JPH05163524A - 高温強度特性に優れる鉄骨建築用鋼材の製造方法 - Google Patents

高温強度特性に優れる鉄骨建築用鋼材の製造方法

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JPH05163524A
JPH05163524A JP32910391A JP32910391A JPH05163524A JP H05163524 A JPH05163524 A JP H05163524A JP 32910391 A JP32910391 A JP 32910391A JP 32910391 A JP32910391 A JP 32910391A JP H05163524 A JPH05163524 A JP H05163524A
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JP
Japan
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steel
strength
temperature
rolling
represented
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JP32910391A
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English (en)
Inventor
Yoshihiko Kamata
芳彦 鎌田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】高温での強度に優れ、溶接性にも優れた鉄骨建
築用鋼材の製造。 【構成】C:0.03〜0.15%、Si:0.05〜0.90%、Mn:0.
30〜2.00%、Mo:0.05〜0.60%、sol.Al:0.005 〜0.1
%を含有し、残部はFeと不可避不純物からなり、かつ下
記で表されるMo* が 0.4以上で、下記式で表される
CMが0.25以下である鋼を素材とし、1000〜1250℃で加
熱し、再結晶温度域で30%以上の圧延を行い、圧延材の
表面温度が下記式で表される Ar3変態点以上である温
度域で圧延を終了し、その後空冷してフェライトとパー
ライトの混合組織とする。 Mo* (%) =Mo+1.5 C+(0.8+3Mo) V ・・・ PCM (%) =C+(Si/30) +(Mn/20) +(Cu/20) +(Ni/60) +(Cr/20) +(Mo/15) + (V/10)+5B ・・・ Ar3(℃) = 910− 310C−80Mn−20Cu−55Ni+0.35(t−8) ・・・ 式中の元素記号はその含有量 (重量%) を表し、式の
tは を表す。素材鋼はV、Cr、Cu、Ni、TiおよびB
中から選ばれた1種以上の成分を含有していてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鉄骨建築物に用いら
れる鋼材に係わり、特に火災等の罹災時において鋼材の
温度が上昇しても高温での強度と弾性率の低下が少ない
鉄骨建築用鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、超高層ビルをはじめとする鉄骨建
築物がますます増加する傾向にあるが、これは鉄骨が大
型の構造物を造るのに適していること、および柱や梁を
小さくすることができるので、居住面積を大きくとるこ
とができる等の利点を有するからである。
【0003】従来、鉄骨建築用の鋼材には例えばJIS G3
101 にSS41、同G3106 にSM50として規定されている鋼材
が使用されており、このような鋼材は圧延のまま、ある
いは圧延後に焼ならし処理を施されて使用されている。
また、最近では、圧延後に加速冷却を施して製造される
場合もあり、従来のもの(SM50R、SM50N 等) に対してSM
50TMC と称されている。
【0004】ところで、このような鉄骨建築物用の鋼材
については、これまで建築基準法により耐火工法が一律
に厳しく定められていたが、昭和57〜61年の建設省総合
技術開発プロジェクト「建築物の防火設計法の開発」の
成果により、火災時の構造安定性が数値シミュレーショ
ンおよび実験で確認できれば、耐火物の被覆厚さを薄く
すること、もしくは耐火物を被覆することなく使用する
ことが可能となり、耐火工法の自由度が大幅に拡大され
た。
【0005】しかし、鉄骨建築物用として現在用いられ
ている前記の鋼材では、火災時に高温にさらされて、例
えば 600℃を超える高温になると強度が著しく低下し、
火災時の構造安定性を保証することができないため、実
際には耐火物を被覆する必要があり、ロックウール等を
鋼材表面に吹き付けることで火災時における温度上昇を
防いでいる。
【0006】このロックウールを吹き付ける耐火工法
は、安価にできる利点があるものの、建築現場では吹き
付け時の飛散を防止するために養生シートをめぐらして
被覆作業を行う必要があり、工期の延長につながるばか
りでなく、周囲の環境を損ねるといった施工上の問題が
ある。
【0007】他方、ロックウールに代えて耐火ボードを
用いて鋼材表面を被覆する方法もあるが、耐火ボードで
は鋼材の端面が露出するので、端面をなんらかの方法で
被覆しなければならず、また、耐火ボードは高価でもあ
る。
【0008】このようなことから火災時に高温にさらさ
れても強度の低下しない鋼材、即ち、耐火物の被覆を軽
減あるいは省略することができる高温強度に優れた鋼材
の開発が望まれている。しかし、単に高温強度に優れる
というだけでは鉄骨建築物の構造用部材として使用する
には問題がある。鉄骨建築用鋼材は柱や梁に使用される
ので、高温において柱や梁が座屈しない性能が必要であ
り、また優れた溶接性も必須である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、耐火
物の被覆を軽減、あるいは省略することができる高温で
の強度に優れ、かつ座屈の発生を抑えるのに有効な高温
における弾性率の低下が少なく、さらに溶接性にも優れ
た鉄骨建築用鋼材を得ることにある。
【0010】本発明の具体的な目的は、室温での機械的
性質が従来使用されている鋼材 (例えば前述のSS41、SM
50として規定される鋼材) と同等の性能を有し、しかも
600℃における 0.2%オフセット耐力が常温の規格値
(一般には降伏強度) の2/3以上であり、弾性率が150
00 kgf/mm2 以上の性能を有する鉄骨建築用鋼材を製造
する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために鋼材の組成および製造プロセスを含
む全般について詳細に検討を行った結果、下記の知見を
得た。即ち、 (1) 高温における強度および弾性率を上昇させるのには
Moを添加するのが有効である。また、VとMoの複合添加
は高温での強度上昇に対して相乗効果がある。
【0012】(2) 上記の高温強度上昇効果は、下記の
式で整理できる。
【0013】 Mo * =Mo (%) +1.5 C (%) +(0.8+3Mo (%))V(%)・・・ (3) 耐震設計上の観点から、建築構造用鋼材には応力−
歪曲線においては明瞭な降伏棚があること、および低降
伏比(80%以下) であることが必要とされるが、このた
めにはAr3 変態点以上の温度で圧延を終了すること、お
よびフェライトとパーライトの2相混合組織とすること
が有効である。
【0014】(4) 高温強度を向上させるには、上記に
(1) に示す合金元素を多量に添加すればよいが、このよ
うな場合、例えば現行のSS41あるいはSM50鋼の常温強度
の上限を超えてしまう。また、これら合金元素の多量添
加は炭素当量を著しく高めて溶接割れ感受性を高める。
従って、これらの元素は適正な範囲内で添加する必要が
ある。
【0015】本発明は上記の知見を基にして完成したも
のであって、その要旨は下記(a)の鋼を、(b)の工
程で処理することを特徴とする高温強度特性に優れた鉄
骨建築用鋼材の製造方法にある。
【0016】(a)素材鋼 (1) 重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.05〜0.90%、
Mn:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜0.60%、sol.Al:0.005
〜0.1 %を含有し、残部はFeと不可避不純物からなり、
かつ下記で表されるMo* が 0.4%以上、下記式で表
されるPCMが0.25%以下である鋼。
【0017】または(2) 上記(1) に記載した合金成分に
加えて更に、重量%で、V:0.005〜0.10%、Cr:0.1〜2.
0 %、Cu:0.1〜0.5 %、Ni:0.1〜0.5 %、Ti:0.005〜0.
050 %およびB:0.00015〜0.0030%の中から選ばれた1
種以上の成分を含有し、かつ下記で表されるMo*
0.4%以上で、下記式で表されるPCMが0.25%以下で
ある鋼。
【0018】 Mo* (%) =Mo+1.5 C+(0.8+3Mo) V ・・・ PCM (%) =C+(Si/30) +(Mn/20) +(Cu/20) +(Ni/60) +(Cr/20) +(Mo/15) + (V/10)+5B ・・・ なお、、の式中の元素記号はその元素の含有量 (重
量%) を表す。
【0019】(b)処理工程 上記(1) の鋼を1000〜1250℃で加熱し、再結晶温度域で
30%以上の圧延を行い、圧延材の表面温度が下記式で
表される Ar3変態点以上である温度域で圧延を終了し、
その後空冷してフェライトとパーライトの混合組織とす
る。
【0020】 Ar3(℃) = 910− 310C−80Mn−20Cu−55Ni+0.35(t−8) ・・・ なお、式中の元素記号はその元素の含有量 (重量%)
を表し、tは板厚(mm)を表す。
【0021】
【作用】まず、素材鋼材の成分含有量、Mo* およびPCM
を上記のように限定する理由を作用効果とともに説明す
る。
【0022】なお、成分含有量の「%」は全て「重量
%」である。
【0023】C:0.03〜0.15% Cは、鋼材の強度を上げるのに必要な元素であり、所望
の強度を確保するには0.03%以上含有させる必要があ
る。しかし、必要以上の含有は、溶接硬化性や溶接割れ
感受性を高めるのでCの含有量は0.15%以下に抑えるべ
きである。
【0024】Si:0.05〜0.90% Siは製鋼時の脱酸剤として使用されるだけでなく、常温
および高温における強度を確保するのに有効な元素であ
る。このような効果を得るには0.05%以上含有させる必
要があるが、0.90%を超える含有量になると鋼材の靱性
が大幅に低下するので0.05〜0.90%が適正含有量であ
る。
【0025】Mn:0.30〜2.00% Mnは、強度および靱性を高めるために有効な元素であ
り、そのためには0.30%以上含有させる必要がある。し
かし、2.00%を超える含有量にしても強度および靱性の
向上効果は飽和し、溶接割れ感受性が高くなるという弊
害が現れる。即ちMn含有量の適正範囲は0.30〜2.00%で
ある。
【0026】Mo:0.05〜0.60% Moは主として微細な炭化物の形態で鋼中に存在し、高温
における強度と弾性率を高める効果がある。しかし、0.
05%未満では上記の効果は小さく、一方、0.60%を超え
て含有させると常温における強度が必要以上のレベルと
なり、強度調整のために高温での焼戻し処理を施す必要
が生じ、製造コストが上昇するので0.05〜0.60%の含有
量とした。
【0027】sol.Al: 0.005〜0.1 % Alは製鋼時に脱酸剤として作用し、かつ鋼材の組織の細
粒化を通じて靱性を改善する効果がある。0.005 %未満
の含有量ではこの効果が得られない。一方、0.10%を超
えて含有させても効果の増加はなく、製造コストが嵩む
だけである。
【0028】本発明方法の素材となる鋼の一つは、上記
合金成分の外、残部はFeおよび不可避不純物からなるも
のである。不純物の中でもS、SnおよびSbはできるだけ
低いことが望ましい。
【0029】本発明方法の素材鋼のもう一つは、上記成
分に加えてさらにV、Cr、Cu、Ni、TiおよびBの中から
選ばれた1種以上の元素を含む鋼である。
【0030】これら元素の作用効果と含有量の限定理由
は下記の通りである。
【0031】V: 0.005〜0.10% Vは高温強度を上昇させる元素であり、Moとの複合添加
による相乗効果が大きい。この効果を発揮させるには
0.005%以上含有させるのがよいが、0.10%を超えて含
有させても高温での強度上昇効果が飽和するため、 0.0
05〜0.10%の含有量とした。
【0032】Cr: 0.1〜2.0 % CrはMoと同様に高温における強度と弾性率を向上させる
元素である。その効果を発揮させるためには、0.1 %以
上含有させるのがよい。しかし、2.0 %を超えて含有さ
せると溶接性を著しく劣化させるため、0.1 〜2.0 %の
含有量が適当である。
【0033】Cu: 0.1〜0.5 % Cuは高温における強度と弾性率を向上させるのに有効な
元素であり、その含有量が 0.1%未満ではその効果が得
られず、一方、0.5 %を超えて含有させると表面割れを
起こして溶接割れを助長する傾向を招くので、その範囲
は 0.1〜0.5 %とするのがよい。
【0034】Ni: 0.1〜0.5 % NiもCuと同様に高温における強度と弾性率を向上させる
のに有効な元素である。このような効果を安定して確保
するには 0.1%以上含ませるのがよいが、0.5%を超え
て含有させても、その効果が飽和し製造コストの上昇を
招くだけである。従って、Niを使用する場合は、その含
有量は 0.1〜0.5 %の範囲とするのがよい。
【0035】なお、これらの元素と類似の作用をする元
素としてNbがあるが、これは圧延集合組織を顕在化さ
せ、溶接欠陥の超音波探傷の障害となるから、鉄骨建築
用鋼材には添加しない方がよい。
【0036】Ti: 0.005〜0.050 % Tiは鋼中のNを捕らえてTiN として存在しているが、溶
接継手部のγ粒の粗粒化を抑制することによって、継手
靱性を向上させる元素である。その効果を発揮させるた
めには、0.005 %以上含ませるのがよい。しかし、Ti含
有量が 0.050%を超えると TiNのγ粒粗粒化抑制効果が
消失するから 0.005〜0.050 %が適正含有量の範囲であ
る。
【0037】B: 0.00015〜0.0030% Bは極微量で焼入性を向上させる元素であり、構造用鋼
では常温強度の向上に寄与する。この効果を期待する場
合は 0.00015%以上含有させるのがよい。しかし0.0030
%を超えて含有させても効果の増大は殆どないから、B
を添加する場合はその含有量は 0.00015〜0.0030%の範
囲が適当である。
【0038】以上の、個々の成分の含有量の外に、次の
Mo* と、PCMの値を適正範囲に調整することが重要であ
る。
【0039】Mo *: 0.4%以上 Mo* は高温強度に及ぼす各合金元素の寄与を総合的に調
査して決定した下記式で表される値である。
【0040】 Mo* =Mo+1.5 C+(0.8+3Mo) V ・・・ 前記のとおり、この式の元素記号はその元素の含有量
(重量%) を示す。そして、素材鋼がVを含有しないと
きは式は、Mo* (%) =Mo+1.5 Cとなる。
【0041】図1は高温強度に及ぼす合金成分の影響を
調べた結果である。即ち、Si: 0.25%、Mn: 1 %、sol.
Al: 0.03%を基本として、Cを0.03〜0.15%、Moを 0〜
1.0%、Vを 0〜0.1 %の範囲でそれぞれ変化させた鋼
を、1150℃に加熱した後、厚さ20mmまで熱間圧延し、85
0 ℃で仕上げて空冷した試験片を使用して 600℃での高
温引張試験 (JIS G0567 に準拠) を行い、降伏強度(YS)
をMo* によって整理したグラフである。
【0042】高温強度は主として炭化物形成元素のMo
(Vを含む場合にはMoとV)およびCによって整理する
ことができる。特に、Vは単独添加では大きな効果は示
さないが、Moと複合添加した場合、高温強度の上昇に相
乗効果を発揮し、後述するPCMをさほど上昇させること
なく高温強度を向上させる。
【0043】図1から、SM41級の鉄骨建築用鋼材の場
合、目標とする高温強度は16kgf/mm2以上であるから、M
o* ≧ 0.4%とすればよく、SM50級の鉄骨建築用鋼材で
は目標高温強度は22kgf/mm2 以上であるから、その場合
はMo* ≧0.8 %とすればよいことが明らかである。Mo*
が 0.4%未満の場合には、高温での高い弾性率を確保す
ることも困難になる。
【0044】PCM:0.25%以下 PCMは溶接割れ感受性を示す指数である。この値が低い
ほど、溶接予熱温度を低くして割れを生じさせることな
く溶接を行うことができる。このPCMは前記の式で表
される。一般に、鉄骨建築構造物の施工現場での溶接に
よる組立の際に、予熱処理を行うことは実際上不可能で
ある。前記PCMを0.25%以下に抑えておけば、予熱なし
でも溶接割れを生じさせることなく溶接することができ
る。
【0045】(b)処理工程 加熱温度:1000〜1250℃ 前記組成の素材鋼 (スラブ、ブルーム、ビレット) を10
00℃以上、1250℃以下の温度域で加熱する。
【0046】加熱温度が1000℃未満であれば、Vを含む
成分系の鋼の場合、V等の炭窒物を固溶させることがで
きないため、これらの析出強化作用を利用することがで
きなくなる。また、V等の合金元素を含まない成分系の
鋼でも、1000℃以上の温度域に加熱しておかないとCrや
Mo等の均一固溶ができない。一方、1250℃を超える温度
で加熱すると、圧延初期のγ粒の粗大化につながるた
め、圧延材の靱性を損なうことになる。
【0047】熱間加工:再結晶温度域での圧下率が30%
以上、かつ仕上げのときに表面温度が Ar3変態点以上で
ある条件で圧延。
【0048】熱間加工の目的は、必要な形状の鋼材に成
形すると同時に圧延による再結晶を利用して鋳造組織を
解消し、組織を微細化して鋼材の延性と靱性を改善する
ことにある。そのためには、加熱後の鋼材を再結晶温度
域で、しかも圧下率を30%以上として圧延を行い、表面
が Ar3変態点以上である温度域で圧延を終了する必要が
ある。
【0049】Ar3変態点は、前記の式で算出できる。
圧延仕上げの時に表面温度を Ar3変態点以上とするの
は、2相域まで圧延温度を低下させると、フェライトの
加工を行うことになるため、鋼材の降伏比(降伏強度/
引張強度)が高くなり、耐震設計面から制約を受けるか
らである。なお、表面が Ar3変態点以上の温度であれ
ば、内部はそれ以上の高温であるから、2相域での加工
を確実に避けることができる。
【0050】圧延後の冷却速度:空冷 鉄骨建築用鋼材には、応力−歪曲線において、明瞭な降
伏棚と低降伏比を有することが要求されている。
【0051】図2は、鋼材の応力−歪曲線の例を示す図
である。 (a)図の (イ)の曲線に示すように明瞭な降伏棚
が有る鋼材では、それがない (ロ)の鋼材に比較して高い
降伏応力(0.2%オフセット耐力) を示すことになり、降
伏応力で設計される鉄骨建築用として有利になる。
【0052】一方、(b) 図に示すように、同一の降伏応
力をもつ (イ)と (ロ)の鋼材の場合には、降伏比の低い鋼
材 (イ)の方が、破壊に到るまでに消費されるエネルギー
(図の(A) 領域) が高降伏比の鋼材(ロ) のエネルギー
(同じく(B) 領域) よりも大きい。破壊に到るまでのエ
ネルギーが大きいということは、外力が加わった時の吸
収エネルギーが大きいことを意味しており、破壊するま
での塑性変形能が大きいことになる。つまり、例えば地
震の時に建物が受けるエネルギーをより多く吸収できる
ので、ビルの倒壊を防ぐという点で優れた鋼材となる。
【0053】明瞭な降伏棚と低降伏比を確保するには、
フェライトとパーライトの2相混合組織とする必要があ
る。空冷を超える冷却速度になると、ベイナイト組織が
現れて降伏棚が消失して降伏強度の低下等の問題が生ず
る。鉄骨建築用鋼材として明瞭な降伏棚と低降伏比を得
るために、圧延後の冷却を空冷としフェライトとパーラ
イトの2相混合組織とするのである。
【0054】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼を溶製し、210mm 厚
の鋳片とした後、表2および表3に示す条件で熱間圧延
を行い、厚鋼板を製造した。表2はSS41級の鋼材の製造
条件に相当し、表3はSM50級の鋼材の製造条件に相当す
る。
【0055】製造した厚鋼板から試験片を採取し、常温
の降伏強度(YS)、引張強度(TS)および降伏比、即ち、 Y
R = (YS/TS)×100(%) 、ならびに 600℃での降伏強度
(YS)と弾性率(E)を調査した。さらに、溶接性を調べ
るためにy開先拘束割れ試験(JIS Z2158 に準拠) を実
施した。これらの結果を表2、表3に併記する。
【0056】弾性率(E)は高温動的弾性率測定装置を
用いて測定した。この測定法は曲げ共振法であり、2mm
t ×10mmw ×100mm l の試験片をその両端から0.224 L
(mm)の位置を支点として共振させ、共振周波数を求め
て、次式によりEを算出した。
【0057】 E=(0.9465/g) (m・f2/w) (L/t)3{ 1+6.59(t/L)2} ただし E:弾性率( kgf/mm2 ) g :重力加速度(9800mm/s2) f :共振周波数(Hz) L :試料長さ(mm) w :試料幅(mm) t :試料厚さ(mm) m :試料重量(kg)
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】y開先拘束割れ試験は、前記のようにJIS
Z 2158に準拠して実施し、「表面割れ」および「ルート
割れ」の有無を調べた。このときの判定基準は、予熱な
しでもこのような割れが発生しなかったものを「○」、
予熱温度を 100℃以上としなければ割れ発生を抑えるこ
とができなかったものを「×」とした。
【0062】表1の本発明鋼と記したのは、組成が本発
明で定める範囲内にある本発明方法の素材鋼である。表
2、表3において、試験番号1〜4、13〜19が本発明例
である。これらは常温および 600℃での機械的性質はと
もに本発明が目標とする性能をすべて満たし且つ溶接割
れも発生していない。
【0063】これに対して、比較例の試験番号5〜8と
24〜27は本発明鋼の化学組成であるが、製造条件が本発
明で規定する範囲外のものであり、試験番号10〜12と20
〜23は本発明の製造条件であるが、化学組成が本発明で
規定される範囲外のものである。試験番号9は、製造条
件の中、加熱温度も高すぎる例である。これらの比較例
では、常温および 600℃における機械的性質の少なくと
も一つが本発明で目標とする性能を満足していない。さ
らに、試験番号9、11、21は、表1に示すE、Gおよび
Qの鋼を素材としており、これらはPCM値が高いので溶
接時に 100℃以上の温度に予熱しないと割れを防止する
ことができなかった。
【0064】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明方法によれ
ば、常温の機械的性質が優れ、しかも火災時において温
度が上昇しても、強度および弾性率の低下が少ない鋼材
が得られる。この鋼材は耐火被覆を軽減もしくは省略す
ることができるので、建築工事の工数節減にも寄与で
き、鉄骨建築用鋼材としてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼の高温(600℃) での強度とMo* 〔=Mo+1.5
C+(0.8+3Mo) V〕との関係を示す図である。
【図2】降伏棚および破断までの吸収エネルギーを説明
するための鋼の応力−歪曲線の例を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.05〜
    0.90%、Mn:0.30〜2.00%、Mo:0.05〜0.60%、sol.A
    l:0.005 〜0.1 %を含有し、残部はFeと不可避不純物
    からなり、かつ下記で表されるMo* が 0.4%以上で、
    下記式で表されるPCMが0.25%以下である鋼を、1000
    〜1250℃で加熱し、再結晶温度域で30%以上の圧延を行
    い、圧延材の表面温度が下記式で表される Ar3変態点
    以上である温度域で圧延を終了し、その後空冷してフェ
    ライトとパーライトの混合組織となすことを特徴とする
    高温強度特性に優れる鉄骨建築用鋼材の製造方法。 Mo* (%)=Mo+1.5 C ・・・ PCM (%) =C+(Si/30) +(Mn/20) +(Mo/15) ・・・ Ar3(℃) =910 −310 C−80Mn+0.35(t−8) ・・・ 式中の元素記号はその含有量 (重量%) を表し、式の
    tは板厚(mm)を表す。
  2. 【請求項2】請求項1に記載した合金成分に加えて更
    に、重量%で、V:0.005 〜0.10%、Cr:0.1〜2.0 %、
    Cu:0.1〜0.5 %、Ni:0.1〜0.5 %、Ti:0.005〜0.050 %
    およびB:0.00015〜0.0030%の中から選ばれた1種以上
    の成分を含有し、かつ下記で表されるMo* が 0.4%以
    上で、下記式で表されるPCMが0.25%以下である鋼
    を、1000〜1250℃で加熱し、再結晶温度域で30%以上の
    圧延を行い、圧延材の表面温度が下記式で表される A
    r3変態点以上である温度域で圧延を終了し、その後空冷
    してフェライトとパーライトの混合組織となすことを特
    徴とする高温鉄骨建築用鋼材の製造方法。 Mo* (%) =Mo+1.5 C+(0.8+3Mo) V ・・・ PCM (%) =C+(Si/30) +(Mn/20) +(Cu/20) +(Ni/60) +(Cr/20) +(Mo/15) + (V/10)+5B ・・・ Ar3(℃) = 910− 310C−80Mn−20Cu−55Ni+0.35(t−8) ・・・ 式中の元素記号はその含有量 (重量%) を表し、式の
    tは板厚(mm)を表す。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100470647B1 (ko) * 2000-12-11 2005-03-07 주식회사 포스코 이상역 제어압연에 의한 용접구조용 강재의 제조방법

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