７のらせんブレード９により掻揚部１ｂに向か
って徐々に移動しながら濃縮され、仕切板１２と回転胴
１とのすきまから掻揚部１ｂに入り、ここで濃縮液中の
固形分はまゆ型ガイド面４に沿って摺接するスクレーパ
ー１０によりビーチゾーンＺを越えて掻揚げられ濃縮液
排出孔６を経てケーシングの濃縮液排出口１９から排出
される。

【０００８】このような構造によれば、固形物の性状が
ペースト質の柔軟性のものであっても、濃縮液を安定し
て排出できるのであるが、その後の検討により、前記ピ
ストンロッド構造のアームに支持されるスクレーパーで
は、アームスクレーパーが半径方向に円滑に往復動しな
いことが判明した。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情に鑑みて提案されたもので、回転胴を短くしてより高
速回転を可能にして高い遠心力で固形物を分離できると
ともに、ペースト質の柔軟な固形物成分でも効率よく排
出する高性能かつ機械的強度も優れているスクリュー型
遠心分離機を提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】そのために本発明は、
（イ）円筒の一端から他端近くにわたる比較的長い分離
部と、残部の比較的短い掻揚部よりなり両端がそれぞれ
中心孔を有する端板にて閉塞され中心軸線の周りに回転
する回転胴と、（ロ）同回転胴を同軸的に貫通し上記分
離部にわたる部分の中空軸部の外周にらせん状に巻着さ
れ外端縁が若干のすきまを存して上記回転胴の内面に対
向するらせんブレードを有し若干の差速をもって回転す
るスクリューコンベアー軸と、（ハ）央部がそれぞれ上
記スクリューコンベアー軸の上記掻揚部に軸直角平面上
で対称的に枢着された短い平行リンクと、同平行リンク
の同一側の両端をそれぞれ連結し先端に上記回転胴のガ
イド面に摺接するスクレーパー片を有する長い平行リン
クとよりなるリンク型スクレーパーとを具え、（ニ）上
記スクリューコンベアー軸の中空軸部を経て原液を上記
回転胴の分離部に供給し、上記分離部の一端側の端板を
横切って軽液を取出すとともに、上記掻揚部から遠心力
で外向半径方向に付勢される上記リンク型スクレーパー
で重液をその排出孔を経て取出すようにしたことを特徴
とする。

【００１１】

【作用】このような構成によれば、軽液は高速回転する
回転胴で遠心力の作用によりデカンター型遠心分離機と
同一要領で分離され、重液は軽液の分離に伴い濃縮され
るとともにスクリューコンベアー軸により掻揚部に向か
って移動することにより、濃縮が進行しながら回転胴中
を分離部から掻揚部へ移動する。掻揚部では、回転胴に
対して相対的に比較的低速度で回転するスクリュコンベ
アー軸に付設されたスクレーバーが掻揚部のビーチーゾ
ーンを有する非同心円ガイド面を摺接することで、重液
特にその含有固形物はビーチを越えて掻揚げられ、掻揚
部の半径方向の排出孔を経て外部に排出される。ここ
で、スクレーパーは、構造簡単なリンク構造であり、強
固で長期的にわたって円滑な掻揚作業に耐えることがで
きる。分離部と掻揚部との境界に仕切板が設けられた場
合は、仕切板は濃縮物を優先的に掻揚部へ導入するとと
もに、スクレーパーと協働して濃縮物を効果的に掻揚げ
ることで、柔軟性固形物でも効率的に分離することがで
きる。

【００１２】

【実施例】本発明の一実施例を図面について説明する
と、図１はその縦断面図、図２は図１のＩＩ−ＩＩ矢視
断面図である。

【００１３】上図において、図３〜図４と同一の符号は
それぞれ同図と同一の部材を示し、以下主として掻揚部
について説明すると、３０ａはスクリューコンベアー軸
７の掻揚部に嵌着された菱形ボス、３０ｂ，３０ｂはそ
れぞれ前後１対よりなり、スクリューコンベアー軸７の
軸直角平面上で適宜間隔で互いに平行的に配設された２
組の短リングで、それぞれ央部でピン３０ｃを介して菱
形ボス３０ａの両端に枢支されている。３０ｄ，３０ｄ
はそれぞれ前後１対よりなり、短リンク３０ｂ，３０ｂ
と同一平面上で適宜間隔で互いに平行的に配設された２
組の長リンクで、それぞれ一端，他端寄りの位置で短リ
ンク３０ｂ，３０ｂの両端にピン３０ｅ，３０ｆを介し
て平行四辺形を形成するように、枢着されている。３０
ｇ，３０ｇはそれぞれ長リンク３０ｄ，３０ｄの先端に
付設された耐摩耗材よりなるスクレーパー片であり、こ
れらの部材が協働してリンク型スクレーパー３０を形成
する。

【００１４】このようなスクレーパー３０において、ス
クリューコンベアー軸の回転に伴う遠心力により、１対
の長リンク３０ｄ，３０ｄの先端は直径方向に伸びてそ
のスクレーパー片３０ｇ，３０ｇがまゆ型ガイド面に沿
って摺動する。従って、濃縮液中の固形物は、ビーチゾ
ーンＺを越えて掻揚げられ、濃縮液排出孔６を経て外部
へ排出される。固形物掻揚げの際、長リンク３０ｄは、
まゆ型ガイド面４に沿って、図２（Ａ）に示すように、
，…の順に移動し、ガイド面４に沿って適宜のす
くい角で移動するので、長リンクにかかる曲げモーメン
トを小さくして合理的に固形分を掻揚げることができ
る。

【００１５】また、分離部１ａにおいて、スクリューコ
ンベアー軸に本出願人の出願に係る特公昭６３−２２１
８号公報所載の縦通分離板を並設すると、分離部におけ
る軽液分と微粒子固形分の分離性能が高まり、掻揚部に
おいても、スクレーパーが微粒子をも効率よく排出でき
る構造であるため、遠心分離機全体の分離性能は格段と
向上する。本実施例においては、スクレーパーの枚数が
２枚，濃縮液排出口が２個の例であるが、本遠心分離機
の容量，固形分の濃度等に応じて、それぞれ好適の枚
数，個数の組み合わせが必要である。

【００１６】

【発明の効果】以上説明した構成と作用を有するスクリ
ュー型遠心分離機によれば、下記の効果が奏せられるの
で本発明は産業上極めて有益なものである。 （１）回転胴は傾斜部を有しない円筒胴となるので、そ
の全長を短縮化するとともに軽量で製作が容易となるこ
とで、コストが低減するとともに回転数を更に増加して
遠心効果を高めることができる。 （２）濃縮液の排出は連続的に安定化するので、かなり
の高濃度液でも処理できる。 （３）濃縮液の排出制御は回転胴とスクリューコンベア
ー軸との差速調節により容易に行うことができる。 （４）固形物の性状がペースト質の柔軟性であっても、
濃縮液を安定して排出できる。 （５）スクレーパーは簡単なリンク構造であり強固で長
寿命となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す縦断面図である。

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ矢視断面図である。

【図３】本出願人がさきに特願平２−１６３６４９号で
提案したスクリュー型遠心分離機を示す縦断面図であ
る。

【図４】図３のＩＶ−ＩＶ矢視断面図である。

【符号の説明】

１ 回転胴、１ａ 分離部、１ｂ 掻揚部、２ 前部端
板、３ 後部端板、４ガイド面、５ ガイド部材、６
濃縮液排出孔、７ スクリューコンベアー軸、８中空軸
部、９ らせんブレード、１２ 仕切板、１５ ケーシ
ング、１６主軸受、１７ 原液供給管、１８ 分離液排
出口、１９ 濃縮液排出口、２０モータ、２１ 減速
機、３０ スクレーパー、３０ａ 菱形ボス、３０ｂ
短リンク、３０ｃ ピン、３０ｄ 長リンク、３０ｅ
ピン、３０ｆ ピン、３０ｇスクレーパー片、Ｆ 液
面、Ｇ 原液、Ｈ 濃縮液、Ｌ 分離液、Ｚ，Ｚａ ビ
ーチゾーン

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 （イ）円筒の一端から他端近くにわたる
   比較的長い分離部と、残部の比較的短い掻揚部よりなり
   両端がそれぞれ中心孔を有する端板にて閉塞され中心軸
   線の周りに回転する回転胴と、 （ロ）同回転胴を同軸的に貫通し上記分離部にわたる部
   分の中空軸部の外周にらせん状に巻着され外端縁が若干
   のすきまを存して上記回転胴の内面に対向するらせんブ
   レードを有し若干の差速をもって回転するスクリューコ
   ンベアー軸と、 （ハ）央部がそれぞれ上記スクリューコンベアー軸の上
   記掻揚部に軸直角平面上で対称的に枢着された短い平行
   リンクと、同平行リンクの同一側の両端をそれぞれ連結
   し先端に上記回転胴のガイド面に摺接するスクレーパー
   片を有する長い平行リンクとよりなるリンク型スクレー
   パーとを具え、 （ニ）上記スクリューコンベアー軸の中空軸部を経て原
   液を上記回転胴の分離部に供給し、上記分離部の一端側
   の端板を横切って軽液を取出すとともに、上記掻揚部か
   ら遠心力で外向半径方向に付勢される上記リンク型スク
   レーパーで重液をその排出孔を経て取出すようにしたこ
   とを特徴とするスクリュー型遠心分離機。