JPH05123174A - イチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方法 - Google Patents

イチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方法

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JPH05123174A
JPH05123174A JP3255594A JP25559491A JPH05123174A JP H05123174 A JPH05123174 A JP H05123174A JP 3255594 A JP3255594 A JP 3255594A JP 25559491 A JP25559491 A JP 25559491A JP H05123174 A JPH05123174 A JP H05123174A
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fluorescent
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Tsukasa Mori
司 森
Junichi Shigeta
潤一 茂田
Masao Seki
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 イチゴの細胞をオーキシンあるいはオーキシ
ンとサイトカイニンとを添加した固体培地で培養してカ
ルスを形成し、次いで得られたカルスをオーキシンある
いはオーキシンとサイトカイニンとを添加した液体培地
で培養し、次いで得られた培養細胞から蛍光物質を抽出
するイチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方法。 【効果】 本発明により得られる蛍光物質は、波長340n
m付近の長波長紫外線で励起することにより、波長480nm
付近の強い緑色蛍光を発し、しかも安定性が高いものな
ので、蛍光染料、色素レーザ用材料などの有機蛍光体の
用途に広く用いることができる他、蛍光抗体法用の蛍光
試薬等の医療用分野にも適用が可能である。この製造方
法では、カルスを液体培地で継代培養して大量増殖する
ことができるので、蛍光物質を大量に、しかも任意の時
期に製造することができる

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イチゴのカルスを用
い、強い蛍光を有する蛍光物質を大量に製造する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは、従来、イチゴのカルスを
用いてアントシアニンを大量に製造する方法を発明して
いる(特願平1−224000号、特願平2−1651
89号、特願平2−165190号)。これらの方法で
は、イチゴの細胞をオーキシン等を含んだ固体培地で培
養してカルスを形成し、得られたカルスをオーキシン等
を含む液体培地で培養して増殖させ、得られた培養細胞
からアントシアニンを抽出する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、前述し
たアントシアニンの製造方法により得られたイチゴ培養
細胞から、アントシアニン以外の有用物質を抽出可能か
否かについて更に検討した。
【0004】前述したイチゴのカルス培養によって得ら
れたイチゴ培養細胞を破砕し、これに水を加えて煮沸
し、アントシアニン等を熱水抽出し、得られた抽出液を
イオン交換クロマトグラフィーによって成分分画したと
ころ、アントシアニンと全く別の分画領域から、紫外線
照射によって強い蛍光を発する蛍光物質を見出した。こ
の蛍光物質は、カルスの培養によって得られたイチゴ培
養細胞にのみ分離可能な量生成されるものであって、天
然物であるイチゴの果実や葉、茎から同様の抽出操作及
びイオン交換クロマトグラフィーを行って得られた同じ
分画領域と、前述したイチゴ培養細胞から得られた分画
領域とを、薄層クロマトグラフィーを用いて展開し、紫
外線を照射して蛍光物質の存在を確認したところ、イチ
ゴ培養細胞から得た試料は、強い蛍光を持った蛍光物質
が確認できたが、天然物から得た試料は蛍光物質が確認
できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような実験結果に基
づいて、本発明者らは、イチゴ培養細胞を用いて効率よ
く蛍光物質を製造することが可能な製造方法について鋭
意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、イチゴの細胞をオーキシ
ンあるいはオーキシンとサイトカイニンとを添加した固
体培地で培養してカルスを形成し、次いで得られたカル
スをオーキシンあるいはオーキシンとサイトカイニンと
を添加した液体培地で培養し、次いで得られた培養細胞
から蛍光物質を抽出することを特徴とするイチゴ培養細
胞を用いた蛍光物質の製造方法である。
【0007】前記固体培地及び液体培地に添加するオー
キシンは、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸が好まし
く、またサイトカイニンはベンジルアデニンが好まし
い。また、固体培地及び液体培地に添加する2,4−ジ
クロロフェノキシ酢酸の添加量は、0.1〜5mg/リットルの範
囲が好ましく、ベンジルアデニンの添加量は5mg/リットル
以下が望ましい。また、前記培養細胞から蛍光物質を抽
出する手段としては、培養細胞から蛍光物質を熱水抽出
し、この抽出液からイオン交換クロマトグラフィーによ
って蛍光物質を分離する方法を用いることができる。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
イチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方法では、ま
ず、カルス化に適当な細胞をイチゴから無菌的に摘出す
る。材料のイチゴは、特定品種に限定されることなく、
種々の品種から選択して使用することができ、例えば我
国で一般に広く栽培されているオランダイチゴ(Fragar
ia chiloensis Duch var. ananassa Bail)や四季
なりイチゴ(Fragaria×ananassa)などを使用できる。
【0009】カルス化に適当な細胞としては、イチゴの
葉、茎、根、ランナーなどの各部位から得ることができ
る。これらの部位は、適当な大きさに切断した後、組織
培養において通常使用される殺菌剤を用い、殺菌剤中に
浸漬して殺菌し、無菌環境下で細かく裁断し、もしくは
実体顕微鏡で観察しながら生長点を摘出する。
【0010】次に、得られた細胞や組織を固体培地に置
床してカルス化を行う。このカルス化に用いられる固体
培地としては、MS(Murashige &Skoog)培地やLS
(Lin& Staba)培地、B5培地、EM培地などの基本培
地に、オーキシンあるいはオーキシンとサイトカイニ
ン、炭素源としてサッカロースなどの糖、0.8〜1%程度
の寒天を添加した固体培地が好適に使用される。
【0011】前記オーキシンとしては、2,4−ジクロ
ロフェノキシ酢酸(以下、2,4−Dという)が特に好
適に使用され、またサイトカイニンとしてはベンジルア
デニン(以下、BAという)が好適に使用される。2,
4−Dの添加量は、0.1〜5mg/リットルの範囲が好ましい。
2,4−Dの添加量が0.1mg/リットル未満であるとカルス
形成が殆ど起こらず、添加量が5mg/リットルを越えるとカ
ルス形成が起こらず細胞や組織は枯れてしまう。また、
BAの添加量は5mg/リットル以下が望ましい。BAを添加
しなくても、2,4−D単独の添加培地を用いてカルス
を形成することができるが、BAの添加量が5mg/リットル
より多いと、カルス化が起こらず、細胞や組織が枯れて
しまう。
【0012】摘出した細胞や組織をカルス化するための
培養は、20〜30℃程度の温度で行われ、その際の光条件
は特に限定されないが、好ましくは照度3000Lux以下の
条件で培養する。このような条件でイチゴ細胞や組織か
らカルスを形成し、必要に応じて継代培養を行って大量
培養用のカルスを作製する。この固体培地により形成さ
れるカルスは、白色〜クリーム色の柔らかいカルスの
他、黄緑色〜暗緑色の比較的固いカルスが形成される場
合があるが、前者の白い柔らかなカルスは、増殖能が高
く、一方後者の固いカルスは増殖能が低い。このため液
体培地を用いた大量培養用のカルスとしては、白色の柔
らかいカルスを選抜して用いることがることが望まし
い。
【0013】次に、得られた大量培養用のカルスを、M
S培地、LS培地、B5培地、EM培地などを基本培地
とし、これにオーキシンあるいはオーキシンとサイトカ
イニン、必要に応じ炭素源としてサッカロースなどの糖
を添加した液体培地に入れて振とう培養する。
【0014】この液体培地中に添加するオーキシンとサ
イトカイニンは、2,4−D、BAが好ましく、それら
の添加量は、先のカルス化の際に使用した固体培地と同
様に、2,4−Dが0.1〜5mg/リットル、BAが0〜5mg/リッ
トルの範囲とするのが好ましい。2,4−Dの添加量が0.
1mg/リットル未満であると、カルスから組織の分化が起こ
ったり、カルスが緑化して増殖速度が低下するなどの不
都合が生じて好ましくない。また2,4−Dの添加量が
5mg/リットルを越えると、カルス増殖が阻害され、カルス
の増殖が悪くなる。また、BAは、添加しなくても、
2,4−D単独の培地を用いてカルスを増殖させること
ができるが、BAの添加量が5mg/リットルを越えると、カ
ルス増殖が阻害される。
【0015】この液体培地を用いた大量培養の条件は、
温度20〜30℃とされ、光条件は限定されないが、好まし
くは照度3000Lux以下とする。この培養における光条件
を照度3000Luxより高くすると、カルスが緑化して増殖
が悪くなる場合がある。この条件で培養を行うことによ
り、カルス細胞は液体培地内で増殖し、必要に応じて培
養のスケールアップを行って、所望量の培養細胞を生産
する。
【0016】次に、液体培地から培養細胞を分離し、こ
の細胞から目的の蛍光物質を取り出す。本発明による蛍
光物質の製造方法では、液体培地による培養中に照度を
変化させる必要はない。しかし、培養終期に照度を高く
(3000Lux以上)して培養細胞内にアントシアニンを生
合成させ、得られた培養細胞から蛍光物質とアントシア
ニンの両方を大量に生産することも可能である。
【0017】培養細胞に含まれる蛍光物質は、水溶性で
あり、また沸騰水中で分解されない耐熱性を有している
ことから、培養細胞から蛍光物質を取り出すには熱水抽
出などの抽出法が好適に用いられる。この抽出操作の一
例を記すと、まず、培養液から培養細胞をこし取り、こ
れを水洗した後、ミキサー等を用いて細胞を破砕する。
次に、必要に応じ適当量の水を加えて煮沸し、細胞内の
成分を溶出させる。次に、遠心分離及びろ過を行って固
体物を取り除く。次に、蛍光物質を含んだ溶出液をイオ
ン交換樹脂を充填したカラムに入れ、蛍光物質やアント
シアニンなどの色素を吸着させ、適当な溶出液を流して
蛍光物質を流出させる。このとき用いられるイオン交換
樹脂としては、Dowex50等の陽イオン交換樹脂を
用いることができ、また流出液としては水或いは希塩酸
を用いることができる。なお、この蛍光物質の抽出にお
いて、培養細胞が柔らかい場合には必ずしも破砕する必
要はない。一方、培養細胞が固くなってミキサーでの破
砕が困難な場合には培養細胞を乾燥させ、粉砕して熱水
あるいは水で抽出することもできる。
【0018】前述のイオン交換樹脂を用い、流出液の塩
酸濃度を段階的に高くしてイオン交換クロマトグラフィ
ーを行うと、蛍光物質はアントシアニン等の色素に比べ
て早く溶出するので、目的の蛍光物質とアントシアニン
とを完全に分離することができる。溶出液中の蛍光物質
の有無は、紫外線照射灯(波長340nm程度の紫外線を出
す照射灯)などを用いて簡単に識別が可能である。目的
とする蛍光物質を含んだ液は、乾燥させ、必要に応じて
精製を行って粉末或いは結晶状の蛍光物質とすることが
できる。
【0019】このようにして得られる蛍光物質は、水に
可溶、無極性溶媒に不溶、その水溶液は無色透明であ
る。この蛍光物質の蛍光特性は、励起光波長が320〜360
nm、最適励起光波長が340nm付近であり、得られる蛍光
波長は460nm付近(緑色域)が最大となる。この蛍光物
質は熱や光に対し安定であり、100℃で数時間おいても
殆ど分解されず、紫外線を長期間照射しても蛍光特性は
殆ど変化しない。さらに、蛍光物質溶液中に糖(グルコ
ースなど)を添加しておくことにより、その安定性がさ
らに向上する。
【0020】この蛍光物質の水溶液にNaOH(0.5N程
度)を加えて長時間煮沸すると、蛍光物質が変成し、そ
の蛍光特性が変化する。即ち、変成後の物質は、蛍光波
長が430nm付近(青色域)の低い波長側にシフトする。
【0021】この蛍光物質は、紫外線(波長340nm付近
の長波長紫外線)を照射することによって緑色(変成物
は青色)の強い蛍光を発し、しかも安定性が高いものな
ので、蛍光染料、色素レーザ用材料、特殊印刷用材料、
蛍光白色染料(蛍光増白剤)、蛍光探傷剤などの有機蛍
光体の用途に広く用いることができる他、蛍光抗体法用
の蛍光試薬等の医療用分野にも適用が可能である。
【0022】
【実施例】以下、本発明によるイチゴ培養細胞を用いた
蛍光物質の製造方法の実施例を示す。
【0023】(カルス化用細胞の調整)イチゴ(四季な
りイチゴ:Fragaria×ananassa)のランナー材料および
幼苗を5%中性洗剤溶液で10分間攪拌洗浄した後、70%
エタノールに入れて30秒超音波洗浄した。その後5%N
aClO水溶液に8分間浸漬して滅菌し、各試料をクリ
ーンベンチ内に入れ、滅菌水で3回洗浄した。ランナー
材料は、実体顕微鏡で観察しながらランナー先端にある
0.2mmほどの生長点を摘出した。また、幼苗から葉と茎
部分を切り出し、それぞれ細かく裁断して1mm〜数mmの
断片とした。
【0024】(カルスの形成)LS(Lin & Staba)培
地にサッカロース(炭素源として)を30g/リットル、1%
の寒天を添加した固体培地を基本培地とし、これに2,
4−Dを1mg/リットル、BAを0.5mg/リットル添加した培地
を用い、摘出した生長点及び組織断片をこの固体培地に
置床し、温度25℃、照度800Luxの16時間日長の条件で2
週間培養し、カルスの形成状態を調べた。この結果、い
ずれの試料もカルス形成が認められた。
【0025】また、基本培地に2,4−Dを0〜7mg/リッ
トル、BAを0〜5mg/リットルの範囲で添加した各種の固体培
地を用い、これら培地に葉の断片試料を置床してカルス
形成の有無を調べた。その結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】表1から明らかなように、カルス形成用培
地中の2,4−D濃度は、0.1〜5mg/リットル、望ましくは
1〜2mg/リットルの範囲とするのが好ましく、BAは0〜5mg
/リットル、好ましくは2mg/リットル以下の範囲が好ましいこ
とが分かる。
【0028】また、葉、茎の断片試料を用い、2,4−
D以外のオーキシンとして、インドール酪酸(IB
A)、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(I
AA)を0.1〜5mg/リットルの範囲で加えた培地を用い、上
記葉と茎の断片試料を置床してカルス化の有無を調べ
た。結果を表2に示した。
【0029】
【表2】
【0030】表2に示したように、2,4−D以外のオ
ーキシン(IBA,NAA,IAA)を用いてもカルス
形成が可能であるが、2,4−Dに比べこれらのオーキ
シンはカルス形成が不良であった。
【0031】(カルス細胞の液体培養)上記試験によ
り、2,4−Dが2mg/リットル、BAが0.5mg/リットルを含む
固体培地で、葉の断片試料から得られた白く柔らかいカ
ルスを用い、このカルスを切開して分割し、分割片を50
0mlフラスコに入れ、2,4−Dを1mg/リットル、BAを0.
1mg/リットル、炭素源としてサッカロースを30g/リットル添加
したLS培地(液体培地)100mlを入れ、照度を800Lu
x、3000Lux、8000Luxとし、培養温度25℃、80r.p.m.で
振とう培養し、各光条件でのカルスの増殖を調べた。
【0032】その結果、照度800Lux及び3000Luxとした
ときにカルスの増殖が良好であった。しかし、3000Lux
で培養したカルスは、10〜14日後に培養細胞が変色して
以後の増殖が低下した。一方、照度800Luxで培養したカ
ルスは変色することもなく高い増殖率を示した。この80
0Luxの光条件で培養したカルスは、1〜2週間の培養サイ
クルで継代培養でき、同一条件でスケールアップ培養し
て培養細胞を大量生産することが可能であった。また、
8000Luxで培養したカルスは、培養当初から増殖が不良
であり、培養数日で変色し、カルス増殖は不可能であっ
た。
【0033】これらの結果より、イチゴの細胞から誘導
したカルスを、照度3000Lux以下の温度条件で液体培養
することにより、カルスを増殖させることができ、この
条件でスケールアップ培養することによって培養細胞の
大量生産が可能であることが判明した。また、液体培地
中に添加するオーキシン或いはオーキシンとサイトカイ
ニンの種類及びそれらの添加量は、固体培地によるカル
ス形成の場合と同様に、オーキシンとしては2,4−D
が好ましく、その添加量は1〜2mg/リットルの範囲が望まし
い。また、サイトカイニンとしてはBAなどが使用で
き、BAの添加量は0〜5mg/リットル、好ましくは2mg/リット
ル以下の条件が好適であった。
【0034】(蛍光物質の分離)前記カルス細胞の液体
培養において、照度800Luxで2週間培養した培養サンプ
ルを用い、培養液から培養細胞をこし分け、蛍光物質を
分離した。培養液より分離した培養細胞をミキサーで破
砕し、5分間煮沸した後、培養細胞を吸引ろ過し、ろ液
を陽イオン交換樹脂(Dowex50)を充填したカラ
ムに流入して蛍光物質を吸着させた。このカラムに水〜
希塩酸の流出液を、塩酸濃度が0〜0.1Nの濃度勾配とな
るように流入した。流出液をフラクションコレクターに
て分取し、各フラクション中の蛍光物質の有無を、中心
波長340nmの紫外線ランプを用い緑色蛍光の強度によっ
て識別した。このイオン交換クロマトグラフィーにおい
ては、蛍光物質が早い段階で流出し、一方、アントシア
ニンなどの色素はかなり遅れて流出した。紫外線を照射
して緑色蛍光が認められたフラクションを集め、この液
をロータリーエバポレータで脱水し、白色粉末状の蛍光
物質を得た。
【0035】(蛍光特性の測定)得られた蛍光物質の蛍
光特性を島津製作所製RF-5000によって測定した。そ
の結果を図1(a),(b)に示す。なお、図1(a)
は励起波長が300〜340nm、(b)は励起波長が340〜380
nmの範囲を示している。これらの図から、得られた蛍光
物質の励起波長は、320〜360nm(中心値340nm)であ
り、蛍光波長は中心波長が460.8nmであることが判明し
た。また、得られた蛍光物質の分子量を、日本電子社製
マススペクトルメータ FAB MSを用いて測定した
結果、この蛍光物質の分子量は約298であることが判明
した。
【0036】次に、得られた蛍光物質を、0.5N・NaO
H中で10分間煮沸して変成させた。その結果、紫外線を
照射した際に強い青色蛍光を発する変成物が得られた。
この変成物の蛍光特性を測定し、その結果を図2
(a),(b)に示す。なお、図2(a)は励起波長が
300〜340nm、(b)は励起波長が350〜390nmの範囲を示
している。これらの図から、蛍光物質の変成物について
も強い蛍光が認められ、変成物の励起波長は320〜360nm
(中心値340nm)であり、蛍光波長は中心波長が430.4nm
であることが判明した。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
イチゴ細胞から形成したカルスを液体培地で培養し、得
られた培養細胞から、イチゴ生体からは分離不可能な蛍
光物質を製造することができる。本発明により得られる
蛍光物質は、波長340nm付近の長波長紫外線で励起する
ことにより、波長480nm付近の強い緑色蛍光を発し、し
かも安定性が高いものなので、蛍光染料、色素レーザ用
材料などの有機蛍光体の用途に広く用いることができる
他、蛍光抗体法用の蛍光試薬等の医療用分野にも適用が
可能である。この製造方法では、カルスを液体培地で継
代培養して大量増殖することができるので、蛍光物質を
大量に、しかも任意の時期に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で得られた蛍光物質の蛍光特性を示すグ
ラフである。
【図2】同じく得られた蛍光物質を変成させた変成物の
蛍光特性を示すグラフである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イチゴの細胞をオーキシンあるいはオー
    キシンとサイトカイニンとを添加した固体培地で培養し
    てカルスを形成し、 次いで得られたカルスをオーキシンあるいはオーキシン
    とサイトカイニンとを添加した液体培地で培養し、 次いで得られた培養細胞から蛍光物質を抽出することを
    特徴とするイチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記固体培地及び液体培地に添加するオ
    ーキシンが2,4−ジクロロフェノキシ酢酸であり、サ
    イトカイニンがベンジルアデニンであることを特徴とす
    る請求項1記載のイチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 固体培地及び液体培地に添加する2,4
    −ジクロロフェノキシ酢酸の添加量を0.1〜5mg/リットルと
    し、ベンジルアデニンの添加量を5mg/リットル以下とした
    ことを特徴とする請求項1記載のイチゴ培養細胞を用い
    た蛍光物質の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記培養細胞から蛍光物質を抽出する手
    段として、培養細胞から蛍光物質を熱水抽出し、この抽
    出液からイオン交換クロマトグラフィーによって蛍光物
    質を分離することを特徴とする請求項1記載のイチゴ培
    養細胞を用いた蛍光物質の製造方法。
JP3255594A 1991-10-02 1991-10-02 イチゴ培養細胞を用いた蛍光物質の製造方法 Withdrawn JPH05123174A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104535703A (zh) * 2015-01-06 2015-04-22 山东省分析测试中心 一种同时检测豆芽中6-苄基腺嘌呤和4-氯苯氧乙酸钠的方法
CN108812316A (zh) * 2018-06-27 2018-11-16 商丘师范学院 一种草莓叶片愈伤组织诱导方法

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