JP7394874B2 - 平版印刷方法 - Google Patents

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Description

本開示は、平版印刷方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法に適用される。
この平版印刷版として、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版ともいう)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化や無処理化が指向されている。簡易な平版印刷版の作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が挙げられる。すなわち、機上現像とは、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
従来の平版印刷版原版としては、例えば、国際公開第2019/044087号に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、アルミニウム支持体と、画像記録層とを含む平版印刷版原版であって、上記アルミニウム支持体が、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを含み、上記陽極酸化皮膜が上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nm超100nm以下であり、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面のL*a*b*表色系における明度L*の値が70~100である、平版印刷版原版が記載されている。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、紫外線硬化型インキ(UVインキともいう)を使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れ、現像後の非画像部における残色の抑制性に優れる平版印刷方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> アルミニウム支持体上に、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する平版印刷版原版を準備する準備工程と、
上記平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程と、
露光後の平版印刷版原版に酸性湿し水を供給して、上記画像記録層の非画像部を除去する現像工程と、
現像して得られた平版印刷版を、印刷インキ、及び、酸性湿し水を用い印刷する印刷工程と、
を含み、
上記アルミニウム支持体が、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを含み、
上記陽極酸化皮膜が上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nm超100nm以下であり、原子間力顕微鏡を用いて、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式(i)により求められる値である比表面積ΔSが15%以上60%以下である、
平版印刷方法。
ΔS=(S-S)/S×100(%)・・・(i)
<2> 現像して得られた平版印刷版上の酸性湿し水を乾燥させる乾燥工程を更に含む、上記<1>に記載の平版印刷方法。
<3> 上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、
上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、13nm以下である、上記<1>又は<2>に記載の平版印刷方法。
<4> 上記大径孔部の深さが、10nm~130nmである、上記<3>に記載の平版印刷方法。
<5> 上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、20nm~100nmである上記<3>に記載の平版印刷方法。
<6> 上記酸発色剤の極大吸収波長におけるモル吸光係数εが、20,000~100,000である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
<7> 露光後の上記平版印刷版原版の画像部の極大吸収波長λmaxの少なくとも1つが、400nm~700nmである、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
<8> 上記画像記録層が重合開始剤を含み、上記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤、及び、電子受容型重合開始剤を含む、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
<9> 上記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、上記赤外線吸収剤のHOMOと上記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、上記<8>に記載の平版印刷方法。
<10> 上記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、上記電子受容型重合開始剤のLUMOと上記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.80eV以下である、上記<8>に記載の平版印刷方法。
<11> 上記画像記録層が重合性化合物を含み、上記重合性化合物が、7官能以上の重合性化合物を含む、上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
<12> 上記重合性化合物が、10官能以上の重合性化合物を含む、上記<11>に記載の平版印刷方法。
<13> 上記酸発色剤が、ロイコ色素である、上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
<14> 上記ロイコ色素が、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素である上記<13>に記載の平版印刷方法。
<15> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物である上記<14>に記載の平版印刷方法。
式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
<16> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物である、上記<14>又は<15>に記載の平版印刷方法。
式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
<17> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物である上記<14>~<16>のいずれか1つに記載の平版印刷方法。
式(Le-7)~式(Le-9)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra~Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Rc及びRcはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
<18> Ra~Raがそれぞれ独立に、アルコキシ基である上記<17>に記載の平版印刷方法。
<19> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、上記式(Le-8)で表される化合物である、上記<17>又は<18>に記載の平版印刷方法。
<20> X~Xが水素原子であり、Y及びYがCである上記<19>に記載の平版印刷方法。
<21> Rb及びRbがそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である上記<19>又は<20>に記載の平版印刷方法。
本開示の一実施形態によれば、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れ、現像後の非画像部における残色の抑制性に優れる平版印刷方法を提供することができる。
アルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。 アルミニウム支持体の別の一実施形態の模式的断面図である。 アルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 アルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 アルミニウム支持体の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示に係る平版印刷方法は、アルミニウム支持体上に、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する平版印刷版原版を準備する準備工程と、
上記平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程と、
露光後の平版印刷版原版に酸性湿し水を供給して、上記画像記録層の非画像部を除去する現像工程と、
現像して得られた平版印刷版を、印刷インキ、及び、酸性湿し水を用い印刷する印刷工程と、
を含み、
上記アルミニウム支持体が、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを含み、上記陽極酸化皮膜が上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nm超100nm以下であり、原子間力顕微鏡を用いて、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式(i)により求められる値である比表面積ΔSが15%以上60%以下である。
ΔS=(S-S)/S×100(%)・・・(i)
酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する平版印刷版原版を用いた平版印刷方法において、露光後の平版印刷版原版に酸性湿し水を供給して、上記画像記録層の非画像部を除去する場合、現像後の画像記録層の非画像部に酸発色剤が残存し、発色してしまうことがあった。
なお、本開示において、現像後の画像記録層の非画像部に酸発色剤が残存し、発色することを、「残色」ともいう場合がある。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、特に紫外線硬化型インキ(即ち、UVインキ)を用いた場合であっても耐刷性(「UV耐刷性」ともいう。)、及び、現像後の非画像部における残色の抑制性(以下、単に「残色の抑制性」ともいう。)に優れる平版印刷方法を提供できることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示の平版印刷方法に用いられるアルミニウム支持体は、特に支持体の比表面積ΔSを15%以上60%以下として、支持体表面の粗さをより滑らかにすることで、支持体表面(非画像部)に対して、酸発色剤(例えば、後述するロイコ色素)の残存が抑制される。そのため、残存した酸発色剤が酸性湿し水と接触することによる、現像後の非画像部における残色が抑制されることから、残色の抑制性に優れると推定している。
また、本開示の平版印刷方法に用いられるアルミニウム支持体は、特定構造を有しているため、支持体と画像記録層との密着性も保持されて、UV耐刷性及び残色の抑制性の両立に優れると推定している。
<準備工程>
本開示に係る平版印刷方法は、アルミニウム支持体上に、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する平版印刷版原版を準備する準備工程を含む。
本開示に用いられる平版印刷版原版のアルミニウム支持体及び各層の詳細については、後述において説明する。
本開示に係る平版印刷方法に用いられる平版印刷版原版は、ポジ型平版印刷版原版であっても、ネガ型平版印刷版原版であってもよいが、ネガ型平版印刷版原版であることが、より本開示における効果を発揮するため好ましい。
また、本開示に用いられる平版印刷版原版は、より本開示における効果を発揮するため、酸性湿し水により除去可能な画像記録層を有することが好ましい。
また、上記準備工程において準備する平版印刷版原版の数は、特に制限はなく、所望の印刷に応じ、適宜選択することができる。
<露光工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
露光工程は、平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に用いられる平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm~300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
本開示に係る露光工程は、発色性の観点から、平版印刷版原版を画像様に露光することにより、画像記録層に含まれる酸発生剤から酸が発生し、この酸により酸発色剤が発色する工程を含むことが好ましい。
視認性の観点から、露光後の平版印刷版原版の画像部の極大吸収波長λmaxの少なくとも1つは、400nm~700nmであることが好ましく、400nm~650nmであることがより好ましく、440nm~600nmであることが更に好ましい。
極大吸収波長λmaxは、大気の雰囲気下で、25℃にて分光光度計を用いて、求められる。
具体的には、露光前及び露光後の平版印刷版原版を30mm×50mmの大きさに切りだして、積分球を用いて紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジー製、型番:U-3900)にて測定する。露光前及び露光後の平版印刷版原版から取得した反射スペクトルの差分から、極大吸収波長λが最大となる値をλmaxとすることができる。
<現像工程>
本開示に係る平版印刷方法は、露光後の平版印刷版原版に酸性湿し水を供給して、上記画像記録層の非画像部を除去する現像工程を含む。
現像工程は、露光後の平版印刷版原版に印刷インキと酸性湿し水とを供給して、上記画像記録層の非画像部を水着けローラー上に転写させて現像する現像工程であってもよい。
上記現像工程においては、いわゆる機上現像方式にて現像を行うことが好ましい。
機上現像方式において、露光後の平版印刷版原版は、印刷機上で油性の印刷インキと水性成分である酸性湿し水とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、印刷インキと酸性湿し水とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された湿し水によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、画像部においては、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。酸性湿し水が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、酸性湿し水と印刷インキとが供給されることが好ましく、酸性湿し水と印刷インキとが供給される場合には最初に印刷インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
印刷インキとしては、公知の平版印刷用の印刷インキが好適に用いられる。印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキ(油性インキ、UVインキ、新聞用インキ等)を用いることができる。
本開示に係る平版印刷方法によれば、印刷インキとしてUVインキを用いた場合であっても耐刷性に優れる平版印刷版が得られることから、現像工程においてUVインキを用いてもよい。
〔酸性湿し水〕
酸性湿し水としては、公知の平版印刷用湿し水組成物又はその希釈組成物を用いることができる。
本開示において、酸性湿し水とは、後述する湿し水組成物を水300mLに濃度が2質量%となるように分散し、この2質量%湿し水組成物の分散液の液温25℃におけるpHが7未満である湿し水を意味する。
なお、本開示における湿し水のpHは、東亜ディーケーケー(株)製HM-30Rを用い、25℃にて測定した値である。
また、平版印刷版原版が後述する保護層を最外層として有する場合、保護層は、機上現像時において、一部は除去され、一部は画像部の表面に残留又は画像部の内部に印刷インキにより浸透しているものと推定している。
酸性湿し水としては、下記に示す湿し水組成物が好適に挙げられる。
酸性湿し水は、商業ベースとするときは濃縮化し商品化する場合が多く、使用するときに、そのような濃縮液を適宜希釈して酸性湿し水として使用する。
本開示に用いられる湿し水組成物は、酸性湿し水としてそのまま使用しても、希釈して使用してもよい。
-水-
本開示に用いられる湿し水組成物は、濃縮液であってもよく、水の含有は必須ではないが、水を含有することが好ましい。
水としては、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水等を用いることができる。中でも、蒸留水、イオン交換水、又は、純水を使用することが好ましい。
水の含有量は、後述する各成分以外の残余であるが、湿し水組成物の全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上99.99質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上99.9質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以上99質量%以下であることが特に好ましい。
また、本開示に用いられる湿し水組成物が濃縮液である場合、例えば、水により5体積倍~1,000体積倍程度に希釈し、使用時の湿し水とすることが好ましい。
-溶剤-
本開示に用いられる湿し水組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
溶剤としては、有機溶剤が好ましく、公知の有機溶剤を用いることができる。
また、溶剤は、1気圧かつ20℃において、液体である化合物であることが好ましい。
更に、溶剤は、湿し水の版への給水性の観点から、沸点150℃以上の化合物を含むことが好ましく、沸点150℃以上300℃以下の化合物を含むことがより好ましく、沸点150℃以上250℃以下の化合物を含むことが更に好ましく、沸点150℃以上200℃以下の化合物を含むことが特に好ましい。
溶剤は、湿し水の版への給水性を高める機能を有するものであって、従来の湿し水に添加される場合が多い、イソプロピルアルコールを代替できるものが好ましい。
有機溶剤としては、下記式(solA)で表される化合物が好ましく挙げられる。
sol-O(CHCH(CH)O)msol-H 式(solA)
式(solA)中、Rsolは炭素数(炭素原子数)1~4のアルキル基を表し、msolは1~3の整数を表す。
式(solA)中、Rsolは、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。
中でも、Rsolは、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、又は、t-ブチル基が好ましい。
式(solA)で表される化合物として、具体的には、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリーブチルエーテルなどが挙げられる。中でも、溶剤としては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び、ジプロピレングリコールモノターシャリーブチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
また、有機溶剤としては、下記式(solB)で表される化合物が好ましく挙げられる。
HO(CHCH(CH)O)nsol-H 式(solB)
式(solB)中、nsolは1~5の整数を表す。
式(solB)で表される化合物として、具体的には、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び、トリプロピレングリコールが好ましく挙げられる。
更に、有機溶剤としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール、トリメチロールプロパン、分子量200~1,000のポリプロピレングリコール及びそれらの化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノイソブチルエーテル、モノターシャリブチルエーテルなどが挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、溶剤を、1種単独で含有していても、2種以上含有していてもよいが、湿し水の版への給水性、及び、湿し水汚染の抑制性の観点から、2種以上含有していることが好ましく、2種~4種含有していることがより好ましい。
溶剤の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.05質量%~70質量%であることが好ましく、0.2質量%~60質量%であることがより好ましい。
また、本開示に用いられる湿し水組成物を湿し水としてそのまま使用する場合、又は、本開示に用いられる湿し水組成物を濃縮液として調製し、希釈して湿し水として使用する場合における溶剤の含有量は、湿し水の全質量に対し、0.05質量%~10質量%であることが好ましく、0.2質量%~4質量%であることがより好ましい。
-水溶性高分子化合物-
本開示に用いられる湿し水組成物は、非画像部の汚れ抑制性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
水溶性高分子化合物の具体例としては、アラビアゴム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)の天然物とその変性体及びポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ポリジアリルアミン、ポリジアリルアミン塩などの合成物が挙げられる。
上記水溶性高分子化合物の中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び、ポリビニルピロリドンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が特に好ましく挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、水溶性高分子化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%~5質量%であることが好ましく、0.001質量%~1質量%であることがより好ましく、0.003質量%~1質量%であることが特に好ましい。
また、本開示に用いられる湿し水組成物を湿し水としてそのまま使用する場合、又は、本開示に用いられる湿し水組成物を濃縮液として調製し、希釈して湿し水として使用する場合における水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水汚染の抑制性の観点から、湿し水組成物又は湿し水の全質量に対し、0.0001質量%~1質量%であることが好ましく、0.001質量%~0.3質量%であることがより好ましく、0.005質量%~0.2質量%であることが特に好ましい。
-酸性化合物(pH調整剤)-
本開示に用いられる湿し水組成物は、酸性領域にpHを調整する観点から、酸性化合物を含有することが好ましい。
酸性化合物としては、有機酸、無機酸、及び、これらの塩が挙げられる。中でも、酸性化合物として、有機酸又はその塩を含むことが好ましく、有機酸を含むことがより好ましい。
有機酸としては、例えば、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、プロピオン酸、乳酸、酢酸、グリコール酸、グルコン酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p-トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。
無機酸としては、例えば、リン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸等が挙げられる。
更にこれら有機酸若しくは無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩も好適に用いられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、酸性化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
酸性化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%~5質量%であることが好ましい。
-塩基性化合物(pH調整剤)-
また、本開示に用いられる湿し水組成物は、pH調整の観点から、アルカリ金属水酸化物、燐酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、珪酸塩等の塩基性化合物を含有させてもよいが、含有させないことが好ましい。
-キレート化合物-
本開示に用いられる湿し水組成物は、キレート化合物を含有することが好ましい。
本開示に用いられる湿し水組成物を水道水、井戸水等を加えて希釈し、湿し水として使用する場合、キレート化合物を含むことにより、希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等の印刷への影響を抑制し、印刷物汚れを抑制することができる。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2-ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3-ジアミノ-2-プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類や2-ホスホノブタントリカルボン酸-1,2,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2-ホスホノブタントリカルボン酸-2,3,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1-ホスホノエタントリカルボン酸-1,2,2,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。
上記のキレート剤のナトリウム塩又はカリウム塩の代わりにアンモニウム又は有機アミンの塩も有効である。
本開示に用いられる湿し水組成物は、キレート化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
キレート化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%~3質量%であることが好ましく、0.01質量%~1質量%であることがより好ましい。
-界面活性剤-
本開示に用いられる湿し水組成物は、濡れ性向上の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン型界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー類が好ましく挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
また、両性界面活性剤としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。
更に、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤を好適に用いることができる。
フッ素系アニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、フッ素系ノニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
フッ素系カチオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、界面活性剤を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
界面活性剤の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
-ヒドロトロープ化合物-
本開示に用いられる湿し水組成物は、組成物の粘度の低減、及び、溶剤等の成分の水への溶解性を向上させる観点から、ヒドロトロープ化合物を含有することが好ましい。
ヒドロトロープ化合物としては、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸塩等を好ましく用いることができる。これらの塩構造としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が好ましく挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、ヒドロトロープ化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
ヒドロトロープ化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
-湿潤剤-
本開示に用いられる湿し水組成物は、濡れ性向上の観点から、湿潤剤を含有することが好ましい。
湿潤剤としては、グリコール類、アルコール類などが好ましく挙げられる。
このような湿潤剤として例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、湿潤剤を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
湿潤剤の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.1質量%~3質量%であることが好ましく、0.3質量%~2質量%であることがより好ましい。
本開示に用いられる湿し水組成物は、イソプロピルアルコールを完全に代替することが可能である。
また、使用時の湿し水中15質量%程度までのイソプロピルアルコール及びエタノール、n-プロパノール、t-ブタノール、アミルアルコール等を併用しても印刷品質上問題はない。
-ジオール化合物-
本開示に用いられる湿し水組成物は、他の成分の溶解性向上、及び、給水ローラー汚れ抑制の観点から、ジオール化合物を含有することが好ましい。
ジオール化合物として、具体的には、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールなどが好ましく挙げられる。
また、ジオール化合物としては、特開2009-96177号公報に記載のジオール化合物を好適に用いることができる。
更に、ジオール化合物としては、2個のヒドロキシ基を有し、上記2個のヒドロキシ基間の最短の炭素数が2~6であり、かつ総炭素数が9であるジオール化合物が特に好ましく挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、ジオール化合物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
ジオール化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%~2質量%であることが好ましく、0.005質量%~1質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.7質量%であることが更に好ましく、0.02質量%~0.5質量%であることが特に好ましい。
-ピロリドン誘導体-
本開示に用いられる湿し水組成物は、濡れ性向上の観点から、ピロリドン誘導体を含有することが好ましい。
ピロリドン誘導体としては、下記式(pyr)で表される化合物が好ましく挙げられる。
式(pyr)中、Rpyrは炭素数2~12のアルキル基を表す。
上記ピロリドン誘導体の具体例としては、エチルピロリドン、ブチルピロリドン、ペンチルピロリドン、ヘキシルピロリドン、オクチルピロリドン、ラウリルピロリドンなどが挙げられる。これらの化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
これらの化合物の中でも、式(pyr)におけるRpyrが炭素数6以上のアルキル基である化合物が好ましく、オクチルピロリドンが特に好ましい。
本開示に用いられる湿し水組成物は、ピロリドン誘導体を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
ピロリドン誘導体の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%~2質量%であることが好ましく、0.001質量%~1質量%であることがより好ましく、0.01質量%~1質量%であることが特に好ましい。
-アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、及び、それらのアルキレンオキシド付加物-
本開示に用いられる湿し水組成物は、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、及び、それらのアルキレンオキシド付加物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してもよい。上記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましく挙げられる。
これらの具体的な化合物として、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、及び、それらの酸化エチレン及び/又は酸化プロピレン付加物などが挙げられる。中でも、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、又は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールにエチレンオキサイドが4個~10個付加した化合物が好ましく挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、及び、それらのアルキレンオキシド付加物を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類、及び、それらのアルキレンオキシド付加物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%~5質量%であることが好ましく、0.001質量%~2質量%であることがより好ましい。
-糖類-
本開示に用いられる湿し水組成物は、非画像部の汚れ抑制性の観点から、糖類を含有することが好ましい。
糖類としては、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類などから選択することができ、水素添加によって得られる糖アルコールもこれに含まれる。具体例としては、D-エリトロース、D-スレオース、D-アラビノース、D-リボース、D-キシロース、D-エリスロ-ペンテュロース、D-アルロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-マンノース、D-タロース、β-D-フラクトース、α-L-ソルボース、6-デオキシ-D-グルコース、D-グリセロ-D-ガラクトース、α-D-アルロ-ヘプチュロース、β-D-アルトロ-3-ヘプチュロース、サッカロース、ラクトース、D-マルトース、イソマルトース、イヌロビオース、ヒアルビオウロン、マルトトリオース、D,L-アラビット、リビット、キシリット、D,L-ソルビット、D,L-マンニット、D,L-イジット、D,L-タリット、ズルシット、アロズルシット、マルチトール、還元水あめなどが挙げられる。これらの糖類は1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
本開示に用いられる湿し水組成物は、糖類を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
糖類の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.01質量%~2質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
-防腐剤-
本開示に用いられる湿し水組成物は、保存安定性の観点から、防腐剤を含有することが好ましい。
防腐剤の具体例としては、安息香酸及びその誘導体、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4-イソチアゾリン-3-オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ハロゲノニトロプロパン化合物、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-エタノール、3-ブロモ-3-ニトロペンタン-2,4-ジオール等が挙げられる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、防腐剤を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
防腐剤の含有量は、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%~1質量%であることが好ましい。
-その他の添加剤-
本開示に用いられる湿し水組成物は、上述した以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができ、例えば、着色剤、防錆剤、消泡剤、香料、マスキング剤などが挙げられる。
着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo.19140、15985、赤色色素としてはCINo.16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo.42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo.42095等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン消泡剤が好ましく挙げられる。シリコーン消泡剤としては、乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。また、非シリコーン系の消泡剤を併用又は単独で使用することができる。
本開示に用いられる湿し水組成物は、更に、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウムなどの腐食防止剤、クロム化合物、アルミニウム化合物のような硬膜剤、環状エーテル:例えば4-ブチロラクトンなどの有機溶剤、特開昭61-193893号公報記載の水溶性界面活性有機金属化合物などを含有していてもよい。
これら各その他の添加剤の含有量としてはそれぞれ独立に、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%~1質量%であることが好ましい。
-酸性湿し水のpH-
本開示に用いられる湿し水組成物をそのまま、又は、希釈して酸性湿し水として使用する際における酸性湿し水(希釈組成物)のpHは、UV耐刷性、及び、残色の抑制性の観点から、2以上7未満であることが好ましく、3以上6以下であることより好ましく、4以上5.5以下であることが特に好ましい。
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、現像して得られた平版印刷版を、印刷インキ、及び、酸性湿し水を用い印刷する印刷工程を含む。
上記印刷工程に用いられる印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(即ち、UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程又は上記現像液現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、又は、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には、上記よりも強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
本開示に係る平版印刷方法は、1つの平版印刷版原版に対して、上記露光工程、上記現像工程、及び、上記印刷工程を行うが、準備工程にて、複数の平版印刷版原版を準備した場合には、それらの版ごとに、上記露光工程、上記現像工程、及び、上記印刷工程を行えばよい。
<乾燥工程>
本開示に係る平版印刷方法は、UV耐刷性及び残色抑制性の観点から、現像して得られた平版印刷版上の酸性湿し水を乾燥させる乾燥工程を更に含むことが好ましい。
酸性湿し水を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、自然乾燥であってもよいし、平版印刷方法に用いられる公知の乾燥方法であってもよい。
乾燥温度としては、10℃~60℃であることが好ましく、20℃~30℃であることがより好ましい。
また、乾燥時間としては、特に制限はないが、10分~180分であることが好ましく、30分~120分であることがより好ましい。
<装着工程>
本開示に係る平版印刷方法は、露光後の上記平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着する装着工程を含むことが好ましい。
使用する印刷機、及び、版胴は、公知の印刷機及び版胴を用いることができ、所望に応じ適宜選択すればよい。
また、上記装着工程において、平版印刷版原版の版胴への装着方法、及び、固定方法についても、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。
<他の工程>
本開示に係る平版印刷方法においては、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、各工程の前に平版印刷版原版の位置、向き等を確認する検版工程、現像工程の後に、印刷画像を確認する確認工程等が挙げられる。
≪平版印刷版原版≫
次に、本開示に係る平版印刷方法に用いられる平版印刷版原版について説明する。
本開示に用いられる平版印刷版原版は、後述するアルミニウム支持体上に、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する。
本開示に用いられる平版印刷版原版は、上記の特に制限はなく、公知のポジ型又はネガ型の平版印刷版原版を用いることができる。
平版印刷版原版の中でも、耐刷性、及び、残色の抑制性の効果をより発揮する観点から、ネガ型平版印刷版原版であることが好ましい。
本開示に用いられる平版印刷版原版は、画像記録層の他、保護層、下塗り層等の公知の層を更に有していてもよい。保護層、下塗り層等は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
<アルミニウム支持体>
本開示に用いられる平版印刷版原版におけるアルミニウム支持体(以下、単に「支持体」ともいう場合がある。)は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを含み、
上記陽極酸化皮膜が上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nm超100nm以下であり、
原子間力顕微鏡を用いて、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式(i)により求められる値である比表面積ΔSが15%以上60%以下である。
ΔS=(S-S)/S×100(%)・・・(i)
本開示におけるアルミニウム支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示におけるアルミニウム支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有する。
本開示において用いられるアルミニウム支持体の好ましい態様の一例(本一例に係るアルミニウム支持体を、「支持体(1)」ともいう。)を以下に示す。
即ち、支持体(1)は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nmを超え100nm以下であり、上記陽極酸化皮膜の上記画像記録層側の表面のL表色系における明度Lの値が、70~100であることが好ましい。
図1は、アルミニウム支持体12aの一実施形態の模式的断面図である。
アルミニウム支持体12aは、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20a(以後、単に「陽極酸化皮膜20a」とも称する)とをこの順で積層した積層構造を有する。なお、アルミニウム支持体12a中の陽極酸化皮膜20aが、アルミニウム板18よりも画像記録層側に位置する。つまり、本開示に用いられる平版印刷版原版は、アルミニウム板上に、陽極酸化皮膜、及び、画像記録層をこの順で少なくとも有することが好ましい。
-陽極酸化皮膜-
本開示に係る平版印刷方法に用いられる支持体は、陽極酸化皮膜が上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有する。
以下、図1に示される陽極酸化皮膜20aの好ましい態様について説明する。
陽極酸化皮膜20aは、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に作製される皮膜であって、この皮膜は、皮膜表面に略垂直であり、かつ、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22aを有する。マイクロポア22aは、画像記録層側の陽極酸化皮膜20a表面(アルミニウム板18側とは反対側の陽極酸化皮膜20a表面)から厚み方向(アルミニウム板18側)に沿ってのびる。
-マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径-
陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径、以下、単に「平均径」ともいう。)は、10nm超え100nm以下である。
平均径としては、UV耐刷性、残色の抑制性、及び画像視認性のバランスの点から、12.5nm~60nmがより好ましく、15nm~50nmが更に好ましく、20nm~40nmが特に好ましい。ポア内部の径は、表層よりも広がっても狭まってもよい。
平均径が10nmを超えれば、UV耐刷性、残色の抑制性及び画像視認性が更に優れる。また、平均径が100nm以下であれば場合、UV耐刷性及び残色の抑制性が更に優れる。
マイクロポア22aの平均径の算出方法としては、陽極酸化皮膜20a表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を50箇所測定し、算術平均値として算出される。
なお、マイクロポア22aの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
マイクロポア22aの深さは特に制限されないが、10nm~3000nmが好ましく、50nm~2000nmがより好ましく、300nm~1600nmが更に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20aの断面の写真(15万倍)をとり、25個以上のマイクロポア22aの深さを測定し、平均した値である。
マイクロポア22aの形状は特に制限されず、図1では、略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状であってもよい。また、マイクロポア22aの底部の形状は特に制限されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
アルミニウム支持体12aの画像記録層側の表面(陽極酸化皮膜20aの画像記録層側の表面)のL表色系における明度Lの値は、70~100であることが好ましい。中でも、耐刷性及び画像視認性のバランスがより優れる点で、75~100が好ましく、75~90がより好ましい。
上記明度Lの測定は、エックスライト(株)製、色彩色差計Spectro Eyeを用いて測定する。
陽極酸化皮膜20aの画像記録層16側の表面における、波長0.2μm~2μmの成分を抽出して得られる傾斜度45゜以上の部分の面積率を表す急峻度a45の範囲は特に制限されないが、耐汚れ性及び放置払い性がより優れる点で、2%~30%であることが好ましく、2%~25%がより好ましく、5%~20%以下が更に好ましく、5%~18%が特に好ましい。
上記急峻度a45とは、表面形状を表すファクターの一つであり、以下の(1)~(3)の手順に従って求めた値である。
(1)表面形状を測定し、3次元データを求める。
まず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により、アルミニウム支持体12aの陽極酸化皮膜20a側の表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行う。具体的には、アルミニウム支持体12aを1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120kHz~150kHz、バネ定数12N/m~20N/mのもの(SI-DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の25μm×25μmを512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
(2)補正を行う。
急峻度a45の算出には、上記(1)で求められた3次元データから波長0.2μm~2μmの成分を選択する補正をしたものを用いる。この補正により、平版印刷版原版に用いるアルミニウム支持体のような深い凹凸を有する表面をAFMの探針で走査した場合に、探針が凸部のエッジ部分に当たって跳ねたり、深い凹部の壁面に探針の尖端以外の部分が接触したりして生じるノイズを除去できる。
補正は、上記(1)で求められた3次元データを高速フーリエ変換して周波数分布を求め、次いで、波長0.2μm~2μmの成分を選択した後、フーリエ逆変換をすることにより行う。
(3)急峻度a45を算出する。
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を全データについて算出し、傾斜度分布曲線を求める。一方で、微小三角形の面積の総和を求めて実面積とする。傾斜度分布曲線より、実面積に対する傾斜度45度以上の部分の面積の割合である急峻度a45(単位%)を算出する。
〔比表面積ΔS〕
本開示に係る平版印刷方法に用いられる支持体は、原子間力顕微鏡を用いて、陽極酸化皮膜20aの画像記録層16側の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式(i)により求められる値である比表面積ΔSが15%以上60%以下である。
ΔS=(S-S)/S×100(%)・・・(i)
なお、幾何学的測定面積Sは、25μm×25μmの範囲の面積を示すものである。
UV耐刷性及び残色の抑制性の観点から、比表面積ΔSとしては、20%以上60%以下であることが好ましく、20%~50%がより好ましく、25%~45%が更に好ましい。
比表面積ΔSは、後述するアルカリエッチング処理で用いるアルカリ水溶液の温度を変更することで、粗面化処理が施された面のアルミニウムのエッチング量を制御して、ΔSを調整することができる。
上記ΔSの測定方法としては、まず、上記急峻度a45を算出する際に実施する(1)と同様の手順に従って、3次元データ(f(x,y))を得る。
次に、上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sとする。
表面積差ΔS、すなわち、比表面積ΔSは、得られた実面積Sと幾何学的測定面積Sとから、上記式(i)により求められる。
ΔSの測定方法は具体的には、アルミニウム支持体を1cm角の大きさに切り取って試料とし、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数130kHz~200kHz、バネ定数7N/m~20N/mのもの(OMCL-AC200-TS、オリンパス(株)製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより、試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
また、計測は、試料表面の25μm×25μmを512×512点測定する。X方向の分解能は0.05μm、Y方向の分解能は、Y方向は1.9μ、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は18μm/secとして求められる。
支持体(1)において、UV耐刷性及び残色の抑制性の観点から、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が13nm以下である態様(以下、上記態様に係る支持体を、「支持体(2)」ともいう。)も好ましく挙げられる。
図2は、アルミニウム支持体12aの、図1に示したものとは別の一実施形態の模式的断面図である。
図2において、アルミニウム支持体12bは、アルミニウム板18と、大径孔部24と小径孔部26とから構成されるマイクロポア22bを有する陽極酸化皮膜20bとを含む。
陽極酸化皮膜20b中のマイクロポア22bは、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1000nm(深さD:図2参照)の位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部26とから構成される。
以下に、大径孔部24と小径孔部26について詳述する。
大径孔部24の陽極酸化皮膜20b表面における平均径は、上述した陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径と同じで、例えば、20nm~100nmが好ましい範囲として挙げられ、また、UV耐刷性及び残色の抑制性の観点から、12.5nm~60nmであることが好ましく、15nm~50nmであることがより好ましく、20nm~40nmが特に好ましい。
大径孔部24の陽極酸化皮膜20b表面における平均径の測定方法は、陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径の測定方法と同じである。
大径孔部24の底部は、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nm(以後、深さDとも称する)に位置する。つまり、大径孔部24は、陽極酸化皮膜表面から深さ方向(厚み方向)に10nm~1,000nmの位置までのびる孔部である。
上記大径孔部の深さとしては、UV耐刷性及び残色の抑制性の観点から、10nm~650nmであることが好ましく、10nm~200nmであることがより好ましく、10nm~130nmであることが更に好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20bの断面の写真(15万倍)をとり、25個以上の大径孔部24の深さを測定し、平均した値である。
大径孔部24の形状は特に制限されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。
小径孔部26は、図2に示すように、大径孔部24の底部と連通して、連通位置より更に深さ方向(厚み方向)に延びる孔部である。
小径孔部26の連通位置における平均径は、13nm以下が好ましい。中でも、11nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、5nm以上の場合が多い。
小径孔部26の平均径は、陽極酸化皮膜20b表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(小径孔部)の径(直径)を測定し、算術平均値として得られる。なお、大径孔部の深さが深い場合は、必要に応じて、陽極酸化皮膜20b上部(大径孔部のある領域)を切削し(例えば、アルゴンガスによって切削)、その後陽極酸化皮膜20b表面を上記FE-SEMで観察して、小径孔部の平均径を求めてもよい。
なお、小径孔部26の形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
小径孔部26の底部は、上記の大径孔部24との連通位置から更に深さ方向に20nm~2000nmのびた場所に位置する。言い換えると、小径孔部26は、上記大径孔部24との連通位置から更に深さ方向(厚み方向)にのびる孔部であり、小径孔部26の深さは20nm~2,000nmである。なお、上記深さは、500nm~1,500nmが好ましい。
なお、上記深さは、陽極酸化皮膜20bの断面の写真(5万倍)をとり、25個以上の小径孔部の深さを測定し、平均した値である。
小径孔部26の形状は特に制限されず、例えば、略直管状(略円柱状)、及び、深さ方向に向かって径が小さくなる円錐状が挙げられ、略直管状が好ましい。
-アルミニウム支持体の製造方法-
本開示に用いられるアルミニウム支持体の製造方法としては、例えば、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
・粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
・陽極酸化処理工程:粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
・ポアワイド処理工程:陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
以下、各工程の手順について詳述する。
〔粗面化処理工程〕
粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。本工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。
粗面化処理は、電気化学的粗面化処理のみを実施してもよいが、電気化学的粗面化処理と機械的粗面化処理及び/又は化学的粗面化処理とを組み合わせて実施してもよい。
機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせる場合には、機械的粗面化処理の後に、電気化学的粗面化処理を実施するのが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、硝酸又は塩酸を主体とする水溶液中で、直流又は交流を用いて行われることが好ましい。
機械的粗面化処理の方法は特に制限されないが、例えば、特公昭50-40047号公報に記載されている方法が挙げられる。
化学的粗面化処理も特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
機械的粗面化処理の後には、以下の化学エッチング処理を実施するのが好ましい。
機械的粗面化処理の後に施される化学エッチング処理は、アルミニウム板の表面の凹凸形状のエッジ部分をなだらかにし、印刷時のインキの引っかかりを防止し、印刷版の耐汚れ性を向上させるとともに、表面に残った研磨材粒子等の不要物を除去するために行われる。
化学エッチング処理としては、酸によるエッチング及びアルカリによるエッチングが挙げられ、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ水溶液を用いる化学エッチング処理(以下、「アルカリエッチング処理」ともいう。)が挙げられる。
アルカリ水溶液に用いられるアルカリ剤は特に制限されないが、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、及び、グルコン酸ソーダが挙げられる。
アルカリ水溶液は、アルミニウムイオンを含んでいてもよい。
アルカリ水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.01質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、30質量%以下が好ましい。
アルカリエッチング処理で用いるアルカリ水溶液の温度を変更することで、粗面化処理が施された面のアルミニウムのエッチング量を制御して、比表面積ΔSを調整することができる。
上記観点から、アルカリ水溶液の液温としては、20℃~80℃が好ましく、20℃~70℃であることがより好ましく、20℃~55℃であることが更に好ましく、25℃~55℃であることが特に好ましい。
アルカリエッチング処理を施した場合、アルカリエッチング処理により生じる生成物を除去するために、低温の酸性水溶液を用いて化学エッチング処理(以下、「デスマット処理」ともいう。)を施すのが好ましい。
デスマット処理における酸性水溶液に用いられる酸は特に制限されないが、例えば、硫酸、硝酸、及び、塩酸が挙げられる。また、酸性水溶液の温度は、UV耐刷性及び残色の抑制性の観点から、20℃~80℃が好ましく、25℃~40℃であることがより好ましく、30℃~40であることが更に好ましい。
粗面化処理工程としては、A態様又はB態様に示す処理を以下に示す順に実施する方法が好ましい。
~A態様~
(2)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第1アルカリエッチング処理)
(3)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1デスマット処理)
(4)硝酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第1電気化学的粗面化処理)
(5)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第2アルカリエッチング処理)
(6)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第2デスマット処理)
(7)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的粗面化処理(第2電気化学的粗面化処理)
(8)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第3アルカリエッチング処理)
(9)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第3デスマット処理)
~B態様~
(10)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第4アルカリエッチング処理)
(11)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第4デスマット処理)
(12)塩酸を主体とする水溶液を用いた電気化学的粗面化処理(第3電気化学的粗面化処理)
(13)アルカリ水溶液を用いた化学エッチング処理(第5アルカリエッチング処理)
(14)酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第5デスマット処理)
上記A態様の(2)の処理前、又は、B態様の(10)の処理前に、必要に応じて、(1)機械的粗面化処理を実施してもよい。
第1アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、0.5g/m~30g/mが好ましく、1.0g/m~20g/mがより好ましい。
A態様における第1電気化学的粗面化処理で用いる硝酸を主体とする水溶液としては、直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1~100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、又は、硝酸アンモニウム等を添加して得られる水溶液が挙げられる。
A態様における第2電気化学的粗面化処理及びB態様における第3電気化学的粗面化処理で用いる塩酸を主体とする水溶液としては、通常の直流又は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる水溶液が挙げられる。例えば、1g/L~100g/Lの塩酸水溶液に、硫酸を0g/L~30g/L添加して得られる水溶液が挙げられる。なお、この溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、及び、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン;塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、及び、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを更に添加してもよい。
電気化学的粗面化処理の交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、及び、三角波等を用いることができる。周波数は0.1Hz~250Hzが好ましい。
図3は、電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
図3において、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流、AAはアルミニウム板のアノード反応の電流、CAはアルミニウム板のカソード反応の電流である。台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1ms~10msが好ましい。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比tc/taが1~20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比Qc/Qaが0.3~20、アノード反応時間taが5ms~1,000ms、の範囲にあることが好ましい。電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル側Icともに10A/dm~200A/dmが好ましい。Ic/Iaは、0.3~20が好ましい。電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は、25C/dm~1,000C/dmが好ましい。
交流を用いた電気化学的な粗面化には図4に示した装置を用いることができる。
図4は、交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。
図4において、50は主電解槽、51は交流電源、52はラジアルドラムローラ、53a及び53bは主極、54は電解液供給口、55は電解液、56はスリット、57は電解液通路、58は補助陽極、60は補助陽極槽、Wはアルミニウム板である。図4中、矢印A1は電解液の給液方向を、矢印A2は電解液の排出方向をそれぞれ示している。である。電解槽を2つ以上用いるときには、電解条件は同じでもよいし、異なっていてもよい。
アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a及び53bにより電解処理される。電解液55は、電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a及び53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは、次いで、補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
第2アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の印刷版原版が製造しやすい点で、1.0g/m以上が好ましく、2.0g/m~10g/mがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理及び第4アルカリエッチング処理におけるアルミニウム板の溶解量は、所定の印刷版原版が製造しやすい点で、0.01g/m~0.8g/mが好ましく、0.05g/m~0.3g/mがより好ましい。
酸性水溶液を用いた化学エッチング処理(第1~第5デスマット処理)では、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、又はこれらの2以上の酸を含む混酸を含む酸性水溶液が好適に用いられる。
酸性水溶液の酸の濃度は、0.5質量%~60質量%が好ましい。
〔陽極酸化処理工程〕
陽極酸化処理工程の手順は、上述したマイクロポアが得られれば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、及び、シュウ酸等の水溶液を電解浴として用いることができる。例えば、硫酸の濃度は、100g/L~300g/Lが挙げられる。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、例えば、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm~60A/dm(好ましくは5A/dm~60A/dm)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)、及び、皮膜量0.1g/m~5g/m(好ましくは0.2g/m~3g/m)が挙げられる。
〔ポアワイド処理〕
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は特に制限されず、例えば、浸せき法及びスプレー法が挙げられる。
<画像記録層>
本開示に用いられる平版印刷版原版は、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する。
上記画像記録層としては、酸発色剤と酸発生剤とを含む、感光層、感熱層などの画像記録層であることが好ましい。ここで、画像記録層としては、例えば、特開平7-285275号公報及び特開2003-345014号公報に記載されたサーマルポジタイプ、特開平7-20625号公報又は特開平11-218903号公報に記載されたサーマルネガタイプ、並びに、特開2001-100412号、特開2002-169282号公報、特開2008-15504号公報に記載されたフォトポリネガタイプ等が挙げられる。
中でも、上記画像記録層としては、酸発色剤及び酸発生剤を含むネガ型画像記録層であることが好ましい。
本開示における画像記録層は、UV耐刷性の観点から、最外層であることが好ましい。
以下に、上記画像記録層がネガ型画像記録層である、ネガ型平版印刷版原版について詳細を説明する。
〔ネガ型画像記録層〕
本開示に用いられる平版印刷版原版に好適なネガ型画像記録層は、酸発色剤と酸発生剤とを含む。
ネガ型画像記録層としては、酸性湿し水(好ましくは、印刷インキ及び湿し水の両方)により除去可能なネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示に用いられる平版印刷版原版に好適なネガ型画像記録層は、酸発色剤及び酸発生剤に加え、赤外線吸収剤、重合性化合物、及び、重合開始剤を含有することが好ましく、酸発色剤、酸発生剤、赤外線吸収剤、重合性化合物、重合開始剤、及び、ポリマーを含有することがより好ましい。
また、本開示におけるネガ型画像記録層は、機上現像型のネガ型画像記録層であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
[酸発色剤]
上記画像記録層は、酸発色剤を含む。また、酸発色剤としては、ロイコ化合物を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。
酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環又は開裂する無色の化合物が好ましい。
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(“クリスタルバイオレットラクトン”と称される。)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド等のフタリド類、
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
その他、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
また、上記酸発色剤は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。
上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
また、上記ロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-2)で表される化合物であることがより好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
式(Le-1)~式(Le-3)のERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、アリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、又は、ジアリールアミノ基であることが更に好ましく、アリールアミノ基、又は、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~Xはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Le-2)又は式(Le-3)におけるX~X10はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるY及びYは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y及びYの両方がCであることがより好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRaは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-3)におけるRb~Rbはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
また、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記式(Le-5)で表される化合物であることが更に好ましい。
式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
式(Le-4)~式(Le-6)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及び、Rb~Rbはそれぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及び、Rb~Rbと同義であり、好ましい態様も同様である。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、下記式(Le-8)で表される化合物であることが特に好ましい。
式(Le-7)~式(Le-9)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra~Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rc及びRcはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるX~X、Y及びYは、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~X、Y及びYと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるRa~Raはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb~Rbはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は、メチル基であることが特に好ましい。
式(Le-8)におけるRc及びRcはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フェニル基、又は、アルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
また、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、X~Xが水素原子であり、Y及びYがCであることが好ましい。
更に、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb及びRbがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましい。
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
また、式(Le-1)~式(Le-9)における一価の有機基、アルキル基、アリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。なお、Meはメチル基を表す。
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
酸発色剤の極大吸収波長におけるモル吸光係数εは、視認性の観点から、20,000~100,000であることが好ましく、20,000~80,000であることがより好ましく、30,000~80,000であることが更に好ましく、40,000~70,000であることが特に好ましく、50,000~70,000であることが最も好ましい。
測定する酸発色剤サンプル0.04mmol(例えば、酸発色剤サンプルがS-15である場合、19.3mg)を100mLメスフラスコに精秤する。酢酸を90mL程度添加し、測定サンプルが完溶していることを目視で確認した後、酢酸で100mLにメスアップし、色素溶液Aを作成する。
別の100mLメスフラスコに酢酸を80mL程度添加した後、イオン交換水5mL、上記色素溶液A:5mLをそれぞれ5mLホールピペットを用いて添加し、軽く振り混ぜる。測定する酸発色剤サンプルの析出がないことを目視で確認した後、酢酸で100mLにメスアップし、色素溶液Bを作成する。このとき、色素溶液Bは測定サンプル濃度が0.02mmol/Lである。
色素溶液Bを測定セル(石英ガラス、光路幅:10mm)に充填し紫外可視分光光度計((株)島津製作所、型番:UV-1800)を用いて測定を実施する。なお、ブランクは水:酢酸=5:95液とする。
得られたスペクトルから可視光領域(380nm~750nm)における吸収極大波長を読み取り、その波長における吸光度からモル吸光係数εを算出することができる。
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
[酸発生剤]
上記画像記録層は、酸発生剤を含む。
また、本開示に用いられる平版印刷版原版が後述する重合開始剤を含有する場合、重合開始剤が酸発生剤としても機能するものを用いてもよく、酸発生剤として機能する重合開始剤を含有する場合、酸発生剤として機能する重合開始剤は酸発生剤に含まれるものとする。
本開示において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射、100℃以上の熱処理によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。酸発生剤から発生した酸によって上記酸発色剤が発色することができる。
本開示における画像記録層において好適に用いられる酸発生剤としては、国際公開第2016/047392号の段落0116~0130に記載の酸発生剤が挙げられる。
中でも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本開示において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本開示に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本開示において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、中でも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムの、スルホン酸塩、カルボン酸塩、BF 、PF 、ClO などが好ましい。
本開示において酸発生剤として用い得るオニウム塩としては、下記式(III)~式(V)のいずれかで表されるオニウム塩が挙げられる。
上記式(III)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルコキシ基、又は炭素数12以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオン、及び、ペルフルオロアルキルスルホン酸イオン等フッ素原子を有するスルホン酸イオンよりなる群から選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン、及びペルフルオロアルキルスルホン酸である。
上記式(IV)中、Ar21は、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリールオキシ基、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、炭素数6~12のアリールアミノ基又は、ジアリールアミノ基(2つのアリール基の炭素数が、それぞれ独立に、6~12)が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
上記式(V)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、又は炭素数1~12のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
本開示における画像記録層において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例は、国際公開第2016/047392号の段落0121~0124に記載された化合物と同様である。
また、上記式(III)~式(V)で表される化合物の別の例としては、特開2008-195018号公報の段落0036~0045において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物が挙げられ、これらを、本開示に係る酸発生剤として好適に用いることができる。
本開示に用い得る酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG-1)~(PAG-5)が挙げられる。
また、本開示に用い得る酸発生剤のより好ましい例としては、後述する電子受容型重合開始剤も挙げられる。
酸発生剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸発生剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~25質量%がより好ましく、5質量%~20質量%が更に好ましく、5質量%~10質量%が特に好ましい。
[重合開始剤]
上記画像記録層は、重合開始剤を更に含むことが好ましい。
重合開始剤としては、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
(電子受容型重合開始剤)
電子受容型重合開始剤としては、電子受容型ラジカル重合開始剤が好ましい。
電子受容型ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
上記電子受容型重合開始剤の中でも、UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
更に、UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オニウム塩化合物の中でも、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
以下に、これらの化合物の具体例を示すが、これに限定されない。
上記ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に電子供与性基、例えばアルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、非対称のジフェニルヨードニウム塩が更に好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=テトラフェニルボラートが挙げられる。
上記スルホニウム塩の例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
この中でも、電子受容型重合開始剤としては、UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、ヨードニウム塩が好ましい。
電子受容型重合開始剤として用いるオニウム塩化合物は、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤と併用して用いられることが特に好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル;ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド;アゾ化合物、例えばアゾビス-イソブチロニトリル;Dueber他、米国特許第4,565,769号明細書に開示されているような2,4,5-トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビスイミダゾール);トリハロメチルトリアジン;ホウ酸塩;及びこれらの混合物等も用いることができる。
本開示に用いうる電子受容型重合開始剤(酸発生剤でもある)のより好ましい例として、下記化合物(I-1)~(I-3)が挙げられるが、これらに限定されないことは、言うまでもない。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜併用することもできる。
電子受容型重合開始剤が酸発生剤として機能する場合、その含有量は、上記酸発色剤の含有量に含まれるものとする。
上記画像記録層中の電子受容型重合開始剤の含有量は、上記画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~25質量%がより好ましく、5質量%~20質量%が更に好ましく、5質量%~15質量%が特に好ましい。
(電子受容型重合開始剤と赤外線吸収剤との関係)
本開示における画像記録層は、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、上記電子受容型重合開始剤及び赤外線吸収剤を含有し、赤外線吸収剤のLUMOの値から上記電子受容型重合開始剤のLUMOの値を減じた値(すなわち、赤外線吸収剤のLUMO-上記電子受容型重合開始剤のLUMOの値)が、1.00eV以下であることが好ましく、0.80eV以下であることがより好ましく、0.80eV~-0.10eVであることが特に好ましい。
なお、マイナスの値は、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが、赤外線吸収剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
(電子供与型重合開始剤(重合助剤))
上記画像記録層は、重合開始剤として、電子供与型重合開始剤(「重合助剤」ともいう。)を含むことが好ましい。また、重合開始剤が、上記電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
本開示における電子供与型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起又は分子内移動した際に、赤外線吸収剤の一電子抜けた軌道に分子間電子移動で一電子を供与することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
電子供与型重合開始剤としては、電子供与型ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
上記画像記録層は、平版印刷版における耐刷性向上の観点から、以下の5種の電子供与型重合開始剤を含有することがより好ましい。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物が好ましい。
(ii)N-アリールアルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、例えば、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。例えばフェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもいなくてもよい。)が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等を挙げることができる。
これらの中でも、上記画像記録層は、UV耐刷性の観点から、電子供与型重合開始剤としてボレート化合物を含有することが好ましい。
ボレート化合物としては、UV耐刷性及び発色性の観点から、テトラアリールボレート化合物、又は、モノアルキルトリアリールボレート化合物であることが好ましく、テトラアリールボレート化合物であることがより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-9を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Phはフェニル基を表し、Buはn-ブチル基を表す。
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、感度の向上及びUV版飛びを発生しにくくする観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましい。
また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
電子供与型重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量としては、感度及び耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.05質量%~25質量%であることがより好ましく、0.1質量%~20質量%であることが更に好ましい。
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
(電子供与型重合開始剤と赤外線吸収剤との関係)
本開示における画像記録層は、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、上記電子供与型重合開始剤及び赤外線吸収剤を含み、赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値が0.70eV以下であることが好ましく、0.70eV~-0.10eVであることがより好ましい。
なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
[ポリマー]
上記画像記録層は、ポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、例えば、バインダーポリマー、及び、ポリマー粒子が挙げられる。
中でも、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、ポリマー粒子を含むことが好ましい。
(バインダーポリマー)
上記画像記録層は、バインダーポリマーを含んでいてもよいが、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、含まないことが好ましい。
上記バインダーポリマーは、上記ポリマー粒子以外のポリマー、すなわち、粒子形状でないバインダーポリマーである。
上記バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
中でも、上記バインダーポリマーは、平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう。)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
また、バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、当該ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
星型高分子化合物は、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、機上現像性、UV耐刷性、及び、UV版飛び抑制性の観点から、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え20質量%以下であることが好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え10質量%以下であることがより好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え5質量%以下であることが更に好ましく、上記バインダーポリマーを含まないか、又は、上記バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、0質量%を超え2質量%以下であることが特に好ましく、上記バインダーポリマーを含まないことが最も好ましい。
(ポリマー粒子)
上記画像記録層は、UV耐刷性の観点から、ポリマー粒子を含むことが好ましい。
ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び非画像部の機上現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子であることが好ましい。
更に、ポリマー粒子は、UV耐刷性の観点から、付加重合型樹脂粒子であることが好ましい。
ポリマー粒子の油分散性指数は、特に制限はないが、UV耐刷性、機上現像性、及び、湿し水濁り抑制性の観点から、10%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、65%以上100%以下であることが特に好ましい。
ポリマー粒子について、油分散性指数の測定方法は、以下の通りである。
ポリマー粒子の水分散物0.1g(固形分20質量%程度が望ましい。)を底部面積1cm3の円筒状シリンダー容器に入れ、油性インキ用洗浄液ダイクリーン(日石三菱(株)製)1.0gと混合する。混合には卓上遠心機「チビタン-R XX42CFORT(ヤマト科学(株)製)」を使用し、25℃において、5分間室温で撹拌する。撹拌直後の洗浄液/粒子界面高さh1の液面高さh2に対する比率(%)を粒子の油分散性指数として評価する。
熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm~3.0μmが好ましい。
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、得られる平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
また、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
更に、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CH2CH(C≡N)-]又は-[CHC(CH)(C≡N)-]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
また、上記ポリマー粒子は、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
上記親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
中でも、UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造が好ましく、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリエチレン/プロピレンオキシド構造がより好ましい。
また、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点からは、上記ポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
また、上記親水性基としては、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、シアノ基を有する構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことが好ましく、下記式(AN)で表される構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことがより好ましく、下記式Zで表される基を含むことが特に好ましい。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
式(AN)中、RANは、水素原子又はメチル基を表す。
上記ポリマー粒子に含まれるポリマーは、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位、すなわち、上記式(AN)で表される構成単位がより好ましい。
上記ポリマーが、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーを含む場合、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーにおけるシアノ基を有する構成単位、好ましくは上記式(AN)で表される構成単位の含有量は、UV耐刷性の観点から、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることが特に好ましい。
上記ポリマー粒子は、UV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられ、1-ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式Z1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
式Z1中、RZ1及びRZ2はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RZ3は置換基を表し、nzは0以上Arの最大置換基数以下の整数を表す。
式Z1中、RZ1及びRZ2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式Z1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式Z1中、RZ3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式Z1中、RZ3が複数存在する場合、複数のRZ3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式Z1中、nzは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
上記ポリマー粒子は、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記ポリマー粒子において、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、上記ポリマー粒子の全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
また、ポリマー粒子は、UV耐刷性の観点から、架橋構造を有することが好ましく、架橋構造を有する構成単位を含むことがより好ましい。
ポリマー粒子が架橋構造を有することにより、ポリマー粒子自体の硬度が向上するため、画像部強度が向上し、他のインキよりも版を劣化させやすい紫外線硬化型インキを使用した場合であっても、耐刷性(UV耐刷性)が更に向上すると考えられる。
上記架橋構造としては、特に制限はないが、多官能エチレン性不飽和化合物を重合してなる構成単位、又は1種以上の反応性基同士が粒子内部で共有結合を形成した構成単位であることが好ましい。上記多官能エチレン性不飽和化合物の官能数としては、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、2~15であることが好ましく、3~10であることがより好ましく、4~10であることが更に好ましく、5~10であることが特に好ましい。
また、上記を言い換えると、上記架橋構造を有する構成単位は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、2官能性~15官能性分岐単位であることが好ましい。
なお、n官能性分岐単位とは、n本の分子鎖が出ている分岐単位のことをいい、言い換えると、n官能性分岐点(架橋構造)を有する構成単位のことである。
また、多官能メルカプト化合物により架橋構造を形成することも好ましく挙げられる。
上記多官能エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、芳香族ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。
また、上記多官能エチレン性不飽和化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物、又は多官能(メタ)アクリルアミド化合物、又は、多官能芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(β-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド等が挙げられる。
多官能芳香族ビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
上記分岐単位の炭素数としては、特に制限はないが、8~100であることが好ましく、8~70であることがより好ましい。
上記ポリマー粒子は、架橋構造を有する構成単位を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
上記ポリマー粒子において、架橋構造を有する構成単位の含有量は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、上記ポリマー粒子の全質量に対し、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.5質量%~15質量%であることがより好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、上記式Zで表される基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
上記式ZにおけるQは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
また、上記式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
上記式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CHCHNR-が結合した基であることが好ましい。なお、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RN-RWA-NR-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表し、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHN(R)-が結合した基であることが好ましい。なお、ここでも、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数7~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数7~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
上記式Zで表される基を有するポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、Wが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、UV版飛び抑制性、及び、機上現像性の観点から、重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましく、粒子表面に重合性基を有するポリマー粒子を含むことがより好ましい。
更に、上記ポリマー粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
上記重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子におけるポリマーは、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
更に、高分子反応によりポリマー粒子表面に重合性基を導入してもよい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、UV版飛び抑制性、機上現像性、機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する樹脂を含むことが好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有する樹脂を含むことがより好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有し、かつポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する樹脂を含むことが特に好ましい。また、上記ウレア結合を有する樹脂を含む粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
式(Iso)中、nは0~10の整数を表す。
上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、下記に示す反応が挙げられる。なお、下記の例は、n=0、4,4-異性体を使用した例である。
下記に示すように、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解し、アミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応し、ウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、下記反応が繰り返され、ウレア結合を有する樹脂が形成される。
また、下記反応において、アルコール化合物、アミン化合物等のイソシアネート基と反応性を有する化合物(活性水素を有する化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造をウレア結合を有する樹脂に導入することもできる。
上記活性水素を有する化合物としては、上述したミクロゲルにおいて記載したものが好ましく挙げられる。
また、上記ウレア結合を有する樹脂は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
上記粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を有する球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
上記画像記録層は、粒子、特にポリマー粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
また、上記画像記録層における粒子、特にポリマー粒子の含有量は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
また、上記画像記録層におけるポリマー粒子の含有量は、現像性、及び、UV耐刷性の観点から、上記画像記録層の分子量3,000以上の成分の全質量に対し、20質量%~100質量%が好ましく、35質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。
(ポリマー粒子の合成)
ポリマー粒子の合成法としては、特に制限はなく、既述した各種の樹脂にてポリマー粒子を合成しうる方法であればよい。ポリマー粒子の合成法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、マイクロエマルション重合法等の、公知のポリマー粒子の合成法が挙げられる。
その他、ポリマー粒子の合成には、公知のマイクロカプセルの合成法、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)の合成法等を用いてもよい。
[連鎖移動剤]
上記画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007394874000023
Figure 0007394874000025
連鎖移動剤は、1種のみを添加してもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
[低分子親水性化合物]
上記画像記録層は、耐刷性の低下を抑制し且つ現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n-ブチルスルホン酸ナトリウム、n-ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n-オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11-トリオキサペンタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、13-エチル-5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14-テトラオキサテトラコサン-1-スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム、1-ナフチルスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007-276454号公報の段落0026~0031及び特開2009-154525号公報の段落0020~0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1~4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007-276454号公報の段落0034~0038に記載の化合物が挙げられる。
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1~5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニオブチラート、4-(1-ピリジニオ)ブチラート、1-ヒドロキシエチル-1-イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3-トリメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホナート等が挙げられる。
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.5質量%~20質量%が好ましく、1質量%~15質量%がより好ましく、2質量%~10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
[感脂化剤]
上記画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、後述の保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5モル%~80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,0000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート/2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%~30.0質量%が好ましく、0.1質量%~15.0質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
[赤外線吸収剤]
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
また、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤(「分解性赤外線吸収剤」ともいう。)も好適に用いることができる。
赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008-544322号公報、国際公開第2016/027886号、国際公開第2017/141882号、又は、国際公開第2018/043259号に記載のものを好適に用いることができる。
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
[重合性化合物]
上記画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。また、重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましい。
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
中でも、上記重合性化合物としては、UV耐刷性の観点から、3官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、7官能以上の重合性基を含むことがより好ましく、10官能以上の重合性基を含むことが更に好ましい。また、上記重合性化合物は、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)の(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましい。
(オリゴマー)
画像記録層に含まれる重合性化合物としては、オリゴマーである重合性化合物(以下、単に「オリゴマー」ともいう。)を含有することが好ましい。
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、UV耐刷性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
また、UV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
UV耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
本明細書においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
-ウレタン結合を有する化合物-
ウレタン結合を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、2官能~5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能又は3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、9H-フルオレン-2,7-ジイソシアネート、9H-フルオレン-9-オン-2,7-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の重合性基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の重合性基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L~Lはそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
~Lとしては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
-エステル結合を有する化合物-
また、エステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
-エポキシ残基を有する化合物-
エポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記オリゴマーの含有量は、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、末端にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
重合性化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)及び、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、又は、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報等に記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
重合性化合物の1種であるオリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
中でも、上記画像記録層は、UV耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物の含有量(重合性化合物を2種以上含む場合は、重合性化合物の総含有量)は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~60質量%であることが更に好ましく、10質量%~40質量%であることが特に好ましい。
[親水性高分子化合物]
上記画像記録層は、親水性高分子化合物を含んでいてもよい。親水性高分子化合物としては、セルロース化合物等が挙げられる。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物の置換度は、0.1~6.0であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000~5,000,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
[その他の成分]
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。その他の成分として、具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159の記載を参照することができる。
〔画像記録層の形成〕
本開示に用いられる平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1~50質量%程度であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。
<下塗り層>
本開示に用いられる平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
[親水性化合物]
下塗り層は、現像性の観点から、親水性化合物を含むことが好ましい。
親水性化合物としては、特に制限はなく、下塗り層に用いられる公知の親水性化合物を用いることができる。
親水性化合物としては、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。
また、親水性化合物としては、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩など)が好ましく挙げられる。
親水性化合物としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
また、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)は、傷汚れ抑制性の観点から、下塗り層に限らず、上記アルミニウム支持体上の層に含まれることが好ましい。上記アルミニウム支持体上の層は、画像記録層が形成されている側の層であることが好ましく、また、上記アルミニウム支持体と接する層であることが好ましい。
上記アルミニウム支持体上の層としては、アルミニウム支持体と接する層として、下塗り層又は画像記録層が好ましく挙げられる。また、上記アルミニウム支持体と接する層以外の層、例えば、保護層又は画像記録層に、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩が含まれていてもよい。
本開示に用いられる平版印刷版原版において、画像記録層が、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
また、本開示に用いられる平版印刷版原版において、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面が、少なくともヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む組成物(例えば、水溶液等)により表面処理される態様も好ましく挙げられる。上記態様である場合、処理されたヒドロキシカルボン酸又はその塩は、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層(例えば、画像記録層又は下塗り層)に含まれた状態で少なくとも一部を検出することができる。
下塗り層等のアルミニウム支持体と接する画像記録層側の層にヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面を親水化することができ、また、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角を110°以下と容易にすることができ、傷汚れ抑制性に優れる。
ヒドロキシカルボン酸とは、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基とを有する有機化合物の総称のことであり、ヒドロキシ酸、オキシ酸、オキシカルボン酸、アルコール酸とも呼ばれる(岩波理化学辞典第5版、(株)岩波書店発行(1998)参照)。
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、下記式(HC)で表されるものが好ましい。
HC(OH)mhc(COOMHCnhc 式(HC)
式(HC)中、RHCはmhc+nhc価の有機基を表し、MHCはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属又はオニウムを表し、mhc及びnhcはそれぞれ独立に、1以上の整数を表し、nが2以上の場合、Mは同じでも異なってもよい。
式(HC)において、Rで表されるmhc+nhc価の有機基としては、mhc+nhc価の炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基は置換基及び/又は連結基を有してもよい。
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルケニレン基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルキニレン基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基等、芳香族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、アレーンペンタイル基等が挙げられる。ヒドロキシル基及びカルボキシル基以外の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。また、連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子により構成されるもので、その原子数は好ましくは1~50である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合及びエステル結合のいずれかで複数連結された構造を有していてもよい。
HCで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。オニウムとしてはアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等が挙げられ、アンモニウムが特に好ましい。
また、MHCは、傷汚れ抑制性の観点から、アルカリ金属又はオニウムであることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましい。
mhcとnhcとの総数は、3以上が好ましく、3~8がより好ましく、4~6が更に好ましい。
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、分子量が600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。また、上記分子量は、76以上であることが好ましい。
上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸は、具体的には、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸等)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、シリング酸等)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸等)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(没食子酸等)、フェニル酢酸誘導体(マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸等)、ヒドロケイヒ酸誘導体(メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、セレブロン酸、カルミン酸等)等が挙げられる。
これらの中でも、上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシ基を2個以上有している化合物が好ましく、ヒドロキシ基を3個以上有している化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を5個以上有している化合物が更に好ましく、ヒドロキシ基を5個~8個有している化合物が特に好ましい。
また、カルボキシ基を1個、ヒドロキシ基を2個以上有しているものとしては、グルコン酸、又は、シキミ酸が好ましい。
カルボキシ基を2個以上、ヒドロキシ基を1個有しているものとしては、クエン酸、又は、リンゴ酸が好ましい。
カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有しているものとしては、酒石酸が好ましい。
中でも、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸が特に好ましい。
親水性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
下塗り層に親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む場合、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸及びその塩の含有量は、下塗り層の全質量に対し、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることが好ましく、8質量%~30質量%であることがより好ましく、10質量%~30質量%であることが特に好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤等を含有してもよい。
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m~100mg/mが好ましく、1mg/m~30mg/mがより好ましい。
<保護層>
本開示に用いられる平版印刷版原版は、画像記録層上に、保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有していてもよい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m~10g/mが好ましく、0.02g/m~3g/mがより好ましく、0.02g/m~1g/mが特に好ましい。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。また、平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径を意味する。
実施例において、赤外線吸収剤のHOMO及びLUMO、電子受容型重合開始剤のLUMO、電子供与型重合開始剤のHOMO、マイクロポアの平均径、比表面積ΔS、極大吸収波長におけるモル吸光係数ε及び極大吸収波長λmaxは、上述した方法によりそれぞれ測定した。
(1)支持体の作製:表面処理:機械的粗面化処理、陽極酸化処理:硫酸
<<機械的粗面化処理(ブラシグレイン法:MGV)>>
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行い、アルミニウム板表面を砂目立てした。機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm:revolutions per minute)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
<<アルカリエッチング処理>>
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、6g/mであった。
<<酸性水溶液を用いたデスマット処理>>
次に、硝酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硝酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。
<<電気化学的粗面化処理>>
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
<<アルカリエッチング処理>>
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、表1又は表2に記載の液温でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
なお、アルカリエッチング処理の温度を変更することで、上記粗面化処理が施された面のアルミニウムのエッチング量を制御して、ΔSを調整することができる。
<<酸性水溶液を用いたデスマット処理>>
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、30℃であった。
<<電気化学的粗面化処理>>
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
<<アルカリエッチング処理>>
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
<<酸性水溶液を用いたデスマット処理>>
次に、硫酸水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、硫酸水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、35℃であった。
<<第1段階の陽極酸化処理>>
直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
<<ポアワイド処理>>
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
<<第2段階の陽極酸化処理>>
直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
上記で得られた第2陽極酸化処理工程後のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜中の大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(nm)、小径孔部の連通位置における平均径(nm)、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、並びに、ピット密度(マイクロポアの密度、単位;個/μm)を、表1及び表2にまとめて示す。
なお、マイクロポアの平均径(大径孔部及び小径孔部の平均径)は、大径孔部表面及び小径孔部表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部及び小径孔部)の径を測定し、平均した値である。なお、大径孔部の深さが深く、小径孔部の径が測定しづらい場合、および、小径孔部中の拡径孔部の測定を行う場合は、陽極酸化皮膜上部を切削し、その後各種径を求めた。
マイクロポアの深さ(大径孔部及び小径孔部の深さ)は、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE-SEMで観察し(大径孔部深さ観察:15万倍、小径孔部深さ観察:5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
(2)支持体の作製:表面処理:塩酸EG、陽極酸化処理:硫酸
<<アルカリエッチング処理>>>
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行い、アルミニウム板表面を砂目立てした。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
<<酸性水溶液を用いたデスマット処理>>
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
<<電気化学的粗面化処理(塩酸EG)>>
次に、塩酸電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。塩酸濃度は13g/L、アルミ濃度は15g/L、硫酸濃度は1g/Lとし、アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
<<アルカリエッチング処理>>
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、表1又は表2に記載の液温でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。エッチング処理の温度を変更することで、電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムのエッチング量を制御した。その後、水洗処理を行った。
なお、ΔSは、塩酸を用いた電気化学的粗面化処理後のアルミニウムのエッチング量を調整することができる。
<<酸性水溶液を用いたデスマット処理>>
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
<<第1段階の陽極酸化処理(AD処理)>>
直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
<<ポアワイド処理>>
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
<<第2段階の陽極酸化処理>>
直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
(3)支持体の作製:表面処理:塩酸EG、陽極酸化処理:硫酸
上記(2)支持体の作成方法において、電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理に用いるアルカリ水溶液の液温を表1又は表2に記載の液温に変更し、第1段階及び第2段階の陽極酸化処理に用いた電解液をリン酸に変更した以外は、同様の条件にて支持体を作製した。
上記のようにして得られた各支持体の詳細は、表1及び表2に示す。
(実施例1~17、及び、比較例1~4)
<平版印刷版原版の形成(準備工程)>
表1又は表2に記載の支持体上(印刷面側)に、下記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が87mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥し、乾燥塗布量0.971g/mの画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
なお、ポリマー粒子(ミクロゲル)を含む画像記録層塗布液の調製は、下記ミクロゲル液以外の成分を混合した感光液と、下記ミクロゲル液とを塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
<下塗り層用塗布液>
・下塗り層用化合物(P-1):0.1370部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)製):0.00149部
・水:3.29000部
<画像記録層塗布液>
・IR-1(赤外線吸収剤、下記化合物):0.01970部
・表1又は表2に記載の酸発色剤:0.02000部
・IA-1(酸発生剤(電子受容型重合開始剤)、下記化合物):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(ボレート化合物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(TPB、HOMO=-5.90eV):0.02500部
・重合性化合物(共栄社化学(株)、ウレタンアクリレートオリゴマーUA-515H):0.24200部
・アニオン界面活性剤(A-1、下記化合物):0.02600部
・フッ素系界面活性剤(W-1、下記化合物):0.00416部
・2-ブタノン:4.92部
・1-メトキシ-2-プロパノール:3.10部
・メタノール:2.79部
・ミクロゲル液(下記の方法で調製したミクロゲル液):2.32部
〔酸発生剤(電子受容型重合開始剤)〕
IA-1:下記構造の化合物、LUMO=-3.02eV
〔赤外線吸収剤〕
IR-1:下記構造の化合物、HOMO=-5.35eV、LUMO=-3.73eV、なお、Phはフェニル基を表す。
〔界面活性剤〕
アニオン界面活性剤(A-1):下記化合物
フッ素系界面活性剤(W-1):下記化合物
<ミクロゲル液の調製>
・ミクロゲル(ポリマー粒子):2.640部
・蒸留水:2.425部
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲルの調製法を以下に示す。
-多価イソシアネート化合物(1)の調製-
イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
-ミクロゲルの調製-
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(ポリマー粒子)の水分散液が得られた。光散乱法により平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
~油相成分~
(成分1)酢酸エチル:12.0部
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル当量)とキシレンジイソシアネート(18モル当量)を付加させ、これに片末端メチル化ポリオキシエチレン(1モル当量、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76部
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42部
~水相成分~
蒸留水:46.87部
<評価>
〔紫外線硬化型インキ耐刷性(UV耐刷性)〕
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)10%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。表1又は表2に記載の酸性湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)紙に500枚印刷を行った。
続けて、更に印刷を行った。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン10%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも3%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。
印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により以下の基準で評価した。数値が大きいほど、耐刷性が良好である。評価結果は表1又は表2に記載した。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
-評価基準-
A:相対耐刷性の値が、90を超える
B:相対耐刷性の値が、75を超え90以下である
C:相対耐刷性の値が、75以下である
〔視認性(発色性)〕
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにより、出力11.5W、外面ドラム回転数220rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inch=25.4mm)の条件で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光直後、平版印刷版原版の発色を測定した。測定は、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM-S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で行った。発色性は、L表色系のL値(明度)を用い、露光部のL値と未露光部のL値との差ΔL(具体的には、露光部のL値-未露光部のL値)により評価した。評価結果は表1又は表2に記載した。ΔLの値が大きい程、発色性が優れる。
-評価基準-
A:ΔLが6.0以上である
B:ΔLが6.0未満である
〔残色の抑制性〕
作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)50%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。表1又は表2に記載の酸性湿し水2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(76.5kg)紙に200枚印刷を行った。
上記機上現像において、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに印刷した後、印刷機から版を外し、目視で非画像の色味を評価した。非画像部の色味が支持体の色味に近いほど、残色が少なく、残力の抑制性が良好であるといえる。評価結果は表1又は表2に記載した。
-評価基準-
5点:非画像部の色味が支持体の色味と同じである。
4点:非画像部の一部に、僅かに、酸発色剤に由来する色味が確認される。
3点:非画像部の一部に、酸発色剤に由来する色味が確認される。
2点:非画像部全面に、僅かに、酸発色剤に由来する色味が確認される。
1点:非画像部全面に、酸発色剤に由来する色味が確認される。
上記で説明した以外の表1及び表2に記載の略称の詳細を、以下に示す。
なお、表1及び表2中の酸発生剤CL-1の極大吸収波長λmax「440/578」は、波長440nm及び578nmにそれぞれ極大吸収波長を有することを示している。
表1及び表2中の「アルカリ処理(℃)」とは、電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理に用いたアルカリ水溶液の液温を示している。なお、表1又は表2中の実施例1及び2並びに比較例1及び3における「アルカリ処理(℃)」とは、1回目の電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理に用いたアルカリ水溶液の液温を示している。
〔酸発色剤〕
CL-1:下記構造の化合物、S-205(福井山田化学工業(株)製)
S-15:下記構造の化合物
S-1:下記構造の化合物
〔酸性湿し水〕
S-Z1:富士フイルム(株)製エッチ液S-Z1を、S-Z1/水=2/98(容量比)で希釈した液。
VITAFOUNTGOLD:Bottcher製VITAFOUNTGOLDを、VITAFOUNTGOLD/水=2/98(容量比)で希釈した液。
表1及び表2に記載の結果から、本開示に係る平版印刷方法により得られた実施例1~17の平版印刷版は、比較例1~4の平版印刷版に比べて、UVインキを使用した場合であっても、得られる平版印刷版の耐刷性に優れ、残色の抑制性に優れている。
また、表1及び表2に記載の結果から、本開示に係る平版印刷方法により得られた実施例1~17の平版印刷版は、視認性にも優れる。
[符号の説明]
1:アルミニウム板、2,4:ローラ状ブラシ、3:研磨スラリー液、5,6,7,8:支持ローラ、18:アルミニウム板、ta:アノード反応時間、tc:カソード反応時間、tp:電流が0からピークに達するまでの時間、Ia:アノードサイクル側のピーク時の電流、Ic:カソードサイクル側のピーク時の電流、AA:アルミニウム板のアノード反応の電流、CA:アルミニウム板のカソード反応の電流、10:平版印刷版原版、12a,12b:アルミニウム支持体、14:下塗り層、16:画像記録層、20a,20b:陽極酸化皮膜、22a,22b:マイクロポア、24:大径孔部、26:小径孔部、D:大径孔部の深さ、50:主電解槽、51:交流電源、52:ラジアルドラムローラ、53a,53b:主極、54:電解液供給口、55:電解液、56:補助陽極、60:補助陽極槽、W:アルミニウム板、A1:給液方向、A2:電解液排出方向、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618,26:電解液、620:給電電極、622,628:ローラ、624:ニップローラ、630:電解電極、632:槽壁、634:直流電源
2019年12月27日に出願された日本国特許出願2019-239025号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。

Claims (20)

  1. アルミニウム支持体上に、酸発色剤と酸発生剤とを含む画像記録層を有する平版印刷版原版を準備する準備工程と、
    前記平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程と、
    露光後の平版印刷版原版に酸性湿し水を供給して、前記画像記録層の非画像部を除去する現像工程と、
    現像して得られた平版印刷版を、印刷インキ、及び、酸性湿し水を用い印刷する印刷工程と、
    を含み、
    前記アルミニウム支持体が、アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを含み、
    前記陽極酸化皮膜が前記アルミニウム板よりも前記画像記録層側に位置し、前記陽極酸化皮膜は、前記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
    前記マイクロポアの前記陽極酸化皮膜表面における平均径が10nm超100nm以下であり、原子間力顕微鏡を用いて、前記陽極酸化皮膜の前記画像記録層側の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sと、幾何学的測定面積Sとから、下記式(i)により求められる値である比表面積ΔSが15%以上60%以下であ
    前記酸発色剤の極大吸収波長におけるモル吸光係数εが、40,000~100,000である、
    平版印刷方法。
    ΔS=(S-S)/S×100(%)・・・(i)
  2. 現像して得られた平版印刷版上の酸性湿し水を乾燥させる乾燥工程を更に含む、請求項1に記載の平版印刷方法。
  3. 前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、
    前記大径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、前記小径孔部の前記連通位置における平均径が、13nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷方法。
  4. 前記大径孔部の深さが、10nm~130nmである、請求項3に記載の平版印刷方法。
  5. 前記大径孔部の前記陽極酸化皮膜表面における平均径が、20nm~100nmである請求項3に記載の平版印刷方法。
  6. 露光後の前記平版印刷版原版の画像部の極大吸収波長λmaxの少なくとも1つが、400nm~700nmである、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の平版印刷方法。
  7. 前記画像記録層が重合開始剤を含み、前記重合開始剤が、電子供与型重合開始剤、及び、電子受容型重合開始剤を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の平版印刷方法。
  8. 前記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、前記赤外線吸収剤のHOMOと前記電子供与型重合開始剤のHOMOとの差が、0.70eV以下である、請求項に記載の平版印刷方法。
  9. 前記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、前記電子受容型重合開始剤のLUMOと前記赤外線吸収剤のLUMOとの差が、0.80eV以下である、請求項に記載の平版印刷方法。
  10. 前記画像記録層が重合性化合物を含み、前記重合性化合物が、7官能以上の重合性化合物を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の平版印刷方法。
  11. 前記重合性化合物が、10官能以上の重合性化合物を含む、請求項10に記載の平版印刷方法。
  12. 前記酸発色剤が、ロイコ色素である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の平版印刷方法。
  13. 前記ロイコ色素が、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素である請求項12に記載の平版印刷方法。
  14. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物である請求項13に記載の平版印刷方法。


    式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、X1は存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
  15. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物である、請求項13又は請求項14に記載の平版印刷方法。


    式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
  16. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物である請求項13~請求項15のいずれか1項に記載の平版印刷方法。


    式(Le-7)~式(Le-9)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra~Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Rc及びRcはそれぞれ独立に、アリール基を表す。
  17. Ra~Raがそれぞれ独立に、アルコキシ基である請求項16に記載の平版印刷方法。
  18. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、前記式(Le-8)で表される化合物である、請求項16又は請求項17に記載の平版印刷方法。
  19. ~Xが水素原子であり、Y及びYがCである請求項18に記載の平版印刷方法。
  20. Rb及びRbがそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である請求項18又は請求項19に記載の平版印刷方法。
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