JP7461661B2 - 複数の蛍光色素を結合させたペプチドを用いるホモジニアス免疫測定法 - Google Patents

複数の蛍光色素を結合させたペプチドを用いるホモジニアス免疫測定法 Download PDF

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Description

本発明は、複数の蛍光色素を結合させたペプチドを用いた抗原検出用キット、及び抗原検出方法に関する。
現在、臨床診断において免疫測定法はますます重要な測定技術となってきている。個々の免疫測定法を採択するにあたっては、感度・特異性の向上のみならず、測定の迅速・簡便化も大きな要素となってきている。現在主流な免疫測定法においては、タンパク質バイオマーカーの検出にあたってはサンドイッチ法、低分子検出においては競合法が測定原理として用いられる。しかしそのどちらも、数回の反応と洗浄の後に主にラベルに用いた酵素活性を測定する酵素免疫測定法であることが多く、測定には手間と数時間の時間がかかる問題がある。これに比べ、サンプルと測定試薬を混ぜて反応させ、検出するホモジニアス免疫測定法の開発が行われてきている。
本発明者は、近年、このようなホモジニアス免疫測定法に用いうる迅速高感度な測定素子として抗原が結合すると光る抗体Quenchbody (Q-body)の構築に成功し、特許出願及び論文等の発表を行ってきた(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。Q-bodyは、抗体の抗原結合部位近傍の特定の1箇所ないし2箇所に、短いリンカーを介してTAMRAなどの蛍光色素を標識した蛍光修飾抗体であり、色素が抗体内のアミノ酸(主にトリプトファン)と相互作用し、クエンチ(消光)状態になるが、抗原を添加することでその消光が解除され発光する。
国際公開2011/061944 国際公開2013/065314
R. Abe et al., J. Am. Chem. Soc., 2011, 133(43), 17386-17394)
Q-bodyを幅広い用途に利用していくためには、より簡易に抗原を検出できることが望ましい。本発明は、このような背景の下になされたものであり、Q-bodyを利用して、簡易に抗原を検出できる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、Eペプチド(Litowski et al., J. Biol. Chem. 277, 37272-9 (2002)、矢野義明., 生物物理., 54, 323-324, 2014)を導入したFabと、TAMRAとFITCで標識したKペプチド(Litowski et al., J. Biol. Chem. 277, 37272-9 (2002)、矢野義明., 生物物理., 54, 323-324, 2014)を混合すると、色の変化によって抗原を検出できるFRET Coiled Q-body (FRET CQ-body)を作製できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕FRETペアを形成し得る二つの蛍光色素又はBRETペアを形成し得る蛍光色素と発光物質を結合させた第一のペプチド、及び第二のペプチドを付加した抗体断片を含む抗原検出用キットであって、1)第一のペプチド及び第二のペプチドは、いずれか一方が正電荷を帯び、他方が負電荷を帯びていること、並びに2)第一のペプチドと第二のペプチドはコイルドコイルを形成し得ることを特徴とする抗原検出用キット。
〔2〕第一のペプチドがアミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(X1及びX6は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X7は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X2及びX5は疎水性アミノ酸を表し、X3及びX4は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含み、第二のペプチドがアミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14(X8及びX13は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X14は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X9及びX12は疎水性アミノ酸を表し、X10及びX11は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含むことを特徴とする〔1〕に記載の抗原検出用キット。
〔3〕第一のペプチドがアミノ酸配列:Lys Ile Ala Ala Leu Lys Gluの反復を含み、第二のペプチドがアミノ酸配列:Glu Ile Ala Ala Leu Glu Lysの反復を含むことを特徴とする〔1〕に記載の抗原検出用キット。
〔4〕第一のペプチドが配列番号1に記載のアミノ酸配列からなり、第二のペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする〔1〕に記載の抗原検出用キット。
〔5〕FRETペアを形成し得る二つの蛍光色素が、ローダミン系蛍光色素とフルオレセイン系蛍光色素であることを特徴とする〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の抗原検出用キット。
〔6〕抗体断片が、Fab又はラクダ属重鎖抗体由来VHHであることを特徴とする〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の抗原検出用キット。
〔7〕試料中の抗原を検出する方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする抗原の検出方法、
(1)試料を、〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載のキットと接触させる工程、
(2)第一のペプチドと結合させた蛍光色素の蛍光を検出する工程。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2019-105006の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本発明は、新規な抗原検出用キット及び抗原の検出方法を提供する。これらのキット及び方法は、例えば、試料分析や薬物検査の分野、携帯型試料分析キットの分野、及び臨床診断などの分野において利用できる。
抗原添加前後におけるFRET CQ-bodyの蛍光スペクトル(anti-BGP E4-Fab/K2-FITC-K2C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。抗原添加により、FITCの蛍光強度が0.47倍になり、TMRの蛍光強度が1.74倍になった。 規格化後の蛍光スペクトル(anti-BGP E4-Fab/K2-FITC-K2C-TMR)。 抗原添加における正味の蛍光応答スペクトル(anti-BGP E4-Fab/K2-FITC-K2C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。抗原添加により、TMRの蛍光強度が4.34倍になった。 抗原添加前後におけるFRET CQ-bodyの蛍光スペクトル(anti-MTX E4-VHH/K2-FITC-K2C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 規格化後の蛍光スペクトル(anti-MTX E4-VHH/K2-FITC-K2C-TMR)。 抗原添加における正味の蛍光応答スペクトル(anti-MTX E4-VHH/K2-FITC-K2C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 抗原添加前後におけるFRET CQ-bodyの蛍光スペクトル(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 規格化後の蛍光スペクトル(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 抗原添加における正味の蛍光応答スペクトル(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 抗原添加前後におけるFRET CQ-bodyの蛍光スペクトル(anti-MTX E4-VHH/FITC-K4C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 規格化後の蛍光スペクトル(anti-MTX E4-VHH/FITC-K4C-TMR)。 抗原添加における正味の蛍光応答スペクトル(anti-MTX E4-VHH/FITC-K4C-TMR)。破線は、抗原添加前のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルで、実線は、抗原添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルである。 pYD1(E4-VHH/MTX)の部分構造(図13上)及びpYD1(E4)の部分構造(図13下)を示す図。 FITC-K4-TAMRAでラベルしたE4提示酵母のFACSプロファイル。 K2-FITC-K2-TAMRAでラベルしたE4提示酵母のFACSプロファイル。 FITC-K4-TAMRAでラベルしたE4-VHH/MTX提示酵母のFACSプロファイル(抗原MTXなし)。 FITC-K4-TAMRAでラベルしたE4-VHH/MTX提示酵母のFACSプロファイル(抗原MTXあり)。 K2-FITC-K2-TAMRAでラベルしたE4-VHH/MTX提示酵母のFACSプロファイル(抗原MTXなし)。 K2-FITC-K2-TAMRAでラベルしたE4-VHH/MTX提示酵母のFACSプロファイル(抗原MTXあり)。 種々の抗原濃度におけるFRET CQ-bodyの蛍光スペクトル(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 抗原濃度と規格化された蛍光ピーク比(TAMRAの蛍光ピーク/Fluoresceinの蛍光ピーク)の関係を示すグラフ(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 ヒト血清溶液中における抗原濃度と規格化された蛍光ピーク比(TAMRAの蛍光ピーク/Fluoresceinの蛍光ピーク)との関係を示すグラフ(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 ヒト血清溶液中における抗原濃度と規格化された蛍光強度(TAMRA)との関係を示すグラフ(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 プローブ濃度が異なる条件における抗原濃度と蛍光強度(TAMRA)との関係を示すグラフ(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。 プローブ濃度が異なる条件における抗原濃度と蛍光ピーク比(TAMRAの蛍光ピーク/Fluoresceinの蛍光ピーク)の関係を示すグラフ(anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMR)。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)抗原検出用キット
本発明の抗原検出用キットは、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)ペアを形成し得る二つの蛍光色素又はBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)ペアを形成し得る蛍光色素と発光物質を結合させた第一のペプチド、及び第二のペプチドを付加した抗体断片を含む抗原検出用キットであって、1)第一のペプチド及び第二のペプチドは、いずれか一方が正電荷を帯び、他方が負電荷を帯びていること、並びに2)第一のペプチドと第二のペプチドはコイルドコイルを形成し得ることを特徴とするものである。
本発明における「検出」とは、定性的な検出及び定量的な検出の両者を意味する。
第一のペプチド及び第二のペプチドは、いずれか一方が正電荷を帯び、他方が負電荷を帯びていればよいが、第一のペプチドが正電荷を帯び、第二のペプチドが負電荷を帯びることが好ましい。
第一のペプチド及び第二のペプチドは、コイルドコイルを形成し得るものであればよく、例えば、前述したKペプチドとEペプチド(Litowski et al., J. Biol. Chem. 277, 37272-9 (2002)、矢野義明., 生物物理., 54, 323-324, 2014)のほか、c-Junとc-Fos (Kd: 54 nM, Kohler,J.J. and Schepartz,A. Biochemistry, 40, 130-142, 2001)、LZAとLZB (Kd: 30 nM, O’Shea,E.K., Lumb,K.J. and Kim,P.S. Curr. Biol., 3, 658-667, 1993) などを使用することができる。
第一のペプチドの具体例としては、例えば、アミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(X1及びX6は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X7は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X2及びX5は疎水性アミノ酸を表し、X3及びX4は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含むペプチドを挙げることができる。ここで、正電荷を帯びたアミノ酸とは、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、好ましくは、リジンである。負電荷を帯びたアミノ酸とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、好ましくは、グルタミン酸である。疎水性アミノ酸とは、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンであり、好ましくは、ロイシン、イソロイシンである。任意のアミノ酸とは、例えば、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンである。アミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7の具体例としては、例えば、Lys Ile Ala Ala Leu Lys Glu(配列番号3)を挙げることができる。第一のペプチド中のアミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7の反復回数は特に限定されず、反復回数を2~6とすることができ、3~5とすることもできる。なお、アミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7は、第一のペプチド中で、必ずしもX1から始まる必要はなく、X2~X7から始まってもよく、また、必ずしもX7で終わる必要はなく、X1~X6で終わってもよい。
好ましい第一のペプチドの具体例としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。
第二のペプチドの具体例としては、例えば、アミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14(X8及びX13は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X14は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X9及びX12は疎水性アミノ酸を表し、X10及びX11は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含むペプチドを挙げることができる。ここで、負電荷を帯びたアミノ酸とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、好ましくは、グルタミン酸である。正電荷を帯びたアミノ酸とは、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、好ましくは、リジンである。疎水性アミノ酸とは、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンであり、好ましくは、ロイシン、イソロイシンである。任意のアミノ酸とは、例えば、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンである。アミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14の具体例としては、例えば、Glu Ile Ala Ala Leu Glu Lys(配列番号4)を挙げることができる。第二のペプチド中のアミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14の反復回数は特に限定されず、反復回数を2~6とすることができ、3~5とすることもできる。なお、アミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14は、第二のペプチド中で、必ずしもX8から始まる必要はなく、X9~X14から始まってもよく、また、必ずしもX14で終わる必要はなく、X8~X13で終わってもよい。
好ましい第二のペプチドの具体例としては、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。
なお、本明細書において、「正電荷を帯びる」及び「負電荷を帯びる」とは、生理的pH(例えば、pH5~7)において、「正電荷を帯びる」及び「負電荷を帯びる」という意味である。
第一のペプチドと結合させる二つの蛍光色素は、FRETペアを形成する。即ち、一方の蛍光色素がドナーとなり、他方の蛍光色素がアクセプターとなる。
アクセプターとなる蛍光色素は、抗体断片との相互作用により消光され、抗原の添加によって脱消光されるものであれば特に限定されない。このような蛍光色素とてしては、従来のQ-bodyにおいて使用されていた蛍光色素、例えば、国際公開番号WO2013/065314の明細書に記載されている蛍光色素を挙げることができる。具体的には、ローダミン、クマリン、Cy、EvoBlue、オキサジン、Carbopyronin、naphthalene、biphenyl、anthracene、phenenthrene、pyrene、carbazoleなどを基本骨格として有する蛍光色素やその蛍光色素の誘導体を例示することができる。蛍光色素の具体例としては、CR110:carboxyrhodamine 110:Rhodamine Green(商標名)、TAMRA:carbocytetremethlrhodamine:TMR、Carboxyrhodamine 6G:CR6G、ATTO655(商標名)、BODIPY FL(商標名):4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 493/503(商標名):4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-8-propionicacid、BODIPY R6G(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1,3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 558/568(商標名):4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 564/570(商標名):4,4-difluoro-5-styryl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 576/589(商標名):4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、BODIPY 581/591(商標名):4,4-difluoro-5-(4-phenyl-1, 3-butadienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indancene-3-propionic acid、Cy3(商標名)、Cy3B(商標名)、Cy3.5(商標名)、Cy5(商標名)、Cy5.5(商標名)、EvoBlue10(商標名)、EvoBlue30(商標名)、MR121、ATTO 390(商標名)、ATTO 425(商標名)、ATTO 465(商標名)、ATTO488(商標名)、ATTO 495(商標名)、ATTO 520(商標名)、ATTO 532(商標名)、ATTO Rho6G(商標名)、ATTO 550(商標名)、ATTO 565(商標名)、ATTO Rho3B(商標名)、ATTO Rho11(商標名)、ATTO Rho12(商標名)、ATTO Thio12(商標名)、ATTO 610(商標名)、ATTO 611X(商標名)、ATTO 620(商標名)、ATTO Rho14(商標名)、ATTO 633(商標名)、ATTO 647(商標名)、ATTO 647N(商標名)、ATTO 655(商標名)、ATTO Oxa12(商標名)、ATTO 700(商標名)、ATTO 725(商標名)、ATTO 740(商標名)、Alexa Fluor 350(商標名)、Alexa Fluor 405(商標名)、Alexa Fluor 430(商標名)、Alexa Fluor 488(商標名)、Alexa Fluor 532(商標名)、Alexa Fluor 546(商標名)、Alexa Fluor 555(商標名)、Alexa Fluor 568(商標名)、Alexa Fluor 594(商標名)、Alexa Fluor 633(商標名)、Alexa Fluor 647(商標名)、Alexa Fluor 680(商標名)、Alexa Fluor 700(商標名)、Alexa Fluor 750(商標名)、Alexa Fluor 790(商標名)、Rhodamine Red-X(商標名)、Texas Red-X(商標名)、5(6)-TAMRA-X(商標名)、5TAMRA(商標名)、SFX(商標名)を挙げることができる。これらの中でも、ローダミン系蛍光色素であるCR110やTAMRA、及びオキサジン系蛍光色素であるATTO655を特に好適な蛍光色素として例示することができる。
ドナーとなる蛍光色素はアクセプターとなる蛍光色素とFRETを生じさせ得るものであればよく、アクセプターとなる蛍光色素の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アクセプターとなる蛍光色素がTAMRAなどのローダミン系蛍光色素である場合、FITCなどのフルオレセイン系蛍光色素をドナーとなる蛍光色素とすることができる。
アクセプターとなる蛍光色素とドナーとなる蛍光色素の組み合わせとしては、例えば、TAMRAとFITCのほか、TAMRAとAF488 (Rhodamine Green, Oregon Green, Tokyo Green)、R6GとDAPI、ATTO655とTAMRA、Cy5とTAMRAなどを挙げることができる。
アクセプターとなる蛍光色素は、抗体断片との相互作用により消光され、抗原の添加によって脱消光される限り、第一のペプチド上のどの位置に結合させてもよい。例えば、第一のペプチドのアミノ酸残基の側鎖やN末端やC末端にアクセプターとなる蛍光色素を結合させることができる。ドナーとなる蛍光色素は、アクセプターとなる蛍光色素とFRETを生じさせ得る位置であれば、第一のペプチド上のどの位置に結合させてもよい。例えば、第一のペプチドのアミノ酸残基の側鎖やN末端やC末端にドナーとなる蛍光色素を結合させることができる。後述する実施例では、第一のペプチド(配列番号1)の29番目のCysにアクセプターとなる蛍光色素(TAMRA)を結合させ、N末端又は13番目のLysにドナーとなる蛍光色素を結合させているが、これに限定されるわけではない。
第一のペプチドに蛍光色素を結合させる方法は特に限定されず、使用する蛍光色素の種類に応じて適宜選択することができる。市販の蛍光色素には、ペプチドの末端やアミノ酸残基の側鎖と特異的に結合する構造(例えば、マレイミド、イソチオシアネート)を有しているものがあるので、そのような構造を利用して、第一のペプチドに蛍光色素を結合させることができる。
本発明においては、ドナーとなる蛍光色素の代わりに発光物質を使用し、FRETペアを形成し得る二つの蛍光色素の代わりにBRETペアを形成し得る蛍光色素と発光物質を第一のペプチドに結合させてもよい。発光物質としては、ルシフェラーゼやイクオリンなどを使用することができる。ルシフェラーゼとしては、ホタル由来のルシフェラーゼ、発光エビ(例えば、Oplophorus gracilirostris)由来のルシフェラーゼ、ウミシイタケ由来のルシフェラーゼ、ヒカリコメツキムシ由来のルシフェラーゼなどを使用することができる。
第一のペプチドには、ペプチドタグやリンカーなどが付加されていてもよく、リン酸化、メチル化などの修飾を受けていてもよい。ここで、ペプチドタグとしては、ProXタグ、FLAGタグ、Hisタグ、HAタグ、Niタグ、Cysタグなどを例示でき、リンカーとしては、GSやDDAKKやEAAAKの繰り返し配列である(GS)2-6、(DDAKK)2-6、(EAAAK)2-6などを例示できる。
抗体断片は、アクセプターとなる蛍光色素を消光することができ、抗原の添加によってその消光を解除できるものであれば特に限定されない。
抗体断片は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方を有するものが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。抗体断片の具体例としては、Fab、F(ab')2、scFv(single-chain variable fragment)などのほか、ラクダ属重鎖抗体由来VHHなどを挙げることができる。
第二のペプチドを付加した抗体断片は、従来のQ-bodyと同様に、遺伝子組み換え技術により調製することができる。具体的には、抗体断片をコードする塩基配列と第二のペプチドをコードする塩基配列を含むDNAを、発現ベクターに導入して、組換えベクターを作製し、細菌、酵母、昆虫、動植物細胞などを宿主として用いた発現系や、無細胞翻訳系により、第二のペプチドを付加した抗体断片を発現させることができる。従来のQ-bodyは、遺伝子組み換え技術によりCysタグを結合させた抗体断片を調製し、これにマレイミド化蛍光色素を付加することで作製していた。しかし、Cysタグの利用には抗体断片のミスフォールディングを招く恐れや、蛍光色素付加前の還元反応において抗体断片内のジスルフィド結合が切断されてしまうといった懸念があった。このようなCysタグを利用せずに、抗体断片に蛍光色素を付加できる点は、本発明の大きな特徴の一つである。
抗原としては、使用する抗体断片により特異的に認識される抗原であれば特に限定されず、例えば、タンパク質、ペプチド、糖質、脂質、糖脂質、低分子化合物の他、リン酸化、メチル化などのタンパク質修飾などやこれらの修飾を受けたタンパク質などを挙げることができる。本発明の抗原検出用キットは、一般的な競合原理に基づくELISAなどの免疫測定法に比べて検出感度に優れることから、低分子化合物の検出において特に有用である。
本発明の抗原検出用キットは、FRETペアを形成し得る二つの蛍光色素又はBRETペアを形成し得る蛍光色素と発光物質を結合させた第一のペプチド及び第二のペプチドを付加した抗体断片のほかに、他の構成要素を含んでいてもよい。このような他の構成要素としては、標準物質として使用できる抗原や、通常この種の免疫測定キットに用いられる試薬など、器具、取扱説明書などを挙げることができる。
本発明の抗原検出用キットに含まれるFRETペアを形成し得る二つの蛍光色素又はBRETペアを形成し得る蛍光色素と発光物質を結合させた第一のペプチド及び第二のペプチドを付加した抗体断片を、他の物質や細胞などと結合させてもよい。例えば、分子ディスプレイ法では、タンパク質などの分子を、ウイルスや微生物の表層のタンパク質と結合させ、ウイルスや微生物の表層に提示させるが、第二のペプチドを付加した抗体断片をウイルスや微生物の表層に提示させてもよい。
本発明の抗原検出用キットには、以下のような利点がある。
1)蛍光強度を測定しなくても、色の変化により簡易に抗原を検出できる。
2)2色の蛍光ピーク比で抗原を検出できるため、使用するQ-body濃度の誤差による測定誤差を減らすことができる。
3)抗原によるアクセプター色素のクエンチ解除に加えて、アクセプター色素が抗原添加により抗体外に移動し、ドナー色素に近づくことによる抗原依存的なFRET効率の向上により、蛍光応答が向上する。
4)フローサイトメトリーにおいて最もよく使われるが、TAMRAを効率よく励起できない488 nmレーザーを使用できる。
5)血清中でも抗原を検出可能であり、臨床診断分野において有用である。
(B)抗原の検出方法
本発明の抗原の検出方法は、試料中の抗原を検出する方法であって、(1)試料を、上記の抗原検出用キットと接触させる工程、及び(2)第一のペプチドと結合させた蛍光色素の蛍光を検出する工程を含むことを特徴とするものである。
試料は、検出対象とする抗原が含まれる可能性があるものであればどのようなものでもよく、液体の試料でも、液体以外の試料であってもよい。
液体の試料は、そのまま検出対象としてもよく、また、抗原を損なうことや検出を阻害することもない限り、緩衝液や生理食塩水などで希釈、あるいは濃縮、又はpHや塩濃度などを適宜調整した後に検出対象としてもよい。このような液体の試料としては、血清、血漿、唾液、髄液、尿などの体液、培養上清、細胞抽出液、菌体抽出液、工業廃水などを挙げることができる。
固体など液体以外の試料は、緩衝液や生理食塩水などの液体に溶解、懸濁、又は液浸し、上記の抗原検出用キットと接触できる状態とした後に試料とすることが好ましい。また、液体に溶解、懸濁、又は液浸する前に、分割、細断、粉砕、すりつぶす、切片化するなどの処理を行ってもよく、特定成分のみを除去又は抽出するといった処理を行ってもよい。
本発明においては、さらに、生体内の血液や髄液などの体液、組織などをも検出用試料とすることができる。即ち、実験動物などの非ヒト動物に、本発明の抗原検出用キットを投与することにより、抗体断片を生体内の抗原と接触させることができる。ここで使用する非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であればよく、例えば、脊椎動物、中でも哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、両生類などの非ヒト動物を挙げることができ、これらの中でも哺乳類が好ましく、マウス、ラット、ハムスター、サル、ブタなどがより好ましい。また、上記投与方法も特に制限されず、筋肉内注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮下注射、埋込み、塗布などの非経口的な局所投与方法や、経口的な投与方法の中から適宜選択することができる。また、本発明の抗原検出用キットと同時、又はその前後に他の薬剤などを投与してもよい。非ヒト動物に、本発明の抗原検出用キットを投与することにより、生体内における抗原の位置やその移動、抗原量やその変化を観察することも可能である。このような観察においては、経時的に体液や組織などを採取して、その蛍光強度測定や蛍光の局在観察を行うことも、あるいは生体中の蛍光強度やその変化、蛍光の局在やその移動をリアルタイムに検出し観察することもできる。
試料と、上記の抗原検出用キットとの接触は、どのような条件で行ってもよいが、通常は液相中で行う。接触の際の反応条件は、従来のQ-bodyを用いた反応と同様の条件とすることができ、例えば、国際公開番号WO2013/065314の明細書に記載されている反応条件とすることができる。具体的には、温度条件は、例えば、1~30℃、好ましくは18~25℃、反応時間は、例えば、瞬時~180分、好ましくは1~90分とすることができる。また、非ヒト動物体内において反応を行う場合は、投与後、例えば、5~180分、好ましくは60~120分インキュベートし、必要に応じて、組織、血液、細胞などを摘出、又は観察対象部位を露出させるなどの処理を適宜行うことができる。
蛍光色素を結合させた第一のペプチドと第二のペプチドを付加した抗体断片を混合すると、第一のペプチドと第二のペプチドがコイルドコイルを形成して結合し、二つの蛍光色素(ドナーとアクセプター)で標識された抗体断片(FRET CQ-body)が生成する。試料中に検出対象とする抗原が存在しない場合、アクセプターとなる蛍光色素は、抗体断片の内部に取り込まれた状態にある。この状態では、アクセプターとなる蛍光色素は、抗体断片中のアミノ酸によって消光される。また、この状態では、アクセプターとなる蛍光色素は、ドナーとなる蛍光色素と離れているので、FRET効率は低い。このため、ドナーとなる蛍光色素の励起光を照射すると、ドナーとなる蛍光色素が強い蛍光を発する一方、アクセプターとなる蛍光色素はほとんど蛍光を発しない。これに対し、試料中に検出対象とする抗原が存在する場合、アクセプターとなる蛍光色素は抗体断片の外に移動し、消光が解除される。また、この移動によって、アクセプターとなる蛍光色素はドナーとなる蛍光色素に近づくことになり、FRETが起きるようになる。このため、ドナーとなる蛍光色素の励起光を照射すると、アクセプターとなる蛍光色素が強い蛍光を発する一方、ドナーとなる蛍光色素はほとんど蛍光を発しない。このように本発明の方法では、抗原が存在するかどうかを蛍光の色(アクセプターとなる蛍光色素が強い蛍光を発するか、ドナーとなる蛍光色素が強い蛍光を発するか)により判定することが可能であり、簡便に抗原の検出を行うことができる。また、上記のように、本発明の方法は、洗浄工程を経ることなく、そのまま抗原の検出を行うことができる。なお、上記ではドナーとして蛍光色素を使用した場合を説明しているが、蛍光色素の代わりに発光物質を使用した場合も、上記と同様、光の色で抗原の有無を判定できる。
本発明の方法では、通常、ドナーとなる蛍光色素の励起光を照射し、それによって生じる蛍光の色(蛍光の波長)に基づいて、抗原の検出を行う。照射する励起光は、ドナーとなる蛍光色素の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、ドナーとなる蛍光色素としてFITCを用いた場合は、励起光の波長を485nm付近とすることができる。ドナーが蛍光色素ではなく、発光物質の場合は、励起光を照射する必要はなく、その代わりに発光に必要な物質、例えば、発光基質やATPなどを添加する。
上記のように、本発明の方法では、蛍光の色によって、抗原の有無を判定できるので、測定機器を用いた蛍光強度の測定は必ずしも必要ないが、ドナーとなる蛍光色素の蛍光強度及び/又はアクセプターとなる蛍光色素の蛍光強度を測定してもよい。この場合、試料中に抗原が存在するときは、コントロール(抗原を含まない試料)と比較し、ドナーとなる蛍光色素の蛍光強度が低下し、アクセプターとなる蛍光色素の蛍光強度が上昇するので、これらに基づいて、抗原の有無を判定できる。また、ドナーとなる蛍光色素の蛍光強度とアクセプターとなる蛍光色素の蛍光強度の比を求めることにより、より正確に抗原の有無を判定できる。測定する蛍光の波長は、使用する蛍光色素の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、ドナーとなる蛍光色素としてFITCを用いた場合は、520nm付近の蛍光を測定し、アクセプターとなる蛍光色素としてTAMRAを用いた場合は、580nm付近の蛍光を測定する。
またこれらと逆に、ドナーとなる色素をTAMRAなどとして第一のペプチドの抗体断片中のアミノ酸により消光されやすい位置に導入し、アクセプターとなる色素をより長波長のCy5などの色素として第一のペプチドの消光されにくい位置に導入する事も可能である。これにより、抗原添加によるドナーの消光解除とFRET効率増大によるアクセプターの相乗的な蛍光強度増大から、抗原の有無を判定できる。
蛍光強度測定に用いる光源や測定装置は適宜選択することができ、光源は励起光波長を照射できるものであればよく、光源としては水銀ランプ、キセノンランプ、LED、レーザー光などを挙げることができ、適当なフィルターを用いて特定の波長の励起光を得ることができる。蛍光測定装置は、蛍光観察に通常用いられるデバイスを用いることができ、励起光の光源及びその照射システム、蛍光画像取得システムを備えた顕微鏡、フローサイトメトリーなどを適宜利用することができ、MF20/FluoroPoint-Light(オリンパス社製)やFMBIO-III(日立ソフトウェアエンジニアリング社製)、SH-800(ソニー社製)などを例示することができる。蛍光強度と抗原の濃度とは正の相関関係にあるので、濃度既知の抗原を含む試料を用いたときの蛍光強度を測定して抗原濃度と蛍光強度との関係を示す標準曲線を作成し、この標準曲線から、濃度未知の抗原濃度を算出することができる。このような抗原濃度の算出は、あらかじめ作成されたに標準曲線に基づいて設定された変換式などにより自動的に抗原量を算出することもできる。なお、蛍光強度の測定は、蛍光スペクトルの測定であっても、特定の波長の蛍光強度の測定であってもよい。
また、本発明の抗原検出用キットを、非ヒト動物に投与した場合は、その体液や組織などを採取するほか、非ヒト動物の検出対象領域に励起光を照射して、蛍光色素の蛍光を検出することもでき、この場合、蛍光顕微鏡や蛍光イメージアナライザー、光源を備えた内視鏡などを使用する例を挙げることができる。また、検出の際には、内視鏡、X線、CT、MRI、超音波、顕微鏡などを用いて、非ヒト動物の個体、組織、又は細胞の構造を示す画像も合わせて取得することが好ましい。アクセプターとなる蛍光色素の蛍光強度と抗原量とは正の相関関係にあるので、検出された蛍光の2次元又は3次元的画像に基づいて、抗原の局在(位置)及び/又は量を知ることができ、この際前記構造を示す画像と比較することもできる。これらの蛍光の検出に際しては、本発明の抗原検出用キットを除いた試料、試料の希釈に用いた緩衝液などをネガティブコントロールとして調製し、合わせて蛍光の検出を行うことが好ましい。また、前記ネガティブコントロールにおける測定値で、対象試料における測定値を除した、蛍光強度比を用いて、抗原量の算出などを行うこともできる。あるいは、アクセプターとなる蛍光色素の蛍光強度と抗原量とは正の相関関係にあるので、適宜設定した閾値を越える蛍光強度が得られた場合に、測定試料中に抗原が存在すると判定することもできる。
以上のように、本発明によると、ELISA法、免疫拡散法、ラテックス凝集法、イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴法などの免疫測定法で測定することのできるすべての抗原類を検出することができる。例えば、低分子物質に対する免疫測定法は、一般的には競合ELISA法が用いられているが、本発明による低分子物質の検出は、手法の簡便さ、測定感度やSN比などで競合ELISA法より優れており、最もその能力を発することができる。このような本発明の検出に適した低分子化合物としては、例えば、アンフェタミン、メタンフェタミン、モルヒネ、ヘロイン、コデインなどの覚せい剤や麻薬類、アフラトキシン、ステリグマトシスチン、ネオソラニオール、ニバレノール、フモニシン、オクラトキシン、エンドファイト産生毒素などのカビ毒、テストステロンやエストラジオールなどの性ホルモン、クレンブテロールやラクトパミンなどの飼料に不正に用いられる添加物、PCB、ゴシポール、ヒスタミン、ベンツピレン、メラミン、アクリルアミド、ダイオキシンなどの有害物質、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロルフェナピル、マラチオン、カルバリル、クロチアニジン、トリフルミゾール、クロロタロニル、スピノサド、ランネート、メタミドホス、クロルピリホスなどの残留農薬、ビスフェノールAなどの環境モルモンなどを挙げることができる。
また本発明によると、測定結果が瞬時に得られる上に、検出方法が単純なため機器を小型化かつ低価格化することが可能となる。これらの利点は、低分子物質に限定されず、現場に出向き測定するオンサイト分析に威力を発揮することができる。しかも、測定が容易なため、専門家でなくても測定することができる。例えば、インフルエンザ、伝染病や感染症などの原因ウイルスや細菌、薬物血中濃度やPOCTを含む臨床診断分野や職場、学校、保育園や家庭での簡易健康測定分野、炭疸菌、ボツリヌス毒素、サリンやVXガスなどテロ対策などの安心安全分野、現場サイドで測定が必要となる環境汚染物質やハウスダストなどの環境分野、免疫測定を必要とする研究開発分野などで、その能力を遺憾なく発揮することができる。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 anti-BGP E4-Fab/K2-FITC-K2C-TMRを利用したQ-body
(1)anti-BGP E4-Fabの作製
オステオカルシン(BGP)を認識するFab断片(抗BGP-Fab) (Abe, R et al., Scientific Reports 4, 4640, 2014)の重鎖側のN末端に、E4ペプチド((EIAALEK)4)を付加したペプチド(anti-BGP E4-Fab)をコードするプラスミドベクターを構築し、大腸菌SHuffle T7 express lys Y を用いて、このタンパク質を発現させ、精製した。
(2)K2-FITC-K2C-TMR,FITC-K4C-TMRの作製
K4ペプチド((KIAALKE)4)のN末端から13番目のLysにFITCを導入し、そのC末端にCysを付加したペプチド(K2-FITC-K2C)、およびK4ペプチドのN末端をFITC修飾しそのC末端にCysを付加したペプチド(FITC-K4C)を受託合成により合成した(Lifetein, NJ, USA)。これらのペプチドに、蛍光色素5-TMR-C6-maleimideを反応させ、C末端に付加したCysにTMRを導入した。得られた修飾ペプチドを逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製し、それぞれK2-FITC-K2C-TMR,FITC-K4C-TMRを得た。
(3)FRET CQ-bodyの作製
(3-1)材料
・anti-BGP E4-Fab
・K2-FITC-K2C-TMR
・PBST (PBS + Tween20 0.1 %)
(3-2)手順
1.0 μM anti-BGP E4-Fab 2.0 μLと0.97 μM K2-FITC-K2C-TMR 1.3 μLを混合し、遮光して室温で10分間静置した。その後、PBST 250 μLを加えて懸濁し、anti-BGP E4-Fabの濃度を8.0 nM、K2-FITC-K2C-TMRの濃度を5 nMとした。
(4)蛍光スペクトル測定
(4-1)機器
・FP-8500 分光蛍光光度計(日本分光)
・5×5 mm 石英マイクロセル (Starna Scientific, UK)
(4-2)条件
温度 : 25 ℃
励起バンド幅 : 5 nm
蛍光バンド幅 : 5 nm
レスポンス : 2 sec.
感度 : High
データ取り込み間隔:0.5 nm
走査速度 : 500 nm/min
励起波長 : 485 nm
測定波長 : 510 - 700 nm
光源:キセノンランプ
(4-3)手順と結果
作製したFRET CQ-body 250 μLを石英セルに加えた。同時に、スターラーをマイクロセルに入れ攪拌させることで、測定中の溶液の均一化を図った。また、別のセルに、8 nM anti-BGP E4-Fab溶液をブランクとして用意した。さらに別のセルに、5 nM K2-FITC-K2C peptide 溶液を用意した。これらのセルを測定装置にセットし、ブランクを測定後、試料測定を行った。その後、抗原として100 μM BGP-C7 2.5 μL (終濃度 1 μM)を添加し、攪拌と静置をそれぞれ5分間実施し、再度試料測定を行った。抗原添加前と添加後のFRET CQ-bodyの蛍光スペクトルを図1に示す。
(5)データ処理
図1のスペクトルにK2-FITC-K2C peptideのスペクトルを重ね合わせ、FRET CQ-body - BGP、FRET CQ-body + BGP、K2-FITC-K2C peptideのそれぞれのスペクトルについて、 510~525 nmの範囲でのスペクトルのトップにおける蛍光強度値で、全波長範囲における蛍光強度値を除した(規格化、図2)。
最後に、FRET CQ-body - BGPとFRET CQ-body + BGPのそれぞれの蛍光強度値からK2-FITC-K2C peptideの蛍光強度値を引くことで、抗原添加における正味の蛍光応答スペクトルを得た(図3)。
〔実施例2〕 anti-MTX E4-VHH/K2-FITC-K2C-TMRを利用したQ-body
オステオカルシン(BGP)を認識するFab断片(抗BGP-Fab)の代わりに、抗がん剤Methotrexate(MTX)を認識するラマ由来重鎖抗体断片VHH(抗MTX-VHH) (Fanning, SW. and Horn,JR. Protein Science 20, 1196-1207, 2011)を用い、他は実施例1と同様にFRET CQ-bodyを作製した。このFRET CQ-bodyの抗原添加前と添加後の蛍光スペクトルを図4に示す。また、実施例1における図2及び図3と同様の処理を行ったスペクトルをそれぞれ図5及び図6に示す。
〔実施例3〕 anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMRを利用したQ-body
K4ペプチドのN末端から13番目のLysにFITCを導入する代わりに、N末端にFITCを導入しC末端のCysをTAMRAで修飾したFITC-K4C-TMRを用い、他は実施例1と同様にFRET CQ-bodyを作製した。このFRET CQ-bodyの抗原添加前と添加後の蛍光スペクトルを図7に示す。また、実施例1における図2及び図3と同様の処理を行ったスペクトルをそれぞれ図8及び図9に示す。
〔実施例4〕 anti-MTX E4-VHH/ FITC-K4C-TMRを利用したQ-body
オステオカルシン(BGP)を認識するFab断片(抗BGP-Fab)の代わりに、抗がん剤Methotrexate(MTX)を認識するラマ由来重鎖抗体断片VHH(抗MTX-VHH)を用い、FITC-K4C-TMRとモル比8:5となるように混合し、実施例1と同様にFRET CQ-bodyを作製した。このFRET CQ-bodyの抗原添加前と添加後の蛍光スペクトルを図10に示す。また、実施例1における図2及び図3と同様の処理を行ったスペクトルをそれぞれ図11及び図12に示す。
〔実施例5〕 酵母細胞表面におけるQ-bodyの評価
(1)E4付加VHH断片酵母提示用ベクターの作製
溶液中のみならず、酵母細胞表面にE4を付加した抗体断片を提示して蛍光応答を測定し、Q-bodyとしての性能に応じて選択することができれば、性能の高いQ-bodyの選択が可能となると考えられる。そこで実施例2において用いた、MTX認識VHHの下流にBamHI切断部位を持つプラスミドpEQ-VHH(MTX)を鋳型とし、プライマーNheI_E4back (TCAGCTAGCATGGCTGAAATCGCTGC) (配列番号5)およびT7 terminator (ATGCTAGTTATTGCTCAGCGG) (配列番号6)を用いて、常法に従いPCRを行い、末端にNheIとBamHI切断部位を含むE4-VHH(MTX)断片を作製した。またNheI_E4backおよびBamHI_E4for (CGCGGATCCCTGACCGGTGCCTCC) (配列番号7)の2つのプライマーを用いることで、末端にNheIとBamHI切断部位を含むE4断片も作製した。これらと、pYD1に由来する単量体ストレプトアビジン酵母提示用プラスミドpYD1-mSA(Lim et al. Biotechnology and Bioengineering, 2013, 39865,Addgene)のそれぞれについて、NheIおよびBamHIで制限酵素処理を行い、E4-VHH(MTX)あるいはE4のN末端にAga2アンカータンパク質遺伝子が付加された2種類のプラスミドを作製した。プラスミドの部分構造を図13に示す。
(2)形質転換
作製した2つのplasmidはFrozen-EZ Yeast Transformation II Kit(ZYMO RESEARCH)を用いて製造者の指示に従いEBY100(ATCC(登録商標)MYA-4941TM)に形質転換した。
(3)発現誘導
(3-1)材料
・SD寒天培地(Minimal SD base 26.7 g/L、Dropout (DO) supplement(-Trp,-Ura) 0.72 g/L、2 % d-Glucose、1.5 % Agar、50 μg/ml ampicillin)
・SD液体培地(Minimal SD base 26.7 g/L、DO supplement(-Trp,-Ura) 0.72 g/L、2 % Glucose、100 mM Phosphate buffer pH 6、50 μg/ml ampicillin)
・SG液体培地(Minimal SD base 26.7 g、DO supplement (-Trp,-Ura) 0.72 g、2 % Galactose、100 mM phosphate buffer pH 6、50 μg/ml ampicillin)
(3-2)手順
上記の形質転換体はSD寒天培地で選択した後、形成したコロニーを10 mlのSD液体培地に加えて、一晩30℃、250 rpmで培養した。翌日OD600を測定し、SD液体培地で希釈してSD液体培地20 ml、OD600を0.2として、OD600が0.4~0.8になるまで培養した。その後、2,500 g、4℃、5 min遠心して、上清を除いたのち、20 mlのSG液体培地を加えて、20℃、250 rpmで48時間培養した。
(4)酵母細胞表面に提示したE4の蛍光測定
(4-1)材料
・(3)においてE4を発現させた酵母菌体サンプル
・K4-TAMRAペプチド
・FITC-K4ペプチド
・K2-FITC-K2ペプチド
・FITC-K4-TAMRAペプチド
・K2-FITC-K2-TAMRAペプチド
・BPBS(PBS+0.1 % BSA)
(4-2)機器
・セルソーター機能付フローサイトメトリー(FACS) SH-800(ソニー社製)
(4-3)サンプル準備
発現誘導後、培養液のOD600を測定し、培養液中の菌体数を推定した(OD600=1を1.0×107個/mlとした)。その後、1.0×107 個の細胞が含まれる培養液を5サンプル分分注し、14000 g、1 min、4 ℃で遠心して上清を取り除き、BPBS 2 mlで洗浄後、再度14000 g、1 min、4 ℃で遠心後、上清を取り除いて50μlとした。そこに実施例1で作製したK4-TAMRA、FITC-K4、K2-FITC-K2、FITC-K4-TAMRA、K2-FITC-K2-TAMRAをそれぞれ最終濃度1μMとなるように加え、さらにBPBS 50μlを加えて100μlとし、氷上で30 min静置した。これを14000 g、1 min、4 ℃で遠心し、上清を取り除いてBPBS 1 mlを加えて攪拌する操作を2回繰り返し、結合していないペプチドを除いた。そしてBPBS 500μlを加えてサンプル溶液とした。
(4-4)測定条件
レーザー(488 nm)を使用し、検出器はFSC、BSC、FITC、PE(TAMRA検出用)を使用した。ただし検出器の感度はSH-800のソフトフェアで調整し、それぞれFSC (13)、BSC (37.5%)、FITC (39.5%)、PE (42.5%)とした。
(4-5)蛍光強度の補正(compensation)
FITCのPE検出器への漏れ込みおよびTAMRAのFITC検出器への漏れ込みを補正するため、K4-TAMRA、FITC-K4、K2-FITC-K2をラベルしたサンプルを用い、SH-800のソフトフェアにしたがって補正を行った。以下の測定及び結果では本結果をもとに補正を行った後の結果を示す。
(4-6)測定及び結果
FITC-K4-TAMRA、K2-FITC-K2-TAMRAでラベルしたサンプルについてFACSによる測定を行い、細胞100,000個についてヒストグラムを作製した(図14-1及び図14-2)。左上のグラフのAで示した細胞集団についてその蛍光強度分布を測定したところ、いずれの細胞においてもTAMRA由来の蛍光(PE-A-Compensated)を、薄い灰色で示したラベルしていないサンプルの蛍光と比較して十分な強度で検出出来る事が判明した。
(5)酵母細胞表面でのQ-bodyの性能評価
(5-1)材料
・(3)においてE4-VHH(MTX)を発現させた酵母菌体サンプル
・FITC-K4-TAMRAペプチド
・K2-FITC-K2-TAMRAペプチド
・BPBS
(5-2)機器
・SH-800(ソニー社製)
(5-3)サンプル準備
発現誘導後、培養液のOD600を測定し、培養液中の菌体数を推定した(OD600=1を1.0×107個/mlとした)。その後、2.0×107 個の細胞が含まれる培養液を2サンプル分分注し、14,000 g、1 min、4℃で遠心して上清を取り除き、BPBS 2 mlで洗浄後、再度14,000 g、1 min、4 ℃で遠心後、上清を取り除いて50μlとした。そこに実施例で作製したFITC-K4-TAMRA、K2-FITC-K2-TAMRAをそれぞれ最終濃度1μMとなるように加え、さらにBPBS 50μlを加えて100μlとし、氷上で30 min静置した。これを14,000 g、1 min、4℃で遠心し、上清を取り除いてBPBS 1 mlを加えて攪拌する操作を2回繰り返して、未反応のペプチドを取り除いた。そしてBPBS 1 mlを加えて攪拌し、これを500μlずつに分けて、片方に抗原としてmethotrexate (MTX)を最終濃度1μMとなるよう加えた。
(5-4)測定条件
(4-4)と同じ条件を用いた。
(5-5)蛍光強度の補正
(4-5)と同じ条件を用いた。
(5-6)測定及び結果
FITC-K4-TAMRAでラベルしたサンプルについて、抗原MTXなし(図15-1)とあり(図15-2)の状態でFACSによる測定を行い、細胞100,000個についてヒストグラムを作製した。なお、ラベルしなかったサンプルの蛍光をヒストグラム上に薄い灰色で示した。この結果、抗原なしでは図14-1と比較して低いTAMRA由来の蛍光強度(PE-A-Compensated)が、抗原を加えた場合に顕著に増加する事が明らかとなった。これに対し、FITC由来の蛍光強度は特に変化を示さなかった。
K2-FITC-K2-TAMRAでラベルしたサンプルについて、抗原MTXなし(図16-1)とあり(図16-2)の状態でFACSによる測定を行い、細胞100,000個についてヒストグラムを作製した。この結果、抗原なしでは低いTAMRA由来の蛍光強度(PE-A-Compensated)が、抗原を加えた場合により顕著に増加する事が明らかとなった。さらに、FITC由来の蛍光強度が、抗原を加えて場合にやや減少した。溶液中と同様、抗原添加によって抗原結合部位から移動したTAMRAとFITCとの距離が近くなり、FRET効率が高まったことからFITC由来の蛍光が弱まりTAMRAの蛍光が増強されたと考えられる。これらの結果から、FACSを用いることで、酵母細胞表面に発現させた抗MTX E4 VHH Q-bodyのクエンチおよび抗原依存的な脱クエンチを観察し、かつ選別することが可能なことが示された。
〔実施例6〕 anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMRを利用したBGPの検量線作成
(1)FRET CQ-bodyの作製
(1-1)材料
・anti-BGP E4-Fab(実施例1で使用したものと同じものを使用した。)
・FITC-K4C-TMR(実施例3で使用したものと同じものを使用した。)
・BPBST (PBS + Tween20 0.1 % + BSA 0.1 %)
(1-2)手順
5.0 μM anti-BGP E4-Fab 2.0 μLと1.7 μM FITC-K4C-TMR 5.8 μLを混合し、BPBST 2.2 μLを加え、それそれの終濃度を1.0 μMとし、遮光して室温で10分間静置した。その後、1.5 mL tubeに反応液5 μLを取り、BPBST 1.0 mLを加えて懸濁し、E4-FabとFITC-K4C-TMRの濃度を5.0 nMとした。
(2)蛍光スペクトル測定
(2-1)機器
実施例1で使用した機器と同じ機器を使用した。
(2-2)条件
実施例1の条件と同じ条件とした。
(2-3)手順と結果
まず、石英セルにBPBST 250 μLを用意し、ブランクとして測定した。続いて、作製したFRET CQ-body 250 μLを3本の石英セルにそれぞれ加えた。同時に、スターラーをマイクロセルに入れ攪拌させることで、測定中の溶液の均一化を図った。20分間室温で攪拌した後、抗原0 nMの試料として測定を行った。その後、それぞれのセルに抗原として0.1 μM BGP-C7 2.0 μLを添加した。15分室温で攪拌した後、抗原0.8 nMの試料として測定を行った。以降、同様の手順で、抗原の添加、15分室温で攪拌、試料測定を行い、抗原濃度4.7、12.5、35.7、134 nMの蛍光スペクトル測定の結果を得た(図17)。
(3)データ処理
3回分の測定結果について、各抗原濃度におけるTAMRAの蛍光ピーク(551 ~ 710 nm区間での最大値)とFluoresceinの蛍光ピーク(510 ~ 550 nm区間での最大値)の比(TAMRA/Fluorescein)をそれぞれ取り、平均値と標準偏差を算出した(n = 3)。次いで、抗原濃度0 nMにおける蛍光ピーク比の値で、全抗原濃度における蛍光ピーク値を除した(規格化)。回帰モデルとして4係数ロジスティック曲線を用いたCurve fittingの結果、EC50 16 nM、Hill係数2.1となった。3σ法により求めた検出限界濃度は2.0 nMであった。得られた回帰曲線の横軸を対数表示にしたグラフを図18に示す。
〔実施例7〕 anti-BGP E4-Fab/FITC-K4C-TMRを利用したヒト血清中におけるBGPの検量線作成
(1)FRET CQ-bodyの作製
(1-1)材料
・anti-BGP E4-Fab(実施例1で使用したものと同じものを使用した。)
・FITC-K4C-TMR(実施例3で使用したものと同じものを使用した。)
・PBS
・BPBST (PBS + Tween20 0.1 % + BSA 0.1 %)
・HUMAN POOLED SERUM (MP Biomedicals, LLC, Cat# 2931149)
(1-2)手順
5.0 μM anti-BGP E4-Fab 5.0 μLと1.7 μM FITC-K4C-TMR 13 μLを混合し、BPBST 7.0 μLを加え、それそれの終濃度を1.0 、0.9 μMとし、遮光して室温で10分間静置した。その後、PBSで20 %に希釈したヒト血清 2.5 mLを加えて懸濁し、E4-Fabの濃度を10 nM、FITC-K4C-TMRの濃度を8.8 nMとした。
(2)蛍光強度測定
(2-1)機器
・CLARIOstar (BMG LABTECH)
・Microplate 96 well, PS, Half area, Black, High binding, Sterile (Greiner Bio-One, Cat# 675077)
(2-2)条件
共通
Gain:1500
Forcal height:8.0 mm
Target value:1%
単波長測定
Ex:541.2 ± 14
Dichroic:562.5
Em:580 ± 13
二波長測定
For FITC
Ex:480 ± 20
Dichroic:502.5
Em:530 ± 30
For TAMRA
Ex:480 ± 20
Dichroic:auto 530
Em:585 ± 30
(2-3)測定手順
抗原濃度0 - 500 nM の範囲で8点測定した。1.5 mLのエッペンチューブにFRET CQ-body溶液300 μLと各濃度の抗原1.5 μLをそれぞれ加え、96 Wellプレートに3点(95 μL × 3)ずつ添加した。この時、別のWellに、ブランクとして20 %ヒト血清溶液も同様に添加した。遮光して室温で20分間静置した後、Fluoresceinを励起した場合とTAMRAを励起した場合について試料測定を行った。これと同時に、20 %ヒト血清の代わりにPBSを使用した場合についても同様に試料を調製し、蛍光強度測定を実施した。
(3)データ処理
Fluoresceinを励起した場合について、全ての測定結果からブランクの値を差し引いた後、各抗原濃度にけるTAMRAの蛍光強度とFluoresceinの蛍光強度の比(TAMRA/Fluorescein)をそれぞれ取り、平均値と標準偏差を算出した(n = 3)。次いで、抗原濃度0 nMにおける蛍光強度比の値で、全抗原濃度における蛍光強度の値を除した(規格化)。回帰モデルとして4係数ロジスティック曲線を用いたCurve fittingを行い、得られた回帰曲線の横軸を対数表示にしたグラフを図19に示した。TAMRAを励起した場合については、全ての測定結果からブランクの値を差し引いた後、平均値と標準偏差を算出し(n = 3)、以降は、Fluoresceinを励起した場合と同様の手順でデータの処理を行った(図20)。その結果、BGP-C7の濃度依存的に蛍光輝度が上昇し、実サンプル中でも抗原の検出が可能であることが示され、臨床診断分野などでのFRET CQ-bodyの有用性が示された。
〔実施例8〕 プローブ濃度が異なる条件におけるBGPの測定
FRET CQ-bodyは、蛍光ピーク比の変化で抗原を検出できるので、プローブ濃度が変化するような状況でも正確に抗原の定量が可能なはずである。これを示すために、FRET CQ-bodyの濃度が5 nMと10 nMの系について、実施例6と同様の手順で、抗原存在時にTAMRAを励起した場合とFluoresceinを励起した場合の蛍光強度をそれぞれ測定した。その結果、 TAMRAを励起した場合では、FRET CQ-body 10 nMの時の蛍光強度は5 nMの時の蛍光強度の約二倍となり、プローブ濃度の影響を顕著に受ける結果となった(図21)。一方で、Fluoresceinを励起し、TAMRAとFluoresceinの蛍光ピークの比をとった場合では、FRET CQ-body 10 nMと5 nMの時の検量線は一致し、プローブ濃度の影響によらず抗原を検出可能なことが示された(図22)。プローブ濃度が異なる状況でも正確に抗原の検出が可能であることから、生細胞イメージングなどへの応用も期待される。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明は、試料分析や薬物検査の分野、又は携帯型試料分析キットの分野などにおいて有用に利用することができる。

Claims (7)

  1. FRETペアを形成し得るアクセプターとなる蛍光色素とドナーとなる蛍光色素又はBRETペアを形成し得るアクセプターとなる蛍光色素とドナーとなる発光物質を結合させた第一のペプチド、及び第二のペプチドを付加した抗体断片を含む抗原検出用キットであって、1)第一のペプチド及び第二のペプチドは、いずれか一方が正電荷を帯び、他方が負電荷を帯びていること、2)第一のペプチドと第二のペプチドはコイルドコイルを形成し得ること、並びに第一のペプチドと第二のペプチドが結合した際、試料中に抗原が存在しない場合、アクセプターとなる蛍光色素が抗体断片の内部に取り込まれ消光し、試料中に抗原が存在する場合、アクセプターとなる蛍光色素が抗体断片の外に移動し、消光が解除されることを特徴とする抗原検出用キット。
  2. 第一のペプチドがアミノ酸配列:X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7(X1及びX6は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X7は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X2及びX5は疎水性アミノ酸を表し、X3及びX4は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含み、第二のペプチドがアミノ酸配列:X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14(X8及びX13は負電荷を帯びたアミノ酸を表し、X14は正電荷を帯びたアミノ酸を表し、X9及びX12は疎水性アミノ酸を表し、X10及びX11は任意のアミノ酸を表す。)の反復を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗原検出用キット。
  3. 第一のペプチドがアミノ酸配列:Lys Ile Ala Ala Leu Lys Gluの反復を含み、第二のペプチドがアミノ酸配列:Glu Ile Ala Ala Leu Glu Lysの反復を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗原検出用キット。
  4. 第一のペプチドが配列番号1に記載のアミノ酸配列からなり、第二のペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1に記載の抗原検出用キット。
  5. FRETペアを形成し得るアクセプターとなる蛍光色素とドナーとなる蛍光色素が、ローダミン系蛍光色素とフルオレセイン系蛍光色素であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の抗原検出用キット。
  6. 抗体断片が、Fab又はラクダ属重鎖抗体由来VHHであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の抗原検出用キット。
  7. 試料中の抗原を検出する方法であって、以下の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする抗原の検出方法、
    (1)試料を、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のキットと接触させる工程、
    (2)第一のペプチドと結合させた蛍光色素の蛍光を検出する工程。
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