JP7331726B2 - 工具摩耗量予測方法及び工具摩耗量予測システム - Google Patents
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Description
図1に示すように切削工具装置1は、切削工具2とパソコンなどの処理装置3とから構成されている。処理装置3が演算部3aと解析部3bと予測部3cとに相当する。
切削工具2は、刃部4と当該刃部4が固定される支持部5とを含んで構成されている。刃部4は、例えば高強度金属を母材としたサーメットから形成されている。
薄膜温度センサ8は、温度を示す電気信号を処理装置3に出力する。これにより、処理装置3は、刃先4a近傍の温度変化を検出することが可能となる
dw=eF・L{C1・Htool+C2・exp(-C3/temp)}
dwは工具摩耗量、eFはエッジフォース、Lは切削距離、Htoolは工具材の圧痕幅、C1~C3は係数、tempは工具表面の加工点温度である。
ここで、拡散摩耗による工具摩耗を予測するには、加工点温度を精度良く求め、上記式の熱的拡散摩耗を影響する項、つまりC2・exp(-C3/temp)のtempに代入する必要がある。
CAE解析では、図5に一点鎖線で示すように実際の加工点温度から大きく乖離している。CAE解析で加工点温度を精度良く予測するには、加工点に極めて近傍の温度を精度良く求め、その温度をパラメータとして予測する必要がある。
(1)薄膜温度センサ8により図4に示すように加工点近傍に設定された第1測定点Aの温度を実測する手順。
(2)サーモグラフィ12により加工点近傍の第1測定点と当該第1測定点よりも刃先4a側となる第2測定点との間の温度勾配を実測する手順。
(3)上記(1)(2)を用いて加工点温度をCAE解析により高精度に計算する手順。
これらを使用することで、加工点温度を高精度かつ簡易に計算でき、演算式の精度を向上させることが可能となる。
尚、サーモグラフィ12は、切削工具2の材質や表面状態に合わせて放射率が調整されているものとする。
次に、サーモグラフィ12により第1測定点Aと当該第1測定点Aから刃先4a側となる第2測定点B、例えば刃先4aから0.1mmとの間の温度勾配を実測し、それらの温度勾配を処理装置3により求める。これが第2手順に相当する。
次に、推測した第2測定点Bの温度からCAE解析により加工点温度を処理装置3により推測する。これが第4手順に相当する。
以上のようにして、図5に実線で示す組合せ曲線のように加工点温度を精度良く推測することが可能となる。
熱的拡散摩耗を影響する項に推測した加工点温度をパラメータとして代入することでCAE解析により工具摩耗を予測する方法は、上記特許文献1に記載されているので省略する。
一方、サーモグラフィ12による測定温度には実温度との誤差が含まれているが、第1測定点Aと第2測定点Bとの間の温度勾配は誤差が相殺されることから精度は極めて高いといえる。
そして、以上のようにして推測した加工点温度を上述したモデル式の熱的拡散摩耗が影響する項にパラメータとして代入することで工具摩耗を精度良く予測することが可能となる。
加工点近傍の第1測定点Aにおける薄膜温度センサ8による実測値と、サーモグラフィ12により測定した第1測定点Aと刃先4a側となる第2測定点Bとの間の温度勾配の実測値とに基づいて第2測定点Bの温度を推測し、第2測定点Bの推測温度をパラメータとしてCAE解析により高精度かつ簡易的に切削工具2と被加工材7との接触領域の温度を推定できるので、加工品質向上に向けた加工条件選定能力向上と工具インターバル選定の簡易化を行うことができる。
尚、実際のCAE解析モデルでは図3に示すように切屑屑の形状まで解析できるため、逃げ面4bだけでなくすくい面4cに対する摩擦予測も同様に推定することが可能である。
測温部としては、薄膜温度センサ8に代えて熱電対を用いるようにしてもよい。ただし、熱電対を刃先4a近傍に形成することは薄膜温度センサを形成するよりも困難である。
クーラントの使用環境下では、クーラントによる熱伝達率の影響を踏まえて計算することで推定することは可能である。これは、薄膜温度センサ8はクーラント使用環境下でも温度実測が可能だからである。
旋盤加工のみではなく、ドリル加工やエンドミル加工など回転工具に適用するようにしてもよい。この場合、薄膜温度センサ8による測定温度はテレメータ装置などの無線装置により処理装置3に送信する。
本実施形態で開示した技術を用いることで工具摩耗予測のみならず、構成刃先など刃先溶着物の発生メカニズム解明にも応用可能である。
放射温度計により刃先4a近傍の温度勾配を測定するようにしてもよい。
Claims (6)
- 被加工材(7)を切削する切削工具(2)の加工点温度に基づいて熱的拡散による工具摩耗量を予測する方法であって、
前記切削工具の刃先(4a)近傍の第1測定点(A)に設けられた測温部(8)により当該第1測定点の温度を測定する第1手順と、
放射熱量測定装置により前記第1測定点と当該第1測定点よりも前記切削工具の刃先(4a)側となる第2測定点(B)との間の温度勾配を求める第2手順と、
測定した前記第1測定点の温度と前記温度勾配に基づいて前記第2測定点の温度を求める第3手順と、
前記第2測定点の温度をパラメータとした熱伝導解析により前記加工点温度を推測する第4手順と、
推測した前記加工点温度に基づいて熱的拡散による工具摩耗量を演算式により予測する第5手順と、
を実行する工具摩耗量予測方法。 - 前記熱的拡散による工具摩耗量を予測する演算式は、下記の演算式である請求項1に記載の工具摩耗量予測方法。
C2・exp(-C3/temp)
但し、C2,C3は係数、tempは工具表面の加工点温度である。 - 前記測温部は、薄膜温度センサ(8)である請求項1または2に記載の工具摩耗量予測方法。
- 前記放射熱量測定装置は、サーモグラフィ(12)である請求項1から3のいずれか一項に記載の工具摩耗量予測方法。
- 前記熱伝導解析は、CAEによる有限要素法を用いた熱伝導解析である請求項1から4のいずれか一項に記載の工具摩耗量予測方法。
- 被加工材(7)を切削する切削工具(2)と、
前記切削工具の刃先(4a)近傍の第1測定点(A)に設けられた測温部(8)と、
前記第1測定点と当該第1測定点よりも前記切削工具の刃先(4a)側となる第2測定点(B)との間の温度勾配を求める放射熱量測定装置(12)と、
測定した前記第1測定点の温度と前記温度勾配に基づいて前記第2測定点の温度を求める演算部(3a)と、
前記第2測定点の温度をパラメータとした熱伝導解析により前記切削工具の加工点温度を推測する解析部(3b)と、
推測した前記加工点温度に基づいて熱的拡散による工具摩耗量を演算式により予測する予測部(3c)と、
を備えた工具摩耗量予測システム。
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