JP7275809B2 - エマルション型アニオン電着塗料、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
塗膜形成用成分の電荷によって、電着塗装はアニオン電着塗装とカチオン電着塗装とに分けられ、アニオン電着塗装はアニオン電荷を帯びた塗膜形成用成分を陽極である被塗物に電着させる塗装方法である。アルミニウム等の電着塗装においてはアニオン電着塗装が多く採用されている。
特許文献2に記載されるアニオン電着塗装用塗料は、溶液重合からなる水溶性アクリル樹脂を塗膜樹脂の主成分として用いるため、形成される硬化塗膜が脆くなり易く、基材密着性や耐久性が不十分であるという問題があった。
特許文献3、4に記載される従来の電着塗料のように、メラミン樹脂やブロックイソシアネート等の低分子硬化剤を多く含む塗料から形成される硬化塗膜は、硬度の点で良好である。
しかし、硬化剤の多さに起因し硬化歪みが大きくなり硬化塗膜の密着性が低下し易く、また、耐久性においてクラック等が生じ易い問題があった。
さらに、硬化塗膜形成時の焼付(以下、加熱硬化ともいう)工程においては、高温に設定されたオーブン内で塗料中の低分子硬化剤成分が架橋反応(硬化剤自体の自己架橋および/または硬化剤とアクリル系樹脂との架橋)を生じる前にヒューム状に揮発してオーブン内に堆積し易く、定期的に塗装ラインを止めてオーブン内を清掃する必要があり、生産性に問題があった。
アクリル系重合体(A)は後述する被乳化成分であるモノマー成分(b)に対し、乳化剤成分として機能するものである。アクリル系重合体(A)は、モノマー成分(b)を乳化重合する際に、モノマー成分(b)を液滴としたモノマー滴を形成したり、アクリル系重合体(A)からなるミセル内にモノマー成分(b)を可溶化したりし、ラジカル重合開始剤から発生するラジカルをミセル内に取り込んだ状態で乳化重合を開始させる。つまり、アクリル系重合体(A)は、水に不溶もしくは難溶性のモノマー成分(b)に、水中での重合の場を提供するものである。
モノマー成分(a)は、カルボキシル基を有するアクリル系モノマー(a1)を必須とするエチレン性不飽和基含有化合物を主たる成分とするものである。カルボキシル基を有するアクリル系モノマー(a1)は、アクリル系重合体(A)に適度な親水性を付与し、塩基性物質で中和することでアクリル樹脂(A)を水溶液ないし水分散体にできる。
(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニルモノマーは、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
モノマー成分(b)とは、アミド基を有するアクリル系モノマー(b1)を必須成分とし、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーは含まないものであって、その多くは水に不溶もしくは難溶性で、通常、有機溶剤を用いた溶液重合や、界面活性剤を用いた乳化重合に供される。本発明は、かかる水に不溶もしくは難溶性のモノマー成分(b)を、所謂一般的な低分子量の界面活性剤を用いることなく、アクリル系重合体(A)を高分子乳化剤として用いて、乳化重合せしめることに特徴がある。また、モノマー成分(b)は、例えばポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコールないしその誘導体等をエチレン性不飽和基含有化合物と混合した状態で、被乳化成分としてラジカル重合に供することも出来る。
特に、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドや、
N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ペンチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-2-エチルヘキシルオキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミド系モノマーを含有することが好ましい。
有機アミン化合物としては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチル-エタノールアミン、N,N-ジエチル-エタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
塩基性化合物は、電着塗料のpHを5~9程度に調整できれば良いため使用量は限定されないところ、アクリル系重合体(A)中のカルボキシル基の100質量%に対して、30~100重量%程度の割合で使用することが好ましい。塩基性化合物は、単独で使用するかまたは2種類以上併用することができる
本願請求項1に係る発明は、所謂PBP(プロダクト・バイ・プロセス)型のクレームであり、本願請求項1に係る発明におけるアクリル系エマルションは、モノマー成分(b)の重合体をコア部、アクリル系重合体(A)をシェル部としたコア/シェル型ポリマーと、水性媒体等の液状分散媒とで構成されている。
得られたエマルション中ではアクリル系重合体(A)とモノマー成分(b)由来の重合体部分とは渾然一体化し、重合体粒子を形成し、両者を分離することは不可能に近い。一方、モノマー成分(a)とモノマー成分(b)との混合物を単に水性媒体中で重合してアクリル系エマルションを得たとしても、被乳化成分であるモノマー成分(b)に対し、アクリル系重合体(A)を乳化剤成分として用いてモノマー成分(b)を水性媒体中で重合して得られたアクリル系エマルションと同じものはできない。
(イ)反応槽に水性媒体を仕込み、次いで、モノマー成分(b)を、アクリル系重合体(A)で乳化して予めモノマーエマルション(プレ乳化と言う)を形成してから、反応槽へ供給して乳化重合をしてなる方法。
(ウ)反応槽に水性媒体、およびアクリル系重合体(A)の一部を仕込み、次いで、モノマー成分(b)を残りのアクリル系重合体(A)で乳化して予めモノマーエマルションを形成してから、反応槽へ供給して乳化重合してなる方法。
なお、上述いずれの方法においてもアクリル系重合体(A)は高分子乳化剤として機能するものであり、水溶性ないし水分散性樹脂をさらに使用することもでき、一例として、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、およびポリビニルアルコール、ならびにその誘導体等が挙げられる。
親水性有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、プロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(イソ)ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ(イソ)プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ(イソ)ブチルエーテル等の各種エーテルアルコール類ないしはエーテル類、
メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、フルフリルアルコール等のアルコ―ル類、
メチルエチルケトン、ジメチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルコキシエステル類等が挙げられる。なお、(イソ)アルキルエーテルは、ノルマルアルキルエーテル(n-アルキルエーテル)、及びイソアルキルエーテルの各々を含む。ここでいうアルキルとは、例えばプロピル、ブチル等アルキル基の意である。
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、
1,1ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール、
ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α, α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ-i-プロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド、
アセチルパーオキサイド、i-ブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、琥珀酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、
ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ビス-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、
tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシ-i-ブチレート、tert-ブチルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシラウエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クミルパーオキシオクテート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル等の各種過酸化物系開始剤、
さらには、アゾビス-i-ブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル等の各種アゾ系開始剤等が用いられ、過酸化物系開始剤が好ましい。
過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、
アゾビスイソブチロニトリルの塩酸塩、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2′-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1、3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(3、4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3、4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2′-アゾビス{2-メチル-N-[1、1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2′-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系開始剤、
過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩等の還元性有機化合物、
チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、
硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。
酸化剤、及び還元剤は、モノマー成分(b)100質量%に対して、それぞれ0.001~1質量%、及び0.001~2質量%程度の量を用いるのが好ましい。
なお、Tgは、ポリマーハンドブック等に記載されたモノマーのホモポリマーのTgを使用し、下記数式(1)で示すFoxの式で算出できる。
例えば、M1、M2、M3、M4、・・・・MNのモノマーを使用する場合、それぞれの質量%を、W1、W2、W3、W4、・・・・WN(W1、W2、W3、W4、・・・・WNの合計を100質量%とする。)とし、それぞれのモノマーの単独重合体のガラス転移温度(K)を、Tg1、Tg2、Tg3、Tg4、・・・・TgNとした時に、共重合して得られる共重合体のTg(K)は、下記数式(I)のFoxの式で求める。
1/Tg(K)=[(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)+(W4/Tg4)・・・・(WN/TgN)]/100・・・・数式(1)
なお、モノマーのホモポリマーのTgが既知でない場合、TgはDSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)で測定する。DSCでの昇温は、10℃/minである。
本発明の電着塗料は、硬化剤(C)を含むことができる。硬化剤(C)を含むことにより、硬化性が良好となり、塗膜の硬度や耐久性がより向上する。但し、硬化剤(C)を含む場合、その含有量は、アクリル系重合体(A)の重合に供されたモノマー成分(a)と乳化重合に供されたモノマー成分(b)との合計100質量部に対して20質量部以下であることが重要であり、0~15質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。硬化剤(C)の含有量を20質量部以下とすることにより、硬化時のヒューム発生を効果的に抑制しつつ、硬化塗膜に適度な基材密着性を付与できる。
フェノール樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の4官能フェノール化合物や、石炭酸、m-クレゾール、3,5-キシレノール等の3官能フェノール化合物、o-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール等の2官能フェノール化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させたもの等を挙げることができる。
アミノ樹脂としては、尿素やメラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させたもの等を挙げることができる。
ポリイソシアネートは、例えば、活性メチレン、MEKオキシム、ε-カプロラクタムをブロック剤とするブロック化イソシアネート;MEKオキシム型水性イソシアネートが挙げられる。
なお、フェノール樹脂やアミノ樹脂を使用する場合には、ホルムアルデヒドの付加により生成したメチロール基の一部ないし全部を、炭素数が1~12なるアルコール類によってエーテル化を行い使用することがより好ましい。これにより塗膜の基材密着性をより向上させることができる。
アニオン電着の手法としては、例えば、当該電着塗料を満たした電着浴槽に、被塗物である金属と対電極を浸漬し、これらの間に電圧を印加して電着塗装を行う。次いで、電着塗料とその樹脂成分とが付着した被塗物を引き上げて水浴中で余分な塗料を水洗し、その後、乾燥硬化させてアニオン電着塗装金属を得る。
アニオン電着塗装の塗装条件としては、電着塗料の液温は10~50℃、印加電圧は1~400V、電着時間は10秒~5分が例示でき、用途や目的に応じて適宜調節する。
また、塗装後の乾燥硬化条件は、140~240℃で30秒~60分間程度が好ましい。
形成される硬化塗膜の厚みは、1μm~50μm程度である。
<アクリル系重合体(A-1)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル75部、イオン交換水75部を仕込んで、加熱を開始し100℃程度で還流した。還流状態を維持したままメタクリル酸17部、スチレン58部、エチルアクリレート25部、および過酸化ベンゾイル1.3部の混合物を滴下槽から4時間にわたって連続滴下し重合した。滴下終了から1時間後、及び2時間後に過酸化ベンゾイル0.02部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間反応を継続した。次いで冷却することで数平均分子量28,000、ガラス転移温度64℃のアクリル系重合体の溶液(不揮発分率40%)を得た。
次に、ジメチルエタノールアミン23.3部を添加して、10分間撹拌した後、イオン交換水225部を加えアクリル系重合体を水に溶解させた。その結果、不揮発分率20%の、アクリル系重合体(A-1)水溶液を得た。
なお、数平均分子量は東ソー株式会社製GPC装置8020シリーズ(THF溶媒、カラム温度40℃、ポリスチレン標準)を用い、カラムは東ソー株式会社製G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL、G4000HXLの4本を直列に連結したものを使用し、流量1.0ml/minにて測定した。
また、ガラス転移温度は、Foxの式で算出した。計算に使った各ホモポリマーのガラス転移温度は、メタクリル酸:130℃、スチレン:100℃、エチルアクリレート:-22℃である。
<アクリル系重合体(A-2)、(A-3)の合成>
製造例1の原料および配合量を表1に示した原料および配合量に変更した以外は、製造例1の合成方法と同様にして行い、それぞれアクリル系重合体(A-2)、(A-3)溶液を得た。
<アクリル系重合体(A-101)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール74部、ブチルセロソルブ26部を仕込み80℃に加熱し、アクリル酸8部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート24部、メチルメタクリレート36部、エチルアクリレート12部、N-ブトキシメチルアクリルアミド20部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部を3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに4時間反応させて、数平均分子量15,500のアクリル系重合体の溶液(不揮発分率50%)を得た。
次に、ジメチルエタノールアミン13.9部を添加して、10分間撹拌した後、イオン交換水284部を加えアクリル系重合体を水に溶解させた。その結果、不揮発分率20%の、アクリル系重合体(A-101)水溶液を得た。
撹拌機、温度計、還流冷却管、3つの滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、アクリル系重合体(A-2)水溶液150部(不揮発分30部を含む)、イオン交換水113部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら70℃になるまで加熱した。
別途、モノマー成分(b)として、スチレン25部、エチルアクリレート38部、N-ブトキシメチルアクリルアミド7部の混合物を滴下槽1に仕込んだ。
また滴下槽2に1%過酸化水素水2.8部(モノマー成分(b)100部に対して0.04部の過酸化水素を含む)を仕込み、滴下槽3に1%エリソルビン酸ナトリウム水溶液2.8部(モノマー成分(b)100部に対して0.04部のエリソルビン酸ナトリウムを含む)を仕込んだ。
攪拌しつつ反応容器内の温度を70℃に保持しながら、それぞれの滴下槽から3時間かけて滴下し乳化重合を行うことでポリマーエマルションを得た。その後、イオン交換水117部、n-ブタノール25部、エチレングリコールモノブチルエーテル25部を添加し、ろ過することで不揮発分が20%のアクリル系エマルションを得、エマルション型アニオン電着塗料とした。
なお、アクリル系重合体(A-2)の重合に供されたモノマー成分(a)とモノマー成分(b)との質量比は30:70である。
実施例1と同様にしてアクリル系エマルションを得、該アクリル系エマルションの不揮発分100部に対し、硬化剤(C)としてPHENODUR PR285(オルネクス社製フェノール樹脂、不揮発分率55%)を1.82部加え、表2に示すエマルション型アニオン電着塗料とした。
撹拌機、温度計、還流冷却管、3つの滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イオン交換水47部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら70℃になるまで加熱した。
別途、モノマー成分(b)であるスチレン25部、エチルアクリレート38部、N-ブトキシメチルアクリルアミド7部の混合物を、アクリル系重合体(A-2)水溶液150部(不揮発分30部を含む)と水66部によって乳化液とし、該乳化液を滴下槽1に仕込んだ以外は実施例1と同様にしてアクリル系エマルションを得、該アクリル系エマルションの不揮発分100部に対し、硬化剤(C)としてPHENODUR PR285(オルネクス社製フェノール樹脂、不揮発分率55%)を1.82部加え、エマルション型アニオン電着塗料とした。
アクリル系重合体(A-2)水溶液の代わりにアクリル系重合体(A-1)水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表2に示すエマルション型アニオン電着塗料を得た。
アクリル系重合体(A-1)水溶液の代わりにアクリル系重合体(A-3)水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、表2に示すエマルション型アニオン電着塗料を得た。
実施例1の材料および配合量を表2、3に示した材料および配合量に従って配合した以外は実施例1と同様に行い、それぞれ実施例6~16、および比較例1~7エマルション型アニオン電着塗料を得た。なお、表2、3で使用した材料を以下に示す。
フェノール樹脂:PHENODUR PR285(オルネクス社製、不揮発分率55%)。
アミノ樹脂:CYMEL304: メトキシメチルエーテル化メラミン樹脂(オルネクス社製、不揮発分率98%)。
アクリル系重合体(A-2)水溶液の代わりにアクリル系重合体(A-101)水溶液150部(不揮発分30部を含む)を用い、モノマー成分(b)としてスチレン3.5部、メチルメタクリレート14部、n-ブチルアクリレート3.2部、n-ブチルメタクリレート5.6部、2-エチルヘキシルメタクリレート2.4部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5.6部、およびアクリル酸0.7部の混合物35部を用いた以外は実施例2と同様にしてアクリル系エマルションを得、硬化剤(C)としてサイメル304を36部配合し、エマルション型アニオン電着塗料を得た。
なお、特許文献3(特開2015-183105号公報)は、アミド基を有するモノマーを用いてなる乳化剤成分を用い、大量の硬化剤の存在下に、アミド基を有するモノマーを含有しない被乳化剤成分を乳化重合し、エマルション型アニオン電着塗料を開示する。比較例8は、アミド基を有するモノマーを用いてなる乳化剤成分を用い、アミド基を有するモノマーを含有しない被乳化剤成分を乳化重合してなるアクリル系エマルションに、大量の硬化剤を配合したものである。
得られたエマルション型アニオン電着塗料を電着浴とし、被塗物としてアルミニウム材(10cm×10cm×厚さ0.28mm)を浸漬し、硬化塗膜の膜厚が15μmになるようにアニオン電着塗装し、その後、水浴にて余分な塗料を水洗して未硬化のアニオン電着塗装板を作製した。
上記で得られた未硬化のアニオン電着塗装板を、210℃にセットしたホットプレート上に乗せた。さらにこの上側に縦10cm×横10cmのアルミニウム板を、両者の間隔が1cmとなるように対面させて2分間保持し、焼付け工程で塗膜から発生するヒュームを付着させた。前記同様の試験を50回繰り返した(ただしヒュームを付着させるアルミニウム板は、交換せず同じ板を使用した)。試験終了後、ヒュームを付着させたアルミニウム板を120℃で10分間加熱して、付着物の不揮発分重量を測定し、ヒューム発生量として評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:5mg未満。良好。
○:5mg以上~10mg未満。実用上問題なし
△:10mg以上~15mg未満。使用できない。
×:15mg以上。使用できない。
上記で得られた未硬化のアニオン電着塗装板を、温度200℃のガスオーブンで2分間焼付け硬化し、評価用の硬化塗装板を作製し、硬化塗膜の物性の試験を行った。
得られた硬化塗装板を80℃にて還流させたメチルエチルケトン(MEK)中に60分間浸漬し、浸漬前後の塗装板の重量変化からゲル分率を算出した。
◎:95%以上。良好。
○:80%以上95%未満。実用上問題なし。
△:70%以上80%未満。使用できない。
×:70%未満。使用できない。
JIS K5600に準拠し、三菱鉛筆「ユニ(登録商標)」を使用して室温25℃の環境下、得られた硬化塗装板の塗膜面の鉛筆硬度を測定した。評価基準は下記の通りである。
◎:3H以上。良好。
○:H~2H。実用上問題なし。
△:B~F。使用できない。
×:2B以下。使用できない。
得られた硬化塗装板に対してデュポン衝撃試験機を用いて衝撃加工試験を行った。試験後、凸加工部の塗膜に市販セロハンテープを貼着して強く剥離した後の塗膜面の剥離状態を目視で評価した。なお、衝撃加工は、直径1/2インチの撃芯を使用し、荷重300gの重りを高さ50cmから落下させて行った。評価基準は下記の通りである。
◎:加工部に剥離なし。良好。
○:加工部に5%未満の剥離あり。実用上問題なし。
△:加工部に5%以上20%未満の剥離あり。使用できない。
×:加工部に20%以上の剥離あり。使用できない。
硬化塗装板を水に浸漬したまま、100℃で30分間のボイル処理を行い、処理後の塗膜の表面状態を目視で評価した。
◎:未処理の塗膜と変化なし。良好。
○:やや白化が見られるが、実用上問題なし。
△:白化やブリスターが見られ、使用できない。
×:著しく白化やブリスターが見られ、使用できない。
Espec社製冷熱衝撃試験機TSA-101Lを使用し、硬化塗装板を-30℃で15分間冷却保持後、直ちに150℃に加熱し20分間保持し、これを1サイクルとして連続350サイクルの冷熱衝撃耐久試験を行った。試験後の塗装板の表面状態を目視で評価した。
◎:未処理の塗膜と変化なし。良好。
○:ごく僅かな塗膜の発泡が見られるが、実用上問題なし。
△:塗膜の発泡やワレが見られ、使用できない。
×:著しく塗膜の発泡やワレ、変色が見られ、使用できない。
Claims (3)
- カルボキシル基を有するアクリル系モノマー(a1)を必須とするモノマー成分(a)を重合しアクリル系重合体(A)を得、
前記カルボキシル基を有するアクリル系重合体(A)の存在下に、アミド基を有するアクリル系モノマー(b1)を含み、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーは含まないモノマー成分(b)を、前記モノマー成分(a)と前記モノマー成分(b)との質量比が(a):(b)=10~60:90~40の範囲で、水性媒体中で重合し、アクリル系エマルションを得、
次いで、前記モノマー成分(a)と前記モノマー成分(b)との合計100質量部に対して、硬化剤(C)を0~20質量部配合する、
エマルション型アニオン電着塗料の製造方法。 - 前記モノマー成分(a)100質量%中に含まれるカルボキシル基を有するアクリル系モノマー成分(a1)の量が15~80質量%であり、前記モノマー成分(b)100質量%中に含まれるアミド基を有するアクリル系モノマー(b1)の量が0.1~20質量%である、請求項1記載のエマルション型アニオン電着塗料の製造方法。
- 前記重合体(A)の重合に供された前記モノマー成分(a)と前記モノマー成分(b)との合計100質量部に対して、硬化剤(C)を0.5~10質量部配合する、請求項1または2記載のエマルション型アニオン電着塗料の製造方法。
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