JPH0337053B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、大径リング部と小径リング部の間が
蛇腹部とされており、圧縮された状態で等速形ジ
ヨイントに取付けられる、ブロー成形された樹脂
製の機械軸継手用ブーツ（以下単に「ブーツ」と
いう）における、蛇腹部の改良に関する。

尚、本明細書において“山部の肉厚”とは、山
部の頂部の肉厚をいう。

＜従来の技術＞ 上記タイプのブーツは、通常、ジヨイントに装
着するとき、多少ブーツを軸方向へ圧縮して装着
することになる。このことは、次に述べるような
ブロー成形上およびブーツ材料上の理由から、ブ
ーツの長さ寸法が大きくならざるを得ず、装着の
際、ブーツの長さを短くして装着する必要が生じ
ることにもとづいている。

すなわち、ブロー成形時には蛇腹部の山部を成
形する金型部位に材料が回りにくく、山部の肉厚
が谷部と比べて薄くなるのが通常である。このた
め、上記金型部位への材料の回り込みを円滑にし
て山部の肉厚を確保しようとすると、互いに隣り
合う山部間のピツチを比較的大きく設定しなけれ
ばならない。一方、ブーツ材料は樹脂であり、樹
脂はゴムと比べて本来的に可撓性に乏しい。その
ため、樹脂を材料とするブーツの可撓性の増大を
図るためには、山部および谷部を出来るかぎり多
く設けなければならない。これらの理由から、ブ
ーツの長さ寸法は大きく設定せざるを得なくな
る。

そこで、従来は圧縮時のブーツの変形を蛇腹部
へ均一に分散させた方が、ブーツの耐久性が向上
すると考えて、例えば第２図に示したように、蛇
腹部７の各山部は、第１山部が他の山部に比べて
厚肉に形成されていた。従つて、第２図のような
ブーツをジヨイントへ装着すると、図の仮想線で
示したように、各山部のピツチは略（Ｌ―ｌ）／
５短くなることとなる。ただし、Ｌはジヨイント
へ装着しない状態のブーツの長さ、ｌはジヨイン
トへ装着した状態のブーツの長さを示している。

尚、図中３は大径リング部、５は小径リング部
である。

尚、先行技術として、すべての山部の肉厚が均
一なブーツが知られている（特開昭58−134717号
公報、特願昭59−50328号（特開昭60−193620号
公報）および実願昭59−168925号（実開昭61−
84265号公報）参照）。

＜発明が解決しようとする問題点＞ このようなブーツは、ジヨイントへ装着すると
各山部間のピツチが短くなるので、ジヨイントが
交差運動するとき第３図に示したように、山部ど
うしの干渉（接触）や折曲（キンク現象）が大径
リング部３側の山部で発生し易くなる。よつて、
特に第２図のブーツでは第４山部ｂ（小径リング
部５から数える；以下同じ）で損傷が発生し、ブ
ーツの耐久性向上の妨げとなつていた（第５図の
“Ｘ”参照）。

なお、この問題点は、本出願人が見出した事実
である。

そこで本発明は、該大径リング部側の山部にお
ける損傷発生を防止し、ひいてはブーツの耐久性
を向上させることを目的とする。

＜問題点を解決するための手段＞ 本発明者らは、かかる目的を達成しようと研究
開発に努めてきたところ、大径リング部側の山部
のピツチを確保できれば、上記不具合を低減でき
ることに着目し、蛇腹部の第１山部（小径リング
部に最も近い山部）を他の山部に比べて薄肉と
し、圧縮時に、第１山部が優先的に折り畳まれる
ようにすると、上記大径リング部側の山部の耐久
性が向上することを見い出し、本発明を完成し
た。

＜実施の態様＞ 以下、本発明の構成を、第１図のブーツを例に
採り、詳しく説明する。

第１図は本発明に係るブーツの半断面図を示
す。このブーツは大径リング部３と小径リング５
の間に５山タイプの蛇腹部７が介装されて成るも
のであり、小径リング部５を回転軸へ、大径リン
グ部３をハウジングへそれぞれクランプ等で締着
してジヨイントへ装着する。そして、第２図のブ
ーツとは第１山部ａが他の山部に比べて薄肉化さ
れている点が相違している。尚、第１山部の薄肉
化の程度は、後述する第５図の結果からみて、第
１山部の肉厚／他の山部の肉厚平均の値を0.2な
いし0.9とすることが望ましい。このような第１
山部の薄肉成形は、(1)ブロー成形時のパリソンコ
ントロール（第１山部となるパリソンの部分を薄
肉とする）、(2)第１山部の曲率半径を小さくする
（材料が山部へまわりにくくなる）、(3)第１山部の
周方向へ切欠き溝を形成する等により行う。従つ
て、ジヨイントへ装着したときには、第１図の仮
想線で示した如く、剛性の最も小さくされた第１
山部ａのみが折り畳まれ、第２〜５山部のピツチ
は、ブーツをジヨイントへ装着する前後でほとん
ど変化しないこととなる。

ここで、第１谷部ｃの剛性を小さくし、第１谷
部ｃを折り畳ませることにより、ジヨイントへブ
ーツを装着したとき上記のように第２〜５山間の
ピツチを維持することも考えられるが、ジヨイン
トの交差運動時における圧縮伸長歪が谷部へは山
部に比して大きくかかるので、そのような谷部の
剛性を小さくすることは好ましくない。実際、後
述の実施例で述べるように、山部の耐久性が向上
するとブーツの耐久性は谷部の耐久性に支配され
ている。

尚、９は谷部の外周へ周方向に刻設された切欠
き溝であり、圧縮時（交差運動の）に蛇腹部７の
面接触を防止する等の役目を奏している。

このようなブーツ１は、ポリオレフイン系、ポ
リエステル系、ウレタン系、ビニル系等のTPE
材料でインジエクシヨンブロー等の方法で形成す
る。

＜発明の作用・効果＞ 上記のような構成のブーツは、ジヨイントへ装
着したとき第１山部が優先的に折り畳まれるので
第２〜５山部の折り畳みはほとんど発生しなくな
る（第１図）。つまり、第２〜５山部のピツチは
ブーツをジヨイントへ装着してもほとんど変化せ
ず、従来例（第２図）と比べると、第２〜５山部
のピツチが増長したことになる。従つて、ジヨイ
ントを第３図のようにして交差運動させた場合、
大径リング部側の山部どうしは接触しないか、又
は接触してもその接触圧は低減されることとな
る。更に、このように接触圧が小さいということ
は、大径リング部側の山部にかかるブーツの軸方
向の力が小さいということであるから、結局、キ
ンク現象も発生し難くなる。

よつて、従来損傷の発生しやすかつた大径リン
グ部側の山部（第１図のブーツでは第４山部ｂ）
の耐久性は向上し、ひいてはブーツの耐久性が著
しく向上する。そして、ブーツの耐久性は実施例
の如く、谷部の耐久性に支配されることとなる。

尚、小径リング部側の山部（第１図の第１山部
ａと第２山部）では干渉が生じるが、第３図を見
ても明らかなように、ジヨイント交差運動時の小
径リング部側山部の変形量（圧縮伸長歪）は小さ
いので、小径リング部側の山部の干渉がブーツの
耐久性に影響を及ぼすことはほとんどない。

＜実施例＞ 以下、本発明の実施例のブーツの耐久試験の結
果を述べる。

ポリエステル系TPEをインジエクシヨンブロ
ー成形により、各山部及び谷部が第４図の“●”
及び“ ”で示すような肉厚を有する第１図タイ
プのブーツを形成した。尚、第４図の“×”は従
来例（第２図）のブーツの肉厚を示している。

上記ブーツをジヨイントへ装着し（ジヨイント
用グリースも封入する）、ジヨイントを下記条件
で交差運動させる。

ジヨイント最大交差角 39度 回転速度 350rpm 雰囲気温度 100℃ その結果、き裂の発生で判断した各ブーツの耐
久寿命を第１山部の肉厚に対する第２〜５山部の
平均肉厚の比についてプロツトしたものを第５図
に示す。尚、実施例ではき裂が第４谷部ｄに発生
したのに対し、従来例ではき裂は第４山部ｂに発
生した。

第５図の結果より、第１山部を薄肉とした実施
例のブーツは、従来例のものに比して、耐久寿命
が約10〜20倍となり、第１山部の肉厚が薄くなる
につれてブーツの耐久性が向上することが判つ
た。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明のブーツの半断面図、第２図
は従来例のブーツの半断面図、第３図は従来例の
ブーツのジヨイント交差運動時の変形を示した
図、第４図は実施例及び従来例のブーツの各山
部、各谷部の肉厚を示したグラフ、第５図は第１
山部の肉厚変化とブーツの耐久寿命の関係を示し
たグラフである。 ３…大径リング部、５…小径リング部、７…蛇
腹部、ａ…第１山部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 大径リング部と小径リング部の間が蛇腹部と
   されており、圧縮された状態で等速形ジヨイント
   に取付けられる、ブロー成形された樹脂製の機械
   軸継手用ブーツであつて、 前記蛇腹部を構成する山部において前記小径リ
   ング部に最も近い山部が、圧縮時に優先的に折り
   畳まれるように、他の山部に比べて薄肉に形成さ
   れていることを特徴とする機械軸継手用ブーツ。 ２ 前記小径リング部に最も近い山部の肉厚と他
   の山部の平均肉厚との比が、0.2ないし0.9対１で
   あることを特徴とする前記特許請求の範囲第１項
   に記載の機械軸継手用ブーツ。