JPH0614168B2 - 放射線画像の周波数処理方法および装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （発明の分野） 本発明は、医療用診断に用いる放射線画像の周波数処理
方法および装置、さらに詳しくは、放射線画像の診断性
能を向上させるための周波数処理においてノイズを低減
させる方法および装置に関するものである。

ここで周波数処理とは、例えば特開昭５５−１６３４７
２号、特開昭５５−８７９５３号等に開示されたボケマ
スク処理等の周波数強調処理を意味するものである。

（発明の技術的背景） 上記のような周波数処理は、放射線画像の診断性能を向
上させるために行なわれるものであるが、この周波数処
理には次のような問題がある。すなわち、低線量の放射
線を照射することによって得られた放射線画像情報に
は、放射線の量子ノイズが目立ち、これをそのまま周波
数強調すると、ノイズを強調したざらざらした感じの画
像となり、診断の妨げとなるという難点がある。

周波数処理における強調度は、撮影部位、撮影方法（造
影、断層等）等に応じて外部入力により例えばマニュア
ルで設定されるものであるが、これでは上記の放射線量
の高低に応じて変化するノイズの影響に対処できないた
め、この点の改良が望まれるところである。

（発明の目的） 本発明は、上記ノイズの問題に鑑み、照射放射線量が低
く、ノイズが目立つときに、このノイズが目立たないよ
うに周波数処理をするようにした放射線画像の周波数処
理方法および装置を提供することを目的とするものであ
る。

（発明の構成） 本発明は、放射線画像情報の周波数処理において、周波
数処理における強調度を、被写体撮影時の照射放射線量
が低いときに小さくするように補正することを特徴とす
るものである。

すなわち、照射放射線量が低く、量子ノイズが目立つと
きには周波数処理の強調度を小さく抑え、診断性能の低
下を防ぐようにしたものである。

ここで放射線量が低いときに強調度を小さくすること
は、相対的に線量が低目のときに強調度を小さくするよ
う補正することを意味し、したがって相対的に線量が高
くなれば強調度は大きくされるものである。線量が高い
ときには、放射線の量子ノイズは相対的に小さくなって
目立たなくなるから、周波数強調は大きくてもよい。こ
の場合は、むしろ、周波数強調は大きい程、診断性能向
上の点から望ましい。

放射線量を検出する方法としては、撮影時に放射線源の
管電圧および管電流、照射時間、焦点−検出器間距離な
どの情報から線量を算出する方法、あるいは照射線量を
測定する方法が採用される。また、一旦記録された放射
線画像を読み出して電気的画像信号に変え、周波数処理
に供する際、その信号のレベルを検出することにより放
射線量を検出することも可能である。

なお、本発明の周波数処理は、放射線画像を一旦電気信
号に変換して画像処理を施すシステムであれば、いかな
るシステムにも適用することができるが、特に低線量で
も診断性能の高い放射線画像を得ることができる蓄積性
螢光体シートを使用した放射線画像情報記録再生システ
ム（例えば特開昭５５−１２４２９号）において効果が
大きい。すなわち、低線量のときに特に大きくなる量子
ノイズの視覚的な低減が実現できるからである。

また、上記蓄積性螢光体シートを用いたシステムでは、
読取りに際して予め比較的低いレベルの励起光で蓄積性
螢光体シートを走査して画像情報の概略を読み取り（こ
れを「先読み」という）、次いでこの先読みにより得ら
れた情報に基づいて先読みに用いられた励起光よりも高
いレベルの励起光による画像情報の詳細な読取り（これ
を「本読み」という）を行なう２段階の読取りを行なう
ことが提案されているが、（例えば特開昭５８−６７２
４０号、同５８−６７２４３号、同５８−６７２４４
号）、この場合、先読みにより得られた情報から照射線
量を容易に知ることができる。もちろん、本読みにより
得られた情報から照射線量を知り、これに基づいて上記
補正をすることもできる。

（発明の効果） 本発明の周波数処理方法あるいは装置によれば、上記の
ように被写体撮影時の照射放射線量が低く、量子ノイズ
が目立つときに周波数強調度が小さくされるので、ノイ
ズの強調は抑えられ、常に診断上見やすい画像すなわち
診断性能の良好な放射線画像を得ることができる。

なお、照射線量が高くノイズの小さいときや、複数画像
を重ねてノイズを小さくしたときは、周波数処理の強調
度を大きくして診断性能をさらに向上させることができ
る。

（発明の実施態様） 以下、図面によって、本発明の方法を実施した放射線画
像情報記録再生システムの例を説明する。特に、以下の
実施態様では、蓄積性螢光体シートを利用し、先読みと
本読みの２段階の読取りを行なう放射線画像情報記録再
生システムに本発明の周波数処理を応用した例について
説明する。

第１図は、周波数処理における周波数を応答の関係を示
すグラフで、ピークＰの横方向の位置すなわち最大の強
調を施す周波数（パラメータ）とピークＰの高さすな
わち強調度（パラメータβ）を変化させて周波数処理の
条件を変化させることを示している。パラメータβは、
胸、腹…等の撮影部位や、造影、断層撮影…等の撮影方
法に応じて適切な大きさに基本的に決められるが、本発
明ではさらに照射放射線量によって補正される。

第２Ａ図はその線量によってパラメータβが変えられる
例を示すグラフで、線量が通常の大きさの範囲Ｒ。にあ
るときは、強調度パラメータβは前記基本的に決められ
た適切な大きさβ。とし、線量が通常の大きさより低い
範囲Ｒ_Ｌにあるときは強調度パラメータβは線量が小さ
くなるにしたがって小さくし、逆に高い範囲Ｒ_Ｈにある
ときは線量とともに大きくなるようにしている。これに
よると、量子ノイズの大きい低線量のときにノイズが目
立たないようにするとともに量子ノイズの小さい高線量
のときは周波数強調度を大きくし、診断性能を積極的に
向上させることができる。

周波数強調のパラメータβは、線量の増加にしたがって
大きくなるような変化をするものであればよく（但し、
線量によって変化しない部分を含んでいてもよい）、第
２Ａ図のような変化に限られるものではない。例えば、
第２Ｂ図のような緩やかな曲線状の変化をするものでも
よいし、第２Ｃ図のような直線状の変化をするものでも
よい。第２Ｂ、２Ｃ図、いずれもβは線量の単調増加関
数である。

ここでβとは、例えば特開昭５５−８７９５３号および
特開昭５５−１６３４７２号に開示されたボケマスク処
理における式 Ｓ′＝Ｓｏｒｇ＋β（Ｓｏｒｇ−Ｓｕｓ） （Ｓ′：周波数処理された信号、Ｓｏｒｇ：読取出力信
号、Ｓｕｓ：ボケマスク信号、β：強調度）のβに相当
するものである。

上記のような、パラメータβの補正を照射放射線量に応
じて行なうための装置上の構成を第３図に示す。

人体等の被写体１にＸ線源等の放射線源２からの放射線
２ａを照射し、その被写体１の放射線透過像を蓄積性螢
光体シート３に蓄積記録する。このシート３に比較的低
レベル（後述する本読みに使用する励起光８ａより低い
エネルギー）の励起光４ａをレーザ光源等の励起光源４
により照射し、その励起光４ａの照射（走査）により発
生した輝尽発光光５を光電読取手段６により読み取り
（先読み）、その先読みの出力６ａにより得られた蓄積
画像情報の概略により本読み用の光電読取手段７の読取
ゲイン、スケールファクタ等の読取条件を設定する。本
読みは、本読み用の励起光源８から発生される上記先読
みの励起光４ａよりも高いレベルの励起光８ａによりシ
ート３を走査することにより行なわれる。

本読み用の光源読取手段７から出力された画像情報は画
像処理部１０に入力され、ここでその後再生機１１によ
り再生される画像１２の診断性能向上のため、周波数処
理、階調処理等の各種画像処理が施される。

先読み用の光電読取手段６の出力６ａは、この画像処理
部１０の周波数処理部１０Ａにも入力され、第２Ａ、２
Ｂ、２Ｃ図に示したような照射線量に応じたパラメータ
βの設定が行なわる。すなわち、光電読取手段６の出力
６ａは、シート３に蓄積記録されている放射線エネルギ
ーのレベルを示すものであり、これは照射放射線の線量
に対応しているものであるから、この出力６ａは第２
Ａ、２Ｂ、２Ｃ図の横軸の値を示すものとなり、周波数
処理部１０Ａ内には、第２Ａ、２Ｂ、２Ｃ図等のグラフ
に対応するテーブルを内蔵させておけばこの出力６ａか
ら周波数処理の強調度（パラメータβ）を設定すること
ができる。

なお、この照射線量に関する情報は先読み出力６ａから
でなくても得ることができ、例えば放射線源２から直接
（勿論放射線源２の駆動用操作盤を含む）、図中に２点
鎖線２Ａで示すように入力するようにしてもよい。

なお、ここで先読みの際に用いられる励起光が本読みに
用いられる励起光よりも低レベルであるとは、先読みの
際に蓄積性螢光体シートが単位面積当りに受ける励起光
の有効エネルギーが本読みの際のそれよりも小さいこと
を意味する。先読みの励起光を本読みの励起光よりも低
レベルとする方法として、レーザ光源等の励起光光源の
出力を小とする方法、光源より放射された励起光をその
光路においてＮＤフィルタ、ＡＯＭ等によって減衰させ
る方法、および先読み用の光源と本読み用の光源とを別
個に設け、前者の出力を後者の出力よりも小とする方法
が挙げられ、さらには励起光のビーム径を大とする方
法、励起光の走査速度を大とする方法、蓄積性螢光体シ
ートの移送速度を大とする方法等が挙げられる。

先読みと本読みの関係等、先読みについての詳細は、例
えば特開昭５８−６７２４０号、特開昭５８−６７２４
３号、特開昭５８−６７２４４号等に開示されている。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の対象としている周波数処理の周波数と
応答の関係を示すグラフ、第２Ａ図、第２Ｂ図、第２Ｃ
図は本発明による周波数処理における照射線量と強調度
（β）との関係の各主実施例を示すグラフ、第３図は本
発明の方法を実施する装置の概要を示すシステム全体図
である。 １…被写体、２…放射線源 ３…蓄積性螢光体 ４…先読み用励起光源 ６…先読み用光電読取手段 ７…本読み用光電読取手段 ８…本読み用励起光源 １０Ａ…周波数処理部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 弘 神奈川県足柄上郡開成町宮台798番地 富 士写真フイルム株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−87953（ＪＰ，Ａ)

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】被写体を透過した放射線により放射線画像
   を形成し、この放射線画像を光電的に読み取って得た画
   像信号を所定の強調度に従って周波数処理する放射線画
   像情報の周波数処理方法において、前記強調度を、前記
   放射線の線量に応じて、該線量が低い程前記所定の強調
   度に対して小さくするように補正することを特徴とする
   放射線画像の周波数処理方法。
2. 【請求項２】前記放射線画像の形成を、被写体を透過し
   た放射線を蓄積性螢光体シートに蓄積記録せしめること
   により行い、前記光電的読取りを、前記蓄積記録された
   放射線画像に励起光を照射することにより発光される輝
   尽発光光を光電的に読み取ることによって行なうことを
   特徴とする特許請求の範囲第１項記載の放射線画像の周
   波数処理方法。
3. 【請求項３】前記放射線画像の光電的読取りを、励起光
   により前記蓄積性螢光体シートを走査して読取りを行な
   う前記画像信号を得るための本読みと、この本読みに先
   立って該本読みの励起光よりも低レベルの励起光により
   該シートを走査して読取りを行なう前記蓄積記録された
   放射線画像の概略を知るための先読みの２段階の読取り
   により行ない、先読みの読取り情報に基づいて本読みの
   読取条件を決定することを特徴とする特許請求の範囲第
   ２項記載の放射線画像の周波数処理方法。
4. 【請求項４】前記放射線の線量を、前記先読みによって
   得られた情報から得ることを特徴とする特許請求の範囲
   第３項記載の放射線画像の周波数処理方法。
5. 【請求項５】前記放射線の線量を、前記光電的読取りに
   よって得られた情報から得ることを特徴とする特許請求
   の範囲第１項記載の放射線画像の周波数処理方法。
6. 【請求項６】前記放射線の線量を、被写体に放射線を照
   射するときに測定することによって得ることを特徴とす
   る特許請求の範囲第１項記載の放射線画像の周波数処理
   方法。
7. 【請求項７】被写体を透過した放射線により放射線画像
   を形成する放射線画像形成手段、この放射線画像を光電
   的に読み取り画像信号を得る読取手段、この読取手段に
   より得られた画像信号を所定の強調度に従って周波数処
   理する周波数処理手段、この周波数処理における前記強
   調度を前記放射線の線量の高低に従って線量が小さい程
   前記所定の強調度に対して小さくするよう補正する強調
   度補正手段、および前記放射線の線量を検出し、この検
   出された線量を前記補正手段に入力する線量検出手段か
   らなる放射線画像の周波数処理装置。
8. 【請求項８】前記線量検出手段が、前記読取手段の出力
   から前記放射線の線量を検出するものであることを特徴
   とする特許請求の範囲第７項記載の放射線画像の周波数
   処理装置。