JPH057932U - 直接噴射式デイーゼルエンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 直接噴射式ディーゼルエンジンにおいて、ピ
ストン燃焼室18内の空気量の増加を図る。 【構成】 環状発泡金属22が、上死点でシリンダヘッド
10に当接するように、ピストン14の頂面20から隆起して
ピストン14に固定され、ピストン燃焼室18の開口を放射
方向外側から環状に包囲している。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、自動車等に搭載される直接噴射式ディーゼルエンジンに係り、詳 しくは燃焼室の隙間容積（デッドホリューム）を低減することができる直接噴射 式ディーゼルエンジンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、ピストン燃焼室が、ピストンの頂 面に開口するように、ピストンに形成され、ピストンの頂面は、シリンダヘッド との干渉を回避するため、シリンダヘッドとの間にデッドスペースを形成してい る。そして、このデッドスペースは、ピストンの頂面の周縁部を介してピストン のトップリングより上でピストンの周部の外側の環状空間部分（以下、「トップ ランドデッドボリューム」という。）へ連通している。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

従来の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、隙間容積が大きいため、黒煙の発 生量が増大している。また、上死点時にピストン燃焼室内の空気がピストンの頂 面の上のデッドスペースからピストンの周面との間の環状間隙を通って、トップ リングの方へ流れ、その分、ピストン燃焼室の空気が減少し、白煙及びＬＯＣの 増大につながっている。

【０００４】 さらに、ピストンの頂面の上のデッドスペースにおける一部の混合気が、ピス トンの頂面の周縁を回り込んで、トップランドデッドボリュームへ流れ込む結果 、圧縮比が減少し、燃料消費率の増大の原因になっているとともに、逆に、エン ジンオイルがトップランドデッドボリュームからピストンの頂面の上のデッドス ペースの方へ漏れ、エンジンオイルの消費量の増大及び排気ガス中の有害粒子の 増大につながっている。

【０００５】 請求項１の考案の目的は、ピストン燃焼室内の空気量の増加に寄与することが できる直接噴射式ディーゼルエンジンを提供することである。 請求項２の考案の目的は、トップランドデッドボリュームへの混合気の流れ込 み防止による圧縮比の増大を図り、かつオイル上がりを抑制することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

請求項１の前提となる直接噴射式ディーゼルエンジンでは、ピストン燃焼室は 、ピストンの頂面に開口するように、ピストンに形成されている。そして、請求 項１の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、環状発泡金属は、上死点でシリンダ ヘッドに当接するように、ピストンの頂面から隆起してピストンに固定され、ピ ストン燃焼室の開口を放射方向外側から環状に包囲している。

【０００７】 請求項２の前提となる直接噴射式ディーゼルエンジンでは、ピストンがライナ 内を往復動し、ピストン燃焼室が、ピストンの頂面に開口するように、ピストン に形成されている。そして、請求項２の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、環 状発泡金属が、ライナとシリンダヘッドとの間に挾持され、上死点時のピストン の頂面にピストンの軸方向へ当接する個所まで、ピストンの中心線の方へ張り出 している。

【０００８】

【作用】

請求項１の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、直接噴射式ディーゼルエンジ ンの運転に伴って、環状発泡金属は、上死点においてシリンダヘッドに当接し、 塑性変形する。また、環状発泡金属は、煤により汚され、内部の泡部を埋められ 、内部への空気の侵入を阻止し、さらに、内部を空気が通過するのを阻止するよ うになる。こうして、上死点時では、環状発泡金属は、隙間容積を埋めて、隙間 容積を低減する。さらに、環状発泡金属は、隆起してピストンの頂面におけるピ ストン燃焼室の開口の放射方向外側を包囲しているので、上死点時では、ピスト ン燃焼室内の空気が、障壁としての環状発泡金属により阻まれて、トップランド デッドボリュームの方へ流れるのを阻止されて、環状発泡金属の内側に留まる。

【０００９】 請求項２の直接噴射式ディーゼルエンジンでは、運転に伴って、環状発泡金属 は煤により内部の泡部を埋められ、内部への空気の侵入を阻止し、さらに、内部 を空気が通過するのを阻止するようになる。一方、ピストンは、上死点時に、頂 面の周縁部において軸方向へ環状発泡金属に当接する。これにより、ピストンの 周部においてトップリングより上側の環状空間としてのトップランドデッドボリ ュームと、ピストンの頂面の上のデッドスペースとの連通が断たれる。混合気は 、環状発泡金属により阻まれて、トップランドデッドボリュームへの流れ込みを 阻止されるとともに、トップランドデッドボリュームのエンジンオイルはピスト ンの頂面の上のデッドスペース及びピストン燃焼室へ漏れるのを阻止される。

【００１０】

【実施例】

以下、この考案を図面の実施例について説明する。 図１は直接噴射式ディーゼルエンジンの垂直断面図、図２はピストン14の平面 図である。シリンダヘッド10はシリンダブロック12の上に載置、固定され、ライ ナ13はシリンダブロック12のボアに嵌挿される。ピストン14は、周部にトップリ ング16等のピストンリングを装着され、これらピストンリングをライナ13に摺動 させつつ、往復動する。ピストン燃焼室18は、ピストン14の上部に形成され、ピ ストン14の頂面20に開口している。インジェクションノズル24は、先端を上死点 時のピストン14のピストン燃焼室18へ臨ませるように、シリンダヘッド10に装着 される。環状発泡金属22は、下部においてピストン14に埋設され、上死点時では シリンダヘッド10に当接するように、頂面20から隆起している。ピストン14への 環状発泡金属22の固定のために、ピストン14における環状発泡金属22の下端部の 嵌入部はあり溝21から成り、また、環状発泡金属22の下端部へ嵌入するピストン 14の環状突条はあり23となっており、環状発泡金属22は、後述の塑性変形により ピストン14のあり溝21及びあり23に強固に固定される。環状発泡金属22は、また 、頂面20においてピストン燃焼室18の開口を含む頂面20の中央側を放射方向外側 から包囲している。

【００１１】 図１及び図２の直接噴射式ディーゼルエンジンにおける作用について説明する 。 直接噴射式ディーゼルエンジンの運転に伴って、環状発泡金属22は、上死点に おいてシリンダヘッド10に当接し、塑性変形する。この塑性変形は、シリンダヘ ッド10への環状発泡金属22の当接を和らげるとともに、環状発泡金属22の下部に おけるピストン14との結合を強固にする。環状発泡金属22は、煤により汚され、 内部の泡部を埋められ、内部への空気の侵入を阻止し、さらに、内部を空気が通 過するのを阻止するようになる。こうして、上死点時では、環状発泡金属22は、 隙間容積を埋めて、隙間容積を低減する役割を果たす。さらに、環状発泡金属22 は、隆起してピストン14の頂面20におけるピストン燃焼室18の開口の放射方向外 側を包囲して、障壁を形成するので、上死点時では、ピストン燃焼室18内の空気 がライナ13とピストン14との間の環状間隙を通って、トップリング16の方へ逃げ るのを阻止する。

【００１２】 図３は別の直接噴射式ディーゼルエンジンの垂直断面図、図４は図３の直接噴 射式ディーゼルエンジンにおけるピストン14の上死点時の主要部の詳細図である 。図１及び図２と同一の要素については、同符号で指示して、説明は省略し、主 要点について説明する。この直接噴射式ディーゼルエンジンでは、図１及び図２ の環状発泡金属22の代わりに、環状発泡合金28が、ライナ13の上面とシリンダヘ ッド10の下面との間に挾持されて設けられる。環状発泡合金28は、例えば耐熱性 のＮｉ−Ｃｒ合金から成り、上死点時のピストン14の頂面20の周縁部にピストン 14の軸方向へ当接する位置までピストン14の中心線の方へ張り出している。ピス トン14の周部には、一番上側にトップリング16が、トップリング16より下側には さらに複数個のピストンリング26が嵌着され、これらトップリング16及びピスト ンリング26はピストン14の往復動に伴ってライナ13の内周を摺動する。トップラ ンドデッドボリューム30はトップリング16より上側においてピストン14の周部の 外側に形成される。

【００１３】 図３及び図４の実施例の作用について説明する。運転に伴って、環状発泡合金 28は煤により内部の泡部を埋められ、内部への空気の侵入を阻止し、さらに、内 部を空気が通過するのを阻止するようになる。一方、ピストン14は、上死点時に 、頂面20の周縁部において環状発泡合金28に当接する。これにより、トップラン ドデッドボリューム30と、頂面20の上のデッドスペースとの連通が断たれ、混合 気は、環状発泡合金28により阻まれて、トップランドデッドボリューム30への流 れ込みを阻止されるとともに、トップランドデッドボリューム30のエンジンオイ ルは頂面20の上のデッドスペースへ漏れるのを阻止される。

【００１４】

【考案の効果】

請求項１の考案では、環状発泡金属が、シリンダヘッドに当接自在にピストン の頂面に設けられ、シリンダヘッドとの当接により塑性変形するとともに、煤に より内部の泡部を埋められるので、隙間容積が低減して、圧縮比が増大し、白煙 の低減を図ることができる。また、環状発泡金属は、ピストンの頂面におけるピ ストン燃焼室の開口を放射方向外側から環状に包囲しているので、上死点時にピ ストン燃焼室内の空気がトップランドデッドボリュームの方へ逃げるのを防止し 、ピストン燃焼室における空気量の増大により白煙及びＬＯＣの低減を図ること ができる。

【００１５】 請求項２の考案では、環状発泡金属が、上死点時のピストンの頂面に当接され る位置まで、ライナとシリンダヘッドとの間からピストンの中心線の方へ張り出 し、煤により内部の泡部を埋められるようになっているので、ピストンの上死点 時では環状発泡金属によりピストンの頂面の上のデッドスペースとピストンの周 部のトップランドデッドボリュームとの連通が断たれ、トップランドデッドボリ ュームへの混合気の流れ込み及びピストンの頂面の上のデッドスペースへのエン ジンオイルの漏れが抑制される。この結果、圧縮比が増大して、燃料消費率の向 上が図られるとともに、エンジンオイルの消費の抑制及び排気ガス中の粒子の低 減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】直接噴射式ディーゼルエンジンの垂直断面図で
ある。

【図２】図１のピストンの平面図である。

【図３】別の直接噴射式ディーゼルエンジンの垂直断面
図である。

【図４】図３の直接噴射式ディーゼルエンジンにおける
ピストンの上死点時の主要部の詳細図である。

【符号の説明】

１０ シリンダヘッド １３ ライナ １４ ピストン １８ ピストン燃焼室 ２０ 頂面 ２２ 環状発泡金属 ２８ 環状発泡合金（環状発泡金属）

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストン燃焼室が、ピストンの頂面に開
   口するように、前記ピストンに形成されている直接噴射
   式ディーゼルエンジンにおいて、環状発泡金属が、上死
   点でシリンダヘッドに当接するように、前記ピストンの
   前記頂面から隆起して前記ピストンに固定され、前記ピ
   ストン燃焼室の開口を放射方向外側から環状に包囲して
   いることを特徴とする直接噴射式ディーゼルエンジン。
2. 【請求項２】 ピストンがライナ内を往復動し、ピスト
   ン燃焼室が、前記ピストンの頂面に開口するように、前
   記ピストンに形成されている直接噴射式ディーゼルエン
   ジンにおいて、環状発泡金属が、前記ライナとシリンダ
   ヘッドとの間に挾持され、上死点時の前記ピストンの頂
   面に前記ピストンの軸方向へ当接する個所まで、前記ピ
   ストンの中心線の方へ張り出していることを特徴とする
   直接噴射式ディーゼルエンジン。