JPH06331775A - 原子炉格納容器のベント装置とベント方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】原子炉格納容器と使用済燃料貯蔵プールとをベ
ント配管で連結して、原子炉格納容器内圧力が上昇した
際に、放射性物質を直接大気に放散させずに原子炉格納
容器を保護する原子炉格納容器のベント装置とベント方
法を提供する。 【構成】請求項１記載のベント装置は、原子炉を格納し
た原子炉格納容器２とプール水を貯溜した使用済燃料貯
蔵プール８間に接続して中間にベント弁16を介挿すると
共に使用済燃料貯蔵プール８端に蒸気凝縮管17を備えた
ベント配管15を設けたことを特徴とする。請求項２記載
のベント方法は、原子炉格納容器２内の圧力上昇に際し
てベント弁16を開いて原子炉格納容器２内の雰囲気をベ
ント配管15を経由して使用済燃料貯蔵プール水中に放出
し、凝縮すると共に放射性物質を捕捉することを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば原子力発電所の
原子炉格納容器内の配管または原子炉圧力容器の破損等
の苛酷事象を想定した場合に、原子炉格納容器内の圧力
が過度に上昇して破損することを防止する原子炉格納容
器のベント装置とベント方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】図５は原子炉格納施設の概要断面図で、
原子炉圧力容器１は原子炉格納容器２に格納し、さら
に、これらを原子炉建屋３で格納されている。原子炉圧
力容器１からは主蒸気配管４が引き出され、原子炉格納
容器２内には下部にサプレッションプール５が設置され
てプール水６が貯溜されていて、ベント管７が設けてあ
る。また原子炉建屋３には使用済燃料貯蔵プール８が設
置され、壁部にはブローアウトパネル９が設けられてい
る。

【０００３】図６は非常用ガス処理系の系統図であり、
原子炉格納容器２に接続された吸込管10とファン11、フ
ィルタ12、吐出管13および排気筒14で構成されている。
原子炉格納容器２においては、原子炉格納容器２内の配
管等の破損等により大量の放射性物質の放散の可能性が
ある場合に、これらの部分を隔離して所定の漏洩量以下
に抑え、非常用ガス処理系により、放射性物質を捕捉し
て大気への放出を十分低い量に抑制するために設置され
ている。

【０００４】従って、原子炉格納容器２は想定される配
管等破損の際に放出される水、および蒸気の混合物を原
子炉格納容器２内のサプレッションプール５においてプ
ール水６で冷却、凝縮することで、原子炉格納容器２内
圧力の過度の上昇を抑制する設計となっている。

【０００５】図７は従来の原子炉格納施設において苛酷
事象を想定した場合の放射性物質放出経路図で、例えば
原子炉圧力容器１の破損口１ａから放出された水、およ
び蒸気は原子炉格納容器２中に閉じ込められ、当初はベ
ント管７を介してサプレッションプール５内のプール水
６中に放出し、凝縮されることにより原子炉格納容器２
内の圧力上昇が抑制される。

【０００６】しかしながら、時間の経過と共に原子炉格
納容器２内の圧力は上昇して原子炉格納容器２の破損に
至り、破損口２ａから原子炉建屋３内に噴出して、原子
炉建屋３内圧力は急上昇し、これによりブローアウトパ
ネル９が開放するため、放射性物質は処理されることな
く、直接大気に放出されることになる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】実際には発生するとは
考えられないが、原子炉施設で故障等が重複して発生す
ることにより、原子炉圧力容器１が破損するといった事
象を想定した場合は、前記サプレッションプール５内の
プール水６だけでは放出される水、および蒸気の混合物
熱量を吸収しきれず、いずれは原子炉格納容器２内圧力
が過度に上昇して破損に至ると考える。

【０００８】勿論、このような事象は極めて発生し難
く、原子炉施設の故障等が重複して発生することにより
想定するもので、実際には発生するとは考えられない
が、万一発生した場合の影響が大きいことから、このよ
うな事象が発生したことを仮定しても原子炉格納容器２
内の圧力が過度に上昇して、原子炉格納容器２が破損に
至ることを避けることができるようにしておくことが望
ましい。

【０００９】原子炉格納容器２の過圧破損を防ぐには、
原子炉格納容器２内の雰囲気をベントして原子炉格納容
器２内圧力を抑制すれば良いが、ベントした雰囲気をそ
のまま大気に放出したのでは、原子炉から放出された放
射性物質が大気に直接放散されるという支障が生じる。

【００１０】また直接大気に放出しないために、原子炉
圧力容器１を初め、原子炉格納施設を内包している原子
炉建屋３内にベントすることにした場合も、原子炉建屋
３内圧力が上昇し、この原子炉建屋３内の圧力上昇によ
る原子炉建屋３の破損を防止するために設置されている
ブローアウトパネル９が開放されることになり、結局放
射性物質が大気に直接放散されることになる。

【００１１】さらに、原子炉格納容器２内の雰囲気をフ
ィルタを通して、放射性物質を捕捉、除去した後にベン
トすることにより、放射性物質が大気に直接放散されな
いようにする場合には、大型のフィルタ装置が必要とな
るという問題があった。

【００１２】本発明の目的とするところは、原子炉格納
容器と使用済燃料貯蔵プールとをベント配管で連結し
て、原子炉格納容器内圧力が上昇した際に、放射性物質
を直接大気に放散させずに原子炉格納容器を保護する原
子炉格納容器のベント装置とベント方法を提供すること
にある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項１記載の発明に係る原子炉格納容器のベント
装置は、原子炉を格納した原子炉格納容器とプール水を
貯溜した使用済燃料貯蔵プール間に接続して中間にベン
ト弁を介挿すると共に使用済燃料貯蔵プール端に蒸気凝
縮管を備えたベント配管を設けたことを特徴とする。

【００１４】また請求項２記載の発明に係る原子炉格納
容器のベント方法は、原子炉格納容器内の圧力上昇に際
してベント弁を開いて原子炉格納容器内の雰囲気をベン
ト配管を経由して使用済燃料貯蔵プール水中に放出し
て、冷却凝縮し放射性物質を捕捉することを特徴とす
る。

【００１５】

【作用】原子炉圧力容器から水および蒸気の混合物が漏
洩する苛酷事象により原子炉格納容器内圧力が上昇した
場合に原子炉格納容器内雰囲気は、先ずサプレッション
プールのプール水で冷却、凝縮して原子炉格納容器内の
圧力上昇を抑制する。

【００１６】さらに、漏洩する水および蒸気の混合物が
多量の時には、原子炉格納容器内圧力がベント弁の所定
値を超えた時点でベント弁を開き、ベント配管を経由し
て使用済燃料貯蔵プールにおける大量の水中に蒸気凝縮
管を介して放出し、冷却凝縮すると共に放射性物質を捕
捉して、原子炉格納容器内の過度な圧力上昇を抑制す
る。

【００１７】

【実施例】本発明の一実施例について図面を参照して説
明する。なお、上記した従来技術と同じ構成部分には同
一符号を付して詳細な説明は省略する。図１は原子炉格
納容器におけるベント装置の構成図で、原子炉格納容器
２より引出されたベント配管15にはベント弁16が介挿さ
れて、その先端は図２の斜視図に示す蒸気凝縮管17が取
り付けられていて、大貯水量の使用済燃料貯蔵プール８
内の水中に配設して構成されている。

【００１８】なお、この蒸気凝縮管17には多数の小孔17
ａが開けてある。また、図３の断面図はは逆止弁である
ベント弁16を示し、ベント弁16はスプリング16ａと、こ
れにより常時押圧されているディスク16ｂで構成してい
る。

【００１９】次に上記構成による作用について説明す
る。図４の放射性物質放出経路図は、原子炉圧力容器１
が破損するという苛酷事象が発生して、破損口１ａより
原子炉格納容器２内に放射性物質を含んだ水、および蒸
気の混合物が放出されることを想定している。

【００２０】放射性物質を含んだ水、および蒸気の混合
物が放出された当初においては、水および蒸気の混合物
は、ベント管７を介して原子炉格納容器２内のサプレッ
ションプール５のプール水６中に放出され、冷却、凝縮
されるために原子炉格納容器２内の圧力上昇は抑制され
るが、サプレッションプール５の処理能力上から、時間
経過と共に原子炉格納容器２内の圧力は上昇する。

【００２１】しかし、原子炉格納容器２の設計上許容さ
れる圧力を超える前で、所定の圧力値に上昇した時点
で、原子炉格納容器２内の圧力がベント弁16のスプリン
グ16ａ力に打ち勝ち、ディスク16ｂが開くため、原子炉
圧力容器１より放出された水および蒸気は、ベント配管
15の先端で蒸気凝縮管17の小孔17ａから使用済燃料貯蔵
プール８内の大量の水中に小泡の形で放出され、冷却さ
れて凝縮する。

【００２２】また放射性物質を含んだ水、および蒸気の
混合物は、蒸気凝縮管17の小孔17ａから使用済燃料貯蔵
プール８内の水中に放出されて冷却、凝縮するが、この
際に非凝縮性の気体は水中を上昇する間に、放射性物質
はプール水に捕捉、移行する。

【００２３】なお、非凝縮性の気体はプール水で凝縮せ
ずに原子炉建屋３内に放散するが、原子炉建屋３内の雰
囲気は、前記した非常用ガス処理系のフィルタ12で放射
性物質が捕捉、除去され、十分低い量になった後に排気
筒14より大気に放出される。

【００２４】本発明では原子炉格納容器２の設計上許容
される圧力を超える前にベント弁16を開き、ベント配管
15、蒸気凝縮管17を介して使用済燃料貯蔵プール８内の
水中に原子炉格納容器内雰囲気、すなわち水および蒸気
の混合物を放出して冷却、凝縮させることで、原子炉格
納容器２の過度の圧力上昇を抑制し、破損を防止するこ
とができる。

【００２５】また放射性物質を含んだ水および蒸気の混
合物は、使用済燃料貯蔵プール８内の水中において冷
却、凝縮され、非凝縮性ガスにおいても放射性物質が水
に移行することで放射性物質量を低減できるので、大量
の放射性物質が直接大気に放出されることを防止でき
る。

【００２６】

【発明の効果】以上本発明によれば、原子力発電所の原
子炉格納容器内配管または原子炉圧力容器の破損等によ
り原子炉格納容器内圧力が上昇した際にも、十分の容量
の使用済燃料貯蔵プール水で原子炉格納容器内の雰囲気
を冷却、凝縮して圧力上昇を抑制し、原子炉格納容器を
はじめ、原子炉建屋の健全性を維持する効果がある。

【００２７】また放射性物質を低減させると共に、原子
炉建屋内に放散された非凝縮性の気体は、非常用ガス処
理系で放射性物質を十分に除去して大気に放出するの
で、大量の放射性物質を直接大気に放出することが防止
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る一実施例のベント装置の構成図。

【図２】蒸気凝縮管の斜視図。

【図３】ベント弁の断面図。

【図４】本発明に係る一実施例の放射性物質放出経路
図。

【図５】原子炉格納施設の概要断面図。

【図６】非常用ガス処理系の系統図。

【図７】従来施設における苛酷事象時の放射性物質放出
経路図。

【符号の説明】 １…原子炉圧力容器、１ａ，２ａ…破損口、２…原子炉
格納容器、３…原子炉建屋、４…主蒸気配管、５…サプ
レッションプール、６…プール水、７…ベント管、８…
使用済燃料貯蔵プール、９…ブローアウトパネル、10…
吸込管、11…ファン、12…フィルタ、13…吐出管、14…
排気筒、15…ベント配管、16…ベント弁、16ａ…ベント
弁スプリング、16ｂ…ベント弁ディスク、17…蒸気凝縮
管、17ａ…小孔。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 原子炉を格納した原子炉格納容器とプー
   ル水を貯溜した使用済燃料貯蔵プール間に接続して中間
   にベント弁を介挿すると共に使用済燃料貯蔵プール端に
   蒸気凝縮管を備えたベント配管を設けたことを特徴とす
   る原子炉格納容器のベント装置。
2. 【請求項２】 原子炉格納容器内の圧力上昇に際してベ
   ント弁を開いて原子炉格納容器内雰囲気をベント配管を
   経由して使用済燃料貯蔵プール水中に放出して、冷却凝
   縮すると共に放射性物質を捕捉することを特徴とする原
   子炉格納容器のベント方法。