JP7597611B2 - 転がり軸受、軸受装置およびモータ - Google Patents
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Description
図1は、実施形態に係る転がり軸受における冠型保持器の非開口部側の一部破断平面図である。図2は、実施形態に係る転がり軸受における冠型保持器の開口部側の一部破断平面図である。図3は、図1の縦断面図である。転がり軸受1は、外輪2と、外輪2の内周側に配置された内輪3と、複数の転動体4と、保持器5とを有し、グリース6が配置されている。複数の転動体4は、外輪2の軌道溝21と内輪3の軌道溝31との間に設けられている。保持器5は、転動体4を回転可能に保持するポケットを備える。グリース6は、外輪2および内輪3で囲まれた軸受空間Sに配置されている。また、グリース6は、軸受空間Sのうち、複数の転動体4を挟んで軸方向の一方側と軸方向の他方側との双方において、外輪2の内周面側に充填されている。
R1-NHCONH-R2-NHCONH-R3 (1)
ここで、R1、R3は脂肪族炭化水素基でも脂環族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、炭素数に特に限定はない。R2は、芳香族炭化水素基であり、フェニル基が1個もしくは2個置換したものである。これらを合成する際に使用する原料には、アミン化合物およびイソシアネート化合物を用いる。アミン化合物として、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキアデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどに代表される脂肪族アミンや、ヘキシルアミンなどに代表される脂環式アミンの他に、アニリン、p-トルイジン、エトキシフェニルアミンなどに代表される芳香族アミンが用いられる。イソシアネート化合物として、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネートが用いられる。脂肪族アミンおよび芳香族アミンをアミン原料に用いて、芳香族イソシアネートとで合成する脂肪-芳香族ジウレア化合物(脂肪族芳香族ジウレア化合物)を用いることが好ましい。いいかえると、ジウレア化合物は、R1、R3は脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、R2は、芳香族炭化水素基であることが好ましい。
図4は、変形例に係る転がり軸受における冠型保持器の非開口部側の一部平面図である。実施形態に係る転がり軸受では、隅部X2において、グリース6を、外輪2に円周方向に沿って連続する円環状となるように配置している。しかしながら、図4に示す転がり軸受1Aのように、隅部X2において、複数のグリース6Aを、外輪2に円周方向に沿って互いに離間するように配置してもよい。このとき、グリースの充填間隔および径方向での充填長さを調整することにより、軸受空間へのグリースの充填量を容易に制御できる。また、隅部X1においても、複数のグリース6Aを、外輪2に円周方向に沿って互いに離間して配置するように配置してもよい。なお、複数のグリース6Aは、離間している場合に限らず、互いに一部接触するように配置されてもよい。
図5は、実施形態に係るモータの断面図である。モータ100は、シャフト101と、シャフト101に取り付けられたロータコア102および軸受装置103とを有する。軸受装置103は、一対の上述した転がり軸受1と、転がり軸受1のそれぞれに予圧を付与するばね104と、一対の転がり軸受1を包囲するスリーブ105とを有する。一対の転がり軸受1における外輪2の外周面は、スリーブ105に固着されている。また、一対の転がり軸受1における内輪3の内周面は、シャフト101に固着されている。このようなモータ100は、上述した転がり軸受1を有するため、高速回転用途に用いた場合も長寿命を達成できる。
<グリースおよび防錆油>
実施例および比較例では、下記グリースA~Eを作製し、その動的粘弾性の評価試験を行い、損失正接を求めた。
・グリースA:損失正接tanδ=0.15
基油としてPAO8(ポリαオレフィン、100℃における動粘度8mm2/s)81wt%、ウレア系増ちょう剤として脂肪-脂環式ウレア12wt%、およびリン系摩擦調整剤としてZnDTP 2wt%を含む。
・グリースB:損失正接tanδ=0.14
基油としてPAO8(ポリαオレフィン、100℃における動粘度8mm2/s)81wt%、ウレア系増ちょう剤として脂環式ウレア12wt%、およびリン系摩擦調整剤としてTCP 2wt%を含む。
・グリースC:損失正接tanδ=0.15
基油としてPAO8(ポリαオレフィン、100℃における動粘度8mm2/s)81wt%、ウレア系増ちょう剤として脂環式ウレア12wt%、およびリン系摩擦調整剤としてTPPT 2wt%を含む。
・グリースD:損失正接tanδ=0.15
基油としてPAO8(ポリαオレフィン、100℃における動粘度8mm2/s)83wt%、およびウレア系増ちょう剤として脂環式ウレア12wt%を含む。
・グリースE:損失正接tanδ=0.15
基油としてPET油(エステル油)81wt%、ウレア系増ちょう剤として脂肪-芳香族ウレア12wt%、およびリン系摩擦調整剤としてTCP 2wt%を含む。
測定条件は、ギャップを0.5mmに設定した直径25mmのパラレルプレート間に測定対象のグリースを挟み、温度が25℃、周波数が1Hz、ひずみ量が0.07(固定)%の条件にて測定を行い、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を測定した。また、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)より、下記式(2)により損失正接tanδを算出した。損失正接tanδは、数値が大きいとその物質が粘性的で、小さいと弾性的であることを意味する。
損失正接tanδ=G”/G’ (2)
・防錆油I:
基油としてPAO8(ポリαオレフィン、40℃における動粘度48mm2/s)93wt%、およびリン系摩擦調整剤としてZnDTP 2wt%を含む。
・防錆油II:
基油としてPET油(エステル油)93wt%、およびリン系摩擦調整剤としてZnDTP 2wt%を含む。
上記のサンプルにはいずれもその他添加剤として金属不活性剤・酸化防止剤・防錆剤を5%含む。
表1のようにグリースAおよび防錆油Iを用いて、図1~3に示す転がり軸受1を得た。まず、外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を組み合わせた。組み合わせた外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を防錆油Iに塗布した。次に、開口部51側および非開口部52側から、グリースAを充填した。ここで、隅部X1、X2において、グリースAを、外輪2に円周方向に沿って連続する円環状となるように配置した。グリースAを充填した後、外輪2の両端部に、一方および他方のシールド板71、72(鋼シールド)を取付けた。
得られた転がり軸受1において、軸受空間Sの空間容積を100%としたときに、一方の隅部X1および他方の隅部X2に配置されるグリースAの容積は、合計で12.5%であった。また、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は60wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は40wt%であった。なお、外輪2の外周の径は13mmであり、内輪3の内周の径は8mmであり、軸方向の長さは4mmであった。
開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量と、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量とを変更した以外は、実施例1と同様にして転がり軸受1を得た。なお、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は50wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は50wt%であった。
開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量と、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量とを変更した以外は、実施例1と同様にして転がり軸受1を得た。なお、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は40wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は60wt%であった。
開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量と、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量とを変更した以外は、実施例1と同様にして転がり軸受1を得た。なお、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は20wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は80wt%であった。
グリースBを用いた以外は、実施例4と同様にして転がり軸受1を得た。
グリースCを用いた以外は、実施例4と同様にして転がり軸受1を得た。
表1のようにグリースAおよび防錆油Iを用いて、転がり軸受を得た。まず、外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を組み合わせた。組み合わせた外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を防錆油Iに浸漬した。次に、非開口部52側のみから、グリースAを充填した。ここで、隅部X2において、グリースAを、外輪2に円周方向に沿って連続する円環状となるように配置した。グリースAを充填した後、外輪2の両端部に、一方および他方のシールド板71、72(鋼シールド)を取付けた。
得られた転がり軸受1において、軸受空間Sの空間容積を100%としたときに、一方の隅部X1および他方の隅部X2に配置されるグリースAの容積は、合計で12.5%であった。また、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は0wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は100wt%であった。なお、外輪2の外周の径は13mmであり、内輪3の内周の径は8mmであり、軸方向の長さは4mmであった。
表1のようにグリースAおよび防錆油Iを用いて、転がり軸受を得た。まず、外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を組み合わせた。組み合わせた外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を防錆油Iに浸漬した。次に、開口部51側のみから、グリースAを充填した。ここで、隅部X1において、グリースAを、外輪2に円周方向に沿って連続する円環状となるように配置した。グリースAを充填した後、外輪2の両端部に、一方および他方のシールド板71、72(鋼シールド)を取付けた。
得られた転がり軸受1において、軸受空間Sの空間容積を100%としたときに、一方の隅部X1および他方の隅部X2に配置されるグリースAの容積は、合計で12.5%であった。また、充填したグリース全量を100wt%としたときに、開口部51側の一方の隅部X1に配置されたグリースAの量は100wt%であり、非開口部52側の他方の隅部X2に配置されたグリースAの量は0wt%であった。なお、外輪2の外周の径は13mmであり、内輪3の内周の径は8mmであり、軸方向の長さは4mmであった。
グリースAおよび防錆油IIを用いた以外は、実施例4と同様にして転がり軸受を得た。
グリースDおよび防錆油Iを用いた以外は、実施例4と同様にして転がり軸受を得た。
グリースEおよび防錆油IIを用いた以外は、実施例4と同様にして転がり軸受を得た。
表1のようにグリースAおよび防錆油Iを用いて、転がり軸受を得た。まず、外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を組み合わせた。組み合わせた外輪2、内輪3、転動体4および保持器5を防錆油Iに浸漬した。次に、転送部および保持器のグリースポケットに、グリースAを充填した後、外輪2の両端部に、一方および他方のシールド板71、72を取付けた。
得られた転がり軸受1において、軸受空間Sの空間容積を100%としたときに、グリースAの容積は、12.5%であった。なお、外輪2の外周の径は13mmであり、内輪3の内周の径は8mmであり、軸方向の長さは4mmであった。
・寿命特性
転がり軸受を試験用モータにより内輪回転するようにして室温で回転させた。軸方向の予圧Faは12Nとした。回転数は150,000rpmとした。この条件で500時間以上回転を維持したものを合格(○)とした。一方500時間未満回転を維持したものを不合格(×)とした。
・トルク安定化時間
転がり軸受を試験用モータにより内輪回転するようにして室温で回転させた。軸方向の予圧Faは12Nとした。規定回転数(150,000rpm)まで上昇するのにかかる時間を測定した。このトルク安定化時間が300秒以下のものを合格(○)とした。一方、300秒を超えるものを不合格(×)とした。
表1に評価結果を示す。
Claims (10)
- 外輪と、
前記外輪の内周側に配置された内輪と、
前記外輪の軌道溝と前記内輪の軌道溝との間に設けられた複数の転動体と、
前記転動体を回転可能に保持するポケットを備えた保持器と、
前記外輪および前記内輪で囲まれた軸受空間に配置されたグリースと、
を備え、
前記グリースは、前記軸受空間のうち、前記複数の転動体を挟んで軸方向の一方側と前記軸方向の他方側との双方において、前記外輪の内周面側に充填され、
前記グリースは、温度が25℃、周波数が1Hz、ひずみ量が0.07(固定)%の条件で測定した時の損失正接が0.1以上0.2以下の値であり、基油として合成炭化水素油のみと、ウレア系増ちょう剤と、リン系摩擦調整剤とを含み、
さらに、前記外輪の軌道溝および前記内輪の軌道溝に、防錆油が付着しており、
前記防錆油は、基油として合成炭化水素油のみと、リン系摩擦調整剤とを含む
転がり軸受。 - 前記軸方向の一端側で、前記外輪と前記内輪との間を塞ぐ、一方のシールド板と、
前記軸方向の他端側で、前記外輪と前記内輪との間を塞ぐ、他方のシールド板と、
をさらに備え、
前記軸受空間は、前記外輪、前記内輪、前記一方のシールド板および前記他方のシールド板で囲まれ、
前記グリースは、前記軸受空間のうち、前記外輪の内周面と前記一方のシールド板とで形成される一方の隅部と、前記外輪の内周面と前記他方のシールド板とで形成される他方の隅部とに配置されている
請求項1に記載の転がり軸受。 - 前記保持器が、冠型保持器であり、前記軸方向の一端側に前記複数の転動体をそれぞれ収納する複数の開口部を有し、前記軸方向の他端側に非開口部を有する
請求項1または2に記載の転がり軸受。 - 前記保持器が、冠型保持器であり、前記軸方向の一端側に前記複数の転動体をそれぞれ収納する複数の開口部を有し、前記軸方向の他端側に非開口部を有し、
前記開口部側の前記一方の隅部に配置された前記グリースの量が、前記非開口部側の前記他方の隅部に配置された前記グリースの量と同じであるか、または、前記開口部側の前記一方の隅部に配置された前記グリースの量が、前記非開口部側の前記他方の隅部に配置された前記グリースの量よりも少ない
請求項2に記載の転がり軸受。 - 前記グリースは円環状である
請求項4に記載の転がり軸受。 - 前記グリースの全容積量を100%としたときに、前記一方の隅部に配置される前記グリースの容積は20%以上60%以下の範囲であり、前記他方の隅部に配置される前記グリースの容積は40%以上80%以下の範囲である、
請求項4または5に記載の転がり軸受。 - 前記軸受空間の空間容積を100%としたときに、前記一方の隅部および前記他方の隅部に配置される前記グリースの容積は、合計で5%以上20%以下である
請求項1~6のいずれか1項に記載の転がり軸受。 - 前記防錆油が、さらに硫黄系防錆添加剤を含む
請求項1~7のいずれか1項に記載の転がり軸受。 - 一対の請求項1~8のいずれか1項に記載の転がり軸受と、前記転がり軸受のそれぞれに予圧を付与するばねと、前記一対の転がり軸受を包囲するスリーブとを有し、
前記一対の転がり軸受における前記外輪の外周面は、前記スリーブに固着されている、
軸受装置。 - シャフトと、前記シャフトに取り付けられたロータコアおよび請求項9に記載の軸受装置とを有する、
モータ。
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