JPH038226B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上利用分野） 本発明は、腹水の濾過、濃縮に使用する腹水処
理装置に関する。

（従来技術） 最近、難治性腹水症患者の腹水を濾過、濃縮し
て、静脈に再注入する使い捨て方式の腹水処理装
置が開発されている。

従来の装置では、患者から採取された腹水は、
ポンプによつて、先ず、濾過器に内蔵された中空
糸の内壁中に送入される。腹水がこの糸の中を流
れているうちに、水分や蛋白などは糸の壁を通し
て外側に出るが、がん細胞などは外に出ることが
できず、そのまま糸の中を流れて行く。

従つて、糸の壁を通り抜けたものだけを集めれ
ば、有害な菌やがん細胞を含まない腹水が回収さ
れる。回収されたこの腹水は、次いでポンプによ
つて濃縮器に内蔵された中空糸の内壁中に送入さ
れる。

腹水が中空糸の中を流れる間に、不要な水分は
壁から外へにじみ出て、元の腹水中のアルブミン
等の蛋白濃度は３〜10倍（好ましくは５〜７倍）
に濃縮され、その後、この濃縮腹水は患者の静脈
から再び体内にもどされる。

このように、従来装置では、濾過器と濃縮器が
ポンプを介してチユーブによつて連結されて、そ
れぞれ独立して配置されている。従つて、回路は
複雑となり、しかもその長さが長く（約６ｍ）処
理に際しては回路全体を処理液で満たさねばなら
ないので、腹水循環量も多い許りでなく、更に、
腹水は患者の状態によつて著しく異なり、これに
中空糸の経時変化等の条件もからむので、腹水の
濃度調整が著しく困難である等の欠点があつた。

（発明の目的） 本発明は、このような従来装置の欠点を改善し
たもので、従来型に比べて、回路が簡単でしかも
短く（約３ｍ）、取扱いも容易で、腹水濾過液の
濃度調整も容易な腹水処理装置を提供するもので
ある。

（発明の構成と作用） 本発明者等は、種々研究の結果、濾過器におい
て、元の腹水を中空糸の外側に送入する場合に
は、中空糸の内壁中に送入する従来装置に比較し
て濾過性能が著しく高く、しかも、糸の外層に吸
着した物質の除去も容易であることを見出し、従
来、別々に独立して配置されていた濾過器と濃縮
器を一体化したコンパクトな装置を完成したもの
である。

本装置の１例を図面によつて説明すれば、濾過
用中空糸を内蔵した濾過室２と、濃縮用中空糸を
内蔵した濃縮室３は、共通の部屋４を介して一体
の複合型濾過濃縮器に組立てられている。

元の腹水は入口１から、先ず、濾過室の中空糸
の外側に送入される。糸の壁を通つて内壁中にし
み出た濾液は濾液出口から部屋４に集められ、次
いで、部屋に開口した濃縮室３の液体入口から中
空糸の内壁中に送入される。濾過室２と濃縮室３
は環状部材６に、上下から着脱自在に嵌合されて
おり、５は０−リングであり部屋４を区画してい
る。部屋４の形状等は所望により自由に変形でき
ることは勿論である。

濾過室２において、有害な菌やがん細胞などは
糸の外側に溜り、必要に応じ出口７（普通は密閉
されている）を開けて排出することもできる。

濃縮室３において腹水から除去された水分は、
出口８から濾液として排出され、濃縮された腹水
は出口９から採取される。

腹水は、出口９からポンプ１２によつてチユー
ブ１１を経て、貯溜バツク１３に移送される。腹
水は患者の状態によつて著しく異なつているの
で、貯溜バツクに入つた腹水は、所望の濃度にな
るまで、コツク１４を開いた状態で、濃縮液循環
用入口１０からポンプによつて腹水処理装置に送
入循環される。腹水は入口１０から濾過室に内蔵
された中空糸の内壁中に入り、部屋４を経て濃縮
室に至り、再び濃縮処理を受け、出口９からチユ
ーブ１１を経て貯溜バツク１３に循環される。循
環濃縮を繰り返して、腹水が所望の濃度になつた
ら、コツク１４を閉じて、ポンプによつて腹水を
貯溜バツクに輸送する。

本装置は、複合型濾過濃縮器と、腹水輸送用チ
ユーブ１１と、腹水濾過濃縮用ポンプ１２と、貯
溜バツク１３とをリング状に連結しており、従来
型の装置に比して、特に、濾過、濃縮部分がコン
パクトに構成されている許りでなく、全体の回路
も約1/3程度まで短縮できるので、腹水の循環量
も少く、貯溜バツクの状態（回収された腹水量、
組成、着色度等）をみながら、簡単に濃度調整を
行うことができる。

（実施例） 本発明の腹水処理装置を使用して、下記の条件
で、腹水患者から採取し原液貯溜バツクに溜めた
腹水を処理した。

濾過室２には、ポアサイズ平均約0.2μｍ、内径
370μｍ、膜厚160μｍのセルローズジアセテート
中空糸の束を、両末端をウレタン接着剤で固定し
て内蔵した。（膜の有効面積0.65m²） 濃縮室３には、膜の分画分子量が約50000、内
径200μｍ、膜圧50μｍのポリアクリルニトリル中
空糸の束を、両末端をウレタン接着剤で固定して
内蔵した。（膜の有効面積0.8m²） 原液貯溜バツクに溜めた腹水約６を、入口１
から処理装置に、100ml／分の速度で連続的に注
入した。腹水は濾過室２、濃縮室３を通つて濃縮
され、出口９からポンプ１２、チユーブ１１を経
て、貯溜バツク１３に送られる。コツク１４を開
いて循環を続け、原液貯溜バツクが空になり、貯
溜バツクの液量が約１になるまで循環処理を行
つた。蛋白濃度1.2ｇ／dlの腹水６を処理して、
蛋白濃度5.5ｇ／dlの濃縮腹水１を得た。なお
出口８から濾液４を排出した。

従来型を使用した場合に比して、操作も容易で
あり、処理時間も約30％短縮された。

（発明の効果） 本発明の腹水処理装置は、実施例からも明らか
なように、従来型のものに比して、腹水の濃度調
整時間が非常に短縮される許りでなく、回路も短
く、小型軽量化されて取扱いも極めて容易であ
り、また、準備時間、治療時間も短縮され、更に
は製造費等も安価である等、秀れた効果を有する
ものである。

【図面の簡単な説明】

図は、本発明装置の説明図である。 １…入口、２…濾過室、３…濃縮室、４…部
屋、５…０−リング、６…環状部材、７…出口、
８…出口、９…出口、１０…入口、１１…チユー
ブ、１２…ポンプ、１３…貯溜バツク、１４…コ
ツク。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 中空糸を内蔵した濾過室の濾液出口と、中空
   糸を内蔵した濃縮室の液体入口とが同一の部屋内
   に開口し、しかも、濾液出口と濾過室に設けられ
   た濃縮液循環用入口１０はいずれも濾過室に内蔵
   された中空糸の内壁に連通し、濃縮室に設けられ
   た液体入口と濃縮液出口９はいずれも濃縮室に内
   蔵された中空糸の内壁に連通し、かつ、濾過室と
   濃縮室が部屋４を介して一体に組立てられた複合
   型濾過濃縮器と、腹水輸送用チユーブ１１と、腹
   水濾過濃縮用ポンプ１２と、貯溜バツク１３とか
   らなり、上記複合型濾過濃縮器の濃縮液循環用入
   口１０と濃縮液出口９とが、それぞれ腹水輸送用
   チユーブ１１を介して貯溜バツク１３に接続され
   ていることを特徴とする腹水処理装置。