JP7280071B2 - 多孔質フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質フィルムの製造方法に関する。
ポリオレフィン製多孔質フィルムは、リチウム二次バッテリー、ニッケル-水素バッテリー、ニッケル-カドミウムバッテリー、ポリマーバッテリー等に用いるバッテリーセパレータをはじめ、電解コンデンサー用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等に幅広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
ポリオレフィン製多孔質フィルムをバッテリーセパレータ、特にリチウムイオンバッテリーセパレータとして用いる場合、その性能はバッテリー特性、バッテリー生産性およびバッテリー安全性に深く関わっている。そのためポリオレフィン製多孔質フィルムには、優れた機械的特性、フィルム外観、気体透過性等が要求される。
特開2018-090744号公報
単層タイプのポリオレフィン製多孔質フィルムは、電解液として使用される有機溶媒系との親和性に乏しく、電池がドライアップし、目的の電池性能が得られないという問題がある。そこで、ポリオレフィン製多孔質フィルムのセパレータに対し、親電解液化処理を施すことが考えられる。フィルムに対する一般的な親電解液化の方法としては、フィルム基材に対してコロナ放電処理を施す方法がある。しかしながら、この方法を適用すると、フィルムを劣化させる、フィルムへの加工時に白点などが発生し、フィルム外観を損ない強度が低下するといった課題がある。
例えばフィルムに白点などが発生し外観が悪い場合、機械的強度が低くなり、当該フィルムをバッテリーセパレータとして用いた場合、電極の短絡によりバッテリーの電圧が低下してしまうことがある。
本発明が解決しようとする課題は、上述した種々の問題点に鑑み、気体透過性、フィルム外観および機械的特性に優れ、しかも電解液との親和性に優れた多孔質フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記状況を鑑み鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]~[9]に関する。
[1]少なくとも後述する粒子(S)と可塑剤とを溶融混錬して溶融混練物を得る工程(1);前記溶融混練物をシート形状に成形して、シートを得る工程(2);前記シートを延伸して、延伸フィルムを得る工程(3);前記延伸フィルムから前記可塑剤を除去する工程(4);および前記工程(4)後、前記延伸フィルムに熱処理を行う工程(5)を有する、空隙率が46~80%である多孔質フィルムの製造方法。
[2]前記粒子(S)の平均粒径が、150μm以下である前記[1]に記載の多孔質フィルムの製造方法。
[3]前記前駆体ポリマー(A)が、炭素数2~18のα-オレフィンから選ばれる1種または2種以上のα-オレフィンからなる重合体である前記[1]または[2]に記載の多孔質フィルムの製造方法。
[4]前記ポリマー(B)が、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)を少なくとも1種含むモノマー成分の重合体である前記[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質フィルムの製造方法。
[5]前記粒子(S)の以下の式で示すグラフト化率(%)が、0.1%以上150%以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質フィルムの製造方法。
グラフト化率(%)
=[ポリマー(B)の質量/前駆体ポリマー(A)の質量]×100
[6]前記多孔質フィルムが、バッテリーセパレータである前記[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質フィルムの製造方法。
[7]少なくとも後述する粒子(S)と可塑剤とを溶融混錬して得られる多孔質フィルムであり、空隙率が46~80%である、多孔質フィルム。
[8]前記[7]に記載の多孔質フィルムと、他の層とを有する多層フィルム。
[9]前記[7]に記載の多孔質フィルムまたは前記[8]に記載の多層フィルムを有するバッテリーセパレータ。
本発明によれば、気体透過性、フィルム外観および機械的特性に優れ、しかも電解液との親和性に優れた多孔質フィルムを提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
[多孔質フィルムの製造方法]
本発明の多孔質フィルムの製造方法は、
少なくとも粒子(S)と可塑剤とを溶融混錬して溶融混練物を得る工程(1);
前記溶融混練物をシート形状に成形して、シートを得る工程(2);
前記シートを延伸して、延伸フィルムを得る工程(3);
前記延伸フィルムから前記可塑剤を除去する工程(4);および
前記工程(4)後、前記延伸フィルムに熱処理を行う工程(5)
を有する。
本発明によれば、気体透過性、フィルム外観および機械的特性に優れ、かつ、電解液との親和性に優れた多孔質フィルムを製造することができる。
<工程(1)>
工程(1)では、少なくとも粒子(S)と可塑剤とを溶融混練して溶融混練物を得る。
粒子(S)は、前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部と、前記ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)に由来するグラフト部とを有するグラフトコポリマー(C)を含むコアシェル型ポリマー固形物であり、その固形物のコア部(a)が前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部を含み、シェル部(b)がポリマー(B)に由来するグラフト部を含む。
粒子(S)の詳細は後述する。
粒子(S)は1種または2種以上用いることができる。
粒子(S)の使用割合は、溶融混練物を形成する全成分100質量%中、通常は10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常は65質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。シート成形性、延伸性、フィルムの空隙率や機械的強度と通気量とのバランスの観点から、前記範囲が好ましい。
また、本発明の効果が得られる限りにおいて、粒子(S)とともに、粒子(S)以外の他の粒子を用いてもよい。他の粒子としては、例えば、グラフト変性していないポリマー粒子が挙げられる。前記ポリマー粒子を構成するポリマーは、例えば、後述する前駆体ポリマー(A)として記載した、ポリオレフィン等のポリマーである。具体的には、グラフト変性していないポリオレフィン粒子である。
一実施形態において、他の粒子の使用量は、粒子(S)100質量部に対して、通常は90質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
粒子(S)と他の粒子とは、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー混合機、レディースミキサー、高速流動型混合機、V型混合機等の装置を用いて混合することができる。
可塑剤としては、例えば、室温(23℃)で液状の可塑剤、および室温で固体状で高温時(例えば溶融混練時)に液状になる可塑剤であって、かつ、後述する洗浄溶媒で抽出可能な可塑剤であれば、公知のものを使用することができる。
室温で液状の可塑剤としては、例えば、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、ならびにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温で液状のフタル酸エステルが挙げられる。室温で液状の可塑剤を用いた場合、得られるシートは比較的高倍率の延伸が可能となる傾向にある。安定なシートを得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液状の可塑剤を用いることが好ましい。
室温で固体状で高温時に液状になる可塑剤としては、例えば、室温で固体状であるパラフィンワックス;ステアリルアルコールおよびセリルアルコールなどの高級脂肪族アルコールが挙げられる。このような可塑剤は、加熱溶融混練状態においては他の成分と良好に混和することができる。また、室温で固体状で高温時に液状になる可塑剤と、室温で液状の可塑剤とを併用してもよい。
可塑剤は1種または2種以上用いることができる。
可塑剤の使用割合は、溶融混練物を形成する全成分100質量%中、通常は35質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、通常は90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。シート成形性、延伸性、フィルムの空隙率や機械的強度と通気量とのバランスの観点から、前記範囲が好ましい。
また、粒子(S)および可塑剤とともに、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、耐候剤、吸臭剤、脱臭剤、防かび剤、抗菌剤、香料フィラーが挙げられる。添加剤は1種または2種以上用いることができる。
粒子(S)と可塑剤とを溶融混練する方法は特に限定されないが、例えば、一軸または二軸混練押出機、バッチ式混練機、混練ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練する方法が挙げられる。必要に応じて、前記各成分を、溶融混練前にヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合してもよい。
溶融混練温度は、通常は160~300℃、好ましくは180~280℃である。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた前記溶融混練物をシート形状に成形して、シートを得る。
成形方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、インフレーション法、カレンダー法などの公知の方法が挙げられる。一実施態様では、押出成形法が好ましい。
押出成形は、例えば、前記溶融混練物を、工程(1)での混練押出機を用いて直接、または別の混練押出機を用いて、ダイから押し出すことにより、あるいは、前記溶融混練物を一旦冷却してペレット化した後、再度混練押出機を用いて、ダイから押し出すことにより行う。ダイとしては、通常はシート用ダイを用いるが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。
シート形状への成形温度は、通常は140~280℃、好ましくは150~260℃である。前記溶融混練物をシート形状に成形した後、一実施態様では例えば23~80℃のロールなどを用いて冷却して、シートを形成する。
このようにして、粒子(S)の溶融物が可塑剤によってミクロ相分離された相分離構造を固定化することができる。なお、シートとしては、ゲル状シートが好ましい。
シートの厚さは、通常は0.01~10mm、好ましくは0.1~5mmである。
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で得られた前記シートを延伸して、延伸フィルムを得る。
延伸は、例えば、前記シートを加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法またはこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸または多段延伸(例えば同時二軸延伸および逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。延伸により、シートの機械的強度が向上する。
延伸倍率は、シートの厚さによって異なる。一軸延伸を行う場合は、延伸倍率は好ましくは2倍以上、より好ましくは3~30倍である。二軸延伸を行う場合は、延伸倍率はいずれの方向でも好ましくは3倍以上、より好ましくは5~10倍であり、また、面倍率で好ましくは9倍以上、より好ましくは25倍以上である。面倍率の上限は特に限定されないが、例えば100倍である。
延伸温度は、通常は100~140℃、好ましくは110~130℃である。
<工程(4)>
工程(4)では、工程(3)で得られた前記延伸フィルムから前記可塑剤を除去する。粒子(S)の溶融物から形成された部分は、可塑剤と相分離しているので、可塑剤を抽出して除去すると多孔質フィルムが得られる。
可塑剤の除去(洗浄)には、例えば、洗浄溶媒を用いる。洗浄溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素;三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;メチルエチルケトンなどのケトンが挙げられる。このような易揮発性溶媒を洗浄溶媒として用いることができる。
洗浄方法としては、例えば、前記延伸フィルムを洗浄溶媒に浸漬する方法、前記延伸フィルムに洗浄溶媒をシャワーする方法、これらの組合せによる方法が挙げられる。洗浄温度は特に限定されないが、洗浄溶媒の温度で、通常は0~140℃、好ましくは10~100℃である。
可塑剤の除去は、延伸フィルム中に残留する可塑剤が、工程(1)での可塑剤の添加量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下になるまで行うことができる。
可塑剤抽出後に、前記延伸フィルムをさらに延伸することもできる。
<工程(5)>
工程(5)では、工程(4)後の前記延伸フィルムに熱処理を行う。
延伸時に作用した応力残留による多孔質フィルムの延伸方向への収縮を防ぐことを目的として、熱処理(熱固定)を行うことが好ましい。熱固定の処理温度は、通常は80~160℃、好ましくは90~150℃である。熱固定の処理時間は、通常は1~30分、好ましくは2~20分である。延伸方向における熱固定後の延伸フィルムの長さが熱固定前に対して10~50%減少する程度熱収縮させる方法、延伸方向の寸法が変化しないように固定する方法等が挙げられる。
前記熱処理の前に、前記延伸フィルムの乾燥処理を行ってもよい。
乾燥処理は、例えば、加熱乾燥法、風乾法により行うことができる。
乾燥温度は、通常は23~100℃、好ましくは30~90℃である。
乾燥処理により、本発明の目的を損なわない範囲で前記延伸フィルムが乾燥されていれば特に問題はないが、乾燥後の延伸フィルム質量100質量部に対して、残存する洗浄溶媒の含有量を5質量部以下にすることが好ましく、3質量部以下にすることがより好ましい。乾燥が不充分で延伸フィルム中に洗浄溶媒が多量に残存していると、前記熱固定で空隙率が低下し、気体透過性が悪化することがある。
[多孔質フィルム]
本発明の多孔質フィルムは、少なくとも粒子(S)と可塑剤とを溶融混練して得られ、通常は、前記溶融混練物から形成されたシートから前記可塑剤を除去して得られる。本発明の多孔質フィルムは、例えば、上述した製造方法により製造することができる。以下、上述した製造方法により得られた多孔質フィルムを含めて、「本発明の多孔質フィルム」ともいう。
本発明の多孔質フィルムは、以下に説明する特定のコアシェル型ポリマー固形物からなる粒子(S)から形成されることから、有機溶媒系電解液(例:リチウムイオン電池用の、カーボネート系電解液等の電解液)などの電解液との親和性が高く(例えば電解液保持率が高い)、また気体透過性が高く、フィルム外観が良好であり、機械的強度も高い。
本発明の多孔質フィルムの厚さは、通常は0.1~1000μm、好ましくは1~500μmである。多孔質フィルムの厚さは、市販のフィルム厚み測定器により測定することができる。
本発明の多孔質フィルムは、空孔を有し、電解液との親和性を付与した多孔質フィルムとして有用である。前記フィルムの空隙率は、46~80%であり、好ましくは46~60%、より好ましくは46~55%である。このような態様であると、気体透過性および機械的強度の観点から好ましい。
空隙率は、[(真の密度-見かけの密度)/真の密度]×100(%)の式によって算出される。真の密度(g/cm3)とは、粒子の密度であり、見かけの密度(g/cm3)とは、フィルムの質量をフィルムの外寸から算出した容積で割った値である。
本発明の多孔質フィルムは、その表面または内部に、織物、編み物、不織布、布、多孔質シート、金網等の、本発明の効果を大きくは阻害しない部材を有してもよい。また、本発明の多孔質フィルムは、吸収した水分の影響を周囲に及ぼさないようにするために、その表面または内部に、非親水性フィルム(非透湿性または非透水性フィルム等)を有してもよい。例えば、前記多孔質フィルムの表面に、前記不織布等の部材が積層されている態様、あるいは、前記不織布等の部材を粒子(S)と可塑剤との溶融混練物に含浸させて得られる、多孔質フィルムの内部に不織布等の部材を有する態様が挙げられる。
本発明の多孔質フィルムは、電解液との親和性および機械的強度に優れることから、一般工業用途において利用可能であり、また、リチウム二次バッテリー、ニッケル-水素バッテリー、ニッケル-カドミウムバッテリー、ポリマーバッテリー等に用いるバッテリーセパレータをはじめ、電解コンデンサー用セパレータ、固体電解質用支持体、燃料電池用部材等のエレクトロニクス分野、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料、プリンター用インク吸収体などとして、好適に用いることができる。本発明の多孔質フィルムは、これらの中でも、バッテリーセパレータとして好適に用いることができる。
なお、本発明の多孔質フィルムは、多層フィルムの形態で用いることができる。前記多層フィルムは、本発明の多孔質フィルムと、他の層とを有する。他の層としては、例えば、ポリオレフィン樹脂から形成された層、ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂から形成された層が挙げられる。当該多層フィルムにおける他の層は、ドライラミネート法、共押出成形法、押出ラミネート法、熱ラミネート法等で製造することができる。前記多層フィルムはバッテリーセパレータとして好適に用いることができる。
本発明では、粒子の架橋を伴わず変性が可能であり、未変性のポリオレフィンと同様に加工でき、機械的強度や気体透過性も同等でありながら外観に優れ、電解液との親和性が高い多孔質フィルムを提供することができる。
[粒子(S)]
以下、本発明で用いる粒子(S)について説明する。
粒子(S)は、前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部と、前記ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)に由来するグラフト部とを有するグラフトコポリマー(C)を含むコアシェル型ポリマー固形物であり、その固形物のコア部(a)が前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部を含み、かつ、シェル部(b)がポリマー(B)に由来するグラフト部を含む。
粒子(S)は、さらに下記要件(I)を満たす。
要件(I):粒子(S)の中心(x)、中心(x)から表面までの距離が最短となる表面の点(z)、および中心(x)と点(z)とを結ぶ線分の中点(y)を通る断面の赤外吸収分光測定において、中心(x)、中点(y)および点(z)における吸光度(Abs)が、以下の関係を満たす。
X<0.01
Y<0.01
Z≧0.01
なお、Zの上限は、特に限定されないが、通常は100、好ましくは80、より好ましくは50、さらに好ましくは30である。
但し、
Xは、中心(x)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
Yは、中点(y)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
Zは、点(z)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値である。
なお、Abs(ポリマー(A)のキーバンド)は、ポリマー(A)のキーバンドにおける吸光度を、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)は、ポリマー(B)のキーバンドにおける吸光度を意味する。測定条件の詳細は実施例に記載する。
キーバンドは、赤外吸収分光測定における、各ポリマーの官能基の特徴的な赤外吸収から選択される。各ポリマーの特徴的な赤外吸収は複数存在しうるが、ポリマー(A)とポリマー(B)との組み合わせを考慮し、識別が容易である吸収をキーバンドとする。
ポリマー(A)としては後述するようにポリオレフィンを使用することができ、例えばエチレン重合体であればCH2変角振動、プロピレン重合体やエチレン・プロピレン共重合体であればCH3変角振動がキーバンドになりうる。プロピレン・ブテン共重合体であればCH3変角振動がキーバンドになりうるが、ポリマー(B)による影響が考慮される場合は、CH2変角振動をキーバンドに選択しうる。ブテンを主成分とする重合体や、4-メチルペンテン-1を主成分とする重合体についても、CH3変角振動がキーバンドになりうる。
他には例えば環状オレフィン重合体の場合はCH2変角振動、EPDMの場合はプロピレンのCH3変角振動、芳香族オレフィン重合体の場合は芳香環に特徴的なバンドをキーバンドとして用いうる。
ポリマー(A)としては後述するようにポリオレフィン以外の重合体等も用いられうる。その場合も、キーバンドは各ポリマーの特徴的な赤外吸収から選択される。例えばポリカーボネートであればC=O伸縮振動が挙げられる。
ポリマー(B)は後述するようにポリマー(A)とは異なる。ポリマー(B)のキーバンドは、各ポリマーの官能基の特徴的な赤外吸収から選択され、かつ、前述したように、ポリマー(A)のキーバンドとの識別が容易であるものが選択される。
具体的には例えば、カルボキシル基またはカルボニル基含有ポリマーであればC=O伸縮振動、水酸基含有ポリマーであればO-H伸縮振動、アミノ基含有ポリマーであればN-H伸縮振動、アミド基含有ポリマーであればC=O伸縮振動が挙げられる。
また、粒子(S)の中心(x)とは、粒子(S)の重心を意味する。
すなわち、粒子(S)の中心部は前駆体ポリマー(A)で構成され、粒子(S)の表面部はグラフト部が存在している。後述する製法によれば、前駆体ポリマー粒子の表面にグラフト反応が生じ、表面部がグラフト化した粒子(S)が形成される。
粒子(S)は、通常は150μm以下、好ましくは148μm以下、より好ましくは145μm以下の平均粒径を有している。平均粒径の好ましい下限は1μm、より好ましくは5μmである。平均粒径の測定法としては、コールター法(コールター原理)を用いる。
<前駆体ポリマー(A)>
前駆体ポリマー(A)としてはポリオレフィンを使用することができる。ポリオレフィンとしては、例えば、炭素数2~18のα-オレフィンから選ばれる1種または2種以上のα-オレフィンからなる重合体が採用される。前記重合体の例としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、2-メチルブテン-1、3-メチルブテン-1、ヘキセン-1、3-メチルペンテン-1、4-メチルペンテン-1、3,3-ジメチルブテン-1、ヘプテン-1、メチルヘキセン-1、ジメチルペンテン-1、トリメチルブテン-1、エチルペンテン-1、オクテン-1、メチルペンテン-1、ジメチルヘキセン-1、トリメチルペンテン-1、エチルヘキセン-1、メチルエチルペンテン-1、ジエチルブテン-1、プロピルペンテン-1、デセン-1、メチルノネン-1、ジメチルオクテン-1、トリメチルヘプテン-1、エチルオクテン-1、メチルエチルヘプテン-1、ジエチルヘキセン-1、ドデセン-1およびヘキサドデセン-1等のα-オレフィンの単独重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。
前記共重合体としては、具体的には、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・ブテンランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とプロピレンとのランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とヘキセン-1とのランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とデセン-1とのランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とテトラデセンとのランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とヘキサデセン-1とのランダム共重合体、4-メチルペンテン-1とオクタデセン-1とのランダム共重合体、および4-メチルペンテン-1とヘキサデセン-1とオクタデセン-1とのランダム共重合体が挙げられる。
これらのうち、好ましい重合体として、エチレンを主成分とする重合体、プロピレンを主成分とする重合体、ブテンを主成分とする重合体、4-メチルペンテン-1を主成分とする重合体が挙げられる。これらの中でも、エチレンを主成分とする重合体が好ましい。
なお、あるモノマーを主成分とする重合体とは、全モノマー由来の構成単位100モル%中、当該主成分モノマー由来の構成単位の含有量が、通常は60モル%以上、好ましくは80モル%以上の重合体をいう。
また、前記ポリオレフィンは、環状オレフィン、非共役ジエン、芳香族オレフィンを主成分とする重合体であってもよく、これらのオレフィンは1種単独で使用しても2種以上を使用してもよく、コモノマーとなるオレフィン由来の構成単位の含有量は、通常は50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
本発明においては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、3-メチルブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1などのほか、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、スチレンの単独重合体または共重合体を好ましく用いることができる。
上記以外のオレフィンとして、例えば、5-エチリデンノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ペンタジエンなどの非共役ジエンを用いたエチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)なども好適に用いられる。
上記ポリオレフィンは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらのポリオレフィンは、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。
前駆体ポリマー(A)としては、前記ポリオレフィンの他、エチレン・極性基含有ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、共役ジエン系ゴム、スチレン系ゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上を含有させることができ、好ましくはスチレン系ゴムであり、具体的にはスチレン・ブタジエン・スチレン系のSBSラバー、スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン系のSBBSラバー、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン系のSEBSラバーなどが挙げられる。
前駆体ポリマー(A)としては粒子形状のポリマーを用いることができ、好ましくは平均粒径が150μm以下である。より好ましくは前述した粒子(S)の平均粒径と同様である。
なお、本明細書においては、以後、炭素数2~18のα-オレフィンから選ばれる1種または2種以上のα-オレフィンからなる重合体のことを「ポリオレフィン樹脂」、あるいは単に「ポリオレフィン」ということがある。
前駆体ポリマー(A)には、その特有の性質を変動させない限りは公知の材料を任意に含有させることができる。その場合の公知材料の配合量は、通常は20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
<ポリマー(B)>
ポリマー(B)としては、前駆体ポリマー(A)と異なるものであれば、本発明の効果を奏する範囲において、特に制限なく用いることができる。
例えば、前駆体ポリマー(A)に対し、ポリマー(B)を導入してグラフトコポリマー(C)を得てもよく、また、ポリマー(B)の単量体(b)を前駆体ポリマー(A)の存在下で重合する方法でポリマー(B)を導入してグラフトコポリマー(C)を得てもよい。そのうち、一つの好ましい態様としては、前駆体ポリマー(A)表面で、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)がグラフト重合されてポリマー(B)が形成されることにより得られるグラフトコポリマー(C)が挙げられる。
以下、重合することによりポリマー(B)を形成し得る単量体を「単量体(b)」ということがある。ポリマー(B)としては、例えば、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)の重合体を好適に挙げることができる。このような単量体(b1)を用いることにより、グラフトコポリマー(C)に親水性を付与することができ、よって電解液との優れた親和性を有する多孔質フィルムが容易に得られる。
ここで、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、窒素含有芳香族ビニル化合物、ラクタム構造含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸およびその誘導体、ビニルエステル化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、塩化ビニル、ビニルシラン化合物が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記極性官能基は、電解液との親和性の観点から、水酸基、エポキシ基が好ましい。
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール、グリセリンモノアルコールが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物は、エチレン性二重結合とアミノ基を有する化合物であり、このような化合物としては、例えば、-N(R1)(R2)で表されるアミノ基および置換アミノ基を少なくとも1種有するビニル系単量体が挙げられる。
上記式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基を示し、R2は、水素原子、炭素数が1~12、好ましくは1~8のアルキル基または炭素数が6~12、好ましくは6~8のシクロアルキル基である。なお上記のアルキル基、シクロアルキル基は、さらに置換基を有してもよい。
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系誘導体類;N-ビニルジエチルアミンおよびN-アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類;アリルアミン、メタクリルアミン、N-メチル(メタ)アクリルアミンなどのアリルアミン系誘導体;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドおよびN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体;p-アミノスチレンなどのアミノスチレン類;6-アミノヘキシルコハク酸イミド、2-アミノエチルコハク酸イミドが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、(メタ)アクリルアミドおよびN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は、1分子中に重合可能な不飽和結合およびエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーである。エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)グリシジルアクリレート、マレイン酸のモノおよびジグリシジルエステル、フマル酸のモノおよびジグリシジルエステル、クロトン酸のモノおよびジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、イタコン酸のモノおよびグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノおよびジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノおよびジグリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のモノおよびジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノおよびグリシジルエステルなどのジカルボン酸モノおよびアルキルグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1~12)、p-スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドが挙げられる。これらの中でも、グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテルが好ましい。
窒素含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、2-イソプロペニルピリジン、2-ビニルキノリン、3-ビニルイソキノリン、N-ビニルカルバゾールが挙げられる。
ラクタム構造含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドンが挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸等の各種不飽和カルボン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、上記不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル(例:アルキルエステル)など、-C(=O)-X(Xは第15~17族元素から選ばれる原子)なる構造を有する誘導体が挙げられ、これらの具体例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、塩化(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルアミド、マレニルイミド、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。
上記不飽和カルボン酸およびその誘導体の中では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルが特に好ましい。
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p-(t-ブチル)安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルが挙げられる。
ニトリル基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、アリルシアニド、シアノエチルアクリレートが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
なお、本明細書においては、以後、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)を「グラフトモノマー(b1)」、あるいは単に「単量体(b1)」ということがある。
グラフトコポリマー(C)や粒子(S)において、グラフト化率(具体的には、グラフトした単量体(b)のグラフト化率)は、通常は0.1%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。グラフト化率に上限はないが、150%を超えてグラフトしてもそれに見合った効果が出ず、一方で形状が悪化するなどの傾向にあるので、150%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。
ここで、上記単量体(b)が2種以上用いられる場合、これら合計のグラフト化率が0.1%以上であることが好ましく、これらのグラフト化率の合計が好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上である。
グラフト化率を、以下の式で示す。
グラフト化率(%)
= [ポリマー(B)の質量/前駆体ポリマー(A)の質量]×100
グラフトコポリマー(C)には、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)のほかに、エチレン性不飽和基を有する単量体であって上記単量体(b1)以外の単量体(以下「単量体(b2)」ともいう)が、グラフトされた状態でさらに含まれていてもよい。この態様では、グラフトコポリマー(C)は、前駆体ポリマー(A)に対して、単量体(b1)由来の繰り返し単位と、単量体(b2)由来の繰り返し単位とが導入された構造を有する。
前駆体ポリマー(A)に任意に追加でグラフトされうる単量体(b2)として、例えば、上記窒素含有芳香族ビニル化合物以外の芳香族ビニル化合物が挙げられ、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007280071000001
上記式において、R3およびR4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。また、R5はそれぞれ独立に炭素数1~3の炭化水素基またはハロゲン原子を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基、ならびに塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。また、nは通常は0~5、好ましくは1~5の整数を表す。
このような芳香族ビニル化合物の具体的な例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレンおよびp-クロロメチルスチレンが挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。
<グラフトコポリマー(C)>
グラフトコポリマー(C)は、前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部と、ポリマー(B)に由来するグラフト部とを有する。グラフトコポリマー(C)は、前駆体ポリマー(A)にグラフトする単量体(b)の種類とグラフト化率によって、前駆体ポリマー(A)のままでは他材料と親和性が低かった欠点を改良することができる。
また、グラフトコポリマー(C)とその前駆体である前駆体ポリマー(A)とは、いずれも一定の形状を有する固形物であって、粒子状である。
<グラフトコポリマー(C)含有固形物の製造方法>
上述したグラフトコポリマー(C)を含むポリマー固形物、すなわち粒子(S)を得るための製造方法は、得られるグラフトコポリマー(C)を含むポリマー固形物が上述した要件を満たす限りにおいて、特に制限されない。例えば、前駆体ポリマー(A)を含有する固形物に対し、その形状を保持したままポリマー(B)をグラフトする。
ただし、グラフトコポリマー(C)を含むポリマー固形物を得るための好適な製造方法としては、米国公開公報第3141862号や、MACROMOLECULES: vol38,8966-8970(2005)、Journal of Polymer Science Part A: vol47,6163-6167(2009)にあるように、アルキルホウ素を酸素と反応させて過酸化物とした開始剤を利用する、ポリマーへのグラフト重合が挙げられる。
グラフト反応に用いられる溶媒としては、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、1-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセチルクエン酸トリブチル、2,4-ペンタジエン、ジメチルスルフォキシド、n-アルキルアジペート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン;ベンジルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール;エチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルが挙げられる。これらのうち、水が好ましい。
溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記製造方法において、前駆体ポリマー(A)と、単量体(b)と、上記アルキルホウ素との接触方法および接触順序については、特に制限はなく、種々の方法を採用することができる。また、前駆体ポリマー(A)へ単量体(b)またはアルキルホウ素を事前に含浸させておいてもよい。さらには、グラフトポリマー(B)の分子量を調整するために公知の連鎖移動剤を併用することができる。
一方、酸素との接触順序に関しては、反応開始点となるため、アルキルホウ素を装入してから酸素と接触させる方法が好ましい。また、使用する単量体(b)は、予め窒素通気処理をして残存酸素を充分にパージしておくことが好ましい。
また、本発明の目的を妨げない範囲において、上記グラフト反応には、公知の添加剤、例えば、ヒンダードフェノール化合物等の酸化防止剤、プロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、塩酸吸収剤、難燃剤、ブルーミング防止剤、ピペリジン類等のニトロキシラジカル類に代表されるラジカル捕捉剤、公知の軟化剤、粘着付与剤、加工助剤、密着性付与剤、炭素繊維、ガラス繊維、ウイスカ等の充填剤などの各種の添加剤を併用することができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の高分子化合物を少量ブレンドすることも可能である。
上記のようなグラフト反応に用いる装置としては、混合および加熱が可能な装置であれば特に制限なく使用することができる。例えば縦型および横型のいずれの反応器であっても使用することができる。具体的には、流動床、移動床、ループリアクター、攪拌翼付横置反応器、攪拌翼付縦置反応器、回転ドラムが挙げられる。また、プラネタリーミキサー等の多軸・自転公転併用方式の混合機、ニーダー、パドルドライヤー、ヘンシェルミキサー、スタティックミキサー、Vブレンダー、タンブラー、ナウターミキサーも使用することができる。
未反応のエチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)や単独重合体を溶解することのできる溶媒で、グラフトコポリマー(C)を洗浄することにより、本発明で定義する特性を得ることが可能である。このような溶媒としては、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノン等のケトン;ベンジルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール;エチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;および、これらの2種以上からなる混合溶媒が挙げられる。好ましくはケトン、アルコールであり、アセトン、メタノールが特に好ましい。
また、洗浄温度は、グラフト反応後のグラフトコポリマー(C)の形態を維持する限りにおいては室温以上の温度で可能であるが、好ましくは室温~110℃、より好ましくは40~100℃、更に好ましくは50~80℃である。ここで、洗浄温度が、洗浄溶媒の大気圧における沸点よりも高く設定する場合は、洗浄溶媒の揮散を防止するために、密閉状態で行うことが好ましい。
必要に応じて、中和剤を用いてグラフトコポリマー(C)に含まれることのあるカルボキシル基を中和してもよい。中和剤としては、例えば、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されない。特に言及しない限り「部」は「質量部」を意味する。以下の実施例・比較例において、グラフトコポリマー(ポリマー固形物)に関する各種の分析方法は以下の手順により行った。
<赤外吸収分光測定>
平均粒径が0.05mm以上の粒子の場合、粒子の中心(x)と、中心(x)から粒子の表面までの距離が最短となる表面の点(z)とを通る断面を作製した後、VARIAN社製、顕微赤外分光法(FTS-7000/UMA600)を用い、Geクリスタルを使用して各測定箇所(中心(x)、点(z)、および中心(x)と点(z)とを結ぶ線分の中点(y))を全反射(ATR)法にて測定した。測定範囲は4000cm-1から600cm-1とし、分解能は4cm-1、積算回数は128回とした。
一方、平均粒径が0.05mm未満の粒子の場合、試料の中心(x)と、中心(x)から粒子の表面までの距離が最短となる表面の点(z)とを通る断面薄切片を、ミクロトームを用いて作製した後、切片を基板上(ZnS)に回収し、ANASYS INSTRUMENTS製、ナノスケール赤外分光法(nanoIR2)を用い、各測定箇所(中心(x)、点(z)、および中心(x)と点(z)とを結ぶ線分の中点(y))をAFM-IR法にて測定した。測定範囲は2000cm-1から900cm-1とし、分解能は4cm-1とした。
得られた吸収スペクトルから、グラフトポリマー由来のキーバンドにおける吸光度と、前駆体ポリマー由来のキーバンドにおける吸光度との比、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(前駆体ポリマー(A)のキーバンド)の値を算出した。
以下の製造例では、ポリマー(A)のキーバンドとしてCH2変角振動由来の吸収(1460cm-1)を用い、ポリマー(B)のキーバンドとしてC=O伸縮振動由来の吸収(1720cm-1)を用いた。
ランダムに選定した粒子5つについて測定した平均値を採用した。
<グラフト化率>
以下の式で示されるグラフト化率において、ポリマー(B)(グラフトポリマー、グラフト部)の質量は、グラフト反応後の質量と前駆体ポリマー(A)の質量との差から求めることができるが、質量増加が僅かな場合などは、1H-NMR測定にて求めることができる。
グラフト化率(%)
= [ポリマー(B)の質量/前駆体ポリマー(A)の質量]×100
<粒子の平均粒径>
粒子の平均粒径はコールターカウンター法(コールター法)により測定した。
[コアシェル型ポリマー固形物]
[製造例1]
前駆体ポリマー(A)として平均粒径0.13mmの超高分子量ポリエチレン(PE)パウダー(三井化学社製、ハイゼックスミリオン(商標)030S)を用い、グラフトモノマー(b1)としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を用いた。
窒素雰囲気下、純水500gとPEパウダー100gとを2Lのセパラブルフラスコに装入し、液温を40℃に調整した。その後、撹拌しながら窒素を毎分2Lの速度で30分間、液中に通気(窒素バブリング)したあと、トリブチルホウ素(TBB)を0.24g装入した。引き続き、撹拌しながら窒素雰囲気下で、注射器を使って空気を40mL、液中に通気した。30分経過後に、HEMAを41.4g装入して、2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。
その後、生成したポリマーをグラスフィルターで濾過してアセトンで充分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行った。以上の様にして、粒子(S1)を得た。
[製造例2]
HEMAの使用量を3.8gに変更したこと以外は製造例1と同様に行い、粒子(S2)を得た。
[製造例3]
平均粒径0.13mmの超高分子量ポリエチレン(PE)パウダー(三井化学社製、ハイゼックスミリオン(商標)030S)に10kGyの電子線照射を行い、架橋体である粒子(cS1)を得た。
[製造例4]
平均粒径0.13mmの超高分子量ポリエチレン(PE)パウダー(三井化学社製、ハイゼックスミリオン(商標)030S)に100kGyの電子線照射を行い、架橋体である粒子(cS2)を得た。
[参考例1]
平均粒径0.13mmの超高分子量ポリエチレン(PE)パウダー(三井化学社製、ハイゼックスミリオン(商標)030S)
以上の製造例等における各原材料の種類や、得られたまたは用いた各粒子の平均粒径、グラフト化率、電子線照射の有無および赤外吸収分光測定結果を表1に示す。
Figure 0007280071000002
[実施例1~2、比較例1~3]多孔質フィルムの作製
製造例で得られた粒子または参考例の粒子と流動パラフィンとを、粒子/流動パラフィン=30/70の質量比で、200℃にて東洋精機社製のバッチ式混練機を用いて溶融混練した。溶融混練物を200℃の熱プレスで厚さ0.5mmのシート形状(ゲル状シート)とし、バッチ式二軸延伸機を用いて、延伸温度125℃にて6×6倍に同時二軸延伸を行った。延伸後、ヘキサンを用いて流動パラフィンを抽出し、室温で乾燥したのち、125℃、3分間、熱固定を行い、厚さ16μmの多孔質フィルムを得た。ただし、比較例2では、フィルムを作成することができなかった。
流動パラフィンとして、流動パラフィン(富士フイルム和光純薬製)を用いた。
Figure 0007280071000003
表2における各評価方法を以下に示す。
<空隙率(%)>
[(真の密度-見かけの密度)/真の密度]×100(%)の式によって空隙率(%)を算出した。真の密度(g/cm3)とは、前記粒子の密度(ASTM D1505に準拠)であり、見かけの密度(g/cm3)とは、120mm×120mmのサイズで切り出したフィルムの質量をフィルムの外寸から算出した容積で割った値である。
<引張強度(MPa)>
実施例および比較例で作成した多孔質フィルムから幅10mmの短冊状試験片を作成し、当該試験片を用いてASTM D822により引張強度を測定した。
<外観>
実施例および比較例で作成した多孔質フィルムの100mm角に目視で直径0.5mm以上の白点を数えた。
<ガーレー透気度(秒/100ml・um)>
23℃にて、JIS P-8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて、透気度を測定した。測定した透気度を膜厚で除した値を使用した。
<電解液との親和性(電解液保持率)>
電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70体積比)を充満させた容器に2cm×10cmに切り出した多孔質フィルムを入れ、二秒間静置した。前記試料片を取り出した直後に薬包紙で表面を2回払拭した後の試料片の質量を計測した。試料片の質量変化率/空隙率×100(%)の式によって、電解液保持率(%)を算出した。
表2に記載したとおり、未変性のポリオレフィン粒子からなる多孔質フィルムは、電解液との親和性が低かった(比較例3)。電子線照射量が小さい条件で変性したポリオレフィン粒子からなる多孔質フィルムは、引張強度や気体透過性が低く、また電解液との親和性も低く、白点が多かった(比較例1)。また、電子線照射量が大きい条件で変性したポリオレフィン粒子はフィルムを作成することができなかった(比較例2)。これに対して、特定の粒子(S)からなる多孔質フィルムは、引張強度や気体透過性を維持し、外観が良好であるとともに、電解液との親和性が高かった。

Claims (7)

  1. 少なくとも粒子(S)と可塑剤とを溶融混錬して溶融混練物を得る工程(1)、ここで前記粒子(S)は、前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部と、前記ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)に由来するグラフト部とを有するグラフトコポリマー(C)を含むコアシェル型ポリマー固形物であり、その固形物のコア部(a)が前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部を含み、シェル部(b)がポリマー(B)に由来するグラフト部を含み、かつ、前記粒子(S)が下記要件(I)を満たし;
    前記溶融混練物をシート形状に成形して、シートを得る工程(2);
    前記シートを延伸して、延伸フィルムを得る工程(3);
    前記延伸フィルムから前記可塑剤を除去する工程(4);および
    前記工程(4)後、前記延伸フィルムに熱処理を行う工程(5)
    を有する、
    空隙率が46~80%である多孔質フィルムの製造方法であって、
    前記前駆体ポリマー(A)が、炭素数2~18のα-オレフィンから選ばれる1種または2種以上のα-オレフィンからなる重合体であり、
    前記ポリマー(B)が、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)を少なくとも1種含むモノマー成分の重合体である、
    多孔質フィルムの製造方法
    要件(I):粒子(S)の中心(x)、中心(x)から表面までの距離が最短となる表面の点(z)、および中心(x)と点(z)とを結ぶ線分の中点(y)を通る断面の赤外吸収分光測定において、中心(x)、中点(y)および点(z)における吸光度(Abs)が、以下の関係を満たす。
    X<0.01
    Y<0.01
    Z≧0.01
    但し、
    Xは、中心(x)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
    Yは、中点(y)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
    Zは、点(z)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値である。
  2. 前記粒子(S)の平均粒径が、150μm以下である請求項1に記載の多孔質フィルムの製造方法。
  3. 前記粒子(S)の以下の式で示すグラフト化率(%)が、0.1%以上150%以下である請求項1または2に記載の多孔質フィルムの製造方法。
    グラフト化率(%)
    =[ポリマー(B)の質量/前駆体ポリマー(A)の質量]×100
  4. 前記多孔質フィルムが、バッテリーセパレータである請求項1~のいずれか1項に記載の多孔質フィルムの製造方法。
  5. 少なくとも粒子(S)と可塑剤とを溶融混錬して得られる多孔質フィルムであり、
    前記粒子(S)が、前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部と、前記ポリマー(A)とは異なるポリマー(B)に由来するグラフト部とを有するグラフトコポリマー(C)を含むコアシェル型ポリマー固形物であり、その固形物のコア部(a)が前駆体ポリマー(A)に由来する主鎖部を含み、かつ、シェル部(b)がポリマー(B)に由来するグラフト部を含み、
    前記粒子(S)が下記要件(I)を満たし、
    空隙率が46~80%である、多孔質フィルムであって
    前記前駆体ポリマー(A)が、炭素数2~18のα-オレフィンから選ばれる1種または2種以上のα-オレフィンからなる重合体であり、
    前記ポリマー(B)が、エチレン性不飽和基と極性官能基とを同一分子内に有する単量体(b1)を少なくとも1種含むモノマー成分の重合体である、
    多孔質フィルム
    要件(I):粒子(S)の中心(x)、中心(x)から表面までの距離が最短となる表面の点(z)、および中心(x)と点(z)とを結ぶ線分の中点(y)を通る断面の赤外吸収分光測定において、中心(x)、中点(y)および点(z)における吸光度(Abs)が、以下の関係を満たす。
    X<0.01
    Y<0.01
    Z≧0.01
    但し、
    Xは、中心(x)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
    Yは、中点(y)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値であり、
    Zは、点(z)における、Abs(ポリマー(B)のキーバンド)/Abs(ポリマー(A)のキーバンド)の値である。
  6. 請求項に記載の多孔質フィルムと、他の層とを有する多層フィルム。
  7. 請求項に記載の多孔質フィルムまたは請求項に記載の多層フィルムを有するバッテリーセパレータ。
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JP2018090744A (ja) 2016-12-07 2018-06-14 三井化学株式会社 ポリオレフィン樹脂、フィルム、微多孔膜およびバッテリーセパレータ
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