JP7345843B2 - マイクロウェル付きナノピラー構造基板、および、その製造方法 - Google Patents

マイクロウェル付きナノピラー構造基板、および、その製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、局在表面プラズモン共鳴を利用した測定や検出に好ましく用いられる、マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造方法に関する。また、本発明は、該製造方法によって得られるマイクロウェル付きナノピラー構造基板に関する。
細胞の性質には不均一性が存在する。細胞内の遺伝子発現、タンパク質合成、代謝物質の合成と分解などが乱雑に変動しているので、同じゲノムを持った細胞の集団であっても、細胞同士の間には、サイズ、タンパク質レベル、発現RNA転写物などの点で、互いに顕著な差異がある。
個々の細胞ごとの性質を計測して明らかにすることは、疾患増悪誘導細胞の同定、病的機能細胞の特性の同定、自己抗体のエピトープ同定、自己抗体の選択的濃縮と多様性の解明などに繋がる。しかし、従来の試験方法に基づく計測では、細胞の性質の平均値しか得られないので、個々の細胞のそれぞれの性質を別個に把握することは困難であった。
これに対して、近年、局在表面プラズモン共鳴を利用することで前記細胞固有の性質の測定を可能とするマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板が開発された(非特許文献1)。なお、局在表面プラズモン共鳴を利用した物質の検出原理については、例えば、特許文献1や非特許文献2に詳細に記載されている。
非特許文献1に記載されたマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板100は、図20(a)、(b)に模式的に示すように、個々の細胞をトラップするための複数のマイクロウェル120と、その周囲を取り囲む、金キャップ付きナノピラー構造110とを主面に備えた基板であり、該主面の金キャップ付きナノピラー構造110の領域中に、複数のマイクロウェル120が分散している。金キャップ付きナノピラー構造110は、局在表面プラズモン共鳴を発生させるための微細な凹凸構造であって、ナノピラー構造(ナノピラーが集合した凹凸構造)を構成する個々のナノピラー111の頂部表面に、Au膜(図示を省略)が付与されたものである。
個々のマイクロウェル120の周囲を取り囲む金キャップ付きナノピラー構造110に所定の波長光を照射すると、局在表面プラズモン共鳴が生じ、特定波長の光が吸収される。その特定波長(吸収波長)は、金キャップに接触する媒質(即ち、マイクロウェル内にトラップされた細胞からマイクロウェルの周囲に流れ出した分泌物)の屈折率に応じて変化(シフト)する。よって、マイクロウェルの周囲に発生する局在表面プラズモン共鳴の吸収波長のシフトを計測することによって、該マイクロウェル内の細胞の性質を知ることができる。
金キャップ付きナノピラー構造とそれを用いたプラズモニックセンシング(プラズモニック・バイオ・センシング)については、例えば、非特許文献3に詳細に記載されている。また、ナノピラー構造を製造するためのナノインプリントの型となるナノポーラス構造については、例えば、特許文献2、3に詳細に記載されている。
特開2005-181296号公報 国際公開公報WO 2007/097454 特開2012-162769号公報
上記非特許文献1に記載されたマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板は、次の工程によって製造されている。
(工程1:ナノポーラス構造基板に局所的にレジスト膜を付与する工程)
この工程では、図21(a)に示すように、転写の型のための中間部材として、一方の主面(図では上面)に多数のナノポーラス(微細穴)210が密集して設けられた基板(ナノポーラス構造基板)200が用いられる。前記主面のうち、マイクロウェルに対応する領域に、ナノポーラスの開口を覆うようにレジスト膜(材料:SU-8)220が設けられて、転写用の型230が形成される。レジスト膜220の周囲の領域には、多数のナノポーラスの開口が露出している。
(工程2:転写工程)
この工程では、図21(b)に示すように、ポリマー材料(シクロオレフィンポリマー)からなるシート100aと型230を、ガラス転移温度以上の温度(160℃)に加熱し、型230の凹凸(ナノポーラス構造と、レジスト膜)を該シート100aに押し付けて転写する。ガラス転移温度以上の高温で流動化したポリマー材料は、各ナノポーラス内に流れ込み、ナノピラーとなる。一方、レジスト膜220で覆われたナノポーラスにはポリマー材料は入り込むことができないので、ポリマー材料は、レジスト膜220の周囲へと流動する。さらに、レジスト膜220は、流動化したポリマー材料を押しのけてシート内に深く入り込み、マイクロウェルが形成される。
(工程3:転写後に成形品を型から剥離する工程)
この工程では、図21(c)に示すように、ガラス転移温度より十分に低い温度80℃へと冷却され、型230から成形品が剥離されて、ナノピラー111の集合体(ナノピラー構造)とマイクロウェル120とを持った、マイクロウェル付きナノピラー構造基板100bが得られる。
(工程4:金キャップ付与工程)
この工程では、前記のマイクロウェル付きナノピラー構造基板におけるナノピラー構造の表面(とりわけ、ナノピラーの頂部)に、スパッタリング等によって金キャップ(Au膜)が付与され、マイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板が得られる(図示は省略する)。この工程では、マイクロウェルの内部底面にも金キャップが形成されてよい。
前記の製造方法は、ナノインプリント型に対して、マイクロウェルを形成すべき領域のナノポーラスをレジスト膜で目止めしてナノピラーを形成せず、それと同時に、その部分にレジスト膜に対応したマイクロウェルを形成する方法である。
しかしながら、前記の製造方法には、次の問題が存在する。
先ず、転写工程においてガラス転移温度以上に加熱されたシート100aのポリマー材料は、冷却時に収縮し、レジスト膜を周囲から強く抱き込んだ状態となって、該レジスト膜に密着する。このため、図22(a)に示すように、転写後に、型から成形品を剥離する際に、レジスト膜220がマイクロウェルの底に張り付いたまま、成形品100といっしょに型230から剥離する場合がある。また、図22(b)に示すように、各レジスト膜220が破断して、その破片220aがマイクロウェルの底に張り付いたまま、型230から剥離する場合がある。これらのレジスト膜の剥離により、利用できない不良のマイクロウェルが発生し、また、型を繰り返し使用することができなくなる。
前記のレジスト膜の剥離を抑制するためには、レジスト膜220がマイクロウェルから抜けやすいように、該レジスト膜220を低く広いパターンとする必要がある。しかし、その結果、マイクロウェルも浅く広い円錐台状の凹部となるので、複数の細胞がマイクロウェル内にトラップされてしまい、また、液体の少しの流れで、マイクロウェル内から細胞が出て行き易くなる。さらには、細胞からの分泌物がマイクロウェルの周囲の検出領域(金キャップ付きナノピラー構造の領域)に広く拡散して希釈されるので、分泌物の検出が困難となる。
また、レジスト膜を付与する工程では、先ず、ナノポーラス構造基板の主面全体に液状レジストが塗布され、次に、パターニング(露光)が施され、目的の領域以外のレジスト膜が除去される。しかし、各ナノポーラス内には種々の量の液状レジストが不可避的に残留する。この影響により、ナノピラーの形状(とりわけ高さ)が不均一になる。
本発明の目的は、前記の問題を解消し、マイクロウェル付きナノピラー構造基板の好ましい製造方法を提供し、かつ、該製造方法によって、より好ましいマイクロウェル付きナノピラー構造基板を提供することにある。
本発明の主たる構成は、次のとおりである。
〔1〕マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造方法であって、
前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板は、その第1の主面に、マイクロウェルの周囲をナノピラー構造が取り囲んでなるマイクロウェル付きナノピラー構造を有し、
当該製造方法は、高分子材料製のナノピラー構造基板を準備する工程を有し、該ナノピラー構造基板は、その第1の主面に、ナノピラー構造が転写によって設けられたナノピラー領域を有し、かつ、
当該製造方法は、マイクロウェル転写工程を有し、該マイクロウェル転写工程では、前記ナノピラー構造基板のナノピラー領域に対して、前記高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度で、マイクロウェル成形型である凸状体を押し付けて、前記ナノピラー構造およびその直下の部分を塑性変形させて前記マイクロウェルを形成し、それにより、前記マイクロウェル付きナノピラー構造を形成する、
前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造方法。
〔2〕前記ナノピラー構造基板の高分子材料が、シクロオレフィンポリマーであって、前記凸状体を押し付ける際の前記ガラス転移温度より低い温度が、室温~該シクロオレフィンポリマーのガラス転移温度よりも5℃低い温度である、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記マイクロウェルの開口部の形状が、円形または正多角形であって、
該開口部の面積と同じ面積を持った円の直径が、6~60μmであり、
該マイクロウェルの深さが、4~60μmである、
前記〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記マイクロウェル転写工程では、前記凸状体を備えた型基板が用いられ、該型基板の第1の主面には、前記マイクロウェル付きナノピラー構造を形成するための第1の領域が含まれており、該第1の領域に前記凸状体が設けられており、
前記型基板と前記ナノピラー構造基板とがそれぞれの第1の主面を互いに対向させて重ね合わせられ、圧縮荷重が加えられ、前記ナノピラー領域に前記凸状体が押し付けられて、前記マイクロウェルが形成される、
前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕前記ナノピラー構造の表面を基準とする、マイクロウェルの深さはd1であり、
前記型基板の第1の主面を基準とする、前記凸状体の高さh1は、前記深さd1よりも所定の寸法e1だけ大きく、
前記型基板の第1の主面には、第1の領域とは異なる領域に、高さe1の抵抗用突起体がさらに設けられ、該抵抗用突起体は、前記凸状体がナノピラー構造をd1だけ圧縮した時点で、該ナノピラー構造の表面に接触して、前記凸状体のさらなる圧縮に抵抗するものである、
前記〔4〕に記載の製造方法。
〔6〕前記型基板の第1の主面には、該型基板の第1の主面を、前記ナノピラー構造基板の第1の主面に平行に接触させるためのガイドとなるように、前記第1の領域を取り囲む環状突起体がさらに設けられており、該環状突起体の高さは、前記凸状体の高さと同じh1である、
前記〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕前記型基板の第1の主面の中央部の領域には、第1の抵抗用突起体が設けられ、
前記第1の抵抗用突起体を同心状に取り囲んで、前記第1の領域が環状の領域として設けられ、
前記第1の領域を同心状に取り囲んで、前記環状突起体が設けられ、
前記環状突起体を同心状に取り囲んで、第2の抵抗用突起体が設けられている、
前記〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法によって製造されたマイクロウェル付きナノピラー構造基板であって、
当該マイクロウェル付きナノピラー構造基板は、その第1の主面に、マイクロウェルの周囲をナノピラー構造が取り囲んでなるマイクロウェル付きナノピラー構造を有し、
前記製造方法のマイクロウェル転写工程に起因して、前記マイクロウェルの内部底面が、圧縮され塑性変形したナノピラー構造によって構成されている、
前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板。
〔9〕前記ナノピラー構造の、少なくとも各ナノピラーの頂部表面上に、金属膜がさらに設けられている、前記〔8〕に記載のマイクロウェル付きナノピラー構造基板。
本発明の製造方法では、ナノピラー構造基板に対して、該ナノピラー構造基板の材料である高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度においてマイクロウェル成形型である凸状体が押し付けられ、マイクロウェルが成形される。よって、高分子材料の収縮が無く、また、十分な強度で支持体に固定された凸状体を用いることができるので、凸状体が転写ごとに剥離するといった従来のトラブルが抑制される。よって、成形品の不良率が低減され、かつ、該凸状体を備えた型(後述の型基板)を繰り返して使用することが可能になる。
また、従来技術の説明で述べたとおり、従来の製造方法では、型であるナノポーラス構造基板の主面全体に液状レジストが塗布され、次に、パターニングが施され、目的の領域以外のレジスト膜が除去されていた。しかし、各ナノポーラス内には種々の量の液状レジストが不可避的に残留し、その影響により、ナノピラーの形状(とりわけ高さ)が不均一になっていた。これに対して、本発明では、型であるナノポーラス構造基板の主面にはレジストを塗布しないので、均一なナノピラーを持ったナノピラー構造基板を用いることができる。また、本発明の好ましい態様では、抵抗用突起体を用いて加圧を止めているので、マイクロウェルの転写時に、適切な荷重を印加することができ、ナノピラー構造を保護することができる。
また、本発明の製造方法によれば、転写後に凸状体がマイクロウェルから抜けないといったトラブルが抑制されるので、個々のマイクロウェルの形状を、より小さい開口面積でかつより深くすることが可能になる。よって、1つの細胞を好ましく保持し得るマイクロウェルが製造可能である。これにより、液体中を沈降して個々のマイクロウェル内に入った細胞は、液体が流れても、各マイクロウェルから逸脱し難く、そのまま保持される可能性が高くなる。また、1つの細胞からの分泌物は、小さいマイクロウェルの限られた周囲の検出領域だけに広がるので、分泌物の検出感度が向上する。
図1は、本発明の製造方法を概略的に説明するための断面図である。同図では、分かりやすく説明するために、各部同士の間の寸法関係を変更している(写真図以外の他の図も同様である)。同図では、領域を区別するために、マイクロウェル成形型の凸状体だけにハッチングを施している。 図2は、ナノピラー構造基板の製造方法(ナノインプリント)を説明する断面図である。同図ではハッチングを全て省略している。 図3は、アルミニウム板に対する陽極酸化処理(とりわけ、二次陽極酸化処理)によって得られるナノポーラス構造を示す模式図である。図3(a)は、ナノポーラス構造の板面を見た図であり、領域を区別し易いように、アルミナの部分にハッチングを施している。図3(b)は、図3(a)のX1-X1断面矢視図である。 図4は、アルミニウム板に対する二次陽極酸化処理によって得られるナノポーラス構造の板面の様子の一例を示す、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)によって得られた顕微鏡写真図(AFM写真図)である。 図5は、ナノピラー構造基板の主面を示す、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)によって得られた写真図(SEM写真図)である。微細な多数のナノピラーが集合しており、ナノピラー同士の間の凹部が網状につながっている。該SEM写真図の下側に表示された倍率を示すスケールにおける目盛りの単位長さ(相隣り合う2本の目盛線の間の距離)は、0.2μmであり、合計11本の目盛線全体の端から端までの長さが2μmである。 図6は、本発明の製造方法によって得られた、マイクロウェル付きナノピラー構造基板の主面を示すSEM写真図である。同図の例では、マイクロウェル(黒い丸の部分)は、正三角形を最小構成単位とする細密の網状パターンの該正三角形の頂点に、配置されている。同図のSEM写真図に表示されたスケールにおける目盛りの単位長さは30μmであり、目盛全体の端から端までの長さが300μmである。 図7は、図6のマイクロウェル付きナノピラー構造基板の主面を部分的に拡大した図である。図7(a)は、1つのマイクロウェルを拡大して示したSEM写真図であって、図の中央には、マイクロウェルの円形の開口が示されている。同図のSEM写真図に表示されたスケールにおける目盛りの単位長さは1μmであり、目盛全体の端から端までの長さが10μmである。図7(b)は、図7(a)における領域(A1)を拡大したSEM写真図である。同図のスケールにおける目盛りの単位長さは0.2μmであり、目盛全体の端から端までの長さが2μmである。図7(c)は、図7(a)における領域(A2)を拡大したSEM写真図である。同図のスケールにおける目盛りの単位長さは0.4μmであり、目盛全体の端から端までの長さが4μmである。 図8は、本発明の製造方法に用いられるマイクロウェル成形型の好ましい態様の一例を示す断面図(該マイクロウェル成形型を中央部分で切断したときの断面を示している)である。同図ではハッチングを全て省略している。図8(a)は、型全体を示しており、各部の高さの関係を分かりやすく示すために、高さを誇張して描いている。例えば、凸状体は、実際には、直径と高さが同程度の柱状体が分散して配置されたものであるが、図では、細長い線が櫛歯のように密集した状態として描いている。図8(b)は、図8(a)のA3部分を拡大した、部分拡大断面図である。 図9は、本発明の製造方法に用いられるマイクロウェル成形型の好ましい態様の一例を示す図である。図9(a)は、該成形型の板面を見た図(平面図)であり、凸状体や他の部分の配置パターンが示されている。図9(b)は、図9(a)のX2-X2断面矢視図である。同図では領域を区別するためにハッチングを施している。図9(b)も、図8(a)と同様に、各部の高さの関係を分かりやすく示すために、高さを誇張して描いている。 図10は、図9に示したマイクロウェル成形型の実施品の一例を示す写真図である。図10(a)は、成形型全体の様子を示しており、図10(b)は、図10(a)の中央部分を拡大した写真図である。 図11は、図10に示したマイクロウェル成形型が転写された後の、ナノピラー構造基板(成形品)の板面を示した光学顕微鏡写真図である。図10(a)は、成形品の板面を広く示しており、図11(b)は、図11(a)の領域A4を拡大した光学顕微鏡写真図である。 図12は、図9に示したマイクロウェル成形型に、ナノピラー構造基板が押し付けられて、該成形型の各部がナノピラー構造を順次に圧縮して行く際の荷重〔N〕の変化を示すグラフである。 図13は、図12のグラフに示された各荷重点において、ナノピラー構造がマイクロウェル成形型によってどのように圧縮されるかを示す図である。 図14は、本発明によって得られるマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板を好ましく利用するための部材の態様を例示する図である。図14(a)は、該部材が付与されたマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の上面図である。図14(b)は、図14(a)のX3-X3断面矢視図である。図14(c)は、図14(a)のX4-X4断面矢視図である。 図15は、本発明の実施例において、ナノポーラス構造を型として用い、高分子材料製のシートの主面にナノピラー構造として転写(ナノインプリント)する際の、プレス装置、高分子材料製のシート、ナノポーラス構造基板の配置構成の一例を説明する図である。図では、各層を区別し易いように、型と高分子材料製のシート以外にハッチングを施している。 図16は、本発明の実施例において、ナノピラー構造基板の主面に、マイクロウェル成形型によってマイクロウェルを転写する際の、プレス装置、ナノピラー構造基板、マイクロウェル成形型の配置構成の一例プレス装置の構成の一例を説明する図である。図では、各層を区別し易いように、ナノピラー構造基板以外にハッチングを施している。 図17は、ナノピラー構造基板の主面に対してマイクロウェルを形成する前と後の、局在表面プラズモン共鳴の差異を比較した実験結果を示すグラフ図である。 図18は、本発明によるマイクロウェル付きナノピラー構造基板(金キャップ付き)の使用状態の一例を示す断面図である。 図19は、本発明によるマイクロウェル付きナノピラー構造基板(金キャップ付き)の検出特性を調べた実験結果を示す図である。 図20は、従来のマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の構造を概略的に示す図である。図20(a)は、該マイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の一例を示した斜視図であり、多数のマイクロウェル120が配置された状態が明らかに示されているが、ナノピラー構造は小さすぎて同図には表われていない。図20(b)は、図20(a)における一部の領域100eを拡大して示した模式図であって、該マイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の基板面を示す平面図である。図20(c)は、図20(b)のX10-X10断面の端面図である。同図では、分かりやすく説明するために、各部同士の間の寸法関係を変更している。 図21は、従来のマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の製造方法を説明するための断面図(端面図)である。同図は、ナノポーラスの内部および形成されるマイクロウェルの内部が見えるように切断された図である。領域を区別するために、シート100a、および、成形品(マイクロウェル付きナノピラー構造基板)100bにハッチングを施している。 図22は、従来のマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の製造方法の問題点を示す断面図(端面図)である。
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法によって製造されるマイクロウェル付きナノピラー構造基板は、該基板の一方の主面である第1の主面に、マイクロウェルの周囲をナノピラー構造が取り囲んでなるマイクロウェル付きナノピラー構造を有するものである。
当該製造方法では、先ず、図1(a)における上側の部材として示すように、高分子材料製のナノピラー構造基板10aを準備する。該ナノピラー構造基板は、その基板本体11の一方の主面である第1の主面(図では下面)に、ナノピラー構造12が転写によって設けられたナノピラー領域を有するものである。図の例では、基板本体11の下面全体がナノピラー領域である。該ナノピラー構造基板10aは、ナノピラー構造12と基板本体11とが一体になった、全体が同じ高分子材料からなる基板である。ナノピラー構造12は、局在表面プラズモン共鳴の発生を可能とする、ナノオーダーサイズの微細な凹凸構造であり、該ナノピラー構造12を構成する個々のナノピラーの頂部に金属膜が付与されて、これに所定の波長光が照射されると、局在表面プラズモン共鳴が発生する。
当該製造方法は、図1(a)~図1(b)に示すように、前記のナノピラー構造基板10aのナノピラー領域に対して、マイクロウェルを転写するマイクロウェル転写工程を有する。図1の例では、凸状体22がベース板21の主面上の所定位置に設けられ、型基板20が構成されている。該型基板20については後述する。図1(b)に示す3つの太い矢印は、マイクロウェルを転写するための圧縮荷重を表している。該圧縮荷重に抗するプレス装置のステージ(支持基板)は図示を省略している。図1(c)は、マイクロウェル転写工程の後、マイクロウェル付きナノピラー構造基板10bから型基板20を分離した状態を示している。該マイクロウェル転写工程では、図1(b)に示すように、ナノピラー構造基板10aの高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度で、マイクロウェル成形型である凸状体22が押し付けられて、ナノピラー構造12およびその直下の部分が圧縮されて塑性変形し、マイクロウェル13が成形(転写)され、マイクロウェル付きナノピラー構造基板10bが得られる。
図1(b)に示すように、ナノピラー構造基板10aにおけるナノピラー構造12の所定の領域に対し、型基板20の凸状体22が押し付けられ、ナノピラー構造12が圧縮され、さらに基板本体11もマイクロウェルとして必要な深さだけ圧縮される。この圧縮加工により、ナノピラー構造12および基板本体11が塑性変形し、ナノピラー構造基板10aは成形品(マイクロウェル付きナノピラー構造基板)10bへと変化する。加工後の成形品を型から剥離することによって、目的とするマイクロウェル付きナノピラー構造基板10bが得られる。
(ナノピラー構造基板)
ナノピラー構造基板は、既存のものを利用してもよいし、製造すべきマイクロウェル付きナノピラー構造基板に応じたサイズのものを製造してもよい。ナノピラー構造基板は、後述のナノポーラス構造を有するアルミナ基板を型として用い、かつ、該ナノピラー構造基板の材料である高分子材料のガラス転移温度以上の温度において、該高分子材料製のシートに該型のナノポーラス構造を転写(ナノインプリント)することによって得られる。
(ナノピラー構造基板の材料)
ナノピラー構造基板を構成する高分子材料(即ち、本発明によって製造されるマイクロウェル付きナノピラー構造基板の材料)は、特に限定はされないが、ナノポーラス構造の転写を行う点からは、熱可塑性樹脂が好ましく、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、ポリスチレン、ポリエチレンなどが挙げられる。低吸水性、高透明性、精密成形性、耐薬品性、低不純物などの点からは、前記シクロオレフィンポリマーが好ましい材料として挙げられる。
(ナノピラー構造基板全体の厚さ)
ナノピラー構造基板全体の厚さは、特に限定はされないが、後述のマイクロウェルを形成する点、取扱い上の点からは、100~5000μm程度が挙げられる。ナノピラー構造の凸部の高さは一定ではないので、ナノピラー構造基板全体の厚さは、基板の裏面から各ナノピラーの頂部までの距離の平均値であってよい(測定すべき凸部の数は適宜決定してよい)。
(ナノピラー構造基板の外周形状とその寸法)
ナノピラー構造基板全体の外周形状は、後述するマイクロウェル付きナノピラー構造基板の外周形状、または、本発明の製造方法に必要となる外周形状に応じて適宜決定され得、円形、正方形、長方形などが挙げられる。詳細は後述する。
(ナノピラー)
ナノポーラス構造基板を転写型として得られるナノピラー構造(多数のナノピラーが最密に近い状態に配置された凹凸構造)では、隣り合った凸部であるナノピラーの中心間の距離は、30~500nm程度である。各ナノピラーの外周形状は、ナノポーラス構造の微細孔(図4)が丸穴に近いことから、基本的には円形であるが、実際に転写されたナノピラーの外周形状は、図5に示すように、変形した不定の形状であり、サイズも一定ではない。各ナノピラーの外径は、20~300nm程度が例示される。
ナノポーラスの内径、ナノピラーの外径、マイクロウェルの外径、細胞の外径などの、測定対象部分の寸法は、これらを拡大した顕微鏡写真(SEM写真や、光学顕微鏡写真など)によって得られる画像におけるフェレー(Feret)径(1つの測定対象部分を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)を採用することで、数値で表すことができる。また、平均粒子径は、適当な数(10~100程度)の粒子の前記フェレー径を実際に測定し、その平均値を採用することができる。
ナノピラー構造の個々のナノピラーの高さ(または、ナノピラー構造の凹部の深さ)は、特に限定はされないが、40~1000nm程度が好ましい寸法として例示される。凸部の高さが40nm未満の場合、とりわけ30nm以下の場合、スパッタリングによる金属膜(例えば、金キャップ)の堆積厚さを30nmとすると、凹部が金で埋まりかつ全ての金属膜が1つにつながって金属キャップではなくなる可能性が高くなり、よって、局在表面プラズモン共鳴が生じなくなる可能性も高くなるので好ましくない。一方、凸部の高さが1000nm程度を超えて過度に高くなると、凸部の外径によって異なるが、凸部が倒れ易くなるので好ましくない。後述のナノポーラス構造を型として得られるナノピラー構造では、個々のナノピラーの高さは、180~220nm程度である。
(ナノインプリント)
ナノピラー構造基板の好ましい形成方法としては、図2(a)~(c)に示すように、ナノポーラス構造を型として用いたナノインプリントが挙げられる。ナノインプリントでは、図2(a)に示すように、アルミニウム板31の一方の主面に形成された微細孔の集合(ナノポーラス構造)32が、ナノピラー構造のための型30として用いられる。図2(b)に示すように、前記の型30のナノポーラス構造32が、高分子材料製のシート10の一方の主面(図では下面)に転写されて、図2(c)に分離した状態として示すように、ナノピラー構造12が形成される。
ナノポーラス構造を有する基板(ナノポーラス構造基板)は、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成され得る。このナノポーラス構造およびその製造方法については、上記特許文献3など従来技術を参照することができる。特許文献3では、ナノポーラス構造を「陽極酸化ポーラスアルミナ」と呼んでいる。
アルミニウム板の主面に対する1次、2次の陽極酸化処理によって、図3(b)に示すように、アルミニウム板31の主面には、アルミナ(酸化アルミニウム、Al)層33が形成され、かつ、該アルミナ層中に多数の微細孔(ナノポーラス)34が形成された構造(ナノポーラス構造)が得られる。多数のナノポーラス34の開口は、図3(a)に示すように、最密状に位置しており、即ち、正三角形を最小単位の網目とする網状の該正三角形の各頂点に各ナノポーラス34の中心が位置している。図4は、ナノポーラス構造基板の主面のAFM写真図であり、ナノポーラスの開口は、略円形であり、総じて最密状に位置している。実際には、不規則に位置するナノポーラスも存在する。陽極酸化処理されるアルミニウムの純度がより高いと、ナノポーラスの孔径や配列もより均一になる。
ナノポーラス構造における隣り合った開口の中心間距離は、30~500nm程度であり、開口形状は概ね円形であり、口径は20~300nm程度である。これら中心間距離や口径は、電解液の種類と濃度、電解液の温度、印加された電圧などによって調節することができる。
ナノポーラス構造基板全体の厚さは、特に限定はされないが、転写(ナノインプリント)の型として用いる点からは、100μm~20mm程度が好ましく、アルミナ層33の厚さは陽極酸化の条件に応じて決定され、微細孔(ナノポーラス)の深さは40nm~1000nm程度が好ましい。
アルミニウム板に対する一次陽極酸化処理、二次陽極酸化処理のための電圧は、20V~120V程度が挙げられる。その他の条件については、特許文献3や、非特許文献1など従来技術を参照することができる。
ナノインプリントでは、高分子材料のナノポーラス内への進入を空気が阻害しないように、真空下で行うことが好ましい。型に対して離型処理(オプツールなどの離型剤を塗布する処理)を施すことによって、転写工程後に、高分子材料製の基板を型から容易に剥がすことができる。
ナノインプリントは、前記高分子材料のガラス転移温度以上の温度(該高分子材料の性質に悪影響を与えない程度の温度)で行われる。例えば、シクロオレフィンポリマーのガラス転移温度は、製造会社の製品ごとに異なるが概ね33~180℃程度である。シクロオレフィンポリマー製のシートにナノインプリントを行う場合の温度は、(ガラス転移温度+3℃)以上が好ましく、(ガラス転移温度+5℃)~(ガラス転移温度+30℃)程度がより好ましい。例えば、ガラス転移温度が69℃であるシクロオレフィンポリマーの場合、ナノインプリントのための好ましい温度は、74~99℃程度が例示される。
(マイクロウェル転写工程における温度)
上記したように、マイクロウェル転写工程では、ナノピラー構造基板の高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度で、凸状体が押し付けられて、マイクロウェル成形(即ち、転写)される。このときの、「高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度」は、特に限定はされないが、室温~該シクロオレフィンポリマーのガラス転移温度よりも5℃低い温度が好ましい範囲である。前記室温とは1~30℃であり、この温度範囲の中でも、高分子材料を塑性変形させる成形を容易にする点からは、好ましい下限は25~30℃程度である。よって、例えば、ナノピラー構造基板の材料がシクロオレフィンポリマーであって、そのガラス転移温度が69℃である場合、マイクロウェル転写工程における転写温度は、25~64℃程度が好ましく、50~60℃程度がより好ましい温度として例示される。なお、室温でも、マイクロウェルの転写は可能であるが、必要な荷重が高くなる傾向にある。
(本発明のマイクロウェル付きナノピラー構造基板)
本発明のマイクロウェル付きナノピラー構造基板は、本発明の製造方法によって形成されたものである。当該マイクロウェル付きナノピラー構造基板は、図1(c)に示すように、その一方の主面である第1の主面に、マイクロウェル13が設けられ、該マイクロウェル13の周囲をナノピラー構造12が取り囲んだ構造(マイクロウェル付きナノピラー構造)を有する。
マイクロウェルの数は、1つであってもよいが、1回の測定で数多くの細胞を同時に分析することが効率的であるため、複数がより好ましい。よって、ナノピラー領域に複数のマイクロウェルが所定の配置パターンにて設けられた構成が好ましい。マイクロウェルの数は、特に限定はされないが、1000~10000程度が好ましい。後述の実施例では、1890個のマイクロウェルを形成した。
マイクロウェルの配置パターンは、特に限定はされないが、例えば、正方行列状の配置パターン(正方形を最小単位の網目とする網状の該正方形の各頂点にマイクロウェルの中心が位置する配置パターン)、図6に例示する最密状の配置パターン(正三角形を最小単位の網目とする網状の該正三角形の各頂点にマイクロウェルの中心が位置する配置パターン)などが挙げられる。正方行列状の配置パターンは、例えば、行と列に番号を付けることなどが容易であり、よって、マイクロウェルの位置を特定しやすいという特徴がある。一方、最密状の配置パターンは、互いに隣り合ったマイクロウェル同士の間の中心間距離が均等になるという特徴や、単位面積当たりのマイクロウェルの数が他の配置パターンよりも多いという特徴がある。
(細胞)
マイクロウェルがトラップすべき細胞は、その分泌物をプラズモニックセンシングによって検出可能な細胞であればよく、例えば、免疫細胞(T細胞、B細胞、マクロファージなど)、がん細胞、神経細胞、ホルモン分泌細胞、外分泌上皮細胞などが例示される。
(細胞のサイズ)
前記の細胞(単一の細胞)の個々の外径(フェレー径)は、6μm~30μm程度である。また、マイクロウェルがトラップすべき細胞は、複数の細胞が集合した細胞塊であってもよい。細胞塊の個々の外径(フェレー径)は、100μm~400μm程度である。以下の説明では、マイクロウェルによってトラップすべき細胞が単一の細胞である場合を例として、該マイクロウェルの寸法や配置パターンを例示するが、トラップすべき細胞が細胞塊である場合には、該細胞塊の外径に応じて、マイクロウェルの寸法や配置パターンを適宜に拡大することができる。
(マイクロウェルの形状)
マイクロウェルの開口部の形状は、特に限定はされず、1つの細胞を好ましく収容する点からは、円形または正多角形が好ましい。正多角形としては、正方形、正六角形、正八角形、正十二角形などが挙げられ、円形に近い形状が好ましい。また測定条件を同じにする点からは、全てのマイクロウェルの開口形状を同じ形状(製造誤差を除いた基本形状)とすることが好ましい。
マイクロウェルの開口部の内径は、SEMなどの顕微鏡によって得られるマイクロウェルの開口部の画像から該開口部の面積を測定し、その面積と同じ面積を持った円の直径(円相当直径)を採用することができる。開口部の形状が実質的に円の場合は、その円の直径は、円相当直径に等しい。
マイクロウェルの該開口部の円相当直径D1は、1つの細胞を好ましく収容する点からは、6~60μm程度が好ましい。マイクロウェルの深さ(ナノピラー構造の表面を基準とする深さ)d1は、収容した細胞を逸脱させず収容する点からは、4~60μm程度が好ましい。本発明によって、マイクロウェルの断面のアスペクト比(d1/D1)を、1~5程度とすることができ、従来では達成できなかった高いアスペクト比(即ち、内部にトラップした細胞が逸脱し難い、より深く、より開口面積の小さい形状)とすることが可能になる。実施例では、平均粒子径11~13μmのJurkat細胞(ヒトTリンパ球細胞の一種)を用いたので、マイクロウェルの開口形状を正十二角形とし(マイクロウェル全体は正十二角柱状)、開口形状の直径(二面間の直径、即ち、内接円の直径)を13μmとし、深さを15μmとした。
互いに隣り合ったマイクロウェル同士の間の中心間距離(図1(c)におけるピッチ寸法L1)は、マイクロウェルの開口部の大きさや、配置パターンに応じて決定することができ、隣り合った2つのマイクロウェル同士の間にあるナノピラー領域の長さ(図1(c)における、1つのマイクロウェルの開口部のエッジから、隣のマイクロウェルの開口部のエッジまでの距離L2)は、50~200μm程度が挙げられる。距離L2を適切に確保することにより、各マイクロウェルの周囲のナノピラー領域では、そのマイクロウェル内の細胞の性質の測定を行う場合に、隣のマイクロウェル内の細胞からの分泌物の影響をより少なくすることができる(細胞間の相互作用の防止)。実施例では、1つのマイクロウェルの開口部のエッジから、隣のマイクロウェルの開口部のエッジまでの距離L2を100μmとした。
(1つのマイクロウェルの開口面積)と、(そのマイクロウェルを取り囲むナノピラー領域の面積)との和(即ち、1つの細胞を測定するための1つのマイクロウェル付きのプラズモニックセンサの面積)は、特に限定はされないが、例えば、3000μm~70000μm程度が好ましい面積として挙げられる。
本発明の製造方法におけるマイクロウェル転写行程に起因して、マイクロウェルの内部底面は、図7(b)、(c)に示すとおり、圧縮されて塑性変形したナノピラー構造によって構成された面となっている。また、図7(b)に示すとおり、マイクロウェルの開口部の周囲のナノピラー構造は、開口部のエッジの近傍まで均一である。
(金属膜)
マイクロウェル付きナノピラー構造基板のナノピラー構造には、少なくとも各ナノピラーの頂部表面上に、金属膜(金属キャップ)がさらに設けられる。これにより、マイクロウェルの周囲にプラズモニックセンサが付与された、マイクロウェル付きプラズモニックセンサ基板が得られる。該金属膜の材料は、局在表面プラズモン共鳴に利用可能な金属であり、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)などが挙げられ、これらを単独にまたは組み合わせて使用することができる。これらの金属の中でも、Auは、可視領域で強い局在電場の発現が見込め、かつ、大気中で比較的高い化学的安定性を有する点から好ましい金属である。
(金属膜の形成方法)
金属膜の形成方法は、特に限定はされず、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティング、電気めっき、無電解めっき等が挙げられ、均一な金属膜の形成が可能である点からは、スパッタリングおよび蒸着が好ましい形成方法として挙げられる。スパッタリングは、蒸着に比べて、成膜すべき領域が大面積であっても均一に成膜できるので、より好ましい成膜法である。ナノピラー構造の表面に金属膜を形成する際に、マイクロウェルの内面にも金属膜が形成されてもよい。
金属膜の形成に利用可能なスパッタリング装置の作動原理、装置の構成、スパッタリングの条件は、特に限定はされない。スパッタリングによって形成された膜厚20~90nmの金属膜であれば、スパッタリング装置の構成やスパッタリングの条件によらず、好ましく利用可能である。
(金属膜の厚さ)
金属膜の厚さは、ナノポーラス構造から転写されたナノピラー構造にAu膜を形成する場合には、厚さは20~90nmが好ましく、30~60nmがより好ましい。金属膜の厚さは、成膜時間によって調節することができる。
金属膜の形成に先立って、少なくともナノポーラスの表面を、酸素プラズマエッチングなどのドライエッチングによって粗面化することによって、プラズモニックセンシングの感度が向上する。
(型基板)
図1(a)に示す好ましい態様では、マイクロウェル成形型である凸状体22が、型全体の支持体であるベース板21の板面(第1の主面)21aの所定位置に設けられ、全体として板状を呈する型基板20が構成されている。ベース板21の第1の主面21aは、型基板20の第1の主面でもある。同図の例では、ベース板21に凸状体22が接合された構造となっているが、ベース板21と凸状体22とが同じ材料からなる一体のものであってもよい。
前記のような板状を呈する型基板20を用いることによって、マイクロウェル転写工程では、該型基板とナノピラー構造基板とを、それぞれの第1の主面を互いに対向させて重ね合わせ、圧縮荷重を加えるだけで転写が可能になる。これにより、型の取り扱い、マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造の効率が向上する。
型基板20の第1の主面を見たときの、各凸状体22の外周形状と、多数の凸状体の配置パターンは、製造すべきマイクロウェル付きナノピラー構造基板における各マイクロウェルの開口形状と、多数のマイクロウェルの配置パターンに、鏡面的に対応する。よって、各凸状体22の形状と凸状体全体の配置パターンは、上記した、各マイクロウェルの開口形状と、該マイクロウェル全体の配置パターンを参照することができる。
以下のマイクロウェル転写工程の説明では、型基板が、第1の主面を上に向けて、プレス装置のベース盤である水平な固定ステージの上面に配置され、ナノピラー構造基板が、第1の主面を下に向けて、該型基板上に重ね合わせられ、プレス装置の可動ステージがその上から押圧し、それにより該ナノピラー構造基板が降下して転写が行われる。このような態様であれば、型基板上へのナノピラー構造基板のセットや取り出しも容易である。しかし、このような態様は、あくまでも好ましい一例であって、ナノピラー構造基板が静止し、型基板が変位してもよく、また、プレス装置の固定ステージが上側に位置し、下側の可動ステージが上昇してもよく、転写時の加圧の方向や姿勢を限定するものではない。
本発明において、ナノピラー構造の表面とは、ナノピラー構造を構成するナノピラーの頂点が点描画のように集合して構成された仮想の面、即ち、ナノピラーの頂点をなめらかに結んだ包絡面である。
(マイクロウェル転写工程の好ましい態様)
図1に示す模式図では、説明のために、型基板20の主面を基準とする凸状体22の高さh1は、成形すべきマイクロウェルの深さd1と同じであるように描いている。
しかし、このような構成では、凸状体がナノピラー構造基板内に入った後、ベース板21の第1の主面がナノピラー構造12の表面に接触する前に、ナノピラー構造基板の降下を止めることが好ましい。その理由は、プラズモニックセンシングを適切に行うために、マイクロウェルの周囲のナノピラー構造を変形させてはならないからである。
一方、ナノピラー構造基板の厚さには製品ごとに誤差がある。また、1つのナノピラー構造基板の中でも、細かくは、個々のナノピラーの高さにバラツキがあり、全体的には、ナノピラー構造の表面が大きく波打つように変動している場合がある。
よって、マイクロウェル転写工程において、ナノピラー構造基板の降下量を精密に計測しても、凸状体がナノピラー構造の表面にいつ接触したか、また、ベース板21の第1の主面21aがナノピラー構造12の表面にいつ接触したかを、ナノピラー構造基板の降下量から知ることは容易ではない。
そこで、本発明の好ましい態様では、転写(加圧)時に加えられる圧力(Pa)または荷重(N)を制御し得、かつ、ナノピラー構造基板の降下量(降下距離)を示す機能を持ったプレス装置が用いられる。そして、所定の圧力または荷重の印加の下で、ナノピラー構造基板の降下速度の変化を知ることによって、型基板の各部がナノピラー構造基板に接触したことを知ることができ、その結果、マイクロウェルが適切な深さで形成されたことを知ることができる。
圧力または荷重を制御し得るプレス装置としては、例えば、油圧プレスなど作動流体によって加圧する装置(作動流体の圧力を測定し得、その測定値に応じて圧力を増減させるポンプを備えた装置)や、ロードセルを備えた加圧装置などが挙げられる。
また、ナノピラー構造基板の精密な降下量を示す機能は、マイクロメーターや各種のエンコーダーなど公知の計測装置によって付与され得る。
本発明の実施例では、マイクロウェルを転写するためのプレス装置として、SCIVAX(サイヴァクス)株式会社製のナノインプリント装置X300を用いた。このナノインプリント装置は、圧縮時の制御用パラメータとして荷重〔N〕の値を指定することができる。ステージに作用する応力(=ナノピラー構造基板に作用する圧縮荷重)の測定値が、指定した荷重値よりも小さい時、可動ステージは降下してより圧縮荷重を増大させようとし、応力の測定値が指定した荷重値と同じになると可動ステージの降下は止まり、応力の測定値が指定した荷重値を超えた場合には、可動ステージは上昇して圧縮荷重を低下させようとする。
(型基板の好ましい態様1:抵抗用突起体)
上記のようなナノインプリント装置を用いることで、可動ステージの動き(降下率)を通じて、指定した荷重値に達したかどうかを知ることができる。あるいは、適切な荷重値を予め調べて指定することで、可動ステージを適切な位置で停止させることができる。さらには、ナノピラー構造基板を押圧する所定の高さのダミーの凸状体を増設することで、目的の位置で応力を荷重の指定値へと上昇させて、可動ステージを停止させることもできる。
そこで、本発明では、図8(a)に示すように、凸状体がナノピラー構造の表面を基準とするマイクロウェルの深さd1だけ降下した時点で、降下が停止するように(即ち、応力が上昇して、指定した荷重値に達するように)、抵抗用突起体23を別の領域に設け、それにより、可動ステージの降下を停止する構成を提案する。図8(a)、図9(b)、図12では、他の部分との高さの差異を説明するために、凸状体の高さを誇張して増大させ、各凸状体を太い実線のように描いている。
該抵抗用突起体23は、ナノピラー構造の表面に接触したときに、ナノピラー構造基板の降下に抵抗し得るように、十分に広い接触面積を持つことが好ましい。
型基板の第1の主面を基準とする、抵抗用突起体23の高さはe1である。
凸状体22の高さh1は、マイクロウェルの深さd1よりも前記寸法e1だけ大きい。
即ち、d1=h1-e1である。
この構成によって、転写時に、所定の荷重設定値にて、ナノピラー構造基板が降下し、凸状体22がナノピラー構造とその直下の部分をd1だけ圧縮した時点で、高さe1の抵抗用突起体23が、ナノピラー構造の表面に接触して抵抗し(即ち、応力の測定値が増大し)、ナノピラー構造基板の降下が停止する(または、降下速度が顕著に低下する)。この降下停止の時点が、抵抗用突起体23がナノピラー構造の表面に接触した直後の時点である。この降下停止により、ベース板21の第1の主面21aがナノピラー構造の表面に接触することを防止でき、これにより、マイクロウェルの周囲のナノピラー構造は変形せず、目標とするd1に近い深さのマイクロウェルが得られる。抵抗用突起体23の高さe1を調節することや、抵抗用突起体23の上面の面積をより大きくすることなどによって、目的とするマイクロウェルの深さに近づけることができる。一方、抵抗用突起体23が接触したナノピラー構造は、応力を上昇させるために、微量だけ圧縮されるが、検出領域とは関係の無い他の領域であるので、問題はない。
以上のようにして、マイクロウェルの周囲に好ましいプラズモニックセンサ基板が構成され得る。なお、上記したナノインプリント装置の制御構成を持たないプレス装置(即ち、所定の設定荷重に応じて単純に降下するだけのプレス装置)であっても、可動ステージの降下量(降下率)を測定することで、抵抗用突起体が接触した時点を知ることができ、可動ステージの降下を止めることができる。また、液圧プレス(特に油圧プレス)など加圧力を制御し得る装置において、加圧源である液圧ポンプの内圧の変動(加圧対象物から受ける応力の変動)を測定することで、抵抗用突起体が接触した時点(油圧ポンプの内圧が急激に上昇する時点)を知ることができ、可動ステージの降下を止めることができる。
図8(a)に示した例では、型基板の第1の主面(=ベース板21の第1の主面21a)には、マイクロウェル付きナノピラー構造を形成するための第1の領域22Aが含まれており、該第1の領域22Aに凸状体22が上記した所定の配置パターンにて設けられている。そして、第1の領域とは異なる領域に、抵抗用突起体23a、23bがさらに設けられている。この例では、抵抗用突起体23のトータルの面積をより広くするために、中央部の抵抗用突起体23aと、周辺の抵抗用突起体23bが設けられている。
(抵抗用突起体の面積)
型基板の第1の主面を見たときの抵抗用突起体の面積の合計は、凸状体の面積に応じて決定され得る。マイクロウェルを設けるための面積を十分大きく取ることができる程度の面積(即ち、広すぎない面積)であり、かつ、抵抗用突起体が接触した時に降下率が十分低くなり、その時の応力の上昇が十分に大きくなるような面積が好ましい。応力の上昇を十分に大きくする理由は、荷重の設定値が小さいほど装置の精度が下がるからである。
上記したマイクロウェルの深さd1(4~60μm程度)に対して、抵抗用突起体の高さe1は、3~10μm程度が好ましい。凸状体の高さh1は、d1とe1とによって決定され得る。
(型基板の好ましい態様2:平行度ガイドとしての環状突起体)
型基板の好ましい態様では、図8(a)に示すように、型基板の第1の主面(=ベース板21の第1の主面21a)に、第1の領域22Aを取り囲む環状突起体24がさらに設けられる。この環状突起体24の高さは、凸状体22の高さと同じh1である。この構成によって、凸状体22がナノピラー構造の表面に接触するとき、環状突起体24も周囲で接触する。よって、ナノピラー構造基板の第1の主面は、該型基板の第1の主面に対して、平行に、安定した状態で接触することができるようになる。即ち、環状突起体24は、該型基板の第1の主面を、前記ナノピラー構造基板の第1の主面に平行に接触させるためのガイドまたは押さえとして作用する。
(型基板の好ましい態様3:第1の領域、抵抗用突起体、環状突起体の配置パターン)
型基板の好ましい態様では、図9(a)に示すように、型基板の第1の主面の中央部の領域に、第1の抵抗用突起体23aが設けられる。該第1の抵抗用突起体23aを同心状に取り囲んで、第1の領域22Aが環状の領域として設けられる。第1の領域22Aにおける多数の黒い点22が凸状体である。第1の領域22Aをさらに同心状に取り囲んで、環状突起体24が設けられる。該環状突起体24をさらに同心状に取り囲んで、第2の抵抗用突起体23bが設けられている。図9(b)は、図9(a)のX2-X2断面矢視図である。
図9(a)の例では、第1の領域22A、抵抗用突起体(23a、23b)、環状突起体24は、同心円を描くパターンにて配置されているが、正方形や正六角形などの多角形を描く同心状のパターンであってもよい。また、環状突起体24と、外側の抵抗用突起体23bとは、位置が入れ替わっていてもよい。抵抗用突起体は、空いたスペースに適宜に追加してもよい。
図9(a)の例では、中央の抵抗用突起体23aの直径は、1840μmである。第1の領域22Aの内側の直径は、1980μmである。第1の領域22Aの外側の直径は、5200μmである。環状突起体24の内側の直径は、6000μmである。環状突起体24の外側の直径は、6400μmである。外側の抵抗用突起体23bの内側の直径は、7000μmである。外側の抵抗用突起体23bの外側の直径は、8000μmである。これらの値は、あくまでも一例であり、マイクロウェルの直径や数などに応じて、適宜に増減することができる。
本発明の製造方法では、上記した第1の領域、抵抗用突起体、環状突起体の配置パターン全体を包含する広いナノピラー領域を有するナノピラー構造基板を用いることが好ましい。
型基板のベース板の材料は、特に限定はされず、金属、プラスチック、半導体基板、ガラスなどが挙げられる。型基板のベース板の厚さは、特に限定はされず、50μm~5mmが挙げられる。型基板のベース板の外周形状や寸法は、上記した第1の領域、抵抗用突起体、環状突起体の配置パターン全体を包含するものが利用可能である。実施例では、外径4インチ、厚さ0.525mmのシリコンウェハーを用いた。
凸状体、抵抗用突起体、および、環状突起体(以下、「凸状体等」ともいう)は、ベース板と一体であってもよいし、ベース板上に後から付与されたものでもよい。凸状体等の材料は、互いに同じでも異なっていてもよい。
凸状体等の材料としては、フォトレジスト、金属膜、ポリマーなどが挙げられる。また、凸状体等はベース板と一体(同じ材料)であってもよく、シリコンやガラスの基板面に形成されたパターンでもよい。ベース板上への凸状体等の形成方法は、ベース板上に凸状体等をアディティブに堆積する方法であってもよいし、ベース板の板面をエッチングして凸状体等を残すサブトラクティブな方法であってもよいし、ベース板上に形成された層をエッチングして凸状体等を残すサブトラクティブな方法であってもよい。実施例では、上記したシリコンウェハー上に、同じフォトレジスト(SU-8)を用いて、図9(a)、(b)に示す凸状体等を形成し、図10に示す型基板を製造した。また、図10に示す型基板をナノピラー構造基板に転写して形成されたマイクロウェル付きのナノピラー構造基板を図11に示す。以下に、この型基板の製造例を示す。
(型基板の具体的な構成例)
円形のシリコンウェハーの第1の主面に、フォトレジスト(SU-8)を塗布し、図9(a)、(b)に示した凸状体等のマイクロパターンを形成する。
凸状体は、上記したように、トラップすべき細胞のサイズに応じて外周形状と高さが決まる。配置パターンと数は適宜に決定される。
環状突起体は、凸状体と同じ高さを有し、転写時に凸状体を潰さない効果がある。転写時には、ガラス転移温度以下で、凸状体がナノピラー構造基板を塑性変形させてマイクロウェルを形成する。このため、比較的高い荷重がナノピラー構造基板に作用する。この高い荷重によりナノピラー構造基板が湾曲して反り、該ナノピラー構造基板の外周部分が型基板の方向(下方)へと近づこうとする場合がある。これに対して、環状突起体は、第1の領域全体を取り囲んでおり、面積が大きいので、ナノピラー構造基板の湾曲を抑え、ナノピラー構造基板全体を平坦に保った状態で降下させるという作用がある。
抵抗用突起体は、ナノピラー構造基板のナノピラーを潰さないように設けられている。
抵抗用突起体が無く、凸状体の高さh1が、マイクロウェルの深さd1と同じである場合は、以下の3つの状態となる可能性がある。
(a)適切な荷重により、凸状体がナノピラー構造基板に対して適切な深さまで入り込み、マイクロウェルが好ましく転写され、周囲のナノピラー構造は潰されない状態。
(b)適切な荷重よりも高い荷重により、凸状体がナノピラー構造基板に対して入り込んでマイクロウェルが形成されるが、周囲のナノピラーが潰れた状態。
(c)適切な荷重よりも低い荷重により、周囲のナノピラーはつぶされないが、マイクロウェルの深さが足りない状態。
上記(a)~(c)の状態に対して、十分に大きい適切な面積を持った抵抗用突起体を設けると、該抵抗用突起体がナノピラー構造基板と接触した時、ナノピラー構造基板の降下速度(降下率)が顕著に変化し、または、降下が停止するので、マイクロウェルが適切に形成された時点を知ることができる。また、凸状体や環状突起体がナノピラー構造基板を圧縮することができ、かつ、抵抗用突起体が接触した時には顕著に降下速度が低下するような、適切な加荷重を見つけることができる。
図12は、図10に示す型基板を用いた転写における、ナノピラー構造基板を圧縮変形させるのに必要な荷重〔N〕と、ナノピラー構造基板の降下率との関係を示す図である。ここで、グラフのタテ軸が示す降下率は、単位荷重〔N〕の変化量に対する、ステージの絶対位置の変化量(Δμm/ΔN)である。
図12では、左側に示した型基板の各部の高さを大きく誇張して、右側のグラフのタテ軸に対応付けている。また、図12に示した3つの荷重領域(a)~(c)のそれぞれにおけるナノピラー構造基板の変形の様子を、図13(a)~(c)に示している。
先ず、図12の荷重領域(a)および図13(a)に示すように、低い荷重を印加すると、最初は、凸状体22と環状突起体24がナノピラー構造基板に接触し、浅いマイクロウェルが形成される。次に、図12の荷重領域(b)および図13(b)に示すように、荷重が高くなると、ナノピラー構造基板が抵抗用突起体23と接触し、荷重の増大に対してナノピラー構造基板の降下率が低下している。次に、図12の荷重領域(c)および図13(c)に示すように、荷重がさらに高くなると、ナノピラー構造12が大きく潰れ、さらには、ナノピラー構造の表面が型基板のベース板の主面と接触し、ナノピラー構造基板の降下率がさらに低下している。このようなナノピラー構造基板の降下率から、周囲のナノピラー構造を潰すことなく、好ましい深さのマイクロウェルを形成するのに必要な、適切な荷重を見つけることができる。
実施例では、300~600N程度が好ましい荷重であった。この荷重は、一例であり、マイクロウェルの内径と数(即ち、凸状体の上面の総面積)、抵抗用突起体の上面の総面積、環状突起体の上面の総面積、高分子材料の種類、加圧時の温度、などに応じて変動する。
(マイクロウェル付きのプラズモニックセンサ基板の使用例)
上記したマイクロウェル付きナノピラー構造基板の各ナノピラーの頂部表面上に金属キャップが設けられたマイクロウェル付きプラズモニックセンサ基板(以下、センサ基板ともいう)の使用例は以下のとおりである。
先ず、シャーレ等の容器の内部底面にセンサ基板を配置し、かつ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、細胞培養液などの液体を供給し、該センサ基板が該液体に浸漬された状態とする。センサ基板のマイクロウェルは上を向いて開口している。各マイクロウェルは、気泡を含まず、前記液体が充填された状態となっている。次に、細胞が分散した懸濁液を該容器内に供給し、細胞を沈降させる。これにより、いくつかのマイクロウェル内に細胞が入る。各マイクロウェル内に入らなかった細胞と液体を除去する(細胞だけを洗いながしてもよい)。所定の波長の光をマイクロウェルの周囲に照射し、プラズモニックセンシングを行う。
(センサ基板を好ましく利用するための部材の例)
図14は、センサ基板上に設けられた細胞導入用の部材の一例を示す図である。図14(a)~(c)に示すように、センサ基板10cの第1の主面には、マイクロウェル付きのプラズモニックセンサ構造の領域10sを取り囲むように、板状の部材40が付与されている。図の例では、領域10sは、図10に示した型基板によって形成され、図11(a)に示すように円環状である。図の例では、センサ基板10cの第1の主面全体がナノピラー構造(金キャップ付き)となっているが、領域10sを含んだ中央の領域だけがナノピラー構造となっていてもよい。領域10sにはマイクロウェルが所定の配置パターンにて多数設けられている。図14(b)、(c)では、説明のために、センサ基板10cの上面の表層にハッチングを施すことで、マイクロウェルが設けられた構造を示唆している。
図14(a)に示すように、部材40は、細胞を含んだ懸濁液などの液体の入口開口41と、流入流路42と、領域10sを露出させる開口43と、流出流路44と、液体の出口開口45を有する。これらは全て部材を厚さ方向に貫通している。図の例では、開口43を覆うポリマー製(例えば、シクロオレフィンポリマー製)の透明フィルム50がさらに付与されている。該透明フィルム50は、該部材の開口内に充填された液体の表面を平坦にし、かつ、溶液(培養液)の蒸発を防ぐために用いている。該部材40は、センサ基板10c上に圧接されて密着している。また、細胞を導入した後、顕微鏡で観察する時、41,42,44,45の部分も透明フィルムで覆って、溶液(培養液)の蒸発を防いでもよい。
上記部材40の材料は、センサ基板10c上に密着し得る柔軟な材料が好ましく、例えば、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのエラストマーが好ましいものとして挙げられる。
図14に示すような部材を用いることによって、細胞を含んだ懸濁液の導入や、洗浄液の導入、取り出しの操作が簡単になり、また、マイクロウェルへの細胞のトラップ率も向上する。部材の各開口や流路の形状とサイズは限定されず、センサ基板の形状とサイズに応じて適宜に決定することができる。
単一細胞レベルでのインターロイキン-6(Interleukin-6、略称:IL-6)分泌の網羅的解析が、病態理解において重要である。また、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)は、ラベルフリーかつリアルタイムで標的分子検出が可能である。本実施例では、本発明の製造方法によって、実際にマイクロウェル付きナノピラー構造基板を制作し、さらに、金キャップを付与して、センサ基板を制作した。このセンサ基板を用いて、単一細胞のトラッピング諸条件を導出するとともに、LSPRイメージングによるIL-6の検出を行った。マイクロウェルで単一細胞をトラップすることで、多数の単一細胞を同時に解析し、細胞分泌物の経時的な濃度分布の解析が行えることを示した。
(i)ナノポーラス構造基板の作製
純度99.5%のアルミニウム板(株式会社ニラコ製)に対して、一次陽極酸化処理および二次陽極酸化処理を行ない、板面に、微細孔がハニカム構造のように規則的に並んだナノポーラス構造を持ったナノポーラス構造基板を作製した。本実施例で用いたアルミニウム板は、縦26mm、横76mmの長方形の板であり、陽極酸化処理すべき片面は、鏡面研磨され、厚さは5mmである。
一次陽極酸化をする前、アルミニウム板をアセトンに浸漬し、5分間超音波洗浄を行い、純水でリンスした。その後、リン酸(1.16%(w/v))とクロム酸(5%(w/v))の混合水溶液(温度:80℃)に5分間浸漬し、撹拌子によって該クロム酸溶液を常時撹拌し、アルミニウム板の表面の酸化アルミニウムを除去した。その後、該アルミニウム板を純水に浸漬し、5分間、超音波洗浄を行った。
(一次陽極酸化処理)
アルミニウム板を直流電源(PQ-120、MATSUSADA)の陽極に接続し、チタン板を該直流電源の陰極に接続し、アルミニウム板の鏡面研磨された板面とチタン板の板面とが平行になるよう両板を保持して、低温恒温水槽(NCB-1200、EYELA)中の0.3Mシュウ酸溶液中に固定した。シュウ酸溶液を0℃に保ち、前記直流電源によってアルミニウム板とチタン板との間に電圧80Vを1時間印加し、アルミニウム板の鏡面研磨された板面に陽極酸化処理(一次陽極酸化処理)を行った。その後、純水に浸漬し、5分間超音波洗浄を行った。陽極酸化処理中は、シュウ酸溶液の温度および濃度を一定に保つため、撹拌子によって該シュウ酸溶液を常時撹拌した。
一次陽極酸化により、陽極側のアルミニウムから生じたAl3+イオンと酸素が反応することで、陽極のアルミニウム板の表層には、ナノポーラス構造が形成された。
一次陽極酸化によるナノポーラス構造の形成後、リン酸(1.16%(w/v))とクロム酸(5%(w/v))の混合水溶液(温度:80℃)に30分間浸漬し、撹拌子によって該リン酸溶液を常時撹拌し、ナノポーラス構造を除去した。その後、純水に浸漬し、5分間超音波洗浄を行った。その結果、残ったアルミニウム板の表面には、ナノポーラス構造の微細孔の下方に対応する位置には、ハニカム構造状に配列された凹部が残った。
(二次陽極酸化処理)
前記凹部が形成されたアルミニウム板の表面に対して、さらに、陽極酸化処理(二次)を行った(0.3Mシュウ酸水溶液、80V、13秒)。その結果、アルミニウム板の表面には、ハニカム構造状に配列された配置パターンにて微細孔が配列されたナノポーラス構造が形成された。その後、純水に浸漬し、5分間超音波洗浄を行った。
最後に、40℃のリン酸溶液(1.6%、w/v)で、12分間エッチングを行ない、ナノポーラス構造の各微細孔の口径を大きくした。その後、純水に浸漬し、5分間超音波洗浄を行った。
得られたナノポーラス構造の微細孔の開口形状は円形であり、口径は平均150nm程度であり、隣り合った微細孔同士の間の中心間距離は、平均200nm程度であり、微細孔の深さは平均200nm程度であった。各微細孔の口径、セル壁の厚さ(互いに隣接する孔同士の間の壁部の厚さ)、微細孔同士の間の中心間距離は、陽極酸化の電圧と温度に依存し、容易に制御することができる。当該実施例で用いたアルミニウム板中の不純物に起因して、微細孔の孔径は完全には均一ではなく、不規則な配列が含まれていた。
(ii)型基板の作成
外径4インチ、厚さ0.525mm)のシリコンウェハーの第1の主面上に、レジスト材料(SU-8)にて、凸状体、抵抗用突起体、および、環状突起体を形成した。微細構造の形成に用いられるネガ型レジストであるSU-8は、機械的性質、耐熱性、耐薬品性などに優れた性能を示すとともに、アスペクト比の高いマイクロ構造体を用意に形成できる。
本実施例における測定対象の細胞は、平均粒子径11~13μmのJurkat細胞(ヒトTリンパ球細胞の一種)である。形成すべきマイクロウェル付きのプラズモニックセンサ構造の領域は、図11に示すように円環状であり、内径1.98mm、外径5.2mmであり、マイクロウェルの数は1890個である。各マイクロウェルの開口形状は、正十二角形であり、該正十二角形の内接円は13μm、深さは約15μmである。よって、凸状体の外周形状も同様の正十二角形である。図10に示すように、凸状体と環状突起体の高さは20μm、抵抗用突起体の高さは5μmである。図9に示す外側の抵抗用突起体23bの外径は8mmである。このような構造を形成するため、次のとおり、2回の露光を行った。
(シリコンウェハー上への抵抗用突起体の形成)
上記シリコンウェハー上にレジスト(SU-8 3005、Micro chem社製)を、目標膜厚5μmとして、回転速度4000rpm、回転時間30秒で、スピンコータを用いてスピンコートした。ホットプレートを用いて、温度65℃、時間1分、温度95℃、時間2分でソフトベークを行った。ソフトベーク後のレジストに対して、マスクレス露光装置(DL-1000、株式会社ナノシステムソリューションズ)により、Dose:20000 mJ/cmで露光した。レジストの露光後、架橋反応促進として、ホットプレートを用いて、温度65℃、時間1分、温度95℃、時間2分でベークし、室温まで降温させた後、レジスト現像液(SU-8 Developer、Micro chem社製)により現像を行い、2-プロパノールを用いてリンスした。現像時間とリンス時間は、それぞれ4分である。
(シリコンウェハー上への凸状体と環状突起体の形成)
上記で抵抗用突起体が形成されたシリコンウェハー上に、レジスト(SU-8 3025、Micro chem社製)を目標膜厚20μmとして、回転速度3800rpm、回転時間30秒にて、スピンコータを用いてスピンコートした。ホットプレートを用いて、温度65℃、時間1分、温度95℃、時間10分でソフトベークを行った。ソフトベーク後のレジストに対して、マスクレス露光装置(DL-1000、株式会社ナノシステムソリューションズ)により、Dose:20000 mJ/cmで露光した。レジストの露光後、架橋反応促進として、ホットプレートを用いて、温度65℃、時間1分、温度95℃、時間5分でベークし、室温まで降温させた後、レジスト現像液(SU-8 Developer、Micro chem社製)により現像を行い、2-プロパノールを用いてリンスした。現像時間とリンス時間は、それぞれ10分である。
最後に、ホットプレートを用いて、温度150℃、時間30分でハードベークを行い、レジストを完全に架橋し、硬化させ、図10に示す型基板を得た。
(iii)ナノピラー構造基板の形成(ナノインプリント)
上記(i)で形成したナノポーラス構造基板のナノポーラス構造を型として用い、これをガラス転移温度以上に加熱したシクロオレフィンポリマー(COP)製のシート(厚さ2mm)に押し付けて転写(ナノインプリント)し、該シートの表層にナノピラー構造を形成した。冷却後に型(ナノポーラス構造基板)からCOP製のシートを剥離することにより、ナノピラー構造基板を得た。このナノインプリントは、型を用いる複製プロセスであるため、安定した条件下で行うことができ、製品(転写された形状)は繰り返し精度に優れ、ナノスケール構造の大量生産も可能である。
(ナノインプリントに用いたプレス装置:ナノインプリント装置)
上記で用いたナノインプリント装置は、SCIVAX株式会社製、品番X300である。該ナノインプリント装置のチャンバー内には、図15に示すように、上側に位置する可動ステージ61と、下側に位置する固定ステージ62の間に、これらをそれぞれ保護するためのシリコンウェハー63、64(外径6インチ、厚さ0.625mm)を配置し、該シリコンウェハー63、64の間に離型処理したシリコンウェハー65、66(外径4インチ、厚さ0.525mm)を配置し、該シリコンウェハー65、66の間に、COP製のシート10(日本ゼオン株式会社、品番ZEONEX 5000)と、型であるナノポーラス構造基板30を配置した。前記で用いたシリコンウェハーは一例であって、適当なものを利用してもよい。
(ナノインプリント)
COP製のシート10とナノポーラス構造基板30には、ナノインプリント後の分離(離型)を容易にするため離型処理を施した。該離型剤として、ハーベス社製のフッ素系離型剤(DURASURF)を、ダイキン工業製の溶剤(Perfluorohexane」で希釈したものを用いた。離型剤全体(100質量%)に対するフッ素系離型剤が占める割合は、0.1質量%である。図15に示した積層状態にて、両ステージを60℃に昇温し(即ち、シートと型を含んだ全体を60℃とし)、仮型押しとして、荷重150Nでの加圧を1分間行った。ナノインプリント時に空気が入り込むことを防ぐため、ナノインプリント装置内を減圧し、-80kPa程度の真空とした。減圧後、可動ステージの温度を60℃に維持し、固定ステージの温度をCOP樹脂のガラス転移温度(69℃)を超える温度(80℃)まで上昇させた。なお、両ステージともに、ピラーの形成に十分な温度(ガラス転移温度+5℃~30℃)にすると、加圧時に柔らかくなったポリマーがアルミモールドの側面に流れ出てしまう場合があり、それにより、ポーラス面にかかる圧力が減少し、ナノピラー構造の形成に問題が発生する。本実施例では、前記のようなポリマーの流れ出しを抑制するため、COP樹脂のピラー形成面のみをガラス転移温度以上にしており、アルミモールド側のステージを80度、COP側のステージを60℃に調整した。
ナノポーラス板に対する荷重が3000Nとなるように調節し、本型押しを10分間行った。荷重一定のまま、上ステージと下ステージを40℃まで冷却を行った。
型押しの荷重を150Nまで減少させた後、ナノインプリント装置内の真空を大気圧にもどし、該ナノインプリント装置からナノポーラス構造基板とナノピラー構造基板を取り出し、ナノピラー構造基板を引っ張ってナノポーラス構造基板から剥離した。
(iv)マイクロウェル転写工程
上記(ii)で得られた型基板を、上記(iii)で得られたナノピラー構造基板に押し付けて転写し、マイクロウェル付きのナノピラー構造基板を形成した。
この転写工程では、上記(iii)で用いたナノインプリント装置を用いた。該ナノインプリント装置のチャンバー内には、図16に示すように、可動ステージ61と固定ステージ62の間に、保護用のシリコンウェハー63、64(外径6インチ、厚さ0.625mm)を配置し、該シリコンウェハー63、64の間に、上側の離型用のシリコンウェハー65(外径4インチ、厚さ0.525mm)と、ナノピラー構造基板10aと、型基板20を配置した。下側のシリコンウェハー64は離型処理されており、離型用のシリコンウェハーを兼ねている。
型基板の主面に、上記ナノインプリントと同様の離型処理を施した。図16に示した積層状態にて、両ステージを50℃に昇温し、仮型押しとして荷重20Nでの加圧を15分間行った。ステージの絶対位置が5分以上経過しても変化しない安定した状態となった後、大気圧で、温度は50℃のまま、上下のステージ間に加えられる圧縮のための荷重を500Nとなるように設定し、本型押しを5分間行い、マイクロウェル転写を完了した。その後、ナノインプリント装置から型基板と転写品(第1の主面にマイクロウェルが設けられたナノピラー構造基板)を取り出し、該マイクロウェル付きナノピラー構造基板を引っ張って型基板から剥離した。
(v)金キャップの付与
上記(iv)で得られたマイクロウェル付きナノピラー構造基板の第1の主面に、スパッタリングによって厚さ40nmのAu膜を形成し、センサ基板を得た。本実施例で用いたスパッタ装置は、アルバック株式会社のACS-4000である。得られたセンサ基板のマイクロウェルの周囲に所定の波長の光を照射すれば、ナノピラーに付与された金キャップの自由電子の振動による局在表面プラズモン共鳴が発生し、プラズモン信号が検出できる。
(vi)本発明によるマイクロウェル付きナノピラー構造基板の評価
上記マイクロウェル転写工程によってナノピラー構造が受ける影響を評価するため、該マイクロウェル転写工程の前と後におけるナノピラー構造に、それぞれ厚さ40nmのAu膜(金キャップ)をスパッタリングで付与してプラズモニックセンサを構成し、それぞれのプラズモニックセンサの屈折率感度を測定した。「屈折率感度」は、金属ナノ構造の表面近傍の媒質の屈折率の変化に対して最大吸収波長の変化量により計算される。横軸を媒質の屈折率とし、縦軸を最大吸収波長として、屈折率と最大吸収波長の関係をプロットした時、その近似直線(一次関数)の傾きが「屈折率感度」である。
測定は、屈折率(RI)が異なる5種類の環境(空気(RI=1.00)、超純水(RI=1.33)、1Mグルコース(RI=1.35)、エチレングリコール(RI=1.43)、グリセリン(RI=1.47))を、センサ基板のナノピラー部分に接触させる。測定に用いたプラズモニックセンサを、X-Yステージに固定し、シート状シリコーンゴム(アズワン)を用いて該プラズモニックセンサの周囲を枠のように囲い、該枠の内部に液体(超純水(RI=1.33)、1Mグルコース(RI=1.35)、エチレングリコール(RI=1.43)、グリセリン(RI=1.47)))を充填した。測定の際、液体の表面を均一な平面にするため、枠と液体をカバーガラスで覆った。
測定はイメージングシステムで行った。該イメージングシステムは、顕微鏡(ix-70、Olympus)とスペクトルイメージングコンポーネント(sis-1n、エバジャパン)とを組み合わせたものである。光源は顕微鏡用の内蔵光源(タングステン・ハロゲンランプ装置、照射光の波長範囲200~2500nm)を用い、プラズモニックセンサの第1の主面側(金キャップ側)から、スライドガラス面に垂直に照射光を入射させ、プラズモニックセンサの裏面側に透過した光について、分光器を用いて透過スペクトルを測定し、金キャップ無しのナノピラー構造基板をレファレンスとして、最大吸収波長のシフトを観察した。
図17のグラフは、プラズモニックセンサの金キャップ付きナノピラー構造に、屈折率が異なる媒質を接触させた場合の、各媒質に応じた最大吸収波長から計算した屈折率感度を示すグラフ図である。黒い丸のプロットが、マイクロウェル転写工程を経る前のナノピラー構造に金キャップを付与したプラズモニックセンサの屈折率感度を示している。黒いひし形のプロットが、マイクロウェル転写工程を経た後の該マイクロウェルの周囲のナノピラー構造に金キャップを付与したプラズモニックセンサの屈折率感度を示している。図17のグラフに示すように、本発明におけるマイクロウェル転写工程は、ナノピラー構造(屈折率感度)に影響を与えないことがわかった。
(vii)単一細胞のトラップと分泌物のLSPR分析
図18に、1つのマイクロウェル13とその周囲のプラズモニックセンサを拡大して示すように、上記で得られたセンサ基板10cを用いて、1つの単一細胞72をマイクロウェル13内にトラップし、その細胞72から分泌したIL-6(符号73)を該マイクロウェル13の周囲のプラズモニックセンサからのLSPR信号で検出した。この実験は、主として3つのステップ(金キャップ12bの表面への抗体71の固定化、マイクロウェル13内への細胞72のトラップ、イメージングシステムによるLSPRセンシング)で行った。
図18に示すように、プラズモニックセンサ部分の個々のナノピラー12aの金キャップ12bの表面に抗体71を固定した。この処理では、先ず、金キャップの表面に、-COOH基が付いた自己組織化単分子膜(Self-assembled monolayer, SAM)を形成した。次に、-COOH基を活性化させることによる活性エステルの状態を経て、抗体とアミド結合させることで、金キャップの表面に抗体の固定化を行った。より、具体的な手順を以下に述べる。
SAMである10-Carboxyl-1-decanethiol(DOJINDO)の濃度が1mMとなるよう、エタノール(和光純薬工業)で調整した。
センサ基板をその溶液に浸漬し、30分間静置した。その後、大量のエタノールで洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。
吸収スペクトルを測定し、センサ基板上に-COOH基が形成されたことを確認した。
N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)(Wako)およびカルボジイミド塩酸塩(WSC)(Wako)を、それぞれ0.2M、0.8Mになるように、超純水を500μL(マイクロリットル)ずつ加えた。
0.2MのNHS溶液と0.8MのWSC溶液を500μLずつ混合し、センサ基板上に200μL滴下し、室温で10分間静置した。
その後、大量の超純水で洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。更に、吸収スペクトルを測定し、センサ基板の金キャップの表面に活性エステルが形成されていることを確認した。
50ng/mL(ナノグラム/ミリリットル)のIL-6 抗体を、センサ基板上に200μL滴下し、室温で30分間静置した。その後、大量のリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline、PBS)で洗浄し、窒素ガスでセンサ基板を乾燥させた。1%のウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、BSA)をブロッキング剤として、センサ基板上に200μL滴下し、室温で30分間静置した。その後、大量のPBSで洗浄し、窒素ガスでセンサ基板を乾燥させた。吸収スペクトルの計測を行い、センサ基板の金キャップの表面に抗体が固定化されていることを確認した。
(細胞のトラップ)
細胞を各マイクロウェル内に導入するため、上記1%のウシ血清アルブミンによってブロッキング処理したセンサ基板をX-Yステージ上に固定し、図14に示すように、シリコーンゴム製の板状の部材40をセンサ基板10cに重ね合わせ、該枠の内部にPBSを充填した。測定の際、PBSの液体表面を平面にするため、図14に示すように、プラズモニックセンサ構造の領域10sの上方を薄いCOP製のフィルム(日本ゼオン株式会社、品番ZF-14-188)で覆った。
100μLの細胞懸濁液(液体はPBS、濃度は1×10(細胞/mL))を部材40の入口開口41に滴下し、細胞を15分間沈降させた後、出口開口45から余分な液体を吸引し除去する。これにより、いくつかのマイクロウェル内には、PBSと細胞が収容されている。さらに、100μLのPBSを入口開口41に供給し、出口開口45から余分な液体を吸引し洗浄を行った。この洗浄プロセスを合計3回行うことによって、マイクロウェル内にトラップされなかった細胞を除去した。最後に、光照射を行い、吸収スペクトルの計測を行い、各マイクロウェルの周囲のプラズモニックセンサ構造の領域10sで抗原抗体反応が生じたことを確認した。
図19(a)に示すように、各マイクロウェルの周囲の領域を、該マイクロウェルから近い順に3つの長方形の領域(1)~(3)に分け、各領域を分析し、各マイクロウェル内の細胞から分泌したIL-6の経時的な濃度変化を評価した。領域(1)~(3)の面積は、それぞれ40μmであり、各領域の1辺の長さ(各領域の中心からマイクロウェルの中心に向かう方向に平行な辺の長さ)は5μmである。各領域(1)~(3)は、図19(a)に示すように、直列的に順番に互いに隣接しており、領域(1)は、マイクロウェルの開口外周端から5μmだけ離れている。
図19(b)は、細胞から分泌したIL-6の経時的な濃度変化によるピークシフト量を示すグラフ図である。図19(b)に示すように、同じ領域内におけるピークシフト量は、時間の経過とともに増加し、より多くのIL-6が結合したことを示す。領域(1)と領域(2)との関係のように、マイクロウェルに近い領域程、より多くのIL-6が結合し、シフト量が大きくなるはずである。領域(3)は、マイクロウェルから離れすぎて、分泌物がほとんど結合していないことがわかった。
本発明によって、マイクロウェル付きナノピラー構造基板の好ましい製造方法が提供された。また、該製造方法によって得られるマイクロウェル付きナノピラー構造基板は、従来のものよりも、好ましいマイクロウェルを備えたものであり、これにより細胞を好ましくトラップし得るようになった。
10a ナノピラー構造基板
10b マイクロウェル付きナノピラー構造基板
11 基板本体
12 ナノピラー構造
13 マイクロウェル
20 型基板
21 ベース板
22 凸状体

Claims (9)

  1. マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造方法であって、
    前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板は、その第1の主面に、マイクロウェルの周囲をナノピラー構造が取り囲んでなるマイクロウェル付きナノピラー構造を有し、
    当該製造方法は、高分子材料製のナノピラー構造基板を準備する工程を有し、該ナノピラー構造基板は、その第1の主面に、ナノピラー構造が転写によって設けられたナノピラー領域を有し、かつ、
    当該製造方法は、マイクロウェル転写工程を有し、該マイクロウェル転写工程では、前記ナノピラー構造基板のナノピラー領域に対して、前記高分子材料のガラス転移温度よりも低い温度で、マイクロウェル成形型である凸状体を押し付けて、前記ナノピラー構造およびその直下の部分を塑性変形させて前記マイクロウェルを形成し、それにより、前記マイクロウェル付きナノピラー構造を形成する、
    前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板の製造方法。
  2. 前記ナノピラー構造基板の高分子材料が、シクロオレフィンポリマーであって、前記凸状体を押し付ける際の前記ガラス転移温度より低い温度が、室温~該シクロオレフィンポリマーのガラス転移温度よりも5℃低い温度である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記マイクロウェルの開口部の形状が、円形または正多角形であって、
    該開口部の面積と同じ面積を持った円の直径が、6~60μmであり、
    該マイクロウェルの深さが、4~60μmである、
    請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記マイクロウェル転写工程では、前記凸状体を備えた型基板が用いられ、該型基板の第1の主面には、前記マイクロウェル付きナノピラー構造を形成するための第1の領域が含まれており、該第1の領域に前記凸状体が設けられており、
    前記型基板と前記ナノピラー構造基板とがそれぞれの第1の主面を互いに対向させて重ね合わせられ、圧縮荷重が加えられ、前記ナノピラー領域に前記凸状体が押し付けられて、前記マイクロウェルが形成される、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ナノピラー構造の表面を基準とする、マイクロウェルの深さはd1であり、
    前記型基板の第1の主面を基準とする、前記凸状体の高さh1は、前記深さd1よりも所定の寸法e1だけ大きく、
    前記型基板の第1の主面には、第1の領域とは異なる領域に、高さe1の抵抗用突起体がさらに設けられ、該抵抗用突起体は、前記凸状体がナノピラー構造をd1だけ圧縮した時点で、該ナノピラー構造の表面に接触して、前記凸状体のさらなる圧縮に抵抗するものである、
    請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記型基板の第1の主面には、該型基板の第1の主面を、前記ナノピラー構造基板の第1の主面に平行に接触させるためのガイドとなるように、前記第1の領域を取り囲む環状突起体がさらに設けられており、該環状突起体の高さは、前記凸状体の高さと同じh1である、
    請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記型基板の第1の主面の中央部の領域には、第1の抵抗用突起体が設けられ、
    前記第1の抵抗用突起体を同心状に取り囲んで、前記第1の領域が環状の領域として設けられ、
    前記第1の領域を同心状に取り囲んで、前記環状突起体が設けられ、
    前記環状突起体を同心状に取り囲んで、第2の抵抗用突起体が設けられている、
    請求項6に記載の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたマイクロウェル付きナノピラー構造基板であって、
    当該マイクロウェル付きナノピラー構造基板は、その第1の主面に、マイクロウェルの周囲をナノピラー構造が取り囲んでなるマイクロウェル付きナノピラー構造を有し、
    前記製造方法のマイクロウェル転写工程に起因して、前記マイクロウェルの内部底面が、圧縮され塑性変形したナノピラー構造によって構成されている、
    前記マイクロウェル付きナノピラー構造基板。
  9. 前記ナノピラー構造の、少なくとも各ナノピラーの頂部表面上に、金属膜がさらに設けられている、請求項8に記載のマイクロウェル付きナノピラー構造基板。
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