JPH0245531Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ この考案は、例えば自動車のエンジン用バラン
サーシヤフトなどに使用される圧力変動部用軸受
に関する。

＜従来の技術＞ バランサーシヤフトは、クランクシヤフトの一
次不平衡力による振動を打ち消すために設けら
れ、２個の軸受けにより回転可能に支持される。

このバランサーシヤフト付きの自動二輪車用エ
ンジンは、たとえば第２図に示すように、クラン
クケース７内に漏れた未燃焼ガスを有効に再利用
するため、未燃焼ガスを中空のバランサーシヤフ
ト２内およびエアクリーナ部を介して燃焼室に還
元している。この場合、四サイクルエンジンで
は、混合気を使用するので、クランクケース７内
に漏れた未燃焼ガスにはエンジン潤滑用のオイル
が含まれている。このオイルが未燃焼ガスと共に
エアクリーナ部に混入するのを防止するため、シ
ールリング６がバランサーシヤフト２の軸受３と
クランクケース７との間に装着されている。シー
ルリング６は、その外径側６ａを止め金６ｂを介
してクランクケース７の段部７ａにタイトフイツ
トさせ、かつ、その内径側６ｃにシールリツプを
設けバランサーシヤフト２に摺接させている。上
記エアクリーナ部に遠い方のバランサーシヤフト
２の端部２ｃには、オープンタイプであつて未燃
焼ガスとオイルとの混合気が自由に通過し得る通
常の軸受け８が設けられている。さらに、バラン
サーシヤフト２の上記両軸受け３，８の間の部分
２ａには油孔１１，１１…が複数個設けられてい
る。

しかして、燃焼室内からクランクケース７内に
漏れたミスト状の未燃焼ガスは、オイルと共にク
ランクケース７とエアクリーナ部との間の圧力差
により図中矢印Ａ方向に沿つてバランサーシヤフ
ト２の内側および外側を流れる。このうちバラン
サーシヤフト２の内側を流れるオイルは、バラン
サーシヤフト２の回転による遠心力でバランサー
シヤフト２の油孔１１，１１…から矢印Ｂ方向に
沿つてバランサーシヤフト２の外側に振り出され
る。このオイルとバランサーシヤフト２の外側を
流れるオイルとが一緒になつて矢印Ｃ方向に沿つ
て流れてシールリング６により遮蔽される。一
方、未燃焼ガスはバランサーシヤフト２内を通過
してエアクリーナ部に導入され、エアクリーナ部
へのオイルの流れが阻止される。

＜考案が解決しようとする問題点＞ 自動二輪車用エンジンにおいては、エンジンが
二輪車部品の中で大きな容積を占めるため、エン
ジンに使用される部品は軽薄短小にすることが必
須条件である。

ところで、クランクケース７内はクランクシヤ
フトの回転により、常時、±１Kg／cm²程度の圧力
変動を起こしている。また、クランクケース７内
の温度も高い。

しかるに、上記軸受３に施されたシールリング
６は、圧力変動に対する耐久性や高温耐久性に劣
り、シール機能を長期にわたり維持するのが困難
であるという問題がある。また、上記バランサー
シヤフト２は、通常、7000r.p.m.以上の高速で回
転しているのに対して、シールリング６がバラン
サーシヤフト２に強く接触しているために摩耗が
激しく、同じく、長期間のシール性が問題とな
る。さらに、シールリング６はオイルの漏れを防
止するため、クランクケース７に対し外径側をタ
イトフイツトにして組み付けられているため、組
み付け時にシールが倒れた形で組み付けられやす
く、オイル漏れが生じやすい。

本考案は上記問題を解決するものであり、その
目的とするところは、軸受けとは別体のシールリ
ングを必要とせず、したがつて組み込み忘れや組
み込み時の倒れがなくて装着容易で、かつ、クラ
ンク室内の圧力変動や高温度あるいはバランサー
シヤフトの高速転に対して、クランク室内に漏れ
たミスト状のオイルがエアクリーナ部に漏れるの
を長期にわたり確実に防止しうる耐久性の高い圧
力変動部用軸受を提供することにある。

＜問題点を解決するための手段＞ 上記目的を達成するため、この考案の圧力変動
部用軸受は、第１図に例示するように、第１軌道
輪２２と第２軌道輪２３との間に転動体２４，２
４…を配置し、この転動体２４，２４…の存する
箇所の少なくとも片側を輪状のシール板２６で外
部に対してシールする圧力変動部用軸受であつ
て、上記第１軌道輪２２の周面２２ｂの端部に周
段部２７を形成し、この周段部２７に環状シール
カバー２８を固定して上記周段部２７と上記環状
シールカバー２８とで凹所３１を形成し、上記輪
状のシール板２６の第２軌道輪２３の側を第２軌
道輪２３に固定する一方、上記輪状のシール板２
６の第１軌道輪２２の側に、軸方向内方に延びて
軸受外部側の圧力上昇によるシール板の軸方向内
方への揺動によつて上記周段部２７の肩部２７ａ
との接触圧を大きくされる内リツプ３５ａと軸方
向外方に延びて軸受内部側の圧力上昇によるシー
ル板の軸方向外方への揺動によつて上記環状シー
ルカバー２８との接触圧を大きくされる外リツプ
３５ｂと上記内リツプ３５ａと上記外リツプ３５
ｂとの間で径方向に第１軌道輪側に延びて上記凹
所３１の周面２８ｅに微接触もしくは微少間隙を
有して近接する中リツプ３５ｃとからなる三重リ
ツプ部３５を形成してなることを特徴とする。

＜作 用＞ シール板２６に対して転動体２４の存する側が
正圧になつた時には、シール板２６に転動体２４
側から圧力が作用する。そうすると、シール板２
６はその第２軌道輪２３側の固定箇所を略中心と
して外方に向けて揺動して、シール板２６の三重
リツプ部３５の外リツプ３５ｂと環状シールカバ
ー２８との接触圧が大きくされ、転動体２４の存
する箇所が外部に対してシールされる。一方、転
動体２４の存する側が負圧になつた時には、シー
ル板２６は内方に向けて揺動し、内リツプ３５ａ
と第１軌道輪２２の周段部２７の肩部２７ａとの
接触圧が大きくされ、内リツプ３５ａによりオイ
ルの外部への漏れが遮断される。このように、圧
力変動に応じて軸方向に往復動する内リツプ３５
ａと外リツプ３５ｂのいずれかでシールし、さら
に、シール板２６の往復動にかかわりなく、第１
軌道輪との間で微接触もしくは微少隙間を有する
中リツプ３５ｃでシールするので、オイルは、シ
ール板２６により転動体２４の存する側の圧力変
動に関係なく、外部に対してシールされる。ま
た、オイルは内リツプ３５ａ、外リツプ３５ｂ、
中リツプ３５ｃの軸方向の往復動につれて転動体
２４の存する箇所から内リツプ３５ａと第１軌道
輪２２の肩部２７ａとの間を通り、さらに、凹所
３１の周面に微接触もしくは微少隙間を有して近
接する中リツプ３５ｃと凹所３１の周面との間を
通り外リツプ３５ｂの箇所までわずかに流れるた
め、外リツプ３５ｂの焼き付きが防止される。ま
た、内リツプ３５ａと外リツプ３５ｂとは周段部
２７の肩部２７ａと環状シールカバー２８にそれ
ぞれ互い違いに接触圧を増加させ、かつ中リツプ
３５ｃは凹所３１の周面に微接触または微少隙間
を有するものであるからシールトルクが小さくな
る。また、シール板２６は第２軌道輪２３に固定
されているから装着が容易で組み込み忘れもな
い。

＜実施例＞ 第１図はこの考案の一実施例である圧力変動部
用軸受を示す断面図であり、この圧力変動部用軸
受２１は、第２図に示す従来例の圧力変動部用軸
受３と同じ箇所、つまりバランサーシヤフト２の
エアクリーナ部に近い方の端部２ｂに後述するシ
ール板２６の方をエアクリーナ部に向けて設けら
れる。

第１図において、２２は第１軌道輪としての内
輪、２３は第２軌道輪としての外輪、２４，２４
…は内輪２２の軌動面２２ａと外輪２３の軌動面
２３ａとの間に配置した転動体としてのボール、
２５はボール２４，２４…を保持する保持器、２
６は心金部２６ａとゴム部２６ｂとからなる輪状
のシール板である。

上記内輪２２の外周面２２ｂの一方の端部を縮
径して周段部２７を形成している。この周段部２
７に円周部２８ａと垂直部２８ｂとからなる断面
Ｌ字形状の環状シールカバー２８の内周面２８ｃ
を嵌め込んで、環状シールカバー２８を内輪２２
に固定している。そして、上記周段部２７の肩部
２７ａと上記環状シールカバー２８とで凹所３１
を形成している。垂直部２８ｂの外表面２８ｆと
内、外輪２２，２３の端面とはほぼ同一面となる
ようにしている。また、上記外輪２３の内周面２
３ｂにおいて内輪２２の周段部２７に対応する端
部に周段部３２を形成している。

上記シール板２６の外周部３３には、図示する
ような屈曲部３３ａを形成し、この屈曲部３３ａ
を外輪２３の周段部３２に取り付けている。一
方、シール板２６の内周部３４には、三重リツプ
３５を形成している。この三重リツプ３５はゴム
部２６ｂからなり、軸方向Ｘの内方に延びて軸受
外部側の圧力上昇によるシール板２６の軸方向内
方への揺動によつて内輪２２の周段部２７の肩部
２７ａとの接触圧を大きくされる内リツプ３５ａ
と、軸方向Ｘの外方に延びて軸受内部側の圧力上
昇によるシール板２６の軸方向外方への揺動によ
つて環状シールカバー２８の垂直部２８ｂの内面
２８ｄとの接触圧を大きくされる外リツプ３５ｂ
と、内リツプ３５ａと外リツプ３５ｂとの間で径
方向内方に延びて凹所３１の周面である環状シー
ルカバー２８の円周部２８ａの外周面２８ｅに微
接触もしくは微少間隙を有して近接する中リツプ
３５ｃとからなる。上記三重リツプ３５の内リツ
プ３５ａと外リツプ３５ｂとの軸方向Ｘの寸法は
実施例の場合、凹部３１の幅よりも狭くなつてお
り、外リツプ３５ｂが環状シールカバー２８の垂
直部２８ｂの内面２８ｄに当接すると、内リツプ
３５ａが内輪２２の周段部２７の肩部２７ａから
離れる寸法構造になつている。（少なくとも内リ
ツプ３５ａが肩部２７ａと軽く触れあう程度まで
離れるようにする。）すなわち、内リツプ３５ａ
が大きな接触圧での接触状態にあるときは外リツ
プ３５ｂが非接触状態もしくは微接触状態になる
一方、内リツプ３５ａが非接触状態もしくは微接
触状態にあるときは外リツプ３５ｂが大きな接触
圧での接触状態になるようにしている。そして、
内、外リツプ３５ａ，３５ｂが同時に大きな接触
圧での接触状態にならないようにしてシールトル
クを小さくし、かつオイルが内、外リツプ３５
ａ，３５ｂの箇所にいつて焼き付きを防止するよ
うにしている。

上記構成の圧力変動部用軸受２１において、転
動体２４が存する側の圧力が正圧の場合には、シ
ール板２６は外輪２３の周段部３２に固定されて
いる外周部３３を中心として軸方向Ｘの外方に揺
動される。そうすると、三重リツプ３５の外リツ
プ３５ａが環状シールカバー２８の垂直部２８ｂ
の内面２８ｄに大きな接触圧で当接する一方、内
リツプ３５ａが内輪２２の周段部２７の肩部２７
ａから離されるか、もしくは微接触状態となる。
そして、未燃焼ガスに含まれるオイルは内リツプ
３５ａと肩部２７ａとの間を通つて、凹所３１の
周面に微接触または微少隙間を有して、軸方向Ｘ
に往復動する中リツプ３５ｃに補助的にシールさ
れた後、外リツプ３５ｂにより遮断される。した
がつて、オイルがシール板２６よりも外部に漏れ
ることは殆どない。また外リツプ３５ｂの箇所ま
でオイルが供給されるので外リツプ３５ｂの焼け
付きを防止できる。

また、転動体２４が存する側の圧力が負圧の場
合には、三重リツプ３５の内リツプ３５ａが内輪
２２の肩部２７ａに大きな接触圧で当接してオイ
ルは内リツプ３５ａによりシールされる。そし
て、上記圧力が正圧から負圧または負圧から正圧
に切り換わる過渡時には、中リツプ３５ｂでオイ
ルはシールされる。また、内リツプ３５ａと外リ
ツプ３５ｂの間に存するオイルは、中リツプ３５
ｃの往復動により、少しずつ外リツプ３５ｂの所
に運ばれる。しかし、この漏れは殆ど無視でき、
逆に潤滑効果により、外リツプ３５ｂの耐久性を
向上できる。このように、シール板２６の三重リ
ツプ部３５により転動体２４が存する側の圧力の
変動に応じて内、外リツプ３５ａ，３５ｂが軸方
向Ｘに往復動して、オイルの外部への漏れを防止
するので、エアクリーナ部へのオイルの混入を回
避でき、また外リツプ３５ｂにオイルを供給して
外リツプ３５ｂの耐久性を向上する。また、内リ
ツプ３５ａと外リツプ３５ｂとは周段部２７の肩
部２７ａと環状シールカバー２８にそれぞれ互い
違いに接触し、かつ中リツプ３５ｃは凹所３１の
周面に微接触またか微少隙間を有するものである
からシールトルクが小さくなる。またシール板２
６はその外周部３３を外輪２３の周段部３２に固
定して圧力変動部用軸受２１と一体ものとなつて
いるので、従来例の如き、組込時の困難性や組み
込み忘れがない。

上記実施例では、シール板２６の外周部３３を
外輪２３の周段部３２に固定する一方、シール板
２６の内周部３４を三重リツプ３５にして、この
三重リツプ３５を内輪２２の周段部２７に当接さ
せる場合について説明したが、逆に、シール板２
６の外周部を三重リツプ３５にして、この三重リ
ツプ３５を外輪２３の周段部３２に当接させる一
方、シール板２６の内周部３４を内輪２２の周段
部２７に固定してもよい。また、環状シールカバ
ーは、必ずしも断面Ｌ字状にする必要はなく、輪
状の板により構成してもよい。

＜考案の効果＞ 以上の説明で明らかなように、この考案の圧力
変動部用軸受は、第１軌道輪の周段部に環状シー
ルカバーを固定し、この周段部と環状シールカバ
ーとで凹所を形成し、輪状のシール板の第２軌道
輪の側を第２軌道輪に固定する一方、シール板の
第１軌道輪の側に、軸方向内方に延びて周段部の
肩部に接離する内リツプと軸方向外方に延びて環
状シールカバーに接離する外リツプと内リツプと
外リツプとの間で径方向に延びて凹所の周面に微
接触もしくは微少間隙を有して近接する中リツプ
とからなる三重リツプ部を形成している。

したがつて、この考案によれば、転動体の存す
る側の圧力が正圧のときは、外リツプが環状シー
ルカバーに当接してオイルの外部への漏れを防止
できる一方、転動体の存する側の圧力が負圧のと
きは、内リツプが肩部に当接してオイルの外部へ
の漏れを防止でき、過渡時の軸方向の往復動中に
おいては、中リツプを凹所の周面に微接触もしく
は微少間隙を有して近接するようにしているの
で、中リツプでオイルのシールを行うことがで
き、オイルの漏れを確実に防止できる。また、内
リツプと外リツプとは周段部の肩部と環状シール
カバーにそれぞれ互い違いに接触し、、かつ中リ
ツプは凹所の周面に微接触または微少隙間を有す
るものであるから、シールトルクを小さくでき
る。また、内リツプ、外リツプ、中リツプの軸方
向の往復動により、外リツプの所までオイルが供
給されるので、外リツプの焼き付きを防止して、
シール板の耐久性を向上できる。また、シール板
の第２軌道輪の側を第２軌道輪に固定してシール
板と第２軌道輪とを一体にしたので、従来例の如
き、シール板の組み込みを忘れたりすることはな
く、正確かつ容易に装着できる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例を示す断面図、第
２図は従来例を示す概略図である。 ２２……第１軌道輪、２２ｂ，２８ｅ……周
面、２３……第２軌道輪、２４……転動体、２６
……シール板、２７……周段部、２７ａ……肩
部、２８……環状シールカバー、３１……凹所、
３５……三重リツプ部、３５ａ……内リツプ、３
５ｂ……外リツプ、３５ｃ……中リツプ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 第１軌道輪と第２軌道輪との間に転動体を配
   置し、この転動体の存する箇所の少なくとも片
   側を輪状のシール板で外部に対してシールする
   圧力変動部用軸受であつて、 上記第１軌道輪の周面の端部に周段部を形成
   し、この周段部に環状シールカバーを固定して
   上記周段部と上記環状シールカバーとで凹所を
   形成し、上記輪状のシール板の第２軌道輪の側
   を第２軌道輪に固定する一方、上記輪状のシー
   ル板の第１軌道輪の側に、軸方向内方に延びて
   軸受外部側の圧力上昇によるシール板の軸方向
   内方への揺動によつて上記周段部の肩部との接
   触圧を大きくされる内リツプと軸方向外方に延
   びて軸受内部側の圧力上昇によるシール板の軸
   方向外方への揺動によつて上記環状シールカバ
   ーとの接触圧を大きくされる外リツプと上記内
   リツプと上記外リツプとの間で径方向に第１軌
   道輪側へ延びて上記凹所の周面に微接触もしく
   は微少間隙を有して近接する中リツプとからな
   る三重リツプ部を形成してなることを特徴とす
   る圧力変動部用軸受。 (2) 上記実用新案登録請求の範囲第１項に記載の
   圧力変動部用軸受において、 上記環状シールカバーは断面Ｌ字形状であつ
   て、円周部と平面部からなつていることを特徴
   とする圧力変動部用軸受。