JP7736289B2 - 培養細胞の凍結保存方法及び細胞移植療法に用いるための細胞含有組成物 - Google Patents
培養細胞の凍結保存方法及び細胞移植療法に用いるための細胞含有組成物Info
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Description
そこで、凍結時及び融解時の氷晶による損傷から培養細胞を保護するために、凍結保護剤であるジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、エチレングリコールなどを添加した凍結保存液が使用される。特に、凍結保護剤としては、高い氷晶生成抑制効果を示すDMSOが汎用されている(非特許文献1~3)。
しかし、ガラス化法は、培養細胞を凍結保存から解凍した後も機能的な立体構造を維持する必要のある細胞シート(例えば、特許文献2を参照)や三次元細胞培養体などに適用する場合、温度応答性培養容器やメッシュ状支持体などの特殊な細胞培養容器や素材を用意する必要がある。また、ガラス化法において、細胞シートや三次元細胞培養体などの形態で使用できる細胞は、強固な構造を形成する軟骨細胞、上皮細胞、心筋細胞などに限られる。そのために、ガラス化法は、製造効率や汎用性などの観点から、分散した培養細胞以外では臨床応用されていないのが現状である。
本願発明の課題は、解凍後の細胞生存率が高い培養細胞の凍結保存方法及び細胞含有組成物を提供することである。
[1](1)培養容器内で細胞を培養する工程、
(2)前記培養容器に凍結保存液を加えて、前記工程(1)で培養した培養細胞を前記凍結保存液に浸漬させる工程、
(3)前記凍結保存液に浸漬された前記培養細胞及び前記培養容器を、-60℃以上-25℃以下の環境下に静置して凍結処理する工程、
を有することを特徴とする培養細胞の凍結保存方法。
この凍結保存方法によれば、培養細胞を凍結保存する前に、-60℃以上-25℃以下の環境下において、凍結保存液を用いて凍結処理を行うことで凍結による細胞の損傷が抑制される。これにより、解凍後の培養細胞の生存率が向上する。
[2]前記工程(3)において、冷気を前記培養容器に吹き付けて凍結処理することを特徴とする上記[1]記載の培養細胞の凍結保存方法。
この凍結保存方法によれば、培養細胞を均一に冷却して凍結することができ、凍結による細胞の損傷が抑制される。これにより、解凍後の培養細胞の生存率が向上する。
[3]前記工程(3)において、非貫流方式の冷却装置で冷気を吹き付けて凍結処理することを特徴とする上記[2]記載の培養細胞の凍結保存方法。
この凍結保存方法によれば、培養細胞をより均一に冷却して凍結することができ、凍結による細胞の損傷が抑制される。これにより、解凍後の培養細胞の生存率がより向上する。
[4]前記工程(1)で培養して得られた培養細胞が前記培養容器に接着した状態で前記培養容器に凍結保存液を加えることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、解凍後に培養細胞が意図せずに培養容器から離れることを防ぐことができる。
[5]前記凍結処理は、0℃以上の環境下で凍結保存液に浸漬された培養細胞を、非段階的に-50℃以上-25℃以下の環境下で行うことを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、凍結処理を非段階的に行うことにより、解凍後の培養細胞の生存率を更に向上することができる。
[6]工程(2)において、ジメチルスルホキシドを含有しない凍結保存液を用いることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この凍結保存方法によれば、DMSOを含有しない凍結保存液を用いて凍結処理を行うことで解凍後の培養細胞を安全に使用することができる。
[7]前記凍結処理は、凍結処理開始から10分以内に、凍結保存液の過冷却状態が解除することを特徴とする上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、凍結処理を急速に行うことにより、解凍後の培養細胞の生存率を更に向上することができる。
[8]工程(1)で培養して得られた培養細胞の形態は、細胞シート又は三次元細胞培養体であることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、培養細胞の形態として細胞シート、三次元細胞培養体を採用することにより、解凍後でも培養細胞の生存率が向上するとともに、細胞シート、三次元細胞培養体の形態を維持することができる。
[9]工程(3)において、凍結処理後に細胞シート又は三次元細胞培養体が前記培養容器に接着していることを特徴とする上記[8]に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、意図しない細胞シート又は三次元細胞培養体の剥離により、細胞シート又は三次元細胞培養体が縮むことを抑制することができる。
[10]工程(1)で培養する細胞は、線維芽細胞、角膜上皮細胞、網膜細胞、心筋細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞であることを特徴とする上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
この特徴によれば、培養細胞として線維芽細胞、角膜上皮細胞、網膜細胞、心筋細胞、間葉系幹細胞、多能性幹細胞を選択することにより、解凍後の培養細胞の生存率を更に向上することができる。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法により保存された培養細胞を含有し、解凍時の細胞生存率が40%以上であることを特徴とする細胞移植療法に用いるための細胞含有組成物。
この細胞含有組成物によれば、[1]~[10]に記載の凍結保存方法により、解凍後の組成物に含まれる培養細胞の生存率が50%以上となることにより、高い製造効率を有する細胞移植療法に用いるための細胞含有組成物とすることができる。
なお、実施形態に記載する培養細胞の凍結保存方法及び細胞含有組成物については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
本明細書中において、「凍結」とは、細胞内外に氷晶が形成されないか、又は細胞内外に少量の氷晶が形成されるように凍らせた固体状態を意味する。凍結や解凍による細胞への損傷を低減する観点から、細胞内に氷晶が形成されないことが好ましいが、氷晶形成を完全に抑制することは困難である。
本明細書中において、「凍結処理」とは、培養細胞を凍結することを意図する。上記凍結処理には、凍結保存液に浸漬した培養細胞を凍結することも含有する。
本明細書中において、「凍結保存」とは、凍結処理した培養細胞を非常に低い温度により細胞活動を停止させることで、長期間にわたり細胞を安定に維持することを意味する。凍結保存の温度としては、例えば、-269℃以上-80℃以下である。
本明細書中において、「過冷却状態」とは、細胞内外の水が凝固点を過ぎて冷却されても固体化せずに液体の状態を保持することで、氷晶の形成が抑制されている状態を意味する。
本明細書中において、「浸漬」とは、液体に浸すことを意図する。
本明細書中において、「予防」とは、細胞、組織、臓器の欠損及び機能障害、機能不全に関連する症状の発症及び再発を抑制、防止することを目的とする手段を意図する。
本明細書中において、「細胞、組織、臓器の欠損及び機能障害、機能不全に関連する症状」とは、細胞、組織、臓器が正常に機能しない状態により引き起こされる疾患であり、例えば、脊髄損傷、膝関節軟骨損傷、虚血性心疾患、加齢黄斑変性、角膜上皮幹細胞疲弊症、再生不良性貧血、重症下肢虚血、難治性皮膚潰瘍などが挙げられる。
本明細書中において、「分化」とは、特殊化していない細胞の機能又は形態が特殊化することを意味する。また、分化していない状態の細胞は、「未分化」であるという。
本発明の凍結保存方法は、(1)培養容器内で細胞を培養する工程、(2)前記培養容器に凍結保存液を加えて、前記工程(1)で培養した培養細胞を前記凍結保存液に浸漬させる工程、(3)前記凍結保存液に浸漬された前記培養細胞及び前記培養容器を、-60℃以上-25℃以下の環境下に静置して凍結処理する工程、を有することを特徴とする培養細胞の凍結保存方法であり、これにより、解凍後の培養細胞の生存率を向上することができる。
まず、凍結保存方法を構成する各工程について、詳細に説明する。なお、各工程に含まれる特定成分の含有量については、特に断りがない場合、組成物などにおける含有量を示す。
工程(1)は、培養容器内で細胞を培養する工程である。これにより、凍結保存するための、培養容器に接着した培養細胞を準備することができる。
培養容器は、培養液中で細胞を培養するための容器である。培養容器は、培養する細胞の種類及び用途に適したものであれば、特に制限されるものではない。
培養容器としては、例えば、デッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用デッシュ、マルチデッシュ、フラスコ、組織培養用フラスコ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトルなどが挙げられる。
培養容器の素材としては、培養液を透過させないものであれば、特に制限されるものではない。培養容器の素材としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、シリコン、ナイロン6,6、ガラス、ステンレスやアルミニウムなどの金属などが挙げられる。
培養容器の面積は、特に制限されるものではない。培養容器の面積としては、例えば、0.3cm2以上300cm2以下である。下限値としては、より好ましくは0.35cm2以上、更に好ましくは1.0cm2以上、特に好ましくは1.9cm2以上である。一方、上限値としては、より好ましくは200cm2以下、更に好ましくは100cm2以下、特に好ましくは50cm2以下である。
細胞接着性物質としては、例えば、コラーゲンやフィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどの細胞外マトリックス、カドヘリンファミリーやセレクチンファミリー、インテグリンファミリーなどの細胞接着因子、コラーゲンゲルや親水性ポリマー、コロナ放電処理したポリスチレンなどの親水性化合物などが挙げられる。
また、これらの細胞接着性物質は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの細胞接着性物質については、接着細胞、浮遊細胞等の培養する細胞の種類に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
細胞は、細胞、組織、臓器の欠損及び機能障害、機能不全に関連する症状を治療又は予防するための臨床上有用な細胞、非臨床試験などで使用する培養可能な細胞であって、生体から分離された細胞あれば、特に制限されるものではない。培養細胞としては、例えば、生体組織細胞、間葉系組織に属する細胞に分化する能力を有する間葉系幹細胞、様々な生体組織に分化する能力を有する多能性幹細胞、分化誘導される幹細胞や前駆細胞などが挙げられる。なお、培養細胞は、接着細胞であっても浮遊細胞であってもよい。ただし、浮遊細胞を用いる場合は、培養容器に上記細胞接着性物質をコーティングすることが好ましい。
生体組織細胞の具体例としては、例えば、線維芽細胞、角膜上皮細胞、網膜細胞、神経細胞、筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、骨細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、膵細胞、腎細胞、歯肉細胞、骨膜細胞、皮膚細胞などが挙げられる。
間葉系幹細胞の具体例としては、例えば、脂肪組織由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞などが挙げられる。
多能性幹細胞の具体例としては、例えば、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、核移植胚性幹細胞、胚性腫瘍細胞、胚性生殖細胞などが挙げられる。
また、これらの細胞は、単独で培養してもよいし、二種以上を組み合わせて培養してもよい。これらの細胞については、細胞の用途などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
分散状態の培養細胞は、細胞が単独又は他の細胞と接触した状態で培養容器に接着しているものである。
細胞シートは、1の細胞層から構成される単層構造であってもよいし、2以上の細胞層から構成される積層構造でもよい。積層構造としては、特に制限されるものではないが、2層、3層、4層、5層などの多層構造が挙げられる。
細胞シートの厚みは、特に制限されるものではない。細胞シートの厚みとしては、例えば、0.001mm以上2.0mm以下である。下限値としては、より好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.03mm以上、特に好ましくは0.05mm以上である。一方、上限値としては、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.2mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。細胞シートの厚みを上記範囲とすることにより、細胞シート内での高い細胞生存率、及び細胞移植に有利な優れた形状維持能を発揮することができる。
三次元細胞培養体の厚みは、特に制限されるものではない。三次元細胞培養体の厚みとしては、例えば、0.01mm以上10mm以下である。下限値としては、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。一方、上限値としては、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
細胞シート、三次元細胞培養体は、細胞が培養容器に接着できるのであれば、網目構造などを有する支持体を含んでいてもよい。支持体は、培養する細胞を付着、保持し、細胞間相互作用を高めて培養することができる足場材料である。
支持体の素材は、特に制限されるものではない。支持体の素材としては、例えば、コラーゲン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリウレア、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、シルクフィブロイン及びそれらの誘導体、共重合体などからなる繊維が挙げられる。
また、これらの支持体の素材は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの支持体の素材については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
支持体を構成する繊維の長さは、特に制限されるものではない。支持体を構成する繊維の長さとしては、例えば、30μm以上500μm以下である。下限値としては、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは45μm以上、特に好ましくは50μm以上である。一方、上限値としては、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは350μm以下、特に好ましくは300μm以下である。
支持体の網目構造の孔径は、特に制限されるものではない。支持体の網目構造の孔径としては、例えば、30μm以上700μm以下である。下限値としては、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは45μm以上、特に好ましくは50μm以上である。一方、上限値としては、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは550μm以下、特に好ましくは500μm以下である。
支持体の三次元開口率は、特に制限されるものではない。支持体の三次元開口率としては、例えば、50%以上96%以下である。下限値としては、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは94%以下、更に好ましくは92%以下、特に好ましくは90%以下である。
また、これらの細胞有用物質は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの細胞有用物質については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
細胞を培養する方法は、特に制限されるものではなく、医療、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品などの技術分野、及び再生医療、生物工学などの基礎技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。
細胞を培養する方法としては、例えば、培養容器内に培養液を加えると共に培養する細胞を播種し、培養細胞が培養容器に接着し、目的とする状態まで最適な環境下で培養する方法などが挙げられる。
上記細胞を培養する方法に用いる培養液は、細胞の培養に必要な成分を含有した溶液である。培養液は、培養する細胞に適したものであれば、特に制限されるものではない。培養液成分としては、例えば、糖類、アミノ酸、ビタミン類、無機塩、微量金属、添加物などが挙げられる。
また、これらの培養液成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの培養液成分については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
微量金属の具体例としては、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、硫酸銅、硝酸銅、硫酸亜鉛などが挙げられる。
また、これらの基礎培養液は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、基礎培養液は、細胞の種類や状態に応じて、培養液成分を追加、除去、増量、減量してもよい。これらの基礎培養液については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
また、これらの温度応答性材料、光応答性材料は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの温度応答性材料、光応答性材料については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
培養条件は、培養細胞を目的とする状態にできるのであれば、特に制限されるものではない。一般的な培養条件としては、例えば、調整した基礎培養液を用いた37℃、5%CO2の環境下である。培養条件については、培養する細胞などに応じて適宜設定すればよい。
細胞培養の期間は、培養細胞が目的とする状態になるのであれば、特に制限されるものではない。細胞培養の期間としては、例えば、28日以内、21日以内、14日以内、7日以内、5日以内、3日以内である。
培養する細胞シート、三次元培養体の細胞の密度としては、例えば、5×101細胞/cm3以上5×1010細胞/cm3以下である。下限値としては、より好ましくは5×102細胞/cm3以上、更に好ましくは5×103細胞/cm3以上、特に好ましくは5×104細胞/cm3以上である。一方、上限値としては、より好ましくは5×109細胞/cm3以下、更に好ましくは1×109細胞/cm3以下、特に好ましくは5×108細胞/cm3以下である。
また、これらの分化誘導因子は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの分化誘導因子については、目的とする細胞の分化状態などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
工程(2)は、培養容器に凍結保存液を加えて培養細胞を凍結保存液に浸漬させる工程である。これにより、培養細胞を凍結処理する準備をすることができる。
凍結保存液は、凍結保存による細胞の損傷を低減するための溶液である。凍結保存液は、細胞の凍結保存に適したものであれば、特に制限されるものではない。凍結保存液としては、培養液に含まれる培養液成分、凍結保護剤などを含有してもよい。培養液成分である糖類、アミノ酸、ビタミン類、無機塩、微量金属、添加物については、上記(培養液)の項の説明を充足するものであればよい。また、凍結保存液は、凝固開始温度が-15℃以上-5℃以下の範囲にあるものが好ましい。
細胞非浸透性凍結保護剤の具体例としては、例えば、アルブミン、スクロース、トレハロース、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリリジンなどが挙げられる。
細胞浸透性凍結保護剤の具体例としては、例えば、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオールなどが挙げられる。
また、これらの凍結保護剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの凍結保護剤については、細胞の種類、凍結保存液の組成などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
工程(3)は、凍結保存液に浸漬された培養細胞を凍結処理する工程である。これにより、細胞内外の氷晶形成を抑制しながら培養細胞を凍結できるので、凍結保存する培養細胞の生存率を向上することができる。
凍結処理の方法は、特に制限されるものではなく、医療、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品などの技術分野、及び再生医療、生物工学などの基礎技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。
凍結処理の方法としては、例えば、0℃以上の環境下にある細胞外液を凍結保存液に置換した培養細胞及び培養容器を凍結処理温度まで急速に冷却する方法などが挙げられる。
凍結処理に用いる冷却装置は、特に制限されるものではなく、例えば、急速冷凍装置、極低温冷蔵装置などが挙げられる。冷却装置としては、培養容器に伝熱手段を接触させて培養容器及び細胞を凍結させるよりも、伝熱手段と非接触であり、冷気を一方向ではなく多方向、好ましくは全方向から培養容器に吹き付けて凍結する冷凍装置であることが、均一な温度で細胞を凍結して、解凍後の細胞の生存率を高める観点から好ましい。冷気を培養容器に吹き付けて凍結する冷凍装置としては、具体的には、冷却ファンによる冷気循環により、被冷却物を冷却させる冷却装置、例えば、特開2005-127666号公報に開示されている、冷却ファンを備えた非貫流方式の冷却装置などが挙げられる。なお、上記「非貫流方式」とは、被冷却物からの貫流空気の大半が冷却器を通過(貫流)しない方式を意味する。
凍結処理の温度は、培養細胞及び凍結保存液を凍結することができれば、特に制限されるものではない。凍結処理の温度としては、例えば、-60℃以上-25℃以下である。下限値としては、より好ましくは-55℃以上、更に好ましくは-52℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。一方、上限値としては、より好ましくは-25℃以下、更に好ましくは-30℃以下、特に好ましくは-35℃以下である。
凍結処理の時間は、培養細胞及び凍結保存液が凍結すれば、特に制限されるものではない。凍結処理の時間としては、例えば、10分以内である。より好ましくは7分以内、更に好ましくは6分以内、特に好ましくは5分以内である。なお、凍結処理の時間とは、培養細胞及び凍結保存液の過冷却状態が解除されて凍結するまでの凍結処理の時間であり、培養細胞及び凍結保存液が凍結した後に引き続き凍結処理の温度を維持する時間は除いたものである。
凍結処理の温度、時間を上記範囲とすることにより、本発明の培養細胞の凍結保存方法は、氷晶の形成を抑制し、解凍後の培養細胞の生存率を向上することができる。
(凍結保存方法)
凍結保存する工程は、凍結処理した培養細胞及び培養容器を凍結保存する工程である。これにより、長期間にわたり細胞を安定に維持することができる。
凍結保存の方法は、特に制限されるものではなく、医療、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品などの技術分野、及び再生医療、生物工学などの基礎技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。
冷却剤としては、例えば、液体窒素、液体エタン、液体プロパン、液体ヘリウム、ドライアイスなどが挙げられる。
凍結保存の温度は、細胞を安定に凍結保存することができれば、特に制限されるものではない。凍結保存の温度としては、例えば、-269℃以上-80℃以下である。下限値としては、より好ましくは-220℃以上、更に好ましくは-196℃以上、特に好ましくは-150℃以上である。一方、上限値としては、より好ましくは-120℃以下、更に好ましくは-100℃以下、特に好ましくは-80℃以下である。
凍結保存の温度までに要する時間は、特に制限されるものではなく、例えば、5分以内、より好ましくは3分以内、更に好ましくは2分以内、特に好ましくは1分以内である。
本発明の細胞含有組成物は、上記本願発明の[培養細胞の凍結保存方法]により凍結保存された培養細胞を含有し、解凍時の細胞生存率が40%以上であることを特徴とするものである。特に、DMSO不含の凍結保存液を用いた場合には、培養細胞を解凍後に洗浄してDMSOを除く必要がないので、安全性及び製造効率を向上することができる。
細胞移植療法は、細胞、組織、臓器の欠損及び機能障害、機能不全に関連する症状の発症及び再発を抑制、防止するものである。細胞移植療法の対象疾患としては、例えば、脊髄損傷、膝関節軟骨損傷、虚血性心疾患、加齢黄斑変性、角膜上皮幹細胞疲弊症、再生不良性貧血、重症下肢虚血、難治性皮膚潰瘍などが挙げられる。
また、細胞移植療法に用いる細胞は、自己由来細胞、同種非自己由来細胞、異種由来細胞であってもよい。好ましい細胞としては、臨床応用及び安全性の観点からヒト自己由来細胞であり、臨床応用及び生産性の観点から、ヒト非自己由来細胞である。
まず、細胞含有組成物を準備する工程について、詳細に説明する。なお、各工程に含まれる特定成分の含有量については、特に断りがない場合、組成物などにおける含有量を示す。
解凍処理の方法は、特に制限されるものではなく、医療、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品などの技術分野、及び再生医療、生物工学などの基礎技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。
解凍処理の方法としては、例えば、ウォーターバス、インキュベータ、ホットプレートなどの使用や、凍結温度よりも高い温度の融解液に浸漬することなどが挙げられる。
融解液の温度は、凍結温度よりも高い温度であれば、特に制限されるものではない。融解液の温度としては、例えば、20℃以上45℃以下である。下限値としては、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは28℃以上、特に好ましくは30℃以上である。一方、上限値としては、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは39℃以下、特に好ましくは38℃以下である。
解凍時間は、特に制限されるものではなく、例えば、15分以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは1分以内、特に好ましくは30秒以内である。
解凍した培養細胞は、必要に応じて、解凍処理直後に細胞洗浄液で洗浄してもよい。細胞洗浄液は、特に制限されるものではなく、上記(培養液)の項に記載の成分を含有してもよい。
細胞洗浄液の温度は、特に制限されるものではない。細胞洗浄液の温度としては、例えば、20℃以上45℃以下である。下限値としては、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは28℃以上、特に好ましくは30℃以上である。一方、上限値としては、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは39℃以下、特に好ましくは38℃以下である。
培養細胞の洗浄回数は、特に制限されるものではなく、1回又は複数回(例えば、2回、3回、4回、5回など)である。
本発明の細胞含有組成物は、解凍した培養細胞や支持体を培養容器から剥離し、製剤化したものであり、細胞移植療法などの治療、予防などに用いることができる。
剥離方法、製剤化方法は、特に制限されるものではなく、医療、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品などの技術分野、及び再生医療、生物工学などの基礎技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。
剥離方法としては、例えば、酵素処理、剥離剤処理、物理的処理、温度応答性材料で被覆した培養容器上で培養した細胞の場合は温度刺激処理、光応答性材料で被覆した培養容器上で培養した細胞の場合は光刺激処理などが挙げられる。
酵素処理で用いる酵素としては、例えば、ディスパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、サーモリシン、パパイン、カスパーゼ、ペプシンなどが挙げられる。
剥離剤処理で用いる化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)などが挙げられる。
また、これらの酵素処理、剥離剤処理、物理的処理、温度刺激処理、光刺激処理は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの剥離処理については、培養する細胞などに応じて公知のものから適宜設定すればよい。
細胞含有組成物の投与量、投与回数、投与期間は、特に制限されるものではなく、処置対象の状態に応じて、適宜設定すればよい。
(細胞積層シートの作製)
24ウェルプレート(ポリスチレン)の培養容器(2cm2/ウェル、3820-024、AGCテクノグラス社)を準備し、2%血清含有AIM V(CTS AIM V Medium、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)と等量のHFDM-1培養液(2%血清含有HFDM培養液(HFDM-1(+)(2102P、細胞科学研究所社))からなる培養液を培養容器のウェルに2mL加えた。培養液を加えたウェルに、特開2019-000038号公報に記載の方法にて分離したヒト由来の線維芽細胞を5×105個播種し、1日間、大気中酸素(約20%)、37℃、5%CO2の条件下で培養して細胞積層シートを作製した。得られた細胞積層シートは、培養容器に接着していた。
上記細胞積層シートを作製した培養容器を氷上に置き、細胞積層シートを剥離することなく、細胞積層シートの底面が培養容器に接着した状態のままで培養容器におけるウェル中の培養液を、4℃に冷却した300μLの凍結保存液に置換して細胞積層シートを凍結保存液に浸漬させた。凍結保存液としては、DMSOを含有するステムセルバンカー(登録商標)(日本全薬工業社)、DMSOを含有しないステムセルバンカー(登録商標)DMSOフリーGMPグレード(日本全薬工業社)を用いた。
細胞積層シートが凍結保存液に浸漬し、培養容器に接着した試料(細胞積層シートが凍結保存液に浸漬した状態で培養容器に接着した、細胞積層シートと培養容器の接着物)の凍結処理は、24ウェルプレート培養容器に蓋をした状態又は蓋をしない状態で、非貫流方式の非接触型冷風冷却装置(3Dフリーザー(登録商標)KSS-40BLW-2400V、古賀産業社)を用いて、-35℃、-45℃、又は-55℃の温度環境下、ファン速度40Hzで5分間処理した。
なお、凍結処理をしない試料は、培養液の置換のみ行った。
凍結処理した試料、凍結処理しなかった試料の凍結保存は、凍結保存装置(Forma -86C ULT Freezer、Thermo Scientific社)を用いて、-80℃で2時間行った。
凍結保存した試料の解凍は、凍結保存装置から試料を取り出して、温度を37℃に設定したプレート(Thermo Plate、東海ヒット社)上に10分間静置することにより行った。
解凍した試料は、2%血清含有AIM V と HFDM-1培養液の等量培養液で培地交換した後に、大気中酸素(約20%)、37℃、5%CO2の条件下で2日間培養し、さらに低酸素(5%)、33℃、5%CO2の条件下で1日間培養して、細胞生存の測定に用いた。
試料における生細胞活性は、MTSアッセイシステム(CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay、プロメガ社)を用いて測定した。
細胞生存は、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagentで1時間処理した試料について、吸光度測定器(2030 ARVO X4、パーキンエルマー社)を用いて測定される490nmの吸光度を細胞生存値として数値化した。図1、2の細胞生存率は、対照群に対する各群の細胞生存値を百分率で算出したものである。また、図1の「凍結処理なし」は凍結処理しなかった試料を凍結保存した試料であり、「対照群」は、凍結処理及び凍結保存していない試料である。
統計解析は、統計処理ソフト(GraphPad Prism8、GraphPad Software社)を用いた。
また、図2における細胞生存率は、One-way ANOVA解析で、各群3検体の平均(標準偏差)で表し、P値が0.05未満である場合に統計的有意差があると判定して「*」を付した。
図1は、-45℃で凍結処理した試料の細胞生存率について示したものである。
図1に示すように、DMSOを含有する凍結保存液を用いた群とDMSOを含有しない凍結保存液を用いた群を比較すると、DMSOを含有しない凍結保存液を用いた群では、凍結処理を行わないと細胞生存率が対照群の約40%程度まで低下したが、凍結処理を行うことにより、対照群、又はDMSOを含有するステムセルバンカーを用いた群と同等にまで顕著に上昇した。なお、凍結処理した細胞積層シートの底面は、蓋あり、蓋なしのいずれにおいても自然に剥離することなく培養容器に接着していた。
なお、DMSOを含有しない凍結保存液を用いた群における凍結処理による細胞生存率の上昇は、凍結処理時に培養容器に蓋で被覆しない試料では確認できなかった。これは、冷却装置内の気流により、凍結保存液が急激に冷却されることで、氷晶の形状が歪み、氷晶の形成による細胞損傷が生じたためと推察される。
図2(A)は、DMSO非含有ステムセルバンカーを用いた試料の-35℃、-45℃、-55℃での凍結処理による細胞生存率を示したものである。
図2(A)に示すように、-45℃、-55℃での凍結処理を行った群を比較すると、-45℃での凍結処理では、-55℃の凍結処理に比して細胞生存率が有意に向上した。また、-35℃、-45℃での凍結処理を行った群を比較すると、-45℃での凍結処理では、-35℃の凍結処理に比して細胞生存率が上昇する傾向があるとともに、試料ごとの細胞生存率のばらつきが小さかった。このことは、図2(B)の細胞の生存状態を示した画像において、-35℃での凍結処理を行った群と比較して-45℃での凍結処理を行った群では、ばらつきがほとんどみられないことからも明らかである。
なお、細胞積層シートは、凍結保存処理から凍結処理後においても剥離することなく培養容器に接着していた。また、細胞積層シートは、ディスパーゼを添加することにより、培養容器から形状を維持した状態で剥離できた。
(細胞積層シートの作製)
24ウェルプレート(ポリスチレン)の培養容器(2cm2/ウェル、3820-024、AGCテクノグラス社)を準備し、1ウェルに特開2019-000038号公報に記載の方法にて分離したヒト由来の線維芽細胞5×105個を、2%血清含有AIM V(CTS AIM V Medium、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)と等量のHFDM-1培養液(2%血清含有HFDM培養液(HFDM-1(+)(2102P、細胞科学研究所社))からなる2mL培養液で培養容器に播種し、3日間、大気中酸素(約20%)、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
上記細胞のウェルの培養液を10PU/mLディスパーゼ(386-02271、合同酒精社)0.5mLと置換して、40分、大気中酸素(約20%)、37℃、5%CO2の条件下で培養後に、ウェルの溶液を除去し、PBS(1102P、細胞科学研究所社)2mLでウェルを2回洗浄した。鑷子で細胞をウェルから剥離することで細胞積層シートが作製された。細胞積層シートを作製した培養容器を氷上に置き、ウェル中の溶液を、4℃に冷却した300μLの凍結保存液に置換して細胞積層シートを凍結保存液に浸漬させた。凍結保存液としては、DMSOを含有する凍結保存液(DMSO含有細胞保存液)としては(1)ステムセルバンカー(登録商標)(日本全薬工業社)、(2)バンバンカー(登録商標) hRM(日本ジェネティクス社)、(3)バンバンカー(登録商標)(日本ジェネティクス社)を用いた。また、DMSOを含有しない凍結保存液(DMSO不含細胞保存液)としては、(4)Cell Reservoir One(ナカライテスク社)、(5)クライオスカーレス(登録商標)DMSOフリー(バイオベルデ社)、(6)ステムセルキープ(バイオベルデ社)、(7)Cellvation(登録商標:Protide Pharmaceuticals社)、(8)ReproCryo RM(リプロセル社)を用いた。
試料の凍結処理は、24ウェルプレートに蓋をした状態で、非貫流方式の非接触型冷風冷却装置(3Dメディカルフリーザー:古賀産業社)を用いて、-35℃の温度環境下、ファン速度40Hzで20分間処理した。コントロールの細胞積層シートは、凍結保存液の代わりにPBSを加えて室温で保存した。
凍結処理した試料の凍結保存は、凍結保存装置(Forma -86C ULT Freezer、Thermo Scientific社)を用いて、-80℃で2時間行った。
凍結保存した試料の解凍は、凍結保存装置から試料を取り出して、温度を37℃に設定したプレート(Thermo Plate、東海ヒット社)上に14分間静置することにより行った。
解凍してPBSで洗浄した試料は、2%血清含有AIM V と HFDM-1培養液の等量培養液で培地交換した後に、大気中酸素(約20%)、37℃、5%CO2の条件下で3日間培養し、細胞生存の測定及び培養上清中のHGF測定に用いた。
細胞生存率は、実施例1と同様に細胞生存値を求め、対照群に対する各群の細胞生存値を百分率で算出したものである。
図3は、-35℃で凍結処理した試料の細胞生存率について示したものであり、図4は-35℃で凍結した場合の解凍3日後の試料及びMTS反応4時間後の写真を示す。対象(コントロール)は、凍結保存液の代わりにPBSを加えて室温で保存したものである。
図3に示すように、DMSOを含有する凍結保存液を用いた群とDMSOを含有しない凍結保存液を用いた群を比較すると、DMSOを含有しない凍結保存液を用いた群では細胞生存率が低下したものの、40%以上を維持しており、特に(6)ステムセルキープと(8)ReproCryo RMでは50%以上、(5)クライオスカーレス(登録商標)DMSOフリーでは75%以上、(4)Cell Reservoir Oneではほぼ100%の細胞生存率であった。また、図4に示すように、バラツキは少なく、均一に凍結されていることが認められた。
非貫流方式の非接触型冷風冷却装置で冷気を吹き付けて冷却する場合と、培養ウェルプレートを冷却プレートと接触させて緩慢凍結法による冷却する場合における細胞生存率の影響を調べた。
図6は、非凍結(コントロール)或いは2種類の方法で凍結処理した試料の細胞生存率について示したものである。
図6に示すように、非貫流方式の非接触型冷風冷却装置で凍結した方が、接触型による緩慢凍結した場合と比較して細胞生存率が高いことが明らかとなった。
凍結保存液が、-55℃以上-35℃以下の環境下で凍結する際の温度変化を確認するために、以下の試験を行った。
(凍結保存液の温度測定)
凍結保存液としてステムセルバンカー(登録商標)DMSOフリーGMPグレードを加えて蓋をした24ウェルプレートの培養容器を、非貫流方式の非接触型冷風冷却装置(3DフリーザーKSS-40BLW-2400V、古賀産業社)により、-35℃、-45℃、-55℃の温度環境下、ファン速度40Hzで冷却した。凍結保存液の経時的な温度変化は、温度測定器(ADL12、アズワン社)を用いて、各群6検体ずつ測定した。また、培養容器の蓋部の温度も同様に測定した。
図7(A)~(C)は、それぞれ-35℃、-45℃、-55℃での凍結処理による凍結保存液の温度変化を示したものである。また、図中の点線で囲まれた部分は、過冷却状態に特徴的なピークを示している。
図7に示すように、-35℃、-45℃、-55℃の環境下における凍結保存液の温度変化を比較すると、低温処理ほど早い時間に過冷却状態が観察された。
様々な凍結保存液を用い、非貫流方式の非接触型冷風冷却装置を用いて凍結した場合とプログラムフリーザーを用いて緩慢凍結した場合の細胞保存液の凍結する際の温度変化を調べた。
凍結保存液を6ウェルプレートの3ウェル(1ウェルに凍結保存液2mL)に加えて、非接触型冷風冷却装置(3Dメディカルフリーザー:古賀産業社)、又は接触型プログラムフリーザー(ストレックス社)を用いて凍結した。凍結保存液の経時的な温度変化は、温度測定器(ADL12、アズワン社)を用いて、各群3ウェルずつ測定した。凍結保存液は、実施例2と同様に(1)ステムセルバンカー(登録商標)(日本全薬工業社)、(2)バンバンカー(登録商標) hRM(日本ジェネティクス社)、(3)バンバンカー(登録商標)(日本ジェネティクス社)を用いた。また、DMSOを含有しない凍結保存液(DMSO不含細胞保存液)としては、(4)Cell Reservoir One(ナカライテスク社)、(5)クライオスカーレス(登録商標)DMSOフリー(バイオベルデ社)、(6)ステムセルキープ(バイオベルデ社)、(7)Cellvation(登録商標:Protide Pharmaceuticals社)、(8)ReproCryo RM(リプロセル社)を用いた。非接触型冷風冷却装置(3Dメディカルフリーザー)による凍結は実施例2、及び、プログラムフリーザーによる凍結は実施例3と同様の条件である。
図8A~Hに示すように、非接触型冷風冷却装置を用いた場合は冷却開始から約20分で-30℃に達しており、冷却開始から5分以内に過冷却状態に特徴的なピークを示している。一方、プログラムフリーザーで凍結した場合には、-30℃に達するまでに30分以上必要であり、冷却開始から15分以上経過後に過冷却状態に特徴的なピークを示している。また、
Claims (10)
- (1)培養容器内で細胞を培養する工程、
(2)前記培養容器にジメチルスルホキシドを含有しない凍結保存液を加えて、前記工程(1)で培養した培養細胞を前記凍結保存液に浸漬させる工程、
(3)前記培養容器を被覆し、前記凍結保存液に浸漬された前記培養細胞及び前記培養容器を、-60℃以上-25℃以下の環境下に静置して凍結処理する工程、
(4)前記工程(3)で凍結処理した前記培養細胞を-80℃以下で凍結保存する工程、
を有することを特徴とする培養細胞の凍結保存方法。 - 前記工程(3)において、冷気を前記培養容器に吹き付けて凍結処理することを特徴とする請求項1記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記工程(3)において、非貫流方式の冷却装置で冷気を吹き付けて凍結処理することを特徴とする請求項2記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記工程(1)で培養して得られた培養細胞が前記培養容器に接着した状態で前記培養容器に凍結保存液を加えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記凍結処理は、0℃以上の環境下で凍結保存液に浸漬された培養細胞を、非段階的に-50℃以上-25℃以下の環境下で行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記凍結処理は、凍結処理開始から10分以内に、凍結保存液の過冷却状態が解除することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記工程(1)で培養して得られた培養細胞の形態は、細胞シート又は三次元細胞培養体であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記工程(3)において、凍結処理後に細胞シート又は三次元細胞培養体が前記培養容器に接着していることを特徴とする請求項7に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- 前記工程(1)で培養する細胞は、線維芽細胞、角膜上皮細胞、網膜細胞、心筋細胞、間葉系幹細胞、又は多能性幹細胞であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の培養細胞の凍結保存方法。
- (1)培養容器内で細胞を培養する工程、
(2)前記培養容器にジメチルスルホキシドを含有しない凍結保存液を加えて、前記工程(1)で培養した培養細胞を前記凍結保存液に浸漬させる工程、
(3)前記培養容器を被覆し、前記凍結保存液に浸漬された前記培養細胞及び前記培養容器を、-60℃以上-25℃以下の環境下に静置して凍結処理する工程、
(4)前記工程(3)で凍結処理した前記培養細胞を-80℃以下で凍結保存する工程、
(5)前記工程(4)で凍結保存した前記培養細胞を解凍し、前記培養容器から剥離する工程、
を有する、細胞含有組成物の作製方法。
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