JP781H - ポリテトラフルオロエチレンフアインパウダー - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレンフアインパウダー

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【発明の詳細な説明】 本発明は、新規なポリテトラフルオロエチレンフアイン
パウダー(以下「PTFEフアインパウダー」と略記す
る。)に関する。 PTFEフアインパウダーは、従来、電線被覆、細径チユー
ブ、大口径チユーブ、シールテープなどとして使用さ
れ、原料PTFEフアインパウダーとその加工性との関連に
ついても、すでに多くの研究がなされている。例えば、
電線被覆又は細径チユーブ用に適したPTFEフアインパウ
ダーは、高い絞り比(押出機のシリンダー断面積とノズ
ル断面積の比)で押出しが可能なものであり、特公昭3
7−4643号明細書、特開昭51−36291号明細
書などの記載技術により、ほぼ目的に適したPTFEフアイ
ンパウダーが得られる。大口径チユーブ用には、絞り比
の低い所で押出し得る原料が良いし、シールテープ(未
焼結テープ)用としては、高速カレンダーリングの工程
で受ける剪断力によつてテープが破壊したり、波打ちな
いしは失透など起り難いPTFEフアインパウダーが用いら
れる。この目的には、前記高い絞り比で押出し可能なPT
FEフアインパウダーは適当でない。かくして、用途、加
工条件に応じて、その目的に適した性質を有するPTFEフ
アインパウダーが開発され、有効に用いられてきた。 近年、PTFEの特殊な応用分野として、多孔性材料に対す
る関心が高まり、その製造法の幾つかはすでに公表され
ているが、例えば特公昭51−18991号明細書に記
載された発明はその代表的な一例であつて、これはPTFE
フアインパウダーのペースト押出物を未焼結のまま10
%/sec以上の高い延伸速度で延伸してマトリツクス引
張強度514kg/cm2以上の多孔体を製造する方法に関す
るものであつて、未焼結ペースト押出物が高温下で延伸
速度の極めて高い場合には切断することなく高度に延伸
されるという極めて特異な性質の発見に基づくものであ
る。かくして延伸されたPTFE成形体は延伸方向に対する
強度が高く、見掛密度が低い多孔体であり、そのまま又
は焼成した後、有用な多孔性材料として使用される。 本発明の目的は、延伸性のすぐれた新規PTFEフアインパ
ウダーを提供することにある。又、別の目的としては、
高結晶性で高い分子量の新規PTFEフアインパウダーを提
供することにある。 特公昭51−18991号明細書に開示されている如
く、未焼結PTFEペースト押出物を延伸する場合、高温ほ
ど切断し難く、且つ延伸速度の大なるほど切断せずに高
度に延伸することができる。しかして、延伸速度は、場
合によっては、5000%/secないし40,000%/secな
どの高速度が適用される。又、延伸性(切断せずに延伸
し得る性質)は、原料PTFEフアインパウダーによつて異
なり、例えば、特公昭37−4643号明細書に開示さ
れる方法によつて得られる変性PTFEフアインパウダーは
延伸性が悪く、多孔性材料を得るにより、より速い延伸
速度とより高い温度での延伸工程を必要とする。なお
又、一般に原料PTFEフアインパウダーの結晶化度が高い
ほど、その延伸性は良好な傾向にあり、原料PTFEフアイ
ンパウダーをあらかじめ200℃以上融点以下の温度で
加熱処理を行なつた場合、その延伸性が向上する傾向を
示すことも知られている。 本発明にかかるPTFEフアインパウダーは、平均分子量が
500万以上、より好ましくは550万以上であり、非
晶係数(Amorphous Index以下「A.I.」と略記する。)
が、0.1以下、より好ましくは0.09以下であり、数平均
の一次粒子径が0.10ミクロンないし0.40ミクロン、より
好ましくは0.15ミクロンないし0.38ミクロンであり、か
つ示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimete
r以下「DSC」と略記する。)により融点の測定を行
う結晶融解図上347℃±2℃の範囲に鋭い吸熱ピーク
を持ち、330℃から該吸熱ピークの温度までの間に
は、明確なピークないしはシヨルダーを示さないか、又
は示す場合にもわずかなシヨルダーにすぎない程度の結
晶融解図を示すことを特徴とする。このピークの鋭さ及
び他のピークないしはシヨルダーの有無は、後述の吸熱
比及び吸熱ピークの半価幅によつて定量的に表わされ、
吸熱比が0.3以下、好ましくは0.27以下であり、吸熱ピ
ークの半価幅が6deg.以下、好ましくは5.5deg.以下で
ある。 本発明において、平均分子量は重合体の比重(S.G.)をま
ず測定し、このS.G.の値から次式によつて求められる。 1og10Mn=28.524−9.967×(S.G.) この式に従えば、例えば平均分子量500万はS.G.2.19
に相当する。換言すれば本発明において平均分子量50
0万以上と云うことは、S.G.2.19以下であることと同義
である。同様に平均分子量550万以上と云うことはS.
G.2.185以下であることと同義である。 重合体のS.G.の求め方は次の方法によつて行う。即ち、
23〜25℃に調温した雰囲気中で試料粉末5gを断面
が直径32mmの円形である金型中で200kg/cm2の圧
力で圧縮し、これを金型からとり出して380℃の空気
炉に入れ、30分間焼成したのち、70℃/hrの冷却速
度で300℃まで冷却し、炉よりとり出して室温中で放
冷する。S.G.はこのサンプルの空気中の重さと、同体積
の23℃の水と重さの比を求め、この値を0.9822倍し、
0.04864を加えることにより求められる値である。 本発明において、A.I.値は、重合体の赤外線吸収スペク
トルにおいて波長778cm-1におる吸光度を波長236
7cm-1における吸光度で除した値である。 本発明において、DSCによる融解試験は次の方式で行
われる。即ち、未焼結のPTFEフアインパウダーを10mg
精秤し、これを専用のアルミパンに収納し、高感度のD
SCであるパーキンエルマー社製DSCII型を使用して
融点に於ける結晶の融解を測定する。この際、融点に於
ける融解熱量に比例して記録紙上に融解による吸熱ピー
クが記録される。融解による吸熱ピーク頂点の現われる
温度から少なくとも80℃低い温度から昇温速度は20
℃/minに正確に調整されねばならない。何故なら、良
く知られているように、PTFE結晶の融解ピークの温度及
びピークの形は、熱測定を行う時の昇温速度によつて影
響されるからである(冷えばAppl.Polymer Symposia.N
o.2,101〜109頁(1966年))。かくして測定さ
れた未焼結PTFEフアインパウダーの結晶融解図形から吸
熱ピークの温度を読みとり、同時に330℃ないし該吸
熱ピークの間における他のピークないしはシヨルダーの
有無を測定する。なお、ピークが2つ以上あらわれる場
合(例えば第5図参照)は最高ピークが吸熱ピークであ
る。例えば第1図は実施例2に従つて得られたPTFEフア
インパウダーのDSCによる吸熱図形を示すものであ
り、この粉末の場合約346℃(619゜K)に鋭い吸熱
ピークを有していることがわかる。ここで吸熱ピークの
鋭さ及びシヨルダーの有無は吸熱比及び吸熱ピークの半
価幅によつて示すことができる。その求め方を第1図上
で説明すると、ピーク(A)より垂線を下ろし、ベース
ライン(L)との交点を(B)とし、さらにこのピーク
の温度346℃より10℃低い温度に前記垂線と平行に
線をひき、吸熱カーブとの交点を(C)、ベースライン
(L)との交点を(D)とするとき、▲▼/▲
▼を「吸熱比」と定義する。また、▲▼の中間点
(F)で横軸との平行線をひくとき、吸熱ピークとの交
点▲▼の距離、すなわち吸熱ピークのベースライン
からの高さの半分の点におけるピークの幅を「吸熱ピー
クの半価幅」と定義し、deg.の単位を持つ。 本発明のPTFEフアインパウダーを規定する前記の各性質
の有する意義について次に説明する。 本発明のPTFEフアインパウダーは、平均の分子量が50
0万以上、より好ましくは550万以上である。分子量
の値が500万以上の場合は、他の要件を満足したPTFE
フアインパウダーであつても好ましくない延伸性を与え
る。又、A.I.値が0.1以下、より好ましくは、0.09以下
であるべきである。高いA.I.値はより不完全なPTFE結晶
の存在を示し、A.I.値が0.1よりも高いフアインパウダ
ーはより低い延伸性を示す。0.1ミクロン以下の数平均
の一次粒子径を持つフアインパウダーは、ペースト押出
時における押出圧力を高めるために、加工工程に不適当
であり、0.4ミクロン以上の平均一次粒子径を持つフア
インパウダーは逆に押出圧力を低下せしめるので好まし
くない。 本発明のPTFEフアインパウダーは、DSC測定によつて
得られる結晶融解の吸熱ピークが347±2℃の温度範
囲にある。逆に吸熱ピークがこの範囲に入らないものは
本発明のPTFEフアインパウダーではない。この吸熱ピー
クの温度は一般に高分子量の重合体ほど高くなり、この
点を加味して考えると、本発明のPTFEフアインパウダー
が従来のものの中でも、最も分子量の高い部類に属する
ものと云うことができる。以上に加え、本発明のPTFEフ
アインパウダーのDSC測定による前記吸熱ピークは非
常に鋭いのが特徴であつて、この鋭さはこの粉末が吸熱
比の0.3以下および吸熱ピークの半価幅が6deg.以下と
してあらわされる。このような鋭さを有しないものは、
たとえ他の性質が要請される範囲にあつても良好なテー
プ延伸性を示さない。本発明で見出されたこのようなD
SC図形とペースト押出物の延伸性との関連は、非常に
興味あるものである。 第1〜5図は、DSCの測定図の一例を実施例および比
較例で得られたPTFEフアインパウダーについて示したも
のである。いずれも340〜450℃付近の吸熱ピーク
の前後付近のみを示したもので、横軸は温度(゜K)を、
縦軸は単位時間当りの吸熱量を表わし、図面中に単位量
(mcal/sec)を記入してあり、また吸熱ピークおよびこ
れを基準として10℃低い温度に縦破線を加えてある。
この中、第1図および第2図は、本発明の条件を満たす
粉末に関するDSCの測定図であつて、吸熱ピークは一
見しても非常に鋭い。第3〜5図はそれぞれ比較例1〜
3の粉末のDSC測定図であり、いずれも吸熱ピークの
鋭さが認められないか、または吸熱ピークより低い温度
範囲に他のピークまたはシヨルダーを有している。 本発明の前記性質を兼ね備えた本発明のPTFEフアインパ
ウダーは、上記の如き延伸性の外に、従来市販のフアイ
ンパウダーに比してチユーブ、テープ等の押出焼成品に
おいてその機械的性質が優れており、特に繰り返し屈曲
に対して高い抵抗性を示す特徴を有している。 本発明にかかるPTFEフアインパウダーは、水性媒体中で
陰イオン性界面活性剤、分散安定剤および重合開始剤の
存在下にテトラフルオロエチレンを重合するに当り、重
合開始後、最終重合体生成量の少なくとも10重量%、
好ましくは25重量%、より好ましくは30重量%が重
合した後であつて、95重量%、好ましくは80重量%
が重合する以前に(a)重合系内にアルカリを添加し、重
合系のpHを8〜10に調整するか、(b)重合系内に水中
ラジカル捕捉剤を、使用した重合開始剤の重量の2〜5
倍量で添加するか、又は(c)重合系の温度を5〜30℃
以下させる、いずれかの方法により重合条件の変更を行
うことによつて製造することができる。 陰イオン性界面活性剤としては、水溶性フツ素系界面活
性剤、例えば一般式X(CF2)nCOOH〔式中、XはH、Clま
たはF、nは6〜12の整数〕、一般式Cl(CF2CFCl)nCF
2COOH〔式中、nは2〜6の整数〕、一般式F(CF2)mO[CF
(X)CF2O]nCF(X)COOH〔式中、XはFまたは低級パーフル
オロアルキル基、mは1〜5の整数、nは0〜10の整
数〕などで表わされる化合物およびそれらの塩類が使用
され、その使用量は水性媒体に対し0.05〜0.5重量%程
度が適当である。 重合開始剤としては、通常、水溶性過硫酸塩(例えば過
硫酸アンモニウム、過硫酸カリ)、水溶性脂肪族二塩基
性カルボン酸過酸化物(例えばジサクシニツクアシドパ
ーオキサイド、ジグルタリツクアシドパーオキサイド)
又はこれらの混合物が使用される。重合開始剤は比較的
低濃度で使用する方が押出物の延伸性に好ましい影響を
与える。例ば、過硫酸アンモニウムの場合、重合温度7
0℃において濃度は0.002重量%以下、より好ましくは
0.001重量%以下である。またジサクシニツクアシドパ
ーオキサイドの場合、同条件下、0.02重量%以下、特に
0.01重量%以下が好ましい。 分散安定剤の具体例としては、炭素数12以上の重合条
件下で液状を呈する炭化水素を用いるのが好適である。 以上の各化合物はいずれも従来のテトラフルオロエチレ
ンの重合に用いられるもので、容易に入手可能である。 本発明の重合は比較的高温、例えば55〜85℃程度、
より好ましくは60〜80℃程度の温度範囲内で行うこ
とが適当である。重合温度がこれより高すぎると、重合
開始剤の分解速度が大きすぎ、解媒量の少ない本発明の
方法には不適当である。又、重合温度が低すぎると、逆
に重合開始剤の分解速度が低すぎて充分な重合速度は得
られない。又、重合圧力は5〜20kg/cm2の範囲で行
うことが出来るが、好ましくは5〜10kg/cm2で実施
する。 重合開始後における重合条件の変更は前述の3つのいず
れかの方法によつて行われる。これらいずれかの方法に
よつて重合条件の変更を行わない場合、得られるPTFEの
分子量が低すぎたり、DSC分析における結晶融解の吸
熱ピークが広すぎたりして、本発明の目的とするテープ
の延伸性の優れたPTFEフアインパウダーが得られない。
以下これら3つの方法についてさらに説明する。 重合条件の変更方法の第一のものはアルカリの添加であ
る。添加するアルカリの種類は水酸化アンモニウム、苛
性ソーダ、苛性カリ等が適しており、これらはいずれも
水溶液として用いると都合がよい。アルカリの添加量は
添加後の重合系がアルカリ側に保たれるのに必要な量、
特に系のpHが8〜10の範囲に保たれるのに必要な量を
用いる。従つて、実際の添加量は添加時の系のpHや、使
用された重合開始剤の種類や量、緩衝剤の使用の有無等
により決められるべきものであり、通常、経験的に又は
予備実験によつてその添加量は容易に決めることができ
る。例えば重合開始剤として過硫酸アンモニウム又は過
硫酸カリウム等の過硫酸塩を用いる場合、重合系のpHは
重合開始前に約6〜7の範囲にあつたものが重合開始後
急激に3〜4程度まで低下するが、本発明の方法により
アルカリを添加すると、このpH値は8〜10に変更され
る。アルカリの添加は、一般に添加しなかつた場合に比
して重合速度を低下させるが、その低下傾向は重合温度
の途中からの低下やラジカル捕捉剤の添加による重合速
度の低下に比較して緩慢である。即ち、アルカリ添加後
重合槽内のpHは急激に上昇して8〜10を示すに至る
が、重合速度は徐々に低下する。 重合条件変更の第二の方法は水中ラジカル捕捉剤の添加
である。水中ラジカル捕捉剤として使用される化合物は
チオシアン酸アンモン(NH4SCN)、チオシアン酸カリ(KSC
N)、チオシアン酸ソーダ(NaSCN)、塩化第二銅(CuCl2)等
である。その添加量は、過剰であると分散系の安定性が
損われるので、本発明の目的とするPTFEフアインパウダ
ーを得るためには、重合開始剤の重量に対しおよそ2〜
5倍量が適当である。 以上の2つの方法による重合条件変更の時期は、最終重
合体生成量の少なくとも10重量%、より好ましくは3
0重量%の重合体が生成した後で、少なくとも90重量
%、より好ましくは80重量%の重合体が生成する以前
であるべきである。 TFEの乳化重合は主として粒子の核が形成される第一
段階と、主として粒子の生長が起る第二段階との2つの
段階を経て重合が進行することが知られている。従つ
て、核形成段階である重合期間のより初期における重合
条件の変更は、系の不安定性を増すので好ましくない。
又、90重量%以降の重合条件の変更では、目的とする
物性のPTFEフアインパウダーは得らえない。 重合条件変更の他の方法は、重合系の温度を低下させる
方法であり、低下させるべき温度は5℃以上、好ましく
は10℃以下低下させることが必要である。実際に温度
を低下させるには槽全体の温度をコントロールする自動
温度調節器の設定温度を変更することにより行なうこと
が出来る。このとき調節器の温度を設定変更しても、直
ちに槽内に温度が変更されず、時間的な遅れが生ずる
が、重合体の最終生成量の90%以前に第二の温度に保
たれるように調整すればよいのであつて、温度調整は難
しい操作ではない。重合温度の5℃以内の変更では、目
的とする物性を持つたPTFEフアインパウダーは得られな
い。又、30℃以上の温度の変更は系を不安定にし、分
散体が凝析することがあるので好ましくない。 一般にテトラフルオロエチレンの乳化重合における重合
速度は、重合開始剤の半減期が比較的長くなるような温
度で、かつ比較的低濃度の開始剤を用いて一定温度、一
定モノマー圧力下で重合を行う場合には、時間とともに
増大する。これは開始剤の分解により発生したラジカル
とテトラフルオロエチレンの反応により生成したポリマ
ーラジカルの失活が、粒子が形成されていく全重合期間
を通じ比較的起りにくいうえに、粒子が逐次的に開始剤
の分解により水中に発生するラジカルとテトラフルオロ
エチレンとの反応により生成するポリマーラジカルを吸
着するため、系全体として、ラジカルの数が時間ととも
に増加する結果によるものと考えられる。 一方、開始剤の分解速度は、系のpH及び温度の影響を顕
著に受け、系のpHが低いほど、かつ高温ほど分解速度は
大となる。テトラフルオロエチレンの乳化重合におい
て、前記重合開始剤を用い、一定温度、一定モノマー圧
力下で重合を進行させた場合、pH調節剤を何ら加えなけ
れば系のpHは逐次的に低下し、開始剤の分解速度は増大
する傾向を示す。この結果、テトラフルオロエチレンの
全重合速度をより一層加速的にする。 重合途中におけるアルカリの添加及び/又は重合温度の
低下は、系内に残存する未分解の開始剤の分解速度を低
下せしめ、逐次的に発生するポリマーラジカルの数を抑
制する作用を営み、その結果重合速度はこれら重合条件
の変更が為されない場合よりも小となる。チオシアン酸
アンモン、チオシアン酸カリ、チオシアン酸ソーダ、塩
化第二銅は、水相のラジカル捕捉剤として作用し、これ
の添加により、それ以降に発生するラジカルが捕捉さ
れ、失活する結果、重合速度は低下する。かかるラジカ
ル捕捉剤も結果的にはポリマーラジカルの逐次的発生を
抑制する効果があると云える。 かくして得られる本発明のPTFEフアインパウダーは、高
分子量、高結晶化度のものとなり、重合期間中逐次的に
発生する新規ラジカルが抑制されるから、より分子量分
布の狭いPTFEが得られるものと思われる。DSC測定に
よつて得られる本発明のPTFEフアインパウダーの結晶融
解図は、分子量分布の狭いことを暗示している。 本発明のPTFEフアインパウダーは、パイダー製造後、種
々の後処理、例えば、300℃以下での加熱処理、特公
昭46−4657号明細書に開示される如き混練、又は
擂漬処理することができる。かかる処理によつては、結
晶融解図はほとんど変化しないが、一般に延伸性は改良
される。 本発明のPTFEフアインパウダーは、ガラス短繊維、カー
ボン粉末、グラフアイト粉末、無機顔料粉末などを含む
ことができる。かかるフイラー入りPTFEフアインパウダ
ーは、重合によつて得られたデイスパージヨンの凝集工
程に於て混入することが望ましい。かくして得られる粉
末も良好な延伸性を示す。 次に実施例によつて本発明を説明する。実施例中、濃度
と重合割合を表わす場合の「%」は特記しない限り重量
%である。 なお、押出試験および延伸試験は次のとおりに行つた。 押出試験:− PTFEフアインパウダー100重量部に押出助剤(商標
「アイソパーE」)20重量部を室温下常法に従つて混
合し、12時間ないし24時間密閉容器中で保存する。
内径25.4mmのシリンダーと、ダイ角度30度、ノズル径
2.54mm及びノズル長さ7mmを有する押出金型を用いて室
温でラムスピード20mm/minの下にひも状物を押出
す。この押出テストにおける平衡の押出圧力を記録す
る。次いでこのひもを乾燥する。 延伸試験:− 延伸試験は前記押出試験において得られた押出ひもから
切り取つた試料を、310℃の温度下においてチヤツク
間距離50mmで100%/sec.、1000%/sec.およ
び10000%/sec.の引張り速度で元の長さの20倍
に延伸する。100%/sec.で20倍に延伸可能なもの
は、他の2つの条件下の延伸でも途中で切断することは
ないので、最も高い延伸性を有するものと判定される。
また、10000%/sec.の延伸試験においても途中切
断する試料では、他の2つの延伸条件下でも切断が起
り、延伸性は最も低いものと判定される。 実施例1 容量3lのガラスライニングを施した撹拌機付きオート
クレーブに脱イオン脱酸素した水1.5lとパラフインワ
ツクス(m.p.56℃)60g、パーフルオロオクタン酸
アンモニウム2gを仕込み、70℃の温度に保ちながら
窒素ガスで数回置換したのち、テトラフルオロエチレン
(以下「TFE」と略記する。)を内圧8.0kg/cm2Gと
なるまで圧入した。ついで過硫酸アンモニウム(以下
「APS」と略記する。)5mgを添加し、重合を開始す
る。重合が始まると系内の圧力は減少しはじめ、圧力が
7.0kg/cm2Gまで減少した時に、系内にTFEを圧力が
8.0kg/cm2Gになるまで加圧圧入し、以後重合の進行と
共に同様にして圧力降下−再加圧をくり返し、5時間1
0分後に重合を中止する。この重合の途中で、重合開始
剤から約3時間経過したとき、アンモニア水(濃度28
%)0.8mlを系内に加えたところ、アンモニア添加以前
には増加傾向を示していた見掛けの重合速度は、やゝ減
少する傾向が認められた。なお、このアンモニア水添加
時の系内のpHは、途中サンプリングで調べてみると4.1
で、アンモニア水添加後pHは10となり、以後重合の終
了まで殆ど低下せず、約10に保持された。また、この
サンプリングによりアンモニア水添加時までの重合体生
成量は最終生成量に対して51%であることを認めた。
このようにして5時間10分後に重合を中止した。全重
合期間を通じての平均重合速度は47g/l.hrであつた。
かくして得られたPTFE分散体は濃度20.9%、平均粒子径
0.29ミクロンを有していた。この分散体を凝析、洗浄を
行ない、120℃で16時間乾燥し、PTFEフアインパウ
ダーを得た。この粉末のS.G.は2.177、分子量は674
万であり、赤外吸収スペクトルによつて求めたA.I.値は
0.089であつた。また、この粉末のDSC分析における
融点付近の融解図を第2図に示す。この図は347℃に
鋭いピークを持ち、337℃にわずかなシヨルダーが認
められるものであり、吸熱比は0.21、吸熱ピークの半価
幅は4.3deg.である。 この粉末50gを押出助剤(アイソパーE)10gを加
えて混合し、密閉容器中で15時間保存後、ラム内径2
5.4mm、ダイ角度30度、内径2.54mm、長さ7mmのラン
ドを有する金型を用いてラムスピード20mm/minで押
出しを行つた。平衡時の押出圧力は182kg/cm2であ
つた。押出されたひもを乾燥した後、310℃で延伸試
験を行つたところ、100%/sec.の引張速度で20倍
まで延伸することができ、延伸物の外観は、均一であつ
た。 実施例2〜4 実施例1に使用したと同じ装置を使用し、重合温度を7
0℃に代えて65℃にしたことと、アンモニア水の添加
時間を第1表に示した通りに行つた以外は、実施例1の
操作に従つて重合を行つた。得られたPTFE水性分散体及
び粉末の性質を第2表に示す。なお、実施例2の粉末の
DSCによる結晶融解図形を第1図に示す。実施例3お
よび4については、ほぼ第2図と同様のものであつた。 実施例5 実施例1において、重合開始剤をAPSに代えて過硫酸
カリウムを6mg用いたことを除き、実施例1と同じ操作
でTFEの乳化重合を行つた。得られたPTFE分散体の重
合体濃度は20.3%であつた。得られたPTFEフアインパウ
ダーの性質を第2表に示す。 比較例1 実施例1と同じ装置を使用し、同様の操作で重合を開始
し、途中でアンモニア水を添加することをせずに、6時
間重合を行つた。重合速度は全期間を通じて徐々に増加
し、いわゆる加速傾向を示したが、平均の重合速度は4
3g/l・hrであつた。また、系内のpHは重合の終了時には
3.2であつた。 得られたPTFE水性分散体は、平均粒子径0.274ミクロン
であり、濃度は18.7%であつた。凝析,洗浄,乾燥を行
つた粉末の性質を第2表に示した。この粉末のDSCに
よる融解吸熱図形は、第3図のとおりで、347℃のピ
ークと337℃に明確なシヨルダーを持つたものであ
る。ここで得られた粉末のペースト押出圧力は181kg
/cm2、押出されたひもの310℃における延伸試験に
おいて、100%/sec.および1000%/sec.の速度
で20倍延伸では途中で切断し、10000%/sec.の
速度で20倍延伸では外表面に無数の不均一なひゞ割れ
が発生した。 比較例2 実施例1と同じ重合装置を用い、重合途中でアンモニア
を添加する代わりに、重合圧力を低下せしめて重合を行
なつた。即ち、重合開始から全体の77%のTFEが重
合する期間は、TFEの圧力を8kg/cm2Gないし7kg/
cm2Gに保つて重合を行い、その後は4kg/cm2Gないし3
kg/cm2Gの圧力下で重合終了まで重合を続けた。その他
の条件は実施例1と同じである。 全重合時間は、5時間18分であり、重合圧力を低下せ
しめた後は、重合速度は減少したが、平均の重合速度
は、52g/l・hrであつた。 得られたPTFE水性分散液の濃度は21.2%であり、これを
凝析,洗浄,乾燥して得られた粉末の性質は第2表に示
すとおりである。また、この粉末のDSCによる融解図
形は第4図のとおりで、346℃にピークを持ち、且つ
338℃近傍に明確な巾広いシヨルダーが観察された。
この粉末のペースト押出の押出圧力は181kg/cm
2で、押出されたひもの延伸試験においては、1000
0%/sec.で20倍延伸物で不均一な外観で、不満足な
多孔体であつた。 比較例3 実施例1と同じ重合装置を用い、90℃で重合を行つ
た。所定量のイオン交換水、パラフインワツクス及びパ
ークロロオクタン酸アンモニウムと重合開始剤ジコハク
酸過酸化物(以下「DSP」と略記する。)100mgを
仕込み、窒素ガス置換後、TFEを内圧8kg/cm2Gとな
るまで圧入し、撹拌する。DSPを添加してから1時間
後にAPS10mgを添加する。APSを添加した時に実
質的に重合が開始し、圧力低下が認められる。内圧が7
kg/cm2Gになつた時にTFEを8kg/cm2Gとなるまで圧
入し、以後圧力降下−再加圧の操作をくり返し、重合を
進める。重合終了後のPTFE分散体濃度は25%であり、
これを凝析,洗浄,乾燥して得られた粉末の性質は第2
表に示すとおりである。この粉末のDSCによる結晶融
解図形は第5図のとおりで、342℃にピークを持ち、
さらに332℃近傍に他のピークを有している。ペース
ト押出時の押出圧力は143kg/cm2であり、押出され
たひもは10000%/sec.で20倍延伸試験で途中切
断した。実施例6 1.5lの耐圧ガラス製重合槽を使用し、重合温度70℃に
於けるTFE乳化重合を行つた。脱イオン水、パラフイ
ンワツクスおよびパーフルオロオクタン酸アンモニア
は、実施例1の半量を用いたが、APSは5mgを使用し
た。TFEの圧力は実施例1の場合と同様に8kg/cm2G
〜7kg/cm2Gに維持した。全得量の54%が重合した時
に、チオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)20mgを添加し
た。添加後重合速度は低下する傾向を示した。全重合時
間は5時間17分、平均の重合速度は48g/l・hrであつ
た。PTFE分散液の濃度は20%、これから得られる粉末
の平均粒子径は0.236ミクロン、S.G.は2.186、分子量は
537万、A.I.は0.073であつた。DSCによる融解熱
図形は第2図とほぼ同形で、347℃に鋭いピークを持
ち、低温にシヨルダーを持たないものであり、吸熱ピー
クの半価幅は4.2deg.、吸熱比は0.2であつた。この粉末
のペースト押出圧力は145kg/cm2であり、押出され
たひもは100%/sec.で20倍に延伸することがで
き、延伸物は均一な外観を有し、満足な多孔体であつ
た。 実施例7 実施例6においてチオシアン酸アンモニウムの代りにチ
オシアン酸カリウム20mgを使用し、実施例6の重合を
くり返した。その結果、最終重合体分散液の濃度は19.6
%で、これより得られる粉末の平均粒子径は0.250ミク
ロン、S.G.は2.185、分子量は5.6×106、A.I.値は0.075
であり、DSCによる融点は347℃、吸熱比は0.19、吸
熱ピークの半価幅は4.2deg.であつた。この粉末のペー
スト押出試験における押出圧力は142kg/cm2で、押
出されたひもは延伸試験において100%/sec.で20
倍に延伸することができ、満足な多孔体が得られた。 比較例4 実施例6において重合開始剤であるAPSの使用量を2
5mg(0.0033%)としたことを除き、実施例6の操作を
くり返した。その結果、最終重合体分散液の濃度は24.5
%で、これより得られる粉末の平均粒子径は0.21ミクロ
ン、S.G.は2.200、分子量は3.90×106、A.I.値は0.101
であり、DSCによる融点は347℃であつたが、吸熱
比は0.4で、吸熱ピークの半価幅は5deg.であつた。こ
の粉末のペースト押出試験における押出圧力は150kg
/cm2で、押出されたひもは延伸試験において100%/se
c.で延伸すると途中で切断した。 実施例8 比較例1の操作において系の温度を70℃に設定して重
合を開始した。重合体の生成量が最終生成量の60〜6
5%に達したとき系の温度を70℃から60℃に低下さ
せ、その後の重合を60℃で終りまで継続した。重合体
の生成量が70%に達した時の重合速度は温度を70℃
に保つた状態で重合を続けた場合の同じ生成量に於ける
重合速度に比し約15%低いことを確認した。得られた
PTFE分散体は濃度18.5%でこれより得られた粉末の平均
粒子径は0.29ミクロン、S.G.は2.175、分子量は7.00×1
06、A.I.値は0.086であつた。DSCによる融解吸熱図
においては347℃にピークを持ち、吸熱比は0.17、吸
熱ピークの半価幅は4deg.であつた。この粉末のペース
ト押出圧力は190kg/cm2で、押出されたひもは10
0%/sec.で延伸することができた。
【図面の簡単な説明】 第1図、第2図、第3図、第4図および第5図はそれぞ
れ実施例2、実施例1、比較例1、比較例2および比較
例3で得られたPTFEフアインパウダーの示差走査熱量計
による融解測定図を表わす。

Claims (1)

  1. 【訂正明細書】 【特許請求の範囲】 【請求項1】平均分子量が500万以上、非晶係数が0.
    1以下、数平均の一次粒子径が0.1〜0.4ミクロンであ
    り、示差走査熱量計による結晶融解図上347±2℃の
    範囲に鋭い吸熱ピークを持ち、330℃から該吸熱ピー
    クの温度の間には明確なピークないしはシヨルダーを示
    さず、かつ結晶融解図に基づく吸熱比が0.3以下および
    吸熱ピークの半価幅が6deg.以下であることを特徴とす
    るポリテトラフルオロエチレンフアインパウダー。 【請求項2】平均分子量が550万以上である第1項記
    載のポリテトラフルオロエチレンフアインパウダー。 【請求項3】非晶係数が0.09以下で、数平均の一次粒子
    径が0.15〜0.38ミクロンである第1項又は第2項記載の
    ポリテトラフルオロエチレンフアインパウダー。

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