以下、図面を参照して実施形態を説明する。
本実施形態では、第1の溶液中の第1の成分を検出する際に第1の溶液中の第1の成分の検出の後に第2の溶液中の第1の成分を検出し、第1の溶液に第1の成分と共に第2の成分が含まれていると第1及び第2の成分を検出する検出部と、検出部が第1及び第2の溶液中の第1の成分を検出したときの信号に基づいて、第1の溶液中の第1の成分の濃度を算出する演算部と、第1の溶液に第2の成分が含まれているか否かを算出する算出部とを備え、算出部は、検出部が第2の溶液中の第1の成分を検出したときの信号に基づいて、第1の溶液に第2の成分が含まれているか否かを算出する。
換言すると、本実施形態に係る自動分析装置は、試料を含む溶液および校正液をそれぞれイオン選択性電極に接触させることで、溶液に含まれる特定イオンの濃度を測定する自動分析装置であって、溶液の測定および校正液の測定のそれぞれにおいて、イオン選択性電極に関する出力を検出する検出部と、溶液の測定後に実施される校正液の測定において検出部で検出した出力値の時系列的な推移に基づいて、溶液中の特定イオン以外のイオンの有無または濃度に関する情報を出力する処理部とを備える。
図1は、実施形態に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目に対応する標準試料、照合試料(既知濃度の第2の成分を含む試料)及び被検試料等の各試料と各検査項目に対応する試薬とを分注し、各試料及び各試薬の混合液(第1の溶液)を測定する分析部10を備えている。また、自動分析装置100は、分析部10の各試料や各試薬の分注等を行う複数のユニットを駆動する駆動部30と、駆動部30を制御する分析制御部31とを備えている。
また、自動分析装置100は、分析部10で各混合液の測定により検出される各検査項目成分の検出信号を処理して生データを生成する信号処理部32を備えている。また、自動分析装置100は、信号処理部32で生成された生データに基づいて分析データ等の生成を行う演算部33を備えている。
また、自動分析装置100は、信号処理部32で生成された生データに基づいて、被検試料(第1の溶液)中の検査項目成分(第1の成分)の検出の際に第1の成分に対して妨害となる特定の成分(第2の成分)が含まれているか否かを算出する算出部34を備えている。また、自動分析装置100は、信号処理部32で生成された生データ、演算部33で生成された分析データ等を保存するデータ記憶部35を備えている。
また、自動分析装置100は、演算部33で生成された分析データ等を表示する表示部36を備えている。また、自動分析装置100は、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、各試料に対して試料IDや各検査項目を設定するための入力等を行う入力部37を備えている。また、自動分析装置100は、分析制御部31、信号処理部32、算出部34、演算部33、データ記憶部35及び表示部36を制御するシステム制御部38を備えている。
図2は、分析部10の構成の一例を示した斜視図である。この分析部10は、標準試料、照合試料及び被検試料等の各試料を収容する試料容器11と、試料容器11を保持する試料ラック12とを備えている。また、分析部10は、各試料に含まれる各検査項目の成分と反応する試薬である例えば1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する第1試薬容器13と、各検査項目の第1試薬容器13を移動可能に保持する第1試薬ラック14とを備えている。
また、分析部10は、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する第2試薬容器15と、各検査項目の第2試薬容器15を移動可能に保持する第2試薬ラック16とを備えている。また、分析部10は、円周上に配置された複数の反応容器17と、この反応容器17を回転移動可能に保持する反応ディスク18とを備えている。
また、分析部10は、試料ラック12に保持された試料容器11内の各試料を反応容器17内に分注する試料分注プローブ19と、この試料分注プローブ19を上下移動及び回転移動可能に支持する試料分注アーム20とを備えている。
また、分析部10は、第1試薬ラック14に保持された各第1試薬容器13内の第1試薬を反応容器17に分注する第1試薬分注プローブ21と、この第1試薬分注プローブ21を上下移動及び回転移動可能に支持する第1試薬分注アーム22とを備えている。
また、分析部10は、第2試薬ラック16に保持された各第2試薬容器15内の第2試薬を反応容器17に分注する第2試薬分注プローブ23と、この第2試薬分注プローブ23を上下移動及び回転移動可能に支持する第2試薬分注アーム24とを備えている。
また、分析部10は、各反応容器17に分注された各試料及び各第1試薬の混合液や、各試料、各第1試薬及び各第2試薬の混合液を撹拌する撹拌ユニット25を備えている。また、分析部10は、撹拌ユニット25により撹拌が行われた混合液の測定により、その混合液に含まれる検査項目成分を光学的に検出する第1測定部26を備えている。
また、分析部10は、撹拌ユニット25により撹拌が行われた混合液の測定により、その混合液に含まれる検査項目成分を電気化学的に検出する第2測定部27を備えている。また、分析部10は、第1及び第2測定部26,27により測定が行われた混合液を収容する各反応容器17を洗浄する洗浄ユニット28を備えている。
図1に戻り、駆動部30は、搬送機構及びこの搬送機構を駆動するモータを有し、分析部10の試料ラック12を搬送移動する。また、駆動部30は、第1及び第2試薬ラック14,16をそれぞれ駆動するモータを有し、各第1及び第2試薬容器13,15を回転移動する。また、駆動部30は、反応ディスク18を駆動するモータを有し、各反応容器17を回転移動して各停止位置で停止させる。
また、駆動部30は、試料分注アーム20、第1試薬分注アーム22及び第2試薬分注アーム24をそれぞれ上下駆動及び回転駆動するモータを有し、試料分注プローブ19、第1試薬分注プローブ21、及び第2試薬分注プローブ23を上下移動及び回転移動する。また、駆動部30は、第2測定部27の各ユニットを駆動する機構を備えている。
分析制御部31はCPU及び記憶回路を有し、入力部37から入力された各検査項目の分析パラメータ、試料ID、この試料IDで識別される各試料に設定された検査項目等の入力情報に基づき駆動部30を制御して、分析部10の各ユニットを作動させる。
そして、分析制御部31は、入力部37よりキャリブレーションを開始させる入力が行われると、試料ラック12の移動、第1試薬容器13の移動、第2試薬容器15の移動、標準試料や照合試料の分注、第1試薬の分注、第2試薬の分注、混合液の撹拌等のキャリブレーション動作を分析部10に実行させる。
また、分析制御部31は、入力部37より検査を開始させる入力が行われると、試料ラック12の移動、第1試薬容器13の移動、第2試薬容器15の移動、被検試料の分注、第1試薬の分注、第2試薬の分注、混合液の撹拌等の検査動作を分析部10に実行させる。
信号処理部32は、増幅回路、マルチプレクサ及びアナログ・デジタル変換回路等を備えている。そして、信号処理部32は、分析部10の第1測定部26や第2測定部27の各試料を含む混合液等の溶液の測定により検出された信号に基づいて、演算部33や算出部34で用いられる各検査項目の生データを生成する。
演算部33はCPU及び記憶回路を備え、分析部10の第1及び第2測定部26,27での標準試料を含む混合液の測定により信号処理部32で生成された各検査項目の生データに基づいて標準データを生成し、入力部37からの入力により予め設定された当該標準試料が含有する当該検査項目の成分の濃度を示す標準値と当該標準データとの関係を示す関係式を生成する。
また、演算部33は、第1及び第2測定部26,27での被検試料を含む混合液の測定により信号処理部32で生成された各検査項目の生データに基づいて被検データを生成し、被検データに対して当該検査項目の関係式を用いて活性値や濃度値で示される分析データを生成する。
算出部34はCPU及び記憶回路を備え、分析部10の第2測定部27での照合試料を含む混合液の測定により信号処理部32で生成された生データに基づいて照合データを生成し、入力部37からの入力により予め設定された当該照合試料が含有する特定の成分の濃度を示す照合値と当該照合データとの関係を示す第1の換算式を生成する。
また、算出部34は、入力部37からの第1乃至第3の算出方法のうちの第1の算出方法を選択する入力により、第2測定部27での検査項目の成分の検出により信号処理部32で生成された生データ及び第1の換算式に基づいて、被検試料に当該検査項目成分以外の特定の成分が含まれているか否かを算出する。
また、算出部34は、入力部37からの第1乃至第3の算出方法のうちの第2の算出方法を選択する入力により、第2測定部27での検査項目の成分の検出により信号処理部32で生成された生データ及び予め設定された第2の換算式等に基づいて、被検試料に当該検査項目成分以外の特定の成分が含まれているか否かを算出する。
また、算出部34は、入力部37からの第1乃至第3の算出方法のうちの第3の算出方法を選択する入力により、第2測定部27での検査項目の成分の検出により信号処理部32で生成された生データ及び予め設定された第3の換算式等に基づいて、被検試料に当該検査項目成分以外の特定の成分が含まれているか否かを算出する。
データ記憶部35は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等のストレージを備えている。そして、データ記憶部35は、信号処理部32で生成された各検査項目の生データや、演算部33で生成された標準データ、関係式、被検データ及び分析データを保存する。また、データ記憶部35は、算出部34で生成された第1の換算式や、入力部37からの入力により予め設定された特定の成分が含まれているか否かを算出するための第2の換算式及び第3の換算式等を保存する。
表示部36は例えばCRTや液晶パネルなどのモニタを備えている。そして、表示部36は、各検査項目の標準試料に含まれる成分の濃度等の標準値を設定するための画面、分析部10に各検査項目のキャリブレーションや検査を実行させるためのパラメータを設定するための画面、試料毎にこの試料を識別する試料ID及び検査項目を設定するための画面等を表示する。また、表示部36は、演算部33で生成された関係式や分析データを表示する。また、表示部36は、算出部34で算出された算出結果を表示する。
入力部37は例えばキーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備えている。そして、入力部37は、各検査項目に対応する標準試料の標準値や照合試料の照合値を設定するための入力、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、試料ID及び検査項目を設定するための入力、キャリブレーションや検査を実行させるための入力等を行う。
システム制御部38はCPU及び記憶回路を備え、入力部37から入力されたコマンド信号、標準値、照合値、分析パラメータ、試料ID及び検査項目の情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部31、信号処理部32、演算部33、算出部34、データ記憶部35及び表示部36を統括してシステム全体を制御する。
次に、図2乃至図5を参照して、分析部10における第2測定部27の構成の詳細について説明する。
図3は、第2測定部27の構成の一例を示した図である。この第2測定部27は、各試料及び試薬の混合液中の測定により検査項目成分である例えばナトリウムイオン、カリウムイオン及び塩素イオンの各電解質を検出する着脱可能な検出部40を備えている。また、第2測定部27は、各電解質の濃度が一定の濃度の各電解質を含有する校正液を収容する溶液収容部41と、混合液及び校正液の各溶液を検出部40に吸引する吸引部43とを備えている。また、第2測定部27は、検出部40により検出されて不用になった各溶液を貯留する廃液タンク47を備えている。
図4は、検出部40の構成の一例を示した図である。この検出部40は、駆動部30により反応容器17と溶液収容部41の間を移動可能に配置され、例えば37℃等の一定の温度に保持された複合電極45と、複合電極45の下端部に着脱可能に取り付けられた吸引ノズル46とにより構成される。複合電極45は、3つのイオン選択性電極(ISE)451乃至453及び参照電極454により構成され、吸引ノズル46に連通し各ISE451乃至453及び参照電極454を貫通する貫通孔45aを有する。
ISE451は、貫通孔45aの一部を形成し、ナトリウムイオンを選択的に検出する感応膜を有する。また、ISE452は、貫通孔45aの一部を形成し、カリウムイオンを選択的に検出する感応膜を有する。また、ISE453は、貫通孔45aの一部を形成し、塩素イオンを選択的に検出する感応膜を有する。また、参照電極454は、貫通孔45aの一部を形成し、一定の電位を発生する液絡部を有する。
そして、ISE451は、吸引部43の吸引動作により、貫通孔45aに流入した各溶液の活量係数及び溶液温度が一定となる条件で、参照電極454に対してナトリウムイオンの濃度の対数に比例する電位を発生する。また、ISE452は、吸引部43の吸引動作により、貫通孔45aに流入した各溶液の活量係数及び溶液温度が一定となる条件で、参照電極454に対してカリウムイオンの濃度の対数に比例する電位を発生する。また、ISE453は、吸引部43の吸引動作により、貫通孔45aに流入した各溶液の活量係数及び溶液温度が一定となる条件で、参照電極454に対して塩素イオンの濃度の対数に反比例する電位を発生する。
図3に示した溶液収容部41は、校正液ボトル411と、貯留容器412と、供給ポンプ413と、排液ポンプ414とを備えている。校正液ボトル411には、校正液が収容されている。供給ポンプ413は、駆動部30の駆動により校正液ボトル411内の校正液を吸引して貯留容器412内に供給するポンプである。貯留容器412は、供給ポンプ413により供給された校正液を、複合電極45と同じ温度で貯留する容器である。排液ポンプ414は、吸引部43により検出部40内に吸引された後に貯留容器412内に残留する校正液を排出するポンプである。
標準試料は各電解質の濃度が異なる2種類の第1及び第2の標準試料からなり、第1の標準試料に含まれる各電解質の濃度を示す第1の標準値と、第2の標準試料に含まれる各電解質の濃度を示す第2の標準値とが入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存されている。
キャリブレーションが実行されると、試料分注プローブ19は各第1及び第2の標準試料を反応容器17に分注し、第1試薬分注プローブ21は各第1及び第2の標準試料が分注された反応容器17に第1試薬を分注する。第1の標準試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第1の標準試料が第1試薬で希釈され、校正液よりも低濃度の各電解質を含有する第1の標準混合液となる。また、第2の標準試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第2の標準試料が第1試薬で希釈され、校正液よりも高濃度の各電解質を含有する第2の標準混合液となる。
検査が実行されると、試料分注プローブ19は各電解質の濃度が未知の被検試料を反応容器17に分注し、第1試薬分注プローブ21は被検試料が分注された反応容器17に第1試薬を分注する。被検試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では被検試料が第1試薬で希釈された被検混合液となる。
吸引部43は、吸引ポンプ431と、吸引ポンプ431と検出部40との間を連通するチューブ432とを備えている。吸引ポンプ431は、例えばシリンジ及びプランジャにより構成されるシリンジポンプを有する。そして、吸引ポンプ431は、図5(a)に示すように、駆動部30により検出部40が移動されて吸引ノズル46が反応容器17内の第1の標準混合液、第2の標準混合液及び被検混合液の各混合液に進入した位置で停止すると、駆動部30の吸引駆動により各混合液を吸引する吸引動作を行う。また、吸引ポンプ431は各混合液の吸引動作の前後に、図5(b)に示すように、駆動部30により検出部40が移動されて吸引ノズル46が貯留容器412内の校正液に進入した位置で停止すると、駆動部30の吸引駆動により校正液を吸引する吸引動作を行う。
次に、図2乃至図6を参照して、第2測定部27の検出部40により検出された信号を処理する信号処理部32について説明する。
信号処理部32は、第2測定部27の吸引部43による校正液(前校正液)の吸引動作と、この吸引動作の次の第1の標準混合液、第2の標準混合液もしくは被検混合液の各混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の校正液(後校正液)の吸引動作との各液の吸引動作に応じて、検出部40が各電解質を検出したときの電位に相当する信号を、所定の時間帯に時系列的に収集して複数の生データを生成する。
以下では、吸引部43による前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の第2の標準混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作とに応じて、検出部40が前校正液、第2の標準混合液及び後校正液の各溶液中の各電解質を検出した信号を処理する信号処理部32について説明する。
なお、前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の第1の標準混合液及び被検混合液の各混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作とに応じて、検出部40が前校正液、各混合液及び後校正液の各溶液中の各電解質を検出したときの信号処理部32の信号処理は、検出部40が前校正液、第2の標準混合液及び後校正液の各溶液中の各電解質を検出したときの信号処理と同様に行われるのでその説明を省略する。
図6は、検出部40により検出された信号の一例を示した図である。この信号50は、検出部40における複合電極45のうちの例えばISE453の電位に相当する信号であり、横軸を時間とし、縦軸を電圧とする2次元座標上に表されている。そして、信号50は、前校正液の吸引動作に応じて検出された前校正信号51と、第2の標準混合液の吸引動作に応じて検出された第2の標準信号52と、後校正液の吸引動作に応じて検出された後校正信号53とにより構成される。
前校正信号51、第2の標準信号52及び後校正信号53の各信号は、各吸引動作の開始から第1の時間経過するまでの第1の時間帯T1と、各吸引動作の開始より第1の時間が経過してから第2の時間が経過するまでの第2の時間帯T2とに区分される。第1の時間帯T1は、各吸引動作の開始により吸引された溶液が複合電極45の貫通孔45aに流入して、貫通孔45a内の溶液が当該溶液に入れ替わるまでの時間帯に当たる。また、第2の時間帯T2は、貫通孔45a内の溶液が吸引された溶液に入れ替わった後の時間帯に当たる。
前校正信号51は、前校正液の吸引動作の前の吸引動作が例えば第2の標準混合液の吸引動作である場合の前校正液の吸引動作が開始されてから第1及び第2の時間を合計した時間T経過するまでの信号である。
第2の標準信号52は、前校正液の吸引動作の開始より時間T経過後に第2の標準混合液の吸引動作が開始され、第2の標準混合液の吸引動作の開始から時間T経過するまでの信号である。第2の標準信号52は、貫通孔45a内の溶液が校正液から各電解質濃度の高い第2の標準混合液に入れ替わることによりISE453の電位が低くなるため第1の時間帯T1に下降し、貫通孔45a内の溶液が第2の標準混合液に入れ替わった後にISE453が第2の標準混合液に応じた電位を示すため第2の時間帯T2にほぼ安定する。
後校正信号53は、第2の標準混合液の吸引動作の開始より時間T経過後に後校正液の吸引動作が開始され、後校正液の吸引動作の開始から時間T経過するまでの信号である。後校正信号53は、貫通孔45a内の溶液が第2の標準混合液から電解質濃度の低い校正液に入れ替わることによりISE453の電位が高くなるため第1の時間帯T1に上昇し、貫通孔45a内の溶液が校正液に入れ替わった後にISE453が校正液に応じた電位を示すため第2の時間帯T2にほぼ安定する。そして、前校正信号51と後校正信号53とは、ISE453が校正液に応じた電位を示すため、ほぼ同じ電圧を示す。
なお、前校正液の吸引動作の次の吸引動作が前校正液よりも電解質濃度が低い第1の標準混合液の吸引動作である場合、第1の標準混合液の吸引動作に応じて検出される第1の標準信号は、貫通孔45aが校正液から各電解質濃度の低い第1の標準混合液に入れ替わることによりISE453の電位が高くなるため第1の時間帯T1に上昇し、貫通孔45a内の溶液が第1の標準混合液に入れ替わった後にISE453が第1の標準混合液に応じた電位を示すため第2の時間帯T2にほぼ安定する。
信号処理部32は、吸引部43による前校正液の吸引動作と、第2の標準混合液の吸引動作と、後校正液の吸引動作との各吸引動作に応じて、前校正液と、第2の標準混合液と、後校正液との各溶液中の塩素イオンが検出されたときの第2の時間帯T2の前校正信号51、第2の標準信号52及び後校正信号53の各信号を一定の間隔で収集して複数の生データを生成する。
なお、信号処理部32は、吸引部43による前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の第1の標準混合液及び被検混合液の各混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作との各吸引動作に応じて、前校正液と、当該混合液と、後校正液との各溶液中の塩素イオンが検出されたときの第2の時間帯T2の各信号を一定の間隔で収集して複数の生データを生成する。また、信号処理部32は、前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の第1の標準混合液、第2の標準混合液及び被検混合液の各混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作とに応じて、検出部40により検出された各ISE451,452の電位に相当する信号の処理を、ISE453の電位に相当する信号の処理と同様に行うのでその説明を省略する。
次に、図3乃至図8を参照して、第2測定部27の検出部40で検出され、信号処理部32で生成された複数の生データに基づいて演算部33で生成される標準データ、関係式及び分析データの一例を説明する。以下では、複合電極45の例えばISE453による電解質の検出により演算部33で生成される標準データ、関係式、被検データ及び分析データについて説明する。なお、演算部33はISE453の場合と同様にして各ISE451,452の各電解質の検出により標準データ、関係式及び分析データを生成するのでその説明を省略する。
図7は、標準データ及び被検データの生成の一例を説明するための図である。また、図8は、関係式及び分析データの生成の一例を説明するための図である。
図7において、演算部33は、第2測定部27の吸引部43による第1の標準混合液の吸引動作に応じて信号処理部32で生成される複数の生データのうち、例えば第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して第1の校正前標準データELを生成する。次いで、演算部33は、吸引部43の後校正液の吸引動作に応じて生成される複数の生データのうち、第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して第1の標準後校正データELCを生成する。そして、演算部33は、第1の校正前標準データELから第1の標準後校正データELCを差し引いて第1の標準データΔELを生成する。
また、演算部33は、吸引部43の第2の標準混合液の吸引動作に応じて生成される複数の生データのうち、第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して第2の校正前標準データEHを生成する。次いで、演算部33は、吸引部43の後校正液の吸引動作に応じて生成される複数の生データのうち、第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して第2の標準後校正データEHCを生成する。そして、演算部33は、第2の校正前標準データEHから第2の標準後校正データEHCを差し引いて第2の標準データΔEHを生成する。
図8において、演算部33はネルンストの式に基づいて、予め設定された第1及び第2の標準試料中の塩素イオンの濃度を示す第1及び第2の標準値CL,CHと、第1及び第2の標準データΔEL,ΔEHとの関係を示す関係式を生成する。この関係式は、傾きがS1=(ΔEH―ΔEL)/ln(CH/CL)となる、Y=ΔEL+S1*(lnX-lnCL)によって表される。そして、関係式は、X軸を塩素イオンの濃度の対数とし、Y軸を電圧とする2次元座標上に直線D1で表される。
このように、自動分析装置100に取り付けられた複合電極45に対して、第1及び第2の標準試料を用いてキャリブレーションを実行させることにより、被検試料中の各電解質の濃度を算出するための関係式を生成させることができる。
図7において、演算部33は、吸引部43による被検混合液の吸引動作に応じて生成される複数の生データのうち、第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して校正前被検データESを生成する。次いで、演算部33は、吸引部43の後校正液の吸引動作に応じて生成される複数の生データのうち、第2の時間帯T2の末期に生成される複数の生データを平均処理して被検後校正データESCを生成する。そして、演算部33は、校正前被検データESから被検後校正データESCを差し引いて被検データΔESを生成する。
図8において、演算部33は、関係式の項Yに被検データΔESを代入して項Xを求めることにより、被検試料中の塩素イオンの濃度を示す分析データCSを生成する。
なお、第1の標準後校正データELC、第2の標準後校正データEHC及び被検後校正データESCの各後校正データを、第1の標準混合液、第2の標準混合液及び被検混合液の各混合液の吸引動作の前の前校正液の吸引動作に応じて第2の時間帯T2の収集により生成される複数の生データのうちの末期の複数のデータを平均処理することにより生成される第1の標準前校正データ、第2の標準前校正データ及び被検前校正データの各前校正データに置き換えて実施するようにしてもよい。
以下、検出部40による第1の溶液中の第1の成分の検出の際に第1の成分に対して妨害となる第2の成分が含まれているか否かを算出する算出方法について詳細に説明する。
検出部40における複合電極45の例えばISE453は、塩素イオンだけでなく同族元素のイオンである臭素イオンやヨウ素イオンに対しても高い選択性を有し、被検試料中に塩素イオンと例えば臭素イオンが含まれていると塩素イオン及び臭素イオンを検出するため、塩素イオンの濃度に対応する電位よりも低い電位を示す。特に一部の医薬品は臭素を含有し、その医薬品を服用した被検体から採取された試料に医薬品由来の臭素イオンが含まれていると、当該血液中の塩素イオンの分析データは実際の塩素イオンの濃度値よりも高値を示す。
従って、検出部40が第1の溶液中の第1の成分を検出する際に第1の溶液に第1の成分と共に第1の成分に対して妨害となる第2の成分が含まれていると第1及び第2の成分を検出するため、算出部34が、第1の溶液に第2の成分が含まれているか否かを算出することにより、分析データの良否を判断することができる。
以下では、検出部40といえばISE453を指し、第1の成分といえば塩素イオンを指し、第2の成分といえば臭素イオンを指す場合の例について説明する。
(第1の算出方法)
先ず、図6と図9乃至図11とを参照して、第1の算出方法について説明する。この第1の算出方法は、キャリブレーションの実行により既知濃度の第2の成分を含有する照合試料を分析部10で分注・測定させて算出部34で第1の換算式を生成させ、第1の換算式を用いて被検試料に第2の成分が含まれているか否かを算出する方法である。
第1の算出方法においては、第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションに引き続き、複数の照合試料を用いたキャリブレーションを実行させる。
照合試料は、例えば、第2の成分の濃度が第1の照合値C1を示す第1の照合試料と、第2の成分の濃度が第1の照合値C1よりも高い第2の照合値C2を示す第2の照合試料と、第2の成分の濃度が第2の照合値C2よりも高い第3の照合値C3を示す第3の照合試料と、第2の成分の濃度が第3の照合値C3よりも高い第4の照合値C4を示す第4の照合試料と、第2の成分の濃度が第4の照合値C4よりも高い第5の照合値C5を示す第5の照合試料とからなる。
第1の照合試料は、第2の成分を含有しない第2の標準試料を用いることにより、第1の照合値C1は0となる。また、各第2乃至第5の照合試料は、例えば第2の標準試料と同じ濃度の第1の成分を含有する試料とする。
第1乃至第5の照合試料を用いてのキャリブレーションが実行されると、試料分注プローブ19は各第1乃至第5の照合試料を反応容器17に分注し、第1試薬分注プローブ21は当該照合試料が分注された反応容器17に第1試薬を分注する。
第1の照合試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第1の照合試料が第1試薬で希釈された第1の照合混合液となる。また、第2の照合試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第2の照合試料が第1試薬で希釈された第2の照合混合液となる。また、第3の照合試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第3の照合試料が第1試薬で希釈された第3の照合混合液となる。また、第4の照合試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第4の照合試料が第1試薬で希釈された第4の照合混合液となる。また、第5の照合試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第5の照合試料が第1試薬で希釈された第5の照合混合液となる。
信号処理部32は、吸引部43による前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の各第1乃至第5の照合混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作との各吸引動作に応じて、検出部40により検出された前校正信号と、各第1乃至第5の照合信号と、後校正信号との各信号を第2の時間帯T2に収集して複数の生データを生成する。
図9は、前校正液の吸引動作、各第1乃至第5の照合混合液の吸引動作及び後校正液の吸引動作に応じて検出部40により検出された各信号の一例を示した図であり、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。
ここでは、各第1乃至第5の照合混合液の吸引動作の前の前校正液の吸引動作に応じて検出された信号が重複する位置に配置したときの、第1乃至第5の照合混合液の吸引動作に応じて検出された各第1乃至第5の照合信号60乃至64と、後校正液の吸引動作に応じて検出された各第1乃至第5の後校正信号65乃至69とを示している。
第1の照合信号60は、第2の成分を含有しない第1の照合混合液の吸引動作が開始されてから時間T経過するまでの信号であり、図6に示した第2の標準信号52とほぼ同じ電圧を示す。また、第2の照合信号61は、第2の照合混合液の吸引動作が開始されてから時間T経過するまでの信号である。この第2の照合信号61は、第2の成分を含有する第2の照合混合液に対応する信号であるため、第2の時間帯T2では第1の照合信号60よりも低い電圧を示す。
また、第3の照合信号62は、第3の照合混合液の吸引動作が開始されてから時間T経過するまでの信号である。この第3の照合信号62は、第2の照合混合液よりも高い濃度の第2の成分を含有する第3の照合混合液に対応する信号であるため、第2の時間帯T2では第2の照合信号61よりも低い電圧を示す。
また、第4の照合信号63は、第4の照合混合液の吸引動作が開始されてから時間T経過するまでの信号である。この第4の照合信号63は、第3の照合混合液よりも高い濃度の第2の成分を含有する第4の照合混合液に対応する信号であるため、第2の時間帯T2では第3の照合信号62よりも低い電圧を示す。
また、第5の照合信号64は、第5の照合混合液の吸引動作が開始されてから時間T経過するまでの信号である。この第5の照合信号64は、第4の照合混合液よりも高い濃度の第2の成分を含有する第5の照合混合液に対応する信号であるため、第2の時間帯T2では第4の照合信号63よりも低い電圧を示す。
第1の後校正信号65は、第1の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であり、第1の照合混合液の吸引動作の前の前校正液の吸引動作に応じて検出された信号及び図6に示した後校正信号53とほぼ同じ電圧を示す。
また、第2の後校正信号66は、第2の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であるにもかかわらず、第1の後校正信号65よりも低い電圧を示す。
また、第3の後校正信号67は、第3の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であるにもかかわらず、第2の時間帯T2に変化して第2の後校正信号66よりも低い電圧を示す。
また、第4の後校正信号68は、第4の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であるにもかかわらず、第2の時間帯T2に第3の後校正信号67よりも変化して低い電圧を示す。
また、第5の後校正信号69は、第5の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であるにもかかわらず、第2の時間帯T2に第4の後校正信号68よりも変化して低い電圧を示す。
このように、各第2乃至第5の照合混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出された各第2乃至第5の後校正信号66乃至69は、第2の成分を含有しない校正液に対応する信号であるにもかかわらず、第2の時間帯T2に第1の後校正信号65よりも変化して低い電圧を示し、且つ、当該照合混合液中の第2の成分の濃度が高いほどより変化して低い電圧を示すことがわかる。
この原因は、各第2乃至第5の照合混合液中の第2の成分がISE453に吸着し、ISE453が後校正液の吸引動作に応じて校正液中の第1の成分を検出する際に、吸着した第2の成分のうちのISE453に残留する第2の成分も検出するために起こる現象と考えられる。各第2乃至第5の照合混合液の吸引動作の後、校正液の吸引動作を複数回行わせると、前校正液の吸引動作により検出された信号のレベルに戻ることからも、ISE453に着脱する第2の成分によるものであることがわかる。
信号処理部32は、吸引部43による後校正液の吸引動作に応じて検出された各第1乃至第5の後校正信号65乃至69のうちの第2の時間帯T2の後校正信号を収集して複数の生データを生成する。
算出部34は、信号処理部32により生成された複数の生データに基づいて、図10に示すように、各第1乃至第5の後校正信号65乃至69が収集された時間とこの時間の収集により生成した複数の生データとの関係を示す各直線L1乃至L5の傾きを求めることにより、第1乃至第5の照合試料に対応する第2の時間帯T2の第1乃至第5の後校正信号の傾きM1乃至M5を算出する。上記傾きM1乃至M5の値は、例えば、測定時間に対する信号処理部32から出力される出力値(生データ)の分布における回帰直線の傾きの値に相当する。
具体的には、直線L1は、例えば、第2の時間帯T2において収集された第1の校正後信号65に関する複数の生データに基づく回帰直線である。直線L2は、例えば、第2の時間帯T2において収集された第2の校正後信号66に関する複数の生データに基づく回帰直線である。直線L3は、例えば、第2の時間帯T2において収集された第3の校正後信号67に関する複数の生データに基づく回帰直線である。直線L4は、例えば、第2の時間帯T2において収集された第4の校正後信号68に関する複数の生データに基づく回帰直線である。直線L5は、例えば、第2の時間帯T2において収集された第5の校正後信号69に関する複数の生データに基づく回帰直線である。尚、上記回帰直線は、第2の時間帯T2の任意の範囲において収集された複数の生データに基づいてもよい。任意の範囲は、例えば、時間Tが9秒である場合、各吸引動作の開始を基準として5秒から8秒の間である。尚、算出部34は、例えば、第2の時間帯T2における任意の二点の時刻にそれぞれ対応する二つの電圧値を用いて、上記回帰直線の傾きに相当する値を算出してもよい。
なお、第2の成分の混入以外の影響によっても、本来の値とは異なる電圧を示す電位シフトが発生する場合がある。このような電位シフトは、例えば、電極への気泡の吸着、および液漏れによる導通などによって発生する。しかし、第2の成分の混入による電圧変化と、それ以外による電圧変化とでは、後述するように第2の時間帯T2における信号レベルの戻り方に違いがあるため、電位シフトが発生したことを検出するだけでは第2の成分が混入したか否かを判別することは困難である。
例えば、第2の成分の混入以外の影響によって電位シフトが発生した場合、上記傾きの値は、各第1乃至第5の照合信号60乃至64よりも前の前校正信号の傾きの値と略一致する。即ち、上述したように、電位シフトが発生しただけでは第2の成分が混入したか否かを判別することは困難である。
第1乃至第5の照合試料に対応する第1乃至第5の後校正信号の傾きM1乃至M5は、後述するように、第1乃至第5の照合値C1乃至C5と線形の相関がある。このことから、算出部34は、第1乃至第5照合値C1乃至C5と第1乃至第5の後校正信号の傾きM1乃至M5との関係を示す直線回帰式を求めることにより第1の換算式を生成し、データ記憶部35に保存する。
算出部34により生成された第1の換算式は、取り付けられている検出部40に対して更新のための次のキャリブレーション、又は新たに取り付けられた検出部40に対するキャリブレーションが実行されるまで、データ記憶部35に保存される。
第1の換算式は、図11に示すように、傾きをS2とし、切片をBとするY=S2*X+Bによって表され、X軸を第2の成分の濃度とし、Y軸を電圧とする2次元座標上に直線D2で表される。
なお、第1の換算式の生成に用いる照合試料は5種類の第1乃至第5の照合試料に限定されるものではなく、第1乃至第5の照合試料のうちの2種類以上の照合試料であればよい。
照合試料を用いてのキャリブレーションが終了して検査が実行されると、試料分注プローブ19は被検試料を分注し、第1試薬分注プローブ21は被検試料の分注が行われた反応容器17に第1試薬を分注する。反応容器17内では被検試料が第1試薬で希釈された被検混合液となる。吸引部43は、前校正液の吸引動作を行い、この吸引動作の次に被検混合液の吸引動作を行い、この吸引動作の次に後校正液の吸引動作を行う。
信号処理部32は、吸引部43による前校正液の吸引動作と、被検混合液の吸引動作と、後校正液の吸引動作との各吸引動作に応じて、検出部40により検出された第2の時間帯T2における前校正信号と、被検信号と、後校正信号とを収集して複数の生データを生成する。
算出部34は、後校正液の吸引動作に応じて信号処理部32で生成された複数の生データに基づいて、被検試料に対応する後校正信号の傾きを求める。次いで、算出部34は、データ記憶部35に保存されている第1の換算式を読み出して、第1の換算式の項Yに当該後校正信号の傾きを代入して項Xを求めることにより、被検試料に第2の成分が含まれているか否かを算出する。
このように、自動分析装置100に取り付けられた個々の複合電極45に対して、照合試料を用いたキャリブレーションの実行により、第1の換算式を生成することができる。これにより、後校正信号の傾きを指標として第1の換算式を用いて被検試料に第2の成分が含まれているか否かを算出することができる。
図12は、第1乃至第5照合値C1乃至C5と第1乃至第5の後校正信号の傾きM1乃至M5との間に線形の相関があることを説明するための図である。
第2の成分の濃度が0.0mmol/Lとなる第2の標準試料を第1の調製試料とし、第1の成分の濃度が第2の標準試料と同じで、第2の成分の含有量がそれぞれ0.5mmol/L、1mmol/L、2mmol/L、4mmol/L、8mmol/L、16mmol/Lとなる6種類の第2乃至第7の調製試料とする合計で7種類の第1乃至第7の調製試料を準備する。
第1の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第1の調製混合液となり、第2の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第2の調製混合液となる。また、第3の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第3の調製混合液となり、第4の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第4の調製混合液となる。また、第5の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第5の調製混合液となり、第6の調製試料及び第1試薬の分注により反応容器17内では第6の調製混合液となる。また、第7の調製試料及び第1試薬の分注により、反応容器17内では第7の調製混合液となる。
信号処理部32は、吸引部43による第1の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作、第2の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作、第3の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作、第4の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作、第5の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作、第6の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作及び第7の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作の各後校正液の吸引動作に応じて、検出部40により検出された第2の時間帯T2の各第1乃至第7の後校正信号を収集して複数の生データを生成する。
算出部34は、信号処理部32により生成された複数の生データに基づいて、第1乃至第7の調製試料に対応する第2の時間帯T2の第1乃至第7の後校正信号の傾きを算出する。
第1乃至第7の調製試料の第2の成分の含有量と、算出部34で算出された第1乃至第7の調製試料に対応する第1乃至第7の後校正信号の傾きとは、相関係数が0.999となる線形の相関があり、直線回帰式は例えばY=0.2694X+0.1913で表すことができる。
このように、第1乃至第7の調製試料中の第2の成分の含有量と、第1乃至第7の調製混合液中の第1の成分を検出部40が検出したときの第2の時間帯T2の後校正信号の傾きとは線形の相関があるため、後校正信号の傾きを指標として第1の換算式を用いて被検試料に第2の成分が含まれているか否かを算出することができる。
なお、第1の調製混合液の吸引動作の後の後校正液の吸引動作に応じて検出される第2の時間帯T2の例えば末期の第1の後校正信号から第1の調製混合液の吸引動作の前の前校正液の吸引動作に応じて検出される第2の時間帯T2の末期の第1の前校正信号を差し引いて第1の前後校正信号差を求める。また、各第2乃至第7の調製混合液に対しても第1の調製混合液の場合と同様にして、それぞれ第2の前後校正信号差、第3の前後校正信号差、第4の前後校正信号差、第5の前後校正信号差、第6の前後校正信号差、第7の前後校正信号差を求める。この場合、第1乃至第7の調製試料の第2の成分の含有量と、第1乃至第7の前後校正信号差とは、強い線形の相関がある。
このことから、個々の検出部40に対して、照合試料を用いてキャリブレーションにより、第1乃至第5の照合混合液に対応する第1乃至第5の前後校正信号差を求め、第1乃至第5の照合値C1乃至C5と第1乃至第5の前校正信差との関係を示す直線回帰式を第1の換算式として生成させることにより、前後校正信号差を指標にして、被検試料に第2の成分が含まれているか否かを算出するように実施してもよい。
(第2の算出方法)
次に、図12及び図13を参照して、第2の算出方法について説明する。
第2の算出方法が第1の算出方法と異なる点は、例えば第1乃至第7の調製試料及び複数の検出部40を用いて実験により求めた第2の換算式、第1の閾値及び濃度の閾値をデータ記憶部35に予め設定保存しておくことにより、個々の検出部40に対して照合試料を用いてのキャリブレーションを行うことなく、後校正信号の傾きを指標にして第2の換算式、第1の閾値及び濃度の閾値に基づいて第2の成分が含まれているか否かの算出を行う点である。
先ず、第2の換算式の算出方法について説明する。
図12で説明した7種類の第1乃至第7の調製試料と、複数の検出部40とを準備する。そして、個々の検出部40に対して図12での説明と同様にして直線回帰式を求め、複数の検出部40に対して求めた複数の直線回帰式の傾きの平均値を傾きとし、複数の直線回帰式の切片の平均値を切片とする第2の換算式を算出する。算出した第2の換算式は、入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存する。
この第2の換算式は、例えば、Y=0.165F*X+0.177Fによって表される。Yは後校正信号の傾きを表し、Xは第2の成分の濃度を表し、Fはファクター値を表している。ファクター値は、ネルンスト式に基づく理論上の電位と第1の成分濃度間の傾き(mV/decade)を1とした場合の、個々の複合電極45に対して第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションにより生成された関係式の傾きS1の相対値のことである。なお、第2の換算式には、個々の複合電極45に対してファクター値で後校正信号の傾きを規格化することにより、ばらつきを抑える処理を行っている。
従って、第2の算出方法では、後校正信号の傾きを指標にし、複数の検出部40から算出した第2の換算式を個々の複合電極45に対して共通の式として用いる。
図13は、個々の検出部40に対して第2の換算式を用いて計算した第2の成分の濃度の一例を示した図である。
図13(a)は、個々の検出部40に対して、第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションにより生成された関係式の傾きS1と第2乃至第7の調製混合液の測定により算出した第2乃至第7の後校正信号の傾きとを、図12で説明した第2の換算式に代入して得られた第2乃至第7の調製試料中の第2の成分の濃度の計算結果である。
各第2乃至第7の調製混合液の測定により複数の検出部40より得られた複数の第2の成分の濃度の平均値と、95%信頼区間を示している。この結果から、確度はおおむね良好な結果を示しているが、精度は低濃度域でばらつきが大きく、第2の成分の含有量が4mmol/L未満では濃度の推定が困難である。
図13(b)は、個々の検出部40に対して、第2乃至第7の調製混合液の測定により算出した第2乃至第7の後校正信号の傾きを、第2の成分を含有しない第1の調製混合液の測定により算出した第1の後校正信号の傾きで規格化した各第2乃至第7の規格化後校正信号の傾きの計算結果である。尚、測定中において、第2の成分を含有しない混合液の測定後に実施される校正液の測定結果である後校正信号の傾きを用いて、第2乃至第7の調製混合液の測定により算出した第2乃至第7の後校正信号の傾きを規格化させてもよい。
各第2乃至第7の調製混合液の測定により複数の検出部40より得られた複数の各第2乃至第7の規格化後校正信号の傾きの平均値と、95%信頼区間とを示している。この結果から、第2乃至第7の規格化後校正信号の傾きのうち、第1の後校正信号の傾きに対して明確に区別可能な規格化後校正信号の傾きとなるのは、第2の成分の含有量が2mmol/L以上の第4乃至第7の規格化後校正信号の傾きであることがわかる。
以上のことから、後校正信号の傾きを指標にした第2の成分の濃度推定は、2mmol/L以上の第2の成分が含まれている場合に第2の成分の有無の判定が可能であり、4mmol/L以上の第2の成分を含有している場合に第2の成分の濃度の概算が可能である。
従って、後校正信号の傾きを指標にする第2の算出方法では、図13(b)の結果より第4の規格化後校正信号の傾きを第1の閾値とし、図13(a)の結果より第4の後校正信号の傾きを濃度の閾値として、入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存し、個々の複合電極45に対して共通の閾値として用いる。
次に、第2の算出方法による算出の手順について説明する。
データ記憶部35には、予め設定された第2の換算式、第1の閾値及び濃度の閾値が保存されている。
第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションが実行されると、演算部33は、関係式を生成してデータ記憶部35に保存する。また、算出部34は、第2の標準混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて信号処理部32により生成された複数の生データに基づいて、第2の標準試料に対応する後校正信号の傾きを算出してデータ記憶部35に保存する。
検査が開始されると、算出部34は、被検試料毎にこの被検試料に対応する後校正信号の傾きを算出した後、当該後校正信号の傾きを第2の標準試料に対応する後校正信号の傾きで規格化した規格化後校正信号の傾きを算出する。そして、規格化後校正信号の傾きが第1の閾値未満である場合、被検試料に第2の成分が含まれていないと判定する。また、算出部34は、規格化後校正信号の傾きが第1の閾値以上である場合、被検試料に第2の成分が含まれていると判定し、被検試料に第2の成分が含まれていることを示す警告情報を表示部36に表示させる。
次いで、算出部34は、規格化後校正信号の傾きが濃度の閾値以上である場合、被検試料に対応する後校正信号の傾きと、キャリブレーションにより生成された関係式の傾きS1の相対値とを第2の換算式に代入して第2の成分の濃度を算出する。そして、算出部34は、算出した第2の成分の濃度が濃度の閾値以上である場合、算出した第2の成分の濃度の情報を表示部36に表示させる。
このように、個々の検出部40に対して、照合試料を用いてのキャリブレーションを行うことなく、予め設定された第1の閾値に基づいて後校正信号の傾きを指標として被検試料中の第2の成分の有無の判定を行い、予め設定された濃度の閾値及び第2の換算式に基づいて第2の成分の濃度の算出を行うことができる。
(第3の算出方法)
次に、図12乃至図15を参照して、第3の算出方法について説明する。
第3の算出方法が第2の算出方法と異なる点は、第2の算出方法で用いた第1の閾値に加えて、第1乃至第7の調製試料及び複数の検出部40を用いて実験により求めた第3の換算式及び第2の閾値をデータ記憶部35に予め設定保存しておくことにより、個々の検出部40に対して照合試料を用いてのキャリブレーションを行うことなく、後校正信号の傾き及び前後校正信号差を指標にして、第1の閾値、第3の換算式及び第2の閾値に基づいて、第2の成分が含まれているか否かの算出を行う点である。
先ず、第3の換算式の算出方法について説明する。
図12で説明した7種類の第1乃至第7の調製試料と、複数の検出部40とを準備する。そして、個々の検出部40に対して、第1乃至第7の調製試料の第2の成分の含有量と、第1乃至第7の調製混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて検出される第2の時間帯T2の例えば末期の第1乃至第7の後校正信号から、第1乃至第7の調製混合液の吸引動作の前の前校正液の吸引動作に応じて検出される第2の時間帯T2の末期の第1乃至第7の前校正信号を差し引いて算出される第1乃至第7の前後校正信号差との関係を示す直線回帰式を求める。次いで、複数の検出部40に対して求めた複数の直線回帰式の傾きの平均値を傾きとし、複数の回帰直線式の切片の平均値を切片とする第3の換算式を算出する。算出した第3の換算式は、入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存し、個々の検出部40に対して共通の式として用いる。
第3の換算式は、例えば、Y=―0.367F*X+0.015Fによって表される。Yは前後校正信号差を表し、Xは第2の成分の濃度を表し、Fはファクター値を表している。ファクター値は、ネルンスト式に基づく理論上の電位と第1の成分濃度間の傾き(mV/decade)を1とした場合の個々の検出部40のキャリブレーションにより求めた関係式の傾きS1の相対値のことである。なお、第3の換算式には、個々の検出部40に対してファクター値で前後校正信号差を規格化することにより、ばらつきを抑える処理を行っている。
従って、後校正信号の傾き及び前後校正信号差を指標にする第3の算出方法では、複数の検出部40から算出した第3の換算式を、入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存し、個々の検出部40に対して共通の式として用いる。
図14は、個々の検出部40に対して第3の換算式を用いて計算した第2の成分の濃度の一例を示した図である。
図14(a)は、個々の検出部40に対して第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションにより生成された関係式の傾きS1と、第2乃至第7の調製混合液の測定により算出した第2乃至第7の前後校正信号差とを、第3の換算式に代入することにより得られた第2乃至第7の調製試料中の第2の成分の濃度の計算結果である。
各第2乃至第7の調製混合液の測定により複数の検出部40より得られた複数の第2の成分の濃度の平均値と、95%信頼区間を示している。図13(b)に示した後校正信号の傾きを指標とした場合と比較して、確度は第2の成分の高濃度域で劣るものの、精度はよい傾向にある。第2の成分の含有量が2mmol/L以上で誤差±35%程度で第2の成分の濃度の推定が可能である。
図14(b)は、個々の検出部40に対して第2乃至第7の調製混合液の測定により算出した第2乃至第7の前後校正信号差を、第2の成分を含有しない第1の調製混合液の測定により算出した第1の前後校正信号差で規格化した第2乃至第7の規格化前後校正信号差の計算結果である。
各第2乃至第7の調製混合液の測定により複数の検出部40から得られた複数の各第2乃至第7の規格化前後校正信号差の平均値と、95%信頼区間とを示している。この結果から、第2乃至第7の規格化前後校正信号差のうち、第1の前後校正信号差に対して明確に区別可能な規格化前後校正信号差となるのは、第2の成分の含有量が0.5mmol/L以上の第2乃至第7の規格化前後校正信号差であることがわかる。
以上のことから、前後校正信号差を指標にした第2の成分の濃度推定は、図14(b)の結果より0.5mmol/L以上の第2の成分を含有している場合に第2の成分の有無の判定が可能であり、図14(a)の結果より2mmol/L以上の第2の成分を含有している場合に濃度の概算が可能である。
しかしながら、前後校正信号差を指標とした場合、被検試料中に第2の成分が含まれる以外の原因で校正信号が大きく変化した場合も第2の成分が含まれていると判断してしまう可能性がある。後校正信号の傾きはISE453に第2の成分が吸着した場合に起こる現象であり、校正信号の変化とは区別できる。
そこで、第3の算出方法では、後校正信号の傾きで被検試料中の第2の成分の有無を判定し、前後校正信号差で被検試料中の第2の成分の濃度を算出する。本方法によれば、図13(b)及び図14(a)の結果より後校正信号の傾きで被検試料中の第2の成分の有無を判定し、被検試料中に第2の成分が含まれていると判定した場合に図14(a)の結果より2mmol/L以上の第2の成分が含まれている場合に第2の成分の有無の判定と濃度の推定が可能になる。
従って、第3の算出方法では、第2の算出方法と同じく図13(b)の結果より第4の規格化後校正信号の傾きを第1の閾値とし、図14(a)の結果より第4の前後校正信号差を第2の閾値として、入力部37からの入力によりデータ記憶部35に保存し、個々の検出部40に対して共通の閾値として用いる。
図15は、第3の算出方法による算出の手順を示したフローチャートである。
データ記憶部35には、予め設定された第3の換算式、第1の閾値及び第2の閾値が保存されている。
第1及び第2の標準試料を用いたキャリブレーションが実行されると、演算部33は、関係式を生成してデータ記憶部35に保存する。また、算出部34は、第2の標準混合液の吸引動作の次の後校正液の吸引動作に応じて信号処理部32により生成された複数の生データに基づいて、第2の標準試料に対応する後校正信号の傾きを算出してデータ記憶部35に保存する。
検査が実行されると、試料分注プローブ19は被検試料を反応容器17に分注し、第1試薬分注プローブ21は被検試料が分注された反応容器17に第1試薬を分注する。信号処理部32は、吸引部43による前校正液の吸引動作と、この吸引動作の次の被検混合液の吸引動作と、この吸引動作の次の後校正液の吸引動作との各吸引動作に応じて、検出部40により検出された信号から複数の生データを生成する。
算出部34は、信号処理部32で生成された複数の生データに基づいて、被検試料に第2の成分が含まれているか否かの算出を開始する(ステップS1)。
算出部34は、後校正液の吸引動作に応じて生成された複数の生データに基づいて、被検試料に対応する後校正信号の傾きを算出する。次いで、算出部34は、被検試料に対応する後校正信号の傾きを、第2の標準試料に対応する後校正信号の傾きで規格化した規格化後校正信号の傾きを算出する(ステップS2)。
算出部34は、算出した規格化後校正信号の傾き及び第1の閾値に基づいて、被検試料に第2の成分が含まれているか否かを判定する。そして、規格化後校正信号の傾きが予め設定された第1の閾値以上である場合(ステップS3のはい)、ステップS4へ移行する。また、規格化後校正信号の傾きが予め設定された第1の閾値未満である場合(ステップS3のいいえ)、ステップS9へ移行する。
ステップS3の「はい」の後、表示部36は、被検試料に第2の成分が含まれていることを示す警告情報を表示する(ステップS4)。尚、ステップS3の「はい」の後、自動分析装置は、自動で電極洗浄を行ってもよい。また、自動分析装置は、電極洗浄を行った後に、キャリブレーション測定を実行してもよい。また、ある被検試料の測定を行ってから、当該被検試料に関する警告情報が表示されるまでの間に、他の被検試料についての測定が行われていた場合、他の被検試料についての測定値も影響を受ける恐れがあるため、自動分析装置は、上記被検試料および上記他の被検試料に関して、電極洗浄後またはキャリブレーション測定後に再測定を行ってもよい。
ステップS4の後、算出部34は、前校正液の吸引動作に応じて生成された複数の生データ及び後校正液の吸引動作に応じて生成された複数の生データに基づいて、被検試料に対応する前後校正信号差を算出する(ステップS5)。
算出部34は、算出した前後校正信号及び第2の閾値に基づいて、第3の換算式を用いて被検試料に含まれる第2の成分の濃度を算出するか否かを判定する。そして、前後校正信号差が予め設定された第2の閾値以上である場合(ステップS6のはい)、ステップS7へ移行する。また、前後校正信号差が第2の閾値未満である場合(ステップS6のいいえ)、ステップS9へ移行する。
ステップS6の「はい」の後、算出部34は、第3の換算式及び前後校正信号差に基づいて、被検試料中の第2の成分の濃度を算出する(ステップS7)。
表示部36は、算出部34により算出された被検試料に含まれている第2の成分の濃度を示す情報を表示する(ステップS8)。
ステップS3の「いいえ」、ステップS6の「いいえ」又はステップS8の後、算出部34は、被検試料に第2の成分が含まれているか否かの算出を終了する(ステップS9)。
このように、個々の検出部40に対して照合試料を用いてのキャリブレーションを行うことなく、後校正信号の傾きを指標として予め設定された第1の閾値に基づいて被検試料中の第2の成分の有無の判定を行い、第2の成分が含まれていると判定した場合に前後校正信号を指標として予め設定された第2の閾値及び第3の換算式に基づいて第2の成分の濃度の算出を行うことができる。
以上述べた実施形態によれば、検出部40が第1の溶液中の第1の成分を検出する際に第1の溶液中の第1の成分の検出の後に第2の溶液中の第1の成分を検出する信号に基づいて、第1の溶液に第2の成分が含まれているか否かを算出することができる。これにより、試料中に検査項目成分以外の分析データを悪化させる特定の成分が含まれているか否かを算出することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る自動分析装置は、試料を含む溶液および校正液をそれぞれイオン選択性電極に接触させることで、溶液に含まれる特定イオンの濃度を測定する自動分析装置であって、溶液の測定および校正液の測定のそれぞれにおいて、イオン選択性電極に関する出力を検出する検出部と、溶液の測定後に実施される校正液の測定において検出部で検出した出力値の時系列的な推移に基づいて、溶液中の特定イオン以外のイオンの有無または濃度に関する情報を出力する処理部とを備える。
また、処理部は、測定時間に対する出力値の分布における回帰直線の傾きを算出し、算出された傾きの値に基づいて、特定イオン以外のイオンの有無または濃度に関する情報を出力してもよい。処理部は、傾きの値が第1の閾値を越えた場合に、特定イオン以外のイオンが含まれていることを示す警告情報を表示させてもよい。処理部は、溶液中に特定イオン以外のイオンが無いことを示す情報が出力された場合の校正液の測定において検出部で検出した出力値の傾きの値を用いて、上記第1の閾値を更新してもよい。
また、検出部は、溶液の測定前に実施される校正液の測定において、イオン選択性電極に関する出力を検出し、処理部は、溶液の測定前に実施される校正液の測定における検出部で検出した出力値と、溶液の測定後に実施される校正液の測定における検出部で検出した出力値との差の値に更に基づいて、特定イオン以外のイオンの有無または濃度に関する情報を出力してもよい。処理部は、上記差の値が第2の閾値を越えた場合に、特定イオン以外のイオンの濃度に関する情報を出力してもよい。処理部は、傾きの値と特定イオン以外のイオンの濃度との関係を示す換算式を用いて、特定イオン以外のイオンの濃度の値を算出してもよい。検出部は、それぞれ異なる複数の既知濃度の特定イオン以外のイオンが含まれる複数の照合試料を含む複数の溶液の測定のそれぞれにおいて、イオン選択性電極に関する出力を検出し、処理部は、測定時間に対する複数の溶液に関する出力値の分布における回帰直線の傾きをそれぞれ算出し、算出された複数の傾きの値と複数の既知濃度とに基づいて、上記換算式を算出してもよい。
また、上記特定イオンは、例えば塩素であり、上記特定イオン以外のイオンは、例えば臭素である。
本実施形態に係る自動分析装置は、校正液の測定において検出部で検出した出力値の時系列的な推移を考慮することによって、第2の成分の混入による影響と、第2の成分の混入以外による影響とを判別することができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、試料中に分析データを悪化させる特定の成分が含まれているか否かを算出することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。