JP7491980B2 - フルオレン骨格を有する化合物の製造方法および不純物の少ないフルオレン骨格を有する化合物 - Google Patents

フルオレン骨格を有する化合物の製造方法および不純物の少ないフルオレン骨格を有する化合物 Download PDF

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本発明は、光学レンズや光学フイルムに代表される光学部材を構成する熱可塑性樹脂を形成するモノマーとして好適であり、高屈折率、低複屈折および耐熱性と成形性のバランスに優れた熱可塑性樹脂の原料として好適なフルオレン骨格を有する化合物の製造方法と不純物の少ないフルオレン骨格を有する化合物に関する。
近年、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)に代表されるフルオレン骨格を有するアルコールを原料としたポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネートなどの熱可塑性樹脂材料は、光学特性、耐熱性、成形性などに優れることから、光学レンズや光学シートなどの光学部材として注目されている。
例えば、特許文献1には、BPEF骨格を有するアルコールを原料としたポリカーボネート樹脂が開示されている。しかしながら、該アルコールを使用したポリカーボネート樹脂の屈折率は1.64との記載があるものの、近年の急速な技術革新に伴い、前記特性のさらなる向上が要求されている。そこで更なる高屈折率化を目指し、特許文献2では9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(BOPBPEF)を原料とした熱可塑性樹脂が開発されているものの、該特許文献に記載の樹脂も屈折率に未だ改善の余地がある。また、特許文献3には9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)を原料とした高屈折率樹脂が記載されているものの、屈折率は高いが複屈折も高くなることから光学レンズなどの透明材料に適用するには大きな問題となってしまう。
このように、高屈折率と低複屈折とはトレードオフの関係にあり、従来のポリカーボネートやポリエステル樹脂では、両特性を両立させることは困難であった。
ところで、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)の製造方法としては、硫酸とチオール類を触媒として用いてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方法(非特許文献1)が開示されている。また、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)の製造方法としては、BPEFと同様、硫酸とチオール類とを触媒として用いてフルオレノンと2-ナフトキシエタノールを脱水縮合させる方法が開示されている(特許文献4)。さらに9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン(BOPBPEF)もBPEFやBNEFと同様、硫酸とチオール類を触媒として用いてフルオレノンと2-(2-ビフェニリルオキシ)エタノールを脱水縮合させる方法(特許文献5)が開示されているが、いずれの方法も大量の硫酸を使用するため、反応後の中和・精製といった煩雑な精製操作が必要であり、かつ大量の中和排水が発生してしまう。また、製品中に触媒由来の硫黄成分が混入することにより、製品の着色や安定性の低下、純度の低下などの問題が発生する。さらに光学用樹脂材料など、高純度の製品を得るためには硫黄成分の除去のための精製操作を繰り返す必要があり、工業的に有利な方法とは言えない。
国際公開第2007/142149号パンフレット 特開2015-86265号公報 特開2017-171885号公報 特開2016-79405号公報 特開2009-256342号公報
Chemistry Letters,1998年,1055-1056頁
本発明において分子設計した下記式(1)の化合物の製造方法は主に2つの工程から成り立つが、本願発明者が工程1の反応において、上記特許文献に記載される方法を用いて下記式(5)と下記式(6)とを用いて下記式(7)のアルコールを合成しても全く反応が進行しないか、あるいは反応が進行したとしても反応速度が遅いため工業的に不利である。また、工程2で使用する触媒の活性が強くかつその使用量が増加すると、下記式(8)または(9)で表される化合物同士が反応するカップリング反応(副反応)が起き、下記式(1)で表されるフルオレン化合物の収率が低下するとともに製造コストが上がるばかりでなく下記式(1)で表されるフルオレン化合物中へ混入し純度の低下を引き起こした。さらに、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理をしなければ、下記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する白色化合物に工程2の反応で使用したパラジウム触媒に由来する黒色の粒子が混入しており該アルコール化合物の色相が悪化してしまった。
したがって、本発明では、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであって、工程1における下記式(5)から下記式(7)への選択率が高くかつ工程2におけるボロン酸類同士のカップリング反応(副反応)が起きにくく更には原料アルコール中のパラジウム含有量等の特定の金属含有量や特定の化合物含有量が少なく、その原料や原料を使った樹脂の色相や種々特性(光学特性、耐熱性、成形性など)に優れた新規なフルオレン骨格を有する化合物の製造方法および不純物の少ないフルオレン骨格を有する化合物を提供することを目的とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであって、一定の品質を有し、ポリマー原料として優れたフルオレン骨格を有する化合物の製造方法、および不純物の少ないフルオレン骨格を有する化合物を提供することである。具体的には、本発明は、以下に示すフルオレン骨格を有する化合物の製造方法およびフルオレン骨格を有する化合物に関する。
[1]下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物の製造方法であって、
(式中、環Zは(同一または異なった)芳香族基、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基、ArおよびArは炭素数が6~10の置換基を有してもよい芳香族基、LおよびLはアルキレン基、jおよびkはそれぞれ独立に0以上の整数、mおよびnはそれぞれ独立に0~5の整数を示す。)
下記式(2)で表されるパラジウム触媒を用い、
Pd/SiO (2)
かつ得られたフルオレン骨格を有する化合物中のパラジウム元素の含有量が下記式(3)を満たし、
0 ≦ Pd ≦ 10ppm (3)
さらに下記式(4)で表される副生成物が3%以下の範囲内で生成することを特徴とするフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
Ar-Ar、Ar-ArまたはAr-Ar (4)
(ArおよびArは前記式(1)と同じである。)
[2]Zがフェニル基またはナフチル基である前項1に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[3]前記式(4)が下記式(4a)、(4b)または(4c)で示される副生成物である前項1または2に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[4]前記式(1)が下記式(1a)~(1d)で示されるうちの1つである前項1~3のいずれかに記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
(式中、R~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基を示す。ArおよびAr、LおよびL、mおよびnは前記式(1)と同じである。)
[5]前記式(1)が前記式(1b)である前項4に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[6]前記式(1)中のArおよびArがフェニル基またはナフチル基である前項1~5のいずれかに記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[7]上記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物の製造方法において、少なくとも下記の工程1および工程2を含んでなる前項1記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
工程1:下記式(5)で示されるフルオレノン類と下記式(6)で示されるアルコール類とを反応溶媒中、酸触媒を使用して反応させる工程
工程2:工程1で製造した反応物(7)と下記式(8)または(9)で示されるボロン酸類とを反応溶媒中、塩基および下記式(2)で示されるパラジウム触媒の存在下で反応させる工程
(式中、Xは1位、2位、3位または4位の置換基であり、Xは5位、6位、7位または8位の置換基であり、ハロゲン原子を示す。)
(式中、Zは式(1)と同じである。R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基、sは独立に0以上の整数、R11はアルキレン基を示し、pは0以上の整数を示す。)
(式中、X、Xは式(5)と同じである。Z、R12、s、R11、pは式(6)と同じである。)
(式中、Yは芳香族基、R13は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を示す。lは1または2であり、l=2の場合、R13は同一でもあるいは異なっていてもよい。)
Pd/SiO (2)
[8]式(5)で表される化合物が2,7-ジブロモフルオレンである前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[9]式(6)で表される化合物が2-フェノキシエタノールである前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[10]式(7)で表される化合物が9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジブロモフルオレンである前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[11]式(8)で表される化合物が2-ナフタレンボロン酸、1-ナフタレンボロン酸またはフェニルボロン酸である前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[12]式(9)で表される化合物が2-ナフタレンボロン酸の無水物、1-ナフタレンボロン酸の無水物またはフェニルボロン酸の無水物である前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[13]工程1で使用される酸触媒がリン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸である前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[14]前記ヘテロポリ酸が、あらかじめ脱水処理されたヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸の無水物である前項13に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[15]工程1で使用される反応溶媒として、トルエンを用いる前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[16]工程2で使用される塩基が炭酸カリウムおよび/または炭酸ナトリウムである前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[17]工程2で使用される反応溶媒として、トルエンまたはトルエンとエタノールの混合溶媒を用いる前項7に記載のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法。
[18]下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物であって、
(式中、環Zは(同一または異なった)芳香族基、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基、ArおよびArは炭素数が6~10の置換基を有してもよい芳香族基、LおよびLはアルキレン基、jおよびkはそれぞれ独立に0以上の整数、mおよびnはそれぞれ独立に0~5の整数を示す。)
該フルオレン骨格を有する化合物中のパラジウム元素の含有量が下記式(3)を満たし、
0 ≦ Pd ≦ 10ppm (3)
かつ下記式(4)で表される副生成物が3%以下であることを特徴とするフルオレン骨格を有する化合物。
Ar-Ar、Ar-ArまたはAr-Ar (4)
(ArおよびArは前記式(1)と同じである。)
[19]熱可塑性樹脂の原料に用いる前項18に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
本発明のフルオレン化合物の製造方法は、シリカに担持された不均一系のパラジウム触媒を用いて製造するため、触媒活性が適度に抑えられボロン酸類同士のホモカップリング反応(副反応)が起きにくくなりかつパラジウム含有量等の特定の金属含有量や特定の化合物(副生物)含有量も少ないため、使用するボロン酸類の量が抑えられることによって均一系のパラジウム触媒を用いた場合の製法に比べ安価になるばかりか、ろ過のみで触媒の分離が可能になり、さらには該フルオレン化合物中に残存するパラジウム含有量等の特定の金属含有量や特定の化合物含有量も低いため、精製が容易であり非常に効率よく該フルオレン化合物を製造することができる。さらに本発明により製造された該フルオレン化合物を原料とする熱可塑性樹脂は、光学特性に加え、種々の特性(耐熱性、色相、成形性など)に優れている。
本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に限定されるものではない。
[フルオレン骨格を有する化合物の製造方法]
本発明の上記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物の製造方法としては、下記式(2)で表される不均一系のパラジウム触媒を用いる製造方法であり、特に少なくとも下記の工程1および工程2を含んでなる製造方法が好ましく挙げられる。すなわち、下記式(5)で表されるフルオレノン類と下記式(6)で表されるアルコール類の化合物とを反応させる第1の工程1と、第1の工程1で製造した反応物(7)と下記式(8)または(9)で表されるボロン酸類とを反応させる第2の工程2により製造できる。上記製造方法では、下記式(6)で示すアルコール類が反応溶媒としても作用しかつ減圧留去により容易に除去ができることや、下記式(2)で表される不均一系のパラジウム触媒を用いることで下記式(8)または(9)で示すボロン酸類同士のカップリング反応(副反応)が起きにくいことなどから、簡便に効率よく本発明のフルオレン骨格を有する化合物を製造できる。
(式中、Xは1位、2位、3位または4位の置換基であり、Xは5位、6位、7位または8位の置換基であり、ハロゲン原子を示す。)
(式中、Zは式(1)と同じである。R12は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基、sは独立に0以上の整数、R11はアルキレン基を示し、pは0以上の整数を示す。)
(式中、X、Xは式(5)と同じである。Z、R12、s、R11、pは式(6)と同じである。)
(式中、Yは芳香族基、R13は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を示す。lは1または2であり、l=2の場合、R13は同一でもあるいは異なっていてもよい。)
Pd/SiO (2)
上記式(5)で表される化合物は、前記式(1)においてフルオレン骨格に対応するフルオレノン化合物であり、Xは1位、2位、3位または4位の置換基であり、Xは5位、6位、7位または8位の置換基であり、ハロゲン原子を示す。
以下に上記式(5)で表されるフルオレノン化合物の代表例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
1,8-ジフルオロフルオレノン、2,7-ジフルオロフルオレノン、3,6-ジフルオロフルオレノン、4,5-ジフルオロフルオレノン、1,8-ジクロロフルオレノン、2,7-ジクロロフルオレノン、3,6-ジクロロフルオレノン、4,5-ジクロロフルオレノン、1,8-ジヨードフルオレノン、2,7-ジヨードフルオレノン、3,6-ジヨードフルオレノン、4,5-ジヨードフルオレノン、1,8-ジブロモフルオレノン、2,7-ジブロモフルオレノン、3,6-ジブロモフルオレノン、4,5-ジブロモフルオレノン等が好ましく挙げられる。なかでも1,8-ジブロモフルオレノン、2,7-ジブロモフルオレノン、3,6-ジブロモフルオレノン、4,5-ジブロモフルオレノンが好ましく、特に、2,7-ジブロモフルオレノンが好ましい。
これらは単独で使用してもよく、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。本発明では好ましくは2,7-ジブロモフルオレノンである。
使用する前記式(5)で表されるフルオレノン類の純度は、特に限定されないが、通常、95%以上が好ましく、より好ましくは99%以上である。なお、フルオレノン類は、市販品を用いてもよく、合成したものを使用してもよい。例えば、ジブロモフルオレノン類を製造する方法としては、非特許文献(Journal of American Chemical Society,2017,Vol.139,11073-11080)に記載の方法、すなわち9-フルオレノンと臭素とを水中下で反応させる方法などが挙げられる。
前記式(6)で表される化合物((ポリ)ヒドロキシル基含有アレーン環化合物)は、前記式(7)で表されるフルオレン誘導体において、9位に置換した(ポリ)ヒドロキシル基含有アレーン環に対応している。すなわち、前記式(6)において、環Zは前記式(1)における環Zに、R11はLおよびLに、pはmおよびnに、R12はRおよびRに、sはjおよびkにそれぞれ対応している。環Zは、ベンゼン環やナフタレン環が例示できる。
11で表されるアルキレン基としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数2~3のアルキレン基である。R11の置換位置は特に限定されるものではない。置換基数pは0または1以上であり、同一もしくは異なっていてもよい。好ましくは0~15、より好ましくは0~5である。なお、pが2以上の場合、ポリアルコキシ基は、同一のアルコキシ基で構成されていてもよく、異種のアルコキシ基( 例えばエトキシ基とプロピレンオキシ基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルコキシ基で構成されている。
12は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。
12で表される炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ナフチル基、アラルキル基などが例示できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基が好ましく、C1-3アルキル基がさらに好ましく、その中でメチル基またはエチル基がよりさらに好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-8シクロアルキル基、C5-6シクロアルキル基などが好ましく、C5-6シクロアルキル基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、アルキルフェニル基(モノまたはジメチルフェニル基、トリル基、2-メチルフェニル基、キシリル基など)などが好ましく、フェニル基がより好ましい。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが好ましく例示できる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが好ましい。
置換基R12の置換数sは、縮合炭化水素の縮合環数などに応じて適宜選択でき、特に限定されず、好ましくは0以上の整数、より好ましくは1以上の整数である。また、好ましくは6以下の整数、より好ましくは4以下の整数である。
前記式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、p=0の化合物として、フェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノールなどのアルキルフェノール、2,3-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノールなどのジアルキルフェノール、2-メトキシフェノール、2-エトキシフェノールなどのアルコキシフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノールなどのフェニルフェノールなどが挙げられる。p=1の化合物として、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシブタノールなどのフェノキシアルキルアルコール、(2-メチル-フェノキシ)エタノール、(3-メチル-フェノキシ)エタノール、(3-エチル-フェノキシ)エタノール、(3-ブチル-フェノキシ)エタノール、(2-メチル-フェノキシ)プロパノール、(3-メチル-フェノキシ)プロパノールなどのアルキルフェノキシアルキルアルコール、(2,3-ジメチルフェノキシ) エタノール、(2,5-ジメチルフェノキシ)エタノール、(2,6-ジメチルフェノキシ)エタノール、(2,6-ジブチルフェノキシ)エタノールなどのジアルキルフェノキシアルキルアルコール、(2-メトキシフェノキシ)エタノールなどのアルコキシフェノキシアルキルアルコール、(2-シクロヘキシルフェノキシ)エタノールなどのシクロアルキルフェノキシアルキルアルコール、ビフェニリルオキシエタノールなどのアリールフェノキシアルキルアルコールなどが挙げられる。また、pが2以上の化合物としては、これらフェノキシアルキルアルコールに対応するポリオキシアルキレンフェニルエーテルなどが挙げられる。好ましくはフェノキシC2-6アルキルアルコールまたはC1-4アルキルフェノキシC2-6アルキルアルコールであり、特に好ましくはフェノキシエタノールである。
工程1の反応において、前記式(6)で表される化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、副反応抑制及び経済性の点から、フルオレノン類1モルに対して、好ましくは2~50モル、より好ましくは2.5~20モル、さらに好ましくは3~10モルである。また、これらの化合物を反応溶媒として用いることもできる。
これらの前記式(6)で表される化合物は、市販品を用いてもよく、合成したものを使用してもよい。前記式(6)で表される化合物を製造する方法としては、例えばフェノールのヒドロキシル基をアルカリ触媒存在下、エチレンオキサイドやエチレンカーボネートを用いて反応させる方法などが挙げられる。
原料として使用する前記式(6)で表される化合物の純度は特に限定されないが、通常、95%以上であり、好ましくは99%以上である。
工程1の反応は、通常酸触媒の存在下で行うことができる。酸触媒としては、例えば、硫酸、チオール酸、モンモリロナイト、ヘテロポリ酸等が挙げられ、これらの中でも特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく、本発明のフルオレン骨格を有する化合物を得やすいことからヘテロポリ酸が好ましい。
本発明において好ましく用いられるヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の無機酸素酸が縮合して生成した化合物の総称であり、中心の酸素酸とその周りで縮合する別種の酸素酸の組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。中心の酸素酸を形成する数の少ない元素をヘテロ元素といい、その周りで縮合する酸素酸を形成する元素をポリ元素という。ポリ元素は単一種類の元素であってもよいし、複数種類の元素であってもよい。
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸のヘテロ元素は特に限定されるものではないが、例えば、銅、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、セリウム、トリウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、セレン、テルル、マンガン、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、オスミウム、イルジウム、白金が挙げられる。好ましくはリン(リン酸)またはケイ素(ケイ酸)である。また、ヘテロポリ酸を構成する酸素酸のポリ元素は特に限定されるものではないが、例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタルが挙げられる。好ましくはバナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素である。
ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば、XM1240、XM1242、XM1862、XM24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM1240である。各式中、Xはヘテロ元素であり、Mはポリ元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として、具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などが例示される。
ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトンと置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。
ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよいが、無水物の方がより反応が早く、また副生成物の生成が抑制され好ましい。結晶水含有物の場合、予め減圧乾燥や溶媒との共沸脱水等の脱水処理を行うことにより無水物と同様の効果を得ることができる。ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ-アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
ヘテロポリ酸の使用量は特に限定されるものではないが、充分な反応速度を得るには、フルオレノンに対して、好ましくは0.0001重量倍以上、より好ましくは0.001~30重量倍、さらに好ましくは0.01~5重量倍である。
工程1の反応を実施する方法は、特に限定されるものではないが、通常、前記式(5)と前記式(6)で表される化合物とヘテロポリ酸を反応装置に仕込み、空気中又は窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、トルエン、キシレンなどの不活性溶媒存在下又は非存在下で加熱攪拌することにより行うことができる。この際、触媒含有水や反応生成水など、反応系内の水分を除去する、脱水条件下で反応を行うことにより、脱水しない場合より反応が早く進行し、副生成物の生成が抑制され、より高収率で目的物を得ることができる。脱水方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、脱水剤の添加による脱水、減圧による脱水、常圧又は減圧下、溶媒との共沸による脱水などが挙げられる。
共沸脱水溶媒としては、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジ-iso-プロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの脂肪族および環状エーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノンなどのアミド溶媒、などが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、より好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンであり、さらに好ましくはトルエンである。その使用量は特に限定されるものではないが経済性の点から、フルオレノンに対して、好ましくは0.1重量倍以上、より好ましくは0.5~100重量倍、さらに好ましくは1~20重量倍である。
反応温度は使用する原料、溶媒の種類により異なるが、好ましくは50~300℃、より好ましくは80~250℃、さらに好ましくは120~180℃である。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
また、反応後、得られた反応混合物から前記式(7)で表される化合物を析出させてもよく、さらに、洗浄、濃縮、希釈、活性炭処理等の後処理を施した後に、50℃未満で前記式(7)で表される化合物を析出させることもできる。必要により上記の後処理を施された反応混合物から前記式(7)で表される化合物を析出させる操作は、必要により溶媒と混合された反応混合物を50℃以上、溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし、これを50℃未満に冷却することにより実施される。50℃以上では反応混合物から前記式(7)で表される化合物の結晶が析出する場合は、50℃以上では結晶が析出しなくなる量の希釈溶媒と反応混合物とを混合した後に、得られた混合物を50℃以上、溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし、これを50℃未満に冷却することにより実施すればよい。希釈溶媒としては、上記の反応に用いる溶媒として例示したものや、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプルパノール、ブタノール、t-ブタノール、イソブタノールおよびペンタノール等のアルコール溶媒、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の炭酸溶媒等が挙げられるが、メタノールまたは炭酸ジメチルが好ましく、メタノールが特に好ましい。
このような晶析操作は一回で行ってもよく、複数回繰り返して行ってもよい。特に、前記工程1の反応において、前記酸触媒がリンタングステン酸の場合、メタノールなどのアルコールを用いれば簡便にかつ効率よく、しかも一回の晶析操作であっても、リンやタングステン含有量の少ない前記式(7)で表される化合物を得ることができる。
析出した結晶は濾過等により回収される。得られた結晶は、上記の反応に用いた溶媒等を用いて洗浄されてもよいし、乾燥されてもよい。このようにして得られる前記式(7)で表される化合物の精製物の純度は、好ましくは95%以上である。
また、反応後、得られた反応混合物は、そのまま単離や精製を行うことなく、次の工程2の原料として使用することができる。
上記式(8)または(9)で表される化合物の環Yは、前記式(1)において基ArおよびArに対応しており、対応のボロン酸類が例示できる。また、前記式(8)および(9)において、基R13の好ましい態様は後述するRおよびRの好ましい態様と同様であり、lの好ましい態様は後述するjおよびkの好ましい態様と同様である。
使用するボロン酸類の純度は、特に限定されないが、通常、95%以上が好ましく、より好ましくは99%以上である。なお、ボロン酸類は、市販品を用いてもよく、合成したものを使用してもよい。ボロン酸類を製造する方法としては、例えば特許文献(特開2002-47292号公報)に記載の方法、すなわち、フェニルグリニヤール試薬と非エーテル系芳香族溶剤に溶解されたホウ酸エステル類とを反応させる方法などが挙げられる。
本発明に用いられるボロン酸は前記式(8)および(9)で表されるアルキルボロン酸、アルケニルボロン酸、アリールボロン酸、ヘテロアリールボロン酸およびその無水物などが含まれ、アルキルボロン酸としては、ブチルボロン酸、シクロへキシルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、2-エチルボロン酸、4-エチルボロン酸、へキシルボロン酸、イソブチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、メチルボロン酸、n-オクチルボロン酸、プロピルボロン酸、ペンチルボロン酸、2-フェニルエチルボロン酸やこれらの無水物が含まれ、アルケニルボロン酸としては、1-シクロペンテニルボロン酸、フェロセンボロン酸、1,1’-フェロセンジボロン酸やこれらの無水物が含まれ、アリールボロン酸としては、2-アントラセンボロン酸、9-アントラセンボロン酸、ベンジルボロン酸、2-ビフェニルボロン酸、3-ビフェニルボロン酸、4-ビフェニルボロン酸、2,3-ジメチルフェニルボロン酸、2,4-ジメチルフェニルボロン酸、2,5-ジメチルフェニルボロン酸、2,6-ジメチルフェニルボロン酸、3,4-ジメチルフェニルボロン酸、3,5-ジメチルフェニルボロン酸、2-エトキシフェニルボロン酸、3-エトキシフェニルボロン酸、4-エトキシフェニルボロン酸、6-メトキシ-2-ナフタレンボロン酸、2-メチルフェニルボロン酸、3-メチルフェニルボロン酸、4-メチルフェニルボロン酸、1-ナフタレンボロン酸、2-ナフタレンボロン酸、9-フェナントレンボロン酸、10-フェニル-9-アントラセンボロン酸、フェニルボロン酸、フェニルエタンボロン酸、4-フェニル(ナフタレン-1-イル)ボロン酸、3-プロポキシフェニルボロン酸、3-イソ-プロポキシフェニルボロン酸、4-イソ-プロポキシフェニルボロン酸、4-プロピルフェニルボロン酸、4-イソ-プロピルフェニルボロン酸、10-(ナフタレン-1-イル)-9-アントラセンボロン酸、10-(ナフタレン-2-イル)-9-アントラセンボロン酸やこれらの無水物が含まれ、ヘテロアリールボロン酸としては、ベンゾフラン-2-ボロン酸、ジベンゾフラン-4-ボロン酸、5-フォルミル-2-フランボロン酸、5-フォルミルチオフェン-2-ボロン酸、フラン-2-ボロン酸、フラン-3-ボロン酸、ピリジン-3-ボロン酸、ピリジン-4-ボロン酸、キノリン-2-ボロン酸、キノリン-3-ボロン酸、キノリン-4-ボロン酸、キノリン-5-ボロン酸、キノリン-6-ボロン酸、キノリン-8-ボロン酸、イソ-キノリン-4-ボロン酸、2-チオフェンボロン酸、3-チオフェンボロン酸、5-ピリミジンボロン酸やこれらの無水物が含まれる。
これらは単独で使用してもよく、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。本発明では好ましくは2-ナフタレンボロン酸またはその無水物である。
原料として用いる前記式(8)で表される化合物の使用比率は、前記式(7)で表される化合物(ハロゲン化フルオレン化合物)1モルに対して好ましくは2~5モル、より好ましくは、2.05~3.0モル、さらに好ましくは2.00~2.5モル程度であってもよい。該ボロン酸類が2モル未満であると前記式(1)で表される生成物の収率が低くなることがある。また、2.5モルを超えると、反応速度は速く収率が高くなるものの該フルオレン骨格を有する化合物の製造コストが上がることがある。
また、前記式(9)で表される化合物の使用比率は、前記式(7)で表される化合物(ハロゲン化フルオレン化合物)1モルに対して好ましくは1~5モル、より好ましくは0.8~3モル、さらに好ましくは0.7~1モル程度であってもよい。該ボロン酸類が0.7モル未満であると前記式(1)で表される生成物の収率が低くなることがある。また、1モルを超えると、反応速度は速く収率は高くなるものの該フルオレン骨格を有する化合物の製造コストが上がることがある。
工程2の前記式(7)と前記式(8)および/または(9)で表される化合物との反応(脱ハロゲン化反応)は、反応溶媒中、塩基および触媒の存在下で行うことができる。
工程2の反応で使用する塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)などの炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)などのリン酸塩などの無機塩、トリエチルアミン類、ピリジン、モルホリン、キノリン、ピペリジン、アニリン類、テトラnブチルアンモニウムアセテートなどのアンモニウム塩などの有機塩などが挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましく用いられ、炭酸カリウムおよび/または炭酸ナトリウムが好ましい。このような塩基は、単独で用いてもよく、また、2種類以上併用して用いることもできる。
また、工程2の反応において、上述した塩基の使用量は特に限定されないが、ボロン酸類1モルに対して好ましくは1~30当量、より好ましくは1~10当量添加される。
工程2の反応で使用する触媒としては、鈴木カップリング反応で使用されるパラジウム化合物でありが好ましく、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、酢酸パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス[4-(N, N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィンパラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-ブチルプレニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジ-tert-クロチルホスフィン)パラジウムジクロリド、Pd/SiO、Pd/Cなどが挙げられる。なかでも、Pd/SiOが使用される好ましい。このような触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用して用いることもできる。
工程2の反応において、上述した触媒の使用量は特に限定されないが、前記式(7)で示される化合物(ハロゲン化フルオレン化合物)1モルに対して、パラジウム金属原子換算で好ましくは0.1~2ミリモルであり、より好ましくは0.15~1ミリモルである。パラジウム触媒の使用量がパラジウム金属原子換算で0.1ミリモル未満の場合、反応が完結しにくくなることがある。また、パラジウム触媒の使用量がパラジウム金属原子換算で2ミリモルを超えると、ボロン酸類同士のホモカップリング反応(副反応)が起きるだけでなく、該フルオレン骨格を有する化合物中のパラジウム元素含有量を式(3)の範囲内にすることが困難になり該アルコール原料を用いて製造した熱可塑性樹脂の色相を悪化させる可能性があるばかりか、該フルオレン骨格を有する化合物の製造コストがあがることがある。
また、パラジウム触媒の添加方法は反応仕込み時に全量を一括添加してもよいし、場合によっては、総使用量が一括で添加する場合と同じになるよう、反応中、適宜、分割添加してもよい。その場合、反応率の確認は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
工程2で用いる反応溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類を単独または併用して用いることができる。芳香族炭化水素系溶媒は高沸点溶媒であるため反応温度を高く設定できるし、アルコールを用いることで水との親和性がよく反応性が良好になるため好適に用いられる。このような溶媒は単独で用いてもよく、または2種以上を併用して用いることもできる。さらには、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルアセトアミド等の非プロトン性溶媒、o-ジクロロベンゼン等のハロベンゼン類も使用できる。このような溶媒も単独で用いても良く、また、2種以上併用して用いることもできる。本発明においては、トルエンまたはトルエンとエタノールの混合溶媒を用いることがより好ましい。
前記反応溶媒(本発明の場合、トルエンまたはトルエンとエタノールの混合溶媒)の使用量は、特に限定されないが、前記式(7)で示される化合物(ハロゲン化フルオレン化合物)に対してトルエンは好ましくは0.1重量倍以上、より好ましくは0.5~100重量倍であり、さらに好ましくは1~50重量倍である。トルエンの使用量が0.1重量倍未満の場合、生成物が析出して撹拌が困難になる可能性がある。また、トルエンの使用量が100重量倍を超える場合、使用量に見合う効果がなく容積効率も悪化し該フルオレン骨格を有する化合物の製造コストが上がることがある。また、エタノールの使用量も特に限定されないが、前記式(7)で示される化合物(ハロゲン化フルオレン化合物)に対して好ましくは0.1~50重量倍であり、より好ましくは1~20重量倍である。エタノールの使用量が0.1重量倍未満の場合、反応速度が遅く収率が下がる可能性がある。また、エタノールの使用量が50重量倍を超える場合、トルエンと同様に使用量に見合う効果がなく容積効率も悪化し該フルオレン骨格を有する化合物の製造コストが上がることがある。
反応温度は使用する原料、溶媒の種類により異なるが、好ましくは50~150℃、より好ましくは60~130℃、さらに好ましくは70~120℃である。反応は液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
反応終了後の反応混合物には、通常、生成した前記式(1)で表される化合物以外に、未反応のフルオレン類、未反応のボロン酸類、塩基、触媒、副反応生成物などが含まれている。そのため、慣用の方法、例えば、ろ過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、活性炭処理あるいはそれと酷似した金属の除去処理、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。例えば、慣用の方法(アルカリ水溶液を加えて水溶性の複合体を形成させる方法など)によりボロン酸類を除去し、ろ過によりパラジウム化合物を除去したのち、再結晶溶媒を添加して冷却して再結晶化させ、次いでろ過分離することにより精製してもよい。
本発明の製造方法により得られるフルオレン骨格を有する化合物の純度は、60~100%の広い範囲から選択でき、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
[フルオレン骨格を有する化合物]
本発明の化合物は、下記式(1)で表されるフルオレン骨格を有する化合物、すなわち、フルオレン類の9位に少なくとも1つのヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素が2つ置換または付加した化合物である。
(式中、環Zは(同一または異なった)芳香族基、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいてもよい炭化水素基、ArおよびArは炭素数が6~10の置換基を有してもよい芳香族基、LおよびLはアルキレン基、jおよびkはそれぞれ独立に0以上の整数、mおよびnはそれぞれ独立に0~5の整数を示す。)
上記式(1)において、環Zで表される芳香族基としては、ベンゼン環の他、少なくともベンゼン環骨格を有する縮合多環式芳香族炭化水素が挙げられ、例えば、縮合二環式炭化水素、縮合三環式炭化水素等の縮合二乃至四環式炭化水素環などが好ましい。
縮合二環式炭化水素環としては、インデン環、ナフタレン環等の炭素原子数8-20(以下C8-20と示すことがある)のものが好ましく、C10-16の縮合二環式炭化水素環がより好ましい。また、縮合三環式炭化水素環としては、アントラセン環、フェナントレン環等が好ましい。
環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
上記式(1)において環Zで表される芳香族炭化水素環の具体例としては、1,4-フェニレン基、1,4-ナフタレンジイル基または2,6-ナフタレンジイル基が好ましく、1,4-フェニレン基がより好ましい。
なお、フルオレン環の9位に置換する2つの環Zは、互いに同一又は異なっていてもよく、同一の環である場合がより好ましい。なお、フルオレン骨格の9位に置換する環Zの置換基は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレンの場合、フルオレン環の9位に置換する環Zに対応する基は1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。
上記式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~12の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基を示し、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。
上記式(1)において、RおよびRで表される炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ナフチル基、アラルキル基などが例示できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基が好ましく、C1-3アルキル基がさらに好ましく、その中でメチル基またはエチル基がよりさらに好ましい。
また、シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-8シクロアルキル基、C5-6シクロアルキル基などが好ましく、C5-6シクロアルキル基がより好ましい。
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、アルキルフェニル基(モノまたはジメチルフェニル基、トリル基、2-メチルフェニル基、キシリル基など)などが好ましく、フェニル基がより好ましい。
また、アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが好ましく例示できる。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが好ましい。
上記式(1)において、置換基RおよびRの置換数jおよびkは、縮合炭化水素の縮合環数などに応じて適宜選択でき、特に限定されず、好ましくはそれぞれ独立に0以上、より好ましくは1以上の整数である。また、好ましくは6以下の整数、より好ましくは4以下の整数である。なお、置換数jおよびkは環Zにおいて、同一または異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。
上記式(1)において、LおよびLはそれぞれ独立に2価の連結基を示し、炭素数1~12のアルキレン基であると好ましく、エチレン基であるとより好ましい。通常、LおよびLは同一の環Zにおいて、同一のアルキレン基であってもよい。また、LおよびLは、異なる環Zにおいて、互いに同一又は異なってもいてもよく、通常、同一であってもよい。
オキシアルキレン基(OL)および(OL)の数(付加モル数)mおよびnは、それぞれ0~5の範囲から選択でき、下限は好ましくは0以上であり、上限は好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。特に好ましくは0または1であり、もっとも好ましくは1である。なお、mおよびnは、整数でも平均値であってもよく、異なる環Zにおいて、同一であっても、異なっていてもよい。
上記式(1)において、ArおよびArは、それぞれ独立に炭素原子数6~10の芳香族基を示し、フェニル基またはナフチル基が好ましい。基ArおよびArはたがいに異なっていてもよく同一であってもよいが、通常、同一である。また、ArおよびArのそれぞれの結合位置はフルオレン骨格の1位と8位、2位と7位、3位と6位、または4位と5位であると好ましく、2位と7位、3位と6位または4位と5位であるとより好ましく、2位と7位であるとさらに好ましい。
以下に前記式(1)で表されるジオール成分の代表例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
ジフェニルフルオレンタイプとしては、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジフェニルフルオレン等が好ましく挙げられる。
なかでも下記式(1-a)~(1-h)に示す、下記式(1-a):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、下記式(1-b):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、下記式(1-c):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、下記式(1-d):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジフェニルフルオレン、下記式(1-e):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジフェニルフルオレン、下記式(1-f):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、下記式(1-g):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジフェニルフルオレン、下記式(1-h):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジフェニルフルオレンがより好ましく、特に、下記式(1-b):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、下記式(1-f):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン、が好ましい。
ジナフチルフルオレンタイプとしては、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)-4,5-ジナフチルフルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジナフチルフルオレン等が好ましく挙げられる。
なかでも下記式(2-a)~(2-h)に示す、下記式(2-a):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、下記式(2-b):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、下記式(2-c):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、下記式(2-d):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジナフチルフルオレン、下記式(2-e):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジナフチルフルオレン、下記式(2-f):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、下記式(2-g):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジナフチルフルオレン、下記式(2-h):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジナフチルフルオレンがより好ましく、特に、下記式(2-b):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、下記式(2-f):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン、が好ましい。
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、パラジウム元素の含有量が下記式(3)を満足する。
0 ≦ Pd ≦ 10ppm (3)
好ましくは、下記式(3-1)を満足する。
0 ≦ Pd ≦ 5ppm (3-1)
より好ましくは、下記式(3-2)を満足する。
0 ≦ Pd ≦ 3ppm (3-2)
さらに好ましくは、下記式(3-3)を満足する。
0 ≦ Pd ≦ 1ppm (3-3)
上記範囲の上限を超えると、前記式(1)で表される原料アルコールを使った樹脂の色相やそれを使った光学部材に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
さらに、本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、上記式(1)で示される化合物中、下記式(4)で表される副生成物が3%以下であり、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。
Ar-Ar、Ar-ArまたはAr-Ar (4)
(ArおよびArは前記式(1)と同じである。)
また、下記式(4)で表される副生成物は、好ましくは下記式(4a)、(4b)または(4c)で示される副生成物である。
上記範囲の上限を超えると、前記式(1)で表される原料アルコールを使った樹脂の生産性(または反応性)や製造された樹脂の種々特性(耐熱性、成形性、寸法安定性など)に悪影響を及ぼす可能性があり、好ましくない。
[フルオレン骨格を有する化合物の特徴および用途]
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、好ましくはジフェニルフルオレン骨格もしくはジナフチルフルオレン骨格とアレーン環とを組み合わせているため、屈折率、耐熱性が高いだけでなくポリマーにした際に複屈折を軽減させることができる。これまで屈折率を向上させるために、フルオレン骨格の9位に環集合アレーン環が置換されたフルオレン化合物が用いられているが、これでは屈折率、耐熱性は高いものの複屈折が低下してしまう。これに対し、本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、ジフェニルフルオレン骨格を有しているためか、屈折率が高いにも関わらず、複屈折も小さくなる。さらに、アレーン環には、1つ以上のヒドロキシル基を有し、フルオレン化合物全体で複数のヒドロキシル基を有しているため、反応性が高い。そのため、本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、種々の樹脂の原料(モノマー)として利用できる。例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂など)や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸エステル)など)のポリオール成分として用いることができる。本発明のフルオレン骨格を有する化合物をポリオール成分として用いると、フルオレン骨格の9位にベンゼン環が置換され、かつフルオレン骨格にジアリール基を有しているためか、得られる樹脂は高い屈折率と低複屈折性とを高レベルで両立できるという利点を備える。
また、本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、汎用な溶媒中で効率よく誘導体を調製できる。
本発明のフルオレン骨格を有する化合物の融点は、100~300℃の広い範囲から選択でき、好ましくは120~280℃、より好ましくは130~260℃、さらに好ましくは140~240℃、特に好ましくは150~210℃である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、各種測定は以下のように行った。
(1)HPLC測定
実施例で得られた化合物を下記の装置、条件にて測定した。
使用機器:Waters社製
カラム:ACQUITY UPLC@BEH C18 2.1×150mm
溶出液(体積):ジメチルホルムアミド:超純水(0.1重量%トリフルオロ酢酸)=70/30
(2)NMR測定
実施例で得られた化合物、樹脂を下記の装置、溶媒にて測定した。
装置:日本電子社製 JNM-AL400(400MHz)
溶媒:CDCl
(3)ICP測定
実施例で得られた化合物を下記の装置にて測定した。
使用機器:Agilent Technologies
装置:Agilent5100 ICP-OES
(4)ガラス転移温度(Tg)測定
実施例で得られた樹脂を下記の装置、条件にて測定した。
装置:(株)島津製作所社製 DSC-60A
条件:昇温速度20℃/min
(5)ペレットb*値測定
実施例で得られた樹脂を下記の装置にて測定した。
装置:X-Rite社製 積分球分光光度計CE-7000A
(6)屈折率(nD)、アッベ数測定
実施例で得られた樹脂を下記の装置、手法にて測定した。
装置:ATAGO社製 DR-M2アッベ屈折計
手法:重合終了後に得られた樹脂ペレットを塩化メチレンに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャスト、乾燥し、作成したフイルムの25℃における屈折率(波長:589nm)およびアッベ数(波長:486nm、589nm、656nmにおける屈折率から下記式を用いて算出)を測定した。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
なお、本発明においては、
nD:波長589nmでの屈折率、
nC:波長656nmでの屈折率、
nF:波長486nmでの屈折率を意味する。
(7)PL触媒
エヌ・イーケムキャット社製のパラジウム化合物でありPd/SiOと略記され、パラジウムをシリカに担持させた粉末の固体触媒である。本触媒は、鈴木カップリング反応に特化しており、ブロモアリール類を基質とした場合に均一系のパラジウム触媒に比べてリガンドフリーで反応が進行する触媒である。さらに、シリカに担持されていることもあり、反応後の製品中にPd溶出が少ないのが特徴である。
[実施例1]
<工程1>
撹拌機、冷却器、さらには温度計を備え付けた500mLのフラスコに溶媒としてのトルエン150g、12タングスト(VI)リン酸n水和物H[PW1240]・nHO2.19gを仕込み、トルエン還流下共沸脱水した。内容物を冷却したのち2,7-ジブロモフルオレノン(以下、DBFNと略記することがある)33.8g(0.10モル)、2-フェノキシエタノール138.2g(1.0モル)を加え、トルエン還流下、反応により生成する水を系外へ排出しながら13時間撹拌した。反応の進行具合は適宜HPLCにて確認し、DBFNの残存量が0.1重量%以下であることを確認し反応を終了させた。得られた反応混合物にトルエン150gを加え、水300gで3回洗浄した。洗浄後、有機層を活性炭処理したのち減圧濃縮することによって溶媒のトルエンおよび大過剰の2-フェノキシエタノールを留去した。得られた混合物をメタノールにより再結晶させ析出した結晶をろ過により回収し該結晶を乾燥することにより目的物の9,9-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジブロモフルオレン(以下、BPDBと略記することがある)の薄黄色結晶36g(収率61%、純度98%)を得た。
<工程2>
撹拌機、冷却器、さらには温度計を備え付けた500mLのフラスコに工程1で得られたBPDB17.9g(0.03モル)、2-ナフタレンボロン酸11.4g(0.066モル)、さらにはエヌ・イーケムキャット社製PL触媒0.2g(Pd換算値:200ppm相当)、トルエン150g、2M炭酸カリウム水溶液35mLを仕込み、80℃で17時間撹拌することにより反応をおこなった。反応の進行具合はHPLCにて確認し、BPDBの残存量が0.1重量%以下であることを確認し反応を終了させた。反応終了時、2-ナフタレンボロン酸同士がカップリングした化合物(4a)が2%生成しており、目的物への選択率は98%であることをHPLC測定により確認した。次に得られた反応液を室温まで冷却したのち、クロロホルムを加え反応物を完全に溶解させパラジウム化合物由来の固体をろ別回収した。回収したろ液は3回水洗し、濃縮して酢酸エチル/ヘキサンで再結晶することにより、目的物である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン(以下、BPDN2と略記することがある)の白色結晶を18.9g(収率91%、純度98.7%)得た。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった(検出限界0.1%)。
<工程3>
工程2で合成したBPDN2を29.51質量部、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを21.93質量部、ジフェニルカーボネート21.64質量部、及び炭酸水素ナトリウム42.0×10-5質量部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、5分かけて20kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、50分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で所定のトルクに到達するまで重合反応を行った。反応終了後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂を、H NMRにより分析し、BPDN2成分が全モノマー成分に対して、50mol%導入されていることを確認した。得られたポリカーボネート樹脂の屈折率は1.664、アッベ数は18、Tgは161℃、ペレットb*値は8.0であった。
[実施例2]
工程2における2-ナフタレンボロン酸を1-ナフタレンボロン酸に変更した以外は実施例1と同様にして9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジナフチルフルオレン(以下、BPDN1と略記することがある)の白色固体を得た(収率91%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4b)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4b)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例3]
工程2における2-ナフタレンボロン酸をフェニルボロン酸に変更した以外は実施例1と同様にして9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン(以下、BPDPと略記することがある)の白色固体を得た(収率91%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4c)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4c)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例4]
工程2におけるフェニルボロン酸をフェニルボロン酸の無水物(トリフェニルボロキシン)に変更した以外は実施例1と同様にしてBPDPの白色固体を得た(収率91%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例5]
工程1における塩基を炭酸ナトリウムに変更した以外は実施例1と同様にしてBPDN2の白色固体を得た(収率90%、純度98.9%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例6]
工程1における酸触媒を事前に減圧乾燥し結晶水を取り除いた触媒を使用した以外は実施例1と同様にしてBPDN2の白色固体を得た(収率89%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例7]
工程1における酸触媒をケイタングステン酸のn水和物(H[SiW1240]・nHO)に変更した以外は実施例1と同様にしてBPDN2の白色固体を得た(収率89%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例8]
工程1における酸触媒を事前に減圧乾燥し結晶水を取り除いたケイタングステン酸(H[SiW1240])を使用した以外は実施例6と同様にしてBPDN2の白色固体を得た(収率89%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[実施例9]
工程2における溶媒をトルエンとエタノールの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にしてBPDN2の白色固体を得た(収率88%、純度99.0%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は2%であり、目的物への選択率は98%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは3.0ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた白色結晶には式(4a)で示される化合物は含まれていなかった。
[比較例1]
工程2におけるパラジウム触媒をテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.35g(Pd換算値:740ppm)に変更し、脱Pd処理として活性炭処理した以外は実施例1と同様にしてBPDN2の薄黄色固体を得た(収率88%、純度97.9%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は16%であり、目的物への選択率は91%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは30ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた薄黄色結晶には式(4a)で示される化合物が1%含まれていた。
工程3において、上記方法で合成したBPDN2を使用する以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂を、H NMRにより分析し、BPDN2成分が全モノマー成分に対して、50mol%導入されていることを確認した。得られたポリカーボネート樹脂の屈折率は1.664、アッベ数は18、Tgは161℃、ペレットb*値は8.0であった。
[比較例2]
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.01g(Pd換算値:40ppm)に変更した以外は比較例1と同様にしてBPDN2の薄黄色固体を得た(収率85%、純度98.5%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は5%であり、目的物への選択率は95%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは12ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた薄黄色結晶には式(4a)で示される化合物が0.5%含まれていた。
[比較例3]
工程2における脱Pd処理をしない以外は比較例1と同様にしてBPDN2の薄黄色固体を得た(収率84%、純度97.9%)。カップリング反応終了直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は16%であり、目的物への選択率は91%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは600ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた薄黄色固体には式(4a)で示される化合物が1%含まれていた。
[比較例4]
工程2における脱Pd処置をしない以外は比較例2と同様にしてBPDN2の薄黄色固体を得た(収率84%、純度98.5%)。カップリング反応直後のHPLCでは化合物(4a)の生成率は5%であり、目的物への選択率は95%であることを確認した。ICPにより残存金属量を測定したところ、Pdは25ppmであった。さらに、最終生成物のHPLCを測定したところ、得られた薄黄色固体には式(4a)で示される化合物が0.5%含まれていた。
[比較例5]
工程1において、酸触媒を硫酸および3-メルカプトプロピオン酸に変更した以外は実施例1と同様にしてフルオレン化合物の合成をおこなったが、反応が進行せず目的のフルオレン化合物を得ることはできなかった。
本発明の製造方法によって製造されたフルオレン骨格を有する化合物によれば、高い屈折率、耐熱性、低い複屈折などの優れた特性を有した樹脂の原料(モノマー)を効率よく製造することができるため、樹脂の原料(モノマー)、誘導体の反応成分などに好適に用いることができる。
そのため、本発明のフルオレン骨格を有する化合物もしくはその誘導体、または新規フルオレン骨格を有する化合物を原料(モノマー)とする樹脂は、例えば、フイルム、レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特にレンズに極めて有用である。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物を原料として用いた光学レンズを構成する熱可塑性樹脂であって、
    該フルオレン骨格を有する化合物中のパラジウム元素の含有量が下記式(3)を満たし、かつ該フルオレン骨格を有する化合物中の下記式(4)で表される副生成物が3%以下である、熱可塑性樹脂
    (式中、環Zは(同一または異なった)芳香族基、RおよびRはそれぞれ水素原子、ArおよびArは炭素数が6~10の置換基を有してもよい芳香族基、LおよびLはエチレン基、jおよびkはそれぞれ独立に0以上の整数、mおよびnはそれぞれ独立に1の整数を示す。)
    0 ≦ Pd ≦ 10ppm (3)
    Ar-Ar、Ar-ArまたはAr-Ar (4)
    (ArおよびArは前記式(1)と同じである。)
  2. Zがベンゼン環またはナフタレン環である請求項1に記載の熱可塑性樹脂
  3. ArおよびArがフェニル基またはナフチル基である請求項1に記載の熱可塑性樹脂
  4. 前記式(4)が下記式(4a)、(4b)または(4c)で示される副生成物である請求項1に記載の熱可塑性樹脂
  5. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂から構成される光学レンズ。
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