JPH05345506A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低燃費用空気入りラジアルタイヤの耐サイド
カット性を向上させることを目的とする。 【構成】トレッド部ｃ、サイドウォール部ｄ及びビード
部ｅからなり、これらの各部につきトレッド部ｃの中央
円周を含む平面に対し実質上直交するコード配列のラジ
アルカーカス５が設けられている。またトレッド部ｃに
ついては、前記平面に対し比較的小さい鋭角の相互交差
コード配列になる少数層積層構造のベルト４を備えてい
て、ラジアルカーカス５の全内面にはインナーライナ６
を備えている。また、トレッドとベースゴムのキャップ
アンドベース構造になっていて、このベースゴムは低発
熱ゴム組成のものを使用している。サイドウォール部ｄ
は、その厚みが１．０〜２．５ｍｍの薄いゴム外皮でで
きていて、このサイドウォール下部７ｂにはさらに、ゴ
ム外皮の肉厚を肥厚化したリムガードを備えている。な
お、インナーライナは気密性に優れた全ブロムブチルゴ
ムを使用し、その厚さを０．２〜０．７ｍｍとした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】近未来における自動車の開発計画
の一環として、省エネルギー化を目的とした大幅な低燃
費性の改良が現在進められている。この改良は、空気入
りタイヤについても例外たり得ない。低燃費性を目指す
一つの手段として、空気入りタイヤの各部位をできるだ
け薄肉にし、軽量化する方法がある。しかし薄肉化によ
り、低燃費性は向上するものの、強度特性等は低下す
る。特にサイドウォール部は、一般にタイヤの他の部位
に比べて強度特性が低く、薄肉化によりさらに低下す
る。そこで本発明は、低燃費性と耐サイドカット性の双
方を向上させた軽量化空気入りラジアルタイヤに関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】軽量化空気入りタイヤは、低燃費性の向
上を主目的として開発が進められている。例えばタイヤ
のトレッド部は、転がり抵抗を小さくし低燃費性を向上
させるために、トレッドゴムとベースゴムの二層に分け
て役割を分担したキャップアンドベース構造にする場合
があるし、インナーライナについては、気密性に優れた
全ブロムブチルゴムを用いることにより、ゴム厚みを薄
くして軽量化する場合がある。またサイドウォール部に
おいても、ゴムの厚みをできるだけ薄肉にし軽量化を図
ることにより、あるいはゴムの損失正接を小さくした
り、タイヤの空気圧を高くしたりして転がり抵抗を低減
させることにより、低燃費性を向上させている。

【０００３】なお、サイドウォール部の改良に関して
は、リムフランジ部上端位置からタイヤの最大幅位置に
かけて平坦な環状面を設けることにより、刻印による鮮
明な文字表示ができるように工夫した実公昭６１−４６
００１号広報はあるが、タイヤの軽量化やそれによる低
燃費性の改善とは無関係であり、軽量化とサイドウォー
ル部の強度特性の両立を図ることに関する文献は見当た
らない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】サイドウォール部は、
一般にタイヤの他の部位に比べて強度が弱く、薄肉化に
よりさらに弱くなる。タイヤは、正常な使用状態を維持
すれば問題を生じない場合でも、タイヤの使用環境やタ
イヤの状態が変わることによって問題を生じることがあ
る。

【０００５】例えば、軽量化タイヤではサイドウォール
部のゴムを極力薄くするので、タイヤの空気圧が低くな
った状態での使用や、道路の縁石にサイドウォール部が
こすりつけられるかまたはタイヤが縁石に乗り上げるよ
うな場合には、図２（ｂ）に示すように、サイドウォー
ル部はタイヤのリム部と縁石とで挟みつけられて著しい
変形を生じ、時にはタイヤ外皮に外傷を受けることがあ
り、この傷は車両走行に伴い徐々に成長してタイヤの内
側に進行し、最終的にはカーカス層まで達し、これを構
成するカーカスプライのバーストを生じる原因になる。
この傷が小さいときでも走行に伴う繰り返し変形で内側
に進行し、タイヤを貫通して空気漏れを生じる憂いもあ
る。そこで本発明の課題は、低燃費用ラジアルタイヤの
耐カット性を改良することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】図１に本発明タイヤの断
面図を示すが 本発明タイヤは、トレッド部ｃ、サイド
ウォール部ｄ及びビード部ｅからなり、これらの各部に
つきトレッド部ｃの中央円周を含む平面に対し実質上直
交するコード配列のラジアルカーカス５による補強と、
トレッド部ｃについては該平面に対する比較的小さい鋭
角の相互交差コード配列になる少数層積層構造のベルト
４による補強を有するほか、ラジアルカーカス５の全内
面に沿うインナーライナ６を備える空気入りラジアルタ
イヤであり、以下の条件を満たしている。

【０００７】トレッド部ｃは、その接地幅がタイヤの最
大幅Ｗに対し０．５５〜０．７０倍で、好ましくは０．
６０〜０．６５倍であり、トレッド合計厚みＤがタイヤ
の断面高さに対し０．０５〜０．０８倍で、好ましくは
０．０６５〜０．０７５倍であり、ベースゴム３は、損
失正接が０．０２〜０．０７で、好ましくは０．０３〜
０．０５である。

【０００８】サイドウォール部ｄは、損失正接が０．０
２〜０．１５で、好ましくは０．０５〜０．０９であ
り、ラジアルカーカス５外面における法線方向厚みが
１．０〜２．５ｍｍで、好ましくは１．５〜２．２ｍｍ
の薄いゴム外皮で形成されている。またインナーライナ
６は、ラジアルカーカス５内面における法線方向の最小
厚みが０．２〜０．７ｍｍで、好ましくは０．３〜０．
４ｍｍの全ブロムブチルゴムからなる。

【０００９】またこのタイヤの特徴として、サイドウォ
ール部を便宜上、タイヤの最大幅位置を境にしてサイド
ウォール上部７ａとサイドウォール下部７ｂとに分けて
考えた場合、リム部９の直上に位置するサイドウォール
下方域から、タイヤの最大幅に相当する領域までの間に
わたるサイドウォール下部７ｂにゴム外皮の肉厚を肥厚
化したリムガードを備えている。このリムガードは、タ
イヤの最大幅位置寄りの外端で０．５〜２．０ｍｍの厚
みからサイドウォール部下方域寄りの内端にて１．０〜
４．０ｍｍの厚みまで漸次肥厚化している。

【００１０】

【作用】この空気入りラジアルタイヤは、サイドウォー
ル下部にリムガードを設けることにより、耐カット性を
向上することができる。

【００１１】ここでトレッド合計厚みＤを、タイヤ断面
高さＨに対して０．０５〜０．０８倍とするのは、０．
０５倍より小さい場合は、耐摩耗性、乗り心地性が悪く
なり、０．０８倍より大きい場合はタイヤの内部ロスや
重量が増加することにより燃費が悪化するからである。
トレッド接地幅をタイヤ最大幅Ｗに対して０．５５〜
０．８０倍とするのは、０．５５倍より小さい場合は、
操縦安定性や耐摩耗性が悪くなり、０．８０倍より大き
い場合は、重量増加により燃費性が悪化するからであ
る。ベースゴムの損失正接を０．０２〜０．０７にする
のは、０．０２より小さい場合は、耐久性が低下し、
０．０７より大きい場合は、燃費性が悪化するからであ
る。

【００１２】サイドウォールのゴム厚みを１．０〜２．
５ｍｍとするのは、１．０ｍｍより小さい場合は、耐カ
ット性が低下し、２．５ｍｍより大きい場合は燃費性が
悪化するからである。サイドウォールの損失正接を０．
０２〜０．１５とするのは、０．０２より小さい場合
は、耐久性が低下し、０．１５より大きい場合は燃費性
が悪化するからである。

【００１３】インナーライナのゴム厚みを０．２〜０．
７ｍｍとするのは、０．２ｍｍより薄い場合には、空気
漏れが起こりやすく、０．７ｍｍより厚い場合は、燃費
性が悪化するからである。また、インナーライナに全ブ
ロムブチルゴムを用いたのは、気密性に優れているから
である。

【００１４】リムガードは、タイヤの最大幅位置寄りの
外端で０．５〜２．０ｍｍの厚みｆ２からサイドウォー
ル部下方域寄りの内端にて１．０〜４．０ｍｍの厚みｆ
１まで漸次厚くしたのは、リムガードのサイドウォール
部下方域寄りをより厚肉にすることにより、サイドウォ
ールがリムと縁石とで挟まれたような状況等において、
サイドウォールの損傷を防ぐに有利だからであり、タイ
ヤの最大幅位置寄りは、燃費性を悪化させないためさほ
ど厚肉にはできないからである。

【００１５】

【実施例】以下に発明タイヤと比較タイヤを用いて低燃
費性と耐カット性の試験を行ったので説明する。 ◎供試タイヤ タイヤのサイズは１５５／６５Ｒ１２、リムサイズは４
1/2Ｊ×１２、タイヤ内圧は２．５ｋｇｆ／ｃｍ² と
し、ラジアルカーカスはそのコード配列角度をトレッド
の中央周線を含む平面に対し９０°とし、ＰＥＴ １０
００d/2 を使用した。またベルトは、１×４のスチール
コードを中央周線を含む平面に対し２０°の傾きで相互
交差コード配列になるように二層配置した。

【００１６】・発明タイヤ 図１に示すタイヤであって、トレッド接地幅を９５ｍ
ｍ、タイヤ最大幅Ｗを１５７ｍｍとし、この比を０．６
０５とするとともに、トレッド合計厚みＤを７ｍｍ、タ
イヤ断面高さＨを９８．３ｍｍとし、この比を０．０７
１とした。またベースゴム３の損失正接を０．０３とし
た。サイドウォールのゴム厚みを２．２ｍｍとし、その
損失正接を０．０７とした。また、リムガードのゴム厚
みは、リムガード下部ｆ１で２．０ｍｍ、リムガード上
部ｆ２で１．０ｍｍとした。インナーライナは、全ブロ
ムブチルゴムを用い、ゴム最小厚みを０．３ｍｍとし
た。

【００１７】・比較タイヤ トレッドのベースゴムの損失正接を０．０８、サイドウ
ォールの損失正接を０．１５、インナーライナのゴムを
クロロブチルゴムとし、その最小厚みを０．８ｍｍとし
てリムガードを備えていないことを除いて発明タイヤと
同一の構成を有するタイヤである。

【００１８】◎試験方法 低燃費性は、転がり抵抗を測定することにより評価し
た。転がり抵抗は、外径が１７０７．６ｍｍ、幅が３５
０ｍｍのスチール平滑面を有する回転ドラムを用い、３
００ｋｇｆの荷重の作用下で、０〜１８０ｋｍ／ｈの速
度で回転させて測定する方法、いわゆる惰行法により測
定した。耐カット性は、実車によりタイヤ内圧を徐々に
低下させて、特定の角鋼材（１１０ｍｍ×１１０ｍｍ×
１０００ｍｍ）に侵入速度１０ｋｍ／ｈ、進入角度２５
°で衝突させた場合のカットによる空気漏れが生じる内
圧を測定し、評価した。

【００１９】◎試験結果 上記試験の結果を表１に示す。なお、表中の数値は、転
がり抵抗試験では指数比表示となっていて数値が大きい
ほど低燃費性であることを示し、耐カット性ではバース
ト内圧を示していて数値が小さいほど優れていることを
示している。

【００２０】

【表１】

【００２１】この表から、本発明タイヤは、低燃費性
（転がり抵抗）および耐カット性のどちらの特性も従来
タイヤよりも優れていることが分かる。

【００２２】

【発明の効果】本発明によれば、タイヤ全体の軽量・薄
肉化を行い、しかも薄肉化したサイドウォール部をリム
ガードで補強することにより、低燃費で耐カット性に優
れた空気入りラジアルタイヤを供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の実施例を示すタイヤ幅方向断
面図である。

【図２】図２（ａ）は、正常時におけるタイヤのサイド
ウォール部の断面形状であり、同（ｂ）は、縁石に乗り
上げたときに大きく変形したタイヤのサイドウォール部
の断面形状である。

【符号の説明】

１ タイヤ ２ トレッド ３ ベースゴム ４ ベルト ５ ラジアルカーカス ６ インナーライナ 7a サイドウォール上部 7b サイドウォール下部 ８ ビード部 ９ リム部 10 縁石 ｃ トレッド部 ｄ サイドウォール部 ｅ ビード部 f1 リムガード下部 f2 リムガード上部 Ｄ トレッド合計厚み Ｈ タイヤ断面高さ Ｗ タイヤ最大幅

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トレッド部、サイドウォール部及びビード
   部からなり、これらの各部につきトレッド部の中央円周
   を含む平面に対し実質上直交するコード配列のラジアル
   カーカスによる補強と、トレッド部については該平面に
   対する比較的小さい鋭角の相互交差コード配列になる少
   数層積層構造のベルトによる補強を有するほか、ラジア
   ルカーカスの全内面に沿うインナーライナを備え、トレ
   ッド部は、タイヤの最大幅に対し０．５５〜０．７０倍
   の接地幅にて、タイヤの断面高さに対し０．０５〜０．
   ０８倍に相当する合計ゴム厚みのキャップアンドベース
   構造でそのベースゴムは損失正接が０．０２〜０．０７
   の範囲内の低発熱ゴム組成になり、サイドウォール部
   を、損失正接が０．０２〜０．１５でラジアルカーカス
   外面における法線方向厚みが１．０〜２．５ｍｍの薄い
   ゴム外皮、インナーライナをラジアルカーカス内面にお
   ける法線方向の最小厚みが０．２〜０．７ｍｍの全ブロ
   ムブチルゴムからなるものとした軽量化タイヤにおい
   て、このタイヤを車輪に組み立てて用いるリムのフラン
   ジ直上に位置することとなるサイドウォール部下方域か
   ら、タイヤの最大幅に相当する領域までの間にわたって
   ゴム外皮の肉厚を肥厚化したリムガードを備え、耐サイ
   ドカット性に優れることを特徴とする空気入りラジアル
   タイヤ。
2. 【請求項２】リムガードがタイヤの最大幅位置寄りの外
   端で０．５〜２．０ｍｍの厚みからサイドウォール部下
   方域寄りの内端にて１．０〜４．０ｍｍの厚みまで漸次
   肥厚化したものである請求項１に記載した空気入りラジ
   アルタイヤ。