JPH0129177Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、車両におけるステアリングコラム
のチルト装置に関し、より詳しくは跳ね上げ機構
を付設したステアリングコラムのチルト装置に関
する。

〔従来技術〕

この種のステアリングコラムのチルト装置とし
て特開昭58−85756号公報に係るものが先に本出
願人により提案されている。特開昭58−85756号
公報に係るチルト装置の概略を第１図をもとにし
て説明すれば次の通りである。尚、以下に述べる
跳ね上げ機構とは、チルト機構を備えたステアリ
ングコラムにおいては、ステアリングホイールの
ポジシヨンによつてはこれが乗員乗降時の障害と
なることがあるが、これを回避するためにそれま
での最適ドライビングポジシヨンを機械的に記憶
したままでステアリングホイールを最上限位置ま
で回動させるための機構をいう。

先ず、チルト操作に際して、第１図の状態から
操作レバー６２を反時計方向に引き上げると、ロ
ツクプレート６１の起立部６３が操作レバー６２
の端面と当接していることからロツクプレート６
１と操作レバー６２が一体となつて反時計方向に
回動し、同時にロツクプレート６１上のローラ３
５がカム面４６から離間して係合溝４５に係合
し、これによつてラチエツト４３が反時計方向に
回動されるためアツパーツース４４とロアツース
３７との噛み合いが解除される。

すると、コイルスプリング３１の作用によりチ
ルトブラケツト２４がリンク３９と係合したまま
の状態で反時計方向に回動し、固定ブラケツト２
２に形成された長穴３２の一内側面（第１図では
右側内側面）がローラ４２に当接する位置まで移
動する。そして、ステアリングホイールの最適ド
ライビングポジシヨンを定めるべくチルトブラケ
ツト２４を所定の位置まで時計方向に押し下げた
のち操作レバー６２を開放すると、操作レバー６
２、ロツクプレート６１ならびにラチエツト４３
がそれぞれに初期状態に復帰してチルトブラケツ
ト２４を拘束し、その結果としてステアリングホ
イールの最適ドライビングポジシヨンが保持され
る。

一方、乗員乗降時のいわゆる跳ね上げ動作に際
しては、先ず、操作レバー６２を時計方向に押し
下げると、操作レバー６２の下端面６２ａがリン
ク３９の上端面３９ａに当接してリンク３９全体
をピン４０を回転中心として押し下げることか
ら、チルトブラケツト２４の係合溝６０とローラ
６８との係合が外れる。この時、操作レバー６２
の端部が起立部６３から離間するために同時にラ
チエツト４３が動くことはなく、アツパーツース
４４とロアツース３７とは噛み合つたままであ
る。すると、チルトブラケツト２４がコイルスプ
リング３１の作用により反時計方向に回動・上昇
し、ストツパー２４ａが固定ブラケツト２２の端
部２２ａに当接した位置で停止する。これが跳ね
上げ位置となる。この跳ね上げ状態で操作レバー
６２を開放すると、コイルスプリング６６の作用
により操作レバー６２が起立部６３に当接するま
で回動し、またリンク３９のローラ６８がチルト
ブラケツト２４の斜面部２４ａに乗り上げるかた
ちとなり、この状態をもつて前記の跳ね上げ状態
を保持する。

また、前記の跳ね上げ状態から元の最適ドライ
ビングポジシヨンに復帰させるに際しては、操作
レバー６２を何ら操作することなくチルトブラケ
ツト２４を時計方向に押し下げると、前記のロー
ラ６８が斜面部２４ｂ上を摺接して係合溝６０に
係合するため、これをもつて先の最適ドライビン
グポジシヨンが再現されることになる。

つまり上記の構造によれば、たとえ跳ね上げ操
作を行なつてもアツパーツース４４とロアツース
３７の噛み合いが外されることがないため、先の
ポジシヨンはそのまま維持できることになり、跳
ね上げ状態を解除すれば先の最適ドライビングポ
ジシヨンを直ちに再現することができ、よつて何
ら再調整を施す必要がないという利点を有する。

ところが上記のチルト装置によれば、操作レバ
ー６２をチルト操作と跳ね上げ操作とに共用化
し、操作レバー６２を上方に回動操作することで
チルト動作を、また操作レバー６２を下方に回動
操作することで跳ね上げ操作をそれぞれ行なうよ
うになつているために、次のような不具合が生ず
る。

すなわち、操作レバー６２を上下両方向に回動
操作できるようにすることでその最大操作角が大
きくなり、それによつて必然的に操作レバー６２
の操作スペースを大きく確保する必要があるほ
か、とりわけ上方への回動操作のための操作スペ
ースは車両の計器盤等と干渉するおそれがあり、
それによつて計器盤回りのレイアウト上の自由度
を制約することとなつて好ましくない。

〔考案の目的〕

この考案は以上のような点に鑑みて、一本の操
作レバーをチルト操作用と跳ね上げ操作用とに共
用化するも、その最大操作角ひいては操作スペー
スを小さくして、計器盤回りのレイアウト自由度
の制約を緩和することを目的とする。

〔考案の構成〕

本考案のチルト装置においては、前述したよう
に一本の操作レバーをチルト操作用と跳ね上げ操
作用とに共用化した上で、いずれの操作時にも操
作レバーを押し下げることで対処できるようにし
たもので、使用頻度の高い跳ね上げ操作には操作
レバーを押し下げ、また使用頻度の少ないチルト
操作には操作レバーをその長手方向に引つ張りつ
つ押し下げることで所期の目的を達成する。

〔実施例〕

以下、この考案のより具体的な実施例を図面に
基づいて説明する。

第２図〜第５図はこの考案の一施例を示す図
で、特に第２図はその全体構成について示してい
る。７０はダツシユブラケツト７１を有してなる
ロアチユーブ、７２はロアチユーブ７０と一体に
形成された固定ブラケツト、７３はアツパーチユ
ーブ、７４はアツパーチユーブ７３と一体に形成
された略コの字状のチルトブラケツトである。固
定ブラケツト７２とチルトブラケツト７４は軸７
５により回動可能に連結されている一方、固定ブ
ラケツト７２およびダツシユブラケツト７１はそ
れぞれに図外のボルト等の固定手段により車体Ｂ
の一部に固定されている。

また、固定ブラケツト７２を含むロアチユーブ
７０内にはロアシヤフト７６ａが、アツパーチユ
ーブ７３内にはアツパーシヤフト７６ｂがそれぞ
れに挿入されている。これらロアシヤフト７６ａ
およびアツパーシヤフト７６ｂは固定ブラケツト
７２内に設けた自在継手（図示省略）を介して相
互に連結されてステアリングシヤフト７６を構成
している。そして、ステアリングシヤフト７６の
一端にはステアリングホイール７７が、他端には
自在継手７８がそれぞれに連結されていて、自在
継手７８は図外のギヤボツクスに連結されてい
る。

第３図および第４図において、前述したように
軸７５にて固定ブラケツト７２に軸支されたチル
トブラケツト７４は、該チルトブラケツト７４の
端部７９と固定ブラケツト７２側のフツク８０と
の間に張設したコイルスプリング８１により、軸
７５を回転中心として常に反時計回り方向に回動
付勢されている。

一方、固定ブラケツト７２の一側部には長穴８
２が形成されているほか、第１のピン８３と第２
のピン８４とがそれぞれに一体に突設されてい
る。第１のピン８３には、ロアツース８５を有す
るツースプレート８６と、ロツクプレート８７、
ならびにチルト操作レバーと跳ね上げ操作レバー
とを兼ねた操作レバー８８の三者が互いに重なり
合うようにしてそれぞれに回動可能に軸支されて
いる。

そして、ロツクプレート８７にはローラ８９が
軸支されているほか、鉤形状の係合溝９０が形成
されている。

前記第１のピン８３に対する操作レバー８８の
軸支部には長穴９１が形成されており、この長穴
９１の範囲内で操作レバー８８が第１のピン８３
に沿つてその長手方向にスライド可能となつてい
る。さらに、この操作レバー８８には前記の係合
溝９０に係合するピン９２が突設されているほ
か、後述するリンク９４と対接する部位には突起
９３（第４図）が折曲形成されている。

前記ツースプレート８６の下端部にはリンク９
４の一端がピン９５を介して回動可能に連結され
ており、第５図に示すようにピン９５上に設けた
ローラ９６が固定ブラケツト７２の長穴８２に係
合している。一方、リンク９４の他端にはピン９
７を介してローラ９８が設けられており、このロ
ーラ９８がチルトブラケツト７４に形成した開口
長穴状の係合溝９９に係合している。

また、前記第２のピン８４にはラチエツト１０
０が回動可能に軸支されており、このラチエツト
１００には、ロアツース８５に噛み合うアツパー
ツース１０１が形成されているほか、前記のロー
ラ８９が係合する略くの字状の溝カム１０２が形
成されている。

尚、第３図中の１０３はチルトブラケツト７４
とリンク９４との間に張設されて該リンク９４に
復帰力を付与するためのリターンスプリング、１
０４は固定ブラケツト７２の一部と操作レバー８
８との間に張設されて該操作レバー８８に復帰力
を付与するためのリターンスプリング、１０５は
同じく固定ブラケツト７２の一部とロツクプレー
ト８７の間に張設されて該ロツクプレート８７に
復帰力を付与するためのリターンスプリングであ
る。

次に以上の構成に係るチルト装置の作用につい
て説明する。

先ず、第３図の状態においては、チルトブラケ
ツト７４がコイルスプリング８１にて反時計回り
方向に回動付勢されてはいるものの、係合溝９９
とローラ９７が係合し、またロツクプレート８７
がリターンスプリング１０５にて引つ張られるこ
とで、ローラ８９と溝カム１０２との係合により
ラチエツト１００が第２のピン８４を中心として
時計回り方向に押圧されている。それによつてア
ツパーツース１０１とロアツース８５とが噛み合
い、チルトブラケツト７４の回動が阻止されてい
る。この状態がチルトロツク状態で、第３図の状
態を保持している。

一方、チルトブラケツト７４の角度を変更する
チルト操作に際しては、先ず第３図の状態から操
作レバー８８を矢印Ａ方向に引つ張ると、操作レ
バー８８は長穴９１の長さ分だけスライドする。
すると、第６図に示すように、それまで係合溝９
０内の中立位置にあつたピン９２が上記係合溝９
０の上半部と係合し、同時に突起９３がリンク９
４から外れることになる。そして、上記操作レバ
ー８８を引つ張りつつ矢印Ｂ方向に押し下げる
と、ピン９２と係合溝９０の上半部との係合のた
めにロツクプレート８７が第１のピン８３を回転
中心として時計回り方向に回動する。このロツク
プレート８７の回動によりローラ８９と溝カム１
０２とが相対移動することから、ラチエツト１０
０が溝カム１０２のカム変位量に応じて反時計回
り方向に押し上げられる。それによつてアツパー
ツース１０１とロアツース８５との噛み合いが解
除される。これがチルトロツク解除状態となる。

こうしてチルトロツクが解除されると、コイル
スプリング８１の力により、チルトブラケツト７
４がリンク９４と連結されたままの状態で反時計
回り方向に回動・上昇し、ローラ９６が長穴８２
の一端内側面（第５図および第６図では右端の内
側面）に当接した時点で停止する。そして、ステ
アリングホイール７７（第２図）の最適ドライビ
ングポジシヨンを定めるべく、チルトブラケツト
７４を所定位置まで時計回り方向に押し下げたの
ちに操作レバー８８を開放する。すると、操作レ
バー８８、ロツクプレート８７およびラチエツト
１００がそれぞれのリターンスプリング１０４，
１０５の力により初期状態に復帰し、アツパーツ
ース１０１とロアツース８５とが再び噛み合つて
チルトブラケツト７４を拘束する。その結果とし
て、ステアリングホイール７７の最適ドライビン
グポジシヨンが保持される。

次に、乗員乗降時の跳ね上げ操作に際しては、
第７図に示すように操作レバー８８を引つ張るこ
となく単に矢印Ｂ方向に押し下げると、突起９３
がリンク９４の上面に当たり、該リンク９４をピ
ン９５を回転中心として時計回り方向に押し下げ
る。すると、係合溝９９とローラ９８との係合が
外れ、チルトブラケツト７４はコイルスプリング
８１の力により反時計回り方向に回動・上昇し、
ストツパー１０６が固定ブラケツト７２の端部１
０７（第６図）に当接した位置で停止して跳ね上
げ状態となる。この時、アツパーツース１０１と
ロアツース８５は互いに噛み合つたままであり、
この両者の噛み合いにより先のドライビングポジ
シヨンが記憶されている。尚、跳ね上げ操作後に
操作レバー８８を開放すると、操作レバー８８は
初期位置に復帰するものの、ローラ９８が斜面部
９９ａに当接しているのでリンク９４は第７図の
状態にある。そしてチルトブラケツト７４はコイ
ルスプリング８１の力により跳ね上げ状態下に保
持される。

また、上記の跳ね上げ状態から元の最適ドライ
ビングポジシヨンに復帰させるに際しては、操作
レバー８８を何ら操作することなく、第７図の状
態からチルトブラケツト７４を時計回り方向に押
し下げると、リンク９４のローラ９８が斜面部９
９ａを滑動してローラ９８が係合溝９９に係合す
るため、これをもつて先の最適ドライビングポジ
シヨンが再現されることになる。

つまり、上記実施例によれば、一本の操作レバ
ーをチルト操作と跳ね上げ操作とに共用化し、使
用頻度の高い跳ね上げ操作時には操作レバーを押
し下げるものとし、また使用頻度の少ないチルト
操作時には操作レバーをその長手方向に引つ張り
つつ押し下げるようにしたことにより、操作レバ
ーの最大操作角は従来の半分程度となる。

尚、前記実施例においてはツースプレート８
６、ロツクプレート８７、ラチエツト１００およ
び操作レバー８８のそれぞれが固定ブラケツト７
２側に取り付けられている構造について説明した
が、前記各々の部材をチルトブラケツト７４側に
取り付けても同様の作用をする。ただし、この場
合には、操作レバー８８はチルトブラケツト７４
の角度に応じてその位置が変化することは言うま
でもない。また、溝カム１０２とローラ８９の相
対位置は逆であつてもよく、さらにローラ８９に
代えてカムを用いてもよい。

〔考案の効果〕

以上のようにこの考案によれば、一本の操作レ
バーをチルト操作用と跳ね上げ操作用とに共用
し、比較的使用頻度の高い跳ね上げ操作時には単
に操作レバーを押し下げ、また使用頻度の少ない
チルト操作時には操作レバーを長手方向に引つ張
りつつ押し下げるように構成したことにより、チ
ルト操作時には操作レバーを中立位置から上方に
引き上げなければならない従来の構造と比べて操
作性がよくなるほか、中立位置から上方への操作
レバーの操作スペースが不要となることから操作
レバーの最大操作角が従来の半分程度で済むこと
になり、それによつて操作レバーと計器盤等との
干渉のおそれがなくなり、計器盤の回りのレイア
ウト上の設計自由度を大きく確保できる効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のチルト装置の説明図、第２図は
この考案に係るチルト装置の一実施例を示す全体
説明図、第３図は第２図の要部拡大図、第４図は
第３図の下面図、第５図は第３図の−線に沿
う断面矢視図、第６図および第７図は第３図の作
動状態を説明するための説明図である。 ７０……ロアチユーブ、７２……固定ブラケツ
ト、７３……アツパーチユーブ、７４……チルト
ブラケツト、７７……ステアリングホイール、８
５……ロアツース、８６……ツースプレート、８
７……ロツクプレート、８８……操作レバー、９
０……係合溝、９１……長穴、９４……リンク、
９９……係合溝、１００……ラチエツト、１０１
……アツパーツース。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ロアチユーブ７０に一体的に連結された固定ブ
   ラケツト７２と、アツパーチユーブ７３に一体的
   に連結され、かつ前記固定ブラケツト７２に対し
   て回動可能に軸支されたチルトブラケツト７４と
   を備えてなり、 前記固定ブラケツト７２およびチルトブラケツ
   ト７４のうちいずれか一方のブラケツトに、アツ
   パーツース１０１を形成したラチエツト１００を
   回動可能に軸支するとともに、前記アツパーツー
   ス１０１に対して係合離脱されるロアツース８５
   を有するツースプレート８６と、前記ラチエツト
   １００の一部に接触して、アツパーツース１０１
   とロアツース８５同士を係合離脱させるためのロ
   ツクプレート８７と、操作レバー８８とをそれぞ
   れ同軸上に回動可能に軸支し、 前記ツースプレート８６と他方のブラケツトと
   をリンク９４を介して係合離脱可能に連結する一
   方、 前記操作レバー８８の軸支部には長穴９１を形
   成して操作レバー８８を長手方向にスライド変位
   可能に構成するとともに、ロツクプレート８７に
   形成された鉤形状の係合溝９０に係合するピン９
   ２を操作レバー８８に設け、 前記操作レバー８８を回動操作することでリン
   ク９４を押し下げて該リンク９４を他方のブラケ
   ツトとの係合を解除する一方、操作レバー８８を
   長手方向にスライド変位させた上で上記と同方向
   に回動操作することで前記ロツクプレート８７を
   一体的に回動させてアツパーツース１０１とロア
   ツース８５との噛み合いを解除するように構成し
   たことを特徴とするステアリングコラムのチルト
   装置。