以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に制限されるものではない。
図1は、実施形態にかかる走行制御装置100の構成等を示した例示的かつ模式的なブロック図である。走行制御システムは、車両の走行状態を制御するためのシステムとして車両に搭載される。なお、車両は、たとえば四輪の自動車であるが、実施形態の技術は、四輪の自動車以外の一般的な車両にも適用可能である。
図1に示すように、走行制御システムは、当該走行制御システムの制御を行う走行制御装置100と、車両に関する情報を検出する車載センサ110と、車両の挙動を制御するアクチュエータ120と、出力部130と、を備えている。
走行制御装置100は、プロセッサやメモリなどといったハードウェアを備えた(マイクロ)コンピュータとして構成される。走行制御装置100は、たとえば、車載センサ110の出力値としてのセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報に基づいてアクチュエータ120を制御することで、車両の挙動を安定化させる安定化制御等を実行する。
安定化制御とは、たとえば、走行時における車両の姿勢が不安定になっている場合に当該姿勢を安定化させる姿勢制御である。姿勢制御の例としては、たとえば、アンダーステアやオーバーステアなどといった旋回時における車両の横滑りを抑制するように車両のヨー角を安定化させる横滑り抑制制御や、車両のロール角/ピッチ角を安定化させるロール/ピッチ制御などが考えられる。
なお、実施形態にかかる走行制御装置100が実行する制御の詳細については、後でより詳しく説明するため、ここではこれ以上の説明を省略する。
車載センサ110は、速度センサ111と、ヨーレートセンサ112と、加速度センサ113と、ステアリングセンサ114(運転操作センサ)と、アクセル開度センサ115(運転操作センサ)と、ステアリングトルクセンサ116と、エンジン回転数センサ117と、油圧センサ118と、カメラ1191と、レーダ1192と、を含んでいる。
速度センサ111は、車両の速度(より具体的には車輪の回転速度)を検出する。ヨーレートセンサ112は、車両に発生するヨーレートを検出する。
加速度センサ113は、車両に発生する前後方向および横方向の加速度を検出する。ステアリングセンサ114は、車両に対するドライバの運転操作に含まれる操舵操作(の量)を検出する。
アクセル開度センサ115は、アクセル開度(アクセルペダルによる踏み込み量)を検出する。ステアリングトルクセンサ116は、ステアリングトルク(操舵トルク)を検出する。
エンジン回転数センサ117は、エンジンの回転数を検出する。油圧センサ118は、各車輪のホイールシリンダの油圧を検出する。
カメラ1191は、車両の周辺を撮影する。レーダ1192は、車両から周辺の物体(たとえば、他車両、歩行者、建物、ガードレール等)までの距離を計測する。なお、車載センサ110は、ほかに、運転操作センサとしてのブレーキセンサ等を備えていてもよい。
また、アクチュエータ120は、操舵装置121と、前輪操舵装置122と、後輪操舵装置123と、制動装置124と、駆動装置125と、を含んでいる。
操舵装置121は、操舵(ステアリング)を制御する。操舵装置121は、たとえば、EPS(Electric Power Steering)により実現される。
前輪操舵装置122は、車両の前輪の操舵を制御する。前輪操舵装置122は、たとえば、車速と舵角に応じてステアリングのギア比を変更することで、前輪の切れ角を最適に制御する。これにより、たとえば、駐車時などではステアリングを少し切るだけで大きく曲がり、操作が容易になる。また、高速走行時などではハンドルの操作量に対して切れ角が小さくなり、走行安定性が高まる。
後輪操舵装置123は、車両の後輪の操舵を制御する。後輪操舵装置123は、たとえば前輪操舵装置122と同様の構造によって実現される。
制動装置124は、車両に制動力を与えるブレーキ機構を制御する。駆動装置125は、車両に駆動力を与える駆動機構を制御する。
なお、実施形態において、車載センサ110は、図1に例示したものに限定されず、一部のセンサを省略してもよいし、あるいは、他のセンサを含んでいてもよい。
同様に、実施形態において、アクチュエータ120は、図1に例示したものに限定されず、一部の装置を省略してもよいし、あるいは、他の装置を含んでいてもよい。
出力部130は、表示装置や音声出力装置である。出力部130は、報知部107からの指示に基づいて、メッセージを表示したり音声出力したりする。
ところで、従来から、たとえば、車両の理想運転データを用意しておき、ドライバによる実際の運転操作をその理想運転データと比較することで、運転環境(ドライバによる運転操作内容や路面状態等)を評価する技術がある。
しかしながら、一般に、ドライバごとの運転操作の特性(特徴)は異なる。したがって、一律の理想運転データを用いて運転環境を評価すると、そのドライバごとの運転操作の特性が反映されておらず、改善の余地がある。
そこで、本実施形態では、ドライバごとの運転操作の特性を踏まえて運転環境を評価することが可能な走行制御装置100について説明する。
すなわち、実施形態にかかる走行制御装置100は、上記のような作用効果を実現するための機能として、センサ情報取得部101と、指令値決定部102と、特性パラメータ取得部103と、調整出力部104と、判定部105と、車両制御部106と、報知部107と、を備えている。これらの機能は、たとえば、走行制御装置100のプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行した結果として実現される。なお、実施形態では、走行制御装置100の機能の一部または全部が、専用のハードウェア(回路)のみによって実現されてもよい。
センサ情報取得部101は、車載センサ110の出力値としてのセンサ情報を取得する。前述したように、センサ情報は、たとえば、速度センサ111の出力値としての車両の速度や、ヨーレートセンサ112の出力値としての車両のヨーレートや、加速度センサ113の出力値としての車両の前後方向および横方向の加速度や、ステアリングセンサ114の出力値としてのドライバの操舵操作の量を含んでいる。また、センサ情報は、たとえば、アクセル開度センサ115の出力値としてのアクセル開度や、ステアリングトルクセンサ116の出力値としてのステアリングトルクや、エンジン回転数センサ117の出力値としてのエンジンの回転数や、油圧センサ118の出力値としての各ホイールシリンダの油圧を含んでいる。また、センサ情報は、たとえば、カメラ1191の出力値としての撮像信号や、レーダ1192の出力値としての距離計測結果を含んでいる。なお、以下では、これらの出力値を、車両の実際の状態を表す値という意味で、実値と表現することがある。
指令値決定部102は、車両の走行状態に基づいて、車両の挙動を安定化させる安定化制御を実行するための指令値を決定する。つまり、指令値決定部102は、センサ情報取得部101によって取得される車載センサ110からのセンサ情報に基づいて、安定化制御を実現するためにアクチュエータ120に与える指令値を決定する。指令値は、安定化制御において実現すべきアクチュエータ120における各装置121~125の少なくともいずれかにおける各情報の目標値である。たとえば、指令値は、車両に発生させるべきヨーレートの目標値を含む。また、車両の走行状態は、車載センサ110からのセンサ情報に基いて算出できる。
特性パラメータ取得部103は、車両に対するドライバの運転操作を検出する運転操作センサの出力値と、車両の走行状態と、に基づいて、ドライバの運転操作の特性を示す特性パラメータを周期的に取得するとともに、所定の収束条件に基づいて特性パラメータの確定値を決定する。たとえば、特性パラメータ取得部103は、少なくとも車両に発生させるべきヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて、特性パラメータを取得する(詳細は後述)。
調整出力部104は、特性パラメータに基づいて、指令値を調整し、調整後の指令値をアクチュエータ120に出力する。具体的には、たとえば、調整出力部104は、特性パラメータが大きいほど、指令値が小さくなるように調整する。
判定部105は、特性パラメータの確定値と、特性パラメータ取得部103によって新たに取得された特性パラメータと、を比較して、運転環境が通常か否かを判定する。たとえば、判定部105は、特性パラメータの確定値と、特性パラメータ取得部103によって新たに取得された特性パラメータと、の差が所定値以上の場合に、運転環境が通常でないと判定する。なお、ここでの所定値は、絶対的な数値であってもよいし、相対的な数値(割合)であってもよい。また、判定対象は、ハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作の操作量であってもよいし、あるいは、それらの操作タイミングであってもよい。
車両制御部106は、判定部105によって運転環境が通常でないと判定された場合に、当該運転環境に応じて運転操作のアシスト制御(以下、単に「アシスト制御」という場合がある。)を実行する。つまり、車両制御部106は、アクチュエータ120における各装置121~125の少なくともいずれかに対してアシスト制御を実行する。たとえば、車両制御部106は、ハンドル操作のアシスト制御を実行する場合は、操舵装置121に対してアシスト制御を実行する。また、車両制御部106は、アクセル操作のアシスト制御を実行する場合は、駆動装置125に対してアシスト制御を実行する。また、車両制御部106は、ブレーキ操作のアシスト制御を実行する場合は、制動装置124に対してアシスト制御を実行する。なお、アシスト制御は、たとえば、車両の一連の動作のうちの初期動作について実行すればよいが、これに限定されない。
報知部107は、判定部105によって運転環境が通常でないと判定された場合に、当該運転環境に応じたメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知する。ここでのメッセージとしては、たとえば、ドライバによるハンドル操作量が通常時よりも大きい場合は、「ハンドル操作量を小さくしてください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
また、たとえば、ドライバによるハンドル操作量が通常時よりも小さい場合は、「ハンドル操作量を大きくしてください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
また、たとえば、ドライバによるハンドル操作のタイミングが通常時よりも早い場合は、「ハンドル操作のタイミングをもう少し遅くしてください。」という内容が考えられる(通常時よりも遅いについても同様)。
また、たとえば、車両制御部106によってハンドル操作のアシスト制御を実行する場合は、「ハンドル操作のアシスト制御を実行します。」という内容が考えられる(アクセル操作、ブレーキ操作についても同様)。
また、報知部107は、特性パラメータ取得部103によって特性パラメータの確定値が決定されたときに、特性パラメータの確定値に対応するドライバの運転操作の特性に応じたメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知する。ここでのメッセージとしては、たとえば、特性パラメータの確定値が大きなハンドル操作量を示す場合は、「ハンドル操作量が大きくならないように注意してください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
ここで、一般に、ドライバの運転操作の特性(特徴)を推定するための技術として、下記の式(1)で表される前方注視モデルに基づく下記の式(2)で表される評価関数J´を最小化する3つのパラメータτL´、τh´、およびh´の組み合わせを、特性パラメータとして取得する技術が知られている。
ここで、上記の2式において、δは、ドライバの運転操作のうち車両の舵角を変化させるための操舵操作の量の実値である。yOLは、車両の目標経路に沿った車両の横方向の変位の目標値である。yは、車両の横方向の変位の実値である。τL´は、運転操作におけるドライバの反応の遅れを示す無駄時間である。τh´は、ドライバがどの程度先の時間を予見して運転操作を行っているかを示す予見時間である。h´は、比例定数である。λ´は、予見時間と比例定数との積である。δ*およびy*は、それぞれ、時間の関数としての操舵操作の量および車両の実際の横方向の変位の実値である。
上記の2式から分かるように、前方注視モデルは、車両の横方向の変位の目標値と実値との偏差が取得可能なことを前提としているので、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成を有しない車両では実現できない。
そこで、本願の発明者らは、実験などに基づき鋭意検討した結果として、上記の前方注視モデルにおいて車両の横方向の変位を車両のヨーレートに置き換えたモデルによっても、上記の前方注視モデルによって得られる特性パラメータと同等の適切な特性パラメータを取得することが可能であるという知見を得た。
すなわち、実施形態において、特性パラメータ取得部103は、前方注視モデルのアナロジーとしての下記の式(3)で表されるモデルに基づく下記の式(4)で表される評価関数Jの値を最小化する3つのパラメータτL、τh、およびhの組み合わせを、特性パラメータとして取得する。つまり、特性パラメータ取得部103は、一例として、少なくとも車両に発生させるべきヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて、特性パラメータを取得する。なお、特性パラメータの取得は、安定化制御が実行されている間、所定の制御周期で繰り返し(周期的に)実行される。
ここで、上記の2式において、δは、ドライバの操舵操作の量の実値である。γは、ヨーレートの実値である。γOLは、ヨーレートの目標値である。τLは、運転操作におけるドライバの反応の遅れを示す無駄時間である。τhは、ドライバがどの程度先の時間を予見して運転操作を行っているかを示す予見時間である。hは、比例定数である。λは、予見時間と比例定数との積である。δ*およびγ*は、それぞれ、時間の関数としての操舵操作の量およびヨーレートの実値である。
なお、上記の式(3)は、1次遅れ系の伝達関数に対応しているので、その特性上、γがγOLに近づく(収束する)ように変化する区間において特に意味を持つと考えられる。したがって、実施形態において、特性パラメータ取得部103は、ヨーレートの実値が目標値に近づくように変化する区間において、上記の評価関数Jの値を最小化する3つのパラメータτL、τh、およびhの組み合わせを、特性パラメータとして取得することが好ましい。後述するように、実施形態においては、基本的に、繰り返し取得される特性パラメータの変動が所定範囲内に収束して特性パラメータが(実質的に)確定した場合にのみ、特性パラメータが制御に利用される。
また、特性パラメータの大きさは、車両のドライバが与える操作量(たとえば、ハンドル操作量、アクセル操作量、ブレーキ操作量。以下同様)の大きさと相関がある。一般に、操作量の大きいドライバは、運転技術レベルが低く、安定化制御によって自動で実現される車両の挙動が大きくなったとしても違和感を覚えにくく、また、運転支援の必要性が高いと考えられる。また、操作量の小さいドライバは、運転技術レベルが高く、安定化制御によって自動で実現される車両の挙動が大きくなると、運転操作によって手動で実現される車両の挙動に対して持っているイメージとのズレにより違和感を覚えやすく、また、運転支援の必要性が低いと考えられる。
そこで、実施形態において、調整出力部104は、特性パラメータに基づいて、指令値を調整し、調整後の指令値をアクチュエータ120に出力する。具体的には、たとえば、調整出力部104は、操作量が大きいほど、指令値が小さくなるように調整する。そのために、調整出力部104は、たとえば、特性パラメータに基づいて、指令値を調整するための調整係数を決定する。そして、調整出力部104は、調整後の指令値を、アクチュエータ120に出力する。
なお、上記の式(3)および(4)から分かるように、特性パラメータは、時間経過とともに収束するように変動する性質を持っている。また、特性パラメータは、ドライバの運転操作の特性を表すパラメータであり、基本的にはドライバ毎に固有の値となるので、ドライバの交代などが発生しない限り、大きく変動することは基本的にない。
実施形態において、調整出力部104は、安定化制御が開始した後、特性パラメータの変動が実質的に収束して特性パラメータの確定値が決定した場合、特性パラメータの確定値に基づいて調整係数を取得(算出)し、その調整係数に基づいて指令値を調整する。
一方、実施形態において、調整出力部104は、安定化制御が開始した後であっても、特性パラメータの変動が収束せずに特性パラメータの確定値が決定していない場合、調整係数の初期値に基づいて指令値を調整する。
以上の構成に基づき、実施形態にかかる走行制御装置100は、次の図2に示されるようなフローチャートに沿って処理を実行する。
図2は、実施形態にかかる走行制御装置100が車両の安定化制御のために実行する一連の処理を示した例示的かつ模式的なフローチャートである。この図2に示される一連の処理は、所定の制御周期で繰り返し(周期的に)実行される。
図2に示すように、実施形態では、まず、ステップS1において、走行制御装置100のセンサ情報取得部101は、車載センサ110の出力値としてのセンサ情報を取得する。
次に、ステップS2において、指令値決定部102は、ステップS1で取得されたセンサ情報に基づいて、安定化制御を実現するためにアクチュエータ120に与える指令値を決定する。
次に、ステップS3において、特性パラメータ取得部103は、ステップS1で取得された車両に関する各種の情報の実値と、ステップS2で得られる車両に関する各種の情報の目標値と、に基づいて、上述した式(3)および(4)を用いて、ドライバの運転操作の特性を示す特性パラメータを取得する。
次に、ステップS4において、判定部105は、特性パラメータが逸脱したか否かを判定し、Yesの場合はステップS11に進み、Noの場合はステップS5に進む。このステップS4では、判定部105は、たとえば、特性パラメータの確定値と、特性パラメータ取得部103によって新たに取得された特性パラメータと、の差が所定値以上の場合に、運転環境が通常でない(No)と判定する。
ステップS5において、調整出力部104は、ステップS3で取得された特性パラメータの変動が実質的に収束し、特性パラメータの確定値が決定したか否かを判定し、Yesの場合はステップS7に進み、Noの場合はステップS6に進む。
ステップS7において、報知部107は、特性パラメータの確定値に対応するドライバの運転操作の特性に応じたメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知する。ここでのメッセージとしては、たとえば、特性パラメータの確定値が大きなハンドル操作量を示す場合は、「ハンドル操作量が大きくならないように注意してください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
次に、ステップS8において、調整出力部104は、記憶部に記憶された調整係数が既に更新済か否かを判定し、Yesの場合はステップS10に進み、Noの場合はステップS9に進む。
ステップS9において、調整出力部104は、特性パラメータの確定値に基づいて調整係数を取得し、取得した調整係数により、前回の調整係数を更新する。
次に、ステップS10において、調整出力部104は、ステップS9で更新後の調整係数に基づいて指令値を調整し、調整後の指令値をアクチュエータ120に出力する。そして、処理が終了する。
また、ステップS8でYesの場合、ステップS9をスキップし、ステップS10において、調整出力部104は、前回の調整係数に基づいて指令値を調整し、調整後の指令値をアクチュエータ120に出力する。そして、処理が終了する。
一方、ステップS6において、調整出力部104は、記憶部に記憶された調整係数を、安定化制御が開始する前のたとえば初期状態に対応した所定の調整係数(初期値)に初期化する。
ステップS6の後、ステップS10において、調整出力部104は、記憶部に記憶された初期値を使用して指令値を調整し、調整後の指令値をアクチュエータ120に出力する。そして、処理が終了する。
一方、ステップS11において、判定部105は、特性パラメータが逸脱したことに対応する内容として、操作量が大きいか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合はステップS14に進む。
ステップS12において、報知部107は、出力部130を用いて、操作量減少を促すメッセージを報知する。ハンドル操作量が大きい場合は、ここでのメッセージとしては、たとえば、「ハンドル操作量を小さくしてください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
また、ステップS13において、必要に応じて、車両制御部106は、運転操作のアシスト制御を実行する。たとえば、車両制御部106は、ハンドル操作量減少のためのアシスト制御を実行する場合は、操舵装置121に対してそのためのアシスト制御を実行する(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。その際、報知部107によって「ハンドル操作量を減少させるアシスト制御を実行します。」というメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知してもよい。ステップS13の後、ステップS14に進む。
ステップS14において、判定部105は、特性パラメータが逸脱したことに対応する内容として、操作量が小さいか否かを判定し、Yesの場合はステップS15に進み、Noの場合はステップS17に進む。
ステップS15において、報知部107は、出力部130を用いて、操作量増加を促すメッセージを報知する。ハンドル操作量が小さい場合は、ここでのメッセージとしては、たとえば、「ハンドル操作量を大きくしてください。」という内容が考えられる(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
また、ステップS16において、必要に応じて、車両制御部106は、運転操作のアシスト制御を実行する。たとえば、車両制御部106は、ハンドル操作量増加のためのアシスト制御を実行する場合は、操舵装置121に対してそのためのアシスト制御を実行する(アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。その際、報知部107によって「ハンドル操作量を増加させるアシスト制御を実行します。」というメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知してもよい。ステップS16の後、ステップS17に進む。
ステップS17において、判定部105は、特性パラメータが逸脱したことに対応する内容として、操作タイミングが異常(そのドライバの通常時と異なる)か否かを判定し、Yesの場合はステップS18に進み、Noの場合は処理を終了する。
ステップS18において、報知部107は、出力部130を用いて、操作タイミングの正常化を促すメッセージを報知する。ドライバによるハンドル操作のタイミングが通常時よりも早い場合は、ここでのメッセージとしては、たとえば、「ハンドル操作のタイミングをもう少し遅くしてください。」という内容が考えられる(ハンドル操作のタイミングが通常時よりも遅い場合や、アクセル操作量、ブレーキ操作量についても同様)。
また、ステップS19において、必要に応じて、車両制御部106は、運転操作のアシスト制御を実行する。たとえば、車両制御部106は、ハンドル操作タイミングの正常化のためのアシスト制御を実行する場合は、操舵装置121に対してそのためのアシスト制御を実行する(アクセル操作タイミング、ブレーキ操作タイミングについても同様)。その際、報知部107によって「ハンドル操作タイミングを調整するアシスト制御を実行します。」というメッセージを、出力部130を用いてドライバに報知してもよい。ステップS19の後、処理を終了する。
以上の構成および処理に基づき、実施形態にかかる安定化制御によれば、以下に説明するような車両の挙動が得られる。
図3は、実施形態にかかる走行制御装置100による安定化制御の結果として実現される車両の挙動の第1の例を示した例示的かつ模式的な図である。なお、この図3の例では、走行制御装置100が目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成を有している場合を想定している。つまり、特性パラメータを、上記の式(3)および(4)に基づいて取得するのではなく、上記の式(1)および(2)に基づいて取得する。なお、目標経路は、たとえば、ドライバの走行軌跡から学習することで設定すればよい。
図3に示される例は、車線L1(左端線L1L:右端線L1R)に沿って走行中の車両Vが、目標経路OLに対して、実際にはその外側寄りの走行軌跡DL上を走行してしまうという状況における実施形態にかかる安定化制御が実行された場合に実現される車両Vの一連の挙動を複数のタイミングt1~t4で示したものである。
たとえば、タイミングt1で、車両Vにおいて、カーブの直前であるにもかかわらずブレーキ操作のタイミングが遅いと、「ブレーキ操作タイミングを早めてください。」というメッセージをドライバに報知する。また、アシスト制御でブレーキ操作を行ってもよい。
また、たとえば、タイミングt2で、車両Vにおいて、カーブに進入しているにもかかわらずハンドル操作のタイミングが遅いと、「ハンドル操作タイミングを早めてください。」というメッセージをドライバに報知する。また、アシスト制御でハンドル操作を行ってもよい。
このようにして、ドライバごとの運転操作の特性を踏まえて運転環境を評価するとともに、運転環境に応じたメッセージをドライバに報知することで、通常時の運転操作に近づかせることを促す有意義なメッセージをドライバに伝えることができる。また、通常時の運転操作に近づかせるような運転操作のアシスト制御を実行することができ、ドライバに与える違和感が少なくて済む。
図4は、実施形態にかかる走行制御装置100による安定化制御の結果として実現される車両の挙動の第2の例(アンダーステア例)を示した例示的かつ模式的な図である。なお、この図4の例では、走行制御装置100が目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成を有していない場合を想定している。つまり、車両に発生させるべきヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて、特性パラメータを取得する。また、図4(a)は通常時(特性パラメータの逸脱がない場合)を示し、図4(b)は特性パラメータの逸脱がある場合を示す。
図4(a)の例では、車線L2(左端線L2L:右端線L2R)に沿って走行中の車両Vは、タイミングt12で、路面が低μ路になるなどといった要因でスリップ傾向となるも、ドライバによるハンドル操作で車両Vの姿勢の立て直しに成功している。そして、このとき、特性パラメータは逸脱していない。
一方、図4(b)の例では、車両Vは、タイミングt22で、路面が低μ路になるなどといった要因で強いスリップ傾向となり、特性パラメータが逸脱し、ドライバに「ハンドル操作量を増やしてください」という内容のメッセージを報知する。また、たとえば、その直後のタイミングt23に、ハンドル操作量を増やすアシスト制御を実行する。
このようにして、ドライバごとの運転操作の特性を踏まえて運転環境を評価するとともに、運転環境に応じたメッセージをドライバに報知することで、通常時の運転操作に近づかせることを促す有意義なメッセージをドライバに伝えることができる。また、通常時の運転操作に近づかせるような運転操作のアシスト制御を実行することができ、ドライバに与える違和感が少なくて済む。また、特性パラメータを取得するのに、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成が不要となり、走行制御装置100の構成が簡素で済む。
図5は、実施形態にかかる走行制御装置100による安定化制御の結果として実現される車両の挙動の第3の例(オーバーステア例)を示した例示的かつ模式的な図である。なお、この図5の例では、走行制御装置100が目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成を有していない場合を想定している。つまり、車両に発生させるべきヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて、特性パラメータを取得する。また、図5(a)は通常時(特性パラメータの逸脱がない場合)を示し、図5(b)は特性パラメータの逸脱がある場合を示す。
図5(a)の例では、車線L3(左端線L3L:右端線L3R)に沿って走行中の車両Vは、タイミングt32で、路面が低μ路になるなどといった要因でスリップ傾向となるも、ドライバによるハンドル操作で車両Vの姿勢の立て直しに成功している。そして、このとき、特性パラメータは逸脱していない。
また、車両Vは、タイミングt33で、路面が低μ路になるなどといった要因でスピン傾向となるも、ドライバによるハンドル操作で車両Vの姿勢の立て直しに成功している。そして、このとき、特性パラメータは逸脱していない。
一方、図5(b)の例では、車両Vは、タイミングt42で、路面が低μ路になるなどといった要因でスリップ傾向となるも、ドライバによるハンドル操作で車両Vの姿勢の立て直しに成功している。そして、このとき、特性パラメータは逸脱していない。
また、車両Vは、タイミングt43で、路面が低μ路になるなどといった要因でスピン傾向となり、特性パラメータが逸脱し、ドライバに「ハンドル操作タイミングを早めてください」という内容のメッセージを報知する。また、たとえば、その直後に、ハンドル操作を行うアシスト制御を実行する。
このようにして、ドライバごとの運転操作の特性を踏まえて運転環境を評価するとともに、運転環境に応じたメッセージをドライバに報知することで、通常時の運転操作に近づかせることを促す有意義なメッセージをドライバに伝えることができる。また、通常時の運転操作に近づかせるような運転操作のアシスト制御を実行することができ、ドライバに与える違和感が少なくて済む。また、特性パラメータを取得するのに、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成が不要となり、走行制御装置100の構成が簡素で済む。
以上説明したように、実施形態の走行制御装置100によれば、特性パラメータの確定値と新たに取得された特性パラメータを比較することで、ドライバごとの運転操作の特性を踏まえて運転環境を評価することができる。
また、運転環境に応じたメッセージをドライバに報知することで、通常時の運転操作に近づかせることを促す有意義なメッセージをドライバに伝えることができる。
また、通常時の運転操作に近づかせるような運転操作のアシスト制御を実行することができ、ドライバに与える違和感が少なくて済む。
また、特性パラメータの確定値に対応するドライバの運転操作の特性に応じた有意義なメッセージをドライバに伝えることができる。
また、ヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて特性パラメータを取得するようにすれば、特性パラメータを取得するのに、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりするための構成が不要となり、走行制御装置100の構成が簡素で済む。
なお、従来技術で、複数の運転データに基づいて複数の運転者に適用できる一般ドライバモデルを学習する人工知能を備え、予定走行経路で規定されるステアリング操作タイミングよりも実際のステアリング操作タイミングのほうが遅い場合に、ステアリング操作タイミングを早めるように促すメッセージを表示するものがある。しかし、この従来技術では、ドライバごとに異なる運転操作の特性を反映させることはできない。また、メッセージを表示するのみで、運転操作のアシスト制御はできない。また、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりすることができない簡単な構成の車両では実現できない。
一方、本実施形態の走行制御装置100によれば、ドライバごとに異なる運転操作の特性に基づいて、運転環境が通常か否かを判定し、判定結果に応じて、メッセージをドライバに報知したり、運転操作のアシスト制御を実行したりすることができる。また、ヨーレートの目標値とヨーレートの実値との偏差に基づいて特性パラメータを取得することで、目標経路を算出したり走行軌跡を取得したりすることができない簡単な構成の車両でも実現できる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。