以下、実施形態に係るプリンタについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、細部は省略されることがある。
第2実施形態以降の説明においては、基本的に先に説明された構成との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された構成と同様とされたり、先に説明された構成から類推されたりしてよい。複数の実施形態において互いに対応する構成については、具体的な構成が異なる場合においても、同じ符号を付すことがある。
<第1実施形態>
(プリントシステムの概要及び動作の一例)
図1は、第1実施形態に係るプリントシステム1の構成の一例を模式的に示す斜視図である。ここでは、説明の便宜上、直交座標系XYZ及び直交座標系xyzが示されている。直交座標系XYZは、厳密性を無視して言えば、空間に対して固定的な空間座標系であり、換言すれば、絶対座標系である。直交座標系xyzは、後述するプリンタ3に固定された座標系であり、別の観点では、プリンタ3の移動に伴って移動する相対座標系であり、また、後述するセンサに固定的なセンサ座標系である。単に平面視又は平面透視という場合は、特に断りが無い限り、z方向又はZ方向に見ることを指すものとする。
プリントシステム1は、例えば、プリンタ3と、プリンタ3と通信可能な通信機器5とを有している。プリンタ3は、ユーザが片手で掴んで移動させることが可能な大きさ及び重量で構成されている。図1では、被印刷物101の被印刷面101aに文字列「ABCD」からなる画像103を印刷する場合が例示されている。印刷時において、被印刷面101aは、鉛直方向(重力方向)に対して種々の向きとされてよい。換言すれば、プリンタ3は、鉛直方向に対していずれの向きで使用されてもよい。ただし、以下の説明では、便宜上、+z側又は+Z側を上方として、上面及び下面等の用語を用いることがある。
プリントシステム1を用いた印刷手順の概要は、例えば、以下のとおりである。まず、ユーザは、通信機器5に対する操作によって印刷を希望する画像(画像103)のデータをプリンタ3に送信する。次に、ユーザは、プリンタ3を被印刷面101a上に載置した状態で、プリンタ3のスイッチ7を操作してプリンタ3に印刷開始を指示する。その後、ユーザは、プリンタ3を手動で被印刷面101aに沿って移動させる。図示の例では、例えば、ユーザは、プリンタ3を+x側(+X側)へ移動させる。その間、プリンタ3は、画像103を-X側の部分から徐々に印刷していく。このようにして、手動での走査によって画像103の全体が被印刷面101aの印刷領域R103に印刷される。
(プリンタの構成)
プリンタ3の形状及び寸法は任意である。図示の例では、プリンタ3の外形は、概略、長さ(y方向の長さ)及び厚さ(z方向の長さ)が幅(x方向の長さ)よりも大きい直方体状とされている。ユーザは、例えば、プリンタ3の上面に掌を向け、親指を一方の側面(-x側及び+x側に面する面の一方)に添え、他の指の少なくとも1つを他方の側面に添えるようにしてプリンタ3を掴むことができる。別の観点では、プリンタ3において、+y側は指先側となり、-y側は手首側となる。
特に図示しないが、プリンタ3の形状は、把持の容易性、又は種々の要素(例えば不図示のバッテリ又はインクカートリッジ)を内部に配置する容易性等の観点から、適宜な位置(例えば側面の上方側)に膨らみを有するような形状であってもよい。また、プリンタ3の概略形状は、直方体状に限定されず、例えば、コンピュータのマウスのように、上面及び側面に曲面を有していたり、指先側(+y側)の幅(x方向の長さ)が手首側(-y側)の幅よりも広くされていたりしてもよい。
プリンタ3の印刷方式は、適宜なものとされてよい。例えば、プリンタ3は、プリントヘッドが被印刷面101aに対して非接触とされるものであってもよいし、プリントヘッドが被印刷面101aに対して直接に又は間接に接触するものであってもよい。非接触式のものとしては、例えば、インク滴を被印刷面101aに向けて吐出するインクジェット方式を挙げることができる。接触式のものとしては、例えば、サーマル方式及びドットインパクト方式を挙げることができる。サーマル方式では、例えば、プリントヘッドは、被印刷面101aを有する感熱紙、又は被印刷面101aとの間に介在するインクリボンに熱を付与する。ドットインパクト方式では、例えば、プリントヘッドは、細いピンをインクリボンに叩き付ける。プリンタ3は、モノクロプリンタであってもよいし、カラープリンタであってもよい。なお、本実施形態の説明では、プリンタ3がインクジェット方式のモノクロプリンタである態様を例に取る。
図2(a)は、プリンタ3の下面を示す模式的な平面図である。図2(b)は、図2(a)の一部(後述するプリントヘッド15)を拡大して示す模式図である。
図1及び図2(a)に示すように、プリンタ3は、例えば、プリンタ3の外形を構成する筐体13と、筐体13の下面に位置して被印刷面101a等に対して当接する当接部17とを有している。プリンタ3は、筐体13の下面(対向部13a)から露出する要素として、印刷を直接的に担うヘッド15と、プリンタ3の位置特定等に寄与する2以上の光学センサ11(第1光学センサ11A及び第2光学センサ11B)とを有している。また、プリンタ3は、筐体13の上面(背面部13d)から露出する既述のスイッチ7及びディスプレイ9を有している。さらに、プリンタ3は、図2(a)において点線で示すように、筐体13内に、プリンタ3の位置特定等に寄与する慣性センサ(例えば加速度センサ19及び/又はジャイロセンサ23)を有している。
(筐体)
筐体13の外形は、概略、プリンタ3の外形を構成している。従って、上述のプリンタ3の外形の説明は、筐体13の外形に援用されてよい。筐体13は、適宜な数の部材が組み合わされて構成されてよい。また、筐体13は、開閉可能な部分及び/又は着脱可能な部分を有していてもよい。そのような部分は、例えば、バッテリ及び/又はインクカートリッジ等の、筐体13の内部への着脱に利用されてよい。筐体13の材料は、任意のものとされてよく、例えば、金属若しくは樹脂又はこれらの組み合わせとされてよい。
筐体13の下面を対向部13aというものとする。筐体13の上面を背面部13dというものとする。筐体13の+x側又は-x側に面する2つの側面を側面部13eというものとする。対向部13aは、別の観点では、印刷時に被印刷面101aに対向する面である。背面部13dは、対向部13aの背面側の面である。側面部13eは、対向部13aと背面部13dとを繋ぐ面である。
対向部13a、背面部13d及び側面部13eそれぞれは、例えば、概略平面状である。これらの面は、凹凸を有していてもよいし、比較的深い凹部を有していてもよい。また、筐体13を構成する部材同士の隙間がこれらの面において開口していてもよい。これらの面同士の境界は、筐体13の全体形状に基づいて合理的に判断されてよい。対向部13aと側面部13eとの境界は、筐体13が平面状の被印刷面101aに載置されたときの被印刷面101aからの距離等が考慮されてもよい。
また、筐体13の+y側の端部を第1端13bといい、筐体13の-y側の端部を第2端13cというものとする。
既述のように、実施形態のプリンタ3に関して、想定されている普通の使用方法においては、+y側は指先側となり、-y側は手首側となる。従って、第1端13bは指先側の端部であり、第2端13cは手首側の端部であるとういことができる。
また、本実施形態では、スイッチ7は、プリンタ3の使用時(把持時)における手の位置又はこれに近い位置で操作可能に、指先側に位置している。従って、第1端13bはスイッチ7側の端部であり、第2端13cはスイッチ7とは反対側の端部であるということもできる。
さらに、後述する説明から理解されるように、本実施形態では、印刷開始時におけるプリンタ3の直交座標系xyzに一致するように絶対座標系XYZが定義される。ここでいう一致は、x軸とX軸とが平行となり、y軸とY軸とが平行となり、z軸とZ軸とが平行となる状態である(以下、同様。)。そして、画像103は、+Y側を上方とし、-Y側を下方として印刷される。ここでいう上方及び下方は、鉛直方向における向きではなく、画像103の面に沿う方向について、縦方向及び横方向というときの、又は、上下左右方向というときの上方及び下方である。従って、第1端13bは、印刷開始時において画像103の上縁側が向けられる側の端部であり、第2端13cはその反対側の端部であるということができる。
平面視において、筐体13は、第1端13bから第2端13cへの方向(第1方向、長手方向、y方向)における長さが、当該方向に直交する方向(第2方向、短手方向、x方向)における長さよりも長い形状を有している。筐体13の形状が直方体状でない場合においては、上記の長手方向の長さ及び短手方向における長さとしては、例えば、それぞれ最大長さが参照されてよい。
(ヘッド)
既述のように、本実施形態の説明では、インクジェット方式を例に取る。この場合のヘッド15は、例えば、筐体13の下面から露出している吐出面15aと、吐出面15aに開口している複数(理論上は1つも可)のノズル15bとを有している。吐出面15aは、印刷時において、被印刷面101aに対して隙間を介して概ね平行に対向する。そして、各ノズル15bから被印刷面101aに向けて液滴(例えばインク滴)が吐出されることによって画像103が被印刷面101aに印刷される。なお、インクジェット方式以外の方式も考慮して上位概念化した場合においては、吐出面15aは、対向面と言い換えることができ、ノズル15bは、被印刷面101aに対して1画素に対応する印刷を行う印刷要素と言い換えることができる。
複数のノズル15bの数は適宜に設定されてよい。図2(b)では、図示の便宜上、比較的少数のノズル15bが示されている。別の観点では、ドット密度が比較的低い態様が示されている。ただし、実際には、ノズル15bの数は、図示の例よりも多くされてよく、及び/又はドット密度は図示の例よりも高くされてよい。例えば、複数のノズル15bは、100個以上設けられていてもよいし、100dpi(dots per inch)以上又は300dpi以上の密度で設けられていてもよい。なお、プリンタ3の用途によっては、図示の例よりもノズル15bの数を少なくすることも可能である。
複数のノズル15bの配列方向及び列数等も適宜に設定されてよい。図示の例では、複数のノズル15bは、1列でy方向(図示の例ではプリンタ3の長手方向)に配列されている。従って、例えば、x方向(図示の例ではプリンタ3の短手方向)又はx方向の成分を含む方向へプリンタ3を移動させながら複数のノズル15bから液滴を吐出することによって、複数のノズル15bの配列長さをプリンタ3の移動方向に投影した幅で、帯状の画像を印刷することができる。ただし、図示の例とは異なり、複数のノズル15bは、2列以上で配列されていてもよいし、x方向に配列されていてもよい。また、複数のノズル15bの配置領域の長手方向(ヘッド15の長手方向)と、プリンタ3の長手方向とは一致していなくてもよい。
上記のように複数のノズル15b(印刷素子)が配列されている方向(y方向)を主走査方向ということがある。また、主走査方向に直交する方向(x方向)を副走査方向ということがある。通常、主走査方向とヘッド15の長手方向とは同一である。
ノズル15bから液滴を吐出するための駆動方式は任意のものとされてよい。代表的なものとしては、ピエゾ式とサーマル式とを挙げることができる。ピエゾ式では、圧電素子に電圧を印加したときの圧電素子の変形によってヘッド15内の液体(インク)に圧力を付与し、これにより液滴をノズル15bから吐出させる。サーマル式では、発熱体によってノズル15bの奥側の液体(インク)に熱を付与して気泡を生じさせ、その圧力によって液滴をノズル15bから吐出させる。以下の説明では、液滴を吐出する駆動部として圧電素子を例に取ることがある。
ヘッド15は対向部13aに位置している。ヘッド15が対向部13aに位置しているというとき、例えば、ヘッド15が対向部13aから露出している(見えている)ことを意味すると捉えられてよい。このとき、ヘッド15の、筐体13の内部側(背面部13d側)の端部は、任意の位置にあってよく、例えば、対向部13aからの距離が背面部13dからの距離よりも長い位置にあっても構わない。また、ヘッド15の位置は、例えば、第1端13b側に偏っている。換言すれば、ヘッド15と第1端13bとの距離(最短距離)は、ヘッド15と第2端13cとの距離よりも短い。なお、他の部材について第1端13b側(又は第2端13c)に偏っているという場合も同様に、第1端13bとの距離が第2端13cとの距離よりも短いことを意味していると捉えてよい。ヘッド15の位置(及び大きさ等)は、例えば、ノズル15bの位置を基準として判断されてよい。例えば、ヘッド15と他の構成要素(例えば、第1端13b、第2端13c又は光学センサ11)との距離は、他の構成要素に最も近いノズル15bとの距離とされてよい。ヘッド15の中央というときは、全てのノズル15bの配置領域の中央とされてよい。
ヘッド15の第1端13b側への偏りの程度は適宜に設定されてよい。例えば、ヘッド15は、図示の例のように、その全体が対向部13aの第1端側の半分又は1/3に収まってもよい。また、ヘッド15は、図示の例とは異なり、一部が対向部13aの中央よりも第2端13c側に位置した状態で、全体としては第1端13bに偏って位置してもよい。ヘッド15と第1端13bとの距離も適宜に設定されてよい。本実施形態では、ヘッド15は、第1端13bとヘッド15との間に第1光学センサ11Aを配置可能な距離で第1端13bから離されている。ただし、他の実施形態においては、そのように離されている必要は無い。また、ヘッド15は、第1光学センサ11Aを配置するのに必要な距離以上で第1端13bから離れていてもよい。
ヘッド15のx方向(第1端13bから第2端13cへの方向に直交する方向)における位置は任意である。例えば、ヘッド15は、筐体13の対向部13aのx方向中央に位置していてもよいし(図示の例)、当該中央からx方向においてずれていてもよい。
(当接部)
当接部17は、ヘッド15の吐出面15aよりも下方へ突出して、被印刷面101a及び/又は被印刷面101aの周囲に露出している面に当接している。これにより、吐出面15aと被印刷面101aとの間には隙間が構成されている。隙間の大きさ(吐出面15aと被印刷面101aとの距離)は、ヘッド15の特性等を考慮して適宜に設定されてよく、例えば、1mm以下とされてもよいし、1mm以上とされてもよい。なお、接触式の印刷方式においては、当接部17は省略されてもよい。
当接部17の構成は適宜なものとされてよい。例えば、当接部17は、被印刷面101aを転がる転動体を有する走行部であってもよいし、被印刷面101aを摺動する摺動部であってもよい。走行部としては、例えば、x方向にのみ転がることが可能な転動体(コロ)を有するもの、及び任意の方向に走行可能なキャスターを有するものを挙げることができる。走行部の数及び配置位置は適宜に設定されてよい。例えば、走行部は、3個以上(図示の例では4個)で筐体13の下面の外縁に隣接して配置されている。また、当接部17が摺動部である場合、その数及び形状は任意である。例えば、摺動部は、図示の例のように、互いに異なる位置に複数で設けられていてもよいし、筐体13の下面の比較的離れた複数の位置に亘って一体的に1つのみ形成されていてもよい。当接部17は、走行と摺動とを切り換え可能に構成されていてもよい。例えば、走行部が設けられた筐体13に対して摺動部を着脱することによって走行と摺動とが切り換えられてもよい。
なお、当接部17は、筐体13の一部として捉えられてもよい。この場合において、上記の摺動部の着脱の説明からも理解されるように、筐体13の対向部13aは印刷時の形状が変化してもよい。
(スイッチ)
スイッチ7の構成は任意である。例えば、図示の例では、スイッチ7は、押しボタン式スイッチ(より詳細には、例えば、自動復帰型(モーメンタリ)のスイッチ)によって構成されている。すなわち、スイッチ7は、ユーザによる+z側からの押圧操作を受け付ける(押圧操作に応じて信号を出力する。)。このようなスイッチ7は、例えば、特に図示しないが、筐体13から外部へ露出している操作部材と、操作部材の押下によってその押下方向へ移動する可動接点と、押下方向へ移動した可動接点が接触する固定接点とを有している。可動接点と固定接点との接触によって、例えば、印刷の開始を指示する信号が、後述する制御部21(図3参照)に入力される。操作部材が押下されていないときは、可動接点は、操作部材、可動接点及び/又は他の部材が有している復元力によって固定接点から離れている。
スイッチ7は、ユーザの操作に応じて信号を制御部21に入力するものであるから、換言すれば、操作部である。また、制御部21への信号入力のみに着目して、スイッチ7は、入力部であるということもできる。操作部(スイッチ7)の構成及び位置は、図示の例以外の種々の態様とされてよい。例えば、スイッチ7は、機械式及び電子式のいずれであってもよい。また、例えば、ディスプレイ9をタッチパネルによって構成し、このタッチパネル(その内部のタッチセンサ)がスイッチ7として機能してよい。また、上記のタッチセンサからも理解されるように、スイッチ(操作部)は、センサによって構成されてよい。また、印刷開始を指示するためのスイッチは、押圧式のものに限定されず、スライド式のもの等とされてもよい。
スイッチ7の位置も任意である。図示の例では、スイッチ7は背面部13dに位置している。スイッチ7が背面部13dに位置しているというとき、例えば、スイッチ7が背面部13dから露出している(見えている)ことを意味すると捉えられてよい。このとき、スイッチ7の、筐体13の内部側(対向部13a)の端部は、任意の位置にあってよく、例えば、背面部13dからの距離が比較的長い位置にあっても構わない。また、既述のように、スイッチ7は、第1端13b側に偏って位置している。スイッチ7が第1端13b側に位置していることによって、既述のように、スイッチ7を操作するときのプリンタ3に対する手の姿勢を手動式走査のときの手の姿勢に近づけることができ、スイッチ7の操作が容易化される。その一方で、スイッチ7が上面に位置していることによって、例えば、走査中においてプリンタ3の側面に添えられる指による誤操作を避けることができる。
第1端13b側に偏っているスイッチ7の具体的な位置も適宜に設定されてよい。図示の例では、スイッチ7(その全体又は露出部分の図心)は、筐体13のうちの第1端13b側の半分又は1/3に収まっている。また、スイッチ7(例えばその全体)は、第1端13bとディスプレイ9との間に位置している。また、スイッチ7は、筐体13のx方向中央に位置している。
平面透視において、スイッチ7とヘッド15との位置関係も適宜に設定されてよい。例えば、両者は重なっていてもよいし(図示の例)、重なっていなくてもよい。前者の場合において、スイッチ7(任意の位置、又は露出部分の図心)は、ヘッド15の中心(例えば平面視における図心)に重なっていてもよいし(図示の例)、重なっていなくてもよい。
スイッチ7は、印刷開始を指示する以外の用途に用いられてもよい。例えば、印刷の中断、印刷される画像の変更、印刷される画像の濃度の変更、印刷される文字のフォントの変更、及び/又は同一の画像を繰り返し印刷する回数の変更をプリンタ3に指示するために用いられてもよい。スイッチ7以外のスイッチ(操作部)が筐体13の適宜な位置に設けられてもよい。
(光学センサ)
光学センサ11は、例えば、プリンタ3のXY座標上の位置を特定することに寄与する。光学センサ11の構成は、例えば、コンピュータのマウスに利用されている光学センサの構成と同様とされてよい。例えば、特に図示しないが、光学センサ11は、光源と、光源の光を対向部13aの外部へ(別の観点では被印刷面101aへ)導く導光部材と、対向部13aの外部からの光(例えば被印刷面101aからの反射光)が入射するレンズと、レンズが結んだ光像に応じた信号を出力するイメージャ(別の用語ではイメージセンサ又は撮像素子)とを有している。
光源は、例えば、LED(light emitting diode)又はレーザーである。光源及び導光部材は省略されてもよい。イメージャは、例えば、固体撮像素子であり、その代表的なものとしては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを挙げることができる。イメージャは、例えば、少なくとも可視光に対応している。ただし、イメージャは、可視光に代えて、又は加えて、赤外線に対応していてもよい。光学センサ11は、イメージャからの信号を処理する処理部を含んでいてもよい。このような処理部は、例えば、IC(Integrated Circuit)を含んで構成されている。
マウスの光学センサは、通常、移動前の撮像画像と移動後の撮像画像とのずれに基づいて、センサ座標系である座標系xyにおける移動量を特定することに寄与する。換言すれば、光学センサは、z軸回りの回転量(回転角度と同義であるものとする。)の特定には寄与しない。従って、例えば、マウスをx方向に移動させて画面上のポインタ(カーソル)を画面の横方向に移動させた後、マウスをその場でz軸回りに回転させ、マウスを再度x方向に移動させたとき、ポインタは再度横方向に移動する(縦方向には移動しない。)。この技術をプリンタ3に適用した場合、例えば、プリンタ3がz軸回りに回転されると、xy座標とXY座標とがずれ、プリンタ3のXY座標における位置を特定できない。もちろん、プリンタ3のZ軸回りの位置(X軸及びY軸に対する傾斜角)も特定できない。本実施形態では、2つの光学センサ11を設けることによって、z軸回りの回転量を特定可能とし、ひいては、XY座標における位置等の特定を可能としている。この算出方法については後に例示する。
なお、1つの光学センサ11によって撮像される画像の移動前後のずれに基づいてz軸回りの回転量が特定されてもよい。この場合、2つの光学センサ11は、例えば、その回転量の精度向上に利用されてよい。また、光学センサ11は、ディスプレイ9に表示される画像として被印刷面101aの画像を取得することに寄与してもよい。
光学センサ11は、対向部13aに位置している。光学センサ11が対向部13aに位置しているというとき、例えば、光学センサ11が対向部13aから露出している(見えている)ことを意味すると捉えられてよい。このとき、光学センサ11の、筐体13の内部側(背面部13d側)の端部は、任意の位置にあってよく、例えば、対向部13aからの距離が比較的長い位置にあっても構わない。光学センサ11の対向部13aにおける位置は任意である。本実施形態では、2つの光学センサ11は、第1端13bから第2端13cへの方向(y方向)においてヘッド15を挟むように配置されている。すなわち、第1光学センサ11Aは、ヘッド15よりも第1端13b側に位置している。第2光学センサ11Bは、ヘッド15よりも第2端13c側に位置している。光学センサ11の位置又は他の構成要素(例えばヘッド15)との距離は、例えば、光学センサ11のうち対向部13aから露出している部分の中心、不図示のレンズの中心、又は撮像画像の中心を基準として判断されてよい。後述する2つの光学センサ11を結ぶ線の端も同様である。
既述のように、ヘッド15は、第1端13b側に偏って位置している。従って、ヘッド15よりも第1端13b側に位置している第1光学センサ11Aは、当然に第1端13b側に偏って位置している。第2光学センサ11Bは、図示の例のように、第1端13b側に偏っていてもよいし、図示の例とは異なり、第2端13c側に偏っていてもよい。
平面透視において、光学センサ11とスイッチ7との位置関係も適宜に設定されてよい。図示の例では、第1光学センサ11Aは、スイッチ7に対して(例えばスイッチ7の背面部13dからの露出部分の図心に対して)第1端13b側に位置している。また、第2光学センサ11Bは、スイッチ7に対して(例えばスイッチ7の背面部13dからの露出部分の図心に対して)第2端13c側に位置している。
光学センサ11のy方向における具体的な位置及び2つの光学センサ11の距離は、適宜に設定されてよい。図示の例では、2つの光学センサ11は、いずれもヘッド15に隣接している。また、第1光学センサ11Aは、第1端13bに対しても隣接している。ここでいう隣接は、例えば、光学センサ11とヘッド15との距離が、2cm以下若しくは1cm以下、又は第1端13bと第2端13cとの距離の1/5以下又は1/10以下となる状態とされてよい。次の段落においても同様とする。また、第2光学センサ11Bは、対向部13aの中心付近に位置している。例えば、第2光学センサ11Bは、対向部13aをy方向において3等分したときに中央の領域に位置している。2つの光学センサ11の距離は、例えば、ヘッド15の長さ(ノズル15bの配列長さ)の2倍以下又は1.5倍以下とされている。また、平面透視において、2つの光学センサ11は、スイッチ7からのy方向における距離(例えばスイッチ7のうちの各々の光学センサ11に近い端部からの距離、又はスイッチ7の露出部分の図心からの距離)が互いに等しくされている。ここでの等しいは、例えば、スイッチ7のy方向の長さ(例えばスイッチ7の露出部分の長さ)の1倍以下又は半分以下の相違がある場合を含んでよい。
光学センサ11のy方向における具体的な位置及び2つの光学センサ11の距離は、図示の例以外にも種々可能である。例えば、光学センサ11の少なくとも一方は、ヘッド15に隣接していなくてもよい。より詳細には、第1光学センサ11Aがヘッド15に隣接している場合に、又は隣接していない場合に、第2光学センサ11Bは、第2端13cに隣接し、ひいては、ヘッド15に隣接していなくてもよい。同様に、第2光学センサ11Bがヘッド15に隣接している場合に、又は隣接していない場合に、第1光学センサ11Aは、ヘッド15に隣接していなくてもよい。また、例えば、第1光学センサ11Aが第1端13bに隣接しているとともに(ヘッド15に隣接していなくても、していてもよい。)、第2光学センサ11Bが第2端13cに隣接していてもよい(ヘッド15に隣接していなくても、していてもよい。)。また、別の観点では、2つの光学センサ11の距離は、例えば、ヘッド15の長さの2倍以上、又は第1端13bから第2端13cまでの長さの1/2以上又は1/3以上とされてもよい。また、平面透視において、2つの光学センサ11は、スイッチ7からのy方向における距離が互いに異なっていてもよい。
光学センサ11のx方向(第1端13bから第2端13cへの方向に直交する方向)の位置は任意である。図示の例では、光学センサ11のx方向の位置は、ヘッド15のx方向の位置と同一とされている。また、別の観点では、光学センサ11は、筐体13の対向部13aのx方向の中央に位置している。ただし、少なくとも1つの光学センサ11のx方向の位置がヘッド15のx方向の位置及び/又は対向部13aのx方向の中央とずれていてもよい。また、図示の例では、平面透視において、光学センサ11のx方向の位置は、スイッチ7のx方向の位置と同一とされている。上記のように2つの光学センサ11のスイッチ7からのy方向における距離が互いに同等であることと合わせると、2つの光学センサ11は、スイッチ7(例えばその露出部分の図心)に対して180°回転対称の位置に配置されている。
光学センサ11の位置は、2つの光学センサ11同士を結ぶ線(不図示)の中点P1に着目して設定されてもよい。図示の例では、中点P1は、第1端13b側に偏って位置している。より詳細には、中点P1は、ヘッド15に重なっており、さらには、ヘッド15のy方向の中央に位置している。また、中点P1は、スイッチ7(その任意の位置、又は露出部分の図心)に重なっている。ただし、第2光学センサ11Bが第2端11cに隣接してもよい旨の上記の説明から理解されるように、図示の例とは異なり、中点P1は、第2端11c側に偏って位置していてもよい。また、中点P1のx方向の位置は任意である。図示の例では、中点P1は、ヘッド15のx方向中央、スイッチ7のx方向中央、及び筐体13の対向部13aのx方向中央に位置している。ただし、中点P1は、これらのx方向中央からずれていてもよい。
(加速度センサ及び角速度センサ)
加速度センサ19及びジャイロセンサ23(ジャイロスコープ)は、例えば、プリンタ3の位置及び/又は動きを検出することに寄与する。この検出結果は、適宜に利用されてよい。例えば、プリンタ3が被印刷面101aから持ち上げられると、光学センサ11によるプリンタ3の位置特定は困難になる。このとき、光学センサ11に代わって、加速度センサ19及びジャイロセンサ23の検出結果に基づいてプリンタ3の位置が特定されてもよい。このような慣性センサに基づく位置特定は、ロボット及びドローン等の種々の分野で公知であり、これが利用されてよい。また、例えば、加速度センサ19及び/又はジャイロセンサ23によって検出される検出値に基づく指標値が所定の閾値を超えたときに、プリンタ3が印刷を中断するようにしてもよい。
加速度センサ19が加速度を検出する軸、及びジャイロセンサ23が角速度を検出する軸も適宜に設定されてよい。例えば、プリンタ3の直交座標系XYZにおける位置を特定する目的であれば、加速度センサ19は、直交座標系xyzの3軸それぞれの加速度を検出可能なものとされ、かつジャイロセンサ23は、直交座標系xyzの3軸それぞれの回りの角速度を検出可能なものとされてよい。また、画像103の画質を保証できないz軸回りの回転を検出する用途であれば、x方向の加速度のみを検出可能な加速度センサ19を設けたり、及び/又はz軸回りの角速度を検出可能なジャイロセンサ23を設けたりしてもよい。
加速度センサ19及びジャイロセンサ23の構成は、公知のものも含め、適宜なものとされてよい。例えば、加速度センサ19の形式は、ピエゾ抵抗型、静電容量型、ガス温度分布型とされてよい。また、例えば、ジャイロセンサ23の形式は、圧電振動型のものとされてよい。3軸加速度センサは、1つの錘の3軸の加速度に応じた信号を出力するものであってもよいし、2軸加速度センサ又は1軸加速度センサが組み合わされて構成されてもよい。同様に、ジャイロセンサ23は、1軸ジャイロセンサが組み合わされて構成されてよい。
加速度センサ19は、筐体13内の任意の位置に配置されてよい。図示の例では、加速度センサ19は、第1端13bに偏って位置している。より詳細には、例えば、加速度センサ19の少なくとも一部は、ヘッド15及びスイッチ7に重なっている。また、例えば、加速度センサ19の中心は、ヘッド15の中心及びスイッチ7の中心(露出部分の図心)に位置している。もちろん、加速度センサ19の位置は、図示の例以外の種々の位置とされてよく、例えば、第2端13c側に偏った位置とされてもよい。
同様に、ジャイロセンサ23は、筐体13内の任意の位置に配置されてよい。図示の例では、ジャイロセンサ23は、第2端13cに偏って位置している。もちろん、ジャイロセンサ23の位置は、図示の例以外の種々の位置とされてよく、例えば、第1端13b側に偏った位置とされてもよい。
(ディスプレイ)
ディスプレイ9は、例えば、任意の画像を表示可能なものであり、液晶ディスプレイ又は有機EL(electro-luminescence)ディスプレイによって構成されている。ディスプレイ9が表示する内容は適宜なものとされてよい。例えば、既に言及したように、光学センサ11によって撮像された画像がディスプレイ9に表示されてよい。また、例えば、印刷の進行状況、印刷条件及び電池残量が表示されてよい。なお、ディスプレイ9は設けられなくてもよい。
(通信機器)
図1に示す通信機器5は、例えば、画像データをプリンタ3に送信可能な種々の機器とされてよい。図示の例では、通信機器5としてスマートデバイスが例示されている。スマートデバイスは、例えば、スマートフォン(図示の例)、タブレット又はノートパソコンである。通信機器5のハードウェア及び基本的なソフトウェア(例えばOS(Operating System))は、公知の種々のもの(別の観点では一般的なもの)と同様とされてよい。所定のアプリケーションを一般的な通信機器にインストールすることによって、プリントシステム1を構成する通信機器5を得ることができる。
通信機器5は、例えば、適宜に図示を省略するが、ユーザの操作を受け付ける入力装置、画像を表示する表示装置、プリンタ3と通信を行う通信部、及びこれらを制御する制御部を有している。入力装置の少なくとも一部は、表示装置と一体化されてタッチパネルを構成していてもよい(図示の例)。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、外部記憶装置等を含んでいる。CPUがROM及び外部記憶装置に記憶されている所定のプログラムを実行することによって制御部が構築される。
通信部は、例えば、少なくともプリンタ3と通信を行うことができる構成を有している。通信は、プリンタ3へ送信を行うことができるだけであってもよいし、プリンタ3と送受信を行うことができるものであってもよい。通信は、無線通信であってもよいし(図示の例)、有線通信であってもよい。無線通信としては、例えば、電波を用いるもの、赤外線を用いるものを挙げることができる。また、電波を用いるものとしては、例えば、Bluetooth(登録商標)及びWi-Fi(登録商標)のような近距離用のものを挙げることができる。
(被印刷物)
被印刷物101は、画像103を印刷可能な種々のものとされてよい。例えば、被印刷物101は、紙のように記録媒体として概念されるものであってもよいし、記録媒体として概念することが難しいものであってもよい。後者としては、例えば、衣類、履物、服飾雑貨(例えば鞄)、筆記用具、電子機器(例えばそのうちの筐体)、家具及び建築物(例えばそのうちの壁)を挙げることができる。別の観点では、プリンタ3による印刷の目的は、情報伝達に限定されず、例えば、記名又は装飾であってもよい。また、被印刷物101の材料としては、例えば、紙、布、木材、樹脂、金属及びガラスを挙げることができる。
被印刷面101aは、例えば、少なくとも印刷時において平面状とされる。ただし、ある程度の凹凸又は湾曲が被印刷面101aに存在しても、画像103を被印刷面101aに印刷することは可能である。また、上記の被印刷物101の例示からも理解されるように、被印刷物101の形状及び被印刷面101aの平面形状は任意である。被印刷面101aの面積は、プリンタ3の平面視における面積よりも大きくてもよいし(図示の例)、同等以下であってもよい。後者としては、例えば、被印刷面101aのx方向の長さがプリンタ3のx方向の長さよりも短い場合、及び/又は被印刷面101aのy方向の長さがプリンタ3のy方向の長さ(若しくは複数のノズル15bの配列長さ)よりも短い場合を挙げることができる。
(液体)
プリンタ3がインクジェット方式のものである場合において、プリンタ3が吐出する液体は、例えば、インクである。インクは、例えば、溶媒と着色剤とを含んでいる。溶媒としては、水及び有機溶媒を挙げることができる。着色剤としては、顔料及び染料を挙げることができる。ただし、液体は、インクに限定されない。例えば、液体は、塗料(ただしインクとの区別は必ずしも明確ではない)であってもよいし、無色で透光性を有するコーティング剤であってもよい。
色の語は、黒色及び白色を含む。着色の語は、黒色、シアン、マゼンダ及び/又はイエロー等の一般に有色として把握されている色を被印刷面に付与することだけでなく、白色を被印刷面に付与する(例えば白色のインクを被印刷面に塗布する)ことも含む。ただし、説明の便宜上、白色を被印刷面のうちの着色がなされない領域の色であるかのように表現することがある。
(画像)
画像103は、例えば、文字、図形、模様、絵、写真又はこれらの2つ以上の組み合わせを含んでよい。また、画像103の面積も適宜に設定されてよい。プリンタ3は、手動でのx方向への移動によってx方向に走査可能であるから、画像103のx方向の大きさが任意であることは明らかである。また、複数のノズル15bのうち、一部のみ使用することによって、y方向の長さが複数のノズル15bの配列長さよりも短い画像103を形成できることも明らかである。さらに、画像103は、y方向の長さが複数のノズル15bの配列長さよりも長くてもよい。この場合は、例えば、プリンタ3のx方向への移動と、プリンタ3のy方向へ移動とを交互に繰り返すことなどによって、y方向の長さが複数のノズル15bの配列長さよりも長い画像103を印刷することができる。
画像103(別の観点では印刷領域R103)は、画像103のデータ等の観点から、実際に着色がなされる領域(ドットが形成される領域)の周囲の領域を含んで概念されてよい。例えば、文字列「ABCD」を字下げしたかのように、着色可能な領域に空白を設けた画像のデータが用いられている場合において、当該空白も画像103の一部として概念されてよい。ただし、以下の説明では、便宜上、着色がなされる領域のみが画像103であるかのように表現することがある。
画像103のデータ形式は、例えば、公知の種々の形式のもの、又は公知の形式を応用したものとされてよい。また、データ形式は、通信機器5で画像103が準備されている段階、画像103のデータが通信機器5からプリンタ3へ送信される段階、及びプリンタ3において画像103のデータに基づいて印刷を行う段階等の各段階において適宜なデータ形式とされてよい。例えば、通信機器5で準備されている段階において、データ形式は、一般的に画像データといわれているデータの形式(例えば、GIF、JPEG、BMP及びPINGなど)であってもよいし、テキストデータであってもよい。また、画像データは、ラスターデータであってもよいし、ベクターデータであってもよい。
(プリンタの信号処理系の構成)
図3は、プリンタ3の信号処理系の構成を示すブロック図である。なお、ブロック同士を結ぶ矢印が示す方向は、主要な信号が伝達される方向を示しているが、実際には、矢印とは逆方向へ伝達される信号が存在してもよい。
プリンタ3は、既に述べたように、ヘッド15、スイッチ7、光学センサ11、加速度センサ19、ジャイロセンサ23及びディスプレイ9を有している。ここでは、スイッチ7は、ユーザの操作を受け付ける操作部25の少なくとも一部として示されている。また、プリンタ3は、少なくとも通信機器5との間で通信を行う通信部27と、ヘッド15を駆動するドライバ28と、プリンタ3の各部を制御する制御部21とを有している。
通信部27は、通信機器5と通信を行うものであるから、既述の通信機器5の通信部の説明は適宜に通信部27に援用されてよい。通信部27は、通信機器5から受信した画像103のデータを制御部21に入力する。なお、通信部27は、制御部21からの信号に基づいて通信機器5へ情報を送信してもよい。例えば、印刷の進行状況(例えば印刷の完了)を報知するための情報が送信されてよい。
操作部25(スイッチ7)は、ユーザの操作に応じた信号を制御部21に入力する。当該信号は、例えば、既に述べたように、印刷の開始を指示する信号である。
光学センサ11は、所定のフレームレート(サンプリング周期)で画像を撮像し、撮像した画像に基づく信号を制御部21に出力する。光学センサ11と制御部21との間の役割分担は適宜に設定されてよい。例えば、前回の撮像画像と今回の撮像画像とのずれに基づくxy座標上における移動量の算出は、光学センサ11によって行われてもよいし、制御部21によって行われてもよい。
加速度センサ19は、所定のサンプリング周期で加速度を検出し、検出した加速度に応じた信号を制御部21に出力する。ジャイロセンサ23は、所定のサンプリング周期で角速度を検出し、検出した角速度に応じた信号を制御部21に出力する。ディスプレイ9は、制御部21から入力された画像データに基づく画像を表示する。
ドライバ28は、制御部21から入力された制御信号に基づいてヘッド15を駆動するための駆動信号をヘッド15に入力する。例えば、ピエゾ式かつインクジェット方式のプリンタ3においては、駆動信号は、所定の波形で表される電圧を有しており、ノズル15b毎に設けられた圧電素子に対して個別に入力される。圧電素子は、駆動信号の波形に応じた変形を生じ、ヘッド15内の液体に圧力を付与する。ドライバ28は、通常のプリンタで用いられているものと同様とされてよく、また、ドライバ28と制御部21との間の役割分担は適宜に設定されてよい。
制御部21は、例えば、CPU21a(プロセッサの一例)及びメモリ21bを有している。メモリ21bは、例えば、ROM、RAM及び外部記憶装置等を含んでいる。CPUがメモリ21b(ROM及び外部記憶装置)に記憶されている所定のプログラムを実行することによって制御部21が構築される。
(フローチャート)
制御部21(CPU21a)等が実行する処理の手順の一例について、フローチャートを参照して説明する。なお、以下に示すフローチャートは、処理の概念の理解を容易にするように描かれており、必ずしも実際の処理とは合致しない。
(印刷処理)
図4は、制御部21(CPU21a)が実行する印刷処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、制御部21において、通信機器5からの画像データ(あるいはテキストデータ)の受信が完了したときに開始される。
ステップST20では、制御部21は、スイッチ7に対する操作がなされたか否か(印刷開始が指示されたか否か)判定する。肯定判定のときは、制御部21は、ステップST21に進む。これにより、ヘッド15に印刷を行わせる処理の実行が開始される。一方、否定判定のときは、制御部21は、ステップST20を繰り返す。
ステップST21では、制御部21は、プリンタ3の被印刷面101a上における現在の位置を基準位置として、画像103が印刷される印刷領域R103を決定する。より詳細には、例えば、現在(ステップST21の時点)の直交座標系xy(z)に一致する直交座標系XY(Z)を定義する。両者の原点位置は、適宜な位置関係とされてよい。そして、直交座標系XYに対して画像103の位置を決定する。具体的な処理としては、例えば、画像103のデータにおける画素毎の座標を直交座標系XY上の座標に変換したり、又は、そのような座標変換が可能な数値が特定及び記憶されたりしてよい。
なお、本実施形態の説明では、直交座標系xyzは、y軸が第1端13bから第2端13cへの方向及びノズル15bの配列方向等に平行になるように定義されている。また、上記のように、直交座標系XYZは、印刷開始時に直交座標系xyzに一致するように定義されている。これらの定義は、一例に過ぎない。プリンタ3に対する直交座標系xyzの位置関係、及び直交座標系xyzに対する印刷開始時における直交座標系XYZの位置関係をどのように定義しても、上記の定義に基づく演算結果と同様の演算結果を座標変換によって得ることができることは明らかである。ただし、本実施形態の説明は、便宜上、上記の定義に基づいて行われる。
制御部21は、上記のように直交座標系XYに対して画像103の位置を決定するに際しては、例えば、+Y側に画像103の上縁側が向くように決定する。一方、上記のように、現時点では、+Y側は+y側と同じである。これにより、既述のように、印刷開始時においては、画像103の上縁側は+y側に向けられる。
印刷領域R103は、例えば、平面視において、左端(又は左上)が現在(ステップST21の時点)のヘッド15の位置又は当該位置よりも若干右側(+x側)に位置するように設定されてよい。この場合は、例えば、図1で例示したように、プリンタ3を+x側に移動させることによって画像103を印刷することができる。ただし、後述の説明から理解されるように、印刷領域R103は、現在のプリンタ3の位置に対して任意の位置に設定されてよい。例えば、印刷領域R103は、現在のプリンタ3の位置に対して左側(-x側)に設定されてもよい。この場合は、例えば、プリンタ3を-x側に移動させることによって画像103を印刷することができる。また、例えば、印刷領域R103は、現在のプリンタ3の位置に印刷領域R103の中心が位置するように設定されたりしてもよい。この場合は、例えば、プリンタ3を往復移動させることによって画像103を印刷することができる。
ステップST22では、制御部21は、所定の時間T2が経過したか否か判定する。この時間T2は、以下の説明から理解されるように、ノズル15bからインクを吐出する吐出周期である。時間T2は、例えば、所定の上限速度以下でプリンタ3を移動させたときに所定のドット密度での印刷が可能になるように設定されてよい。時間T2は、例えば、製造者(又はユーザ)によって設定された一定の値である。制御部21は、否定判定のときは待機し(ステップST22を繰り返し)、肯定判定のときはステップST23に進む。
ステップST23では、制御部21は、光学センサ11の検出結果に基づいて、直交座標系XY上における各ノズル15bの位置(別の観点では座標)を特定する。上記のように、画像103は、ステップST21において直交座標系XY上における座標が与えられている。従って、ここで特定されるノズル15bの座標は、画像103のデータの画素毎の座標と比較可能なものである。
ステップST24では、制御部21は、直交座標系XYにおいて、画像103の座標(複数の画素の座標のうちの代表的な1以上の座標とされてよい。)と、複数のノズル15bの座標(複数のノズル15bの座標の代表的な1以上の座標とされてよい。)とを比較する。そして、制御部21は、画像103のうち複数のノズル15bの配列と重複する領域(必要に応じてその周囲の領域)のデータを画像103のデータから抽出する。この抽出されたデータに対応する画像を要素画像というものとする。
ステップST25では、制御部21は、上記の要素画像のデータに基づいて、複数のノズル15bのうち液滴を吐出するノズル15bを決定するとともに、液体の吐出量(別の観点では形成するドットの大きさ)を決定する。例えば、制御部21は、要素画像のデータの画素毎の座標と、各ノズル15bの座標とを比較して、着色される画素の座標と一致する(現実的には画素の座標から所定の範囲内に位置する)座標を有するノズル15bが存在するときは、そのノズル15bを、液滴を吐出するノズル15bとして特定する。また、制御部21は、液滴を吐出するノズル15bの座標と一致する座標を有する画素の明度等の情報に基づいて、そのノズル15bの吐出量を特定する。
ステップST26では、制御部21は、ステップST25で特定したノズル15b及び吐出量の情報を含む制御信号をドライバ28へ出力する。ドライバ28は、その制御信号で指定された吐出量に応じた波形を有する駆動信号を生成し、制御信号で指定されたノズル15bの駆動部(例えば圧電素子)に駆動信号を出力する。これにより、指定されたノズル15bから液滴が吐出される。このステップST26を含むステップST22~ST27が繰り返されることによって、プリンタ3の移動に伴って画像103が徐々に印刷されていく。
ステップST27では、制御部21は、印刷処理を終了する終了条件が満たされたか否か判定する。終了条件は、例えば、画像103の印刷が完了したことである。印刷の完了は、適宜に判断されてよい。例えば、上記のステップST25の判定結果を利用して、画像103のうちの、着色されるべき画素の全て(又は大部分)に対応する液滴の吐出がなされたか否かによって判定されてよい。また、終了条件は、他の条件とされてもよい。例えば、加速度センサ19及びジャイロセンサ23によって、プリンタ3が被印刷面101aから+Z方向へ離されたことを検出するようにし、当該検出がなされたときに終了条件が満たされたと判定してもよい。制御部21は、否定判定のときは、ステップST22に戻って印刷処理を継続し、肯定判定のときは印刷処理を終了する。
上記の処理の手順の一例では、制御部21は、着色される画素の座標と一致する座標のノズル15bを特定している。従って、プリンタ3は、シリアルプリンタのヘッドのように、予め定められた方向へ予め定められた速度で移動される必要は無く、任意の方向へ任意の速度で移動されてよい。
ステップST25においてノズル15bの座標と一致する座標を有すると判定された画像103の画素は、次回以降のステップST25では、判定対象から除外されてよい。これにより、例えば、プリンタ3が一度通過した領域を再度通過したとしても、同一の画素について重複して液滴が吐出される蓋然性が低減される。その結果、プリンタ3の移動経路の自由度が更に向上する。
(ノズル位置の特定)
以下、ステップST23のノズル位置の特定方法の一例について説明する。
図5は、以下で用いる記号の定義を示す模式図である。
線LN1及び線LN2は、第1光学センサ11Aと第2光学センサ11Bとを通過する直線である。そして、ここでは、サンプリング周期(T2と同じであってもよいし、T2よりも短くてもよい。)の間に、ヘッド15が線LN1で示される位置から線LN2で示される位置へ移動した状態を想定している。直交座標系XYZ及び直交座標系xyzは既に述べたとおりである。ここでは、直交座標系xyzは、線LN1のときのプリンタ3の姿勢を基準としたものが示されている。現実的には、線LN1と線LN2との差は微差であり、いずれの直交座標系xyzが以下の定義及び/又は演算で基準とされてもよい。
上記のように線LN1の位置から線LN2の位置へプリンタ3が移動するとき、第1光学センサ11Aに関して、x方向における移動量をdx1とし、y方向における移動量をdy1とする。第2光学センサ11Bに関して、x方向における移動量をdx2とし、y方向における移動量をdy2とする。ヘッド15に関して、X方向における移動量をdXとし、Yにおける移動量をdYとする。ここでは、便宜上、第1光学センサ11Aの位置をヘッド15の代表点としてdX及びdYを示しているが、代表点は任意の位置とされてよい。ヘッド15のz軸回りの回転量をdθとする。回転量dθは、直交座標系を平行移動させても同じであるから、ヘッド15の任意の位置の回転量であるとともに、Z軸回りの回転量でもある。ヘッド15のZ軸回りの位置を角度θで示す。図示の例では、Y軸に平行な方向においてθ=0とされているが、θ=0となる方向は任意に設定されてよい。
図6は、制御部21(CPU21a)がステップST23で実行するノズル位置特定処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、ステップST22の周期T2をサンプリング周期としてノズル15bの直交座標系XY上の位置を更新する態様を示している。ただし、周期T2よりも短い周期でノズル15bの位置が更新されても構わない。
ステップST31では、制御部21は、第1光学センサ11Aからの信号に基づいて今回の周期T2の間における移動量dx1及びdy1を取得する。同様に、制御部21は、第2光学センサ11Bからの信号に基づいて移動量dx2及びdy2を取得する。これらの処理は、マウスから移動量を取得する処理と同様とされてよい。
ステップST32では、制御部21は、ステップST31で取得した移動量に基づいて、今回の周期T2の間における回転量dθを算出する。具体的には、例えば、dx1-dx2を第1光学センサ11Aと第2光学センサ11Bとの距離で割った値の逆正接を回転量dθとして算出してよい。dx1に代えて、dx1及びdy1を隣辺とする直角三角形の斜辺の長さを用いるとともに、dx2に代えて、dx2及びdy2を隣辺とする直角三角形の斜辺の長さを用いてもよい。
ステップST33では、制御部21は、ステップST32で取得した回転量dθに基づいて、現在のプリンタ3のZ軸回りの位置である角度θを算出(更新)する。具体的には、例えば、前回算出した角度θにdθを加算する。
ステップST34では、制御部21は、ステップST31で取得した移動量dx及びdy(例えばdx1及びdy1)並びにステップST33で更新した角度θに基づいて、直交座標系XY上におけるプリンタ3の移動量dX及びdYを算出する。具体的には、例えば、角度θの三角関数を用いて、dxのX方向成分とdyのX方向成分とを算出し、これらを足し合わせてdXを算出する。同様に、角度θの三角関数を用いて、dxのY方向成分とdyのY方向成分とを算出し、これらを足し合わせてdYを算出する。
ステップST35では、制御部21は、ステップST34で取得した移動量dX及びdYに基づいて、現在のプリンタ3のXY座標を算出(更新)する。具体的には、例えば、前回算出したX座標にdXを加算し、前回算出したY座標にdYを加算する。
ステップST36では、制御部21は、ステップST35で更新したプリンタ3のXY座標に基づいて、複数のノズル15bそれぞれのXY座標を算出する。例えば、制御部21は、各ノズル15bと、ステップST35でXY座標が算出されるプリンタ3の代表点(例えば第1光学センサ11A)との位置関係を予め記憶しており、この位置関係に基づいて、ステップST35で得られたXY座標をノズル15bのXY座標に座標変換する。
なお、ノズル15bの位置を特定してから、液滴が吐出されて被印刷面101aに着弾するまでには時間遅れが生じる。このような時間遅れを考慮して、角速度及び/又は速度に基づいて、ノズル15bの位置の補正(予測)がなされてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、プリンタ3は、被印刷物101の表面(被印刷面101a)に沿って人の手で移動されている状態で被印刷面101aに画像103を印刷する手動走査式のものである。プリンタ3は、筐体13と、操作部25(スイッチ7)と、ヘッド15と、第1光学センサ11A及び第2光学センサ11Bと、プロセッサ(CPU21a)とを有している。筐体13は、印刷時に被印刷面101aに対向する対向部13aと、当該対向部13aとは反対側の背面部13dと、対向部13aの平面視において互いに反対側に位置する第1端13b及び第2端13cとを有している。また、筐体13は、対向部13aの平面視において第1端13bから第2端13cへの第1方向(長手方向、y方向)における長さが長手方向に直交する第2方向(短手方向、x方向)における長さよりも長い形状を有している。操作部25は、筐体13の背面部13dから露出しており、操作を受け付ける。ヘッド15は、対向部13aから露出している。第1光学センサ11A及び第2光学センサ11Bは、対向部13aから露出している。CPU21aは、スイッチ7が操作を受け付けたことを条件として(ステップST20の肯定判定がなされたときに)、ヘッド15に印刷を行わせる処理(ステップST21~ST27)の実行を開始する。対向部13aの平面透視において、第1光学センサ11Aはスイッチ7に対して第1端13b側に位置している。第2光学センサ11Bはスイッチ7に対して第2端13c側に位置している。
印刷開始のためにスイッチ7に対して操作がなされると、プリンタ3は、スイッチ7の位置において押さえ付けられることになる。その結果、例えば、印刷開始時等において、スイッチ7を通りz軸に平行な軸回りにプリンタ3が回転する可能性が生じる。そのような回転が生じたとき、第1光学センサ11A及び第2光学センサ11Bは、スイッチ7(回転中心)に対して互いに逆側に位置しているから、xy平面における互いに逆向きの変位を検出できる。各光学センサ11は、変位が比較的小さいとき(例えば変位が公差に近いとき)でも変位の正負の検出精度は高い。従って、例えば、プリンタ3の回転が許容されていない印刷モード(例えば、後述する第5実施形態参照)において、2つの光学センサ11において互いに正負が逆の変位が検出されたか否かによって回転ずれの発生を判定することによって、変位が小さいときでも回転ずれを検出できる。すなわち、プリンタ3に回転が生じたことを検出する精度が向上する。なお、このような回転ずれを検出する目的でのみ光学センサ11が設けられ、光学センサ11の検出結果に基づく回転量の算出が行われなくても構わない。2つの光学センサ11において互いに正負が逆の変位が検出されたときの両者の変位が所定の閾値を超えたか否かを判定してもよい。すなわち、回転量を算出せずに、他の指標によって、回転ずれの程度を特定してもよい。また、本実施形態では、2つの光学センサ11は、筐体13の長手方向においてスイッチ7の両側に位置しているから、例えば、両者の距離を確保しやすい。両者の距離の確保によって、回転量の検出精度が向上する。また、例えば、本実施形態のように、スイッチ7がy方向の一方に偏っているような態様において、回転中心であるスイッチ7と、2つの光学センサ11の一方との距離とを確保することが容易である(後述する第2実施形態参照)。光学センサ11は、回転中心に近い場合よりも、回転中心から離れた場合の方が、同一角度に対する回転中心回りの移動量(弧の長さ)が大きい。逆に言えば、光学センサ11が回転中心から離れるほど、光学センサ11の変位の誤差に対応する角度は小さくなる。その結果、回転量の検出精度が向上する。
また、本実施形態では、対向部13aの平面透視において、操作部(スイッチ7の任意の位置)がヘッド15の図心に重なっている。
この場合、例えば、平面透視においてヘッド15がスイッチ7から離れている態様(そのような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、スイッチ7を中心にプリンタ3が回転したときのヘッド15の移動量が低減される。ひいては、ユーザが意図していないヘッド15の移動が生じているときに画像が印刷される蓋然性が低減される。その結果、プリンタ3の取扱い性が向上したり、画質が向上したりする。また、例えば、上記のスイッチ7回りの回転の検出精度の向上は、ヘッド15回りの回転の検出精度の向上を伴うことになる。その結果、例えば、画質に対する影響が大きいヘッド15回りの回転を高精度に検出し、回転の発生をユーザに報知することなどによって、画質の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、ヘッド15の、筐体13の長手方向(y方向)における長さは、ヘッド15の、筐体13の短手方向(x方向)における長さよりも長い。
この場合、例えば、筐体13に対してヘッド15を大きくしやすい。別の観点では、筐体13を小型化することが容易である。ひいては、小型の筐体13によって比較的大きな画像を印刷することが容易化される。ヘッド15を大きくすると、意図されていない回転が生じたときの回転中心からヘッド15のいずれかの端部までの距離も長くなる。ひいては、ヘッド15の端部において意図されていない移動量が大きくなる。しかし、本実施形態では、回転の検出精度が向上していることから、そのような意図されていない移動に対する対処が容易である。
また、本実施形態では、ヘッド15は、第1端13bから第2端13cへの方向(筐体13の長手方向、y方向)を主走査方向とし、筐体13の短手方向(x方向)を副走査方向としている。第1光学センサ11Aはヘッド15よりも第1端13b側に位置している。第2光学センサ11Bはヘッド15よりも第2端13c側に位置している。
この場合、例えば、筐体13に対してヘッド15の主走査方向の長さを大きくしやすい。ひいては、小型の筐体13によって比較的大きな画像を印刷することが容易化される。また、2つの光学センサ11がスイッチ7の両側に位置している場合にスイッチ7回りの回転の検出精度が向上する理由と同様の理由により、ヘッド15回りの回転の検出精度が向上する。ヘッド15が回転せずに平行移動している場合は、被印刷物101に形成されたドットの位置誤差は、複数のノズル15b間において一様となりやすく、ひいては、画質の低下が相対的に小さい。一方、意図しない回転が生じた場合においては、被印刷物101に形成されたドットの位置誤差は、複数のノズル15b間においてばらつきやすく、画質の低下が相対的に大きい。従って、例えば、ヘッド15の回転の検出精度が向上することによって、画質の低下が生じやすい状況を高精度に検知して、ユーザに報知することなどができる。また、例えば、第1光学センサ11A及び第2光学センサ11Bの双方がヘッド15よりも第1端13b側又は第2端13c側に位置している態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、2つの光学センサ11の全体として光学センサ11をヘッド15に近づけつつ、2つの光学センサ11の距離を長くすることが容易である。光学センサ11をヘッド15に近づけることによって、例えば、ヘッド15の実際の移動量と、光学センサ11によって検出される移動量とを近づけることができる。その結果、例えば、光学センサ11の検出した移動量を座標変換することなどによってノズル15bの位置を特定したときに、座標変換によって誤差が拡大される蓋然性を低減することができる。また、例えば、被印刷物101が印刷中に変形してヘッド15付近と第2端13c付近とで、プリンタ3と被印刷物101との相対的な移動量及び/又は回転量が異なってしまった場合において、誤差が大きくなる蓋然性を低減できる。また、2つの光学センサ11の距離を長くすることにより、同一の回転量dθに対する移動量dx1とdx2との差を大きくし、各光学センサ11の誤差が上記差に占める割合を低減できる。ひいては、上記差に基づいて算出される回転量dθの精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、スイッチ7及びヘッド15の少なくとも一方は、第1端13bとの距離が第2端15cとの距離よりも短い。
スイッチ7が第1端13bに近い場合においては、例えば、スイッチ7に対して第2端13b側に位置している第2光学センサ11Bをスイッチ7から離すことが容易化される。その結果、例えば、上述した回転中心から光学センサ11までの距離を確保することによる効果が奏される。同様に、ヘッド15が第1端13bに近い場合においては、ヘッド15が回転中心となる場合において、回転中心から第2光学センサ11Bまでの距離を確保することが容易化される。
ユーザにとって、プリンタ3の第1端13b側の部分は、第2端13c側の部分に比較して、被印刷面101a上における位置調整が容易である。その理由としては、例えば、以下のものが挙げられる。第1端13b側の部分を位置合わせする場合においては、第2端13c側の部分を位置合わせする場合に比較して、位置合わせに対するユーザの指の寄与度が高くなる(手の平の寄与度が低くなる)。一方、体性感覚の観点からすれば、ユーザにとって、手の指先側の動きを微調整する方が手首側の動きを微調整するよりも容易である。また、指先側をx方向に動かすときは、手首を中心とする短い半径の回転を利用可能であるが、手首側をx方向に動かすときは、肘を中心とする長い半径の回転を利用することになる。このようなことから、第1端13b側の部分は位置調整が容易である。
そして、本実施形態のように、ヘッド15を指先側(指先で操作されるスイッチ7が配置される側)に偏って位置させることにより、例えば、印刷開始直前において、任意の位置(例えば被印刷面101a上の目印等)に対してヘッド15を位置合わせすることが容易化される。すなわち、任意の位置に画像103を印刷することが容易化される。すなわち、手動式走査を行うときのプリンタ3の操作性が向上する。
図4を参照して説明した態様では、ノズル15bの位置と画像103の画素の印刷予定位置との比較を継続的に行ってインクを吐出するノズル15bを決定しており、プリンタ3を任意の方向に任意の速度で動かして画像103を印刷可能である。しかし、現実には、プリンタ3の移動に急激な変化及び/又は不規則な変化が含まれると、制御遅れ等に起因して、画像103に歪が生じるなどして画質が低下する。しかし、上記のように位置調整が容易な第1端13b側にヘッド15が位置していれば、そのような画質の低下を低減することも容易化される。
一方で、プリンタ3を手動で走査するとき、手首、肘及び/又は肩を中心とする回転は少なからず生じる。このとき、第1端13bは、第2端13cよりも回転中心から遠いから、ヘッド15を第1端13b側に偏らせたことによって、そうでない態様に比較して、回転が画質に及ぼす影響が大きくなる可能性がある。しかし、本実施形態では、2つの光学センサ11を設けることによって、プリンタ3のz軸回り(被印刷面101aの法線回り)の回転量を検出可能としている。その結果、例えば、この回転量に基づいてヘッド15を制御することによって、回転の影響を低減することができる。このようなヘッド15の制御としては、例えば、図4~図6を参照して説明した回転を考慮したノズル15bの位置の特定の他、回転量若しくは回転速度が閾値を超えたときに印刷を中断する制御を挙げることができる。ヘッド15の制御に代えて、回転量若しくは回転速度又はこれらが閾値を超えたことをユーザに報知する処理がなされてもよい。
また、本実施形態では、プリンタ3は、筐体13において第1端13b側に偏って位置している加速度センサ19を更に有している。
この場合、例えば、プリンタ3が被印刷面101aから持ち上げられたときのプリンタ3の位置を特定したり、及び/又は想定外の加速度(及び/又は速度)が生じたことを特定したりすることができる。加速度センサ19がヘッド15と同様に第1端13b側に偏って位置していることから、ヘッド15の位置及び加速度等の検出精度を向上させることができる。また、x方向の加速度等によって、z軸回りに想定外の加速度が生じたことを特定することも可能である。このとき、加速度センサ19が回転中心(例えば手首)から離れていることによって感度を向上させることができる。ただし、逆に、z軸回りの回転が加速度の検出に及ぼす影響を低減する目的から、加速度センサ19を手首側に位置させてもよい。加速度センサ19の使用目的、プリンタ3の機能、及び/又は想定される使用態様等に応じて加速度センサ19の位置は適宜に設定されてよい。
また、本実施形態では、プリンタ3は、筐体13において第2端13c側に偏って位置しているジャイロセンサ23を更に有している。
ジャイロセンサ23は、その特性上、回転軸からの距離が検出精度に及ぼす影響が小さいことが多い。従って、第1端13b側にヘッド15が位置しているプリンタ3においては、ジャイロセンサ23を第2端13c側に位置させることによって、例えば、筐体13内の空間効率を向上させやすい。
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るプリンタ203の下面を示す模式的な平面図であり、図2(a)に相当している。
プリンタ203は、基本的に、光学センサ11のy方向における位置のみが第1実施形態と相違している。具体的には、プリンタ203では、第2光学センサ11Bの位置が第1実地形態における第2光学センサ11Bの位置よりも第2端13c側となっている。より詳細には、図示の例では、第2光学センサ11Bは、第2端13cに隣接している。隣接の意味は、第1実施形態で述べたとおりである。2つの光学センサ11の距離は、例えば、ヘッド15の長さの1.5倍以上若しくは2倍以上、又は第1端13bから第2端13cまでの長さの1/3以上又は1/2以上とされてよい。
光学センサ11のy方向における具体的な位置は、図示の例以外にも種々可能である。例えば、第1光学センサ11Aは、ヘッド15に隣接していなくてもよい。また、第1光学センサ11Aがヘッド15に隣接している場合に、又は隣接していない場合に、第2光学センサ11Bは、第2端13cに隣接していなくてもよい。また、別の観点では、2つの光学センサ11の距離は、例えば、ヘッド15の長さの2倍以下、又は1.5倍以下とされてもよいし、第1端13bから第2端13cまでの長さの1/2以下又は1/3以以下とされてもよい。
別の観点では、本実施形態では、第1光学センサ11Aとヘッド15との距離と、第2光学センサ11Bとヘッド15との距離が異なる。より詳細には、図示の例では、第1光学センサ11Aとヘッド15との距離が、第2光学センサ11Bとヘッド15との距離よりも短い。両者の差は、適宜に設定されてよい。例えば、ヘッド15と第2光学センサ11Bの距離は、ヘッド15と第1光学センサ11Aの距離の2倍以上、5倍以上又は10倍以上とされてよい。光学センサ11のヘッド15に対する位置関係について述べたが、上記の説明は、ヘッド15をスイッチ7に置き換えて、スイッチ7に援用されてよい。
以上の実施形態においても、第1光学センサ11Aは、スイッチ7に対して第1端13b側に位置しており、第2光学センサ11Bは、スイッチ7に対して第2端13c側に位置している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、回転の検出精度が向上する。
<変形例>
図8は、変形例に係るプリンタ203-1の下面を示す模式的な平面図であり、図2(a)に相当している。
ここでは、第2実施形態のプリンタ203が変形された場合を例にとって説明する。ただし、図示の変形例は、他の実施形態に適用されても構わない。変形例に係るプリンタ203-1は、2つの光学センサ11の並び方向(両者を結ぶ線LN5を参照)が、第1端13bから第2端13cへの方向(y方向)に対して傾斜している点のみが第2実施形態のプリンタ203と相違する。
線LN5のy方向に対する傾斜角は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1光学センサ11Aは、対向部13aのx方向中央に位置し、第2光学センサ11Bがx方向中央からずれていることによって、線LN5はy方向に対して傾斜している。ただし、特に図示しないが、例えば、上記とは逆に、第1光学センサ11Aがx方向中央からずれることによって線LN5が傾斜していてもよい。また、例えば、2つの光学センサ11が対向部13aのx方向中央に対してx方向の互いに逆側(同一側も不可能ではない)にずれることによって、線LN5が傾斜していてもよい。
対向部13aのx方向中央に対してずれている光学センサ11の位置は、適宜に設定されてよい。例えば、x方向中央に対してずれている光学センサ11は、対向部13aの+x側又は-x側の縁部に対して隣接していてもよい。2つの光学センサ11がx方向の互いに逆側の縁部に隣接していてもよい。ここでいう隣接は、例えば、第1実施形態の説明で述べたヘッド15との隣接と同様とされてよい。
以上のとおり、プリンタ203-1では、第1光学センサ11A及び第2光学センサ11Bの並び方向は、第1端13bから第2端13cへの方向に対して傾斜している。
この場合、2つの光学センサ11の距離を長くすることが容易であることが多い。例えば、本実施形態のように平面視において概略矩形状の形状においては、長辺の長さよりも対角線の長さの方が長いから、2つの光学センサ11の距離を長くすることが容易である。既述のように、2つの光学センサ11の距離を長くすると、例えば、同一の回転量dθに対する2つの光学センサ11の移動量の差が大きくなり、回転量dθの検出精度が向上する。別の観点では、2つの光学センサ11を確保しつつ、プリンタ3をy方向において小型化することが容易化される。また、光学センサ11の配置の自由度が向上する。
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係るプリンタ303の下面を示す模式的な平面図であり、図2(a)に相当している。
プリンタ303は、例えば、3つの光学センサ11を有している点が第1実施形態と相違する。3つの光学センサ11の位置は、適宜に設定されてよい。図示の例では、第1光学センサ11Aは、第1実施形態の第1光学センサ11Aと同一の位置に設けられている。第2光学センサ11Bは、第1実施形態の第2光学センサ11Bと同一の位置に設けられている。第3光学センサ11Cは、第2実施形態の第2光学センサ11Bと同一の位置に設けられている。従って、第3実施形態は、別の観点では、第1実施形態と第2実施形態との組み合わせである。各々の光学センサ11の位置については、第1及び第2実施形態における光学センサ11の説明が援用されてよい。
ただし、3つの光学センサ11の配置は、第1及び第2実施形態の組み合わせ以外の配置とされてもよい。例えば、3つの光学センサ11の全てがヘッド15よりも第2端13c側に位置してもよい。また、3つの光学センサ11のうち2つは、x方向において互いに異なる位置に設けられるとともに、y方向において互いに同一の位置に設けられてもよい。
以上のように3つの光学センサ11を設けると、例えば、第1実施形態で述べた効果と、第2実施形態で述べた効果との双方を奏することが可能になる。また、例えば、3つの光学センサ11のうち一つにおいて何らかの要因によって移動量の検出精度が低下したときに、他の2つによって移動量に基づく回転量dθを特定することができる。
<第4実施形態>
図10(a)は、第4実施形態に係るプリンタ403の外観を示す斜視図である。図10(b)は、プリンタ403の模式的な平面図である。
プリンタ403は、指先が置かれる窪み13rが設けられている点が他の実施形態と相違する。その他の構成は、第1~第3実施形態のいずれの構成とされてよい。本実施形態の筐体13は、第1~第3実施形態の筐体13とは形状が異なるが、便宜上、筐体13と同一の符号を用いる。窪み13rの位置、形状及び大きさは適宜に設定されてよい。
図示の例では、窪み13rは、+x側に面する側面部13eと、-x側に面する側面部13eとに設けられている。2つの窪み13rは、yz平面に平行な不図示の対称面に対して対称の形状とされている。従って、ユーザは、右手で筐体13を掴むときと、左手で筐体13を掴むときとで、同様に、指先を窪み13rに置くことができる。ただし、図示の例とは異なり、2つの窪み13rは、互いに異なる形状とされてもよいし、2つの側面部13eのうち、一方のみに窪み13rが設けられてもよい。
また、図示の例では、窪み13rは、x方向に見て(側面視において)、第1端13bに対して第2端13c側に離れている。別の観点では、側面部13eは、第1領域部13eaと、第1領域部13eaに対して第2端13c側に位置しているとともに第1領域部13eaに対して筐体13の内側に凹む窪み13rを有している。図示の例では、第1領域部13ea(別の観点では側面部13eのうち窪み13r以外の全領域)は、筐体13の幅(x方向の長さ)が最大となる部分を構成する平面状である。ただし、第1領域部13eaは、側面部13eの窪み13r以外のいずれかの領域に対して窪んでいてもよい。また、第1端13bから第2端13cに近づくほど徐々に深くなる窪みが構成され、そのうちの第1端13b側の一部が第1領域部13eaとして捉えられ、第2端13c側の他部が窪み13rと捉えられてもよい。
また、図示の例では、窪み13rは、x方向に見て(側面視において)、背面部13dに対して対向部13a側に離れている。別の観点では、側面部13eは、第2領域部13ebと、第2領域部13ebに対して対向部13a側に位置しているとともに第2領域部13ebに対して筐体13の内側に凹む窪み13rを有している。図示の例では、第2領域部13ebは、筐体13の幅が最大となる部分を構成する平面状である。ただし、第2領域部13ebは、側面部13eの窪み13r以外のいずれかの領域に対して窪んでいてもよい。また、背面部13dから対向部13aに近づくほど徐々に深くなる窪みが構成され、そのうちの背面部13d側の一部が第2領域部13ebとして捉えられ、対向部13a側の他部が窪み13rと捉えられてもよい。
また、図示の例では、窪み13rは、対向部13a及び第2端13cからも離れている。図示の例とは異なり、窪み13rは、対向部13aに到達していても構わないし、第2端13cに到達していても構わない。
窪み13rと、側面部13eの他の領域とを明確に区別できる態様を考える。このような態様としては、例えば、図示の例のように、第1領域部13ea及び/又は第2領域部13ebが平面状の態様が挙げられる。また、例えば、側面部13eが背面部13d付近において膨らんでいる場合においては、その最も膨らんでいる位置までを第2領域部13ebとし、その下方の領域を窪み13rとして特定できる。このような態様において、窪み13rは、例えば、対向部13a側及び背面部13b側のうち対向部13a側に偏って位置してよい。
上記の偏りの程度は適宜に設定されてよい。例えば、z方向における対向部13aと背面部13dとの中央の位置を通り、y方向に平行な基準線CLを考える。なお、背面部13dが上方へ膨らむ曲面状である場合においては、背面部13dのz方向の位置としては、例えば、最も+z側の位置又は平均位置が参照されてよい。窪み13rの全体、又は側面部13eを平面視したときの窪み13rの図心G1は、基準線CLよりも対向部13a側に位置してよい。上記では筐体13の形状を基準にしたが、窪み13rの全体、又は図心G1は、プリンタ403の重心(質量の概念を含む通常の重心)に対して対向部13a側に位置してもよい。
窪み13rのy方向の位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、窪み13rは、第2端13c側に偏って位置している。すなわち、x方向に見て(側面視において)、窪み13rは、第2端13cとの距離が第1端13bとの距離よりも短い。窪み13rが第1端13bよりも第2端13cに近い態様は、窪み13rと第2端13cとの距離が0である態様を含むものとする。なお、図示の例とは異なり、窪み13rは、第2端13cとの距離が第1端13bとの距離よりも長くても構わない。また、窪み13rのy方向における配置範囲は、スイッチ7及び/又はヘッド15等のy方向における配置範囲と重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
窪み13rは、少なくとも1本の指の先端側部分(例えば指の腹)の一部を収容する大きさを有している。例えば、側面部13eの平面視において、窪み13rの面積は、2cm2以上又は10cm2以上である。また、窪み13rの深さは、特に限定されないが、例えば、第1領域部13ea又は第2領域部13ebに対して、最も深いところで1mm以上、2mm以上、5mm以上又は1cm以上である。
図示の例では、窪み13rは、2本以上の指を共に受け入れ可能な形状及び大きさとされている。このような態様において、各指に係合する仕切が窪み13r内に設けられてもよい。また、図示の例とは異なり、1本の指に対応して1つの窪み13rが設けられてもよい。窪み13rの形状は、内面が曲面状となるものであってもよいし、内面が複数の平面で構成されるものであってもよい。
以上のとおり、本実施形態では、筐体13の、短手方向(x方向)に面する側面部13eは、指先が置かれる窪み13rを有している。窪み13rは、側面部13eのうち当該窪み13rに対して第1端13b側に位置する第1領域部13eaに対して筐体13の内側に窪んでいる。また、窪み13rは、側面部13eのうち当該窪み13rに対して背面部13d側に位置する第2領域部13ebに対して窪んでいる。
この場合、例えば、筐体13を掴むことが容易である。また、窪み13rは、第1端13b側の第1領域部13ebに対して窪んでいるから、別の観点では、プリンタ403は、第1端13b側においては幅が確保されていることになる。従って、スイッチ7、ヘッド15、光学センサ11及び/又はディスプレイ9等の種々の構成要素を第1端13b側に配置することが容易化されている。
また、本実施形態では、x方向に見て、窪み13rの図心G1は、対向部13aと背面部13dとの中央の位置(基準線CL)よりも対向部13a側に位置している。
この場合、例えば、プリンタ403をxy平面に沿って移動させるときにプリンタ403に加えられる力は、基準線CLよりも下方に付与されやすい。その結果、例えば、プリンタ403が倒れるような向きのプリンタ403の傾斜が生じる蓋然性が低減される。
また、本実施形態では、x方向に見て、窪み13rは、第2端13cとの距離が第1端13bとの距離よりも短い。
この場合、例えば、第1端13b側にプリンタ403の体積を第1端13b側において確保することが容易である。ひいては、例えば、上記のように、スイッチ7及び/又はヘッド15等を第1端13b側に配置することが容易化される効果が向上する。
<第5実施形態>
図11(a)及び図11(b)は、第5実施形態に係るプリンタ503(ヘッド15のみを示す)の動作を説明するための模式図である。
第1実施形態では、プリンタ3は、印刷開始後に任意の方向へ移動(走査)されることが意図された。本実施形態では、例えば、プリンタ503は、印刷開始後にX方向にのみ移動されることが意図されている。換言すれば、プリンタ503は、一定の幅(Y方向の長さ、長さL1)でX方向に広がる印刷領域R103に印刷を行うプリンタとして構成されている。
これまでの実施形態の説明と同様に言えば、Y方向は、印刷開始時点における主走査方向(y方向)であり、X方向は、印刷開始時点における副走査方向(x方向)である(ステップST21参照)。本実施形態に係るプリンタ503は、印刷開始時の向き(z軸回りの回転位置)のままx方向に移動させることが想定されている。換言すれば、印刷中において相対座標系xyzと絶対座標系XYZとの位置関係が維持されることが意図されている。従って、以下の説明では、主走査方向及び副走査方向は、Y方向及びX方向を指すことがある。
このようなプリンタ503において、制御部21の処理は、適宜なものとされてよい。例えば、本実施形態における制御は、第1実施形態の制御とは異なり、ヘッドに対して記録媒体(例えば紙)を副走査方向に搬送する搬送機構を有する自動走査式のプリンタ(通常のプリンタ)における制御と同様とされたり、当該制御の応用とされたりしてよい。
具体的には、制御部21は、画像103の一部である、Y方向に延びるライン状の画像の印刷(Y方向に1列以上で配列されている複数のドットの形成)が行われるように複数のノズル15bからの液滴の吐出を制御する。また、制御部21は、このライン状の画像の印刷が、-X側から+X側へ順次行われるようにヘッド15を制御する。第1実施形態とは異なり、ライン状の画像が印刷される順番が前後することはない。
ライン状の画像に対応する液滴の吐出タイミングは、例えば、光学センサ11によって特定される速度又は位置に基づいて決定されてよい。例えば、制御部21は、所定の吐出周期が経過するごとに1つのライン状の画像の印刷が行われるようにヘッド15を制御する。そして、制御部21は、プリンタ503の移動速度が速いほど上記の吐出周期を短くする。なお、このような吐出周期を短くする機能は、自動走査式のプリンタのヘッドも有していることがあり、この機能がプリンタ503に適用されてよい。また、例えば、上記とは異なり、制御部21は、光学センサ11によって特定されるヘッド15の位置が、次のライン状の画像が印刷されるべき位置に到達したか否かを判定してもよい。そして、肯定判定のときは、制御部21は、上記次のライン状の画像の印刷が行われるようにヘッド15を制御する。
上記のようなプリンタ503においては、プリンタ503をX方向に走査して印刷しているときに、プリンタ503がY方向に移動すると、画像が変形する。例えば、図11(a)では、点線で示されているように、X方向に平行に「A」「B」「C」の文字が順次印刷されることが意図されている。しかし、+X方向への走査中にプリンタ503が-Y方向へずれると、「A」に対して「B」が-Y側へずれたり、「B」に対して「C」が-Y側へずれたりする。
本実施形態のプリンタ503は、上記の画像の変形を低減するように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
プリンタ503は、例えば、第1実施形態と同様に、y方向に配列されている複数のノズル15bを有している。従って、プリンタ503は、ヘッド15の構造的には、複数のノズル15bの配列長さで印刷する(印刷領域R103のY方向の長さL1を複数のノズル15bの配列長さと同じにする)ことが可能である。しかし、プリンタ503の制御部21は、複数のノズル15bの配列長さより短い長さL1を印刷領域R103のY方向の長さとして設定する。
換言すれば、プリンタ503の制御部21は、長さL1をY方向の長さとする画像103の画像データを受け付け、又は生成する。具体的には、例えば、以下のとおりである。
通信機器5は、ユーザの入力操作に応じて画像データを生成する。例えば、通信機器5は、テキストの入力を受け付けて、当該テキストを含む画像のデータを生成する。このとき、画像のY方向の長さは長さL1とされる。そして、通信機器5は、その画像データをプリンタ503に送信する。プリンタ503は、そのような長さL1をY方向の長さとする画像のデータのみを印刷する。それ以外の画像のデータを受信したときは、例えば、プリンタ503は、エラーが発生したものとして処理を行い、印刷を行わない。
上記では、通信機器5が長さL1をY方向の長さとする画像データを生成したが、プリンタ503が長さL1をY方向の長さとする画像データを生成してもよい。例えば、通信機器5は、テキストデータをプリンタ503に送信する。そして、プリンタ503は、受信したテキストを含み、長さL1をY方向の長さとする画像のデータを生成する。
また、例えば、プリンタ503は、画像のデータを受信したときに、その画像のY方向の長さが長さL1となるように画像データを加工してもよい。具体的には、例えば、プリンタ503は、受信したデータの画像の縮尺を変えた画像のデータを生成してよい。また、例えば、受信したデータの画像のY方向の長さが長さL1よりも長いときは、プリンタ503は、画像のうちのY方向の一部を削除した画像のデータを生成してもよい。また、例えば、受信したデータの画像のY方向の長さが長さL1よりも短いときは、プリンタ503は、画像に対して+Y側及び/又は-Y側に余白を追加した画像のデータを生成してもよい。
以上のプリンタ503の制御部21の動作は、いずれも、制御部21が長さL1を印刷領域R103のY方向の長さとして設定する動作として捉えられてよい。
また、プリンタ503の制御部21は、ヘッド15に対して、y方向の長さが長さL1である使用範囲H1を設定する。そして、制御部21は、例えば、使用範囲H1内に位置するノズル15bを対象として、上述したライン状の画像を印刷するための制御を実行する。別の観点では、複数のノズル15bの配列長さにおいて、使用範囲H1の外側は、不使用範囲H2とされ、不使用範囲H2に含まれるノズル15bから液滴を吐出するための制御は行われない。これにより、Y方向の長さとして長さL1を有する印刷領域R103に対する印刷が可能になる。
図11(a)に示すように、印刷開始時において、使用範囲H1は、複数のノズル15bの配列長さに対して初期位置に設定される(初期設定される。)。初期位置は適宜な位置とされてよい。例えば、初期位置は、使用範囲H1が複数のノズル15bの配列長さの中央に位置するように設定されてよい。
次に、図11(b)に示すように、プリンタ503が+X方向に移動されることによって印刷が進行する。このとき、図示の例のように、プリンタ503がY方向にずれたとする。この場合、プリンタ503の制御部21は、使用範囲H1をそのずれ量に応じて再設定し、使用範囲H1と印刷領域R103とのY方向のずれを縮小する。これにより、画像103の変形が低減される。
図12は、プリンタ503の制御部21が実行する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、図4の処理と同様に、制御部21において、通信機器5からの画像データ(あるいはテキストデータ)の受信が完了したときに開始される。
ステップST41では、制御部21は、図11(a)を参照して説明したように、使用範囲H1を初期位置に設定する。その具体的な処理は、例えば、外部記憶装置に記憶されている初期位置を読み出してRAMに保持するものであってよい。使用範囲H1を示す情報は、例えば、吐出面15aにおける使用範囲H1の+y側及び-y側の端部の座標の情報であってもよいし、使用範囲H1に含まれるノズル15bを特定する情報(例えば識別番号又は座標)であってもよい。ステップST41は、通信機器5からデータを受信する前に行われても構わない。
ステップST42は、図4のステップST20と同様の処理である。すなわち、制御部21は、スイッチ7に対する印刷開始を指示する操作を待ち、操作がなされたと判定したときは、次のステップに進む。なお、ステップST41及びST42の順番は、図示の例とは逆であってもよい。
ステップST43は、図4のステップST21と同様の処理である。すなわち、制御部21は、印刷開始の指示がなされたときのプリンタ503の直交座標系XYZにおける位置を基準位置として、印刷領域R103を直交座標系XYZに対して設定する。
ステップST44では、制御部21は、印刷のための処理を開始する。当該処理は、具体的には、既述のように、画像103の一部である、Y方向に延びるライン状の画像を-X側のものから順次印刷する処理である。
ここで開始される印刷に用いられるノズル15bは、使用範囲H1に含まれるもののみである。例えば、制御部21は、Y方向に長さL1を有するライン状の画像のデータに基づいて、使用範囲H1内の2以上のノズル15bそれぞれについて、ドットの形成の要否、及びドットを形成する場合のドットの大きさについて特定する。このとき、不使用範囲H2内のノズル15bは、例えば、ドットの形成の要否等の判定の対象外とされてよい。そして、制御部21は、特定したドットの大きさに応じた駆動信号が、ノズル15b毎に設けられた不図示の駆動部に入力されるようにドライバ28を制御する。ここでの印刷処理は、Y方向において、使用範囲H1の位置が印刷領域R103の位置に一致していることを前提として行われる。従って、ドットの形成の要否等を判定する際、第1実施形態とは異なり、使用範囲H1がY方向のいずれの位置に位置しているかは、考慮されなくてよい。
ステップST45では、制御部21は、光学センサ11の検出値に基づいて、プリンタ503がY方向に移動したか否か判定する。換言すれば、制御部21は、使用範囲H1を再設定する必要があるか否か判定する。例えば、制御部21は、使用範囲H1の絶対座標系XYZ上のY方向における現在の位置を特定する。次に、制御部21は、その特定した位置と、ステップST43で設定した印刷領域R103とのY方向の位置のずれ量を特定する。そして、制御部21は、このずれ量が所定の閾値を超えたか否か判定する。閾値は適宜に設定されてよい。例えば、閾値は、ノズル15bのy方向におけるピッチの1/2よりも大きく、前記ピッチよりも小さい値とされてよい。
ステップST45において肯定判定がなされたときは、制御部21は、ステップST46に進む。否定判定がなされたときは、制御部21は、ステップST46~ST48をスキップしてステップST49に進む。以下の説明から理解れるように、ステップST46~ST48がスキップされた場合は、使用範囲H1のヘッド15に対する位置(相対座標系xyzのy方向における位置)は、現在の位置が維持される。
ステップST46では、制御部21は、使用範囲H1を再設定可能か否か判定する。例えば、図11(a)及び図11(b)から理解されるように、プリンタ503の+Y側又は-Y側のずれ量が、初期設定(図11(a))のときの不使用範囲H2のy方向の長さを超えてしまうと、使用範囲H1を再設定することはできない。従って、例えば、制御部21は、ステップST43の基準位置からのプリンタ503の+Y側(又は-Y側)への移動量と、+y側(又は-y側)の不使用範囲H2のy方向における長さとを比較する。そして、前者が後者の長さ以下である場合は、制御部21は、再設定可能と判定し(肯定判定を行い)、そうでなければ、再設定不可能と判定する。ステップST46において肯定判定がなされたときは、制御部21は、ステップST47に進む。否定判定がなされたときは、制御部21は、ステップST48に進む。
ステップST47では、制御部21は、使用範囲H1を再設定する。具体的には、例えば、制御部21は、ステップST43で設定した印刷領域R103のY方向の位置と、使用範囲H1のY方向の位置とのずれが最小になるように使用範囲H1のヘッド15に対するy方向の位置を設定する。
ステップST48では、制御部21は、ユーザに警告を行うための処理を実行する。この処理は、例えば、所定の画像をディスプレイ9に表示するものであってもよいし、所定の音響を不図示のスピーカから出力するものであってもよい。制御部21は、ステップST48を経由することによって、ステップST47をスキップしてステップST49に進む。図示の例とは異なり、制御部21は、ステップST48を実行する場合においても、ステップST47を実行してもよい。
ステップST49は、図4のステップST27と同様の処理である。すなわち、制御部21は、印刷処理を終了する終了条件が満たされたか否か判定し、否定判定のときは、ステップST45に戻って印刷処理を継続し、肯定判定のときは印刷処理を終了する。
以上のとおり、第5実施形態では、ヘッド15は、主走査方向(y方向)の位置が互いに異なる、それぞれ被印刷物101の表面(被印刷面101a)にドットを形成する複数の印刷素子(ノズル15b)を有している。光学センサ11は、プリンタ503の位置を検出する。被印刷面101a内において、印刷開始時の主走査方向(y方向)に平行な方向を第1方向(Y方向)とし、印刷開始時の主走査方向に直交する方向を第2方向(X方向)としたときに、プロセッサ(CPU21a)は、印刷開始時のプリンタ503の位置に対してX方向(+X側又は-X側)に広がる印刷領域R103に画像103を印刷するように光学センサ11の検出値に基づいてヘッド15を制御する。CPU21aは、主走査方向(y方向)の長さが、複数のノズル15bの配列の主走査方向における長さよりも短い使用範囲H1をヘッド15に対して設定し(ステップST41)、使用範囲H1に含まれるノズル15bを用いて印刷領域R103に画像103を印刷する処理(ステップST44)を実行する。また、CPU21aは、印刷中において使用範囲H1と印刷領域R103とのY方向におけるずれを縮小するように使用範囲H1を再設定する(ステップST46)。
この場合、例えば、図11(a)及び図11(b)を参照して説明したように、画像103の変形を低減することができる。また、第1実施形態のように任意の方向への移動が想定されたプリンタに比較すると、プリンタを移動させる方向がX方向に限定されてしまうが、その代わり、処理を簡便化することができる。
なお、プリンタは、第1実施形態で述べた動作と、第5実施形態で述べた動作とを選択的に実行可能であってもよい。本実施形態では、プリンタ503のY方向のずれに起因する画像の変形を補償するための機能について述べた。ただし、そのような補償のための機能を含まないプリンタも本開示に係る技術に含まれて構わない。また、ユーザは、故意にプリンタ503をY方向にずらすことなどによって、画像データが規定している画像とは異なる画像を印刷するようにプリンタ503を使用してもよい。
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態に係るプリンタ603の構成を示す斜視図である。
プリンタ603は、平面視においてヘッド15に対して副走査方向(+x側又は-x側)に位置する領域に向けて光を出射する出射部631を有している。図13では、出射部631が出射した光LT1を点線で示している。図13では、+x側に光を出射する出射部631が図示されているが、+x側に光を出射する出射部631に代えて、又は加えて、-x側に光を出射する出射部631が設けられてよい。ユーザは、光LT1及び/又は光LT1によって照らされた領域を視認することによって、プリンタ603をx方向に移動させたときに印刷が行われる領域(印刷領域R103)を予測することができる。
光LT1は、例えば、レーザー光であってもよいし、レーザー光でなくてもよい。後者の場合において、光LT1は、ユーザが色を認識できるスペクトルを有するものであってもよいし、ユーザが色を認識できないスペクトルを有するものであってもよい。光LT1が、レーザー光又はレーザー光以外の色を有するものである場合において、その色の種類は任意である。また、光LT1がレーザー光でない場合において、光LT1は、概ね一定の幅(ビーム幅)で伝搬するものであってもよいし、一定の幅で伝搬しないものであってもよい。
光LT1は、図示の例のように、被印刷物101の被印刷面101aに少なくとも一部が照射されよい。この場合、被印刷面101aの、光LT1が照射される領域の形状は任意である。図示の例では、当該領域の形状は、x方向に平行な2辺を有する形状とされている。ただし、当該領域の形状は、プリンタ3から離れるほどy方向の長さが長く、又は短くなる形状であっても構わない。また、光LT1が照射される領域のx方向の長さは、ユーザが視認できる限り、適宜に設定されてよい。例えば、当該長さは、5mm以上、1cm以上、2cm以上、5cm以上、10cm又は20cm以上とされてよい。また、当該長さは、印刷がなされる領域のx方向の長さに対応していてもよい。照射される領域は、図示の例のように、平面視において筐体13の側面部13eに隣接(又は重複)していてもよいし、図示の例とは異なり、側面部13eから離れていてもよい。なお、例えば、平面視において、被印刷面101aの光LT1が照射される領域と、側面部13eとの距離が、2mm以下又は1mm以下の態様は、両者が隣接している態様と捉えられてよい。
また、図示の例とは異なり、光LT1は、被印刷面101aに対して平行に出射されることなどによって、被印刷面101aに照射されなくてもよい。この場合、光LT1は、例えば、レーザー光等の直接に視認可能なものとされる。
図示の例では、光LT1は、y方向における長さ及び位置がヘッド15のy方向における長さ及び位置と概ね同じとされている。ここでの長さが同じは、例えば、ヘッド15のy方向の長さの1/10以下又は1/20以下の差が存在する態様を含む。同様に、+y側の端部の、y方向における位置が、光LT1とヘッド15とでヘッド15のy方向の長さの1/10以下又は1/20以下の差でずれている態様は、両者の位置が同じ態様であると捉えられてよい。-y側の端部についても同様である。
図示の例とは異なり、光LT1のy方向の長さは、ヘッド15のy方向の長さとは異なっていてもよい。例えば、y方向において、ヘッド15の+y側の端部と同じ位置においてx方向に出射される光LT1と、y方向において、ヘッド15の-y側の端部と同じ位置においてx方向に出射される光LT1とが生成されてもよい。この2つの光LT1は、例えば、互いに別個の出射部631によって構成されてよい。ただし、この別個の出射部631全体を1つの出射部と捉えても構わない。
別の観点では、光LT1は、ヘッド15のy方向における範囲を示してもよいし、ヘッド15のy方向における特定の位置を示してもよい。特定の位置としては、上述したヘッド15の+y側の端部位置及び-y側の端部位置の他、ヘッド15のy方向における中央位置を挙げることができる。
出射部631は、上記の説明からも理解されるように、レーザーを含んでいてもよいし、レーザー以外の光源(例えばLED:light emitting diode)を含んでいてもよい。また、出射部631は、光源からの光が通過するアパーチャ及び/又はレンズを含んでよい。そのような光学要素は、例えば、光LT1の横断面の形状及び寸法(例えばy方向の幅)を規定したり、及び/又は被印刷面101aの光LT1が照射される領域の形状及び寸法を規定したりすることに寄与する。
出射部631は、例えば、少なくとも光LT1を外部へ出射する部分の、y方向における位置が、ヘッド15のy方向の位置と重複している。図示の例では、光LT1を出射する部分のy方向における長さ及び位置は、ヘッド15のy方向における長さ及び位置と概ね同じである。ここでの長さが同じは、光LT1とヘッド15との関係と同様に、ヘッド15の長さの1/10以下又は1/20以下のずれが存在する態様を含んでよい。
図示の例とは異なり、y方向に離れて2つの出射部631が設けられている場合においては、+y側の出射部631の+y側の端部の位置がヘッド15の+y側の端部の位置と一致し、-y側の出射部631の-y側の端部の位置がヘッド15の-y側の端部の位置と一致してもよい。ここでの位置が同じは、光LT1とヘッド15との関係と同様に、ヘッド15の長さの1/10以下又は1/20以下のずれが存在する態様を含んでよい。
また、図示の例とは異なり、出射部631のy方向の位置は、ヘッド15のy方向の配置範囲外にあってもよい。この場合、出射部631は、例えば、x方向に傾斜する方向に光を出射して、被印刷面101aのうちヘッド15に対してx方向に位置する領域を照射してよい。
出射部631は、例えば、図示の例のように、側面部13eのうち対向部13a側の縁部に隣接して設けられてよい。また、図示の例とは異なり、側面部13eのうち対向部13a側の縁部から+z側に離れていてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、プリンタ603は、ヘッド15の吐出面15aの平面視においてヘッド15に対して副走査方向に位置する領域(空間)に向けて光を出射する出射部631を有している。
従って、例えば、ユーザは、プリンタ603をx方向に移動させたときにヘッド15が通過する位置を把握することが容易である。その結果、例えば、印刷開始時の位置決めによって印刷領域R103の位置を設定するときに、印刷領域R103のy方向の位置を、意図した位置に設定することが容易化される。
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、プリンタの動作は、実施形態に挙げた動作以外の動作を可能であってもよい。例えば、2行以上の文字列を含む画像103を印刷する場合において、スイッチ7に対する操作によって印刷開始が指示されたときに1行分の文字列の印刷のみを行い、スイッチ7に対する操作の繰り返しによって、順次、各行の文字列の印列が行われてもよい。
また、プリンタは、ユーザから見て横方向に走査されることが想定されているものに限定されず、上下方向又は前後方向に走査されることが想定されていてもよい。筐体は、第1端から第2端への方向を短手方向としていたり、及び/又は走査方向を長手方向としていたりしてもよい。
実施形態では、光学センサ等のセンサの検出値は、ヘッドの制御に利用された。ただし、センサの検出値は、ヘッドの制御に代えて、又は加えて、他の用途に利用されてもよい。例えば、プリンタの手動式走査に関してユーザに注意喚起を行うことに利用されてよい。具体的には、例えば、手動でプリンタをX方向に走査するときに、Y方向におけるずれ、又はZ軸回りのずれが生じたときに、そのずれの方向、又はずれを修正する方向を示すマーク(例えば矢印)を表示することに利用されてよい。また、例えば、手動でプリンタを走査するときに、その走査の速度が、画質を保証できる速度に対して速いときに、プリンタの走査に対する抵抗力を増加させることに利用されてよい。抵抗力を増加させる方法としては、例えば、プリンタの荷重を支持するローラの回転を規制するブレーキを設ける方法が挙げられる。
本開示からは、以下の概念を抽出可能である。
(概念1)
被印刷物の表面に沿って人の手で移動されている状態で前記表面に画像を印刷する手動走査式のプリンタであって、
主走査方向の位置が互いに異なる、それぞれ前記被印刷物の表面にドットを形成する複数の印刷素子を有しているヘッドと、
前記プリンタの位置を検出するセンサと、
前記被印刷物の表面内において、印刷開始時の前記主走査方向に平行な方向を第1方向とし、印刷開始時の前記主走査方向に直交する方向を第2方向としたときに、印刷開始時の前記プリンタの位置に対して前記第2方向に広がる印刷領域に画像を印刷するように前記センサの検出値に基づいて前記ヘッドを制御するプロセッサと、
を有しており、
前記プロセッサは、
前記主走査方向の長さが、前記複数の印刷素子の配列の前記主走査方向における長さよりも短い使用範囲を前記ヘッドに対して設定し、前記使用範囲に含まれる印刷素子を用いて前記印刷領域に画像を印刷する処理を実行し、
印刷中において前記使用範囲と前記印刷領域との前記第1方向におけるずれを縮小するように前記使用範囲を再設定する
プリンタ。
(概念2)
被印刷物の表面に沿って人の手で移動されている状態で前記表面に画像を印刷する手動走査式のプリンタであって、
印刷時に前記表面に対向する対向面を有しているヘッドと、
前記対向面の平面視において前記ヘッドに対して副走査方向に位置する領域へ向けて光を出射する出射部と、
を有しているプリンタ。
これらの概念に係る発明においては、筐体が第1端から第2端へ長い形状であること、筐体の背面部に操作部が設けられていること、及び光学センサが設けられていること等は必須の要件ではない。例えば、スイッチ7は、プリンタ3の上面以外の面(例えば側面)にて露出していてもよいし、第2端13c側に位置していてもよい。また、例えば、スイッチ7(操作部)は設けられなくてもよい。別の観点では、印刷開始はスイッチ以外の方法によって指示されてもよい。例えば、通信機器5からプリンタ3へ画像データが送信された後のプリンタ3の移動開始が印刷開始の指示とされてもよい。換言すれば、プリンタ3の移動を検出可能なセンサ(例えば光学センサ11)の信号に基づいて印刷が開始されてもよい。
以上に述べた6つの実施形態(その概念)及び上記2つの概念は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第6実施形態(又は概念2)の出射部631は、第1~第5実施形態に適用されてもよいし、第5実施形態の制御は、第1~第4実施形態の構造(光学センサの配置及び/又は窪み等)に適用されてもよいし、第4実施形態の窪みは、第1~第3実施形態のいずれの光学センサの配置に組み合わされてもよい。