以下に、実施の形態にかかる搬送システムを図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる搬送システム1の構成例を示す図である。搬送システム1は、物の搬送に使用されるシステムである。実施の形態1では、搬送システム1は、物が載せられた搬送体を移動させることによって、物を搬送する。
搬送システム1は、複数の搬送路ユニット11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hと、コントローラ12と、直流(Direct Current:DC)電源13と、台車16A,16B,16Cとを備える。以下の説明では、搬送路ユニット11とは、搬送路ユニット11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hの各々を区別せずに称したものとする。
複数の搬送路ユニット11は、互いに連結されており、搬送体が移動する搬送路10を構成する。複数の搬送路ユニット11は、搬送体へ動力を与えることによって搬送体を移動させる。台車16A,16B,16Cの各々は、搬送体である。以下の説明では、台車16とは、台車16A,16B,16Cの各々を区別せずに称したものとする。
図1に示す搬送路10は、環状である。すなわち、図1に示す搬送路10は、閉じた経路である。搬送システム1の搬送路10は、開いた経路、すなわち、始点および終点を有する経路でも良い。
搬送路ユニット11A,11B,11E,11Fは、直線経路を構成する直線型の搬送路ユニット11である。搬送路ユニット11C,11D,11G,11Hは、曲線経路を構成する曲線型の搬送路ユニット11であって、搬送体の進行方向を変化させる。搬送路10は、直線経路を構成する搬送路ユニット11を持たず、曲線経路を構成する搬送路ユニット11のみからなるものでも良い。搬送路10の全体の形状は、任意であるものとする。
台車16は、搬送路10の側面に取り付けられる。台車16は、搬送路10の側面に設けられているガイドレールに沿って移動する。台車16は、搬送路10の側面において移動し、搬送路10の側面において停止する。実施の形態1にかかる搬送システム1は、ムービングマグネット型リニアモータである。台車16は、搬送路10の上面に設けられているガイドレールに沿って移動するものでも良い。台車16は、可動子である永久磁石と、リニアスケール用の永久磁石と、回転によりガイドレール上を移動するガイドローラとを備える。図1では、ガイドレールと、ガイドローラと、可動子である永久磁石と、リニアスケール用の永久磁石との図示を省略する。
図1に示す例では、搬送システム1は、8個の搬送路ユニット11と3個の台車16とを備える。搬送システム1に備えられる搬送路ユニット11の数は任意であるものとする。すなわち、搬送路10を構成する搬送路ユニット11の数は任意であるものとする。搬送システム1は、複数の搬送路ユニット11を備えていれば良い。搬送路10を移動する台車16の数は任意であるものとする。搬送システム1は、1または複数の台車16を備えていれば良い。
搬送システム1は、リニアモータを備えるシステムに限られず、回転型モータを備えるシステムでも良い。搬送システム1は、回転型モータと、回転型モータによって回転するベルトとを備えるベルトコンベアでも良い。ベルトコンベアは、ベルトに載せられたワークを移動させる。搬送システム1は、複数のローラと、ローラを回転させる回転型モータとを備えるローラコンベアでも良い。ローラコンベアは、ローラに載せられたワークを移動させる。
DC電源13は、DC電源バス15を介して各搬送路ユニット11に接続されている。DC電源13は、直流電圧を出力する電源装置または電源回路である。DC電源13は、各搬送路ユニット11へ電力を供給する。各搬送路ユニット11は、DC電源13を共用する。搬送システム1は、マルチドロップ接続により各搬送路ユニット11がDC電源13に接続される構成を備える。各搬送路ユニット11とDC電源13との接続形態は、マルチドロップ接続に限られず、デイジーチェーン接続であっても良い。図1に示す例では搬送システム1に備えられるDC電源13は1個であるが、搬送システム1に備えられるDC電源13の数は複数でも良い。すなわち、搬送システム1には複数の電源ドメインが構成されても良い。
コントローラ12は、データ通信線14を介して各搬送路ユニット11に接続されている。コントローラ12は、複数の搬送路ユニット11の各々を制御する。データ通信線14は、コントローラ12と、複数の搬送路ユニット11の1つである搬送路ユニット11Aとを接続する線と、互いに隣り合う搬送路ユニット11同士を接続する線とにより構成される。搬送システム1は、デイジーチェーン接続により各搬送路ユニット11がコントローラ12に接続される構成を備える。各搬送路ユニット11とコントローラ12との接続形態は、デイジーチェーン接続に限られない。各搬送路ユニット11とコントローラ12との接続形態は、各搬送路ユニット11が通信ハブを介してコントローラ12と接続されるスター接続でも良い。または、搬送システム1は、複数のデータ通信線14を備え、各搬送路ユニット11とコントローラ12とがデータ通信線14により直接接続されても良い。
コントローラ12は、台車16を移動させる位置を示す位置指令を生成し、位置指令に基づいてコイル駆動指令を生成する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11へコイル駆動指令を出力する。各搬送路ユニット11は、コイル駆動指令に従ってコイルを駆動する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11へコイル駆動指令を出力することによって、各台車16の移動を制御する。
各台車16の進行方向は、図1における時計回りの方向、または、図1における反時計回りの方向である。進行方向のうち、図1における時計回りの方向を、順方向とする。進行方向のうち、図1における反時計回りの方向を、逆方向とする。矢印17Aは、順方向を表す。矢印17Bは、逆方向を表す。
コントローラ12には、プログラマブルロジックコントローラといった、コントローラ12よりも上位の制御装置が接続されても良い。かかる制御装置は、シーケンス制御のための指令をコントローラ12へ出力する。コントローラ12には、ヒューマンマシンインタフェースが接続されても良い。かかるヒューマンマシンインタフェースは、オペレータによる入力を受け付ける。また、かかるヒューマンマシンインタフェースは、搬送システム1の状況を示す情報を表示等により出力する。コントローラ12は、上位の制御装置またはヒューマンマシンインタフェースから台車16の運行情報を取得し、運行情報に基づいて位置指令を生成しても良い。運行情報は、搬送路10における複数の台車16の各々の移動についてのスケジュールを示す情報である。
次に、搬送路ユニット11の構成について説明する。ここでは、直線型の搬送路ユニット11を例として、搬送路ユニット11の構成を説明する。曲線型の搬送路ユニット11では、直線型の搬送路ユニット11の場合とはコイルの配置態様が異なる。曲線型の搬送路ユニット11の構成は、コイルの配置態様が異なる点を除いて、直線型の搬送路ユニット11の構成と同様である。
図2は、実施の形態1にかかる搬送システム1に備えられる搬送路ユニット11の構成例を示す図である。図2には、搬送路ユニット11と、台車16に備えられる永久磁石30,31とを示す。永久磁石30は、可動子である永久磁石である。永久磁石31は、リニアスケール用の永久磁石である。
搬送路ユニット11は、複数のコイル20を備える。各コイル20は、動力を発生する駆動部として機能する。図2に示す例では、搬送路ユニット11には9個のコイル20が備えられる。搬送路ユニット11に備えられるコイル20の数は任意であるものとする。直線型の搬送路ユニット11では、複数のコイル20は、直線の方向に配列される。なお、曲線型の搬送路ユニット11では、複数のコイル20は、曲線の方向に配列される。
搬送路ユニット11の各コイル20には、インバータ回路21が接続される。インバータ回路21は、コイル20に流す電流を制御する。インバータ回路21は、単相フルブリッジインバータ回路、または単相ハーフブリッジインバータ回路である。インバータ回路21は、3個のコイル20に接続される3相インバータ回路でも良い。コイル20は、インバータ回路21からの電力供給によって、台車16を移動させる動力である電磁力を発生する。搬送路ユニット11の各コイル20には、電流センサ22が接続される。電流センサ22は、コイル20に流れる電流の電流値であるコイル実電流値を検出する。
インバータ回路21には、インバータ回路21を制御する電流制御器24が接続される。電流制御器24は、コイル20に流す電流の電流指令値と、電流センサ22によって検出されたコイル実電流値とに基づいて、コイル20に印加する電圧の電圧値を算出する。電流制御器24は、算出された電圧値と三角波との比較によって得られるパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号をインバータ回路21へ送信する。電流制御器24は、インバータ回路21へPWM信号を送信することによって、インバータ回路21にスイッチングを行わせる。これにより、電流制御器24は、所望の電流値の電流をコイル20に流すための電圧をコイル20に印加する。電流制御器24は、電流指令値とコイル実電流値との偏差に基づいて、コイル20に印加する電圧のPID(Proportional Integral Differential)制御を行うことで、コイル20に印加する電圧の電圧値を算出しても良い。
インバータ回路21は、DC電源バス15の正極配線とDC電源バス15の負極配線とに接続される。正極配線は、DC電源13の正極に接続される配線である。負極配線は、DC電源13の負極に接続される配線である。DC電源13の正極側の線とDC電源13の負極側の線との間には、コンデンサ23が接続される。
搬送路ユニット11は、リニアスケール25とプロセッサ27とを備える。リニアスケール25は、搬送路ユニット11上における台車16の位置を検知する検知部である。リニアスケール25は、複数の搬送路ユニット11が互いに連結されて搬送路10を構成することで、搬送路10に設けられることとなる。プロセッサ27は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)ともいう)である。
リニアスケール25は、複数の位置センサ26を備える。各位置センサ26は、ホールセンサまたは磁気抵抗センサといった、磁界を検出するセンサである。各位置センサ26は、永久磁石30の磁界、または永久磁石31の磁界を検出する。ここでは、位置センサ26は、2個のホール素子が搭載されたホールセンサとする。2個のホール素子の間隔は、永久磁石31の磁極ピッチの半分に相当する間隔である。各ホール素子は、磁界を電気信号に変換し、電気信号を出力する。各ホール素子が出力する電気信号は、台車16の移動に伴って変化する。一方のホール素子が出力する電気信号の波形は、sin波となる。他方のホール素子が出力する電気信号の波形は、cos波となる。
プロセッサ27に備えられるAD(Analog to Digital)コンバータは、sin波とcos波とを検出する。プロセッサ27は、sin波の情報とcos波の情報とに基づいてarctanを計算することによって、位置センサ26に対する台車16の位置を検知する。これにより、プロセッサ27は、台車16の位置を示す位置情報を取得する。
搬送路ユニット11は、通信従局28を備える。通信従局28は、搬送路ユニット11の側の通信従局である。データ通信線14は、通信従局28に接続される。各搬送路ユニット11とコントローラ12とがデイジーチェーン接続により接続される場合、通信従局28は、2個のデータ通信線14を接続可能に構成される。通信従局28は、搬送路ユニット11に備えられる複数のコイル20の各々について、コイル20に流す電流の電流指令値を示す電流指令をコントローラ12から受信する。通信従局28は、リニアスケール25に備えられる複数の位置センサ26の各々から、位置センサ26により取得された位置情報を取得する。通信従局28は、取得された位置情報をコントローラ12へ送信する。
通信従局28は、例えば、一定の周期において電流指令を受信するとともに位置情報を送信する定周期通信を行う。通信従局28は、かかる定周期通信に代えて、電流指令の受信と位置情報の送信とを非周期的に行うこととしても良い。
このように、搬送路ユニット11は、主に、コイル20の通電制御を行う機能と、位置情報を取得する機能とを備える。搬送路10を構成する複数の搬送路ユニット11の全ては、コイル20の通電制御を同様に行い、かつ、位置情報を同様に取得する。
次に、インバータ回路21の構成について説明する。図3は、実施の形態1の搬送路ユニット11に備えられるインバータ回路21の構成例を示す図である。ここでは、インバータ回路21が単相フルブリッジインバータ回路である場合を例とする。
インバータ回路21は、4個のスイッチング素子40A,40B,40C,40Dと、4個の絶縁ゲートドライバ41A,41B,41C,41Dと、2個のブートストラップ回路42A,42Bと、二次側電源44とを備える。また、インバータ回路21は、正極配線45と、負極配線46と、信号線47とを備える。正極配線45は、DC電源バス15の正極配線に接続される配線である。負極配線46は、DC電源バス15の負極配線に接続される配線である。信号線47は、電流制御器24からのPWM信号が入力される信号線である。
スイッチング素子40A,40Bは、正極配線45に接続される。スイッチング素子40A,40Bは、DC電源13の正極とコイル20との間に接続されるスイッチング素子である。スイッチング素子40A,40Bは、上アーム用のパワースイッチング素子である。スイッチング素子40C,40Dは、負極配線46に接続される。スイッチング素子40C,40Dは、DC電源13の負極とコイル20との間に接続されるスイッチング素子である。スイッチング素子40C,40Dは、下アーム用のパワースイッチング素子である。スイッチング素子40A,40B,40C,40Dは、フルブリッジ型回路を構成する。各スイッチング素子40A,40B,40C,40Dは、例えばFET(Field Effect Transistor)である。各スイッチング素子40A,40B,40C,40Dは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
絶縁ゲートドライバ41A,41Bは、上アーム用の絶縁ゲートドライバである。絶縁ゲートドライバ41A,41Bは、上アームを駆動するスイッチングドライバ回路である。絶縁ゲートドライバ41Aのゲート信号線は、スイッチング素子40Aに接続される。絶縁ゲートドライバ41Bのゲート信号線は、スイッチング素子40Bに接続される。絶縁ゲートドライバ41C,41Dは、下アーム用の絶縁ゲートドライバである。絶縁ゲートドライバ41C,41Dは、下アームを駆動するスイッチングドライバ回路である。絶縁ゲートドライバ41Cのゲート信号線は、スイッチング素子40Cに接続される。絶縁ゲートドライバ41Dのゲート信号線は、スイッチング素子40Dに接続される。
スイッチング素子40A,40Dをオン、スイッチング素子40B,40Cをオフにすると、コイル20には、矢印48で示す方向へ、コイル実電流値の電流が流れる。一方、スイッチング素子40A,40Dをオフ、スイッチング素子40B,40Cをオンにすると、コイル20には、矢印48とは逆の方向へ、コイル実電流値の電流が流れる。このようにして、インバータ回路21は、コイル20に流れる電流の正負を切り換える。また、インバータ回路21は、PWM信号に従い、絶縁ゲートドライバ41A,41B,41C,41Dのゲート信号を高い周波数でオンオフする。インバータ回路21は、ゲート信号のオンオフによって、コイル実電流値を調整する。
インバータ回路21の全てのスイッチング素子40A,40B,40C,40Dをオフにした場合、コイル20は開放状態とされる。すなわち、コイル20の通電が遮断される。スイッチング素子40A,40Dをオン、かつ、スイッチング素子40B,40Cをオフにした場合、コイル20は閉回路を構成する。スイッチング素子40A,40Dをオフ、かつ、スイッチング素子40B,40Cをオンにした場合、コイル20は閉回路を構成する。
スイッチング素子40A,40B,40C,40Dの各々は、オフからオンへのスイッチングの際、または、オンからオフへのスイッチングの際に、ノイズを発生する。スイッチング素子40A,40B,40C,40Dの各々は、オフからオンへのスイッチングの際、または、オンからオフへのスイッチングの際に、エネルギー損失を発生する。
絶縁ゲートドライバ41C,41Dの二次側には、二次側電源44が接続される。絶縁ゲートドライバ41Aの二次側には、ブートストラップ回路42Aが接続される。絶縁ゲートドライバ41Bの二次側には、ブートストラップ回路42Bが接続される。ブートストラップ回路42Aは、絶縁ゲートドライバ41Aを駆動するブートストラップ型電源回路である。ブートストラップ回路42Bは、絶縁ゲートドライバ41Bを駆動するブートストラップ型電源回路である。インバータ回路21は、絶縁ゲートドライバ41A,41Bを駆動するブートストラップ回路42A,42Bを備えることによって、二次側電源44を1個にすることができる。インバータ回路21は、2個の二次側電源44を備える場合に比べて、製造コストの低減が可能となる。
実施の形態1では、搬送システム1の複数の搬送路ユニット11の各々は、リニアスケール25による検知結果から、搬送路ユニット11に台車16が存在しているか否かを認定する。搬送システム1の複数の搬送路ユニット11のうち、搬送路ユニット11に台車16が存在していないと認定した搬送路ユニット11は、インバータ回路21におけるスイッチングを停止する。これにより、搬送路10のうち台車16が存在していない部分における1または2以上の搬送路ユニット11は、インバータ回路21におけるスイッチングを停止する。
次に、インバータ回路21におけるスイッチングを停止させる際における搬送路ユニット11の動作について説明する。ここでは、搬送システム1が図1に示す状態である場合を例として、各搬送路ユニット11の動作について説明する。搬送システム1が図1に示す状態であるとき、台車16Aは、搬送路ユニット11Aに存在している。また、台車16Bは、搬送路ユニット11Cと搬送路ユニット11Dとに跨って存在している。台車16Cは、搬送路ユニット11Eと搬送路ユニット11Fとに跨って存在している。
図4は、実施の形態1にかかる搬送システム1に備えられる各搬送路ユニット11の動作について説明するための図である。図4に示す表は、複数の搬送路ユニット11の各々について、台車16の有無と、スイッチングの実行またはスイッチングの停止とを表す。図4において、「搬送路ユニット」の欄に示す「A」、「B」、・・・「H」は、それぞれ、搬送路ユニット11A、搬送路ユニット11B、・・・、搬送路ユニット11Hを表す。
搬送路ユニット11Bのプロセッサ27は、リニアスケール25により台車16が検知されていないことで、搬送路ユニット11Bには台車16が無いと認定する。搬送路ユニット11Bは、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していないと認定された搬送路ユニット11である。搬送路ユニット11Bのプロセッサ27は、搬送路ユニット11Bのインバータ回路21におけるスイッチングを停止させる。
搬送路ユニット11Bに台車16が存在しないとき、搬送路ユニット11Bにより駆動力を与える対象が存在しない。この場合、搬送路ユニット11Bにより駆動力を与える対象が存在しないことから、搬送路ユニット11Bは、スイッチングを停止することにより、コイル20への電流を停止する。
搬送路ユニット11G,11Hは、搬送路ユニット11Bと同様に、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していないと認定された搬送路ユニット11である。搬送路ユニット11G,11Hは、インバータ回路21におけるスイッチングを停止させる。搬送路ユニット11G,11Hは、スイッチングを停止することにより、コイル20への電流を停止する。
なお、プロセッサ27は、搬送路ユニット11に台車16が存在していないと認定した場合に、スイッチング停止指示を生成しても良い。この場合、搬送路ユニット11は、スイッチング停止指示に従って、インバータ回路21におけるスイッチングを停止する。
搬送路ユニット11Aのプロセッサ27は、位置情報を基に、台車16があると認定する。搬送路ユニット11Aは、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していると認定された搬送路ユニット11である。各搬送路ユニット11C,11D,11E,11Fは、搬送路ユニット11Aと同様に、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していると認定された搬送路ユニット11である。各搬送路ユニット11A,11C,11D,11E,11Fは、インバータ回路21におけるスイッチングを実行する。各搬送路ユニット11A,11C,11D,11E,11Fでは、スイッチングの実行により、コイル20へ電流が流れる。
このように、実施の形態1では、搬送システム1の複数の搬送路ユニット11のうち、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していないと認定された搬送路ユニット11は、インバータ回路21におけるスイッチングを停止する。また、搬送システム1の複数の搬送路ユニット11のうち、リニアスケール25による検知結果から台車16が存在していると認定された搬送路ユニット11は、インバータ回路21におけるスイッチングを実行する。各搬送路ユニット11は、台車16が存在するか否かに応じて、スイッチングの実行とスイッチングの停止とを切り換える。
搬送路ユニット11は、スイッチングを停止する際、スイッチング素子40A,40B,40C,40Dをオフ状態に固定し、コイル20を開放状態とする。または、搬送路ユニット11は、スイッチングを停止する際、スイッチング素子40A,40B,40C,40Dをオン状態に固定し、コイル20を含む閉回路を構成する。
一般に、PWM信号によるスイッチングの周期に対して、台車16が搬送路ユニット11上に存在しない時間は十分に長い。このため、搬送システム1は、台車16が存在していない搬送路ユニット11のスイッチングを停止することで、搬送システム1の全体におけるスイッチングの回数を大幅に減少させることができる。搬送システム1は、スイッチングの回数を減少させることによって、搬送システム1の全体において、スイッチングに起因するノイズを低減できる。また、搬送システム1は、スイッチングの回数を減少させることによって、搬送システム1の全体において、スイッチングに起因するエネルギー損失を低減できる。
インバータ回路21は、スイッチングを停止する際、スイッチング素子40A,40Bをオフ状態に固定し、かつ、スイッチング素子40C,40Dをオン状態に固定しても良い。すなわち、上アームであるスイッチング素子40A,40Bは、スイッチングを停止させる期間において開放状態とされ、下アームであるスイッチング素子40C,40Dは、スイッチングを停止させる期間において通電状態とされる。
ブートストラップ回路42A,42Bを備える構成においてスイッチング素子40C,40Dをオン状態に固定することで、ブートストラップ回路42A,42Bのコンデンサへの電荷のチャージが続けられる。このため、インバータ回路21は、スイッチングを停止させる期間を利用して、ブートストラップ回路42A,42Bにおける電荷のチャージを行うことができる。
インバータ回路21は、スイッチングを停止している間にチャージを行うことで、台車16が存在していなかった搬送路ユニット11へ台車16が進入したタイミングにおいて、絶縁ゲートドライバ41A,41Bを即座に起動させることができる。インバータ回路21は、絶縁ゲートドライバ41A,41Bを即座に起動させることによって、コイル20へ流す電流の制御を即座に開始できる。これにより、搬送システム1は、搬送路ユニット11同士の間において台車16をスムーズに移動させることができる。
搬送システム1は、互いに隣り合う搬送路ユニット11に台車16が跨るときに当該各搬送路ユニット11においてスイッチングを実行する。これにより、搬送システム1は、互いに隣り合う搬送路ユニット11に台車16が跨るときに、台車16の推力低下を防ぐことができる。
実施の形態1によると、搬送システム1では、搬送路10のうち搬送体が存在していない部分における1または2以上の搬送路ユニット11がスイッチングを停止する。これにより、搬送システム1では、ノイズの低減とエネルギー損失の低減とが可能となるという効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態2では、台車16が存在していない搬送路ユニット11のうち、台車16が存在している搬送路ユニット11に隣接する搬送路ユニット11においてスイッチングを実行する例について説明する。実施の形態2では、通信周期において、ある搬送路ユニット11を移動していた台車16がその隣の搬送路ユニット11へ進入したときに、台車16をスムーズに移動させることができる。通信周期は、コントローラ12と搬送路ユニット11との間の通信の周期とする。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、実施の形態1とは異なる構成について主に説明する。
図5は、実施の形態2にかかる搬送システム2の構成例を示す図である。搬送システム2では、コントローラ12による処理が実施の形態1の場合とは異なる。搬送システム2の構成は、図1に示す搬送システム1の構成と同様である。搬送システム2は、図2または図3に示す構成と同様の構成を備える。
図5に示す例では、搬送システム2は、8個の搬送路ユニット11と2個の台車16とを備える。搬送システム2に備えられる搬送路ユニット11の数は任意であるものとする。すなわち、搬送路10を構成する搬送路ユニット11の数は任意であるものとする。搬送システム2は、複数の搬送路ユニット11を備えていれば良い。搬送路10を移動する台車16の数は任意であるものとする。搬送システム2は、1または複数の台車16を備えていれば良い。
搬送路ユニット11の通信従局28は、リニアスケール25に備えられる複数の位置センサ26の各々から、位置センサ26により取得された位置情報を取得する。通信従局28は、取得された位置情報を、データ通信線14を介してコントローラ12へ送信する。
コントローラ12は、各搬送路ユニット11の通信従局28から送信される位置情報を受信する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11の通信従局28からの位置情報を合成することによって、搬送路10における台車16の位置を示す位置情報を取得する。コントローラ12は、搬送路10における台車16の位置を示す位置情報を基に、スイッチングを実行する搬送路ユニット11とスイッチングを停止する搬送路ユニット11とを決定する。
コントローラ12は、複数の搬送路ユニット11のうち第1の搬送路ユニットおよび第2の搬送路ユニットを、スイッチングを実行する搬送路ユニット11に決定する。コントローラ12は、複数の搬送路ユニット11のうち第1の搬送路ユニットおよび第2の搬送路ユニット以外の搬送路ユニット11を、スイッチングを停止する搬送路ユニット11に決定する。第1の搬送路ユニットは、搬送体である台車16が存在している搬送路ユニット11である。第2の搬送路ユニットは、搬送路10における台車16の進行方向の前方において第1の搬送路ユニットの隣に位置するM個の搬送路ユニット11、および、当該進行方向の後方において第1の搬送路ユニットの隣に位置するN個の搬送路ユニット11である。MおよびNの各々は、1以上の任意の整数とする。実施の形態2において、搬送路10のうち台車16が存在していない部分における1または2以上の搬送路ユニット11の少なくとも1つは、スイッチングを停止する。
次に、インバータ回路21におけるスイッチングを停止させる際における搬送路ユニット11の動作について説明する。ここでは、搬送システム2が図5に示す状態である場合を例として、各搬送路ユニット11の動作について説明する。搬送システム2が図5に示す状態であるとき、台車16Aは、搬送路ユニット11Aに存在している。また、台車16Bは、搬送路ユニット11Cと搬送路ユニット11Dとに跨って存在している。
図6は、実施の形態2にかかる搬送システム2に備えられる各搬送路ユニット11の動作について説明するための図である。コントローラ12は、取得された位置情報から第1の搬送路ユニットを認定する。図5に示す例の場合、台車16Aが存在している搬送路ユニット11Aと、台車16Bが存在している搬送路ユニット11C,11Dとが、第1の搬送路ユニットである。
次に、コントローラ12は、認定された第1の搬送路ユニットに基づいて、第2の搬送路ユニットを認定する。ここでは、M=1およびN=1とする。図5に示す例の場合、各搬送路ユニット11B,11E,11Hが、第2の搬送路ユニットである。コントローラ12は、第1の搬送路ユニットである各搬送路ユニット11A,11C,11Dと、第2の搬送路ユニットである各搬送路ユニット11B,11E,11Hとを、スイッチングを実行する搬送路ユニット11に決定する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11A,11B,11C,11D,11E,11Hへスイッチング実行指示を送信する。スイッチング実行指示は、例えば、スイッチングの実行を表すフラグがオンにされた信号である。
次に、コントローラ12は、搬送システム1が備える複数の搬送路ユニット11のうち、第1の搬送路ユニットおよび第2の搬送路ユニット以外の搬送路ユニット11を認定する。図5に示す例の場合、各搬送路ユニット11F,11Gが、第1の搬送路ユニットおよび第2の搬送路ユニット以外の搬送路ユニット11である。コントローラ12は、各搬送路ユニット11F,11Gを、スイッチングを停止する搬送路ユニット11に決定する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11F,11Gへスイッチング停止指示を送信する。スイッチング停止指示は、例えば、スイッチングの実行を表すフラグがオフにされた信号である。
各搬送路ユニット11A,11B,11C,11D,11E,11Hの通信従局28は、コントローラ12からのスイッチング実行指示を受信する。各搬送路ユニット11A,11B,11C,11D,11E,11Hは、スイッチング実行指示に従って、インバータ回路21におけるスイッチングを実行する。
各搬送路ユニット11F,11Gの通信従局28は、コントローラ12からのスイッチング停止指示を受信する。各搬送路ユニット11F,11Gは、スイッチング停止指示に従って、インバータ回路21におけるスイッチングを停止する。
進行方向の前方において第1の搬送路ユニットの隣に位置する第2の搬送路ユニットの数であるM、および、進行方向の後方において第1の搬送路ユニットの隣に位置する第2の搬送路ユニットの数であるNは、あらかじめ設定される。MおよびNの少なくとも一方は、搬送路10における台車16の速度に基づいて算出されても良い。
ここで、搬送路10における台車16の速度に基づいてMおよびNを算出する方法の例を説明する。ここで、搬送路ユニット11の経路長をL、台車16の最大速度をVmax、コントローラ12と搬送路ユニット11との間の通信の通信周期をTcycとする。MおよびNの各々は、L/(Vmax×Tcyc)の小数点以下を切り上げることによって求まる。
このように、実施の形態2では、搬送システム2は、台車16が存在している第1の搬送路ユニットのみならず、第1の搬送路ユニットと隣り合う第2の搬送路ユニットでもスイッチングを実行する。第1の搬送路ユニットを移動していた台車16がその隣の第2の搬送路ユニットへ進入するとき、スイッチングを実行している第2の搬送路ユニットへ台車16が進入する。これにより、搬送システム2は、通信周期において、スイッチングを停止している搬送路ユニット11へ台車16が進入することが無くなるため、搬送路ユニット11同士が隣り合う部分において台車16をスムーズに移動させることができる。
上記説明では、MおよびNは1以上の任意の整数としたが、MおよびNの少なくとも一方がゼロであっても良い。すなわち、第2の搬送路ユニットは、進行方向の前方において第1の搬送路ユニットの隣に位置する1または2以上の搬送路ユニット11と、進行方向の後方において第1の搬送路ユニットの隣に位置する1または2以上の搬送路ユニット11との少なくとも一方であれば良い。搬送システム2は、通信周期ごとにおける台車16の進行方向に基づいて、通信周期ごとに、MおよびNの一方をゼロと1以上の整数とに切り換えても良い。
実施の形態2によると、搬送システム2は、第1の搬送路ユニットと第2の搬送路ユニットとにおいてスイッチングを実行することによって、台車16をスムーズに移動させることができる。また、搬送システム2は、複数の搬送路ユニット11のうち第1の搬送路ユニットおよび第2の搬送路ユニット以外の搬送路ユニット11においてスイッチングを停止させることにより、搬送路10のうち台車16が存在していない部分における1または2以上の搬送路ユニット11の少なくとも1つにおいて、スイッチングを停止させる。これにより、搬送システム2は、ノイズの低減とエネルギー損失の低減とが可能となる。
実施の形態3.
実施の形態3では、コントローラ12が各搬送路ユニット11へ出力する位置指令の生成に学習を適用する例について説明する。コントローラ12は、各台車16の運行情報から、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が少なくなるような位置指令を、学習済モデルに基づいて生成する。
例えば、ある時点から2秒後に、現在の位置から3m先の目的位置に台車16を到達させることを示す運行情報が取得されたとする。この場合において、台車16を移動させる位置指令のパターンとして、あらゆるパターンを取り得る。取り得るパターンの1つは、当該2秒間の始点から終点にかけての台形加減速により台車16を移動させるパターンである。その他のパターンとしては、始点から1秒間における台形加減速により台車16を移動させて残りの1秒間は台車16を停止させるパターン、または、始点から1秒間台車16を停止させて残りの1秒間における台形加減速により台車16を移動させるパターンなどがある。位置指令のパターンとして取り得るパターンは無数に存在する。
各台車16についての位置指令のパターンが適宜設定されることによって、制御周期ごとの、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数を少なくすることができる。実施の形態3では、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が少なくなる位置指令を、機械学習の手法により導き出す。
実施の形態3にかかる搬送システム2の構成は、図5に示す搬送システム2の構成と同様であるものとする。実施の形態3にかかる搬送システム2のコントローラ12は、実施の形態2の場合と同様に、搬送路10における台車16の位置を示す位置情報を取得する。実施の形態3では、学習のための構成要素がコントローラ12に追加されている点が、実施の形態2の場合とは異なる。
図7は、実施の形態3にかかる搬送システム2に備えられるコントローラ12の構成例を示す図である。コントローラ12は、学習装置51と、学習済モデル記憶部52と、位置指令生成部53と、コイル駆動指令生成部54とを備える。
学習装置51は、搬送システム2が備える複数の台車16の各々の運行情報と、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が少なくなるような位置指令との関係を学習する。運行情報は、搬送路10における複数の台車16の各々の移動についてのスケジュールを示す情報である。位置指令は、台車16を移動させる位置を示す。学習装置51は、学習の結果である学習済モデルを出力する。学習済モデル記憶部52は、学習済モデルを記憶する。
位置指令生成部53は、搬送システム2が備える複数の台車16の各々について、台車16を移動させる位置を示す位置指令を生成する。位置指令生成部53は、学習済モデル記憶部52から学習済モデルを読み出す。位置指令生成部53は、学習済モデルへ運行情報を入力することによって、搬送路ユニット11の数が少なくなるような位置指令を推論する。位置指令生成部53は、かかる推論によって、位置指令を生成する。
コイル駆動指令生成部54は、位置指令に基づいてコイル駆動指令を生成する。コントローラ12は、各搬送路ユニット11へコイル駆動指令を出力することによって、各台車16の移動を制御する。
図8は、実施の形態3のコントローラ12に備えられる学習装置51の構成例を示す図である。学習装置51は、データ取得部61とモデル生成部62とを備える。データ取得部61は、学習用データを取得し、学習用データをまとめ合わせたデータセットを作成する。学習用データは、運行情報および位置指令である。すなわち、データ取得部61は、運行情報と位置指令とを含む学習用データを取得する。
モデル生成部62は、学習用データを用いて学習済モデルを生成する。モデル生成部62は、運行情報からの位置指令の推論に使用される学習済モデルを、学習用データに基づいて生成する。
モデル生成部62が用いる学習アルゴリズムとしては、教師あり学習、教師なし学習、または強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、モデル生成部62が用いる学習アルゴリズムに強化学習(Reinforcement Learning)を適用する場合について説明する。強化学習は、ある環境内におけるエージェントである行動主体が、現在の状態を観測し、取るべき行動を決定する、というものである。エージェントは行動を選択することで環境から報酬を得て、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-Learning)およびTD学習(TD-Learning)などが知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式である行動価値テーブルは、次の式(1)で表される。行動価値関数Q(s,a)は、環境「s」のもとで行動「a」を選択する行動の価値である行動価値Qを表す。
式(1)において、「st」は、時刻「t」における環境を表す。「at」は、時刻「t」における行動を表す。行動「at」によって、環境は「st+1」に変わる。「rt+1」は、その環境の変化によってもらえる報酬を表す。「γ」は、割引率を表す。「α」は、学習係数を表す。運行情報が環境「st」となる。位置指令が行動「at」となる。
式(1)により表される更新式は、時刻「t+1」における最良の行動「a」の行動価値が、時刻「t」において実行された行動「a」の行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、時刻「t」における行動「a」の行動価値Qを、時刻「t+1」における最良の行動価値に近づけるように、行動価値関数Q(s,a)を更新する。それにより、ある環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播する。
モデル生成部62は、報酬計算部63および関数更新部64を有する。報酬計算部63は、データセットに基づいて報酬を計算する。関数更新部64は、報酬計算部63によって算出される報酬に従って、運用計画を決定するための関数を更新する。
具体的には、報酬計算部63は、制御周期ごとの、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数に基づいて、報酬「r」を計算する。例えば、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が、搬送システム2が備える台車16の数以下である場合に、報酬計算部63は、報酬「r」を増大させる。報酬計算部63は、報酬の値である「1」を与えることによって報酬「r」を増大させる。なお、報酬の値は「1」に限られない。一方、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が、搬送システム2が備える台車16の数よりも多い場合に、報酬計算部63は、報酬「r」を減少させる。報酬計算部63は、報酬の値である「-1」を与えることによって報酬「r」を減少させる。なお、報酬の値は「-1」に限られない。
関数更新部64は、報酬計算部63によって計算される報酬に従って、位置指令を決定するためのモデルである関数を更新する。関数の更新は、データセットに従って、例えば行動価値テーブルを更新することによって行うことができる。行動価値テーブルは、任意の行動と、その行動価値とを関連付けてテーブルの形式で記憶したデータセットである。例えばQ学習の場合、上記の式(1)により表される行動価値関数Q(st,at)を、位置指令を決定するための関数として用いる。
図9は、実施の形態3のコントローラ12に備えられる学習装置51の処理手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートを参照して、行動価値関数Q(s,a)を更新する強化学習方法について説明する。
ステップS11において、学習装置51は、データ取得部61により、運行情報と位置指令とを取得する。すなわち、学習装置51は、学習用データを取得する。データ取得部61は、学習用データをまとめたデータセットをモデル生成部62へ出力する。
ステップS12において、学習装置51は、報酬計算部63により報酬を計算する。報酬計算部63は、各台車16についての運行情報と各台車16についての位置指令との組み合わせに対する報酬を計算する。報酬計算部63は、制御周期ごとの、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数に基づいて、報酬を増大または減少させる。
ステップS13において、学習装置51は、関数更新部64により行動価値関数を更新する。関数更新部64は、ステップS12において計算された報酬に基づいて行動価値関数Q(s,a)を更新する。学習装置51は、学習済モデル記憶部52に記憶されている行動価値関数Q(st,at)を更新する。
ステップS14において、学習装置51は、関数更新部64により、行動価値関数Q(s,a)が収束したか否かを判断する。関数更新部64は、ステップS13における行動価値関数Q(s,a)の更新が行われなくなることによって行動価値関数Q(s,a)が収束したと判断する。
行動価値関数Q(s,a)が収束していないと判断された場合(ステップS14,No)、学習装置51は、手順をステップS11へ戻す。一方、行動価値関数Q(s,a)が収束したと判断された場合(ステップS14,Yes)、学習装置51は、図9に示す手順による処理を終了する。なお、学習装置51は、ステップS14による判断をせず、ステップS13からステップS11へ手順を戻すことによって学習を継続しても良い。学習済モデル記憶部52は、生成された行動価値関数Q(s,a)である学習済モデルを記憶する。
実施の形態3では、学習装置51が用いる学習アルゴリズムに強化学習を適用する場合について説明したが、学習アルゴリズムには、強化学習以外の学習が適用されても良い。学習装置51は、強化学習以外の公知の学習アルゴリズム、例えば、深層学習(Deep Learning)、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、帰納論理プログラミングあるいはサポートベクターマシンといった学習アルゴリズムを用いて機械学習を実行しても良い。
図7および図8に示す学習装置51は、コントローラ12に内蔵される装置である。学習装置51は、コントローラ12の外部の装置でも良い。コントローラ12の外部の装置である学習装置51は、搬送システム2を構成する。学習装置51は、ネットワークを介してコントローラ12に接続可能な装置でも良い。学習装置51は、クラウドサーバ上に存在する装置でも良い。
学習装置51は、複数の搬送システム2について作成されたデータセットに従って、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が少なくなるような位置指令を学習しても良い。学習装置51は、同一の場所で使用される複数の搬送システム2から学習用データを取得しても良く、または、互いに異なる場所で使用される複数の搬送システム2から学習用データを取得しても良い。学習用データは、複数の場所において互いに独立して稼働する複数の搬送システム2から収集されたものでも良い。複数の搬送システム2からの学習用データの収集を開始した後に、学習用データが収集される対象に新たな搬送システム2が追加されても良い。また、複数の搬送システム2からの学習用データの収集を開始した後に、学習用データが収集される対象から、複数の搬送システム2のうちの一部が除外されても良い。
ある1つの搬送システム2について学習を行った学習装置51は、当該搬送システム2以外の他の搬送システム2についての学習を行っても良い。当該他の搬送システム2についての学習を行う学習装置51は、当該他の搬送システム2における再学習によって、学習済モデルを更新することができる。
図10は、実施の形態3のコントローラ12に備えられる位置指令生成部53の構成例を示す図である。位置指令生成部53は、運行情報から位置指令を推論する推論装置としての機能を備える。位置指令生成部53は、データ取得部65と推論部66とを備える。
データ取得部65は、推論用データを取得する。推論用データは、搬送システム2が備える複数の台車16の各々についての運行情報である。推論部66は、学習装置51によって生成された学習済モデルを、学習済モデル記憶部52から読み出す。推論部66は、学習済モデルへ推論用データを入力することによって、位置指令を推論する。推論部66は、推論結果である位置指令をコイル駆動指令生成部54へ出力する。コイル駆動指令生成部54は、位置指令に基づいてコイル駆動指令を生成する。
図11は、実施の形態3のコントローラ12に備えられる位置指令生成部53およびコイル駆動指令生成部54の処理手順を示すフローチャートである。
ステップS21において、位置指令生成部53は、データ取得部65により、各台車16の運行情報を取得する。データ取得部65は、取得された運行情報を推論部66へ出力する。
ステップS22において、位置指令生成部53は、推論部66において、各台車16の運行情報を学習済モデルへ入力することによって、位置指令を生成する。ステップS23において、推論部66は、コイル駆動指令生成部54へ位置指令を出力する。ステップS24において、コイル駆動指令生成部54は、位置指令に基づいてコイル駆動指令を生成する。以上により、位置指令生成部53およびコイル駆動指令生成部54は、図11に示す手順による処理を終了する。コントローラ12は、コイル駆動指令生成部54によって生成されたコイル駆動指令を、データ通信線14を介して各搬送路ユニット11へ送信する。
実施の形態3によると、搬送システム2は、学習装置51と、推論装置である位置指令生成部53とを備えることによって、スイッチングを実行する搬送路ユニット11の数が少なくなるような位置指令を導き出すことができる。これにより、搬送システム2は、ノイズの低減とエネルギー損失の低減とが可能となる。
ここまで、実施の形態2にかかる搬送システム2における位置指令の生成に、学習を適用する例を説明した。実施の形態3において説明する学習は、実施の形態1のように、台車16が存在していない搬送路ユニット11のスイッチングを停止する場合における位置指令の生成に適用されても良い。搬送システム2は、学習以外の手法により位置指令を生成しても良い。
次に、実施の形態1から3にかかるコントローラ12を実現するハードウェアについて説明する。コントローラ12は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサがソフトウェアを実行する回路であっても良いし、専用の回路であっても良い。
処理回路がソフトウェアにより実現される場合、処理回路は、例えば、図12に示す制御回路である。図12は、実施の形態1から3にかかる制御回路80の構成例を示す図である。制御回路80は、入力部81、プロセッサ82、メモリ83および出力部84を備える。入力部81は、制御回路80の外部から入力されたデータを受信してプロセッサ82に与えるインターフェース回路である。出力部84は、プロセッサ82またはメモリ83からのデータを制御回路80の外部に送るインターフェース回路である。
処理回路が図12に示す制御回路80である場合、コントローラ12は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ83に格納される。処理回路は、メモリ83に記憶されたプログラムをプロセッサ82が読み出して実行することにより、コントローラ12の各機能を実現する。すなわち、処理回路は、コントローラ12の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ83を備える。また、これらのプログラムは、コントローラ12の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
プロセッサ82は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)ともいう)である。メモリ83は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
図12は、汎用のプロセッサ82およびメモリ83によりコントローラ12を実現する場合のハードウェアの例であるが、コントローラ12は、専用のハードウェア回路により実現されても良い。図13は、実施の形態1から3にかかる専用のハードウェア回路85の構成例を示す図である。
専用のハードウェア回路85は、入力部81、出力部84および処理回路86を備える。処理回路86は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。コントローラ12の各機能を機能別に処理回路86で実現しても良いし、各機能をまとめて処理回路86で実現しても良い。なお、コントローラ12は、制御回路80とハードウェア回路85とが組み合わされて実現されても良い。
以上の各実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。各実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。各実施の形態の構成同士が適宜組み合わせられても良い。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、各実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。