JPH0374484B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 方向性珪素鋼板の鉄損低減を目的としてこの明
細書では、減圧CVD処理の有利な適用について
の開発研究の成果を提案する。

一方向性珪素鋼板の電気・磁気的特性の改善な
かでも鉄損の低減に係わる極限的な要請を満たそ
うとする近年来の目覚ましい開発努力は、逐次そ
の実を挙げつつあるが、その実施に伴う重大な弊
害として、一方向性珪素鋼板の使用に当たつて
の、加工、組立てを経たのち、いわゆるひずみ取
り焼鈍がほどこされた場合に、特性劣化の随伴を
不可避に生じて、使途についての制限を受ける不
利が指摘される。

ひずみ取り焼鈍のような高温熱履歴を経ると否
とに拘わらず、上記要請を充足することが重要で
ある。

さて一方向形珪素鋼板はよく知られているとお
り製品の２次再結晶粒を（110）〔001〕すなわち
ゴス（Goss）方位に、高度に集積させたもので、
主として変圧器その他の電気機器の鉄心として使
用され電気・磁気的特性として製品の磁束密度
（B₁₀値で代表される）が高く、鉄損（W_17/50値で
代表される）の低いことが望まれる。

この一方向性珪素鋼板は複雑多岐にわたる工程
を経て製造されるが、今までにおびただしい発
明、改善が加えられ、今日では板厚0.30mmの製品
の磁気特性がB₁₀1.90T以上、W_17/501.50W／Kg以
下、また板厚0.23mmの製品の磁気特性がB₁₀1.89T
以上、W_17/500.90W／Kg以下の超低鉄損一方向性
珪素鋼板が製造されるようになつて来ている。

特に最近では省エネの見地から電力損失の低減
を至上とする要請が著しく強まり、欧米では損失
の少ない変圧器を作る場合に鉄損の減少分を金額
にして換算して変圧器価格に上積みする「ロス・
エバリユエーシヨン」（鉄損評価）制度が普及し
ている。

（従来の技術） このような状況下において最近、一方向性珪素
鋼板の仕上焼鈍後の鋼板表面に圧延方向にほぼ直
角方向でのレーザー照射により局部微少ひずみを
導入して磁区を細分化し、もつて鉄損を低下させ
ることが提案された（特開昭57−2252号、特公昭
57−53419号、特公昭58−26405号及び特公昭58−
26406号各公報参照）。

この磁区細分化技術はひずみ取り焼鈍を施さな
い、積鉄心向けトランス材料として効果的である
が、ひずみ取り焼鈍を施す、主として巻鉄心トラ
ンス材料にあつてはレーザー照射によつて折角に
導入された局部微少ひずみが焼鈍処理により開放
されて磁区幅が広くなるため、レーザー照射効果
が失われるという欠点がある。

上記従来法に従う鉄損低減に伴われた、ひずみ
取り焼鈍のような、高温熱履歴を経ることによる
効果の喪失を来すことのない、より有利な一方向
性珪素鋼板の鉄損低減方法として、鏡面状態に仕
上げられた方向性珪素鋼板の表面に、セラミツク
スの薄膜を被成する方法が開発された。

（発明が解決しようとする問題点） この発明は、上記したような、方向性珪素鋼板
の表面上へのセラミツクス薄膜の形成を、工業的
に有利なコイル単位で実施するのに好適なCVD
装置を提案することを目的とする。

（問題点を解決するための手段） この発明は、仕上焼鈍を経て、表面の酸化膜除
去後、鏡面状態に仕上げた方向性珪素鋼板の表面
上に、極薄張力被膜を被成するCVD装置であつ
て、ガス導入路と真空路を有する真空炉の内部
に、該真空炉内に装入されたルーズコイルの加熱
を司る加熱用ヒーターと、該ルーズコイルの上面
および側面を覆い、その均一加熱を助勢する均熱
用上蓋と、該上蓋の下方に配設され、炉内に導入
された反応ガスをルーズコイルへ強制的に送り込
む強制フアンと、該上蓋の上部を貫通して、ルー
ズコイル中を通過した反応ガスを炉外に排出する
排ガス通路とをそなえることを特徴とする低鉄損
一方向性珪素鋼板製造用の減圧CVD装置である。

まずCVD反応を行なうために鋼板と鋼板の間
にスペーサを挿入して間隙を作つてルーズコイル
とした後に減圧CVD処理を行なう。コイル間隙
を作るためのスペーサはコイルの上端部又は下端
部に挿入し、CVD反応後この端部はトリミング
によつて切断する。

この減圧CVD処理は、 Ｖ、Nb、Ta、Cr、Mo、Ｗ、Mn、Co、Ni、
Al、Ｂ及びSiよりなる群から選んだ少なくとも
１種の窒化物及び又は炭化物並びに、 Al、Ni、Cu、Ｗ、Si及びZnよりなる群から選
んだ少なくとも１種の酸化物の如き極薄張力被膜
を上記ルーズコイルに形成させることより、一方
向性珪素鋼板の鉄損を著しく減じることができ
る。

第１図にこの発明に従う減圧CVD装置の好適
例を断面で示し、図中１は真空炉、２は均熱用上
蓋、３は加熱用ヒータ、４はガス導入路、５はバ
ルブ、６はモーター、７は強制フアン、８は真空
路、９は所定の処理を行つた方向性珪素鋼板のル
ーズコイル、１０は排ガス路である。

ここに所定の処理というのは方向性珪素鋼板に
施される一連の工程を介した仕上焼鈍を経て、表
面上の酸化物を除去し、さらに鏡面状態にするこ
とを指す。

このルーズコイルに対し次のようにして鋼板表
面に極薄の張力被膜を形成させる。

すなわちCVD反応を行うために、第１図中に
斜線で示すように、巻取り後の鋼板と鋼板との間
に0.1〜10mm程度の〓間を有するようにスペーサ
ーを挿入して巻取り、ルーズコイル９とする。つ
いでこのルーズコイル９を真空炉１内に挿入し、
次に、真空ポンプを作動させることにより真空路
８を通して炉内を10^-2から10^-4トールの真空度に
する。

その後ガス導入路４からH₂ガスを導入すると
同時に、炉内ガスの流通を良くするため排ガス路
１０を通してガス引きを行ない真空炉内を常に減
圧（常用使用圧力は１〜500トール）下にしてル
ーズコイル９の鋼板間隙におけるガスの流れを良
くする。

次に加熱用ヒーター３を作動させコイルを600
℃から1000℃の温度に加熱保定した後、ガス導入
路４より例えば、TiCl₄とN₂、TiCl₄とCH₄又は
TiCl₄とCH₄とN₂の混合ガスを導入し、５分間〜
100時間で鋼板表面上に減圧CVD法により極薄張
力被膜を形成させる。

この際ルーズコイル９内を均一加熱するため均
熱用上蓋２を使用し、またコイルの層間隙雰囲気
中のガスの流通を良くするためモーター６により
強制フアン７によりガスの流通均一化を促進す
る。

このようにして、鋼板表面上に好ましくは0.1
〜1.0μｍ厚の極薄張力被膜を形成させることがで
き、この被膜形成によつて確実に一方向性珪素鋼
板の超低鉄損化が可能となる。

（作用） この発明に従う減圧CVD装置において極薄張
力被膜の形成を、とくに鏡面状態にした板面が相
互に離間したルーズコイルに対して適用するのは
主としてCVD反応により鋼板表面上に上記の極
薄張力被膜を形成させるためであり、ここに鏡面
状態は、表面あらさの度合いにて、中心線平均あ
らさ0.4μｍ以下で適合し、それというのは、この
ような表面あらさの仕上げ鋼板面に対して鋼板と
密着性にすぐれた極薄張力被膜の形成が可能にな
る。

TiCl₄ガスを用いるTiN、TiCおよびTi（CN）
被膜形成反応は例えば次の通りである。

2TiCl₄＋4H₂＋N₂→2TiN＋8HCl TiCl₄＋CH₄→TiC＋4HCl 2TiCl₄＋2CH₄＋N₂→2Ti（CN）＋8HCl 前記のものを含めてこれらの鋼板表面上に形成
させた被膜は地鉄との熱膨張の差があるので、こ
れによつて導入される鋼板の張力が鉄損の有効な
低減に寄与するほか、ひずみ取り焼鈍の如き、高
温熱履歴に影響されないのである。

実施例 仕上焼鈍済みの一方向性珪素鋼板（板厚0.23
mm）の表面を酸洗により酸化物を除去した後、電
解研磨により鋼板表面を鏡面状態にした後、鋼板
と鋼板の間に1.5mmφのスペーサを入れてルーズ
コイル９として、第１図に示した真空炉１内に挿
入した後、減圧CVDによりTiCl₄とN₂とH₂の混
合ガス雰囲気中で750℃、20hrにわたり処理して
鋼板表面上に0.7μｍ厚のTiNを形成させた。

その後りん酸塩とコロイダルシリカを主成分と
するコーテイング処理を行なつた。かくして得ら
れた製品の磁気特性は B₁₀＝1.92T、W_17/50＝0.73W／Kg であつた。

【図面の簡単な説明】

第１図はCVD装置の模式図である。 １……真空炉、２……均熱用上蓋、３……加熱
用ヒーター、４……ガス導入路、８……真空路、
９……コイル、１０……排ガス路。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 仕上焼鈍を経て、表面の酸化膜除去後、鏡面
   状態に仕上げた方向性珪素鋼板の表面上に、極薄
   張力被膜を被成するCVD装置であつて、ガス導
   入路と真空路を有する真空炉の内部に、該真空炉
   内に装入されたルーズコイルの加熱を司る加熱用
   ヒーターと、該ルーズコイルの上面および側面を
   覆い、その均一加熱を助勢する均熱用上蓋と、該
   上蓋の下方に配設され、炉内に導入された反応ガ
   スをルーズコイルへ強制的に送り込む強制フアン
   と、該上蓋の上部を貫通して、ルーズコイル中を
   通過した反応ガスを炉外に排出する排ガス通路と
   をそなえることを特徴とする低鉄損一方向性珪素
   鋼板製造用の減圧CVD装置。