JP7259606B2 - 床材、床用材の施工方法、床構造 - Google Patents
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しかし、従来の床材は、接着剤や釘を用いて土台となる下地等に固定するので、作業が難しく、施工する場合に時間もかかり、また、施工時に固定位置のズレや誤差、床材の種類の間違いや汚染、床材への破損の発生等の不具合があった場合も簡単に不具合を修正することは難しかった。
特に、衝撃吸収作用を備えた特許文献1のような床材は、一般に高価であり、その点でも、施工時の貼り直し、及び改装等における貼り直しが可能であることが望ましい。
さらに、特許文献2に開示されている手法によって作製されたマイクロ吸盤膜は、マイクロ吸盤の形成されている状態が表面と裏面とで大きく異なり、取り扱い難く、利用形態が限られるものであった。
図1は、本発明による床材の第1実施形態を示す図である。
なお、実写の図5及び図6並びに図8~図11を除いて、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本体部10は、基材層101と、第1接着層102と、緩衝材層103と、第2接着層104と、化粧層105とがこの順で積層されている。
化粧層105を形成する樹脂としては、例えば、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂(スチレンブタジエンゴム)、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、ポリノルボルネン、ポリブタジエン、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンアクリルゴム、ポリエステルエラストマー、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン;ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、及びポリスチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、上記例示した樹脂以外を用いてもよい。
なお、被着体50とは、各種建築物の床に於いて、本発明の床材を貼付けて施工する対象となる部分であり、施工対象となる建築物の床を構成する最表面の部材乃至躯体を意味する。被着体の材質としては、木材、石材、セメント乃至コンクリート、陶磁器乃至セラミックス、樹脂、金屬等が用いられる。
粘着層13は、例えば、特許文献2(特開2017-36404号公報)に開示されている液状の樹脂組成物(アクリルエマルジョン)を用いて後述する製造方法により形成される。粘着層13の層厚tは、1μm以上、500μm以下であることが望ましい。上記層厚範囲の下限値を下回ると、凹形状の形成が困難になったり、凹形状の大きさが小さくなりすぎて、粘着(吸着)特性が低下したりする。また、上記層厚範囲の上限値を越えると、粘着層13の柔軟性が低下して、作業性が悪くなる。
さらに、粘着層13の両面に凹形状13aを均等に設けるためには、粘着層13の層厚tは、20μm≦t≦60μmの範囲とすることが望ましい。この点については、後述する。
また、剥離性基材シート14としては、市販のものを使用してもよく、例えば、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP-PET-01)等が挙げられる。
紙系の剥離性基材シートとしては、住化加工紙SLK製のSLK-110WH3(PE/上質105g/PE/シリコーン)などが好ましい。
上述した床材1は、図2(a)に示すように、剥離性基材シート14を備えている。床材1を被着体50に貼り付けるときには、剥離性基材シート14を剥離する(図2(b))。そして、露出した粘着層13を被着体50に貼り付けて、その表面に適度な圧力を加えることにより、粘着層の露出面に多数存在する凹形状13aが弾性変形することにより従来のマイクロ吸盤と同様な作用によって被着体50に対して吸着(粘着)することとなり、床構造が完成する(図2(c))。
すなわち、凹形状13aの周囲の弾性変形によって、凹形状13aには、変形状態から元の形状に戻ろうとする力が働く。この力により、凹形状13a内の密閉空間が負圧となって、被着体50への吸着作用が生じる。なお、凹形状13a単体での吸着力は、弱いものであるが、多数の凹形状13aが形成されているので、全体としては必要な吸着力を確保できる。また、粘着層13の作製時に、凹形状13aが含まれる量を、例えば、密度をパラメータとして調整すれば、粘着層13の粘着力(吸着力)を調整可能である。
図3は、床材1の製造装置を示す図である。
図4は、床材1の製造方法を説明する図である。
以上のように、本実施形態の床材1の製造では、本体部10に粘着層13形成時の熱によるダメージを与えることなく、床材1を効率よく製造可能である。なお、床材は、その後、必要なサイズに裁断されてもよい。また、基材層101が巻き取り可能な柔軟性を備えたシート状の素材を用いている場合には、完成した床材1をロール状に巻き取ってもよい。
実施例の床材1では、剥離性基材シート14に離型性を備えた2軸延伸PETフィルム上に、200μmのクリアランス(塗工間隙)を有するコンマコータを用いて泡立て工程済みの気泡含有組成物130を塗布した。これを100℃の乾燥路内で1分間乾燥を行って粘着層13を形成し、本体部10をラミネートして床材1を得た。なお、この場合の粘着層13の密度は、0.39g/cm3であり、厚さ50μmであった。
図5は、実施例の床材1の粘着層13を被着体側の方向からみて拡大した写真である。
図6は、実施例の床材1の粘着層13のシート面に直交する方向の断面で拡大した図である。
図5及び図6に示すように、粘着層13には、多数の凹形状13aが形成されていることが確認できる。
比較例2として、アクリル樹脂である綜研化学社製:SK2094を用いて粘着層を作製した床材(アクリル粘着Aタイプとする)を用意した。
比較例3として、アクリル樹脂である綜研化学社製:SK1502Cを用いて粘着層を作製した床材(アクリル粘着Bタイプとする)を用意した。
図7は、実施例及び比較例の剥離力を示す図である。
図7中の剥離力は、引っ張り試験機を用いて、引っ張り速度300mm/minで180°剥離を行って、そのときの剥離力を測定した結果である。また、剥離力の測定は、貼り付け直後(0時間)と、貼り付け後1000時間経過とについて行った。
比較例1は、小片であれば比較的小さな剥離力で剥離できるが、大サイズの場合は剥離にある程度の力が必要であった。また、剥離後には被着体表面に粘着層の残留が見られ、完全な再貼り付けは不可能であった。
比較例2は、大サイズの場合は剥離にある程度の力が必要であり、貼り付け直後であれば、剥がすことは可能であるが、1000時間経過後では、剥離力が大幅に上昇してしまっており、手作業では剥離が困難であったり、無理に剥がすと本体部10又は被着体が破損したりするおそれがある状態になっていた。
比較例3は、貼り付け直後から剥離力が大きすぎて、手作業では剥離が困難であったり、無理に剥がすと本体部10又は被着体が破損したりするおそれがある状態になっていた。
また、比較例2及び比較例3のいずれも、剥離後は、被着体に粘着材が一部残ってしまったり、粘着力の低下があったりして、再貼り付けには適していなかった。
上述したように、本発明において、粘着層13の凹形状13aが、粘着力に大きな影響を与える。凹形状13aが粘着層13の両面に均等に設けられていないと、粘着層の一方の面が他方の面に比べて粘着力(吸着力)が低下、又は、増加してしまうおそれがある。また、凹形状13aが粘着層13の両面に均等に設けられることにより、粘着層13の物理的性質も均質になり、本体部と剥離性基材シート、又は、本体部と被着体との両者に対する十分な粘着力及び被着体との再剥離性の発現の上でも好ましい。
検証実験として、4種類の粘着層のサンプルを作製し、その両面の凹形状13aをSEMで観察した。サンプルは、以下の4種類である。
サンプル1:粘着層の層厚t=25μm
サンプル2:粘着層の層厚t=40μm
サンプル3:粘着層の層厚t=60μm
サンプル4:粘着層の層厚t≒2000μm
なお、上記サンプルの層厚は、乾燥後の層厚である。また、サンプル1~3については、コーターを用いてガラス面に発泡処理後の気泡含有組成物を塗工し、100度の乾燥炉を用いて乾燥処理を行なった。サンプル4については、ガラス面への滴下塗布とし、常温下(室温20°C)の自然乾燥とした。なお、サンプル4について乾燥条件を変えたのは、特許文献2における常温乾燥で十分であるとの記載についても検証するためである。また、いずれのサンプルも、発泡処理後の粘着層の密度は、0.4g/cm3とした。
図9は、サンプル2の観察結果を示す図である。
図10は、サンプル3の観察結果を示す図である。
図11は、サンプル4の観察結果を示す図である。
図8から図9のように、粘着層の層厚tを管理し且つ加熱乾燥したサンプル1からサンプル3については、微細な凹形状13aが両面に均等に形成されていることが確認できた。
これに対して、図11に示す膜厚が厚いと共に常温乾燥したサンプル4では、乾燥面とガラス側面とで凹形状13aの大きさに極端な差異が認められ、特許文献2の図2と同様な結果が得られた。
よって、粘着層13の両面に凹形状13aを均等に設けるためには、粘着層13の層厚tは、20μm≦t≦60μmの範囲とすることが望ましいと判断できる。
本体部10側(緩衝材層103側)の面に開口する凹形状13aの各開口部の直径の平均値をDave 1とし、剥離性基材シート14側(緩衝材層103とは反対側)に開口する凹形状13aの各開口部の直径の平均値をDave 2としたときに、
|Dave 1-Dave 2|/Dave 2≦0.5
の関係を満たすことが望ましい。
また、
|Dave 1-Dave 2|/Dave 2≦0.25
の関係を満たすことがさらに望ましい。
これらの関係を満たすことにより、粘着層の両面における粘着力の差異を少なくすることができ、また、本体部10と剥離性基材シート14、又は、本体部10と被着体との両者に対する十分な粘着力及び被着体との再剥離性を良好に発現させることができる。
例えば、床材1を張り付ける被着体或いは剥離性基材シート14と粘着層との間の粘着力が強過ぎる場合には、床材1を剥がすときに、本体部10と粘着層13との界面で剥離してしまう(所謂「糊残り」を生じる)おそれがある。このような場合には、あらかじめ被着体側に粘着力を弱めるプライマー処理を行うことにより、粘着力のバランス調整を容易に行うことが可能である。
又、本体部10と粘着層13との間の粘着力が弱過ぎる場合には、やはり、床材1を剥がすときに、本体部10と粘着層13との界面で剥離してしまうおそれがある。このような場合には、予め本体部10側に粘着力を強めるプライマー処理を行うことにより、粘着力のバランス調整を容易に行うことが可能である。
なお、各開口部の直径の平均値の求め方としては、上述した手法は、一例であって、実際の粘着層13の形態に応じて、適宜最適化することが望ましい。例えば、極端に直径が大きな開口部や、開口形状が歪んだ開口部等の特異な開口部については、平均値の演算から除外するとよい。また、直径が大きい開口部から順に3個をサンプルとせずに、直径が大きい開口部から順に3個までは除外して、それ以降の大きさの開口部について、平均値の演算のサンプルとしてもよい。また、サンプルの数Nも、3個よりも多くして精度を向上してもよい。特異な開口部形状を含む場合の他、開口部の直径の分散σ(バラツキ)が大きい場合については、サンプル数Nは、i=1又は2として、N個の開口部直径の数値を平均値Davgi(N)をN個のサンプルデータを別のデータに変えながら複数個求めた場合のDavgi(N)の値の分散σi(N)が所望の精度に收束するに足るような大きさのサンンプル数Nを決定すればよい。一般的には、Nは多い程分散σi(N)が小さくなる(收束する)為、好ましいが、Nの増加に伴い測定と計算とが煩雜となる。通常は、本発明の粘着層の開口部の場合、N=5~100、より好ましくはN=10~30が平均値の精度(收束性)と測定、計算の手間とのバランンスの点から好ましい。
また、粘着層13の粘着力は、凹形状13aの吸着力によるものであるから、リワーク性が高く、貼り付けを失敗したとしても張り直しが容易であり、使い勝手がよい。
さらに、凹形状13aは、微細なサイズであって多数設けられていることから、被着体の表面に多少の凹凸が有ったとしても、粘着力(吸着力)を発揮することができる。
さらにまた、床材1を剥がした後の被着体の表面には、糊残りのような現象は発生しないことから、清掃の必要がなく、そのまま再貼り付けを行うことができ、作業性が良好である。
また、本実施形態の床材1は、加熱することなく粘着層13を形成可能であることから、熱に弱い本体部10を含め、様々な形態の本体部10を利用して粘着シートを構成することが可能である。
図12は、本発明による床材の第2実施形態を示す図である。
第2実施形態の床材1Bは、本体部10Bの構成が、第1実施形態の床材1における第2接着層104と、化粧層105とが設けられていない点で異なる他は、第1実施形態の床材1と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態の床材1Bは、図13(a)に示すように、剥離性基材シート14を備えている。床材1Bを被着体50に貼り付けるときには、剥離性基材シート14を剥離する(図13(b))。そして、露出した粘着層13を被着体50に貼り付けて、その表面に適度な圧力を加えることにより、粘着層の露出面に多数存在する凹形状13aが弾性変形することにより従来のマイクロ吸盤と同様な作用によって被着体50に対して吸着(粘着)することとなる(図13(c))。ここまでの工程は、第1実施形態の床材1の場合と同様である。
第2実施形態では、被着体50に貼り付けられた床材1Bの上にさらに化粧シート200を貼り付ける。
化粧シート200は、図14(a)に示すように、化粧層205と、化粧シート粘着層213と、剥離性基材シート214とがこの順に積層されている。
化粧シート粘着層213は、第1実施形態の粘着層13と同様な構成の粘着層である。すなわち、化粧シート粘着層213は、両面に気泡に基づく凹形状が複数形成されている。また、化粧シート粘着層213は、化粧層205側の面に開口する凹形状の各開口部の直径の平均値をDave 1とし、化粧層205とは反対側に開口する凹形状の各開口部の直径の平均値をDave 2としたときに、
|Dave 1-Dave 2|/Dave 2≦0.5
の関係を満たす。
また、化粧シート粘着層213についても、
|Dave 1-Dave 2|/Dave 2≦0.25
の関係を満たすことがさらに望ましい。
図15は、本発明による床材の第3実施形態を示す図である。
第3実施形態の床材1Cは、第2実施形態の床材1Bをさらに簡素な構成としたものである。よって、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
また、第3実施形態の床材1Cを施工(貼り付け)した後は、第2実施形態と同様に、その上にさらに化粧シート200等を貼り付けて、意匠性を高めることができる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
10、10B 本体部
13 粘着層
13a 凹形状
14 剥離性基材シート
50 被着体
101 基材層
102 第1接着層
103 緩衝材層
104 第2接着層
105 化粧層
113 粘着層
130 気泡含有組成物
200 化粧シート
205 化粧層
213 化粧シート粘着層
214 剥離性基材シート
301 攪拌機
302 配管
303 塗工裝置
304 乾燥裝置
305 ラミネート裝置
Claims (10)
- 緩衝材層と、
前記緩衝材層の裏面側に積層された粘着層と、
を備え、
前記粘着層は、その両面に複数の凹形状を備えており、
前記凹形状は、前記粘着層の両面に均等に形成されており、
前記緩衝材層側の面に開口する前記凹形状の各開口部の直径の平均値をDave 1とし、前記緩衝材層とは反対側に開口する前記凹形状の各開口部の直径の平均値をDave 2としたときに、
|Dave 1-Dave 2|/Dave 2≦0.5
の関係を満たす床材。 - 請求項1に記載の床材において、
前記粘着層の層厚tは、20μm≦t≦60μmの範囲にあること、
を特徴とする床材。 - 請求項1又は請求項2に記載の床材において、
前記粘着層は、気泡を含有する液状の樹脂組成物を硬化したものであり、
前記気泡に基づく前記凹形状が両面に複数形成されていること、
を特徴とする床材。 - 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の床材において、
前記粘着層は、密度が0.1g/cm3以上、0.7g/cm3以下であること、
を特徴とする床材。 - 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の床材において、
前記緩衝材層と前記粘着層との間に設けられた基材層を有すること、
を特徴とする床材。 - 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の床材において、
前記緩衝材層の表面側に積層された化粧層を有すること、
を特徴とする床材。 - 請求項1から請求項6までのいずれかに記載の床材を、前記粘着層を被着体に対して加圧することにより接合させる床材の施工方法。
- 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の床材を、前記粘着層を被着体に対して加圧することにより接合させ、
さらに、前記緩衝材層の表面側に化粧シートを積層させる床材の施工方法。 - 請求項8に記載の床材の施工方法であって、
前記化粧シートは、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の粘着層と同等な構成の化粧シート粘着層を備えていること、
を特徴とする床材の施工方法。 - 請求項1から請求項6までのいずれかに記載の床材と、
前記粘着層が接合した被着体とを備える床構造。
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