JPH06235444A - チエン式遊星差動減速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は振動が少なく且つ伝動力の大きな減
速機を提供することを目的とする。 【構成】 ケーシングに回転可能に支持された入力軸
と、入力軸の内端に一体的に形成された偏心軸と、偏心
軸に回転可能に支持されその同一円周上に複数の円孔を
設けた遊星スプロケットと、遊星スプロケットの両側で
入力軸と同芯にケーシング内部に固定された２個の同一
歯数の固定スプロケットと、遊星スプロケットに中央の
１列を巻掛け固定スプロケットに外側の２列を巻掛けた
ループ状のローラチエンと、入力軸と同一の軸線上でケ
ーシングに回転可能に支持された出力軸と、出力軸の内
端に一体的に形成された円盤と、円盤に突設され遊星ス
プロケットの複数の円孔に遊嵌する複数の伝動ピンとを
具えたチエン式遊星差動減速機。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、伝達動力が大きく且つ
高減速比が得られる、入力軸と出力軸とが同一軸線上に
配置されている形式の減速機に関する。

【０００２】

【従来の技術】特開昭５１−１４６６６２号公報に記載
されている技術を図３、図４について説明する。図にお
いて、１は電動機等に直結された高速回転の原動軸、２
は原動軸１と同心的にケーシング３にベアリング４によ
って支承された従動軸で、原動軸１の先端にはキー５に
よって偏心体６が固着されている。偏心体６は偏心輪６
ａと偏心輪６ｂが位相を１８０°ずらせて並設されてお
り、偏心輪６ａにはベアリング７ａを介してスプロケッ
ト８ａを、偏心輪６ｂにはベアリング７ｂを介してスプ
ロケット８ｂを夫れ夫れ回転自在に取付ける。９ａ、９
ｂはケーシング３内面に固定環１０をボルト１１で挟止
することによって張着した標準ローラチエンである。ス
プロケット８ａ、８ｂの歯数と標準ローラチエン９ａ、
９ｂの連接されたリンク数には１乃至数個の差があっ
て、図示実施例ではスプロケット８ａ、８ｂの歯数が３
０、標準ローラチエン９ａ、９ｂのリンク数が３１であ
る。

【０００３】そしてスプロケット８ａ、８ｂはＪＩＳ規
格等に従うホブカッタで生産し、外径をピッチ円直径程
度とした修正歯にすることで標準ローラチエン９ａ、９
ｂに内接して噛合するようにしている。ここでピッチ円
直径程度とはスプロケットの歯数と標準ローラチエンの
リンク数の差によってこの差が小さい場合には歯先干渉
が起こり易いためスプロケットの歯先をピッチ円直径よ
り小径に切断するものであるが、この差が大きい場合に
はピッチ円直径より大径となる事もあり得る。またスプ
ロケット８ａ、８ｂは同心円上等ピッチに円孔１２ａ、
１２ｂが開設されており、従動軸２の先端に一体に形成
された円盤１３に伝動ピン１４を同心円上等ピッチに突
設し、前記円孔１２ａ、１２ｂにこの伝動ピン１４を遊
嵌させる。伝動ピン１４には中空筒１４′が回転自在に
装着されており、円孔１２ａ、１２ｂの内側面を軽抵抗
で摺動するようにしている。

【０００４】上述の如く構成されたチエン式遊星差動減
速機は、原動軸１が回転すると偏心体６の偏心回転運動
に準じてスプロケット８ａ、８ｂが標準ローラチエン９
ａ、９ｂの内側を偏心運動（公転）と回転運動（自転）
の合成運動を行い、この偏心運動は伝動ピン１４が円孔
１２ａ、１２ｂに十分な遊び即ち円孔１２ａ、１２ｂの
内径が伝動ピン１４の直径に偏心量の２倍をプラスした
寸法をもって貫挿されていることから従動軸２に伝達さ
れず、回転（自転）だけが伝動ピン１４を介して従動軸
２に出力される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術には次
のような問題点がある。ローラチエンと遊星スプロケッ
トとの同時噛合い歯数がスプロケット歯数の２０％以下
と少なく、動力伝達能力が小さい。偏心体でスプロケッ
トを偏心回転させるとアンバランスが発生し振動の原因
になるので、１８０°位相のずれたスプロケット２個で
バランスさせ回転の安定化を図っているが、軸の長手方
向のアンバランスが残り、モーメント振動が生ずる。

【０００６】本発明は、上記の従来技術における問題点
を解消し、振動が少なく且つ伝達動力の大きな減速機を
提供することを目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】入力軸、出力軸等に固定
される各スプロケットに対し、同時噛合歯数が大きくな
るように、ローラチエンの巻掛け角度を増加した構成と
する。即ち、入力軸に固着された偏心軸にベアリングを
介して回転自在に取り付けられ、回転軸を中心とした円
周上に、等ピッチに開設した複数の円孔を有する遊星ス
プロケットと、前記遊星スプロケットの両側に、入力軸
と同芯にケーシングに固着されている２個の同一歯数の
固定スプロケットと、前記遊星スプロケットに中央の１
列を、前記２個の固定スプロケットに外側の２列を巻掛
けて噛合い、張った状態としてある３列ローラチエン
と、前記入力軸の中心線の延長線上に配置され、前記遊
星スプロケットの等ピッチに開設した複数の円孔に遊嵌
することのできる複数の伝動ピンを回転軸心の同一円周
上等ピッチに配置して取付けてある出力軸と、によりチ
エン式遊星差動減速機を構成する。

【０００８】また、入力軸（原動軸）に遊星スプロケッ
トによる偏心重量とバランスし、且つモーメントを生じ
ないようなバランスウェイトを設ける。即ち、遊星スプ
ロケットを挟んで、前記入力軸の偏心軸の両端に１対の
バランスウェイトを固設し、前記偏心軸と遊星スプロケ
ットの回転によって生ずるアンバランスを平衡させる。

【０００９】

【作用】入力軸が回転し同軸に固着された偏心軸が偏心
回転をすると、遊星スプロケットは３列のローラチエン
と噛合いながら偏心運動（公転）と回転運動（自転）の
合成運動を行う。この偏心運動は出力軸に取付けてある
伝動ピンに伝達されず、遊星スプロケットの回転運動
（自転）だけが前記伝動ピンを介して出力軸に伝達され
る。

【００１０】偏心回転によるアンバランスは、遊星スプ
ロケットを挟んで入力軸に取付けられた１対のバランス
ウェイトによってバランスする。

【００１１】

【実施例】本発明の実施例を図１、図２について説明す
る。図において、２１は３列ローラチエン、２２、２
２′は固定スプロケット（歯数：Ｔ₁ ）、２３は遊星ス
プロケット（歯数：Ｔ₂ ）、２３ａは遊星スプロケット
の円孔、２４は入力軸、２４ａは入力軸の偏心軸、２５
ａ、２５ｂはバランスウエイト、２６は伝動ピン、２７
は出力軸、２８は偏心軸端部の止板、２９は偏心軸と遊
星スプロケットの間のベアリング、３０は出力軸に固定
した円盤、３１は伝動ピンに嵌装した中空環、３３及び
３４は入力側及び出力側のケーシング、３５は入力軸の
ベアリング、３６は出力軸のベアリングである。

【００１２】入力軸２４はケーシング３３にベアリング
３５を介して回転自在に取付けられ、入力軸２４の内端
に一体的に形成された偏心軸２４ａ（偏心量は図１にお
いてｅで示す）にはベアリング２９を介して遊星スプロ
ケット２３が回転自在に取り付けられ、偏心軸２４ａの
端部で止板２８およびボルトによって止められている。
遊星スプロケット２３の回転軸を中心とした円周上に、
等ピッチに複数の円孔２３ａが設けられている。円孔２
３ａの直径は後述する伝動ピン２６に装着される中空環
３１の直径に偏心量ｅの２倍を加えた寸法となってい
る。遊星スプロケット２３の両側に、２個の同一歯数の
固定スプロケット２２、２２′が入力軸２４と同芯に、
ケーシング３３及び、ケーシング３４に固着され、３列
ローラチエン２１の中央の１列が遊星スプロケット２３
に噛合い、外側の２列が２個の固定スプロケット２２、
２２′に噛合うように、巻掛けて張った状態としてあ
る。

【００１３】出力軸２７は、ケーシング３４にベアリン
グ３６を介して回転自在に支えられ、入力軸２４の中心
線の延長線上に配置されている。出力軸２７には円盤３
０が一体に成形されており、この円盤３０に、遊星スプ
ロケット２３の複数の円孔２３ａに遊嵌することのでき
る複数の伝動ピン２６を、出力軸２７の回転軸の同一円
周（円孔２３ａの中心が位置する円周と同じ寸法の）上
に円孔２３ａと同一ピッチで配置して取付けてある。伝
動ピン２６には中空環３１が回転自在に装着され、円孔
２３ａの内側を軽抵抗で摺動できるようにしている。

【００１４】また、入力軸２４に、遊星スプロケット２
３を挟んで、前記入力軸２４の偏心軸２４ａの両端に１
対のバランスウェイト２５ａ、２５ｂを固設し、前記偏
心軸２４ａと遊星スプロケット２３の回転によって生じ
るアンバランスを平衡させる機能を設けている。次に、
本装置の作用を説明する。

【００１５】入力軸２４が回転し、同軸に固着された偏
心軸２４ａが偏心回転をすると、遊星スプロケット２３
は３列のローラチエン２１と噛合いながら偏心運動（公
転）と回転運動（自転）の合成運動を行う。この偏心運
動は、伝動ピン２６が円孔２３ａに対して十分な遊び、
即ち円孔２３ａの内径は伝動ピン２６に装着されている
中空環３１の直径に偏心量ｅの２倍を加えた寸法として
あることから、出力軸２７に取付けてある伝動ピン２６
に伝達されず、遊星スプロケット２３の回転運動（自
転）だけが前記伝動ピン２６を介して出力軸２７に伝達
される。

【００１６】固定スプロケット２２の歯数をＴ₁ 遊星スプロケット２３の歯数をＴ₂ とすると、減速比Ｒ（出力軸２７の回転数／入力軸２４
の回転数）は、 Ｒ＝（Ｔ₁ −Ｔ₂ ）／Ｔ₁ となる。

【００１７】固定スプロケット２２、２２′の歯数Ｔ₁
と遊星スプロケット２３の歯数Ｔ₂の差Ｔ₁ −Ｔ₂ が小
さいとき、即ち、大きく減速する場合には、遊星スプロ
ケット２３に噛合うローラチエンの同時噛合歯数は、遊
星スプロケット歯数Ｔ₂ の５０％以上となり、また固定
スプロケット２２、２２′に噛合うローラチエンの同時
噛合歯数は、固定スプロケット歯数Ｔ₁ の４０％以上と
なり、しかも２重になっているので、従来の同一サイズ
の同様な減速比のチエン式遊星差動減速機に比べ、倍以
上の動力伝達が可能である。

【００１８】偏心回転によるアンバランスは、入力軸２
４の内端に取付けられたバランスウェイト２５ａ、２５
ｂによって平衡する。

【００１９】

【発明の効果】本発明によるチエン式遊星差動減速機
は、ケーシングに回転可能に支持された入力軸と、前記
入力軸の内端に一体的に形成された偏心軸と、前記偏心
軸に回転可能に支持され同偏心軸を中心とする円周上に
複数の円孔を設けた遊星スプロケットと、前記遊星スプ
ロケットの両側で入力軸と同芯にケーシング内部に固定
された２個の同一歯数の固定スプロケットと、前記遊星
スプロケットに中央の１列を巻掛け前記２個の固定スプ
ロケットに外側の２列を巻掛けたループ状のローラチエ
ンと、前記入力軸と同一の軸線上でケーシングに回転可
能に支持された出力軸と、前記出力軸の内端に一体的に
形成された円盤と、前記円盤に突設され前記遊星スプロ
ケットの複数の円孔に遊嵌する複数の伝動ピンとを具え
たことにより、次の効果を有する。

【００２０】固定スプロケットの歯数と遊星スプロケッ
トの歯数の差が小さいとき、即ち、減速比が大きい時に
は、遊星スプロケットに噛合うローラチエンの同時噛合
歯数は遊星スプロケット歯数の５０％以上となり、また
固定スプロケットに噛合うローラチエンの同時噛合歯数
は固定スプロケット歯数の４０％以上となり、しかも２
重になっているので、従来の同一サイズの同様な減速比
のチエン式遊星差動減速機に比べ、倍以上の動力伝達が
可能である。

【００２１】１段で大きな減速比が得られ、且つ内歯歯
車を使用せず、また標準の３列ローラチエンを使用でき
るので、安価な減速機が得られる。また本発明は、上記
のチエン式遊星差動減速機において、前記入力軸の内端
で偏心軸に対向する位置に且つ遊星スプロケットの両側
に配置された１対のバランスウェイトとを具えたことに
より、次の効果を有する。

【００２２】偏心軸及び遊星スプロケット等の偏心回転
によるアンバランスは、入力軸に取付けられたバランス
ウェイトによって平衡するので、入力軸の回転が高速で
あっても振動が少ない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係るチエン式遊星差動減速機
の側断面図である。

【図２】図１のＢ−Ｂ断面矢視図である。

【図３】従来のチエン式遊星差動減速機の側断面図であ
る。

【図４】図３のＡ−Ａ断面矢視図である。

【符号の説明】

２１ ３列ローラチエン ２２ 固定スプロケット ２２′ 固定スプロケット ２３ 遊星スプロケット ２３ａ 円孔 ２４ 入力軸 ２４ａ 偏心軸 ２５ａ バランスウェイト ２５ｂ バランスウェイト ２６ 伝動ピン ２７ 出力軸 ３３ ケーシング ３４ ケーシング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケーシングに回転可能に支持された入力
   軸と、前記入力軸の内端に一体的に形成された偏心軸
   と、前記偏心軸に回転可能に支持され同偏心軸を中心と
   する円周上に複数の円孔を設けた遊星スプロケットと、
   前記遊星スプロケットの両側で入力軸と同芯にケーシン
   グ内部に固定された２個の同一歯数の固定スプロケット
   と、前記遊星スプロケットに中央の１列を巻掛け前記２
   個の固定スプロケットに外側の２列を巻掛けたループ状
   のローラチエンと、前記入力軸と同一の軸線上でケーシ
   ングに回転可能に支持された出力軸と、前記出力軸の内
   端に一体的に形成された円盤と、前記円盤に突設され前
   記遊星スプロケットの複数の円孔に遊嵌する複数の伝動
   ピンと、前記入力軸の内端で偏心軸に対向する位置に且
   つ遊星スプロケットの両側に配置された１対のバランス
   ウエイトとを具えたことを特徴とするチエン式遊星差動
   減速機。