JPH0313532Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、２サイクルエンジンに関するもの
である。

エンジンの排気管内の排気ガスの流れは脈動流
であり、排気管内にはエンジンの回転数に応じて
進行速度が変化する脈動波が生じている。

２サイクルエンジンにおいては、この脈動波の
周波数特性とエンジンの排気ポートの開閉タイミ
ングを合致させて、排気管の後部で反射した脈動
波によつて排気工程末期に排気ポート周辺に正圧
が作用するようにすると、排気ポート周辺の正圧
によつて排気管内に吹き出る新気がシリンダ内に
押し戻されて掃気効率が高められるため、エンジ
ンの出力特性を向上させることができる。

しかし、排気管内での脈動波の周波数特性は、
排気管の寸法、形状による影響力が大きく、排気
管の寸法、形状を決めてしまうと、脈動波の周波
数特性を排気ポートの開閉タイミングと合致させ
て出力特性の向上を計れるエンジン回転数が或る
範囲に限定されてしまい、その他の回転数におい
ては、排気ポート周辺に負圧が作用し、シリンダ
内に送り込まれた新気が吸い出されることによつ
て掃気効率が低下して出力特性の低下を来たす恐
れがある。

そこで近年、ある範囲の周波数域で共振する膨
張室を排気管に連通し、排気ポート周辺に負圧が
作用するようなエンジン回転数域においては、前
記膨張室で脈動波を共振減衰させて負圧の減少を
計り、排気ポートに負圧が作用するエンジン回転
数域での出力低下を防止するようにした排気装置
が開発された。

第１図は、その従来例を示すもので、１がその
排気装置である。この排気装置１は、２サイクル
エンジンＥの排気ポートに接続された排気管３に
有頭筒状のパイプ４を接合し、該パイプ４によつ
て排気管３内に連通し、ある範囲の周波数域で共
振する膨張室５を得るようにしたもので、膨張室
５が排気管３内に開口する部分には、ある範囲の
周波数域で膨張室５と排気管３とを連通させる開
閉バルブ６が設けられている。

ところが、このような構造をなす排気装置は、
自動二輪車等の車輌に適用した場合に、排気管３
の周囲に突出したパイプ４によつて排気管３の外
観が損われたり、また、パイプ４を収納するスペ
ースを新たに車体側に確保する必要が生じ、この
収納スペース確保のためにエンジン周囲にある他
の装置の配置が拘速されたり、設計時に配置決め
に要する労力が増大するなどの問題があり、膨張
室を形成する構造等に工夫が要求されていた。ま
た、この種膨張室を備えた排気装置では、実際の
運転状態において排気温度が変化するため、膨張
室５内の温度も非常に変化し易い。この温度変化
は、膨張室５内の音速を変化させるため、所望の
タイミングで正弦波を排気ポートに到達させるこ
とができない場合を生じさせ、ひいては排気系の
ミスマツチにより所定出力が得られない場合を生
じさせていまう。特に、膨張室５内は熱が滞り易
いため温度変化が著しく、この改善が望まれてい
た。

本考案は上記問題を解消すべく堤案されたもの
で、排気管の外部にパイプ等を接合せずに排気管
内に連通する膨張室を得ることができ、したがつ
て排気ポートに負圧が作用するエンジン回転数域
での出力低下を防止するために、排気管の外観が
損われたり、収納スペース確保のために設計時に
配置決めに要する労力が増大したりすることがな
く、また、膨張室内の温度変化を押さえることに
より、排気系のミスマツチによつて所定出力が得
られなくなる事態を未然に防止することができる
２サイクルエンジンを堤供することを目的とす
る。

以下、本考案を第２図および第３図に示す一実
施例に基づいて説明する。

第２図は、本考案を適用した２サイクルエンジ
ンの断面図で１０はシリンダ本体、１１は該シリ
ンダ本体１０の排気ポート、１２はシリンダ本体
１０の吸気ポート、１３はシリンダヘツド、１４
は該シリンダヘツド１３をシリンダ本体１０に固
定するボルト、１５はシリンダヘツドカバー（以
下ヘツドカバーと略す）、１６は該ヘツドカバー
１５をシリンダ本体に固定するボルト、１７はシ
リンダ本体１０に固定されているクランクケー
ス、１８はクランク軸、１９はコンロツド、２０
はピストン、２１は排気管である。

前記ヘツドカバー１５は、その上部に補助カバ
ー２２をねじ止めしており、該補助カバー２２に
よりほぼ水平方向（第２図でピストン２０の摺動
方向と直交する方向）に広がつた膨張室２３が形
成されている。該膨張室２３は、エンジンの低速
回転時において前記排気管２１内に発生する脈動
波と共振するように容積、形状が設定されたもの
で、第２図および第３図に示すように、シリンダ
本体１０に穿設した鉛直方向の連絡孔２４を介し
て排気ポート１１に連通したもので、実質的に排
気管２１内と連通している。

前記連絡孔２４の排気ポート１１への開口部２
４ａには、開閉バルブ２５が設けられている。こ
の開閉バルブ２５は、エンジンの回転数を検出す
るガバナ（図示略）によつて開口部２４ａを開閉
するもので、膨張室２３の効果を期待するエンジ
ン回転数域（この実施例では低回転数域）で排気
ポート１１と連絡孔２４とを連通させるようにな
つている。

なお、第２図について補足説明すれば、２６は
点火プラグ、２７はキヤブレター、２８は膨張室
２３に対し隔壁２８ａを隔てて一体に設けられ
た、燃焼室２８ｂを囲む冷却水用の流路（水ジヤ
ケツト）２９は冷却水出口、３０は該出口２９を
開閉するサーモスタツト付バルブ、３１はリード
バルブである。

また、前述の実施例においては、補助カバー２
２を介して膨張室２３を形成するようにしている
が、これはヘツドカバー１５を鋳造によつて成形
する際の型抜きのために行つたもので、膨張室の
形状を鋳型の抜き方向に一致するように設定すれ
ば、補助カバー等を用いずにヘツドカバーと一体
の膨張室を形成することができる。

以上説明したように、本考案の２サイクルエン
ジンは、水ジヤケツトの上方および側方に隔壁を
隔てて膨張室および連絡孔を設けているので、変
化しやすい膨張室内の温度を一定に保ちやすく、
その結果温度変化による排気系のミスマツチを防
止し、脈動波を共振衰させることができるととも
に、所定の出力を得ることができるという効果が
ある。

また、排気ポートの開口部にエンジンの運転状
況に応じて開閉する弁を設けたので、排気ポート
に負圧が作用するエンジン回転数域での出力低下
を防止することができ、広い回転数域において機
関出力の向上を図ることができる。

さらには、上記構成とともに連絡孔をシリンダ
軸線と平行としかつ膨張室を点火プラグ側に偏位
させたことによつて、設計上シリンダ本体や排気
管から外部へ膨張室を突出させなくても、膨張室
の収納スペースを確保することができるために、
排気管やシリンダ本体の外観意匠を向上させるこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の排気装置の説明図、第２図は本
考案の一実施例を示す断面図、第３図は第２図の
−線に沿う断面図である。 １０……シリンダ本体、１１……排気ポート、
１３……シリンダヘツド、１５……シリンダヘツ
ドカバー（ヘツドカバー）、１６……ボルト、２
０……ピストン、２１……排気管、２２……補助
カバー、２３……膨張室、２４……連絡孔、２４
ａ……開口部、２５……開閉バルブ、２８……冷
却水用の流路（水ジヤケツト）、２８ａ……隔壁、
２８ｂ……燃焼室。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダ本体１０と、シリンダ本体１０上端に
   取り付けられたシリンダヘツド１３とを備え、シ
   リンダとシリンダヘツド１３の周囲に水ジヤケツ
   ト２８を形成するとともに、シリンダに設けられ
   た排気ポート１１から排気管２１を経て排気ガス
   を排気するようにした２サイクルエンジンにおい
   て、前記シリンダヘツド１３の燃焼室２８ｂを囲
   む前記水ジヤケツト２８の上部に隔壁２８ａを介
   して膨張室２３を設けるとともに、前記膨張室２
   ３と排気ポート１１の途中に形成し開口部２４ａ
   とを連通しかつシリンダ軸線方向とほぼ平行に延
   出する連絡孔２４を、シリンダの周囲を囲繞する
   前記水ジヤケツト２８の側方に隔壁２８ａを介し
   て設け、前記膨張室２３を連絡孔２４よりも点火
   プラグ２６方向へ偏位させ、前記開口部２４ａに
   はエンジンの運転状況に応じて開閉可能な弁２５
   を設けたことを特徴とする２サイクルエンジン。