JPH0510130A - 断熱エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、副室での空気と燃料の混合速度を
燃料の酸化・分解等の化学的反応速度より速くして燃焼
の悪化を防止する断熱エンジンの燃焼室構造を提供する
ことである。 【構成】 この断熱エンジンの燃焼室構造は、ピストン
ヘッド４に形成した主室１で生起したスワールのエネル
ギーを副室２で増速して強いスワールを生起させ、多噴
孔９から副室壁面に向けて噴射した液状燃料を衝突分散
させ、副室２内の強いスワールで分散燃料と空気とを均
一に混合させると共に、空気利用率を向上させて副室２
での燃焼率をアップし、次いで強いスワールで高温燃焼
ガスを副室２内中央部に集め、連通孔８を通じて主室１
へ噴出させ、主室１での二次燃焼を促進する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ピストンヘッドに主
室を形成すると共にシリンダヘッドに副室を形成した断
熱エンジンの燃焼室構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、断熱エンジンの燃焼室構造とし
て、特開昭６３−３０２１２４号公報に開示されたもの
がある。該断熱エンジンの燃焼室構造は、燃焼室側をフ
ラットな面に形成したピストンヘッド、シリンダ中心部
を低く且つ外周部を高くして上部一部を四角筒体に形成
した燃焼室を構成するヘッドライナ、及び中心部から前
記外周部に傾斜したヘッド下面の傾斜面に設置したバル
ブから構成したものである。燃料噴射ノズルは前記シリ
ンダ中心部に設置されており、前記燃焼室は前記燃料噴
射ノズルの噴霧パターンに対応して形成されているもの
である。

【０００３】また、内燃機関の吸気ポートをスワールポ
ートに形成したものとして、特開昭５９−２０１９２９
号公報に開示されたものがある。該内燃機関の吸気ポー
トは、図４に示すように、シリンダ室４１の端面にその
中心から偏心した位置に吸気孔４２を開口し、吸気孔４
２に吸気弁４３を設けると共に吸気通路４４を接続した
ものであり、吸気孔４２の中心とシリンダ室４１の端面
の中心を結ぶ線が複数個の直列に配置したシリンダ室４
１の端面の中心を結ぶ線に対してなす角度を７０度以内
に設定し、また、吸気孔４２の中心とシリンダ室４１の
端面の中心間の距離をシリンダ室４１の径の３０％以内
に設定している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、断熱エ
ンジンでは、燃焼室は高温雰囲気となり、空気と燃料と
の混合速度が燃料の酸化、分解等の化学的な反応速度に
追いつかず、燃焼が悪化するという問題がある。

【０００５】そこで、この発明の目的は、上記の課題を
解決することであり、ピストンヘッドの凹み部に主室を
形成し、該主室を連通孔を通じて連通する副室をシリン
ダヘッドに形成し、該副室に燃料を噴射する燃料噴射ノ
ズルを前記副室に配置し、主室で生起したスワールのエ
ネルギーを副室で増速して強いスワールを生起させ、多
噴孔から副室壁面に向けて噴射した液状燃料を衝突分散
させ、副室内の強いスワールで分散燃料と空気とを均一
に混合させると共に、空気利用率を向上させて副室での
燃焼率をアップし、次いで強いスワールで高温燃焼ガス
を副室内中央部に集め、連通孔を通じて主室へ噴出さ
せ、主室での二次燃焼を促進することができる断熱エン
ジンの燃焼室構造を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、次のように構成されている。即ち、
この発明は、シリンダヘッドに形成した吸排気ポートと
副室、ピストンヘッドに形成した凹み部で構成され且つ
前記吸気ポートから流入する吸入空気でスワールが形成
される主室、該主室と前記副室を連通する前記シリンダ
ヘッドに形成した連通孔、該連通孔を中央に形成し且つ
前記副室内に突出して前記副室内に環状室領域を形成す
る連通孔壁体、及び前記連通孔に対向して前記シリンダ
ヘッドに配置され且つ副室壁面に向けて燃料を噴射する
多噴孔を有する燃料噴射ノズル、を有する断熱エンジン
の燃焼室構造に関する。

【０００７】また、この断熱エンジンの燃焼室構造にお
いて、前記主室を形成する前記凹み部は、外周側から中
央側に向かって深く形成され且つ前記凹み部の中央に前
記連通孔の中心軸方向に伸びる突出部を備えているもの
である。

【０００８】

【作用】この発明による断熱エンジンの燃焼室構造は、
上記のように構成されており、次のように作用する。即
ち、この断熱エンジンの燃焼室構造は、主室と副室を連
通する連通孔を連通孔壁体の中央に形成し、前記連通孔
壁体を前記副室内に環状室領域を形成するように前記副
室内に突出させ、前記連通孔に対向して前記シリンダヘ
ッドに配置した燃料噴射ノズルの多噴孔から副室壁面に
向けて燃料を噴射するように構成したので、主室で生起
したスワールのエネルギーは副室で増速して強いスワー
ルを生起する。そこで、多噴孔から噴射した液状燃料を
副室壁面に対して衝突分散させ、該衝突燃料は副室内に
発生している強いスワールの流れに乗って、分散燃料と
空気とが均一に混合すると共に、空気利用率が向上して
副室での燃焼率をアップする。次いで、強いスワールで
高温燃焼ガスを副室内中央部に集め、前記連通孔を通じ
て前記主室へ一気に噴出させ、前記主室での二次燃焼を
促進する。

【０００９】また、断熱エンジンの燃焼室構造におい
て、前記主室は前記凹み部に前記連通孔の中心軸方向に
伸びる突出部を設けているので、前記吸気ポートから前
記主室へ流入する吸入空気のスワール形成を促進すると
共に、前記主室から前記連通孔を通って前記副室へ流入
する吸入空気の前記環状室領域でのスワール形成を促進
することができる。また、前記主室は外周側から中央側
に向かって深く形成されているので、前記連通孔から噴
出された火炎と混合気は前記主室の中央に存在する新気
と混合を促進して燃焼が促進し、短期間に二次燃焼を完
結する。

【００１０】

【実施例】以下、図面を参照して、この発明による断熱
エンジンの燃焼室構造の実施例を説明する。まず、図
１、図２及び図３を参照して、この発明による断熱エン
ジンの燃焼室構造の一実施例を説明する。図１はこの発
明による断熱エンジンの燃焼室構造の一実施例を示し且
つ燃焼室の構造を分かり易くするため吸排気ポートが存
在しない部分を示す断面図、図２は図１の断熱エンジン
の燃焼室構造における副室内に生起するスワールと噴射
燃料との関係を説明する拡大平面図、及び図３は図１の
断熱エンジンの燃焼室構造の吸排気ポートが存在する部
分を示す断面図である。

【００１１】図示のように、この断熱エンジンの燃焼室
構造は、シリンダブロック１４、該シリンダブロック１
４に固定されたシリンダヘッド７、シリンダヘッド７に
形成したスワールポートに構成された吸気ポート２５、
排気ポート２６及び断熱構造の副室２、シリンダブロッ
ク１４に形成した孔部２７に嵌合したシリンダライナ２
８、該シリンダライナ２８で形成されるシリンダ２３と
ライナ上部で形成されるシリンダ２３内を往復運動する
ピストン１７、副室２内に多噴孔９を配置した燃料噴射
ノズル６、並びにピストン１７のピストンヘッド４に形
成したキャビティ２２で構成される主室１を有してい
る。吸気ポート２５には吸気バルブ２９が配置され、排
気ポート２６には排気バルブ３０が配置されている。

【００１２】この燃焼室の断熱構造については、図で
は、シリンダヘッド７に形成された大径と小径の段付き
の穴部１８，１９に配置された耐熱性及び断熱性に富ん
だ窒化ケイ素等のセラミックス等の材料から成る燃焼室
壁体から構成されている。燃焼室壁体は、上部壁体１２
と下部壁体１３とを断熱ガスケット３３を介在して当接
状態に配置されて構成されている。上部壁体１２は、下
面側に副室２の上部を形成し、シリンダヘッド７の小径
の穴部１８との間に断熱ガスケット２１を介在し且つ断
熱空気層２４を形成して穴部１８に嵌合している。更
に、上部壁体１２の中央には孔３２が形成され、該孔３
２には燃料噴射ノズル６が貫通され、多噴孔９を副室２
内に開口している。また、下部壁体１３は、ヘッド本下
面を形成するヘッド下面部２０とシリンダ２３を形成す
るライナ上部１３とを一体構造に構成したヘッドライナ
３を構成している。ヘッドライナ３は、シリンダヘッド
７の大径の穴部１９との間に断熱ガスケット２１を介在
し且つ断熱空気層２４を形成して穴部１９に嵌合してい
る。更に、下部壁体１３は、ヘッドライナ３の内側にシ
リンダ室３１、ヘッド下面部２０の上面に副室２の下
部、及びヘッド下面部２０にシリンダ室３１と副室２と
を連通する連通孔８を形成している。

【００１３】この断熱エンジンの燃焼室構造において、
下部壁体１３に連通孔８を形成するため、中央に上方へ
突出する連通孔壁体１０が下部壁体１３と一体構造に同
一の材料で構成されている。従って、上部壁体１２と下
部壁体１３とを断熱ガスケット３３を介在して当接して
配置した状態では、副室２は上部が円錐室領域１６に且
つ下部が環状室領域１５に構成される。副室２における
環状室領域１５は、容積が大きくなるように形成されて
いる。また、燃料噴射ノズル６は、連通孔壁体１０の中
央に形成された連通孔８に対向するように、上部壁体１
２の孔３２を貫通してシリンダヘッド７に配置されてい
る。そして、燃料噴射ノズル６の多噴孔９は、副室壁面
である円錐状壁面に液状燃料を衝突噴射するように開口
している。

【００１４】更に、主室１を構成するピストン１７のピ
ストンヘッド４に形成した凹み部であるキャビティ２２
は、例えば、図４に示すように、スワールポート等から
なる吸気ポート２５から流入する吸入空気でスワールが
形成されるように、外周側から中央方向に向かうに従っ
て深くなるように形成されると共に、キャビティ２２の
中央部には連通孔８の中心軸方向に伸びる突出部５が形
成されている。即ち、主室１は、外周部に比較して突出
部５の周りが深くなるように形成されている。また、突
出部５は、高温の燃焼ガスに晒される熱負荷の高い部位
であるので、耐熱性に富み且つ高温強度に富んだ窒化ケ
イ素等のセラミックスで構成されることが好ましいもの
である。

【００１５】この断熱エンジンの燃焼室構造は、上記の
ように構成されているので、吸気ポート２５をスワール
ポートに構成しておけば、吸気バルブ２９が吸気ポート
を開放して吸入行程のピストン上死点近傍で吸気ポート
２５から主室１に流入する吸入空気は、ピストンヘッド
４に形成されたキャビティ２２へ突出部５を中心に突出
周壁面１１に沿ってスワールを形成して流入し、ピスト
ン１７の下降と共にシリンダ室３１内にスワールを形成
する。次いで、吸気バルブ２９が吸気ポート２５を閉鎖
して圧縮行程に移行し、ピストン１７の上昇に従ってス
ワールのベクトルを突出部５の突出周壁面１１に沿って
持続し、吸入空気は連通孔８を通って副室２内に流入
し、副室２内に流入した吸入空気はスワールを増速して
副室２の環状室領域１５で強いスワールを形成する。次
いで、ピストン１７の上死点近傍、即ち圧縮行程終端近
傍で、燃料噴射ノズル６の多噴孔９から副室２の円錐状
室領域１６の壁面に噴射衝突した液状燃料は、図２に示
すように、スワールに流されながら壁面を流下し、吸入
空気との混合を促進する。

【００１６】即ち、この断熱エンジンの燃焼室構造にお
いて、主室１で発生しているスワールは副室２に流入す
ることで強いスワールに増速される。燃料噴射ノズル６
の多噴孔９より噴射された燃料は、液状のうちに副室２
の円錐状壁面に衝突し、強いスワールの空気と分散混合
すると共に、該円錐状壁面に沿って底部側へ流下してボ
リュウムの大きい環状室領域１５の強いスワールの空気
と均一に混合することになる。更に、副室２内に突入し
ている連通孔壁体１０により、該連通孔壁体１０の外周
側に形成される環状室領域１５での副室２内の空気利用
率が向上し、副室２内の燃焼率が向上する。噴射燃料が
着火した後には、副室２内の強いスワールにより高温燃
焼ガスは、副室２内の中央部に集まり、燃焼ガスを未燃
ガスより分離する効果が高まり、一次燃焼が改善され、
中央部に開口した連通孔８より主室１へ噴射することに
なる。次いで、主室１の突出部５の周りの近傍は深い燃
焼室を構成しているので、副室２より連通孔８を通じて
吹き出された高温ガスは、主室１内に存在する新気と混
合が促進されると共に、副室２からの噴出エネルギーに
よって主室１の外周部へと追いやられ、引き続く副室２
からの噴出ガスは主室１の突出部周りの近傍へスムース
に噴出される。

【００１７】従って、この断熱エンジンの燃焼室構造
は、燃料噴射ノズル６から副室２に噴射された燃料は、
副室２内が高温雰囲気であっても、燃料の酸化・分解等
の化学的反応速度よりも副室２内の強力なスワールで混
合速度が速く達成され、一次燃焼が悪化することなく、
副室２内の空気と良好に一次混合して一次燃焼を行い、
次いで、副室２からの火炎と混合気は連通孔８を通って
主室１へスムースに吹き出され、主室１で主室１に存在
する新気と二次混合して燃料は良好な状態で完全に二次
燃焼を完結し、ＨＣ、ＮＯ_X の発生を抑制することがで
きる。従って、この断熱エンジンの燃焼室構造によれ
ば、燃焼サイクルにおいて燃焼期間が短縮され、燃費が
改善され、ＨＣ、ＮＯ_X の発生を抑制することができ
る。

【００１８】

【発明の効果】この発明による断熱エンジンの燃焼室構
造は、上記のように構成されており、次のような効果を
有する。即ち、この断熱エンジンの燃焼室構造は、ピス
トンヘッドに形成した凹み部で構成され且つ前記吸気ポ
ートから流入する吸入空気でスワールが形成される主
室、該主室と前記副室を連通する前記シリンダヘッドに
形成した連通孔、該連通孔を中央に形成し且つ前記副室
内に突出して前記副室内に環状室領域を形成する連通孔
壁体、及び前記連通孔に対向して前記シリンダヘッドに
配置され且つ副室壁面に向けて燃料を噴射する多噴孔を
有する燃料噴射ノズルを有するので、前記主室で生起し
たスワールのエネルギーは前記副室で増速して強いスワ
ールを生起する。そこで、前記多噴孔から噴射した液状
燃料を副室壁面に対して衝突分散させる。衝突分散した
燃料は壁面を流下して且つ前記副室内の強いスワールの
流れに乗って、該空気との混合を促進し、分散燃料と空
気とが均一に混合すると共に、空気利用率が向上して前
記副室での燃焼率をアップする。

【００１９】即ち、この断熱エンジンの燃焼室構造で
は、前記副室内に突入している前記連通孔壁体により、
前記連通孔壁体の外周側に形成される前記環状室領域で
強いスワールによって空気と燃料との混合を促進し、前
記副室内の空気利用率が向上し、前記副室内の燃焼率が
向上する。噴射燃料が着火した後には、前記副室内の強
いスワールにより高温燃焼ガスは前記副室内の中央部に
集まり、燃焼ガスを未燃ガスより分離する効果が高ま
り、一次燃焼が改善され、次いで、中央部に開口した前
記連通孔より前記主室へ火炎は一気に噴出し、前記主室
の中央部の前記凹み部の存在する新気と良好に混合し、
前記主室での二次燃焼を促進する。

【００２０】従って、この断熱エンジンの燃焼室構造
は、前記燃料噴射ノズルから前記副室に噴射された燃料
は、前記副室内が高温雰囲気であっても、燃料の酸化・
分解等の化学的反応速度よりも前記副室内の強力なスワ
ールで混合速度が速く達成され、一次燃焼が悪化するこ
となく、前記副室内の空気と良好に一次混合して一次燃
焼が達成でき、引き続く前記主室での二次燃焼も短期に
燃焼を完結することができ、ＨＣ、ＮＯ_X 等の発生を抑
制できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による断熱エンジンの燃焼室構造の一
実施例を示し且つ燃焼室の構造を分かり易くするため吸
排気ポートが存在しない部分を示す断面図である。

【図２】図１の断熱エンジンの燃焼室構造における副室
内に生起するスワールと噴射燃料との関係を説明する平
面図である。

【図３】図１の断熱エンジンの燃焼室構造の吸排気ポー
トが存在する部分を示す断面図である。

【図４】従来の内燃機関の吸気ポートの一例を示す説明
図である。

【符号の説明】

１ 主室 ２ 副室 ３ ヘッドライナ（燃焼室壁体の一部） ４ ピストンヘッド ５ 突出部 ６ 燃料噴射ノズル ７ シリンダヘッド ８ 連通孔 ９ 多噴孔 １０ 連通孔壁体 １２ 上部壁体（燃焼室壁体の一部） １３ 下部壁体（燃焼室壁体の一部） １５ 環状室領域 １６ 円錐状室領域 １７ ピストン ２２ キャビティ ２３ シリンダ ２５ 吸気ポート ２９ 吸気バルブ ３１ シリンダ室

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダヘッドに形成した吸排気ポート
   と副室、ピストンヘッドに形成した凹み部で構成され且
   つ前記吸気ポートから流入する吸入空気でスワールが形
   成される主室、該主室と前記副室を連通する前記シリン
   ダヘッドに形成した連通孔、該連通孔を中央に形成し且
   つ前記副室内に突出して前記副室内に環状室領域を形成
   する連通孔壁体、及び前記連通孔に対向して前記シリン
   ダヘッドに配置され且つ副室壁面に向けて燃料を噴射す
   る多噴孔を有する燃料噴射ノズル、を有する断熱エンジ
   ンの燃焼室構造。
2. 【請求項２】 前記主室を形成する前記凹み部は、外周
   側から中央側に向かって深く形成され且つ前記凹み部の
   中央に前記連通孔の中心軸方向に伸びる突出部を備えて
   いる請求項１に記載の断熱エンジンの燃焼室構造。