JPH06242295A - 放射性金属廃棄物の除染方法及び装置 - Google Patents

放射性金属廃棄物の除染方法及び装置

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JPH06242295A
JPH06242295A JP3332493A JP3332493A JPH06242295A JP H06242295 A JPH06242295 A JP H06242295A JP 3332493 A JP3332493 A JP 3332493A JP 3332493 A JP3332493 A JP 3332493A JP H06242295 A JPH06242295 A JP H06242295A
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JP
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metal waste
metal
anode
cathode
electrolytic
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JP3332493A
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Masami Toda
正見 遠田
Katsumi Hosaka
克美 保坂
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電極の掴み換えや除染前後の電極の着脱作業
が不要であり、金属廃棄物の放射能レベルを短時間にバ
ックグランドレベルまで除染でき、しかも単純形状機器
に限らず複雑形状機器に対しても適用可能な放射性金属
廃棄物の除染方法と、これに使用する装置を提供する。 【構成】 原子力施設で使用され、放射性物質で汚染さ
れた金属廃棄物を除染する方法において、金属廃棄物の
一方の表面を無機酸または中性塩の電解液中で正極に帯
電させるための陰極と、金属廃棄物の他方の面を負極に
帯電させるための陽極とを電解槽内に設置し、これらの
電極間に直流電圧を印加して前記陰極に対面している金
属廃棄物の表面を溶解し、金属廃棄物が全面にわたり汚
染している場合は直流電源の極性を逆転させて、前記負
極に帯電している面を正極に帯電させて溶解することを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、原子力発電施設の運
転、定期検査時あるいは原子炉廃止措置時に発生する放
射性金属廃棄物を低減するための除染方法および装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電施設の運転、定期検査時ある
いは原子炉廃止措置時に発生する放射性金属廃棄物を徹
底除染する方法としては、例えば特開昭62−4629
7号公報、同63−188799号公報、同60−18
6799号公報、特開平1−311300号公報、ある
いは同2−22597号公報等に開示されているよう
に、酸性溶液を用いた電解除染や化学除染が国内外で種
々開発され、実用化されている。
【0003】電解除染は、金属廃棄物を陽極とし、除染
面に対向して陰極を設置し、金属廃棄物と陰極の間に直
流電圧を印加して除染面の母材を研磨し、金属廃棄物か
ら放射能を除去するものであり、板状、円筒状等の比較
的単純形状の金属廃棄物に対して効果的である。
【0004】一方、化学除染は、除染液として例えば硫
酸、硝酸等を用い、この除染液に機器を浸漬して除染す
るもので、電解除染では除染が難しいバルブやポンプ等
の複雑形状の金属廃棄物に対して効果的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した
除染方法には次のような課題があった。
【0006】(1)電解除染の場合 a.金属廃棄物と陽極との接続部分は溶解しないため汚
染が残留し、掴み換えを行って再除染する必要あある。
【0007】b.大型の機器を除染する際には、機器の
表面積に比例して通電する電流値も大きくなるため、除
染の度に、機器の形状、および機器と陽極との接触面積
を考慮した陽極の製作が必要となる。
【0008】c.大量の機器を処理する場合は、電極の
掴み換え、接続部陽極の交換が必要であるため、作業性
や作業効率が悪く、作業員の被曝低減、および装置の自
動化が難しい。
【0009】(2)化学除染の場合 a.硫酸や硝酸はステンレス鋼に対する溶解度が遅いた
め、金属廃棄物の放射能レベルをバックグランドレベル
に低下させるまでに長い除染時間を必要とする。
【0010】b.ステンレス鋼の溶解速度を速めるため
に硫酸や硝酸の濃度を高くすると、 廃液処理に伴
う二次廃棄物の発生量が増大する。
【0011】本発明はこのような課題を解決するために
なされたもので、電極の掴み換え、除染前後の電極の着
脱作業が不必要であり、しかも金属廃棄物の放射能レベ
ルを短時間にバックグランドレベルにまで除染でき、板
状、円筒状等の単純形状機器に限らず、バルブやポンプ
等の複雑形状機器に対しても適用可能な放射性金属廃棄
物の除染方法およびこれに使用する装置を提供すること
を目的とするものである。
【0012】なお、本出願人は、非接触電解反応を用い
て金属廃棄物を除染する方法を、特願平4−10455
2として出願したが、本発明は、この先願方法の一層の
高機能・高性能化を図ろうとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の放射性金属廃棄
物の除染方法は、原子力施設で使用され、放射性物質で
汚染された金属廃棄物を除染する方法において、金属廃
棄物の一方の表面を無機酸または中性塩の電解液中で正
極に帯電させるための陰極と、金属廃棄物の他方の面を
負極に帯電させるための陽極とを電解槽内に設置し、こ
れらの電極間に直流電圧を印加して前記陰極に対面して
いる金属廃棄物の表面を溶解し、金属廃棄物が全面にわ
たり汚染している場合は直流電源の極性を逆転させて、
前記負極に帯電している面を正極に帯電させて溶解する
ことを主な特徴とする。
【0014】また、本発明の放射性金属廃棄物の除染装
置は、金属廃棄物の表面を非接触で電解反応を生起させ
るための陰極、陽極および直流電源と、電解液を収納す
る電解槽と、この電解槽からの電解液を全量収納し、電
解液加熱用ヒーターが付設されたドレン槽と、前記電解
槽およびドレン槽の電解液を循環させ、かつ電解槽内の
電解液を攪拌する循環ポンプと、前記電解液中の不溶成
分を捕集するためのフィルターと、前記電解槽とドレン
槽から発生する蒸気、ミスト、またはガスを吸引して処
理する排ガス処理系を備えることを特徴とする。
【0015】
【作用】上述のように構成した本発明によれば、金属廃
棄物を非接触で電解して金属表面を効率良く溶解させる
と共に、金属廃棄物の放射能レベルをバックグランドレ
ベルに低下させることができる。
【0016】本発明において、板状、円筒状、角管状な
どの単純形状金属廃棄物を除染する場合は、金属廃棄物
を無機酸または中性塩の電解液中に浸漬し、一方の面に
陰極を、他方の面に陽極をそれぞれ対向して設置し、陽
極と陰極との間に直流電圧を印加すると陰極に対面して
いる金属廃棄物表面は正極に帯電し溶解する。この時、
表面に付着している放射能を含む酸化皮膜、または母材
に浸透している放射能は、金属母材の溶解とともに除去
される。また、金属廃棄物が全面にわたり汚染している
場合は、直流電源の極性を逆転することにより負極に帯
電していた面を正極に帯電させることができるため、容
易に母材を溶解することができ、金属廃棄物から放射能
を除去することができる。曲管やバルブ等の複雑形状金
属廃棄物に対しては、無機酸の電解液中で一方の面に陽
極を、他方の面に陰極を設置して、陽極と陰極との間に
直流電圧を所定時間印加すると、陽極に対面している表
面が負極に帯電し、表面の不働態化皮膜または酸化皮膜
が破壊させられて金属母材表面は活性化する。この状態
で直流電圧の印加を停止すると無機酸の酸化力により金
属母材が溶解されるため、放射能が除去される。また、
炭素鋼のように酸化皮膜が厚く、強固に付着し、放射能
が除去し難い金属廃棄物に対しては、直流電圧の極性を
交互の逆転させて還元処理と酸化処理を施すことにより
酸化皮膜の還元破壊と母材の溶解が起こるため、少ない
母材の溶解量で放射能を除去することができ、除染に伴
う二次廃棄物の発生量を低減することができる。
【0017】上記除染作業に際しては、電解槽を板状金
属廃棄物および円筒状金属廃棄物と、バルブ、ポンプ等
の複雑形状金属廃棄物に分けることにより、除染作業を
効率良く行うことができ、作業員の作業性が向上すると
共に、被曝の危険性を低減できる。さらに電解槽から金
属廃棄物を出し入れする際は、電解液をドレン槽に戻
し、排ガス処理系で電解液から発生する蒸気、ミスト、
あるいはガスを吸引することにより作業員がそれらの有
害物質に接触することを防ぐことができ、作業環境が改
善される。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面を参照しながら
説明する。
【0019】図1は、本発明において使用される放射性
金属廃棄物の除染装置の一例を示すもので、図1中、符
号1aは板状の金属廃棄物2を除染する電解槽であり、
この電解槽1aには金属廃棄物の一方の面に対向して陰
極4が設置され、他方の面に対向して陽極5が設置され
ている。また、円筒状または角管状の金属廃棄物3を除
染する電解槽1bには、金属廃棄物3の内面に陰極4が
挿入され、外面には陽極5が設置されている。電解槽1
a、1bにはそれぞれ無機酸または中性塩からなる電解
液6が満たされている。
【0020】これらの電解液6はドレン槽7から循環ポ
ンプ8により循環ライン9を通過して供給され、また電
解槽1a,1bからオーバーフローして、オーバーフロ
ーライン10を通してドレン槽7に戻るルートを循環す
る。また、ドレン槽7には電解液加熱用のヒーター11
が付設されており、ドレン槽7内の電解液はこのヒータ
ーにより加熱され、所定の温度に昇温して電解槽1a、
1bに供給される。なお、12は直流電源、13はフィ
ルター、14は排ガス処理系を示す。
【0021】上述の電解槽1a,1bにおいて、直流電
源12から陰極4と陽極5の間に、所定の電流密度とな
るように、直流電圧を印加すると、陰極4に対面してい
る金属廃棄物2,3の母材Mの表面は正極に帯電するた
め、以下に示す反応が起こり溶解する。
【0022】
【化1】 金属廃棄物2、3に酸化皮膜と共に付着または金属母材
に浸透している放射能は、母材を溶解することにより金
属廃棄物2、3から除去されて電解液6に移行するの
で、金属廃棄物2、3の放射能レベルをバックグランド
レベルに低下させることができる。なお、金属廃棄物
2、3が全面にわたり汚染している場合は、直流電源1
2の極性を逆転し、反対側の面を正極に帯電させて溶解
する。
【0023】一方、電解液6中に移行した酸化皮膜は循
環ライン9に付設されたフィルター13により除去さ
れ、また電解液6から発生する蒸気、ミスト、ガス等は
排ガス処理系14により吸引されて処理される。
【0024】従来の電解除染では金属廃棄物と陽極とを
接続して除染を行っていたため、接続部に汚染が残留
し、陽極の掴み換えを行って再除染する必要があった
が、上述したように本発明の除染方法では、非接触で電
解除染を行うため、表面を均一に溶解することができ、
汚染の残留が無く、短時間に金属廃棄物の放射能レベル
をバックグランドレベルにまで低下させることができ
る。また、電解槽を板状金属廃棄物用1aと円筒状また
は角管状金属廃棄物用1bとに分けることにより、電解
槽内の陽極5と陰極4の設置位置を大幅に変更すること
なく除染作業を行うことができるため、作業性が向上
し、除染作業員が被曝する危険性を低減することができ
る。さらに電解槽1a,1bから金属廃棄物2,3を出
し入れする際には電解液6をドレン槽7に戻し、また電
解液から発生する蒸気、ミスト、ガスを排ガス処理系1
4で吸引することにより、除染作業員が電解液、蒸気、
ミスト等に接触することを防ぐことができ、作業環境が
向上する。
【0025】次に、本発明の第2の実施例を説明する。
この実施例においては、第1の実施例と同様に、図1の
除染装置を使用する。電解槽1aには板状、バルブまた
はポンプ等の金属廃棄物2を収納し、電解槽1bには円
筒状、角管状の金属廃棄物3を収納し、電解液6として
は無機酸を用いる。金属廃棄物3が炭素鋼の場合には硫
酸、硝酸によって溶解され易いが、全面に酸化皮膜や錆
等が付着している場合には溶解されにくい。また、ステ
ンレス鋼製の金属廃棄物の場合は、表面に不働態化被膜
が形成されているため耐食性に優れている。
【0026】このような金属廃棄物を無機酸の酸化力に
より溶解して除染する場合は、ドレン槽7に付設された
電解液加熱用のヒーター11により電解液を加熱して所
定の温度に昇温させた後、電解槽1a,1bに供給す
る。そこで、直流電源12から陰極4と陽極5との間に
所定の電流密度の直流電圧を印加すると、陽極5に対面
している金属廃棄物2,3の母材Mの表面は負極に帯電
するため、以下に示す反応が起こる。
【0027】
【化2】 金属廃棄物表面の不働態皮膜、酸化皮膜または錆等が還
元されて破壊すると、金属母材が露出して活性化し、直
流電源を停止すると無機酸の酸化力で金属廃棄物の溶解
が起こる。従って、金属廃棄物2、3に酸化皮膜と共に
付着し、または母材に浸透している放射能は、母材を溶
解することにより金属廃棄物2、3から除去されて電解
液6に移行し、金属廃棄物2、3の放射能レベルはバッ
クグランドレベルにまで低下する。
【0028】上述のように、この実施例によれば、ステ
ンレス鋼または全面に酸化皮膜が厚く、強固に付着した
金属廃棄物を非接触で電解還元処理することにより、金
属廃棄物の放射能レベルをバックグランドレベルにまで
短時間で低下させることができる。また、電解槽を板
状、バルブ及びポンプ等の金属廃棄物を除染する電解槽
と、円筒状または角管状金属廃棄物を除染する電解槽に
分けることにより、電解槽内の陽極と陰極の配置を大幅
に変更することなく除染作業を行うことができるため、
作業性が向上し除染作業員の被曝の危険性を低減するこ
とができる。さらに、電解槽から金属廃棄物を出し入れ
する際には、ドレン槽に電解液を戻し、排ガス処理系で
電解液から発生する蒸気、ミスト、ガスを吸引するた
め、除染作業員がそれらの有害物質に接触することを防
ぐことができ、作業環境が向上する。次に、本発明に係
わる除染方法および装置に関し、非接触電解反応を効率
良く行うための実施例について説明する。
【0029】図2は一般的な電解槽において、金属廃棄
物などの金属を非接触で電解する場合の電解槽内での電
場の様子を示す。電解槽15内に陽極16と陰極17を
平行に設置し、両極間に直流電圧を印加すると、両極間
の電場は点線て示したように電極16,17の中心部で
は直線的になるが、端部では放物線に似た形となり、こ
の電場に基づいて電流が流れる。この状態で陽極16と
陰極17の間に金属廃棄物18を挿入すると、電場が遮
断され、陰極17に対面する金属表面が正極に帯電し、
陽極16に対面する金属表面が負極に帯電する。金属表
面の電位は、点線で示した電場のように中心部では高
く、端部では両極間に電流が漏洩するため低くなる。電
解反応により金属を溶解する場合は、電解液中の金属の
平衡電位よりも大きい電位が印加されなければならない
ため、電位が低下している金属表面の端部は溶解されに
くい。従って、このような状態で金属廃棄物を除染した
場合は、端部に汚染が残留し、金属廃棄物の放射能レベ
ルをバックグランドレベルにまで低下させることができ
ない。金属表面を均一に帯電させて金属母材を均一溶解
するためには両極から漏洩する電流を少なくする必要が
ある。
【0030】図3は、上記の点を考慮して両極間に漏洩
する電流を少なくするための実施例であり、電解槽15
の陽極16と陰極17の両側の端部近傍に、絶縁材料か
らなる遮蔽板19を設置する。この状態で陽極16と陰
極17との間に直流電圧を印加すると、両極の端部の電
場は、遮蔽板19の遮蔽効果によりほぼ直線的に分布
し、金属表面にはほぼ均一に電圧が印加される。従っ
て、陰極と陽極の端部から漏洩する電流を抑制すること
ができ、金属母材表面を均一に溶解することができる。
【0031】上記遮蔽板の効果を確認するために電解液
中で金属の電位を測定した結果を図4、図5に示す。図
4は遮蔽板が無い状態を、図5は遮蔽板19を設置した
状態を示すもので、金属廃棄物18の一方の面に対向し
て陰極17を、他方の面に対向して陽極16を設置し、
陰極と陽極との間に直流電圧を印加した。図中のグラフ
は陰極に対面する金属表面の電位を測定した結果を示す
もので、金属表面の中央部の電位を1とした場合の各位
置での相対電位を示す。金属表面の電位は中央部が高
く、端部は陰極と陽極に電流が漏洩するため低くなる。
これらの結果からも明らかなように、遮蔽板を設置しな
い場合は金属端部の電位低下が大きく、遮蔽板を設置し
た場合は金属端部の電位低下は小さい。従って、遮蔽板
を設置することにより金属表面の電位を均一化し、金属
表面を均一に溶解させることができる。
【0032】なお、漏洩電流を少なくするための方法と
しては、遮蔽板の代わりに電解槽の側面に遮蔽効果を持
たせるようにしてもよい。その場合には、電解槽の側面
の材料として、フッ素樹脂、耐熱塩化ビニール、ポリプ
ロピレン等の高分子材料や窒化硅素、酸化ジルコニウム
等のセラミックス等を使用すればよい。また、電解槽の
大きさに合わせて金属廃棄物を切断して除染をするよう
にしてもよい。
【0033】次に、本発明に係わる除染方法および装置
に関し、非接触電解反応を効率良く行うための第4の実
施例について図6を用いて説明する。同図中、20は電
解槽、21は金属廃棄物、22は電解液を示す。金属廃
棄物21の両側の一方の面には取り外しおよび移動が可
能な棒状の陰極23を多数配列し、他方の面にも同様に
取り外しおよび移動が可能な棒状の陽極24を多数配列
する。この状態で、陰極23と陽極24との間に直流電
圧を印加すると、電解槽20内では図2に示したような
電場が生じ、陰極に対面する金属表面は正極に帯電し、
陽極に対面する金属表面は負極に帯電する。
【0034】この時の金属表面の電位を測定した結果を
図7および図8に示す。図7は、金属25の両面に、棒
状の陰極26と陽極27を端部まで配列した場合を示
し、図8は、金属廃棄物25の一方の面に陰極26を端
部まで配列し、他方の面には中央部付近にのみ陽極27
を配列した場合を示す。図中のグラフは陰極に対する金
属廃棄物25の表面の電位を測定した結果を示すもの
で、金属廃棄物25表面の中央部の電位を1とした場合
の各位置での相対電位を示す。これらの図を対比すれば
明らかなように、棒状の陰極および陽極を端部まで多数
配列した場合は、陰極に対面する端部の電位低下が大き
く、棒状の陽極を中央部付近に配列した場合は陰極に対
面する端部の電位低下は小さい。電解反応により金属を
溶解する場合は、電解液中での金属の平衡電位よりも大
きい電位が印加されなければならないため、電位が低下
している金属表面の端部は溶解されにくい。従って、棒
状の陰極および陽極を用い、陰極に対面する金属廃棄物
表面を正極に帯電させて金属母材を溶解し除染する場合
には、陰極は金属表面の端部まで配列し、陽極は中央部
付近にのみ配列することにより金属廃棄物の表面をほぼ
均一に溶解することができる。
【0035】ところで、非接触電解反応を用いた除染方
法においては、金属廃棄物を効率良く溶解するために、
陰極と陽極から漏洩する電流を少なくすることが重要で
ある。例えば、板状の金属廃棄物に対して板状の陰極と
陽極を用いた場合は、漏洩電流を少なくするために金属
廃棄物の大きさに合わせて陰極、陽極を製作しなければ
ならないため、汎用性が悪いという問題点がある。この
問題点を解決するために本実施例では、棒状の陰極と陽
極を用いている。棒状の電極は取り外しや移動が容易で
あり、金属廃棄物の形状に合わせて配列することができ
るため、陰極、陽極から漏洩する電流を少なくすること
ができ、金属廃棄物の表面を均一に溶解することができ
る。
【0036】棒状の電極は、板状の金属廃棄物の他に、
円筒状の金属廃棄物やバルブ、ポンプ等の複雑形状金属
廃棄物に対しても適用できる。即ち、円筒状の金属廃棄
物を除染する場合は円筒内に陰極を挿入し、陽極を円筒
外に配列し、金属廃棄物の内面を正極に帯電させて溶解
し、除染を実施する。また、バルブ、ポンプ等の複雑形
状金属廃棄物に対しては、一方の面に陽極を、他方の面
に陰極を配列して不働体化皮膜、酸化皮膜の還元処理を
行い、無機酸の酸化力により金属母材を溶解し、除染を
実施する。従って、棒状の電極は、多種多様の金属廃棄
物に対して適用できるため、電極製作におけるコストの
低減、適用範囲の拡大に有効である。
【0037】次に、本発明に係わる除染方法および装置
の第5の実施例を図9を用いて説明する。同図中、28
は電解槽、29は金属廃棄物、30は電解液を示す。電
解槽28の一方の側面中央部と、そこに対面する側面中
央部には絶縁材料からなる遮蔽板31が設置されてお
り、この遮蔽板を境にして電解槽28の一方を酸化処理
槽28a、他方を還元処理槽28bとする。酸化処理槽
28aには、棒状の陰極32が金属廃棄物29の両側に
多数配列され、他方の還元処理槽28bには、棒状の陽
極33が金属廃棄物29の両側に多数配列されている。
これらの陰極と陽極は直流電源に接続されている。
【0038】この状態で、直流電源から陰極32と陽極
33の間に、所定の電流密度の直流電流が流れるよう、
直流電圧を印加すると、酸化処理槽28a内の金属廃棄
物29の表面は正極に帯電するため、次式に示すよう
に、陰極32では水素が発生し、金属廃棄物29は金属
母材Mの溶解反応が起こる。
【0039】
【化3】 一方、還元処理槽28b内の金属廃棄物29は負極に帯
電するため、次式に示すように、陽極33では酸素が発
生し、金属廃棄物29では不働体皮膜、酸化皮膜、ある
いは錆等の還元反応と破壊が生じる。
【0040】
【化4】 本実施例では、直流電源の極性を所定時間毎に逆転させ
て金属廃棄物表面の酸化処理と還元処理を交互に繰り返
す。これによって、金属廃棄物の汚染源である酸化皮
膜、錆等が還元処理されることにより破壊され、酸化皮
膜、錆等は選択的に除去される。その後で、酸化処理し
て金属母材を溶解すると、少ない溶解量で金属廃棄物の
放射能レベルをバックグランドレベルに低下させること
ができるため、除染に伴う二次廃棄物の発生量を少なく
することができる。炭素鋼製の金属廃棄物は放射能を含
む酸化皮膜、錆等が厚く、強固に付着しているが、還元
処理と酸化処理を繰り返すことにより、短時間で放射能
レベルをバックグランドレベルまで低下させることがで
きる なお、本実施例は、前記第3の実施例で説明した遮蔽板
と、第4の実施例で説明した棒状電極を組み合わせたも
のであるため、非接触電解反応を効率良く行うことがで
き、また棒状電極は取り外し、移動が可能であるため多
種多様の金属廃棄物に対して適用できる。
【0041】次に、本発明の除染方法および装置の第6
の実施例について図10、図11を用いて説明する。こ
れらの図は実汚染金属廃棄物の除染結果を示したもの
で、図10はステンレス鋼製の金属廃棄物の汚染面を正
極に帯電させて酸化溶解した除染試験結果を示し、図1
1は炭素鋼製の金属廃棄物の汚染面を負極に帯電させて
還元処理した後に正極に帯電させて酸化溶解した除染試
験結果を示す。除染条件は、硫酸濃度5wt%、除染液
温度60℃、電流密度0.3A/cm2 である。これらの
図中、縦軸は金属廃棄物の表面線量当量率を示し、横軸
は除染時間を示す。これらの結果から明らかなように、
従来の電解除染法では金属廃棄物と陽極との接続部に汚
染が残留するため、陽極の掴み換えを行い、再除染する
必要があるが、本発明の除染方法は金属廃棄物を非接触
で電解除染するため、陽極の掴み換えは必要とせず、従
来の電解除染と比べ約半分の除染時間で放射能レベルを
バックグランドレベルに除染できる。また、図11から
も明らかなように、炭素鋼製の金属廃棄物に対しては還
元処理を施すことにより、酸化皮膜、錆等を選択的に除
去することができるため、母材の溶解量が少なく、除染
時間を大幅に短縮することができる。
【0042】以上説明したように本発明の除染方法は、
非接触で金属廃棄物を電解することにより金属廃棄物を
正極に帯電させて金属母材を溶解することができるた
め、従来の電解除染と比較し、ステンレス鋼、炭素鋼等
の金属廃棄物の放射能レベルを短時間にバックグランド
レベルまで低下させることができる。曲管やバルブ等の
複雑形状物に対しては、酸性溶液を用い、非接触で金属
廃棄物を電解すると負極に帯電した表面は、不働体化皮
膜、酸化皮膜等が破壊されるため、金属表面を容易に溶
解することができ、不働体化皮膜を形成するステンレス
鋼の放射能レベルをバックグランドレベルに低下させる
ことができる。炭素鋼のように表面に酸化皮膜や錆等が
厚く、強固に付着している金属廃棄物に対しては、除染
面を交互に正極、負極に帯電させることにより、酸化皮
膜や錆等の破壊と母材の溶解を行うことができるため除
染効果が大きい。また、電解槽内に遮蔽板を設置するこ
とにより陰極と陽極に漏洩する電流を少なくすることが
できるため、金属表面を均一に溶解することができる。
さらに、電極の形状を棒状電極にすることにより、多種
多様の金属廃棄物に適用できる。また、棒状また角管状
の電極を金属廃棄物表面に多数配列することにより、円
筒状の金属廃棄物を除染する場合は内面に陰極を挿入
し、外面に陽極を配列し、その他の金属廃棄物、例えば
板状、バルブ、ポンプ等は一方の面に陰極を、他方の面
に陽極を配列して使用できるため、電極を共通に使用す
ることが可能で、電極を製作する場合のコストの低減に
効果的である。
【0043】なお、本発明においては、電解液として硫
酸の他に、燐酸、硝酸等の無機酸を、また中性塩として
硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムを用いても良い。ま
た、電極の形状は棒状電極の他に角管状の電極も使用で
き、電極の材質はチタンに白金コーティングを施したも
の、白金単独、またはチタン以外の金属に白金コーティ
ングを施したものも使用可能である。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、次のような効果が得ら
れる。
【0045】(1)従来の電解除染と同レベルの溶解速
度が得られるため、金属廃棄物の放射能レベルを短時間
にバックグランドレベルに低下させることができる。
【0046】(2)非接触で金属廃棄物を電解するた
め、陽極の着脱作業が不必要となり、現場作業員の作業
性および作業効率が向上する。
【0047】(3)機器の形状や、機器と陽極の接触面
積を考慮する必要がないため、従来の電解除染と比べ
て、大型機器への適用が容易である。
【0048】(4)大量の金属廃棄物を除染する場合、
装置自動化が容易に可能であるため、作業員の被爆の危
険性を低減することができる。
【0049】(5)化学除染のように曲管やバルブ等の
複雑形状物に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置の実施例を示す系統図。
【図2】 非接触電解法における電解槽内の電場の様子
を示す平面図。
【図3】 非接触電解法において、電解槽内に遮蔽板を
設置した場合の電場の様子を示す平面図。
【図4】 非接触電解法において、電解槽内に遮蔽板を
設置しない場合に金属廃棄物の電位を測定した結果を示
す説明図。
【図5】 非接触電解法において、電解槽内に遮蔽板を
設置した場合に金属廃棄物の電位を測定した結果を示す
説明図。
【図6】 本発明において、非接触電解反応を効率良く
行うための第4の実施例を示す斜視図。
【図7】 金属の両面に、棒状の陰極と陽極を端部まで
配列した場合において、金属表面の電位を測定した結果
を示す説明図。
【図8】 金属の一方の面に陰極を端部まで配列し、他
方の面には中央部付近にのみ陽極を配列した場合におい
て、金属表面の電位を測定した結果を示す説明図。
【図9】 本発明の第5の実施例を示す斜視図。
【図10】 本発明および従来方法において、ステンレ
ス鋼製の実汚染金属廃棄物の除染結果を示すグラフ。
【図11】 本発明および従来方法において、炭素鋼製
の実汚染金属廃棄物の除染結果を示すグラフ。
【符号の説明】 1a,1b,15,20,28…電解槽 2,3,18,21,29…金属廃棄物 4,17,23,26,32…陰極 5,16,24,27,33…陽極 6,22,30…電解液 7……ドレン槽 8……循環ポンプ 9……循環ライン 10……オーバーフローライン 11……ヒーター 12……直流電源 13……フィルター 14……排ガス処理系 19,31……遮蔽板 28a…酸化処理槽 28b…還元処理槽。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原子力施設で使用され、放射性物質で汚
    染された金属廃棄物を除染する方法において、金属廃棄
    物の一方の表面を無機酸または中性塩の電解液中で正極
    に帯電させるための陰極と、金属廃棄物の他方の面を負
    極に帯電させるための陽極とを電解槽内に設置し、これ
    らの電極間に直流電圧を印加して前記陰極に対面してい
    る金属廃棄物の表面を溶解し、金属廃棄物が全面にわた
    り汚染している場合は直流電源の極性を逆転させて、前
    記負極に帯電している面を正極に帯電させて溶解するこ
    とを特徴とする放射性金属廃棄物の除染方法。
  2. 【請求項2】 金属廃棄物の一方の面を無機酸の電解液
    中で正極に帯電させるための陰極と、金属廃棄物の他方
    の面を負極に帯電させるための陽極とを電解槽内に設置
    し、これらの電極間に直流電圧を印加して前記金属廃棄
    物の不働体化皮膜または酸化皮膜を負極に帯電させて破
    壊し、前記直流電圧の印加を停止して前記金属廃棄物の
    母材を前記無機酸の酸化力により溶解することを特徴と
    する請求項1記載の放射性金属廃棄物の除染方法。
  3. 【請求項3】 原子力施設で使用され、放射性物質で汚
    染された金属廃棄物を除染する装置において、金属廃棄
    物の表面を非接触で電解反応を生起させるための陰極、
    陽極および直流電源と、電解液を収納する電解槽と、こ
    の電解槽からの電解液を全量収納し、電解液加熱用ヒー
    ターが付設されたドレン槽と、前記電解槽およびドレン
    槽の電解液を循環させ、かつ電解槽内の電解液を攪拌す
    る循環ポンプと、前記電解液中の不溶成分を捕集するた
    めのフィルターと、前記電解槽とドレン槽から発生する
    蒸気、ミスト、またはガスを吸引して処理する排ガス処
    理系とを備えることを特徴とする放射性金属廃棄物の除
    染装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20040036977A (ko) * 2002-10-25 2004-05-04 한국수력원자력 주식회사 방사성 금속폐기물 표면오염 제거용 전해제염장치 및 방법
KR100444844B1 (ko) * 2001-05-31 2004-08-18 대한원자력산업 주식회사 전해연마를 이용한 방사능 오염 금속류 오염 제거장치
RU2723635C1 (ru) * 2019-11-08 2020-06-17 Общество с ограниченной ответственностью «Александра-Плюс» (RU) Способ локальной дезактивации металлических поверхностей с трудноудаляемыми радиоактивными загрязнениями

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