JP7261013B2 - マラリアワクチンにおいて使用するための新規抗原 - Google Patents
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Description
本出願は、これによってその全体が参照により本明細書に組み入れられる、2016年2月17日に出願された米国特許仮出願第62/296,464号に基づいて、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下における優先権を主張する。
長年に渡る努力にも関わらず、認可されたマラリアワクチンは入手不可能である。マラリアワクチンの開発に立ちはだかる障壁の1つは、マラリアワクチン抗原の多くについての幅広い不均一性である。ヒトにおいて評価が行われた潜在的なワクチン抗原では、これまでのところ防御的な免疫応答が誘発されていない。
本発明は、マラリア原虫の前赤内期および赤血球期の双方において発現する、抗原として有用なポリペプチドを提供する。該抗原は、ワクチン製剤の状態で該抗原を投与することによって、またはワクチン製剤として送達されるDNA発現システムもしくは他の核酸発現システムにおいて該抗原を発現させることによって、哺乳類においてマラリアに対する細胞免疫応答および液性免疫応答の双方を誘導するために用いることができる。好ましい態様において、該哺乳類はヒトである。
[本発明1001]
SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6、およびそれらの誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含む組換えポリペプチドであって、該誘導体が、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸、ならびに/またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチド;
薬学的に許容される担体;ならびに
アジュバント
を含む、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。
[本発明1002]
薬学的に許容される担体中の2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドの組み合わせであって、該2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドのうちの第一の組換えポリペプチドが、SEQ ID NO:3およびその誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含み、該誘導体が、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したアミノ酸、および/またはSEQ ID NO:3との少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチドの組み合わせ;
薬学的に許容される担体;ならびに
アジュバント
を含む、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。
[本発明1003]
前記2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドのうちの第二の組換えポリペプチドが、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびそれらの誘導体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、該誘導体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸、ならびに/またはSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、本発明1002の免疫原性組成物。
[本発明1004]
SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6、およびそれらの誘導体のアミノ酸配列のうちの1つによってコードされるポリペプチドを含む組成物の免疫学的に有効な量を、哺乳類に投与する段階であって、該誘導体が、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸、ならびに/またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、段階
を含む、該哺乳類においてマラリアに対する免疫応答を誘導する方法。
[本発明1005]
前記哺乳類がヒトである、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記方法が、マラリアに対する1回または複数回のプライミング免疫化またはブースティング免疫化を哺乳類に行う段階をさらに含み、該プライミング免疫化および該ブースティング免疫化が、組換えポリペプチドの免疫学的に有効な量を含み、該組換えポリペプチドが、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6、およびそれらの誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含み、該誘導体が、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸、ならびに/またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、本発明1004の方法。
[本発明1007]
前記ポリペプチドを発現させるために好適な発現ベクターを哺乳類に導入する段階であって、該好適な該発現ベクターが、プラスミド、複製ウイルスベクター、および非複製ウイルスベクターからなる群より選択される、段階
によって、本発明1001の組成物の免疫学的に有効な量を該哺乳類に投与する方法。
[本発明1008]
前記哺乳類がヒトである、本発明1007の方法。
[本発明1009]
プラスミド、複製ウイルスベクター、および非複製ウイルスベクターからなる群より選択される好適な発現ベクターによって、前記組換えポリペプチドが発現する、本発明1001の免疫原性組成物。
[本発明1010]
DNAプラスミド、バキュロウイルス、VSV、MVA、GD46、アルファウイルスレプリコン、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、イヌジステンパーウイルス、黄熱病ウイルス、レトロウイルス、RNAレプリコン、DNAレプリコン、アルファウイルスレプリコン粒子、ベネズエラウマ脳炎ウイルス 、セムリキ森林ウイルス、およびシンドビスウイルスからなる群より選択される好適な発現ベクターによって、前記組換えポリペプチドが発現する、本発明1001の免疫原性組成物。
[本発明1011]
前記組成物が、組換えポリペプチドを発現する好適な発現ベクターを通して投与され、該好適な発現ベクターが、DNAプラスミド、バキュロウイルス、VSV、MVA、GC46、SpyVLP、アルファウイルスレプリコン、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、イヌジステンパーウイルス、黄熱病ウイルス、レトロウイルス、RNAレプリコン、DNAレプリコン、アルファウイルスレプリコン粒子、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、およびシンドビスウイルスからなる群より選択される、本発明1004の方法。
[本発明1012]
SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:6、およびそれらの誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含む組換えポリペプチドであって、該誘導体が、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸、ならびに/またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:6のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチド
を含み、
乾燥粉末である、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。
[本発明1013]
前記乾燥粉末が、薬学的に許容される担体中への懸濁または薬学的に許容される担体中での再構成の後に哺乳類への投与に好適である、本発明1012の免疫原性組成物。
本発明者は、マラリアに対する防御的な免疫を与えるためには前赤内期のタンパク質が重要であることを決定付けた。マラリア原虫ゲノムの配列決定後、比較的多数のマラリア遺伝子が同定されているにも関わらず、マラリア原虫の比較的複雑な生活環によって、ワクチン候補の決定は大幅に阻まれている。さらに、抗原性においても機能的にも、マラリア原虫の多くの遺伝子は十分に明らかにされていない。
ヒトマラリアワクチンにおいて使用するための、新規で高度に防御的な前赤内期(PE)プラスモディウム・ヨエリ(Py)抗原、そのヒトオルソログが同定される。この抗原は、使用される命名法によってPlasmoDB ID10:PY06306、またはPY17X_0210400、PYYM_0211900またはID:2121.m00052として同定される。該抗原は、本明細書において開示される臨床検査では簡略表記としてE140またはPyE140とも呼ばれる。新規の該抗原は、原虫のスポロゾイト、肝臓期、および血液期において高度に発現し、P.ヨエリ放射線弱毒化スポロゾイト(RAS)によって免疫化されたマウスにおけるCD8+ T細胞の反応を誘導する。それは、抗原特異的ワクチン免疫化後に強い抗体反応および細胞性免疫応答を生じ、単独で、および他の抗原と組み合わせて、マウスの71~100%を感染性P.ヨエリのスポロゾイトおよび血液期曝露から無菌的に防御する。最初に、ワクチン開発のための抗原同定のプラットフォームとして、P.ヨエリ前赤内期抗原をRAS免疫化マウス由来のT細胞に対するその反応性についてスクリーニングした。この工程は同定、クローニング、DNAプラスミド(VR1020)の作製、スクリーニング、およびマウスを防御する能力についてのPy抗原の評価に関与した。マウスモデルがヒトオルソログでの成功の予測因子であることは十分に認識される。PY06306抗原をコードする遺伝子をワクチン開発のための前赤内期標的として同定し、部分的な遺伝子をクローニングした。その後の実験から、タンパク質がP.ヨエリ RASにより免疫化されたマウスで生じた脾細胞からのサイトカイン(IFN-γ)反応をリコールできることが確定された。このデータから、RAS免疫応答および防御にPY06306抗原が関与していること、従ってヒトにおける前赤内期ワクチンとしての価値が示唆されることの強力な証拠が提供された。
マウスにおける防御試験のために、PY06306抗原を発現する2つのワクチン試薬を作製した。これらの試薬は全長遺伝子を用いて作製した:VR1020プラスミドにおけるDNAワクチン(PY06306-E140)およびアデノウイルスセロタイプ5におけるDNAワクチン(AdE1(t.PY06306)E3(10X)E4(TIS1))。感染性Pyスポロゾイト曝露からマウスを無菌的に防御できる、抗原の免疫応答を誘導する能力を評価することを意図した2つの別個の動物マトリックス試験において、PY06306抗原のワクチン潜在能についての根拠が示される。スポロゾイト曝露14日後または17日後まで、試験されたマウスの血中に原虫が存在しないことによって無菌的防御を評価した。DNAワクチンを用いたプライミング(100μg、IM)および6週後のアデノウイルスセロタイプ5構築物(1010PU、IM)を用いたブースティングからなるレジメンによって非近交系 CD1マウスを免疫化した。P.ヨエリ スポロゾイト周囲タンパク質(PyCSP)を含めてまたは含まないで、新しい他のPy前赤内期抗原を加えてPY06306抗原を試験するために、3抗原組み合わせ戦略(マトリックスと命名)を採用した。
共通要素である抗原としてPY06306を有する幾つかの抗原組み合わせを評価するために、第二の試験(マトリックスデコンボリューション実験2)が計画された。実験型式および免疫化は第一のマトリックス実験について記載されるものと同じレジメンに従った。図1および図2では、PY06306(E140)抗原を含む全ての抗原組み合わせについて、防御されたマウスが71%~100%に渡る著しく高い有効性が示される。全体として、PY06306免疫化マウスの89%(137/154)がマラリア感染から防御された。PY06306ワクチン単独では71%の防御がもたらされ、PyCSP単独群での36%と比較して有意に高かった。さらに、図3において示されるように、非防御マウスの寄生虫血症の発症において実質的な遅延があった。PY06306免疫化群からの血液塗抹標本データの詳細な解析から、非防御マウスの4分の3がスポロゾイト曝露7日、10日、および12日後にマラリア陽性となったことが示される。これは、スポロゾイト曝露5日後までに全ての非防御マウスがマラリア陽性となったPyCSP、4×ヌル、およびナイーブ群の寄生虫血症の発症と比較した場合に有意である。
PY06306抗原は、個々のマウスによって、P.ヨエリのスポロゾイト期に対する高い抗体価、そして血液期に対する低い抗体価を誘導する。この証拠はマトリックスデコンボリューション実験2におけるマウスからのプール血清で測定された、原虫のスポロゾイトおよび血液期の双方に対する免疫蛍光(IFA)抗体価を挙げている図4(PY06306群)において示される。要約すると、組み合わせ群を含む、PY06306によって免疫化された全群において抗スポロゾイト抗体が検出され、それにより、PY06306抗原の免疫原性が裏付けられる。力価は1:5,120から1:20,480までの範囲に渡る。P.ヨエリ PY06306による免疫化によって誘導された抗体は、P.ベルゲイ スポロゾイトに交差反応する。PY06306単独によって免疫化されたマウスにおける高い抗体価(1:5,120)の検出から、PY06306抗原がスポロゾイトに対する抗体を誘導することが示される。
さらなる試験から、PY06306免疫化マウスでは、脾臓においてIFNγを発現する10%超のCD8+ T細胞、およびより少ない(0.6%未満の)CD4+ T細胞が認められることが確認された。肝臓においては5%~16.2%の範囲の数値が認められた。有効性の高い防御は、第二のスポロゾイト曝露後11週間続いた。T細胞除去によって、マウスにおける防御には高レベルのE140特異的T細胞は必要でないことが示される。さらに、PY06306による免疫化は、脾臓および肝臓においてIFNγを発現する高レベルのCD8+ T細胞を誘導する。CD1マウスおよびBALB/cマウス双方への抗PY06306血清移植によって、寄生虫血症の発症が有意に遅延した。またE140-血清レシピエントマウスでは、PY06306によって免疫化された防御マウスと比較して有意に低いIFA力価が認められた。スポロゾイト曝露以前に採取されたPY06306血清は、スポロゾイトのみに反応する。しかし、曝露後、数個体の防御マウスでは血液期に対するIFA陽性抗体が生じていた。
図9はインビボのT細胞除去についての試験の結果を示す。非近交系CD1マウス数群を免疫化した。T細胞除去は、標準プロトコールに従ったT細胞特異的モノクローナル抗体の注射によって行った。マウスをその後、300個のP.ヨエリ スポロゾイトに曝露し、曝露19日後まで薄層血液塗抹標本において原虫が存在しないことによって防御を評価した。T細胞を除去された全てのPY06306免疫化マウスが防御され、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の双方ともPY06306による防御には必要ではないことが確証された。CD4/CD8群の非防御マウスの一例では、スポロゾイト曝露13日後において血中にマラリアが検出されたが、他の全てのマウスでは5日後に塗抹標本で陽性が認められた。免疫化マウス70例のうち総計68例のマウスが防御され、全体として97%の有効性であった。この試験によって、スポロゾイト曝露からの前赤内期抗原によって誘導される防御がT細胞に依存しないという驚くべき機序が確証された。
図10Aおよび10Bは、CD1マウスおよびBALB/cマウスにおける血清移植試験を示す。この試験によって、PY06306(E140)によって誘導される防御における抗体の役割が確証された。試験計画は、PY06306免疫化 CD1マウスおよびBALB/cマウスから血清を採取し、ナイーブ個体に移植し(比率1:1)、その後P.ヨエリ スポロゾイトに曝露するという、標準的な血清移植プロトコールに従った。血清移植は2日間に渡って;スポロゾイト曝露の24時間前および6時間前に行われた。図10AにおいてはCD1マウスについて、そして図10BにおいてはBALB/cマウスについての防御の結果が示される。図10Aおよび10Bは、PY06306ワクチンによって免疫化されたマウスからの血清と共に無菌的防御は移されなかったことを示す(CD1では7%(14例のうち1例)およびBALB/cでは0%(14例のうち0例))。PY06306血清レシピエントの全ての非防御マウス(点線)においては、同じ試験における他のいずれの群と比較しても寄生虫血症の発症に統計的に有意な遅延があった(Mantel-Cox***、p=0.0001)。これにより、抗PY06306抗体は血中の原虫の発育に対して有効な抑制効果があり、防御における一役を担うことが確証される。ドナーのCD1マウス(1:7,994)およびBALB/cマウス(1:18:549)と比較してレシピエントのCD1マウス(1:2,560)およびBALB/cマウス(1:575)における抗体価が有意に低いことは、なぜこれらのマウスが曝露から防御されなかったのかを説明するものである。
PY06306免疫化ナイーブマウスの脾臓および肝臓においてはPY06306特異的CD8 T細胞が認められる。PY06306は大分子であるという事実から、15 merの重複ペプチドをタンパク質全体に渡る2つのプール;PY06306のN-末端からのペプチドを含有するプールAおよびC-末端からのプールBに分けた。インターフェロンγ(IFNγ)を発現するCD8+細胞についてゲーティングしたフローサイトメトリーによってT細胞を測定し、総T細胞集団に対するパーセンテージとして表した。データは、プールAからのペプチドのみがIFNγCD8細胞をリコールできることを示し、PY06306 T細胞エピトープが抗原のN-末端に限定される可能性が高いことが確認される。PY06306免疫化マウスの脾臓(平均18%)および肝臓(平均11%)の双方について、IFNγを発現する非常に高いレベルのCD8+ T細胞が検出された。細胞内サイトカイン染色法のために、標準プロトコールを用いてPY06306免疫化マウスおよびヌル免疫化マウスから得られた脾細胞および肝臓に内在するT細胞を調製し、その後、最終濃度2μg/mlのPY06306(E140)ペプチドプールAおよびBによって6時間刺激した。LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いてデータが得られ、FlowJo(Tree Star Inc.)を用いて解析された。
PY06306抗原はスポロゾイト曝露からBAB/c系マウスを効果的に防御する。ある用量のDNAによって1群当たり14個体のBALB/cマウスを免疫化し、PY06306、PY06306+PyCSP、およびPyCSPをコードするアデノウイルス5によってブースティングした。陰性対照マウス群としてヌル免疫化マウスおよびナイーブマウスを使用した。感染性P.ヨエリの100スポロゾイトに全てのマウスを曝露し、曝露後17日間、ギムザ染色薄層塗抹標本で寄生虫血症についてモニタリングした。曝露されると、全て(100%)のPY06306免疫化マウスが無菌的に防御された(PY06306およびPY06306+PyCSP)一方、PyCSPでは57%が防御された。従って、PY06306は近交系マウスを防御することができ、PyCSP抗原と混合してもPY06306の防御は阻害されない。
図11は、血液期曝露からのPY06306防御を示す。PY06306抗原単独、およびPyファルスタチンとの組み合わせは、10,000個の血液期原虫を用いたストリンジェントな曝露からマウスを防御する。この試験においては、マウスをPY06306単独およびPyファルスタチンとの組み合わせによって免疫化し、P.ヨエリ感染赤血球に曝露した。双方のマウス群は100%無菌的に防御された(黒色および灰色の棒グラフ)。Pyファルスタチン抗原はPY03424としても知られる。血液期曝露からの防御は、マラリアワクチンにとって価値のある特徴といえる、PY06306ワクチンにより誘導される第二段階の防衛を提供するものである。
図12は、コドン最適化アデノウイルス5による防御を示す。この試験では、哺乳類細胞における発現のために設計されたコドン最適化(co)PY06306遺伝子を用いて作製したアデノウイルス5構築物の評価を行った。PY06306の天然型コドン配列における変化はAd5ウイルスによって発現されたアミノ酸配列を変えなかった。試験では天然型(na)およびコドン最適化(co)アデノウイルス5構築物によって発現されたPY06306タンパク質のインビトロでの発現を調べ、比較した。マウスポリクローナル血清を用いたプロービング後のcoPY06306 Ad5は、天然型構築物と比較してはるかに高いレベルのPY06306タンパク質を発現する。第一のマウス群においては、天然型(na)およびコドン最適化PY06306 Ad5の双方について、10^10、10^9、10^8および10^7 PU/用量に渡ってブースティング用量を漸減した。これら8群の全てのマウスは同じcoPY06306 DNAワクチン用量(100μg)によってプライミングし、様々な用量のnaPY06306(黒色棒グラフ)またはcoPY06306(灰色棒グラフ)Ad5構築物のいずれかによって筋肉内投与(IM)でブースティングした。全体的な有効性から、CD1マウスではcoPY06306 Ad5ワクチンでより高い防御(100%、100%、86%および93%)が誘導されるのと比べて、同じAd5用量のna PY06306ではより低い防御(86%、93%、86%および71%)が認められることが示される。該試験ではまた、Ad5の投与について皮下(SC)経路と静脈内(IV)経路の比較も行った。SC経路ではna PY06306ワクチンおよびco PY06306ワクチンの双方について同様の防御レベル(各々50%および57%)がもたらされた。IV経路でのco PY06306 Ad5の投与では100%の無菌的防御の結果が得られた一方、na PY06306 Ad5では79%であった。na PY06306 Ad5について、IV経路では79%の無菌的防御が認められた一方、皮下経路では50%であった。co PY06306 Ad5の単回用量によって免疫化されたマウス群では93%の無菌的防御が誘導されたのと比べて、na PY06306ワクチンでは29%であった。これらのマウスはDNAワクチンのプライミングを受けていなかった。全ての防御試験は動物試験プロトコールD02-09および14-IDD-13の下に行われた。
図13は、熱帯熱マラリア原虫PFA0205w(E140オルソログ)はマウスにおいて免疫原性であることを示す。PFA0205w(aka PF3D7_0104100)について4つのワクチン試薬を作製した。それらは、VR1020 DNAワクチン構築物、ヒトアデノウイルス5構築物、タンパク質発現プラスミドpEU-E01-GST、およびpEU-E01-Hisである。マウスの免疫化のために大規模でDNAワクチンおよびAd5を作製した。NMRCにおいてコムギ胚芽無細胞システムによって小規模で組換えタンパク質を作製した。CD1マウスおよびBALB/cマウスの双方を図13において示されるような様々なプライム-ブーストレジメンを用いて免疫化した。Ad5プライムおよび組換えタンパク質ブーストが最も免疫原性の高いレジメンであり、熱帯熱マラリア原虫の血液期とスポロゾイト期の双方に対して1:4,000までのIFA力価を誘導した。PFA0205wアデノウイルス5の単回用量で原虫に対する抗体が誘導される。これにより、組換えウイルス(アデノウイルス5)の単回用量としての、またはAd5-タンパク質レジメンを用いたプライム-ブーストとしてのPFA0205wがワクチン製剤として見込みがあることが確証される。
図14は熱帯熱マラリア原虫E140(PFA0205w)がヒトにおいて免疫原性であることを示す。放射線弱毒化スポロゾイト(RAS)によって免疫化した個々の対象からのT細胞は、PFA0205wペプチドプール(A)を用いた刺激に反応することができた。ペプチド混合物は、PFA0205wタンパク質のN-末端領域のほとんどを包含する15 merの重複ペプチドを含有していた。該タンパク質は大きいため、ペプチドを2つのプールに分けた;PFA0205wタンパク質のN-末端を包含するプールAとC-末端を包含するプールBである。双方のグラフにおけるデータは、ヒトにおいて弱毒化スポロゾイトワクチンを用いた免疫化はCD4 T細胞およびCD8 T細胞の双方を誘導することを示していた。CD4+およびCD8+ T細胞は、前赤内期原虫からのPFA0205w誘導防御における役割を担う。E140免疫化マウスの脾臓および肝臓においては、高レベルのP.ヨエリ E140反応が認められる。
PFA0205w抗原は、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト期およびシゾント期の双方において発現する。CD1マウス血清を用いて、PFA0205wアデノウイルス5によるプライミング、および組換えPFA0205wタンパク質によるブースティングを行うことによって生じたIFA反応性データを得た。血清は熱帯熱マラリア原虫赤血球シゾントについて36時間陽性であり、早期輪状体および栄養体については陰性であった。免疫電子顕微鏡(EM)によって、スポロゾイトにおけるPFA0205w抗原の細胞内局在について決定した。顕微鏡写真の解析から、PFA0205w抗原が熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトの表面およびサイトゾルの双方に局在することが示された。免疫蛍光測定法および免疫電子顕微鏡から、PFA0205w Adeno5によって免疫化され、組換えPFA0205wタンパク質によってブースティングされたCD1マウス由来の血清の反応性が示された。赤血球への侵入約36時間後のNF54熱帯熱マラリア原虫を含む風乾IFAスライドを作製した。血清希釈率1:500でIFAを行い、FITC標識したヤギ抗マウスIgを用いて展開した。免疫電子顕微鏡法のために、感染蚊から熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトを含有する唾液腺を単離した。固定した唾液腺を包埋し、切片化し、電子顕微鏡のグリッドにマウントして、同じ血清およびコロイド金標識抗マウス抗体を用いて染色した。顕微鏡写真からPFA0205w抗原が熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトの表面およびサイトゾルの双方に局在することが確認された。
図15は、PVX_081555(PvE140)が三日熱マラリア原虫スポロゾイト中に発現することを示す。メンブレンフィーダーを用いてアノフェレス・ディラス(Anopheles dirus)蚊に三日熱マラリア感染患者からの血液を与えた。メンブレンフィーディング14日後、100匹の蚊から蚊の唾液腺を抽出した。リン酸緩衝食塩水を含有するマイクロチューブにおいてペッスルを用いて唾液腺を破砕し、三日熱マラリア原虫スポロゾイトを遊離させた。その後唾液腺デブリス-スポロゾイト混合物を遠心分離機にかけ、蚊の唾液腺デブリスを除去し、上清から三日熱マラリア原虫スポロゾイトを新しいマイクロチューブに移した。抽出された三日熱マラリア原虫スポロゾイトを計測し、37℃において18時間、1μgの分子生物学的グレードのトリプシンによって1×106スポロゾイトを酵素分解した。酵素分解後、C8逆相カラムを通してトリプシン分解スポロゾイトペプチドを脱塩し、凍結乾燥した。凍結乾燥トリプシン分解ペプチドを多次元タンパク質同定法(MudPIT)に供し、ワクチン候補となり得る三日熱マラリア原虫スポロゾイトタンパク質を同定した。Sequestアルゴリズムを用いて、ハマダラカ-三日熱マラリア原虫タンパク質の組み合わせ配列データベースに対して、三日熱マラリア原虫スポロゾイトから生じたタンデム質量分析スペクトルを検索した。Sequest検索からのアウトプットファイルをスキャフォールド(Scaffold)タンパク質ビューアーにロードした。三日熱マラリア原虫プロテオームに特異的に合致するタンパク質を強調するために、スキャフォールドプログラムを用いてハマダラカプロテオームに合致する配列をサブトラクションした。MudPITによって同定された三日熱マラリア原虫スポロゾイトタンパク質の各々の存在量を比較するためにスキャフォールドソフトウェアを使用した。所定のタンパク質に合致する質量スペクトル量をそのタンパク質の分子量に正規化するスキャフォールド「定量値」によってタンパク質量が決定された。このMudPIT実験において256個の高信頼三日熱マラリア原虫タンパク質が同定された。三日熱マラリア原虫E140(PVX_081555)は配列決定されたもののうち39番目に量の多い三日熱マラリア原虫スポロゾイトタンパク質であり、5番目に量の多い膜結合性タンパク質であった。比べてみると、やはり原虫膜に結合しているCSPワクチン抗原は、全体として5番目に量の多いタンパク質であり、サンプル中に最も量の多い膜結合性タンパク質であった。この結果は、三日熱マラリア原虫E140が該原虫において最も量の多い膜結合性タンパク質の1つであることを説明するものである。E140の膜結合および量から、それは液性免疫応答の格別な標的となる。
Claims (11)
- SEQ ID NO:3およびその誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含む組換えポリペプチドであって、該誘導体が、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したアミノ酸を有し、かつSEQ ID NO:3との少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチド;
薬学的に許容される担体;ならびに
アジュバント
を含む、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。 - 薬学的に許容される担体中の2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドの組み合わせであって、該2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドのうちの第一の組換えポリペプチドが、SEQ ID NO:3およびその誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含み、該誘導体が、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したアミノ酸を有し、かつSEQ ID NO:3との少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチドの組み合わせ;
薬学的に許容される担体;ならびに
アジュバント
を含む、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。 - 前記2つまたはそれ以上の組換えポリペプチドのうちの第二の組換えポリペプチドが、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、およびそれらの誘導体からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、該誘導体が、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9のうちの1つの少なくとも10個の連続したアミノ酸を有し、かつSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:9のうちの1つとの少なくとも85%の同一性を有する、請求項2に記載の免疫原性組成物。
- 哺乳類においてマラリアに対する免疫応答を誘導するための医薬の製造における、SEQ ID NO:3およびその誘導体のアミノ酸配列のうちの1つによってコードされるポリペプチドの使用であって、該誘導体が、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したアミノ酸を有し、かつSEQ ID NO:3との少なくとも85%の同一性を有する、使用。
- 前記哺乳類がヒトである、請求項4に記載の使用。
- マラリアに対する1回または複数回のプライミング免疫化またはブースティング免疫化を哺乳類に行うために使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
- プラスミド、複製ウイルスベクター、および非複製ウイルスベクターからなる群より選択される好適な発現ベクターによって、前記組換えポリペプチドが発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
- DNAプラスミド、バキュロウイルス、VSV、MVA、GC46、SpyVLP、アルファウイルスレプリコン、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、イヌジステンパーウイルス、黄熱病ウイルス、レトロウイルス、RNAレプリコン、DNAレプリコン、アルファウイルスレプリコン粒子、ベネズエラウマ脳炎ウイルス 、セムリキ森林ウイルス、およびシンドビスウイルスからなる群より選択される好適な発現ベクターによって、前記組換えポリペプチドが発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
- 哺乳類においてマラリアに対する免疫応答を誘導するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを発現する好適な発現ベクターであって、DNAプラスミド、バキュロウイルス、VSV、MVA、GC46、SpyVLP、アルファウイルスレプリコン、アデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルス、イヌジステンパーウイルス、黄熱病ウイルス、レトロウイルス、RNAレプリコン、DNAレプリコン、アルファウイルスレプリコン粒子、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、およびシンドビスウイルスからなる群より選択される、ベクター。
- SEQ ID NO:3およびその誘導体のアミノ酸配列のうちの1つを含む組換えポリペプチドであって、該誘導体が、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したアミノ酸を有し、かつSEQ ID NO:3との少なくとも85%の同一性を有する、組換えポリペプチド
を含み、
乾燥粉末である、マラリアから哺乳類を防御するための免疫原性組成物。 - 前記乾燥粉末が、薬学的に許容される担体中への懸濁または薬学的に許容される担体中での再構成の後に哺乳類への投与に好適である、請求項10に記載の免疫原性組成物。
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